JP6144447B1 - 微粒子分散液の精密改質方法 - Google Patents

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Abstract

分散性並びに分散安定性に優れた微粒子分散液を提供することを課題とする。微粒子の分散性を向上させる微粒子分散液の改質方法において、微粒子分散液に含有された微粒子bの凝集体aに対して物理的エネルギーEを加えて微粒子bの凝集体aよりも小さな粒子に分散させる分散処理を行うことにより、凝集体a中に含まれていた不純物cを分散液中に放出させる。不純物cによって再凝集がなされる前に、濾過膜dを備えた除去部によって不純物cを分散液から除去する。

Description

本発明は、微粒子分散液の精密改質方法に関するものである。
微粒子は、半導体、トナー、塗料、セラミックス、金属、薬品、化粧料、化学品、カラーフィルター等、幅広い分野において用いられる材料であり、微粒子化することによって、新たな特性が発現するために、様々な製造方法が提案されている。
微粒子を実際に使用する際には、各種の溶媒に分散させて使用するが、微粒子が凝集した状態、即ち二次粒子を形成している状態では、ナノ粒子としての特性が十分に発揮できないことが多い。特に200nm以下のナノメートルサイズの微粒子とすることによって、その特性は向上するものの、凝集体をより形成しやすくなるという課題があり、微粒子の分散性を制御され、更には一次粒子にまで分散させた、微粒子分散液の製造方法が求められている。
通常微粒子を液相にて作製する場合、微粒子原料を溶媒に溶解させた微粒子原料液と、当該原料液より微粒子を析出させるための析出溶媒とを混合させて微粒子を析出させる方法が一般的である。とりわけ、特許文献1、2に示されている様に、接近・離反可能な相対的に回転する処理用面間において、微粒子を析出させることにより、分散性の高い微粒子分散液を比較的容易に得ることができる。
しかし液相法を適用した場合、微粒子分散液中には、微粒子原料液または微粒子析出溶媒に由来する不純物が含まれている。そのため、微粒子析出後、ある時間内は高分散性を保持できるが、上記不純物のため、経時変化によって、微粒子分散液中において微粒子が凝集し、沈降する場合が多い。特許文献1、2に示されている接近・離反可能な相対的に回転する処理用面を備えた強制薄膜方式の流体処理装置を用いた場合においては、析出直後の微粒子は、粒子径が小さくかつ粒子径が揃っており、元々の分散性が高いものであるゆえに、経時変化による凝集の影響は大きい場合があった。
このような微粒子分散液より不純物を取り除く方法として、微粒子分散液を遠心分離や吸引濾過、フィルタープレス等の方法を用いて微粒子分散液を濃縮し、そこに純水等の洗浄液を投入して再度遠心分離や吸引濾過等を行うことを繰り返すことで、微粒子分散液中の不純物を取り除くことが一般的である。
例えば、特許文献3には、微粒子中に含まれるイオン性不純物を分離除去する微粒子の精製方法が開示されている。特許文献3においては、膜濾過を用いることによって、イオン性不純物を透過液と共に分離除去して濃縮された微粒子水分散液を得、濃縮された微粒子水分散液に水を加えて、微粒子濃度が特定の範囲となるように希釈し、再びクロスフロー方式により膜濾過する操作を繰り返す循環膜濾過方式により微粒子を精製する。その際、透過液のpHを監視することにより、容易にイオン性不純物の除去処理の進行度を確認し、これによって高分散性が得られるものとみなしている。しかし、凝集体を分散または解砕する機構が設けられていないため、目的のpHにまで精製の操作を行った場合であっても、凝集体中に含まれる不純物については除去することが困難であり、分散性を制御された微粒子分散液を得ることが困難であった。
また、特許文献4に示されるように、濾過膜による処理を施す前の微粒子分散液を撹拌することも考えられるが、単に撹拌するだけでは、微粒子の凝集体を一次粒子にまで分散させることが難しい。さらに、特許文献5の段落0159(実施例12)では、濾過膜による処理を施す前に分散機(カンペ(株)製:BATCH SAND)を使用したことが示されているが、ジルコニア粉末からその分散液を製造するために用いられたものに過ぎない。しかも、同分散機は、粗分散用でありバッチ式の分散機として用いられ、その分散に連続して濾過膜による処理を行うことも困難である。また分散液で電導度が3mS/cm以下、より好ましくは0.3mS/cm以下となるまで洗浄する事が好ましいと記載されており粗洗浄の領域である。従って、これら特許文献4及び5に示された発明は、微粒子分散液中の不純物の由来に着目した技術を提案するものではなく、かつ再凝集する前に不純物の除去処理を行うことも提案されていない。よって、これらの文献に示された発明は、微粒子中を含む分散液中に存在する不純物の全体量を減少させることを提案するものではなく、処理完了後の微粒子の分散性を高めることを提案するものでもなかった。
特開2013−82621号公報 再表2009/035019号公報 特開2012−206933号公報 特表2011−530476号公報 特開2013−82609号公報
本発明は、微粒子分散液の液体中に存在する不純物のみならず、一次粒子の凝集体中などに存在していた不純物を除去して、微粒子を含む分散液中に存在する不純物の全体量を減少させることができる微粒子分散液の改質方法を提供することを課題とする。
本発明の他の目的は、微粒子の分散性を高めることができる微粒子分散液の改質方法を提供することを課題とする。
本発明は、微粒子の分散性を向上させる微粒子分散液の改質方法において、上記微粒子分散液に含有された上記微粒子の凝集体に対して物理的エネルギーを加えて上記微粒子の凝集体よりも小さな粒子に分散させる分散処理を行うことにより、上記凝集体中に含まれていた不純物を上記分散液中に放出させ、上記不純物によって再凝集が全てなされる前に、除去部によって上記不純物を上記分散液から除去する除去処理を行うことを特徴とする微粒子分散液の改質方法を提供する。本発明の実施に際して、上記凝集体中の不純物を上記分散液中に放出させても、放出された不純物や或いは予め分散液中に存在していた不純物による再凝集を完全に避けることは困難であるが、放出された不純物の一部が分散液中に存在している間に、除去部によって上記不純物を上記分散液から除去することによって、微粒子を含む分散液中に存在する不純物の全体量を減少させることができる。なお、上記不純物はその性状は問わないものであり、固体であってもよく、イオンであってもよい。
また本発明は、上記不純物は、上記凝集体とは独立して上記分散液中に存在する液中不純物と、上記凝集体中に存在する粒子中不純物とを含み、上記分散処理によって、上記凝集体から上記粒子中不純物を上記分散液中に放出させて上記液中不純物とする放出ステップと、上記放出ステップを経た上記分散液を、上記液中不純物によって再凝集がなされる前に、上記除去部に送る移送ステップと、上記除去部にて上記液中不純物を上記分散液から除去する除去処理ステップとを備えた微粒子分散液の改質方法を提供する。
また本発明は、上記分散処理と上記除去処理とを連続的且つ繰り返し行うことを特徴とする微粒子分散液の改質方法を提供する。また本発明は、上記除去部は濾過膜を備え、上記濾過膜へ上記分散液を供給してクロスフロー方式によって濾過することにより、上記不純物を上記分散液から除去することを特徴とする微粒子分散液の改質方法を提供する。また本発明は、上記濾過膜が、限外濾過膜であることを特徴とする微粒子分散液の改質方法を提供する。
本発明の実施に際しては、上記凝集体中の上記不純物を上記分散液中に放出させた後に、時間が経過するに従って、再凝集が進行すると考えられるため、より多くの不純物が上記分散液の液体中に存在している間に、不純物を除去することが効率的である。従って、上記分散液中に放出させた直後に上記の除去を開始することが最も好ましいと言える。従って装置の物理的な制約などによって放出と除去との間の時間を0にすることが困難であったとしても、上記不純物を上記分散液中に放出させた後、3秒以内に上記分散液から除去する除去処理を行う(開始する)ことが効率的な不純物の除去にとって望ましい。例えば、除去処理を濾過膜によって行う場合には、3秒以内に上記不純物を放出させた上記分散液が濾過膜に到達することが望ましい。また本発明は、上記不純物を放出させた後の上記分散液を上記除去部に送るための直前移送経路における経路長と、流速と、流量と、流体圧と、温度との少なくとも何れか一つを制御する事で、上記微粒子分散液中の微粒子の分散性を制御することを特徴とする微粒子分散液の改質方法を提供する。また本発明は、上記分散処理は、上記分散液中で撹拌羽根を回転させる回転式の分散機により上記物理的エネルギーを上記凝集体に対して与える処理であり、上記撹拌羽根の周速度を10m/s以上として分散処理することを特徴とする微粒子分散液の改質方法を提供する。
また本発明は、上記除去処理を行った後の上記微粒子分散液のpHを制御する事で、上記微粒子分散液中の微粒子の分散性を制御することを特徴とする微粒子分散液の改質方法を提供する。上記微粒子分散液のpH制御は、上記分散処理と上記除去処理とを連続的且つ繰り返し行うことを継続して行うものであってもよく、或いは、これらの処理を完了した後にpH調整剤を加えるなどしてpHを調整するものであってもよく、両者を併用するものであってよい。
上記微粒子の一次粒子径は、特には問わないが、極めて小さな一次粒子径の粒子に対しても行うことができ、例えば、一次粒子径が200nm以下の微粒子の分散液にも適用できる。
上記微粒子の構造は、特には問わないが、たとえば、銀銅合金微粒子のような金属微粒子や、クルクミン微粒子のような有機物微粒子、並びに酸化亜鉛微粒子または表面をケイ素酸化物で被覆された酸化鉄微粒子などの酸化物微粒子に対して適用することができる。
