定義
用語「治療する」は、疾患(例えば、本明細書に記載される疾患または障害)の発症または進行を減少させる、抑制する、弱める、少なくする、阻止する、または安定させること、疾患の重篤度を小さくすること、または、疾患と関連する症状を改善することを意味する。
「疾患」は、細胞、組織、または器官の正常な機能を損傷するまたはこれらに干渉する任意の状態または障害を意味する。
合成に使用された化学物質の起源に応じて、合成された化合物において、天然同位体存在度についていくらかのばらつきが生じることが認識されるだろう。従って、VX-770の作製は、少量の重水素化アイソトポログ(isotopologue)を本質的に含有する。このばらつきにもかかわらず、天然に豊富で安定な水素同位体および炭素同位体の濃度は、本発明の化合物の安定な同位体置換の程度と比較して、小さく、取るに足らない。例えば、Wada, E et al., Seikagaku 1994, 66: 15、Gannes LZ et al., Comp Biochem Physiol Mol Integr Physiol, 1998, 119:725を参照のこと。
本発明の化合物において、特定の同位体と明確に指定されていない原子はいずれも、その原子の任意の安定な同位体を示すように意図される。特に記載されない限り、ある位置が「H」または「水素」と明確に指定される場合、その位置は、その天然存在度同位体組成で水素を有すると理解される。さらに、特に記載されない限り、ある位置が「D」または「重水素」と明確に指定される場合、その位置は、0.015%である重水素の天然存在度よりも少なくとも3000倍高い存在度で重水素を有すると理解される(即ち、少なくとも45%の重水素組み込み)。
用語「同位体濃縮係数」は、本明細書において使用される場合、特定の同位体の同位体存在度および天然存在度の比率を意味する。
他の態様において、本発明の化合物は、各々の指定される重水素原子について、少なくとも3500(各々の指定される重水素原子で52.5%の重水素組み込み)、少なくとも4000(60%の重水素組み込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素組み込み)、少なくとも5000(75%の重水素)、少なくとも5500(82.5%の重水素組み込み)、少なくとも6000(90%の重水素組み込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素組み込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素組み込み)、少なくとも6600(99%の重水素組み込み)、または少なくとも6633.3(99.5%の重水素組み込み)の同位体濃縮係数を有する。
用語「アイソトポログ」は、化学構造が、本発明の特定の化合物と、同位体組成のみ相違する種類を指す。
用語「化合物」は、本発明の化合物について言及する場合、分子の構成原子間に同位体のばらつきが存在し得ることを除いては、同一の化学構造を有する分子の集団を指す。従って、指示される重水素原子を含有する特定の化学構造によって表される化合物は、その構造における1つまたは複数の指定の重水素位置において水素原子を有するアイソトポログも、より少ない量だけ含むことが、当業者に明らかであろう。本発明の化合物におけるこのようなアイソトポログの相対量は、化合物を作製するために使用される重水素化された試薬の同位体純度、および化合物を調製するために使用される種々の合成工程における重水素の組み込み効率を含む、多数の因子に依存する。しかしながら、上述したように、このようなアイソトポログの相対量は、全体として、化合物の49.9%未満である。他の態様において、このようなアイソトポログの相対量は、全体として、化合物の47.5%未満、40%未満、32.5%未満、25%未満、17.5%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、または0.5%未満となる。
本発明はまた、本発明の化合物の塩を提供する。本発明の化合物の塩は、酸と、化合物の塩基性基(例えばアミノ官能基)との間で、または、塩基と、化合物の酸性基(例えばカルボキシル官能基)との間で形成される。別の態様によれば、化合物は、薬学的に許容される酸付加塩である。
用語「薬学的に許容される」は、本明細書において使用される場合、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずにヒトおよび他の哺乳動物の組織と接触して使用するのに好適であり、かつ、合理的な利益/リスク比に釣り合う成分を指す。「薬学的に許容される塩」は、レシピエントへ投与されると、本発明の化合物を直接的にまたは間接的に提供することができる任意の非毒性塩を意味する。「薬学的に許容される対イオン」は、レシピエントへ投与されて塩から放出されると毒性のない塩のイオン部分である。
薬学的に許容される塩を形成するために一般的に使用される酸としては、無機酸、例えば、二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸、ならびに有機酸、例えば、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、二酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、p-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸、ならびに関連する無機酸および有機酸が挙げられる。従って、このような薬学的に許容される塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩およびその他の塩が挙げられる。一つの態様において、薬学的に許容される酸付加塩としては、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸を用いて形成されるもの、および特に、マレイン酸などの有機酸を用いて形成されるものが挙げられる。
用語「安定な化合物」は、本明細書において使用される場合、その製造を可能にするに十分な安定性を有し、かつ、本明細書において詳述される目的(例えば、治療製品への製剤化、治療化合物の製造における使用のための中間体、単離可能なまたは保存可能な中間体化合物、治療剤に対して応答性の疾患または状態の治療)について有用である為に十分な期間、化合物の完全性が維持される、化合物を指す。
「D」および「d」は、いずれも重水素を指す。「立体異性体」は、エナンチオマーおよびジアステレオマーの両方を指す。「tert」および「t-」は、いずれも第3級を指す。「US」は、アメリカ合衆国を指す。
「重水素で置換」は、1つまたは複数の水素原子を、相当する数の重水素原子で置き換えることを指す。
本明細書を通して、可変部は、一般的に(例えば、「各R」として)、または具体的に(例えば、R1、R2、R3、等として)示すことができる。特に記載されない限り、可変部が一般的に示されている場合、それはその特定の可変部のすべての具体的な態様を含むことを意味する。
治療化合物
本発明は、式Iの化合物:
またはその薬学的に許容される塩を提供し、式中、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、およびX
7はそれぞれ独立に水素または重水素であり;
Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、およびY
6はそれぞれ独立にCH
3またはCD
3であり;
Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、およびY
6がいずれもCH
3の場合、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、およびX
7のうち少なくとも一つは重水素である。
一つの態様において、X1、X2、X3、およびX4は同一である。この態様の一局面において、X6およびX7は同一である。この態様の一局面において、Y1、Y2、およびY3は同一である。この態様の一局面において、Y4、Y5、およびY6は同一である。この局面の一例において、Y1、Y2、およびY3は同一である。より特定の例において、X6およびX7は同一である。
一つの態様において、Y1、Y2、およびY3はいずれも同一である。この態様の一局面において、Y4、Y5、およびY6はいずれも同一である。この局面の一例において、X6およびX7は同一である。
一つの態様において、C(Y1)(Y2)(Y3)およびC(Y4)(Y5)(Y6)の少なくとも一方はC(CD3)3である。
