以下に説明する設備機器の管理システムは、図2に示す構成を備える。ただし、この構成例は一例であって、後述するように、管理装置10の台数や種類は選択可能であり、上位装置20の構成も図示例に限定されない。また、本実施形態で説明する設備機器の管理システムは、設備機器30の回路数が100〜1000程度である中小規模の施設で利用することを想定している。この規模の施設は、延床面積が1〜2m2程度であるオフィスビル、商業ビルなどに多く見られる。
設備機器30は、照明設備31、給水設備32、排水設備33、空調設備34の4種類から選択される。4種類の設備機器30は、施設の施工時において、配線(先行配線)の敷設に伴って配線に接続され、交換されるまでは継続して配線に接続される。これらの設備機器30は、配線に対する接続と離脱とが業者により行われる。なお、設備機器30の種類にとくに制限はない。
管理装置10は、図1に示すように、設備機器30に接続される要素装置(コンポーネント)11が収納されたボックス12を備える。要素装置11は、設備機器30の動作状態に関する制御と監視との少なくとも一方を行うために用いる装置であり、給電路に設けられる装置、マンマシンインターフェイスとなる装置を含む。以下では、「制御」と「監視」との少なくとも一方を行うことを「管理」を行うという。
1種類の設備機器30に対して、複数種類の要素装置11が必要である。ボックス12は、設備機器30の種類に応じた複数の要素装置11を収納する。ボックス12は、他装置を接続するためのインターフェイス部(以下、「I/F部」という)13を備える。I/F部13は、上位装置20と他の管理装置10との少なくとも一方と通信するように構成される。また、I/F部13は、通信線を接続するための接続口(端子またはコネクタ)を備えている。
設備機器30の制御は、設備機器30の運転および停止の制御のほか、運転中の動作状態の制御を含む場合もある。運転中の動作状態は、照明設備31であれば調光、調色などを意味し、給水設備32あるいは排水設備33であればポンプの流量などを意味し、空調設備34であれば設定温度などを意味する。設備機器30の監視は、制御を指示した設備機器30からの応答、設備機器30の動作状態の異常の有無などを意味する。
ボックス12は、金属または合成樹脂を用いて形成され、施設を構成する建物の壁面などに取り付けられる。ボックス12は、壁面などに固定されるボディ(図示せず)と、ボディの前面を覆う扉(図示せず)を備える。要素装置11は、ボディに固定され、ケーブルのような接続部材を介して設備機器30および上位装置20に接続される。
要素装置11は、基本的には、設備機器30の管理を行うためのコントローラと、設備機器30への給電路に挿入されたブレーカと、マンマシンインターフェイス(以下、「MMI」という)とを含む。コントローラは、マイコンに代表されるプログラムに従って動作するプロセッサを備えたデバイスを主なハードウェア要素として備える。MMIは、スイッチと表示灯とを組み合わせた構成、あるいはフラットパネルディスプレイとタッチパネルとを組み合わせた構成が採用される。たとえば、照明設備31に対するMMIは、点灯と消灯とを指示するスイッチと、点灯と消灯との状態を表示する表示灯とがあればよい。また、給水設備32、排水設備33、空調設備34に対するMMIは、設備機器30の動作状態を表示するフラットパネルディスプレイと、動作状態を変更するためのタッチパネルとを備えていることが望ましい。なお、要素装置11の具体的な構成は要旨ではないから説明を省略する。
ボックス12は、施工現場に搬入される前に要素装置11が収納される。ボックス12に収納される要素装置11の個数および種類は工場出荷時に定められている。言い換えると、既製品としての管理装置10を用いて施設ごとの管理システムが構築される。
1個のボックス12に収納される要素装置11の組み合わせは、設備機器30の種類に応じてパッケージ化されている。すなわち、設備機器30が、照明設備31、給水設備32、排水設備33、空調設備34のうちのいずれであるかに応じて要素装置11の種類が定められ、また、接続される設備機器30の台数に応じて要素装置11の台数が定められる。
ボックス12に収納される要素装置11の種類および台数は、施設ごとに定められるのではなく、多くの施設で同じボックス12が共通に使用可能となるように定められる。そのため、ボックス12に収納される要素装置11の個数および種類は、種々の施設において利用されている設備機器30の実績に基づいて、種々の施設に適合するように定められている。