また本発明の実施に際して用いられる微粒子は、ブレークダウンによって得られたものであってもよく、ビルドアップによって得られたものであってもよく、上記微粒子やその分散液の由来は特に問うものではない。一例として、上記微粒子の一次粒子径がnm単位の微粒子である場合、効率的に良好な微粒子分散液を製造する方法としては、接近・離反可能な相対的に回転する処理用面間において、上記微粒子の原料である微粒子原料を少なくとも含む微粒子原料液と、上記微粒子を析出させるための微粒子析出物質を少なくとも含む微粒子析出溶媒とを混合させると共に当該混合させた流体中で上記微粒子を析出させる工程を含むものを示すことができる。本発明は、この分散液を得る工程を行った後、上記微粒子分散液の改質方法をなすことによって、安定した分散性を示す微粒子分散液の製造方法を提供することができたものである。
本発明は、微粒子分散液の液体中に存在していた不純物と一次粒子の凝集体中などに存在していた不純物とを含む、分散液中に存在する不純物の全体量を減少させることができる微粒子分散液の改質方法を提供することができたものである。また、本発明は、このような微粒子分散液の改質方法を適用した微粒子分散液の製造方法を提供することができたものである。
(A)は本発明の実施の形態における分散液改質装置の概略図であり、(B)は本発明の他の実施の形態における分散液改質装置の概略図であり、(C)は本発明のさらに他の実施の形態における分散液改質装置の概略図である。 本発明の分散液改質方法の原理図である。 (A)は本発明の実施の形態に係る析出処理装置の略断面図であり、(B)は同析出処理装置の第1処理用面の略平面図である。 本発明の実験例A1−5で得られた微粒子分散液中の微粒子のTEM写真である。なお、(a)は10000倍、(b)は800000倍で観察した結果である。 本発明の実験例A1−6で得られた微粒子分散液中の微粒子のTEM写真である。なお、(a)は50000倍、(b)は100000倍で観察した結果である。 本発明の実験例A1−4で得られた微粒子分散液中の微粒子のTEM写真である。なお、(a)は10000倍、(b)は600000倍で観察した結果である。 本発明の実験例B1−5で得られた微粒子分散液中の微粒子のTEM写真である。なお、(a)は2500倍、(b)は20000倍で観察した結果である。 本発明の実験例B1−7で得られた微粒子分散液中の微粒子のTEM写真である。なお、(a)は2500倍、(b)は10000倍で観察した結果である。 本発明の実験例B1−4で得られた微粒子分散液中の微粒子のTEM写真である。なお、(a)は2500倍、(b)は10000倍で観察した結果である。 本発明の実験例C1−6で得られた酸化物微粒子分散液中の酸化物微粒子のTEM写真である。なお、(a)は10000倍、(b)は800000倍で観察した結果である。 本発明の実験例C1−9で得られた酸化物微粒子分散液中の酸化物微粒子のTEM写真である。なお、(a)は10000倍、(b)は100000倍で観察した結果である。 本発明の実験例C1−4で得られた酸化物微粒子分散液中の酸化物微粒子のTEM写真である。なお、(a)は10000倍、(b)は250000倍で観察した結果である。 本発明の実験例C1−2、実験例C1−4、実験例C1−6、実験例C1−9の条件で得られた酸化物微粒子分散液を用いて調製したプロピレングリコール分散液を用いて行ったUV−Visスペクトル測定結果(透過スペクトル)である。 本発明の実験例C5−6で得られた酸化物微粒子分散液中の酸化物微粒子のTEM写真である。なお、(a)は10000倍、(b)は250000倍で観察した結果である。 本発明の実験例C5−3で得られた酸化物微粒子分散液中の酸化物微粒子のTEM写真である。なお、(a)は10000倍、(b)は250000倍で観察した結果である。 本発明の実験例C5−2で得られた酸化物微粒子分散液中の酸化物微粒子のTEM写真である。なお、(a)は10000倍、(b)は100000倍で観察した結果である。 本発明の実験例C5−2、実験例C5−3、実験例C5−6の条件で得られた酸化物微粒子分散液を用いて調製したプロピレングリコール分散液を用いて行ったUV−Visスペクトル測定結果(透過スペクトル)である。
以下、図面に基づき本発明の実施の形態の一例をとりあげて説明する。
本発明の微粒子分散液の改質方法は、図1(A)(B)(C)に示したような分散液改質装置100を用いて改質する工程とを備えたものとして実施することができる。この改質の対象となる微粒子分散液は、種々の方法で製造したり準備したりすることができるが、一例として図3に示す析出処理装置により製造することができる。
以下の説明では、まず図1を参照して微粒子分散液を改質する工程を説明した後で、図3を参照して微粒子分散液を得る工程を説明する。
図1(A)の分散液改質装置100は、微粒子分散液より、不純物を除去し、微粒子分散液のpH並びに導電率を調整するに際して本発明の実施の形態に係る改質方法を実施するために用いることができる装置の代表例である。具体的には、分散液改質装置100は、分散処理装置110と濾過膜を備えた除去部120と収容容器130とを備え、これらが配管システムで接続されている。分散処理装置110は、分散用容器101と、これに敷設された分散機102とを主たる構成要素として備える。
図3に示す析出処理装置により生成された微粒子分散液L1を収容容器130に投入しポンプ104の運転を開始することで、微粒子分散液L1を分散用容器101に供給する。ポンプ104によって送液された微粒子分散液L1は、分散用容器101内を満たしてオーバーフローし、クロスフロー用洗浄液L2を通液された濾過膜を備えた除去部120に送液されて濾過される。上記除去部120に送液された微粒子分散液L1のうち、上記濾過された後の不純物を含む液は、濾液L3としてクロスフロー用洗浄液L2と共に排出され、残りは再び収容容器130に投入される。なお、収容容器130には分散液の濃度を均一にするための攪拌機200を備えた方が好適である。収容容器130に再び投入された微粒子分散液は、再度分散用容器101に供給され、上記の分散と不純物除去とが連続的且つ繰り返し行われる。
本発明においては、微粒子分散液について、分散機102による分散処理を行いながら、pH並びに、もしくは導電率の制御を行うものである。この微粒子分散液の導電率は100μS/cm以下、より好ましくは50μS/cm以下であることが好ましい。pHの制御範囲は対象となる微粒子によって目的のpHに調製することが可能である。また分散機102による分散処理を行いながら濾過膜を備えた除去部120並びにpH調整の操作を行うことで、凝集した微粒子間に存在する不純物(即ち、凝集体に含まれる不純物である粒子中不純物)についても容易に除去することが可能となり、更に粒子一つ一つの表面を均一に同じ状態とすることが可能である。
図2(A)、図2(B)に、本発明における上記分散液改質装置100を用いた場合の不純物除去に関する原理図を示した。これらの図に示したように、本発明の分散液改質装置を用いた場合においては、上記分散用容器101に敷設された分散機102の物理的エネルギーEによって、分散液中の、特に微粒子aの凝集体bに物理的エネルギーEを加えられることによって、当該凝集体bが一時的または瞬間的に分散または解砕され、粒子中の不純物cが分散液中に放出される。物理的エネルギーEを加えられた微粒子分散液が、物理的エネルギーEを加えられたその直後に濾過膜dを備えた除去部に送液されることによって、微粒子分散液に放出された粒子中の不純物cが濾過膜dにて濾過されて除去処理されることになる。これに対して、図2(C)に示したように、従来の濾過処理のみで、凝集体に物理的エネルギーEを加える分散機102のような機構を敷設しない場合や微粒子の凝集体を分散させるための物理的エネルギーEを加えることが困難な例えば棒状、板状、プロペラ状等の形状である単なる攪拌機しか用いない場合には、凝集体bが分散または解砕されないままに濾過膜dに送液されるために、液中に存在する不純物cである液中不純物の除去はできても、凝集の原因となる粒子中不純物を除去することが困難である。
ただし、図2(B)に示したように、凝集体bに物理的エネルギーEを加えて凝集体bが分散または解砕されてから、濾過膜dに送液されるまでの時間が長時間の場合には、微粒子aが再凝集し、凝集体b中に不純物cを取り込んでしまう。その場合にあっては濾過膜dによる、粒子中不純物を除去する処理が困難となる。また、当該不純物cは微粒子aを凝集させる原因、即ち凝集体bの核となる場合もあり、凝集体bを分散または解砕させて、粒子中の不純物cを微粒子分散液中に放出させた直後に濾過膜dによって不純物を除去するのが望ましい。そのため、上記分散機102によって凝集体bに物理的エネルギーEを加えて、粒子中不純物を微粒子分散液に放出させて液中不純物とした後、3秒以内、好ましくは1秒以内に、当該分散液から不純物cを除去するための除去処理を開始することが好ましい。
上記分散機102を敷設された分散用容器101から除去部120によって不純物の除去が開始されるまでの時間(T1:sec(秒))は、経路長(Lea:m)、流量(FL:m3/sec)、配管内径(Leb:m)を用いた式(1)にて計算することが可能である。
T1=Lea/(FL/((Leb/2)×π)) 式(1)
本発明においては、上記FL、Lea,Lebを制御し、T1が0秒から3秒の範囲、好ましくは0.05秒から1秒とすることで、上記分散機102によって凝集体に物理的エネルギーEを加えて、粒子中不純物を微粒子分散液に放出させた後3秒以内、好ましくは1秒以内に当該分散液から不純物を除去する処理を実施できる。
また上記分散液改質装置内を流れる流体の流体圧、並びに流体温度を制御することでも微粒子分散液中の微粒子の分散性を制御することができる。流体圧並びに流体温度の範囲は用いる分散装置、分散機並びに濾過膜の種類や材質並びに対象となる微粒子分散液に応じて適宜選択して実施することができる。