一つの態様において、Y1、Y2、およびY3はCD3である。この態様の一局面において、Y4、Y5、およびY6はCH3である。別の態様において、Y4、Y5、およびY6はCD3である。この態様の一局面において、Y1、Y2、およびY3はCH3である。更に別の態様において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、およびY6はCD3である。更に別の態様において、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、およびY6はCH3である。任意の態様の一局面において、Y1、Y2、およびY3がCD3である場合、Y6は水素である。この局面の一例において、X7は水素である。この局面の別の例において、X7は重水素である。Y1、Y2、およびY3がCD3である任意の態様の一局面において、X6は重水素である。この局面の一例において、X7は水素である。この局面の別の例において、X7は重水素である。Y1、Y2、およびY3がCD3であり、X6が重水素である態様の一局面において、X6の同位体濃縮係数は、少なくとも4000(60%の重水素組み込み)、例えば少なくとも4500(67.5%の重水素組み込み)、例えば少なくとも5000(75%の重水素)であるが、5500(82.5%の重水素組み込み)以下である。
Y1、Y2、およびY3がCH3である任意の態様の一局面において、Y4、Y5、およびY6はCD3であり、X6は水素である。この局面の一例において、X7は水素である。この局面の別の例において、X7は重水素である。Y1、Y2、およびY3がCH3である任意の態様の一局面において、Y4、Y5、およびY6はCD3であり、X6は重水素である。この局面の一例において、X7は水素である。この局面の別の例において、X7は重水素である。Y1、Y2、およびY3がCD3である任意の態様の一局面において、Y4、Y5、およびY6はCD3であり、X6は重水素である。この局面の一例において、X7は水素である。この局面の別の例において、X7は重水素である。Y1、Y2、およびY3がCH3である態様の一局面において、Y4、Y5、およびY6はCD3であり、X6は重水素であり、X6の同位体濃縮係数は、少なくとも4000(60%の重水素組み込み)、例えば少なくとも4500(67.5%の重水素組み込み)、例えば少なくとも5000(75%の重水素)であるが、5500(82.5%の重水素組み込み)以下である。
Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、およびY6がCH3である態様の一局面において、X6は重水素である。Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、およびY6がCH3であり、X6が重水素である態様の一局面において、X6の同位体濃縮係数は、少なくとも4000(60%の重水素組み込み)、例えば少なくとも4500(67.5%の重水素組み込み)、例えば少なくとも5000(75%の重水素)であるが、5500(82.5%の重水素組み込み)以下である。
一つの態様において、Y4、Y5、およびY6はいずれも同一である。この態様の一側面において、X6およびX7は同一である。
前記態様、局面、または例のいずれかの一例において、X5は水素である。別の例において、X5は重水素である。
一つの態様において、式Iの化合物は、表1のいずれか一つの化合物であるか、その薬学的に許容される塩であり、重水素と指定されていない原子はいずれもその天然同位体存在度で存在する。
一つの態様において、式Iの化合物は、表2のいずれか一つの化合物であるか、その薬学的に許容される塩であり、重水素と指定されていない原子はいずれもその天然同位体存在度で存在する。
一つの態様において、式Iの化合物は、表3のいずれか一つの化合物であるか、その薬学的に許容される塩であり、重水素と指定されていない原子はいずれもその天然同位体存在度で存在する。
態様の別のセットにおいて、上述の態様、例、または局面のいずれにおいても、重水素と指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在度で存在する。
式Iの化合物の合成は、本明細書に開示される例示的な合成および実施例を参照することにより、通常の技術を有する合成化学者によって容易に達成され得る。式Iの化合物およびその中間体の調整のために使用されるものと類似の関連する手順は、例えば、WO 2007075946、WO 2011019413、WO 2010019239、WO 2007134279、WO 2007079139、およびWO 2006002421に開示されており、その教示は本明細書に参照により組み入れられる。
このような方法は、本明細書に記載の化合物を合成するために、対応する重水素化された試薬および/または中間体、更に任意で他の同位体を含有する試薬および/または中間体を利用して、または化学構造へ同位体元素を導入するために当技術分野において公知の標準的な合成プロトコルを用いて、行われ得る。
例示的な合成
式Iの化合物を合成するための好都合な方法をスキーム1に示す。
スキーム1:
スキーム1に示されるように、DIEA(N,N'-ジイソプロピルエチルアミン)の存在下、HATU(N,N,N',N'-テトラメチル-O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウム・ヘキサフルオロリン酸)を利用してAとBをカップリングさせることにより式Iの化合物を調製することができる。
タイプAの重水素化された中間体(スキーム1)は、その全教示が本明細書に参照により組み入れられるSingh, A.;VanGoor F.;Worley, F. J. III;Knapp, T. Compounds Useful in CFTR Assays and Methods Therewith WO 2007075946 A1, 2007年7月5日と類似の方法で、スキーム2に概説されているとおりに調製されてもよい。
スキーム2:
スキーム2に示されるように、マロン酸誘導体2の存在下でアニリン1の混合物を加熱すると、適切に重水素化された((フェニルアミノ)メチレン)マロン酸塩が産出され、その後それをPOCl3の存在下でポリリン酸にさらし、次にエステル加水分解を行うことにより、カルボン酸Aが得られる。スキーム2において、Xは水素または重水素である。一つの態様において、X、X1、X2、X3、およびX4は同一である。
スキーム2に用いるための例示的な化合物としては、Aldrichより市販されている、X、X1、X2、X3、およびX4がそれぞれ重水素である化合物(1)の態様;および、X5が重水素である3(CDN Isotopesより入手可能)の態様を利用することにより、X5が水素である場合のスキーム2a(その教示が本明細書に参照により組み入れられるParham, W. E.; Reed, L. J. Org. Syn., 1948, 28, 60)に記載の手順に類似した方法で調製される、X5が重水素である化合物(2)の態様が含まれる。スキーム2aに示されるように、タイプ2の適切に重水素化された(エトキシメチレン)マロン酸塩は、無水酢酸の存在下、ZnCl2に促進されるジエチルマロン酸塩とタイプ3の適切に重水素化されたオルトギ酸トリエチルの反応により調製してもよい。
上記Singh, A.らと同様に、タイプBの重水素化された中間体(スキーム1)は、スキーム3の概説に従って調製してもよい。
スキーム3:
スキーム3に示されるように、クロロギ酸メチルによりタイプ4のジ-tert-ブチルフェノールを保護した後、硝酸にさらすことにより、ニトロ‐メチルカーボネート中間体が形成された。その後のカーボネートの加水分解の次に、パラジウムで触媒されたニトロ基の還元により、最終的にはタイプBのアミノフェノールが得られた。スキーム3において、X'は水素または重水素である。一つの態様において、X'、X6、およびX7は同一である。
スキーム3における式Bの化合物からは、DClまたはHClで処理することにより、それぞれ式B'またはB"の化合物を得ることができ、いずれも高い組み込み率でそれぞれのX
6位が重水素または水素となる。この手順は、BのX
6が水素であるか重水素であるかに関わらず有効である。従って、BのX
6が望ましい同位体純度より低いレベルで水素または重水素である場合、DClによる処理はB'を提供する一方、BにおいてX
6が重水素である場合、HClによる処理はB"を提供する。両方の処理を下記の二つの式に示す。
この手順は、HをDと、DをHと交換するため、並びにX6における同位体純度が低い(0〜85%)レベルにある式Bの化合物の同位体濃縮を行うために用いることができる。この手順は、X6に相当する位置において、それぞれ>95%Dまたは>95%Hを含む式B'またはB"の化合物の調製を容易にするものである。X6がそれぞれ重水素または水素である式Iの化合物を得るために、B'またはB"は、次にスキーム1に従ってAで処理されてもよい。
タイプ4の重水素化された中間体(スキーム3)は、その全教示が本明細書に参照により組み入れられるSun, Y.、Tang, N. Huaxue Shiji 2004, 26, 266-268と同様に、スキーム4a〜4dに概説されているとおりに調製されてもよい。
スキーム4a:
スキーム4b:
スキーム4c:
スキーム4d:
スキーム4a〜4dに示されているとおり、タイプ4のジ-tert-ブチルフェノールは、適切に重水素化されたフェノール(フェノール、4-tert-ブチルフェノールまたは2-tert-ブチルフェノール)とd9-塩化tert-ブチルとのフリーデル・クラフツ・アルキル化反応により調製可能である。スキーム4に示されているとおりに得ることが可能な化合物(4)の態様は、スキーム3において用いられる化合物の例である。スキーム4における態様4a、4b、4c、および4dにおいて、重水素として指定されていない原子はいずれもその天然同位体存在度で存在する。スキーム4における化合物5および化合物6はいずれも市販されている(CDN Isotopes)。
上記に示される具体的なアプローチおよび化合物は、限定的であるようには意図されない。本明細書におけるスキームにおける化学構造は、同一の可変部名(即ち、R1、R2、R3など)によって同定されるか否かにかかわらず、本明細書中における化合物式中の対応する位置の化学基定義(部分、原子など)と同一基準で本明細書において定義される可変部を表す。別の化合物の合成における使用についての化合物構造中の化学基の適合性は、当業者の知識の範囲内にある。
本明細書におけるスキームにおいて明示的には示されていない経路におけるものを含む、式Iの化合物およびそれらの合成前駆体を合成する更なる方法は、当技術分野における通常の技術を有する化学者が用いる手段の範囲内にある。適用可能な化合物の合成に有用な合成化学変換および保護基方法論(保護および脱保護)は、当技術分野において公知であり、これらとしては、例えば、Larock, R., Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989)、Greene, TW et al., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999); Fieser, L. et al., Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);およびPaquette, L. ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995) ならびにそれらの続版に記載されるものが挙げられる。
本発明によって想定される置換基および可変部の組み合わせは、安定な化合物を形成させるもののみである。
組成物
本発明はまた、有効量の式I(例えば、本明細書中の式のいずれをも含む)の化合物またはその化合物の薬学的に許容される塩;および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物を提供する。製剤の他の成分と適合性であり、かつ、薬学的に許容される担体の場合は、医薬において使用される量ではそのレシピエントに有害でないという意味で、担体は「許容される」。
本発明の薬学的組成物において使用され得る薬学的に許容される担体、アジュバント、および媒体としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
必要であれば、薬学的組成物における本発明の化合物の溶解性および生物学的利用能は、当技術分野において周知の方法によって高められ得る。1つの方法としては、製剤中における脂質賦形剤の使用が挙げられる。"Oral Lipid-Based Formulations: Enhancing the Bioavailability of Poorly Water-Soluble Drugs (Drugs and the Pharmaceutical Sciences)," David J. Hauss, ed. Informa Healthcare, 2007;および"Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery: Basic Principles and Biological Examples," Kishor M. Wasan, ed. Wiley-Interscience, 2006を参照のこと。
生物学的利用能を高める別の公知の方法は、ポロキサマー、例えば、LUTROL(商標)およびPLURONIC(商標)(BASF Corporation)、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーと共に任意で製剤化される本発明の化合物のアモルファス形態を使用することである。米国特許第7,014,866号;ならびに米国特許公開第20060094744号および第20060079502号を参照のこと。
本発明の薬学的組成物は、経口、経直腸、経鼻、局所(頬および舌下を含む)、経膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与に好適なものを含む。ある態様において、本明細書における式の化合物は、(例えば、経皮パッチまたはイオン導入技術を使用して)経皮投与される。他の製剤は、好都合なことに、単位投与形態(例えば、錠剤および徐放性カプセル剤)ならびにリポソームで提供され得、薬学の技術分野において周知の任意の方法により調製され得る。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD (20th ed. 2000)を参照のこと。
このような調製方法は、1つまたは複数の副成分を構成する担体などの成分を、投与される分子と混合する工程を含む。一般的に、組成物は、有効成分を、液体担体、リポソームもしくは微粉化固体担体、または両方と均一かつ十分に混合し、次いで、必要に応じて、製品を成形することによって、調製される。
特定の態様において、化合物は経口投与される。経口投与に好適な本発明の組成物は、分離した単位、例えば、各々が所定量の有効成分を含有する、カプセル剤、サシェ剤または錠剤として;散剤または顆粒剤として;水性液体または非水性液体中の液剤または懸濁剤として;水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして、またはリポソーム中に封入された状態で;またはボーラスなどとして提供され得る。軟ゼラチンカプセル剤が、このような懸濁剤の含有のために有用であり得、これは、化合物吸収速度を有利に増加させ得る。
経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体としては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもまた、一般的に添加される。カプセル剤形態での経口投与について、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁剤が経口投与される場合、有効成分は、乳化剤および懸濁化剤と混合される。必要に応じて、何らかの甘味剤および/または矯味矯臭剤および/または着色剤が添加され得る。
経口投与に好適な組成物としては、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントである風味付けされた基剤中に前記成分を含むロゼンジ;ならびに、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中に有効成分を含む香錠が挙げられる。
非経口投与に好適な組成物としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および意図されるレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有し得る、水性および非水性滅菌注射液剤;ならびに、懸濁化剤および増粘剤を含み得る、水性および非水性滅菌懸濁剤が挙げられる。製剤は、単位用量容器または多用量容器中に、例えば、密封アンプルおよびバイアル中にて提供されてもよく、使用の直前に滅菌液体担体、例えば、注射水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即席の注射液剤および懸濁剤は、滅菌した散剤、顆粒剤、および錠剤から調製されてもよい。
このような注射液剤は、例えば、滅菌した注射可能な水性または油性懸濁剤の形態であってもよい。この懸濁剤は、好適な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween 80)および懸濁化剤を使用して、当技術分野において公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌した注射可能な調製物は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌した注射可能な液剤または懸濁剤、例えば、1,3-ブタンジオール中の液剤であってもよい。使用され得る許容される媒体および溶媒には、マンニトール、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油が、溶媒または懸濁化媒体として通常使用される。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性の固定油が使用され得る。脂肪酸、例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体は、注射可能物の調製に有用であり、同様に、天然の薬学的に許容される油、例えばオリーブ油またはヒマシ油、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンも有用である。これらの油液剤または懸濁剤は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤も含有し得る。