さらに、ボックス12は設備機器30の種類ごとに個別に設けられている。つまり、設備機器30の種類ごとに要素装置11が異なるボックス12に収納される。また、設備機器30の台数が多い場合、同種類の設備機器30に複数個のボックス12を設けることが可能である。
要するに、管理装置10は、施設に応じてボックス12に収納する要素装置11を定めるのではなく、あらかじめ標準品として数種類程度が用意されている。そのため、施設で使用する設備機器30に適合する標準品の管理装置10を選択するだけで、当該施設における設備機器30の管理が可能になる。
なお、ボックス12に異なる種類の設備機器30に適合する要素装置11を収納することは可能であるが、ボックス12が大型化する可能性がある。また、ボックス12に収納される要素装置11があらかじめ定められているから、施設で利用される設備機器30の組み合わせに柔軟に対応するには多品種が必要になり、管理コストが増加する可能性がある。
これに対し、本実施形態は、設備機器30の種類ごとに管理装置10が設けられ、同じ種類の設備機器30に関して必要に応じて複数種類の管理装置10が用意されている。たとえば、照明設備31について、8回路用、16回路用、24回路用の3種類、給水設備32のポンプ台数について、1台用、2台用、4台用の3種類、排水設備33のポンプ台数について、1台用、2台用の2種類が用意される。また、給水設備32および排水設備33は、ポンプのモータ容量を用いて区分される。
いま、照明設備31に用いる管理装置10を例にする。ボックス12は、照明設備31のオンオフを制御するリレーを備えた制御端末、MMIとなるスイッチおよび表示灯を備えた操作端末、制御端末および操作端末と通信する伝送ユニットなどを、要素装置11として収納する。また、管理装置10は、照明設備31への給電路に挿入されるブレーカも要素装置11として収納する。
制御端末および操作端末は、集中監視を行う伝送ユニットと専用の信号線を通して通信する。この信号線は2線式であり、伝送ユニットと操作端末と制御端末とがこの信号線を共用する。つまり、伝送ユニットに対する操作端末および制御端末の接続形態はバス型接続になる。伝送ユニットは、制御端末と操作端末とを関係付けており、スイッチが操作されたことを操作端末から通知されると、操作端末に関係付けられた制御端末にリレーのオンまたはオフを指示する。
伝送ユニットは、上位装置20との間で通信可能になっている。すなわち、伝送ユニットは、上位装置20を操作端末および制御端末とみなして通信を行うか、専用のI/F部を用いて上位装置20と通信を行う。伝送ユニットが上位装置20と通信することによって、操作端末および制御端末は、伝送ユニットを通して上位装置20との間で情報の伝送が可能になる。
照明設備31に用いる管理装置10は、伝送ユニットを内蔵する構成と伝送ユニットを内蔵しない構成とが用意されている。この種の伝送ユニットは、たとえば256回路まで管理が可能であるのに対して、管理装置10が管理する回路数は、伝送ユニットで管理可能な回路数に比べて大幅に少ない。専用の信号線は1系統について1台の伝送ユニットを用いるから、施設で用いられる照明設備31の回路数が1つの管理装置10に用意されている回路数を上回る場合、信号線を延長し、操作端末または制御端末の台数を増やせば対応可能である。
このことから、本実施形態では、伝送ユニットは、8回路用の管理装置10のボックス12にのみ収納され、伝送ユニットを収納していないボックス12として、8回路用、16回路用、24回路用の3種類が用意されている。したがって、24回路の照明設備31が必要であれば、伝送ユニットが収納されている8回路用のボックス12と、伝送ユニットが収納されていない16回路用のボックス12との信号線が互いに接続される。
管理装置10のI/F部13は、他装置としての他の管理装置10および上位装置20との間で信号線を接続するように構成されている。なお、伝送ユニットが、信号線とは別経路で上位装置20と通信を行う構成である場合には、後述する第1の通信網NT1の通信線を用いて要素装置11である伝送ユニットと上位装置20とを接続するためのI/F部13が管理装置10に設けられる。
給水設備32、排水設備33、空調設備34に用いられる管理装置10は、伝送ユニット、操作端末、制御端末は備えていないが、設備機器30を管理する装置、ブレーカ、MMIを要素装置11として備える。また、これらの設備機器30に用いられる管理装置10は、他装置を接続するためのI/F部13を備える。