また、微粒子分散液に含まれる対象となる微粒子に対して分散性を制御可能なpHとなるよう洗浄操作またはpH調整を行うことによって、一次粒子が凝集体を形成する原因となるイオン成分等をも除去し、且つ微粒子の各一次粒子の表面の反発力を均一に制御することによって、一次粒子同士が互いに反発し合う状態とできるため、作製された微粒子分散液中における微粒子は、安定的な分散状態を確保される。なお、上記分散用容器101に敷設された分散機102は、後述する種々の分散機の内、撹拌羽根を有する分散機であることが好ましい。また処理に際しては、上記撹拌羽根の周速度を高くするに従って、分散用容器101内で分散または解砕される凝集体の数が増え、凝集体の大きさも小さく成り易い。そのため、周速度が低い場合よりも、粒子中不純物の多くを液中に放出させることが可能となる。濾過膜の面積や材質に応じて変化する濾過膜の性能と、処理物の特性とによって決まる不純物除去の性能、即ち単位時間当たりの不純物の除去量に応じて、上記分散機の周速度を制御することが好ましい。具体的には上記撹拌羽根の周速度を10m/s以上として分散処理することが好ましく、15m/s以上とすることがさらに好ましい。10m/s以上とすることによって、微粒子分散液のpHを対象となる微粒子に対して分散性を制御可能なpHとしたにも関わらず、凝集体に含まれる不純物が除去できていない状態が発生することや、粒子一つ一つの表面を均一に同じ状態とできていない状態が発生することを抑制し、本発明によって得られた微粒子分散液のような分散性並びに分散安定性を得ることが可能となる。
本発明における濾過膜は、対象物質である微粒子の粒子径や目的の処理条件によって、一般的な膜濾過用の濾過膜を使用可能であり、特に限定されないが、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜等の各種濾過膜を用いることができる。特に限定されないが、形態としての一例は、中空糸型濾過膜、チューブラー膜、スパイラル膜、平膜等が挙げられる。また、濾過膜の材質についても特に限定されないが、アルミナや酸化チタン等のセラミックスや、ポリスルホン系高分子、ポリエステル系高分子、芳香族エーテル系高分子、(メタ)アクリル系高分子、(メタ)アクリロニトリル系高分子、フッ素系高分子、オレフィン系高分子、ビニルアルコール系高分子、セルロース系高分子などが挙げられる。用いる微粒子の粒子径、不純物並びに分散媒である溶媒の種類によって、適切な材質、分画分子量、孔サイズの膜を用いて実施できる。特に限定されないが、DESAL社のG−5タイプ、G−10タイプ、G−20タイプ、G−50タイプ、PWタイプ、HWSUFタイプ、KOCH社のHFM−180,HFM−183、HFM−251、HFM−300、HFK−131、HFK−328、MPT−U20、MPS−U20P、MPS−U20S、Synder社のSPE1、SPE3、SPE5、SPE10、SPE30、SPV5、SPV50、SOW30、旭化成株式会社製のマイクローザ(登録商標)UFシリーズ、日東電工株式会社製のNTR7410、NTR7450、日本ガイシ株式会社製のセフィルトUFなどが挙げられる。また、電気透析装置である、株式会社アストム製のアスライザーEDなどを用いて実施するとこも可能である。
本発明における上記分散機としては、通常の回転式分散機や、高圧ホモジナイザー、超音波式ホモジナイザー等が挙げられるが、撹拌羽根に対して相対的に回転するスクリーンを備えたものなど、流体にせん断力を加えるなどして、均質な混合を実現する回転式分散機などの分散装置を用いて分散されることが望ましい。高圧ホモジナイザーとしては、スターバースト(スギノマシン製)、高圧ホモジナイザーHPH(IKA製)、HIGH PRESSURE HOMOGENIZER(三丸機械工業製)などが挙げられる。超音波式ホモジナイザーとしては、UXシリーズ(三井電気精機製)や、US−1200TCVPやSUSH−300T(日本精機製作所製)、UP200やUIP16000(ヒールッシャー製)などが挙げられる。回転式分散機の好ましい例としては、特許第5147091号に開示されている撹拌機並びに分散機を適用することができる。また、回転式分散機は、連続式で行うことが好ましく、連続式で行う場合には、撹拌槽に対する流体の供給と排出とを連続的に行うものであってもよく、撹拌槽を用いずに連続式の分散機を用いて行うものであってもよく、公知の撹拌機や撹拌手段を用い、適宜撹拌エネルギーEを制御することができる。なお、撹拌エネルギーEに関しては、本願出願人による特開平04−114725号公報に詳述されている。本発明における撹拌並びに分散処理の方法は特に限定されないが、各種せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波式などの撹拌機や溶解機、乳化機、分散機、ホモジナイザーなどを用いて実施することができる。一例としては、ウルトラタラックス(IKA製)、ポリトロン(キネマティカ製)、TKホモミキサー(プライミクス製)、エバラマイルダー(荏原製作所製)、TKホモミックラインフロー(プライミクス製)、コロイドミル(神鋼パンテック製)、スラッシャー(日本コークス工業製)、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機製)、キャビトロン(ユーロテック製)、ファインフローミル(太平洋機工製)などの連続式分散機、クレアミックス(エム・テクニック製)、クレアミックスディゾルバー(エム・テクニック製)、フィルミックス(プライミクス製)などのバッチ式もしくは連続両用分散機をあげることができる。また、凝集体bにエネルギーEを加える撹拌処理は、高速回転する撹拌翼を備えたものであって、撹拌翼の外側にスクリーンを備え、スクリーンの開口から流体がジェット流となって吐出する撹拌機、特に上記のクレアミックス(エム・テクニック製)やクレアミックスディゾルバー(エム・テクニック製)を用いて行われることが望ましい。
本発明における、分散液改質装置100の実施の形態について他の形態を図1(B)(C)に示す。図1(B)に示す実施の形態では、複数個の濾過膜を備えた除去部120が直列に敷設されており、分散処理装置110にて分散処理された微粒子分散液が複数個の濾過膜によって不純物を除去する処理をされてから、収容容器130に戻る形態となる。図1(C)に示す実施の形態では、ポンプ105を介して収容容器130を分散用容器101に接続したもので、除去部120の濾過膜にて濾過された微粒子分散液は、収容容器130を経ることなく、分散用容器101に送られて分散処理がなされるものであり、微粒子分散液は収容容器130を介することなく循環する。処理後の微粒子分散液は、循環経路中の適宜位置に配置された開閉弁106を開いて、次の処理や容器に送られる。さらに別の実施の形態として、図示は省略するが、分散用容器101の微粒子分散液がオーバーフローする出口に除去部120を直接敷設し、分散処理装置110から除去部120までの経路を実質的に施さないことも可能である(Lea=0)。なお、分散処理装置110における分散用容器101は、実質的に容積を持たずに分散機102を敷設された配管等として、分散機102にて瞬間的に分散処理を行い(例えば完全1パスの連続式)、微粒子分散液に物理的エネルギーEを投下する形態としても実施することができる(図示せず)。また図1の各図に示すように、バイパス路107を設けて、分散機102を経ることなく、除去部120のみを繰り返し通過するような流路を必要に応じて形成することができるようにしてもよい。即ち本発明は、分散処理と除去処理とを連続して行うことを要旨とするが、この連続処理は、微粒子分散液の改質処理を行う全時間中継続して行う必要はない。例えば、処理の当初は、三方弁などの流路選択用の弁(図示せず)をバイパス路107側に切り換えて、微粒子分散液をバイパス路107に通して分散機102を経ることなく、除去部120のみを通過させ、濾過膜で微粒子の液体中に予め存在していた不純物を濾過して除去する処理を行い、同液体中に予め存在していた不純物の量が減少した段階で、流路選択用の弁を分散機102側に切り換えて上記の連続処理を行うようにしてもかまわないし、また、上記の連続処理の後処理として、除去部120のみを通過させる処理を行うようにしてもよい。
(微粒子)
本発明においては、微粒子を分散液に分散させた微粒子分散液を対象とするもので、微粒子の種類や分散液の種類は種々変更して実施することができるものであり、ブレークダウンによって得られたものであってもよく、ビルドアップによって得られたものであってもよく、上記微粒子やその分散液の由来は特に問うものではない。分散液の調製は種々の手法で行うことができ、例えば、予め用意された微粒子を適宜分散液に分散させたものであってもよく、その際には、定法に従い種々の混合攪拌機を用いることもできる。また、後述する微粒子原料を溶媒に溶解または分子分散させて調製した微粒子原料液と、微粒子析出溶媒とを混合させて微粒子を析出させた微粒子の分散液を用いることが好ましい。微粒子の形態は、単一の元素からなるものであってもよく、複数種類の元素からなるものものであってもよく、コアシェル型の微粒子でも良く、さらに凝集体であってもかまわない。なお、本発明における微粒子分散液の製造方法は、一次粒子径が200nm以下の微粒子について適応させることが好ましく、50nm以下の微粒子について適応させることがより好ましいが、これに限らず一次粒子径が200nmより大きい微粒子について適応させても構わない。用いる濾過膜や分散機、また被処理物である微粒子の種類や分散媒によっても異なるが、一次粒子径が200nmより大きく1μm以下の微粒子に用いることもできる。また、処理前の粒子としては、1μm以上の径の凝集体であってもかまわない。
(流体と反応の種類)
本発明に係る分散液中の微粒子は、特許文献1や2に示された種々の微粒子に対して適用することができる。また、当該微粒子を得るための反応についても特許文献1や2に示された種々の反応を適用することができるものである。
その一例を示せば、複数種類の流体を処理用面間に投入して混合する場合において、混合すべき流体としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化物、金属、セラミックス、半導体、シリカなどの無機物の微粒子や、有機顔料や薬物のような有機物の微粒子を析出可能な流体を示すことができる。多くの場合、これらの微粒子は微細であるが故に凝集体を形成していることが多く、本発明を適用する有用性が認められる。