本発明の薬学的組成物は、経直腸投与用の坐剤の形態で投与され得る。室温では固体であるが直腸温度では液体であり、従って直腸中において融解し活性成分を放出する好適な非刺激性賦形剤と、本発明の化合物を混合することによって、これらの組成物が調製され得る。このような材料としては、カカオバター、蜜ろう、および、ポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の薬学的組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。このような組成物は、薬学的製剤の技術分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の好適な防腐剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当技術分野において公知の他の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、食塩水中の液剤として調製され得る。例えば、Alexza Molecular Delivery Corporationへ譲渡された、Rabinowitz JDおよびZaffaroni AC、米国特許第6,803,031号を参照のこと。
本発明の薬学的組成物の局所投与は、所望の治療が局所適用によって容易にアクセス可能な領域または器官に関係する場合、特に有用である。皮膚への局所適用について、薬学的組成物は、担体中に懸濁または溶解された活性成分を含有する、好適な軟膏剤で製剤化されるべきである。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、鉱油、液体石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、および水が挙げられるが、これらに限定されない。または、薬学的組成物は、担体中に懸濁化または溶解された活性化合物を含有する、好適なローションまたはクリームで製剤化され得る。好適な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬学的組成物はまた、経直腸坐剤製剤によってまたは好適な浣腸製剤で、下部腸管へ局所的に適用され得る。局所的経皮パッチおよびイオン導入投与もまた、本発明中に含まれる。
本治療の適用は、関心対象の部位で投与されるように、局所的であり得る。関心対象の部位で本組成物を提供するために、注射、カテーテル、トロカール、投射物、プルロニックゲル、ステント、持続的薬物放出ポリマー、または内部アクセスを提供する他のデバイスの使用などの、種々の技術が使用され得る。
別の態様において、本発明の組成物は、第2治療剤をさらに含む。第2治療剤は、VX-770と同様の作用機構を有する化合物と共に投与されると有利な特性を有することが公知であるかまたは有利な特性を示す任意の化合物または治療剤より選択され得る。
好ましくは、第2治療剤は、嚢胞性線維症、遺伝性肺気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固線維素溶解欠損症、例えば、プロテインC欠損症、1型遺伝性血管性浮腫、脂質処理欠損症、例えば、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン症、無βリポタンパク質血症、リソソーム蓄積症、例えば、I細胞病/偽性ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ/テイ‐サックス、クリグラー−ナジャII型、多発性内分泌腺症/高インスリン血症、糖尿病、ラロン型小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノーシスCDG1型、遺伝性肺気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、ACT欠損症、尿崩症(DI)、ニューロフィジン性DI、腎性DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッハー病、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、いくつかのポリグルタミン神経障害、例えば、ハンチントン、脊髄小脳失調症I型、脊髄および延髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、および筋緊張性ジストロフィー;ならびに海綿状脳症、例えば、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病、ファブリー病、シュトロイスラー・シャインカー症候群、COPD、眼球乾燥疾患、および、シェーグレン病を含む様々な状態の治療において有用な薬剤である。
一つの態様において、第2治療剤は、嚢胞性線維症の治療において有用な薬剤である。
一つの態様において、第2治療剤は、VX-809(ルマカフトール(lumacaftor))またはVX-661である。
別の態様において、本発明は、本発明の化合物と、一つまたは複数の任意の上記第2治療剤とを含む個別の投与形態であって、化合物および第2治療剤が互いに結び付けられている投与形態を提供する。用語「互いに結び付けられている」は、本明細書において使用される場合、個別の投与形態が一緒に(互いに24時間未満内に、連続的に、または同時に)販売および投与されるように意図されることが容易に明らかであるように、個別の投与形態が、一緒にパッケージングされているかまたはそうでなければ互いに結合されていることを意味する。
本発明の薬学的組成物中において、本発明の化合物は有効量で存在する。本明細書において使用される場合、用語「有効量」は、適切な投与計画で投与された場合に対象の障害を治療するのに十分な量を指す。
動物およびヒトについての投与量(ミリグラム/体表面の平方メートルに基づく)の相互関係は、Freireich et al., Cancer Chemother. Rep, 1966, 50: 219に記載されている。体表面積は、対象の身長および体重から近似的に決定され得る。例えば、Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardsley, N. Y., 1970, 537を参照のこと。
一つの態様において、本発明の化合物の有効量は、一回の治療当たり、約0.02〜2500 mgの範囲であり得る。より具体的な態様においては、一回の治療あたり、約0.2〜1250 mg、または約0.4〜500 mg、または最も具体的には2〜250 mgの範囲である。治療は、典型的には一日に1〜2回実施される。一つの態様において、本発明の化合物は毎日二回投与され、一回当たりの量は50〜300 mgである。一つの態様において、本発明の化合物は毎日一回投与され、その量は100〜500 mgである。前記の態様において、化合物は任意で第2の薬剤と共に投与される。第2の薬剤の例としては、ルマカフトールまたはVX-661などのCFTRコレクタが挙げられる。該化合物が任意に第2の薬剤と共に投与される一部の態様において、毎日2回投与される化合物の量は毎回100 mg〜300 mg、例えば毎回150 mg〜250 mgである。該化合物が任意に第2の薬剤と共に投与される他の態様において、毎日3回投与される化合物の量は、毎回100 mg〜300 mg、例えば毎回150 mg〜250 mgである。
有効用量は、当業者によって認識されるように、治療される疾患、疾患の重篤度、投与経路、対象の性別、年齢および全般的な健康状態、賦形剤の使用、他の薬剤の使用などの他の治療的処置との併用の可能性、ならびに治療を行う医師の判断によっても異なる。
第2治療剤を含む薬学的組成物における第2治療剤の有効量は、その薬剤だけを使用する単剤療法計画において通常使用される投与量の約20%〜100%である。好ましくは、有効量は、通常の単剤療法用量の約70%〜100%である。これらの第2治療剤の通常の単剤療法投与量は、当技術分野において周知である。例えば、Wells et al, eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000);PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)を参照のこと;これらの参考文献の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