給水設備32、排水設備33、空調設備34に用いられる管理装置10において、I/F部13は、第1の通信網NT1の通信線を通して上位装置20との通信を行う機能を有する。さらに、I/F部13は、管理する設備機器30の台数を増やすために、同種の設備機器30に用いられる管理装置10を接続する機能を有する場合もある。ここに、給水設備32、排水設備33、空調設備34に用いられる管理装置10のI/F部13は、たとえばRS485に準じた規格でシリアル通信を行う。I/F部13がRS485に準じた規格でシリアル通信を行うことは必須ではないが、設備機器30の制御における実績に基づいてこの規格を採用している。
管理装置10と上位装置20とは第1の通信網NT1を通して接続される。第1の通信網NT1は、ボックス12に設けられたI/F部13に接続される。ボックス12に収納された複数個の要素装置11はボックス12の内部で必要に応じて接続され、管理に必要な情報を授受する要素装置11はI/F部13に接続される。
なお、照明設備31に対応した管理装置10が第1の通信網NT1に接続されている場合、管理装置10に設けられた操作端末のスイッチと同様に機能するスイッチ群26を第1の通信網NT1に接続してもよい。また、第1の通信網NT1は、1系統のみに限らず2系統以上であってもよい。図示例は、照明設備31に対応する管理装置10と他の設備機器30に対応する管理装置10とに別系統の通信線を用いている。
上位装置20は、施設を構成する建物のような所定の空間領域において利用される設備機器30を一括して管理する。上位装置20が管理する空間領域は、1つの建物、複数の建物、建物内の1フロア、建物内の1室など、利用者にとって利便性がよいように適宜に設定される。
図2に示す構成例では、上位装置20は、統合管理装置21と警報装置22と管理端末23とを含んでいる。さらに、統合管理装置21は、第2の通信網NT2を通して外部装置24と接続されている。外部装置24は、第2の通信網NT2を通して通信を行う装置であって、センタサーバ241、クライアントとなる端末装置242、時刻合わせなどに用いられる外部システム243などを含む。外部システム243は、クラウドコンピューティングシステムを構築していてもよい。このような外部システム243は、管理装置10および統合管理装置21に対するプログラムおよびデータ、アップデータ、機能を向上させるプログラムおよびデータなどから選択される情報を提供するために用いられる。第1の通信網NT1は、上述したように、シリアル通信を行う通信網であり、第2の通信網NT2は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)を用いて通信が行われる通信網である。
統合管理装置21は、図3に示すように、第1の通信網NT1に接続される第1のI/F部211と、第2の通信網NT2に接続される第2のI/F部212とを備える。さらに、統合管理装置21は、管理装置10からの情報を外部装置24に提示し、外部装置24からの指示を管理装置10に通知する統合処理部213を備える。
統合処理部213は、管理装置10から取得した設備機器30に関する情報を集約して外部装置24に提示する機能と、外部装置24から指示された設備機器30の動作状態に関する情報を管理装置10に通知する機能とを有する。この統合処理部213は、マイコンに代表されるプログラムに従って動作するプロセッサを備えたデバイスを主なハードウェア要素として備える。
この構成により、外部装置24である端末装置242は、統合管理装置21を通して設備機器30の動作状態を監視することが可能になり、また、統合管理装置21を通して設備機器30に動作状態を指示することが可能になる。センタサーバ241は、設備機器30の動作状態の履歴を収集し、また、設備機器30の動作状態をスケジュールに従って指示する。
すなわち、上位装置20は、統合管理装置21を通して管理装置10と通信し、管理装置10から統合管理装置21が取得した設備機器30に関するデータをセンタサーバ241において集約して管理する。また、センタサーバ241および端末装置242は、統合管理装置21を通して、管理装置10に設備機器30の動作を指示するデータを送信する機能も有している。端末装置242の機能については後述する。
図2に示す構成例において、上位装置20として統合管理装置21のほかに、警報装置22が示されている。警報装置22は、第1の通信網NT1を通して管理装置10と接続される。図示例では、給水設備32、排水設備33、空調設備34にそれぞれ対応した管理装置10が警報装置22と接続されている。警報装置22は、管理装置10に設定されているアドレスに対応付けた警報ランプと、警報音を発生するブザーとを備えている。ただし、図2に示す構成例において、警報装置22は省略可能である。