(微粒子原料)
本発明における微粒子の作製に用いる微粒子原料としては、特に限定されない。反応、晶析、析出、共沈等の方法で微粒子となるものであれば実施できる。本発明においては、以下、当該方法を析出と記載する。
ここで、酸化物微粒子の場合を例にとると、同微粒子の作製に用いる酸化物原料とは、微粒子の原料である物質であって、例えば金属や非金属の単体、金属化合物や非金属の化合物である。本発明における金属は、特に限定されない。好ましくは化学周期表上における全ての金属元素である。また、本発明における非金属は、特に限定されないが、好ましくは、B,Si,Ge,As,Sb,C,N,O,S,Te,Se,F,Cl,Br,I,At等の非金属元素を挙げることができる。これらの金属や非金属について、単一の元素であっても良く、複数の元素からなる合金や金属元素に非金属元素を含む物質であっても良い。また、本発明において、上記の金属の化合物を金属化合物という。金属化合物または上記の非金属の化合物としては特に限定されないが、一例を挙げると、金属または非金属の塩や酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機塩、有機錯体、有機化合物またはそれらの水和物、有機溶媒和物などが挙げられる。金属塩または非金属の塩としては、特に限定されないが、金属または非金属の硝酸塩や亜硝酸塩、硫酸塩や亜硫酸塩、蟻酸塩や酢酸塩、リン酸塩や亜リン酸塩、次亜リン酸塩や塩化物、オキシ塩やアセチルアセトナート塩またはそれらの水和物、有機溶媒和物などが挙げられ、有機化合物としては金属または非金属のアルコキシドなどが挙げられる。以上、これらの金属化合物または非金属の化合物は単独で使用しても良く、複数以上の混合物として使用しても良い。
例えば微粒子が、酸化鉄または酸化亜鉛をコアとし、シェルにケイ素酸化物からなるケイ素酸化物で被覆された酸化鉄微粒子または酸化亜鉛で有る場合には、コア用酸化物原料として、亜鉛または鉄の酸化物や水酸化物、その他亜鉛の塩やアルコキシドなどの化合物やそれらの水和物などが挙げられる。特に限定されないが、亜鉛または鉄の塩化物、硝酸塩、硫酸塩などの無機化合物や、亜鉛または鉄のアルコキシドやアセチルアセトナート等の有機化合物などが挙げられる。具体的な一例としては、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、塩化鉄(III)、塩化鉄(II)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、亜鉛アセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナートやそれらの水和物などが挙げられる。またシェル用酸化物原料としては、ケイ素の酸化物や水酸化物、その他ケイ素の塩やアルコキシドなどの化合物やそれらの水和物が挙げられる。特に限定されないが、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリフルオロプロピル−トリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、およびTEOSのオリゴマ縮合物、例えば、エチルシリケート40、テトライソプロピルシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラブトキシシラン、および同様の物質が挙げられる。さらにシェル用酸化物原料として、その他のシロキサン化合物、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1、9−ビス(トリエトキシシリル)ノナン、ジエトキシジクロロシラン、トリエトキシクロロシラン等を用いても構わない。
また、上記微粒子の作製においては、微粒子原料を少なくとも含む微粒子原料液を用いるものである。上記微粒子原料が固体の場合には、上記微粒子原料を溶融させた状態、または後述する溶媒に混合または溶解された状態(分子分散させた状態も含む)で用いることが好ましい。上記微粒子原料が液体や気体の場合であっても、後述する溶媒に混合または溶解された状態(分子分散させた状態も含む)で用いてもよい。更に上記の微粒子原料液には、分散液やスラリーなどの状態のものも含んでも実施できる。
上記微粒子の作製における微粒子析出物質としては、微粒子原料を、微粒子として析出させることができる物質であれば、特に限定されない。例えば、酸化物微粒子の場合には、酸性物質または塩基性物質を用いることができる。微粒子析出物質としては、微粒子原料を、微粒子として析出させることができる物質であれば、特に限定されず、例えば、酸性物質または塩基性物質を用いることができる。
(塩基性物質)
上記の微粒子析出物質としての塩基性物質としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの金属水酸化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムイソプロポキシドのような金属アルコキシド、トリエチルアミン、ジエチルアミノエタノールやジエチルアミンなどのアミン系化合物やアンモニアなどが挙げられる。
(酸性物質)
上記の微粒子析出物質としての酸性物質としては、王水、塩酸、硝酸、発煙硝酸、硫酸、発煙硫酸などの無機酸や、ギ酸、酢酸、くえん酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などの有機酸が挙げられる。
(微粒子析出溶媒・調製に用いられる溶媒)
上記微粒子の作製においては、微粒子析出物質を少なくとも含む微粒子析出溶媒を用いるものであり、少なくとも微粒子析出物質を溶媒に混合・溶解・分子分散させて微粒子析出溶媒を調製することが好ましい。微粒子原料液、並びに微粒子析出溶媒の調製に用いる溶媒としては、例えば水や有機溶媒、またはそれらの複数からなる混合溶媒が挙げられる。上記水としては、水道水やイオン交換水、純水や超純水、RO水などが挙げられ、有機溶媒としては、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物などが挙げられる。上記の溶媒はそれぞれ単独で使用しても良く、または複数を混合して使用しても良い。アルコール化合物溶媒としては、メタノールやエタノールなどの1価アルコールや、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのポリオールなどが挙げられる。また、微粒子の作製に悪影響を及ぼさない範囲において、必要に応じて、上記酸性物質を微粒子原料液に混合しても良い。
(調製装置)
上記微粒子原料液または微粒子析出溶媒は、上記微粒子を分散させるために用いた分散処理装置と同様のものを適応することが可能である。
(分散剤等)
また、微粒子の作製に悪影響を及ぼさない範囲において、目的や必要に応じて各種の分散剤や界面活性剤を用いてもよい。特に限定されないが、分散剤や界面活性剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品または新規に合成したものなどを使用できる。一例として、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記の界面活性剤および分散剤は、微粒子原料液、微粒子析出溶媒、シェル用原料液の少なくとも何れか1つの流体に含まれていてもよく独立した流体として用いられるものであってもよい。
(反応方法:析出処理装置)
本発明においては、微粒子の由来は問わないが、析出処理装置の一例として、図3に示すマイクロリアクターを用いて、微粒子分散液を得ることができる。
本実施の形態における析出処理装置は、特許文献1や国際公開WO2009/008392号パンフレットなどに示された本願出願人の開発に係る装置を用いて実施することができる。
この装置は、対向する第1および第2の、2つの処理用部10、20を備え、第1処理用部10が回転する。両処理用部10、20の対向する面が、夫々処理用面となる。第1処理用部10は第1処理用面1を備え、第2処理用部20は第2処理用面2を備える。両処理用面1、2は、第1、第2、第3の被処理流体の流路d1、d2、d3に接続され、被処理流体の密封された流路の一部を構成する。この両処理用面1、2間の間隔は、通常は、1mm以下、例えば、0.1μmから50μm程度の微小間隔に調整される。これによって、この両処理用面1、2間を通過する被処理流体は、両処理用面1、2によって強制された強制薄膜流体となる。
そして、この析出処理装置は、処理用面1、2間において、第1、第2、または第3の被処理流体を混合し反応させて微粒子を析出させる流体処理を行なう。
より具体的に説明すると、上記装置は、上記の第1処理用部10を保持する第1ホルダ11と、第2処理用部20を保持する第2ホルダ21と、接面圧付与機構43と、回転駆動機構(図示せず)と、第1導入部d1と、第2導入部d2と、第3導入部d3と流体圧付与機構p1、p2、p3とを備える。
上記実施の形態において、第1処理用部10、第2処理用部20は環状のディスクであり、第1処理用部10と第2処理用部20との間の上流側の隙間(この例では環状の内周側の隙間)が第1導入部d1を構成し、第1導入部d1から処理用面1、2に導入された被処理流体は、下流側(この例では環状の外周側の隙間)から処理用面1、2の外に流出する。第2導入部d2と、第3導入部d3とは、処理用面1、2のうちの少なくとも何れか一方に開口しており、第1導入部d1から処理用面1、2間に導入された被処理流体に対して、途中から合流して、これらの被処理流体が処理用面1、2で混合される。第3導入部d3の開口部は、第2導入部d2の開口部よりも、下流側(この例では半径方向の外側)に位置する。これらの被処理流体は強制された薄膜流体となり、両処理用面1、2の下流側に移動しようとする。その際、両処理用部10、20のうち少なくとも1方を回転させることにより、混合された被処理流体は、環状の半径方向への移動ベクトルと周方向への移動ベクトルとの合成ベクトルが被処理流体に作用して、内側から外側へ略渦巻き状に移動する。