上記で参照された第2治療剤のいくつかは本発明の化合物と相乗的に作用することが予想される。これが生じる場合、それによって、第2治療剤および/または本発明の化合物の有効投与量を、単剤療法において必要とされる量よりも減らすことができる。これは、第2治療剤もしくは本発明の化合物のいずれかの毒性副作用の最小化、効能の相乗的改善、投与もしくは使用の容易さの改善、および/または化合物調製もしくは製剤化の総費用の低減という利点を有する。
治療方法
別の態様において、本発明は、感染した細胞内のCFTRの活性を増強する方法であって、そのような細胞を本明細書の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と接触させる工程を含む方法を提供する。
別の態様によれば、本発明は、その必要がある対象においてVX-770によって有利に治療される疾患を治療する方法であって、本発明の化合物または組成物の有効量を対象に投与する工程を含む方法を提供する。1つの態様において、対象は、そのような治療を必要とする患者である。このような疾患には、嚢胞性線維症、遺伝性肺気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固線維素溶解欠損症、例えば、プロテインC欠損症、1型遺伝性血管性浮腫、脂質処理欠損症、例えば、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン症、無βリポタンパク質血症、リソソーム蓄積症、例えば、I細胞病/偽性ハーラー、ムコ多糖症、サンドホフ/テイ‐サックス、クリグラー−ナジャII型、多発性内分泌腺症/高インスリン血症、糖尿病、ラロン型小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノーシスCDG1型、遺伝性肺気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、ACT欠損症、尿崩症(DI)、ニューロフィジン性DI、腎性DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェウス・メルツバッハー病、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、いくつかのポリグルタミン神経障害、例えば、ハンチントン、脊髄小脳失調症I型、脊髄および延髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、および筋緊張性ジストロフィー;ならびに海綿状脳症、例えば、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病、ファブリー病、シュトロイスラー・シャインカー症候群、COPD、眼球乾燥疾患、および、シェーグレン病が含まれる。
一つの態様において、本発明の化合物は、嚢胞性線維症の治療を必要とする患者などの対象における嚢胞性線維症を治療するために用いられる。1つの態様において、本発明の化合物は、COPDの治療を必要とする患者などの対象におけるCOPDを治療するために用いられる。前述のいずれかの態様の一例において、化合物は経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与される。また、前述のいずれかの態様の別の例において、化合物は経口投与される。
別の態様において、上記の任意の治療方法は、1つまたは複数の第2治療剤を、それを必要とする対象へ共投与する工程をさらに含む。第2治療剤は、VX-770との共投与について有用であることが公知である任意の第2治療剤より選択され得る。第2治療剤の選択は、治療される特定の疾患または状態にも依存する。本発明の方法において使用され得る第2治療剤の例は、本発明の化合物と第2治療剤とを含む組み合わせ組成物中における使用について上述したものである。
具体的には、本発明の併用療法は、下記の状態(適応症の後の括弧内に特定の第2治療剤を示した)の治療のため、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と第2治療剤とを、それを必要とする対象に共投与する工程を含む:。
用語「共投与される」は、本明細書において使用される場合、第2治療剤が、単回投与形態(例えば、本発明の化合物と上述の第2治療剤とを含む本発明の組成物)の一部として、または複数の個別の投与形態として、本発明の化合物と一緒に投与されてもよいことを意味する。あるいは、追加の薬剤は、本発明の化合物の投与前、投与と同時、または投与後に投与されてもよい。このような併用療法治療において、本発明の化合物および第2治療剤の両方は、通常の方法によって投与される。対象への、本発明の化合物と第2治療剤との両方を含む本発明の組成物の投与は、治療過程における別の時点での該対象への、同一の治療剤、任意の他の第2治療剤、または任意の本発明の化合物の別々の投与を排除しない。
これらの第2治療剤の有効量は、当業者に周知であり、投与についてのガイダンスは、本明細書において参照される特許および公開された特許出願において、ならびにWells et al, eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000);PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)、および他の医学書において見ることができる。しかしながら、第2治療剤の最適な有効量範囲を決定することは、十分に当業者の権限内にある。
第2治療剤が対象へ投与される、本発明の一態様において、本発明の化合物の有効量は、第2治療剤が投与されない場合のその有効量よりも少ない。別の態様において、第2治療剤の有効量は、本発明の化合物が投与されない場合のその有効量よりも少ない。このようにして、高用量のいずれかの薬剤に関連する望ましくない副作用が最小化され得る。他の潜在的な利点(非限定的に、投与計画の改善および/または薬剤費の低減を含む)は、当業者に明らかであろう。
さらに別の局面において、本発明は、対象における上述の疾患、障害、または症状の治療または予防用の、単一組成物または個別の投与形態としての、医薬の製造における、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩単独の使用、または1つまたは複数の上述の第2治療剤との併用を提供する。本発明の別の局面は、対象における、本明細書に記載される疾患、障害、またはその症状の治療または予防において使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩である。
実施例1:N-(2,4-ジ-(tert-ブチル-d 9 )-3,6-d 2 -5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物110)の合成
下記スキーム5に概説するとおり、化合物110を調製した。
スキーム5. 化合物110の調製
工程1. 2,4-ジ-(tert-ブチル-d 9 )-3,5,6-d 3 -フェノール(4a)。塩化tert-ブチルの代わりに塩化tert-ブチル-d9を使用し、2,4-ジ-tert-ブチル-3,5-d2-フェノールの合成を説明した手順に従って、中間体4aを調製した(Kurahashi, T.; Hada, M.; Fujii, H. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 12394-12405)。フェノール-d6(459 mg、4.59 mmol、99原子%D、Sigma-Aldrich)および塩化tert-ブチル-d9(2.50 mL、23.0 mmol、98原子%D、Cambridge Isotope Laboratories Inc.)の1,2-ジクロロエタン(10 mL)溶液にReBr(CO)5(19.0 mg、0.0459 mmol)を加えた。反応混合物を85℃で15時間攪拌し、その時点で追加の塩化tert-ブチル-d9(2.50 mL、23.0 mmol、98原子%D、Cambridge Isotope Laboratories Inc.)およびReBr(CO)5(19.0 mg、0.0459 mmol)を加えた。85℃で2時間撹拌を継続した後、混合物を室温まで冷まし、真空下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(SiO2、30%CH2Cl2/ヘプタン)で精製することにより、4a(0.789 g、収率76%)を淡黄色油として得た。MS(ESI)228.1[(M+H)+]。
工程2. 炭酸2,4-ジ-(tert-ブチル-d 9 )-3,5,6-d 3 -フェニルメチル(20)。4a(2.72 g、12.0 mmol)、トリエチルアミン(3.33 mL、23.9 mmol)、およびN,N-ジメチルアミノピリジン(73.0 mg、0.598 mmol)のCH2Cl2(30.0 mL)溶液を0℃にしたものに、クロロギ酸メチル(1.38 mL、17.9 mmol)を加えた。反応混合物を室温で15時間攪拌し、次に10%酢酸エチル/ヘプタンで希釈し、これをシリカプラグに通して濾過した。次にシリカプラグを追加の10%酢酸エチル/ヘプタンで洗浄した。濾液を混合し、真空下で濃縮することにより、20(2.40 g、収率70%)を淡黄色油として得、これについてさらなる精製は行わずに次の工程で使用した。
