JP6145351B2 - 納豆菌を用いたマコンブ発酵物の糖尿病態改善剤 - Google Patents

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本発明は納豆菌Bacillus subtilius nattoを用いたマコンブ発酵物を有効成分として含有する糖尿病改善剤に関する。本発明は、高血糖症、糖尿病性脂質異常症等の糖尿病態の予防・改善用機能性食品または食品素材、内服剤として、ヒト若しくはヒト以外の動物に与えられる医薬品(動物用治療薬も含む)用、飲食品用、および飼料用またはペットフードの組成物を意味する。
糖尿病は生活習慣病の一つである。糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病の2つがあるが、生活習慣病としてあげられるものは後天性の2型糖尿病であり、日本における糖尿病患者の約95%が2型糖尿病である。さらに2型糖尿病は、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の2種類に分かれる。インスリン分泌不全が遺伝的要因なのに対して、インスリン抵抗性は肥満や運動不足といった環境的要因が原因で発症する。多糖類、二糖類がアミラーゼ、α−グルコシダーゼによって単糖類であるグルコースに分解され、小腸膜から血中に吸収されることで血糖値が上昇する。正常者はインスリンによって血液中のグルコース量を調節するが、インスリン量不足やインスリン感受性の低下が起こると調節ができず糖尿病となる。また、生活習慣病の肥満が原因でインスリン抵抗性になると、血糖値上昇、中性脂肪上昇だけでなく、高血圧も引き起こすことがある。
前述の糖尿病については、これを解消するための医療品が種々提案され、既に数多く市販されている。治療剤としては、インスリンの分泌を促すスルフォニウムウレア系製剤、食後の過血糖を抑制するα−グルコシダーゼ阻害剤、あるいは最近ではインスリン抵抗性を改善するチアゾリジン系製剤が用いられるが、これら医療用合成製剤は、処方箋を必要とするため、簡易には入手できないばかりか、製剤の投与又は服用により種々の副作用を伴うことがある。従って、糖尿病の治療に使用される抗糖尿病剤として、入手が容易でかつ副作用ができるだけ少ない天然物起源のものが求められている。天然物起源の糖尿病の改善剤としては、小腸からの吸収糖質量を減少させる作用を有する難消化性デキストリンを配合させた食品が知られており、これは特定保健用食品としての承認を得ている。また、タラノキ植物(Aralia elata、ウコギ科)、紅景天属植物(Rhodiola属、ベンケイソウ科)、及び、サラシア属植物(Salacia属、ニシキギ科)の三種から成る粉末又は抽出物を有効成分とする抗糖尿病剤やエゾハリタケ科のキノコの子実体の処理物を有効成分とする糖尿病予防・改善剤等も知られている。
一方、海藻類のマコンブLaminaria japonicaは褐藻類コンブ目コンブ属の海藻として知られており、コンブ類の中でも肉厚で良質な昆布である。主に北海道道南地方で生産され、養殖の生産量も多く大変なじみ深い海藻である。マコンブから抽出した成分が血糖値上昇抑制作用、抗酸化作用を有することが報告されている。また、マコンブ等特定の褐藻類及び紅藻類から水抽出される成分を含有する薬剤が、魚類の養殖場における細菌感染症による斃死を軽減することが知られている。
本発明の課題は、日常の食生活において容易に入手および摂取でき、高血糖症、糖尿病性脂質異常症等の糖尿病態を改善することができる、副作用の少ない予防・改善用機能性食品又は食品素材や、飼料を提供することにある。
本発明者は、上述の目的を達成するために、マコンブの機能性成分と納豆菌の機能性に着目し、鋭意研究を行った結果、納豆菌を用いたマコンブ発酵物温水抽出物に高血糖症、糖尿病性脂質異常症等の糖尿病態改善作用があることを見出すに至った。
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明の糖尿病態改善作用は、いずれもマコンブ発酵物を有効成分とすることを特徴とするものである。