警報装置22は、管理装置10が第1の通信線NT1に送出した信号を受信することによって、警報ランプおよびブザーを動作させる。警報装置22は、管理装置10に対して指示を与えることはなく、管理装置10に設定されているアドレスと警報ランプとが対応付けられる。管理装置10は、設備機器30に異常が生じたときに、異常を報知する異常情報に管理装置10のアドレスを付加して第1の通信網NT1に送出する。警報装置22は、第1の通信網NT1を伝送される信号が異常情報を含む場合に、異常情報に付加された管理装置10のアドレスを用いて所要の警報ランプを点滅させ、同時にブザーを鳴動させる。図示例では、警報装置22から信号を外部に出力し、警報装置22に外部から信号を入力させるために、警報装置22に入出力装置27が接続される。
管理端末23は、ブラウザを搭載したコンピュータであり、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートホンなどから選択される。管理端末23は、統合管理装置21に接続され端末装置242と同様に機能する。なお、図示例では、統合管理装置21に外部入出力器25が接続され、統合管理装置21にスイッチやセンサからの接点入力を与えることが可能であり、また、統合管理装置21からの接点出力を取り出すことが可能になっている。したがって、統合管理装置21の動作に接点入力に応じた条件付けを行うことが可能であり、あるいはまた、統合管理装置21の動作を他装置に通知することが可能になっている。ただし、この構成は要旨ではないから説明を省略する。
図に示す管理システムは、管理装置10に設備機器30が接続され、管理装置10に上位装置20が接続されることにより構築される。管理システムが構築されると、統合管理装置21は、管理装置10と通信することによって設備機器30の監視および制御を行うために必要な情報を収集する。
統合管理装置21は、管理装置10から必要な情報を収集して登録する登録モードと、登録モードで登録された情報を用いて設備機器30の監視および制御を行う通常モードとが選択可能になっている。一方、管理装置10は、管理者、設備機器30の設置場所およい設置日時、設備機器30の管理に用いる設定値などの属性情報が、パーソナルコンピュータのような支援装置を用いて設定される。
管理装置10が保持する情報の例を図4に示す。管理装置10は、ボックス12に収納された要素装置11および要素装置11に接続されている設備機器30に関する構成情報を保持する。構成情報のうち要素装置11に関する情報は、後述するように管理装置10の識別情報から知ることができる。これは、管理装置10の要素装置11がパッケージ化されており、識別情報ごとに要素装置11の種類が決まっているからである。一方、構成情報のうち設備機器30に関する情報は、管理装置10に接続されている設備機器30に応じて支援装置を用いて設定される。
統合管理装置21は、登録モードでは、図5に示すように、管理装置10に設定可能なすべてのアドレスに対するポーリングを行い、管理装置10から返送されるアドレスを受け取る。管理装置10に設定可能なアドレスが1〜99であるとすれば、統合管理装置21は、1〜99のアドレスに対して順にポーリングを行う(P11)。管理装置10は、自身のアドレスが統合管理装置21がポーリングを行ったアドレスに一致すると、管理装置10を識別するための識別情報を統合管理装置21に返送する(P12)。
この識別情報は、設備機器30の種類と、アドレスと、管理装置10の構成とを含む。設備機器30の種類は、照明設備31、給水設備32、排水設備33、空調設備34に区分され、給水設備32は、さらに高置水槽式と圧力タンク式とが区分される。アドレスは、統合管理装置21がポーリングに用いたアドレスである。管理装置10の構成は、上述した回路数、ポンプの台数、ポンプ容量などを示す情報である。識別情報は、これらの情報を組み合わせることにより構成されている。
管理装置10の識別情報は、たとえば、「G−1−4−A」という形式で表される。ここでは、Gは高置水槽式の給水設備32であることを示し、1はアドレスを示す。また、4はポンプが4台であることを示し、Aは大小のポンプ容量のうちの小容量を示す。識別情報がこの形式であることにより、統合管理装置21は、識別情報の先頭の文字によって設備機器30の種類を識別可能であるが、さらに、アドレスの区分によっても設備機器30の種類を識別する。すなわち、アドレスは設備機器30の種類に応じて区分され、たとえば1〜10が高置水槽式の給水設備32、11〜20が圧力タンク式の給水設備32、21〜30が排水設備33などと区分されている。