工程3. 2,4-ジ-(tert-ブチル-d 9 )-3,6-d 2 -5-ニトロフェノール(21)。20(2.40 g、8.41 mmol)の硫酸(1.00 mL)溶液を0℃にしたものに、硫酸および硝酸の1:1混合物(2.00 mL)を滴下して加えた。次に反応混合物を室温で2時間攪拌した後、勢いよく攪拌しながら氷水にゆっくりと加えた。得られたスラリーを酢酸エチル(3 x 100 mL)で抽出し、混合した有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮することにより、位置異性体の混合物を含む琥珀色の油を得た。次にこの粗精製油をMeOH(50 mL)に入れ、KOH(1.54 g、27.5 mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間攪拌した後、濃塩酸を用いてpH=2まで酸性化させた。得られた溶液をジエチルエーテル(3 x 100 mL)で抽出し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、濃縮した。次に残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、0〜5%酢酸エチル/ヘプタン)で精製し、21(526 mg、23%)を淡黄色固体として得た。MS(ESI)270.3[(M-H)-]。
工程4. 5-アミノ-2,4-ジ-(tert-ブチル-d 9 )-3,6-d 2 -フェノール(22)。21(526 mg、1.94 mmol)およびギ酸アンモニウム(489 mg、7.75 mmol)のエタノール(25.0 mL)溶液を加熱還流させた。この時点で10%Pd/C(250 mg、50%湿重量)を少量ずつ加え、反応混合物を2時間、還流下攪拌した。次に混合物を室温まで冷まし、THFで希釈し、Celite(登録商標)を通して濾過し、真空下で濃縮することにより、22(473 mg、100%)を黄褐色の固体として得た。MS(ESI)242.4[(M+H)+]。
工程5. N-(2,4-ジ-(tert-ブチル-d 9 )-3,6-d 2 -5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物110)。22(250 mg、1.04 mmol)、4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(23、Matrix Scientificより購入、98.0 mg、0.518 mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(181 μL、1.04 mmol)のDMF(5.00 mL)溶液にHATU(197 mg、0.518 mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌し、次に飽和NaHCO
3で希釈し、酢酸エチル(3 x 50 mL)で抽出した。混合した有機抽出液を水(3 x 20 mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空下で乾燥させた。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0-70%酢酸エチル/ヘプタン)により精製することにより、化合物110(77.0 mg、収率36%)を白色固体として得た。
*7.10 ppmにおける
1H NMRシグナルは、アリールの二つの重水素化位置のうちの一つにおける重水素の組み込みが約80%であることを示す。7.20 ppmおよび1.37 ppmにシグナルが無いことは、残りの重水素化位置における組み込みレベルが高い(>95%)ことを示す。
実施例2:N-(2-(tert-ブチル)-4-(tert-ブチル-d 9 )-6-d-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物125)の合成
下記スキーム6に概説するとおり、化合物125を調製した。
スキーム6. 化合物125の調製
工程1. 2-(tert-ブチル-d 9 )-4-(tert-ブチル)-6-d-フェノール(7)。4-tert-ブチル-フェノール(3.43 g、22.7 mmol)およびtert-ブチルアルコール-d10(3.00 mL、31.8 mmol、98原子%D、Cambridge Isotope Laboratories Inc.)のジクロロメタン(40.0 mL)溶液にD
2SO
4(1.50 mL、99.5原子%D、Sigma-Aldrich)を加えた。反応混合物を室温で15時間攪拌した後、水で希釈し、ジクロロメタン(3 x 100 mL)で抽出した。有機層を混合し、これを飽和NaHCO
3で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過後、真空下で濃縮した。得られた油をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0〜15%酢酸エチル/ヘプタン)で精製することにより、7(4.04 g、収率83%)を透明の油として得た。
工程2. 炭酸2-(tert-ブチル-d 9 )-4-(tert-ブチル)-6-d-フェニルメチル(8)。7(4.04 g、18.8 mmol)、トリエチルアミン(5.24 mL、37.6 mmol)、およびN,N-ジメチルアミノピリジン(115 mg、0.940 mmol)のCH
2Cl
2(40.0 mL)溶液を0℃にしたものに、クロロギ酸メチル(2.17 mL、28.2 mmol)を加えた。反応混合物を室温で15時間攪拌し、追加のトリエチルアミン(1.30 mL、9.33 mmol)およびクロロギ酸メチル(0.550 mL、7.15 mmol)を加えた。更に一時間攪拌した後、反応混合物を10%酢酸エチル/ヘプタンで希釈し、これをシリカプラグに通して濾過した。次にシリカプラグを追加の10%酢酸エチル/ヘプタンで洗浄した。濾液を混合し、真空下で濃縮することにより8(4.69 g、収率91%)を淡黄色油として得、これについてさらなる精製は行わずに次の工程で使用した。
工程3. 2-(tert-ブチル-d 9 )-4-(tert-ブチル)-6-d-5-ニトロフェノール(9)。8(4.69 g、17.2 mmol)の硫酸(2.00 mL)溶液を0℃にしたものに、硫酸および硝酸の1:1混合物(4.00 mL)を滴下して加えた。次に反応混合物を室温で2時間攪拌した後、勢いよく攪拌しながら氷水にゆっくりと加えた。得られたスラリーを酢酸エチル(3 x 100 mL)で抽出し、混合した有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮することにより、位置異性体の混合物を含む琥珀色の油を得た。この粗精製油をMeOH(100 mL)に入れ、KOH(3.50 g)を加えた。反応混合物を室温で2時間攪拌した後、濃塩酸を用いてpH=2まで酸性化させた。得られた溶液をジエチルエーテル(3 x 100 mL)で抽出し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、濃縮した。次に残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、0〜5%酢酸エチル/ヘプタン)で精製し、9(1.33 g、30%)を淡黄色固体として得た。MS(ESI)260.2[(M-H)-]。
工程4. 5-アミノ-2-(tert-ブチル-d 9 )-4-(tert-ブチル)-6-d-フェノール(10)。9(1.33 g、5.11 mmol)およびギ酸アンモニウム(1.29 g、20.4 mmol)のエタノール(60.0 mL)溶液を加熱還流させた。この時点で10%Pd/C(650 mg、50%湿重量)を少量ずつ加え、反応混合物を2時間、還流下攪拌し続けた。次に反応混合物を室温まで冷まし、THFで希釈し、Celite(登録商標)を通して濾過し、真空下で濃縮することにより、10(1.19 g、100%)をピンク色の固体として得た。MS(ESI)232.3[(M+H)+]。
工程5. N-(2-(tert-ブチル)-4-(tert-ブチル-d 9 )-6-d-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物125)。10(892 mg、3.87 mmol)、4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(11、Matrix Scientificより購入、366 mg、1.93 mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(674 μL、3.87 mmol)のDMF(20.0 mL)溶液にHATU(734 mg、1.93 mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌し、次に飽和NaHCO