納豆菌を用いたマコンブ発酵物に含まれる糖尿病態改善作用を有する物質がいかなる化合物であるかについては、未だその詳細は不明であるが、マコンブ発酵物から10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.5)により溶出させた成分が糖尿病改善作用を発揮することは実験的に確かめられている。したがって、納豆菌を用いたマコンブ発酵物は、そのまま本発明の糖尿病改善作用の構成成分とすることで予防・改善が発現する。
即ち本発明が提供するのは以下の通りである。
[1]納豆菌を用いたマコンブ発酵物を有効成分として含有する。
[2]納豆菌を用いたマコンブ発酵物を含有する組成物を有効成分として含有する糖尿病態改善剤。
[3][1]または[2]に記載の糖尿病態改善剤からなる機能性食品。
[4][1]または[2]に記載の糖尿病態改善剤からなる食品素材。
[5][1]または[2]に記載の糖尿病態改善剤からなるペットフード。
[6][1]〜[4]に記載の糖尿病態改善剤を含有する飲食用組成物。
[7][1]〜[4]に記載の糖尿病態改善剤を含有する医薬用組成物。
本発明の糖尿病態改善剤、またはこれを含有する組成物は、体内で二糖類を単糖類に分解するα−グルコシダーゼの活性を抑制することから、血糖値上昇の抑制が期待できる。また、作用メカニズムは分かっていないが、血中トリグリセリド(TG)および総コレステロール(TC)濃度上昇の抑制が期待できる。また、糞中TGおよびTC濃度の上昇作用を持つ。従って、食後の血糖値上昇抑制および糖尿病態改善に有用である。さらに、食経験のある材料から本発明の剤または組成物を製造することが可能であるので、摂取しても安全である。
本明細書の糖尿病態改善剤は、納豆菌を用いたマコンブ発酵物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害作用、血中TG濃度上昇抑制作用、血中TC濃度上昇抑制作用、糞中TG濃度上昇作用および糞中TC濃度上昇作用を有する剤および組成物である。上記の化合物の含有量は限定されないが、糖尿病態改善を発揮できる範囲で含まれていれば良い。
本発明の飲食用組成物は、上記の糖尿病態改善剤を含有する組成物であり、これらを一般的な食品に混合したものである。また、公知の食品として適当な担体や助剤などを使用してカプセル剤、錠剤、顆粒剤など服用しやすい形態にしたものでもよい。ここに言う飲食用とは、例えば、一般食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)、健康食品、栄養補助食品、ペットフードなどである。ここにいう一般食品とは、飲料、乳製品、発酵乳、乳酸菌飲料、加工乳、コーヒー飲料、ジュース、アイスクリーム、飴、ビスケット、ウェハース、ゼリー、スープ、麺類、を含むがそれに限定されるものではない。好ましくは飲料、乳製品、加工乳、発酵乳、乳酸菌飲料、ウェハース、ゼリーを含む。
本発明の医薬用組成物は、上記の糖尿病態改善剤を含有する組成物であり、上記剤そのものであってもよいし、所望により医薬的に許容される担体を含有する組成物であってもよい。その用途は限定されず、例えば一般用医薬品(OTC)など容易に入手可能な医薬品又は医薬部外品などが挙げられる。医薬用組成物の形態は限定されず、例えば、丸薬剤、液剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル錠剤、トローチ剤、シロップ剤、ドライシロップ剤などである。好ましくはカプセル剤、液剤、エリクシル、錠剤、カシェ、座薬などとするほうが良い。また医薬的に許容される担体とは、経口、経腸、経皮、および皮下投与のために好適である任意の材料であり、例えば水、ゼラチン、アラビアガム、ラクトース、微結晶性セルロース、スターチ、ナトリウムスターチグリコレート、燐酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイド性二酸化ケイ素、などが挙げられる。
納豆菌を用いたマコンブ発酵物ならびに該組成物は、糖尿病態改善剤の有効成分として配合されるが、糖尿病態改善剤として製剤化する場合、剤形としては、粉末状、顆粒状、錠剤状等、任意の剤形を採用することができる。その際、保存や取り扱いを容易にするために、デキストリン、シクロデキストリン等のキャリヤ、保存料、その他任意の助剤を必要に応じて配合することができる。またその形態は限定されず、飲食用組成物、医薬用組成物を含む。これらの含有量は限定されないが、糖尿病態改善に対して効果が発揮できる範囲で含まれていれば良い。