統合処理部213は、ポーリングに対して管理装置10から応答があると、応答した管理装置10の識別情報を用いて、設備機器30の種類を認識し(P13)、さらに、管理装置10の構成を認識する(P14)。統合処理部213は、設備機器30の種類および管理装置10の構成を認識すると、管理装置10の属性情報を保持するための記憶領域を確保し(P15)、アドレスを指定して管理装置10に属性情報を返送するように要求する(P16)。統合処理部213は、管理装置10が属性情報を返送すると(P17)、確保した記憶領域に受け取った属性情報を保存する(P18)。
統合管理装置21の記憶領域に保存される情報の例を図6に示す。設定値は、高置水槽式の給水設備32であれば、高置水槽の目標水位、ポンプの種類などを含む。
統合管理装置21は、手順P13〜P18の処理を、ポーリングに対して応答したすべての管理装置10に対して繰り返し行う。なお、管理装置10が統合管理装置21にすでに登録されている場合は、手順P13〜P18の処理を行わず、未登録の管理装置10のみについて手順P13〜P18の処理を行うようにしてもよい。統合管理装置21は、登録済みの管理装置10を改めて登録するか、登録済みの管理装置10を無視するかの選択が可能になっていることが、なお好ましい。
このように、上位装置20である統合管理装置21の統合処理部213は、管理装置10から上述のような属性情報を受け取ることによって、設備機器30の運転条件を管理装置10ごとに一括して定める。したがって、統合管理装置21は、後述するスケジュール制御および条件制御などの運転条件も、管理装置10を単位として一括して設定する。
統合管理装置21は、登録モードにおいて管理装置10が登録されると、通常モードに切り替えられ、登録モードで登録された情報を用いて設備機器30の監視および制御を行う。統合管理装置21は、通常モードでは、登録されている管理装置10に対するポーリングを行い、それぞれの管理装置10に設備機器30の動作状態に関する指示を与え、また管理装置10から設備機器30の動作状態に関する情報を取得する。つまり、統合管理装置21は、管理装置10を通して設備機器30の動作状態について制御および監視を行う。
統合管理装置21は、通常モードにおいて、ポーリングを行ったときに応答が得られない管理装置10を第1の通信網NT1から離脱したと判断する。つまり、統合管理装置21は、管理装置10から応答が得られた状態から応答が得られない状態に移行すると、この管理装置10が第1の通信網NT1から離脱したと判断する。ただし、統合管理装置21は、離脱の原因が、管理装置10の撤去によるのか、通信の不通によるのかを判断することはできない。そのため、利用者には管理装置10が第1の通信網NT1から離脱したことのみが通知される。この通知は、具体的には統合管理装置21を通して端末装置242に提示される。
ところで、上位装置20が管理装置10の管理を行うには、端末装置242に管理用の画面を表示することと、管理装置10を通して設備機器30を管理することとが必要である。そのため、統合管理装置21は、管理装置10の種類ごとに、端末装置242に表示する表示内容を定めた表示モジュールと、設備機器30を管理するための管理モジュールとを備える。表示モジュールおよび管理モジュールは、機能別に設けられたプログラムおおびデータであって、必要に応じて利用される。
表示モジュールに規定された表示内容を端末装置242に表示させる技術には、端末装置242に表示用のプログラムを提供する技術と、端末装置242で実行される閲覧用プログラム(ブラウザ)で扱うデータを提供する技術とがある。後者の場合、統合管理装置21の表示モジュールは、端末装置242に対してサーバとして機能し、HTML(Hyper Text Markup Language)などマークアップ言語で記載された情報を提供する。したがって、後者の構成は、端末装置242に閲覧用プログラムを実行する機能があれば、端末装置242の構成に依存することなく、端末装置242によって管理装置10に対する管理を対話的に行うことが可能になる。
通常モードにおいて、端末装置242は、設備機器30の動作状態を画面上に表示することが可能になる。すなわち、表示モジュールにより端末装置242に提示された画面を用いて、端末装置242から所望の設備機器30を指定すると、統合管理装置21は、当該設備機器30に対応した管理装置10に対して属性の送信を要求する。