3で希釈し、酢酸エチル(3 x 50 mL)で抽出した。混合した有機抽出液を水(3 x 20 mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空下で乾燥させた。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0〜70%酢酸エチル/ヘプタン)で精製することにより、125(277 mg、収率36%)を白色固体として得た。
*7.09 ppmにおける1H NMRシグナルは、二つのアリール位のうちの一つにおける重水素の組み込みが約70%であることを示す。
実施例3:N-(2-(tert-ブチル)-4-(tert-ブチル-d 9 )-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物106)の合成
下記スキーム7に概説するとおり、化合物106を調製した。
スキーム7. 化合物106の調製
工程1. 5-アミノ-2-(tert-ブチル-d 9 )-4-(tert-ブチル)-フェノール(12)。実施例2に開示されているとおりに調製した化合物10(298 mg、1.29 mmol)を5M HClを含む2-プロパノール(20 mL)に溶解し、反応混合物を室温で15時間攪拌した。これを真空下で濃縮し、再度5M HClを含む2-プロパノール(20 mL)に入れた。さらに室温で15時間攪拌した後、反応混合物を真空下で濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL)で希釈した。得られた水溶液は、ジクロロメタン(3 x 50 mL)で抽出した。有機層を混合し、これを乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過後、真空下で濃縮することにより、12(240 mg、81%)をピンク色の固体として得た。
工程2. N-(2-(tert-ブチル)-4-(tert-ブチル-d 9 )-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(106)。12(240 mg、1.04 mmol)、4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(11、Matrix Scientificより購入、99 mg、0.521 mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(181μL、1.04 mmol)のDMF(6.00 mL)溶液にHATU(198 mg、0.521 mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌し、次に飽和NaHCO
3で希釈し、酢酸エチル(3 x 50 mL)で抽出した。混合した有機抽出液を水(3 x 20 mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空下で濃縮させた。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0-70%酢酸エチル/ヘプタン)で精製することにより、106(80 mg、収率38%)を白色固体として得た。
実施例4:N-(2,4-ジ-(tert-ブチル-d 9 )-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物105)の合成
下記スキーム5に概説するとおり、化合物105を調製した。
スキーム8. 化合物105の調製
工程1.2,4,6-d 3 -フェノール-OD(32)。封管中で、3.5M DClのD
2O溶液(200 mL)にフェノール(20.0 g、212 mmol)を加えた。混合物を140℃で72時間攪拌後、室温へ冷却し、CH
2Cl
2(3 x 100 mL)で抽出した。混合した有機層を乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮することにより、淡いピンク色の固体を得た(19.2 g、収率93%)。
(6.76 ppmのピークは、2位、4位、および6位の水素原子に相当する。従って、0.14という積分値は、得られた物質のこれらの位置における重水素の組み込みが〜95%であることを示す。)
工程2. 2-d-4,6-ビス(1,1,1,3,3,3-d 6 -2-(メチル-d 3 )プロパン-2-イル)フェノール(33)。32(2.08 g、21.2 mmol)およびtert-ブチルアルコール-d10(5.00 mL、53.0 mmol、98原子%D、Cambridge Isotope Laboratories, Inc.)のジクロロメタン(40.0 mL)溶液にD
2SO
4(1.71 mL、99.5原子%D、Sigma-Aldrich)を加えた。反応混合物を室温で15時間攪拌した後、水で希釈し、ジクロロメタン(3 x 100 mL)で抽出した。有機層を混合し、これを飽和NaHCO
3で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過後、真空下で濃縮した。得られた油をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0〜15%酢酸エチル/ヘプタン)で精製することにより、33(1.45 g、収率30%)を透明の油として得た。
(積分値が0.5Hである6.67 ppmのピークは、反応を行う過程で2位において約50%Dまで同位体が減少したことを示す。1.28 ppmおよび1.17 ppmのピークは、t-ブチル基の水素含有量を示す。従って、0.18および0.21という積分値は、いずれの位置においても約98%のDの組み込みを示す。)
工程3. メチル(2-d-4,6-ビス(1,1,1,3,3,3-d 6 -2-(メチル-d 3 )-プロパン-2-イル)フェニル)カルボネート(34)。33(1.45 g、6.43 mmol)、トリエチルアミン(2.24 mL、16.1 mmol)、およびN,N-ジメチルアミノピリジン(40.0 mg、0.322 mmol)のCH2Cl2(15.0 mL)溶液を0℃にしたものに、クロロギ酸メチル(0.990 mL、12.9 mmol)を加えた。反応混合物を室温で15時間攪拌した後、10%酢酸エチル/ヘプタンで希釈し、これをシリカプラグに通して濾過した。次にシリカプラグを追加の10%酢酸エチル/ヘプタンで洗浄した。濾液を混合し、真空下で濃縮することにより34(1.78 g、収率98%)を淡黄色油として得、これを精製せずに次の工程で使用した。
工程4. 2-d-4,6-ビス(1,1,1,3,3,3-d 6 -2-(メチル-d 3 )-プロパン-2-イル)-3-ニトロフェノール(35)。34(1.78 g、6.28 mmol)の硫酸(1.00 mL)溶液を0℃にしたものに、硫酸および硝酸の1:1混合物(2.00 mL)を滴下して加えた。次に反応混合物を室温で2時間攪拌した後、勢いよく攪拌しながら氷水にゆっくりと加えた。得られたスラリーを酢酸エチル(3 x 100 mL)で抽出し、混合した有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮することにより、位置異性体の混合物を含む琥珀色の油を得た。この粗精製油をMeOH(20 mL)に入れ、KOH(664 mg、11.8 mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間攪拌した後、濃塩酸を用いてpH=2まで酸性化させた。得られた溶液をジエチルエーテル(3 x 100 mL)で抽出し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、濃縮した。次に残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、0〜5%酢酸エチル/ヘプタン)で精製し、35(319 mg、19%)を淡黄色固体として得た。MS(ESI)269.3[(M-H)-]。
工程5. 3-アミノ-2-d-4,6-ビス(1,1,1,3,3,3-d 6 -2-(メチル-d 3 )-プロパン-2-イル)フェノール(36)。35(319 mg、1.18 mmol)およびギ酸アンモニウム(298 mg、4.72 mmol)のエタノール(20.0 mL)溶液を加熱還流させた。この時点で10%Pd/C(160 mg、50%湿重量)を少量ずつ加え、反応混合物を2時間、還流下攪拌し続けた。次に反応混合物を室温まで冷まし、THFで希釈し、Celite(登録商標)を通して濾過し、真空下で濃縮することにより、36(279 mg、98%)を黄褐色の固体として得た。MS(ESI)241.3[(M+H)+]。