前記糖尿病態改善剤は、α−グルコシダーゼの活性を阻害して単糖類が生成されないようにする。また、血中TG濃度上昇抑制作用、血中TC濃度上昇抑制作用、糞中TG濃度上昇作用および糞中TC濃度上昇作用を有する。
納豆菌を用いたマコンブ発酵物を有効成分として含有する本発明の糖尿病態の予防・改善用機能性食品又は食品素材は、前記本発明の糖尿病態および血圧上昇の予防・改善剤を飲食品原料の一部として用いたり、あるいは製造工程又は製造後に添加・配合することにより得ることができる。かかる機能性食品としては特に制限されるものではなく、調味類、ふりかけ、菓子類、スナック類、麺類、魚肉練り製品、乳製品、飲料などを具体的に例示することができる。
以下に本発明をより詳細に説明する為に実施例を挙げるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
サンプルは500μm程度に粉砕したマコンブ粉末(北海道道南産)2.5gを50mlの蒸留水に加え、pHを8.0に調整後、加圧加熱滅菌を行った。納豆菌前培養液を500μl接種し、30℃で160rpmで回転振とう培養した。5日間培養後凍結乾燥を行い、マコンブ発酵物1gに100mlの10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.5)を添加し、50℃で1時間振とうさせ、温水抽出したものの上清をサンプルとした。
納豆菌を用いたマコンブ発酵物のα−グルコシダーゼ活性阻害作用に関する検討
納豆菌を用いたマコンブ発酵物のα−グルコシダーゼ活性への影響について、試験管内での酵素反応系を用いて検討した。蒸留水で希釈した各濃度のサンプル溶液20μlを添加し全量を220μl/反応ウェルとした。
本試験の反応に用いた溶液(A〜C液)は、以下のとおり調製した。A液はリン酸二水素カリウム3.40g、リン酸水素二ナトリウム3.55gを蒸留水に溶解し、全容を500mlとした(pH6.8)。B液はpニトロフェニルα−D−グルコピラノシドを15.06mgをA液10mlに溶解した。C液はα−グルコシダーゼ(オリエンタル酵母製、酵母由来、85U/mg)をA液に0.07U/mlになるように溶解した。
プレート内でのα−グルコシダーゼ反応は、各濃度に希釈したサンプル20μlとC液100μlを混合し、37℃で5分間プレインキュベーションし、次にB液100μlを加えて同温度で10分間インキュベーションすることで実施させた。その後、405nmの吸光度を測定することでα−グルコシダーゼ阻害活性を評価した。コントロールは、サンプルの代わりに各サンプルと同等の10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.5)を添加した。各試験区には、C液の代わりにA液を添加したブランクを設定した。
阻害率は以下の計算式から求めた。阻害率=1−(サンプルの吸光度−サンプルのブランクの吸光度)/(コントロールの吸光度−コントロールのブランクの吸光度)。コントロールを100として溶媒と濃度に関連して、相対的のα−グルコシダーゼ阻害率を図1に示した。
図1から明らかなように、納豆菌を用いたマコンブ発酵物にα−グルコシダーゼ活性阻害が認められた。阻害のIC50値は、116μg/mlであった。したがって、納豆菌を用いたマコンブ発酵物にα−グルコシダーゼ活性の阻害に有効であることが実証された。
納豆菌を用いたマコンブ発酵物の糖負荷試験に関する検討
納豆菌を用いたマコンブ発酵物のα−グルコシダーゼへの影響について、動物実験でのマルトース負荷試験を用いて検討した。
本試験では、温水抽出物を減圧乾固したものサンプルとして用いた。本試験では溶液(A〜B液)は、以下のとおり調整した。A液はマルトース300mgを10mlの蒸留水に溶解した。B液はマルトース300mg、サンプル300mgを10mlの蒸留水に溶解した。