属性の送信を要求された管理装置10は、要求された時点で保持している設備機器30の情報を統合管理装置21に返送する。この情報は、登録モードにおいてポーリングに対して管理装置10から返送された情報と類似した情報であって、図7のように、アドレス、識別情報、設置場所、設置日時などを含む。
ただし、登録モードでは、属性情報が設定値のような変化しない情報であるが、通常モードでは、属性の送信を要求した時点で管理装置10が保持している情報が属性情報になる。通常モードにおいて統合管理装置21が管理装置10から取得する情報は、時々刻々と更新され、設備機器30の動作状態を反映する。したがって、端末装置242が統合管理装置21を通して属性情報を取得することにより、設備機器30の最新の動作状態を管理することが可能になる。
通常モードにおいて複数の設備機器30の最新の動作状態を管理する場合、端末装置242の画面上にすべての設備機器30の情報を表示すると、設備機器30の台数によっては画面上の情報量が多くなりすぎ、可読性が低下する可能性がある。たとえば、オフィスビルのような建物の各階の設備機器30に関する情報を1画面に表示すると、1画面に表示された情報量が過剰になり可読性が低下する可能性がある。
そのため、本実施形態における表示モジュールは、上位装置20である端末装置242の画面に設備機器30の情報を表示する際に、設備機器30の種類を最上層にした階層を用いる。たとえば、図8に示すように、設備機器30の種類を最上層とし、次階層を建物の階とし、最下層が設備機器30に関する情報となるように、設備機器30の情報が階層化される。図示例では、設備機器30が3階層に階層化されているが、建物の階の次階層を部屋とするなど、さらに多階層に階層化してもよい。ただし、階層が深くなると設備機器30の動作状態が画面に表示されるまでの操作回数が多くなるから、2〜3階層程度に留めることが望ましい。
設備機器30の情報を階層化することにより、端末装置242の画面には、最初は最上層である設備機器30の種類が選択肢として表示される。図示例では、照明設備31、給水設備32、排水設備33、空調設備34の4つの選択肢が表示されている。利用者がいずれかの選択肢を選択すると、次階層の選択肢が画面に表示され、選択肢の選択が促される。このような処理を繰り返すことによって、最終的に最下層に達すると、設備機器30の情報が提示される。
この処理を可能にするために、設備機器30の情報は、階層化された状態で記憶されている。また、端末装置242の画面に表示する表示モジュールは、階層ごとの選択肢を画面に表示する処理と、選択肢が選択されると次階層の選択肢を画面に表示する処理とを繰り返す。表示モジュールが最初に表示する階層は最上層であり、選択肢の選択を繰り返して最下層に達した時点で、設備機器30の情報を表示する。なお、表示モジュールは、画面上に設定された適宜の釦が操作されると、端末装置242の画面に最上層の選択肢が表示される状態に復帰させることが望ましい。
ところで、統合管理装置21は、管理装置10の動作を規定する管理モジュールを提供する機能を有する。管理モジュールは、必ずしも統合管理装置21が保有している必要はなく、外部装置24が管理モジュールを保有していてもよい。この場合、管理装置10が統合管理装置21に接続されると、統合管理装置21は管理装置10が接続されたことを外部装置24に通知する。外部装置24は、統合管理装置21から管理装置10の接続が通知されると、統合管理装置21を介して管理モジュールを管理装置10に転送する。要するに、外部装置24は管理装置10との通信を開始した時点で、管理モジュールを管理装置10に転送する。
管理モジュールは、設備機器30について管理が可能になるように、管理装置10の機能を定める情報である。この情報は、プログラムおよびデータを含んでいる。管理モジュールは、複数種類から選択可能であり、管理装置10を設置する施設において必要な機能を実現する管理モジュールを選択することによって、管理装置10は該当する機能を自動的に獲得することになる。たとえば、管理モジュールには、設備機器30の監視のみを行う管理モジュール、設備機器30の監視と制御とを行う管理モジュール、設備機器30の種類に合わせた管理モジュールなどがある。
上述したように、管理装置10に必要な管理モジュールは、外部装置24に接続された統合管理装置21に、管理装置10を接続して通信を開始すると、外部装置24から自動的に提供される。ただし、上述したように、管理装置10が利用可能な管理モジュールには複数の種類があるから、利用者にとって必要な管理モジュールだけを選択可能にしておくことが望ましい。管理装置10で利用する管理モジュールを選択する場合、外部装置24と通信可能な通信端末(図示せず)を操作する。通信端末は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などから選択される。なお、管理装置10はMMIを備えているから、管理モジュールの選択をMMIにより行うように構成することも可能である。