上記実施の形態においては、第2ホルダ21が装置に固定されており、回転駆動機構の回転軸50に取り付けられた第1ホルダ11が回転し、この第1ホルダ11に支持された第1処理用部10が第2処理用部20に対して回転する。もちろん、第2処理用部20を回転させるようにしてもよく、双方を回転させるようにしてもよい。本実施の形態において、上記回転速度は、例えば、350rpmから5000rpmとすることができる。
上記実施の形態では、第1処理用部10に対して、第2処理用部20が回転軸50の軸方向に接近離反するもので、第2ホルダ21に設けられた収容部41に、第2処理用部20の処理用面2側と反対側の部位が出没可能に収容されている。ただし、これとは逆に、第1処理用部10が、第2処理用部20に対して接近離反するものであってもよく、両処理用部10、20が互いに接近離反するものであってもよい。
接面圧付与機構は、第1処理用部10の第1処理用面1と第2処理用部20の第2処理用面2とが接近する方向に押す力(以下、接面圧力という)を発生させるための機構であり、スプリング43や流体圧や重力などを用いたものを採用できる。この接面圧力と、第1から第3の被処理流体の流体圧力による両処理用面1、2間を離反させる力(以下、離反力という)との均衡(圧力バランス)によって、両処理用面1、2間の間隔を所定の微小間隔に保ちつつ、nm単位ないしμm単位の微小な膜厚を有する薄膜流体を発生させる。
ここで、図3(B)に示すように、第1処理用部10の第1処理用面1には、第1処理用部10の中心側から外側に向けて、すなわち径方向について伸びる溝状の凹部13を形成してもかまわない。この凹部13は、両処理用面1、2の少なくとも何れか一方に形成でき、これらの凹部13を形成することにより、被処理流体を両処理用面1、2間に送るマイクロポンプ効果を得ることができる。
上述の導入部d2、d3は、凹部13のない平坦面16と対向する位置に設けることが好ましい。特に、マイクロポンプ効果によって導入される際の第1の被処理流体の流れ方向が処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも下流側の平坦面16に対向する位置に導入部d2、d3の開口を設置することが好ましい。これによって、層流条件下にて複数の被処理流体の混合と、微粒子の析出を行うことが可能となる。
第2導入部d2には方向性を持たせることが好ましい。例えば、導入部d2、d3からの導入方向が、第2処理用面2に対して所定の仰角で傾斜させることができ、これにより第1の被処理流体の流れに対する乱れの発生を抑制しつつ処理用面1、2間に第2の被処理流体を導入することができる。また、同導入部d2、d3からの導入方向が、上記の第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有せてもかまわない。
両処理用部10、20の外側に吐出した混合後の被処理流体は、微粒子分散液としてベッセルvを介して容器(図示せず)に集められるか、あるいは容器を経ずに図1の分散液改質装置100に送られる。
図3(A)の実施の形態に係る析出処理装置にあって、コアシェル型の微粒子を製造する場合にあっては、両処理用面1、2間の領域において、開口部d20と開口部d30との間の領域が、コアとなる微粒子の析出に係るコアとなる微粒子の析出形成領域となる。そして、両処理用面1、2間の領域において、開口部d30より下流(図の例では外側)の領域が、シェルとなる被覆物の析出に係るシェルとなる酸化物の析出領域となる。但し、コアとなる微粒子の析出とシェルとなる被覆物の析出とは連続して行われるため、両工程は完全に切りわけられるものでなくともよい。言い換えれば、シェルとなる被覆物の析出が開始された後にも、コアとなる微粒子の析出や成長が一部続いてもかまわない。
なお、上記の被処理流体の種類とその流路の数は、図3(A)の例では、3つとしたが、2つでもよく、界面活性剤や分散剤などを他の流体として区別して導入するために4つ以上の流路を形成してもよい。
また、各処理用部に設けられる導入部の開口部は、その形状や大きさや数は特に制限はなく適宜変更して実施し得る。たとえば、円環形状であってもよく、円環形状に配列された不連続な複数の開口であってもよく、単独の開口であってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例として、以下の実験を行った。各実験例において、A液とは、図3(A)に示す析出処理装置の第1導入部d1から導入される第1の被処理流体を指し、B液とは、同じく析出処理装置の第2導入部d2から導入される第2の被処理流体を指す。また本実施例においては、実験例C1からC3を行うための微粒子分散液の作製時を除いて第3導入部d3を敷設せず、第3の被処理流体を用いなかった。
(実験例の概要)
本発明の実施例及び比較例を示すために、大別して実験例A、B及びCの3種類の微粒子について、以下の実験を行った。実験例Aは金属微粒子分散液の改質であり、実験例Aに関する表については、A1から始まる番号を用いた。実験例Bは有機物微粒子分散液の改質であり、実験例Bに関する表については、B1から始まる番号を用いた。実験例Cは酸化物微粒子分散液の改質であり、実験例Cに関する表については、C1から始まる番号を用いた。
(実験例A:金属微粒子分散液の実験)
実験例Aは、金属微粒子分散液の改質として、銀銅合金微粒子分散液の改質を示すものである。これらの金属微粒子分散液の改質に関する実験例においては、微粒子の分散性を向上することに対する効果を示す。
(実験例A:金属微粒子(銀銅合金微粒子)分散液の実験)
実験例A1の結果を表A4−1に示した。表A4−1における分散安定性を示すための沈降度合いの評価基準は次の通りである。
A評価:2週間経過時点で沈降が実質的に確認されないもの。
B評価:2週間経過時点で沈降が確認されたが、極めて僅かなもの。
C評価:2週間経過時点で沈降が確認されたが、僅かなもの。
D評価:2週間経過時点で沈降が確認されたの。
E評価:2週間経過時点で多くの沈降が確認されたもの。
F評価:2週間経過時点で極めて多くの沈降が確認されたもの。
沈降度合いの評価は、分散液により満たされたビーカーの上方、側面及び底面から目視観察して沈降の程度を確認した。その際、沈降物の高さ、沈降物の明暗(暗い沈降物の方が明るい沈降物よりも沈降量が多いと考えられる)、沈降物のムラの有無、2層分離の明確性の各点を総合的に判断して、上記の評価を行った。なお、この評価は、後述する実験例A、実験例B、実験例Cの全てについて同じである。
(実験例A)
分散液を得る工程の前処理として高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、金属原料液、金属析出溶媒を調製した。具体的には、表A1に示す第一流体(A液)の処方に基づいて、金属原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度50℃、ローターの回転数を20000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、金属原料液を調製した。また、表A1に示す第二流体(B液)の処方に基づいて、金属析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数を15000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、金属析出溶媒を調製した。
なお、表A1に記載の化学式や略記号で示された物質については、AgNO3は硝酸銀(関東化学製)、Cu(NO32・3H2Oは硝酸銅三水和物(関東化学製) 、EGはエチレングリコール(キシダ化学製)、HMHはヒドラジン一水和物(関東化学製)、PVPはポリビニルピロリジノン(K=30)(関東化学製)、DMAEは2−ジメチルアミノエタノール(関東化学製)、KOHは水酸化カリウム(製品名:カセイカリフレーク、日本曹達製)、純水はpH 5.86(測定温度18.4℃)、導電率0.83μS/cm(測定温度18.3℃)の水を使用した。
次に、分散液を得る工程として、調製した金属原料液、金属析出溶媒を図3(A)に示す析出処理装置にて混合した。また本実験例においては第3導入部d3を敷設せず、第3の被処理流体を用いなかった(図示無し)。具体的には、A液として金属原料液を処理用面1,2間に導入し、処理用部10を回転数1700rpmで運転しながら、B液として金属析出溶媒を処理用面1,2間に導入して、金属析出溶媒と金属原料液とを薄膜流体中で混合し、処理用面1,2間において、金属微粒子を析出させた。その結果金属微粒子を含む流体(金属微粒子分散液)を析出処理装置の処理用面1、2間から吐出させた。吐出させた金属微粒子分散液を、ベッセルvを介してビーカーに回収した。
表A2に、析出処理装置の運転条件を示す。表A2に示したA液並びにB液の導入温度(送液温度)と導入圧力(送液圧力)は、処理用面1、2間に通じる密封された導入路(第1導入部d1並びに第2導入部d2)内に設けられた温度計と圧力計とを用いて測定したものであり、表A2に示したA液の導入温度は、第1導入部d1内の導入圧力下における実際のA液の温度であり、同じくB液の導入温度は、第2導入部d2内の導入圧力下における実際のB液の温度である。
pH測定には、堀場製作所製の型番D−71のpHメーターを用いた。A液及びB液を析出処理装置に導入する前に、そのpHを表A1に記載の温度にて測定した。また、金属原料液と金属析出溶媒との混合直後の混合流体のpHを測定することは困難なため、同装置から吐出させ、ビーカーに回収した金属微粒子分散液のpHを室温にて測定した。
(実験例A1)
実験例A1に係る分散液の改質実験は、本発明の実施例に相当する。