ddYマウス、雄性、6週齢(日本SLC)を固形飼料(MRストック、日本農産工業)で飼育室(25℃±2)にて1週間予備飼育後、実験前日から22時間絶食させた。1群8匹とし体重の平均値が同等になるように群分けを行った。尾採血を行った後マウスにA液またはB液を1ml強制投与し、その後30分ごとに2時間目まで尾採血を行った。尾採血したサンプルはヘパリンチューブに入れ、遠心(900g、2分)し、血漿を2μlずつ96穴ウェルプレートにサンプリングした。グルコースCIIテストワコー(和光純薬)を300μlずつ添加し、撹拌後37℃で5分間インキュベートし、492nmの吸光度を測定することによって血中グルコース濃度を測定した。スタンダードにはブドウ糖を用いた。
図2から明らかなように、納豆菌を用いたマコンブ発酵物に動物体内においてα−グルコシダーゼ阻害活性が認められた。したがって、納豆菌を用いたマコンブ発酵物はα−グルコシダーゼ活性の阻害に有効であることが実証された。また、結果には示さないが、スターチ、スクロースにおいても同等の作用を示した。
納豆菌を用いたマコンブ発酵物の糖尿病態改善に関する検討
納豆菌を用いたマコンブ発酵物のα−グルコシダーゼへの影響について、疾患モデルマウスを用いて検討した。
本試験では、発酵後に凍結乾燥して粉末化したものをサンプルとして用いた。本試験では標準食群、高脂肪食群(コントロール群)、高脂肪食に3%のサンプルを添加したマコンブ群、マコンブ発酵物群を設けた。
KK−Ay/TaJcl(日本クレア)雄性、4週齢を単独飼育にて標準食で飼育室(25℃±2)にて1週間予備飼育を行ったのち、1群は8匹として体重と血糖値に基づき群分けを行った。群分け日を0週目とし、5週目まで飼育した。1週間ごとに体重、血糖値、摂餌量、摂水量をすべて非絶食下で測定した。また、5週目にHbAlc、血中TG濃度、血中TC濃度、糞中TG濃度および糞中TC濃度を測定した。飼育終了後に解剖を行い、各臓器重量を測定して異常がないか確認した。
図3から明らかなように納豆菌を用いたマコンブ発酵物に非絶食下において糖尿病による血糖値上昇の抑制が認められた。したがって、納豆菌を用いたマコンブ発酵物は糖尿病態予防・改善に有効であることが実証された。
図4から明らかなように、納豆菌を用いたマコンブ発酵物に非絶食下において糖尿病によるHbAlc上昇の抑制が認められた。したがって、納豆菌を用いたマコンブ発酵物は糖尿病態予防・改善に有効であることが実証された。
図5から明らかなように、納豆菌を用いたマコンブ発酵物に非絶食下において血中TG濃度および血中TC濃度上昇の抑制が認められた。したがって、納豆菌を用いたマコンブ発酵物は糖尿病態予防・改善に有効であることが実証された。
図6から明らかなように、納豆菌を用いたマコンブ発酵物に非絶食下において糞中TG濃度および糞中TC濃度の上昇作用が認められた。したがって、納豆菌を用いたマコンブ発酵物は糖尿病態予防・改善に有効であることが実証された。
納豆菌を用いたマコンブ発酵物による効果を示すグラフであり、コントロールを100とする相対的α−グルコシダーゼ阻害率を示した。 納豆菌を用いたマコンブ発酵物による効果を示すグラフであり、血中グルコース濃度を示した。 納豆菌を用いたマコンブ発酵物による効果を示すグラフであり、非絶食下での血糖値を示した。 納豆菌を用いたマコンブ発酵物による効果を示すグラフであり、HbAlcを示した。 納豆菌を用いたマコンブ発酵物による効果を示すグラフであり、血中TG濃度および血中TC濃度を示した。 納豆菌を用いたマコンブ発酵物による効果を示すグラフであり、糞中TG濃度および糞中TC濃度を示した。

Claims (6)

  1. 納豆菌を用いたマコンブ発酵物を有効成分として含有する糖尿病態改善用組成物
  2. 機能性食品、食品素材、ペットフード、飲食用組成物、又は医薬用組成物の形態で用いられる、請求項1に記載の糖尿病態改善用組成物。
  3. マコンブ発酵物の抽出物を有効成分とする、請求項1又は2に記載の糖尿病態改善用組成物。
  4. マコンブ発酵物を水で抽出した抽出物を有効成分とする、請求項3に記載の糖尿病態改善用組成物。
  5. 脂質代謝機能を改善するために用いられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の糖尿病態改善用組成物。
  6. 食後血糖の上昇を抑制するために用いられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の糖尿病態改善用組成物。

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