管理装置10で利用する管理モジュールを通信端末あるいはMMIで選択する場合、管理モジュールの選択後に、外部装置24から管理装置10への管理モジュールの転送が開始される。要するに、管理モジュールに選択肢がない場合、管理モジュールは外部装置24から管理装置10に自動的に転送され、管理モジュールに選択肢がある場合、必要な管理モジュールの選択後に外部装置24から管理装置10に必要な管理モジュールのみが転送される。
このように、管理装置10に設定する管理モジュールを通信端末で選択可能にしているから、管理装置10を施設に設置する施工業者は、通信端末を用いることにより、利用者の必要とする機能を管理装置10に簡単に付与することができる。また、管理装置10が統合管理装置21を介して外部装置24と通信することにより、管理装置10に管理モジュールが提供されるから、管理モジュールのアップデータを管理装置10に遅滞なく提供することができる。同様に、管理装置10の機能の変更が必要になった場合にも、通信端末と併用することによって、所要の管理モジュールを外部装置24から容易に取得することができる。
上述した動作は、管理モジュールについて説明したが、表示モジュールについても同様であり、管理装置10が用いる表示モジュールは、必要に応じて外部装置24から取得される。また、統合管理装置21を接続していない場合に、管理装置10が管理モジュールあるいは表示モジュールを外部装置24から直接取得できるように、管理装置10のI/F部13を構成しておいてもよい。
なお、上述したように、外部装置24が外部システム243としてクラウドコンピューティングシステム(以下、「クラウド」と略称する)を含んでいる場合、様々な管理モジュール、表示モジュールをクラウドに持たせることが望ましい。この場合、管理装置10を利用する施設の場所によらず、管理装置10は、クラウドを利用して管理モジュールあるいは表示モジュールを即座に取得することができる。
たとえば、高置水槽式の給水設備32に対応する管理装置10であれば、省エネ給水モード、夜間給水モード、メンテナンスモードなどの動作モード(機能)が選択可能であり、動作モードごとに管理モジュールが提供される。
省エネ給水モードは、複数台のポンプを用いている場合に、できるだけ少数のポンプを稼働させるように制御を行う動作モードである。たとえば、受水槽から高置水槽に揚水を行うポンプを2台備えた給水設備32において、受水槽の水位と高置水槽の水位とに応じてポンプの動作を制御する場合を想定する。
この構成例では、つねに2台のポンプを動作させると消費電力が増加するから、高置水槽の水位があらかじめ設定された下限値よりも低下したときのみ2台のポンプを動作させるようにすれば、消費電力の増加を抑制することになる。夜間給水モードは、電力料金の単価が低額になる夜間に給水を行う動作モードであり、設備機器30の動作は、主として高置水槽の水位と時間帯とにより規定される。メンテナンスモードは、メンテナンスを行う際に、設備機器30の自動制御を停止し、設備機器30を手動での制御を可能にするモードである。
上述のように管理装置10の動作モードが複数種類から選択可能である場合、統合管理装置21は、端末装置242からの指示によって、複数の管理モジュールから所望の管理モジュールを選択し、選択された管理モジュールを実行する。本実施形態では、統合管理装置21が管理モジュールを実行し、第1の通信網NT1を通して管理装置10に指示を与える。管理装置10は、統合管理装置21から指示が与えられるたびに、指示された動作の成否に関する応答を返す。
図2に示す例のように統合管理装置21に複数の管理装置10が接続されている場合、統合管理装置21は、複数の管理装置10を連携させることが可能である。たとえば、管理モジュールが、給水設備32と排水設備33とに対応する管理装置10を連携させる機能を有していれば、給水と排水とに過不足が生じない(バランスさせる)ように、給水設備32と排水設備33とを動作させることが可能になる。