分散液を改質する工程においては、析出処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した金属微粒子分散液より、図1(A)の分散液改質装置100を用いて不純物の除去、並びにpH調整を行った。後述する表A3に、本発明の各実験例A1からA4に係る改質処理の方法並びに条件について示す。具体的には、まず図1(A)に示す収容容器130に5kgの純水(表A3:(1)、pH 5.86(測定温度23.2℃)、導電率0.83μS/cm(測定温度23.1℃))を投入し、ポンプ104の運転を開始することで、当該純水を、分散機102(表A3:(3)、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス、製品名:CLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック製)が敷設された分散用容器101に供給した。ポンプ104によって送液された純水は、分散用容器101内を満たしてオーバーフローし、除去部120に送液されて、一部はクロスフロー用洗浄液と共に濾液L3として排出され、一部は再び収容容器130に戻された。除去部120には、濾過膜(表A3:(4)中空糸型透析器、製品名:APS−21MD New、膜面積 : 2.1 m2 、材質:ポリスルホン、旭化成メディカル製 )を備えるもので、クロスフロー用洗浄液として純水が1.5L/min、21℃(表A3:(2)、pH 5.86(測定温度23.2℃)、導電率0.83μS/cm(測定温度23.1℃))にて通液されているものを用いた。
次に、分散機102の運転を開始し、ローター回転数を20000rpm(表A3:(5)周速度:31.4m/s)に設定した。収容容器130内の純水が1L(≒1kg)になるまで純水が排出された段階で、析出処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した金属微粒子分散液(以下、金属微粒子分散液)の3L(≒3kg)を収容容器130に投入した(表A3:(6)、(7))。金属微粒子分散液は、装置内を循環している純水と混合されて上記純水と同様に容器から分散処理装置、並びに濾過膜を経由して容器に循環された。この時、収容容器130内の金属微粒子分散液のpHは11.39(測定温度:25.4℃)(表A3:(8))、導電率は645μS/cm(測定温度:25.1℃)(表A3:(9))であった(表A4−1の実験例A1−1に示す。)。
金属微粒子分散液は分散用容器101内で分散処理されてから除去部120に送液されて濾過され、不純物を含む濾液L3がクロスフロー用洗浄液と共に排出された。ポンプ104によって6.4L/minの流量に送液された金属微粒子分散液は(表A3:(10))、5.4L/minにて再び収容容器130に戻されていたため(表A3:(11))、除去部120の濾過膜によって1.0L/minの流量にて不純物を含む濾液L3が排出されていることとなる(表A3:(12))。
収容容器130内の金属微粒子分散液が2.0L(≒2.0kg)にまで濃縮された段階で、収容容器130に純水(pH 5.86(測定温度:23.2℃)導電率 0.83μS/cm(測定温度23.1℃))を3L(≒3.0kg)投入した(表A3:(13)、(14))。投入中およびその前後でも運転状態を変化させることなく継続し、金属微粒子分散液中の不純物を除去した。濃縮時(分散液が2.0L)と希釈時(分散液が5L)との間に、金属微粒子分散液中の金属微粒子の濃度は、0.1wt%から0.2wt%の間を変動した(表A3:(15))。図1における圧力計について、Paは2本共に0.10MPaG、Pbは0.15MPaG、Pcは0.02MPaGを指していた(表A3:(16)、(17)、(18))。分散用容器101から、除去部120までの直前移送経路は、継路長(Lea)が、0.3m(表A3:(19))、配管内径(Leb)が0.0105mであった(表A3:(20))。直前移送経路における微粒子分散液の流速は1.2m/sec(表A3:(21))であり、また分散用容器101から除去部120によって不純物の除去が開始されるまでの時間T1は0.24sec(0.24秒)であり(表A3:(22))、つまり、不純物を分散液中に放出させた後、3秒以内に上記分散液から除去する除去処理を開始している。また、分散用容器101内に敷設された温度計(図示無し)は25℃から29℃(表A3:(23))、収容容器130内の金属微粒子分散液の温度は処理中24から29℃(表A3:(24))であった。なお、導電率測定には、堀場製作所製の型番ES−51の電気導電率計を用いた(表A3:(25))。
上記の処理を継続中に、収容容器130から処理時間毎に分取した金属微粒子分散液を、実験例A1−1から実験例A1−6とし、実験例A1−6の金属微粒子分散液にpH調整剤を加えた分散液を実験例A1−7、並びに実験例A1−8とした。実験例A1−1から実験例A1−8の金属微粒子分散液中の金属微粒子の濃度は、全て銀銅合金として0.2wt%であった。表A4−1に、金属微粒子分散液の改質処理中における、金属微粒子分散液のpH、導電率並びにPVP残存率を示す。
表A4−1に見られるように、改質処理を行うことによって、金属微粒子分散液のpH並びに導電率がクロスフロー用洗浄液並びに収容容器130に投入した純水と同様の値に近づいた。実験例A1−1から実験例A1−8についてそれぞれ分取した金属微粒子分散液の一部を希釈した液をコロジオン膜に滴下して大気雰囲気にて4時間乾燥させ、TEM観察試料とした。なお、上記PVP残存率は、分散液の改質処理中において上記実験例A1−1から実験例A1−8で得られた金属微粒子分散液それぞれについて、液中の金属微粒子である銀銅合金の濃度をICP分析によって算出し、分散液の一部を真空乾燥させて得られた固形分濃度から上記銀銅合金の濃度を差し引いた値をPVP濃度とし、上記銀銅合金の濃度に対する上記PVP濃度の割合について、分散液の改質処理開始時を残存率100%として算出した。
(分散安定性および自己分散性)
実験例A1−1、実験例A1−2の金属微粒子分散液は表A4−1の初期沈降確認時期に記載の時間で沈降が確認され、金属微粒子が含まれる層と、ほぼ金属微粒子が含まれていない層とに分離していることが確認された。なお、初期沈降確認時期とは、上記改質処理中において分取した分散液並びに当該分取した分散液にpH調整剤を投入して分散液のpHを調製してから始めに微粒子の沈降が確認された時期であり、この評価は、後述する実験例A、実験例B、実験例Cの全てについて同じである。実験例A1−3、並びに実験例A1−4については分取後1週間静置した時点で僅かに金属微粒子の沈降が見られ、実験例A1−5の金属微粒子分散液は、分取後1週間静置した時点で、極僅かに金属微粒子の沈降が見られたが、沈降物の量は、分散液中に含まれる金属微粒子の0.1wt%程度であった。しかし、実験例A1−5からさらに処理時間を延長して調製した実験例A1−6の金属微粒子分散液については分取後0.5時間静置した時点で明らかな金属微粒子の沈降が見られ、金属微粒子が含まれる層と、ほぼ金属微粒子が含まれていない層とに分離していることが確認された。本発明の分散液改質装置を用いて金属微粒子分散液の処理時間に基づいて、pHまたは導電率を制御することによって、金属微粒子分散液中の金属微粒子の分散性を制御できることがわかった。さらに実験例A1−5については、分取後2週間静置した時点で金属微粒子の沈降物が分取後1週間静置した時点よりもさらに少なくなっていることが確認され、実質的に沈降物は確認されなかった。金属微粒子分散液のpHを6.5から8.5の範囲となるように調製することで、金属微粒子分散液に含まれる金属微粒子の分散性を向上でき、金属微粒子分散液のpHを6.5から7.5の範囲とした金属微粒子分散液中の金属微粒子は、1週間の静置にて一旦発生した沈降物について、特に分散処理をすることなく再度分散したことから、自己分散性を有する金属微粒子を含むことが考えられた。
(分散工程及び除去工程終了後のpH調整)
実験例A1−6の金属微粒子分散液にpH調整剤として0.05wt%アンモニア水溶液を投入し、クレアミックス(製品名:CLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック製)にて20000rpmにて30分間の分散処理をすることで、実験例A1−7および実験例A1−8を調製した。実験例A1−7及び実験例A1−8の結果を表A4−1に示す。pHを6.73(測定温度:25.1℃)、導電率を4.16μS/cm(測定温度:25.3℃)に調製した実験例A1−7は、実験例A1−5の金属微粒子分散液と同様の分散安定性および自己分散性を示した。
pHを7.74(測定温度:25.6℃)、導電率を5.94μS/cm(測定温度:25.6℃)に調製した実験例A1−8については、実験例A1−3、並びに実験例A1−4の条件で得られた金属微粒子分散液と同様の分散安定性および自己分散性を示した。
(分散性の評価:TEM観察)
実験例A1−5の金属微粒子分散液中における金属微粒子のTEM写真を図4に示す。図4(a)の10000倍のTEM写真より、金属微粒子が均一に分散している様子が確認された。また、図4(b)の800000倍のTEM写真より一次粒子径は10nm程度であることが確認された。また同様の結果が実験例A1−7の条件で作製した金属微粒子についても得られた(図示無し)。なお、実験例AにおけるTEM観察は、透過型電子顕微鏡、JEM−2100(JEOL製)を用いて、観察条件として、加速電圧を200kV、観察倍率を1万倍以上として金属微粒子分散液の分散性を評価した。
実験例A1−6の条件で得られた金属微粒子のTEM写真を図5に示す。図5(a)の50000倍のTEM写真並びに(b)の100000倍のTEM写真より、金属微粒子が実験例A1−5に比べて凝集している様子が観察され、また凝集体の数も多く観察された。