工程6. 3-アミノ-4,6-ビス(1,1,1,3,3,3-d 6 -2-(メチル-d 3 )-プロパン-2-イル)フェノール(37)。 化合物36(279 mg、1.16 mmol)を5M HClを含む2-プロパノール(20 mL)に溶解し、反応混合物を室温で15時間攪拌した。次にこれを真空下で濃縮し、再度5M HClを含む2-プロパノール(20 mL)に入れた。さらに15時間室温で攪拌した後、反応混合物を真空下で濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL)で希釈した。得られた水溶液は、ジクロロメタン(3 x 50 mL)で抽出した。有機層を混合し、これを乾燥させ(Na2SO4)、濾過後、真空下で濃縮することにより、37(255 mg、91%)をピンク色の固体として得た。MS(ESI)240.3[(M+H)+]
工程7. N-(2,4-ビス(1,1,1,3,3,3-d 6 -2-(メチル-d 3 )-プロパン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(105)。37(255 mg、1.06 mmol)、4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(Matrix Scientificより購入、100 mg、0.532 mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(185 μL、1.06 mmol)のDMF(6.00 mL)溶液にHATU(202 mg、0.532 mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌し、次に飽和NaHCO
3で希釈し、酢酸エチル(3 x 50 mL)で抽出した。混合した有機抽出液を水(3 x 20 mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空下で乾燥させた。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0-70%酢酸エチル/ヘプタン)で精製することにより、105(92 mg、収率42%)を白色固体として得た。
(1.32 ppmおよび1.30 ppmのピークは、t-ブチル基の水素含有量を示す。従って、0.20および0.18という積分値は、いずれの位置においても約98%のDの組み込みを示す。)MS(ESI)411.4[(M+H)
+]。
実施例5a:化合物110の代謝安定性の評価―ヒトCYP3A4 Supersomes(商標)
SUPERSOMES(商標)アッセイ。DMSO中、試験化合物(化合物110およびイバカフトル)の7.5 mMの原液を調製した。7.5 mMの原液をアセトニトリル(ACN)で50 mMに希釈した。ヒトCYP3A4 supersomes(商標)(1000 pmol/mL、BD Gentest(商標)Products and Servicesより購入)は、3 mM MgCl2を含むpH7.4の0.1 Mリン酸カリウム緩衝液中で62.5 pmol/mLに希釈した。希釈したsupersomesをポリプロピレン製の96穴プレートのウェルにトリプリケートで加えた。50 mMの試験化合物を10 mLずつsupersomesに分注し、この混合物を予め10分間温めた。予め温めておいたNADPH溶液を加えることにより反応を開始させた。最終的な反応物の体積は0.5 mLであり、3 mM MgCl2を含むpH7.4の0.1 Mリン酸カリウム緩衝液中に50 pmol/mLのCYP3A4 supersomes(商標)、1.0 mMの試験化合物、および2 mMのNADPHを含んでいた。反応混合物を37℃でインキュベートし、0、5、10、20、および30分の時点で50 mLずつ抜き取り、内部標準と共に氷冷ACN 50 mLを含む96穴プレートに加え、反応を停止させた。プレートを4℃で20分間保存した後、まずプレートのウェルに100 mLの水を加え、次に沈殿したタンパク質のペレット形成の為の遠心分離を行った。上清を別の96穴プレートに移し、Applied Bio-systems API 4000質量分析計を用いたLC-MS/MSにより親化合物の残量を分析した。
データ解析:試験化合物のインビトロ半減期(t1/2値)を、LN(親化合物の残量%)対インキュベーション時間の関係の直線回帰の傾きから算出した。
インビトロt1/2=0.693/k、k=−[親化合物の残量%(ln)対インキュベーション時間の直線回帰の傾き]
図1は、ヒトチトクロムP450特異的SUPERSOMES(商標)におけるイバカフトルおよび化合物110について、残存している親化合物の割合を継時的に表すプロットを示す。t1/2値および平均t1/2値の増加率(%Δ)を下記の表4に示す。
表4は、アッセイにおいて化合物110がイバカフトルよりも55%長い半減期を有することを示す。
実施例5b:化合物105および106の代謝安定性の評価―ヒトCYP3A4 Supersomes(商標)
SUPERSOMES(商標)アッセイ。DMSO中、試験化合物(化合物105、106、およびイバカフトル)の7.5 mMの原液を調製した。7.5 mMの原液をアセトニトリル(ACN)で50 mMに希釈した。ヒトCYP3A4 supersomes(商標)(1000 pmol/mL、BD Gentest(商標)Products and Servicesより購入)は3 mM MgCl2を含むpH7.4の0.1 Mリン酸カリウム緩衝液中で62.5 pmol/mLに希釈した。希釈したsupersomesをポリプロピレン製の96穴プレートのウェルにトリプリケートで加えた。50 mMの試験化合物を10 mLずつsupersomesに分注し、この混合物を予め10分間温めた。予め温めておいたNADPH溶液を加えることにより反応を開始させた。最終的な反応物の体積は0.5 mLであり、3 mM MgCl2を含むpH7.4の0.1 Mリン酸カリウム緩衝液中に50 pmol/mLのCYP3A4 supersomes(商標)、1.0 mMの試験化合物、および2 mMのNADPHを含んでいた。反応混合物を37℃でインキュベートし、0、5、10、20、および30分の時点で50mLずつ抜き取り、内部標準と共に氷冷ACN 50 mLを含む96穴プレートに加え、反応を停止させた。プレートを4℃で20分間保存した後、まずプレートのウェルに100 mLの水を加え、次に沈殿したタンパク質のペレット形成の為の遠心分離を行った。上清を別の96穴プレートに移し、Applied Bio-systems API 4000質量分析計を用いたLC-MS/MSにより親化合物の残量を分析した。
データ解析:試験化合物のインビトロ半減期(t1/2値)を、LN(親化合物の残量%)対インキュベーション時間の関係の直線回帰の傾きから算出した。
インビトロt1/2=0.693/k、k=−[親化合物の残量%(ln)対インキュベーション時間の直線回帰の傾き]
ヒトチトクロムP450特異的SUPERSOMES(商標)におけるイバカフトルならびに化合物105および106について、t1/2値および平均t1/2値の増加率(%Δ)を下記の表5に示す。
表5は、アッセイにおいて化合物106がイバカフトルよりも41%長い半減期を有し、化合物105がイバカフトルよりも49%長い半減期を有することを示す。
実施例6:化合物105および106のラットにおける薬物動態の評価
イバカフトル、化合物105、および化合物106を別々にラットに経口経管栄養(PO)として投与した。化合物はそれぞれ三匹のラットに10 mg/kgの用量で投与された(N=ラット3匹/化合物;合計9匹のラットを実験に使用)。化合物はそれぞれ濃度が2 mg/mLとなるよう100% PEG400中で調合された。血液サンプルは各ラットより投与後15分および30分、ならびに1、2、4、6、8、12、24、48および72時間の時点で回収した。血液サンプルを遠心分離し、血漿を得た。血漿サンプルを用いて、LC-MS/MSにより各時点での投与化合物の濃度を分析した。各化合物の定量化の限度は1 ng/mLであった。
各化合物についてのラットのt1/2値(WinNonlinソフトウェアを使用した非コンパートメント解析により決定されたもの)を下記の表6に表す。
表6は、化合物106がイバカフトルよりも26%長い平均半減期を有し、化合物105がイバカフトルよりも42%長い平均半減期を有することを示す。
さらに説明はしないが、当業者は、前述の説明および例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を製造および使用し、特許請求される方法を実施することができると考えられる。前述の議論および実施例は、ある好ましい態様の詳細な説明を示すにすぎないことが理解されるべきである。本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々の改変物および等価物が作製され得ることが、当業者に明らかであろう。