複数の管理装置10を連携させるには、連携させる管理装置10に関する情報を共有する必要がある。そのため、統合管理装置21は、連携させる管理装置10から取得した情報を一括して格納する共有メモリを備える。統合管理装置21は、管理装置10を連携させるための管理モジュールを有し、この管理モジュールが実行されると、管理装置10から情報を取得するたびに、共有メモリに格納した情報を更新し、共有メモリに格納された情報を用いて管理装置10を制御する。
統合管理装置21は、スケジュール制御および条件制御の機能も備える。スケジュール制御は、管理装置10に与える指示の内容と指示を与える日時とを設定した制御である。スケジュール制御が選択されていると、設定された日時に設定された指示の内容が管理装置10に通知される。また、条件制御は、管理装置10が設備機器30を監視することにより得られる情報に関する条件と、当該条件の成立時に与える指示の内容とを設定した制御である。条件制御が選択されていると、設備機器30について監視している情報が設定された条件を満たされたときに、設定された支持の内容が管理装置10に通知される。
上述した動作例は、統合管理装置21が、管理装置10を通して設備機器30を制御し、管理装置10を通して設備機器30の動作状態を監視している。すなわち、設備機器30の管理を統合管理装置21が集中的に行っている。そのため、統合管理装置21は、異なる管理装置10に接続された設備機器30を関連付けて制御することが可能になっている。
一方、設備機器30は、関連付けて制御する必要がない場合、あるいは、管理装置10の範囲内で関連付けて制御すればよい場合がある。このような場合に、管理装置10は、統合管理装置21との通信を行わず、自律して設備機器30を管理することが望ましい。管理装置10が自律して設備機器30を管理する場合、管理装置10において管理モジュールを実行する必要がある。
管理装置10が実行する管理モジュールは、統合管理装置21から提供することが望ましいが、標準的な管理モジュールを管理装置10にあらかじめ設定しておいてもよい。管理装置10に標準的な管理モジュールを設定している場合、管理装置10に設備機器30を接続するだけで、管理装置10に接続された設備機器30の制御が可能になる。
一方、管理装置10が統合管理装置21に接続されると、上述したように、外部装置24を用いた設備機器30の管理が可能になり、また、複数の管理装置10を関連付けて動作させることが可能になる。したがって、管理装置10を自律的に動作させながらも、上位装置20による管理装置10の管理を行い、また複数の管理装置10の連携を図る場合には、上位装置20から管理装置10に対して管理モジュールを転送する構成を採用してもよい。
この場合、管理装置10に転送される管理モジュールは、上位装置20のうち統合管理装置21に格納されるほか、センタサーバ241に格納されていてもよい。また、上位装置20から管理装置10に管理モジュールを転送する指示は、端末装置242を用いて行えばよい。また、統合管理装置21に管理装置10が接続された後に、管理装置10の電源が投入されたことを契機として、上位装置20から管理装置10に管理モジュールを転送してもよい。
上述した構成例では、複数台の管理装置10が第1の通信網NT1を通して統合管理装置21に接続されている場合について説明した。しかしながら、上述したように、管理装置10にあらかじめ格納されている管理モジュールを用いると、管理装置10は自律して設備機器30の動作状態を管理することが可能である。そのため、集中的な管理が不要であれば、統合管理装置21は省略可能である。
統合管理装置21を用いる場合でも、設備機器30の異常などについては報知を行うことが望ましいから、管理装置10に第1の通信網NT1を通して上位装置20として警報装置22のみを接続してもよい。
管理装置10が異常を通知する異常情報をアドレスとともに伝送すると、上述したように、警報装置22は、管理装置10のアドレスを用いて警報ランプを点滅させ、かつブザーを鳴動させる。警報装置22は、異常の通知を通知する情報を受けて警報ランプの点滅とブザーの鳴動とを行っている状態を解除するための解除釦を備える。
したがって、管理システムを簡易に構築する場合には、図9のように、統合管理装置21および外部装置24を省略し、管理装置10と警報装置22とを組み合わせるだけでもよい。同様に、外部装置24による管理が不要であれば、図10のように、上位装置20は、統合管理装置21と警報装置22とだけであってもよい。さらに、設備機器30を集中して管理する必要がなければ、個々の管理装置10を単独で用いることも可能である。この場合でも、管理装置10は設備機器30に応じて要素装置11がパッケージ化された既製品を用いるから、設備機器30を管理する管理システムの構築が容易である。