実験例A1−4の条件で得られた金属微粒子のTEM写真を図6に示す。図6(a)の10000倍のTEM写真並びに(b)の600000倍のTEM写真より、金属微粒子が実験例A1−5に比べて凝集している様子が観察されたが、実験例A1−6の条件で得られた金属微粒子に比べると、凝集体の数も少なく、均一に分散している様子が観察された。また同様の結果が実験例A1−3並びに実験例A1−8の金属微粒子についても得られた(図示無し)。
実験例A1−1、並びに実験例A1−2のTEM写真においては、金属微粒子分散液の洗浄工程が未だ開始された直後であるため、実験例A1−6と同様の金属微粒子の凝集体に加えて、不純物(KOH、KNO3等)についても観察された(図示無し)。
以上の結果より、金属微粒子分散液より濾過膜を用いたクロスフロー方式にて不純物を除去する装置と分散機とからなる装置を用いて金属微粒子分散液を調製することによって、金属微粒子分散液に含まれる金属微粒子の分散性を制御することができた。また、金属微粒子分散液のpH制御範囲を6.5から8.5とすることで、分散安定性が向上することが分かった。さらに、例えば金属微粒子分散液のpHを5.97とすることで金属微粒子分散液中の金属微粒子の分散性が低下した場合にあっても、当該金属微粒子分散液のpHを6.5から8.5の範囲に再度調整することによって分散安定性が向上することが分かった。すなわち、本発明の分散液の改質方法における不純物の除去処理を行った後にpHまたは導電率を制御することによっても、金属微粒子分散液中の金属微粒子の分散性を制御できることがわかった。さらに、金属微粒子分散液中のPVPについても、上記処理を行うことによって低減できることがわかった。
(実験例A2、A3、A4)
実験例A2並びに実験例A3は実験例A1おける分散機102(クレアミックス)の回転数を変更した以外は実験例A1と同じ方法で改質処理を行い、実験例A4は、図1(A)に記載した装置の分散機102並びに分散用容器101を除し、金属微粒子分散液を満たした収容容器130から、除去部120へ、ポンプ104を用いて直接送液して濾過を行った以外は実験例A1と同じ方法で改質処理を行った。実験例A2は分散機の回転数を15000rpm(周速度:23.6m/sec)、実験例A3は6000rpm(周速度:7.9m/sec、実験例A3)に変更して行った条件であり、分散用容器101から、除去部120までの直前移送経路における、継路長(Lea)、配管内径(Leb)並びに微粒子分散液の流速、分散用容器101から除去部120によって不純物の除去が開始されるまでの時間T1は実験例A1と同じとした。実験例A2、A3及びA4の条件を表A3に、実験例A2の結果を表A4−2、実験例A3の結果を表A4−3、実験例A4の結果を表A4−4に示す。なお、実験例A2に係る分散液の改質実験は、本発明の実施例に相当し、実験例A3並びに実験例A4に係る分散液の改質実験は、本発明の比較例に相当する。
表A4−2に示した実験例A2の結果に見られるように、分散機の回転数を実験例A1に比べて低減させることによって、金属微粒子分散液のpH並びに導電率を実験例A1と同等とするまでに長時間が必要になったが、金属微粒子分散液のpH並びに導電率を実験例A1と同様の値となるまで調製することで、実験例A1で得られた金属微粒子分散液と同様の分散安定性を示す分散液を調製することができた。また実験例A1と同じ方法で、実験例A2−6の金属微粒子分散液にpH調整剤として0.05wt%アンモニア水溶液を投入して調製した実験例A2−7は、実験例A2−5の金属微粒子分散液と同様の分散安定性および自己分散性を示し、実験例A2−8は、実験例A2−3、並びに実験例A2−4の金属微粒子分散液と同様の分散安定性を示した。すなわち、実験例A1と同様に本発明の分散液の改質方法における除去処理を行った後にpHまたは導電率を制御することによっても、金属微粒子分散液中の金属微粒子の分散性を制御できることがわかった。
表A4−3に示した実験例A3の結果に見られるように、分散機の回転数が周速度:10m/sec以下の条件の場合には、金属微粒子分散液のpHを、例えば実験例A1において金属微粒子分散液の分散安定性が向上した6.5から8.5に調整した場合であっても、金属微粒子分散液の分散安定性が、実験例A1で得られた金属微粒子に比べて低いものであり、全ての条件について3日以内に金属微粒子の沈降が確認された。分散機102から凝集体bへの物理的エネルギーEが不十分のため、処理途中から、凝集体bの分散が不十分であることまたは分散機102から除去部120に送液する際に一部分散された粒子が全て凝集体bに戻ってしまい、図2(C)のような状態となったことが原因と考えられる。
表A4−4に示した実験例A4の結果に見られるように、分散機を敷設していない膜濾過装置によって金属微粒子分散液の改質処理を行った場合には、処理を繰り返してもpHが6.82を下回るまでの処理は、困難であった。また、実験例A1と同様のpHまで処理を行った場合であっても、実験例A1と同等の分散性並びに分散安定性を確認することはできず、全ての条件について3日以内に金属微粒子の沈降が確認された。また、処理終了までPVP残存率が100%となっており、本実験例A4で使用した濾過膜の条件では、銀銅合金微粒子を作製する際に用いたPVPを低減することができなかった。
(実験例A5)
実験例A5として、実験例Aにて析出処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した金属微粒子の分散液をバッチ式での分散処理と、膜濾過による改質処理とをそれぞれ単独にて行った。なお、実験例A5は本発明の比較例に相当する。具体的には、析出処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した金属微粒子の分散液を収容容器130に5kg(≒5.0L)投入し、クレアミックス(製品名:CLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック製)を用いて、20000rpm(周速度:31.4m/s)にて20分間の分散処理を行った。金属微粒子分散液の温度は、処理中24から29℃であった。分散処理終了後、実験例A4と同様に、図1(A)に記載した装置の分散機102並びに分散用容器101、即ち分処理装置110を除した装置を用いて、金属微粒子分散液を満たした収容容器130から、除去部120へ、ポンプ104を用いて直接送液して濾過を行った。処理に用いた濾過膜、洗浄液、ポンプ等は、実験例A1からA4と同じである。なお、分散処理終了後から、濾過開始までの時間は20分を要し、濾過開始の時点では既に金属微粒子の明らかな凝集と沈降が見られた。膜濾過の処理は、収容容器内の金属微粒子分散液が2L(≒2.0kg)となった時点で処理装置から金属微粒子分散液を抜き出し、金属微粒子分散液のpH、導電率並びに分散性並びに分散安定性を確認した。収容容器130に、純水を3.0L投入し、上記処理操作を繰り返すことで、金属微粒子分散液の改質処理を行った結果を、表A4−5に示す。
表A4−5に見られるように、金属微粒子分散液のpHが6.79となるまで改質処理を行った。しかし、処理を繰り返してもpHが6.79を下回るまでの処理は、困難であった。また、実験例A1と同様のpHまで処理を行った場合であっても、実験例A1と同等の分散性並びに分散安定性を確認することはできず、全ての条件について3日以内に金属微粒子の沈降が確認された。これは、実験例A5においては、バッチ式での分散処理と、膜濾過による除去処理とをそれぞれ単独にて行ったため、不純物によって再凝集が全てなされる前に、除去部によって上記不純物を上記分散液から除去する除去処理を行うことができなかったためである。
(実験例A6からA9)
実験例A1の改質処理の条件を変更し、実験例A6からA9の実験を行った。なお、実験例A6からA9の実験は本発明の実施例に相当する。変更した条件を表A4−6に示す。なお、表A4−6に示した圧力計表示Paは、図1(A)に示した圧力計Paの2本共の圧力表示である。
実験例A6の条件は、実験例A1よりもポンプ104の流量、即ち金属微粒子分散液を収容容器130から分散処理装置110、除去部120への送液流量を増加させた実験例であり、また、Lea並びにLebを実験例A1と同じとしているため、直前移送経路における分散液の流速(FL)が大きくなり、T1が短くなっている。実験例A6の条件では、実験例A1と同様のpHまたは導電率まで改質処理を行うことで、実験例A1より優れた分散性または分散安定性を示す金属微粒子分散液を調製することができた。表A4−6に見られるように、実験例A6の条件においては、ポンプ104の流量をA1よりも増加させることによって、濾液L3の排出量が増加させることができたため、処理時間を短縮することができた。実験例A7の条件は、実験例A1よりも金属微粒子分散液の温度を上昇させた実験例である。金属微粒子分散液の温度を上昇させることで、濾液L3の排出量を増加させることができたため、処理時間を短縮することができ、実験例A1と同様のpHまたは導電率まで改質処理を行うことで、実験例A1と同様の分散性または分散安定性を示す金属微粒子分散液を調製することができた。
なお、実験例A6で得られた金属微粒子における、実験例A1より優れた分散性または分散安定性を示す金属微粒子分散液とは、例えば実験例A1−4で得られたpHが7.77に調製された金属微粒子分散液に対して、同pHに調製することによって、より初期沈降確認時間が長くなり、またTEM観察においても金属微粒子が実験例A1−4よりも分散された状態を確認された金属微粒子分散液のことを示している。
実験例A8の条件は、実験例A1よりもポンプ104の流量を低減させ、Leaを増加させた実験条件である。濾液L3の排出量が低減し、T1が長い条件であるが、実験例A1と同様のpHまたは導電率まで改質処理を行うことで、実験例A1と同様の分散性または分散安定性を示す金属微粒子分散液を調製することができた。
実験例A9の条件は、実験例A1の条件からLea、Lebを変更することでT1が3秒以上となるように変更した条件である。実験例A1と同様のpHまたは導電率まで改質処理を行うことはできたが、実験例A1−5と同様のpHまで改質処理を行った場合においても、実験例A1−5で得られたような分散性並びに分散安定性を示す微粒子分散液を調製することはできなかった。
以上より、直前移送経路における流速、流量、流体圧、または温度を変更することで金属微粒子分散液に含まれる金属微粒子の分散性を制御でき、またそれらの変更によって、金属微粒子の分散性を向上することが可能であった。
(実験例B:有機物微粒子(クルクミン微粒子)分散液の実験)
実験例Bとして、有機物であるクルクミンについて示す。分散液を得る工程の前処理として高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、有機物原料液、有機物析出溶媒を調製した。具体的には、表B1に示す第二流体(B液)の処方に基づいて、有機物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度25℃、ローターの回転数を20000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、有機物原料液を調製した。また、表B1に示す第一流体(A液)の処方に基づいて、有機物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度35℃、ローターの回転数を15000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、有機物析出溶媒を調製した。
なお、表B1に記載の化学式や略記号で示された物質については、HPMCはヒドロキシメチルセルロース(メトロース SE−03信越化学工業製)、くえん酸(関東化学製)、EtOHはエタノール(純度99.5%、関東化学製)、純水はpH 5.86(測定温度18.4℃)、導電率0.83μS/cm(測定温度18.3℃)の水を使用した。
次に、分散液を得る工程として、調製した有機物原料液、有機物析出溶媒を図3(A)に示す析出処理装置にて混合した。また本実験例においては第3導入部d3を敷設せず、第3の被処理流体を用いなかった(図示無し)。具体的には、A液として有機物析出溶媒を処理用面1,2間に導入し、処理用部10を回転数500rpmで運転しながら、B液として有機原料液を処理用面1,2間に導入して、有機物析出溶媒と有機物原料液とを薄膜流体中で混合し、処理用面1,2間において、有機物微粒子を析出させた。その結果有機物微粒子を含む流体(有機物微粒子分散液)を析出処理装置の処理用面1、2間から吐出させた。吐出させた有機物微粒子分散液を、ベッセルvを介してビーカーに回収した。
表B2に、析出処理装置の運転条件を示す。表B2に示したA液並びにB液の導入温度(送液温度)と導入圧力(送液圧力)は、処理用面1、2間に通じる密封された導入路(第1導入部d1並びに第2導入部d2)内に設けられた温度計と圧力計とを用いて測定したものであり、表B2に示したA液の導入温度は、第1導入部d1内の導入圧力下における実際のA液の温度であり、同じくB液の導入温度は、第2導入部d2内の導入圧力下における実際のB液の温度である。
pH測定には、堀場製作所製の型番D−71のpHメーターを用いた。A液を析出処理装置に導入する前に、そのpHを表B1に記載の温度にて測定した。また、有機物原料液と有機物析出溶媒との混合直後の混合流体のpHを測定することは困難なため、同装置から吐出させ、ビーカーに回収した有機物微粒子分散液のpHを室温にて測定した。
(実験例B1)
実験例B1に係る分散液の改質実験は、本発明の実施例に相当する。
分散液を改質する工程においては、析出処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した有機物微粒子分散液より、図1(A)の分散液改質装置100を用いて不純物の除去、並びにpH調整を行った。後述する表B3に、本発明の各実験例B1からB4に係る改質処理の方法並びに条件について示す。表B3に記載した条件以外は、実験例Aと同様の操作にて処理を行った。
表B3に示した実験例B1の条件で、改質処理を継続中に、収容容器130から処理時間毎に分取した有機物微粒子分散液を、実験例B1−1から実験例B1−5とし、実験例B1−5の有機物微粒子分散液にpH調整剤を加えた分散液を実験例B1−6、並びに実験例B1−7とし、実験例B1−6にpH調整剤を加えた分散液を実験例B1−8とした。実験例B1−1から実験例B1−8の条件で得られた有機物微粒子分散液中の有機物微粒子の濃度は、全てクルクミンとして0.2wt%であった。表B4−1に、有機物微粒子分散液の改質処理中における、有機物微粒子分散液のpH、導電率並びにエタノール残存率(EtOH残存率)を示す。
表B4−1に見られるように、改質処理を行うことによって、有機物微粒子分散液のpH並びに導電率がクロスフロー用洗浄液並びに収容容器130に投入した純水と同様の値に近づいた。実験例B1−1から実験例B1−8について、それぞれ分取した有機物微粒子分散液の一部を希釈した液をコロジオン膜に滴下して大気雰囲気にて4時間乾燥させ、TEM観察試料とした。なお、上記EtOH残存率は、実験例B1−1から実験例B1−8の条件毎に一部分取した有機物微粒子分散液を凍結乾燥して得られたクルクミン粉末中に含まれるエタノールの濃度であり、得られたクルクミン粉末をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、ガスクロマトグラフィーを用いて測定した結果である。表において、EtOH残存率が0と記載されている結果は、ガスクロマトグラフィーでの測定における検出限界(クルクミン粉末中のEtOH残存率:0.01%)以下を意味する。
(分散安定性および自己分散性)
実験例B1−1、実験例B1−2の有機物微粒子分散液については、表B4−1の初期沈降確認時期に記載の時間で沈降が見られ、有機物微粒子が含まれる層と、ほぼ有機物微粒子が含まれていない層とに分離していることが確認された。実験例B1−3並びに実験例B1−4については分取後1週間静置した時点で僅かに有機物微粒子の沈降が見られ、実験例B1−5の有機物微粒子分散液については、分取後1週間静置した時点で、極僅かに有機物微粒子の沈降が見られたが、沈降物の量は、分散液中に含まれる有機物微粒子の0.1wt%程度であった。本発明の分散液改質装置を用いて有機物微粒子分散液の処理時間に基づいて、pHまたは導電率を制御することによって、有機物微粒子分散液中の有機物微粒子の分散性が向上することがわかった。さらに実験例B1−5ついては、分取後2週間静置した時点で有機物微粒子の沈降物が分取後1週間静置した時点よりも少なくなっていることが確認され、実質的に沈降物は確認されなかったため、特に分散処理をすることなく再度分散したことから、自己分散性を有する有機物微粒子を含むことが考えられた。
(除去工程終了後のpH調整)
また、実験例B1−5の有機物微粒子分散液にpH調整剤として0.05wt%炭酸水素ナトリウム水溶液を投入し、クレアミックス(製品名:CLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック製)にて20000rpmにて30分間分散処理して、実験例B1−6及び実験例B1−7を作製した。また、実験例B1−6に、pH調整剤として0.02wt%くえん酸水溶液を投入し再度クレアミックス(製品名:CLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック製)にて20000rpmにて30分間分散処理して、実験例B1−8の有機物微粒子分散液を調製した。実験例B1−6から実験例B1−8の結果を表B4−1に示す。pHを6.51(測定温度:25.1℃)、導電率を6.29μS/cm(測定温度:25.3℃)となるように調製した実験例B1−6については、実験例B1−3、または実験例B1−4の有機物微粒子分散液と同様の分散安定性を示した。pHを7.68(測定温度:25.1℃)、導電率を20.1μS/cm(測定温度:25.1℃)となるように調製した実験例B1−7については、実験例B1−5に比べて分散安定性が低下した。pHを5.81(測定温度:25.4℃)、導電率を18.6μS/cm(測定温度:25.1℃)となるように調製した実験例B1−8については、実験例B1−5の条件で得られた有機物微粒子分散液と同様の分散安定性および自己分散性を示した。
(分散性の評価:TEM観察)
実験例B1−5の条件で得られた有機物微粒子のTEM写真を図7に示す。図7(a)の2500倍のTEM写真より、有機物微粒子が均一に分散している様子が確認された。また、図7(b)の20000倍のTEM写真より一次粒子径は50nmから100nm程度であることが確認された。また同様の結果が実験例B1−8の条件で作製した有機物微粒子についても得られた(図示無し)。なお、実験例BにおけるTEM観察は、透過型電子顕微鏡、JEM−2100(JEOL製)を用いて、観察条件として、加速電圧を80kV、観察倍率を2500倍以上として有機物微粒子分散液の分散性を評価した。
実験例B1−7の条件で得られた有機物微粒子のTEM写真を図8に示す。図8(a)の2500倍のTEM写真並びに(b)の10000倍のTEM写真より、有機物微粒子が実験例B1−5に比べて凝集している様子が観察され、また溶解したような粒子も観察された。
実験例B1−4の条件で得られた有機物微粒子のTEM写真を図9に示す。図9(a)の2500倍のTEM写真並びに(b)の10000倍のTEM写真より、有機物微粒子が実験例B1−5に比べて凝集している様子が観察されたが、実験例B1−7の条件で得られた有機物微粒子に比べると、凝集体の数も少なく、均一に分散している様子が観察された。また同様の結果が実験例B1−3並びにB1−6の条件で作製した有機物微粒子についても得られた(図示無し)。
実験例B1−1、並びに実験例B1−2のTEM写真においては、有機物微粒子分散液の洗浄工程が未だ開始された直後であるため、有機物微粒子の凝集体に加えて、不純物(くえん酸等)についても観察された(図示無し)。
以上の結果より、有機物微粒子分散液より濾過膜を用いたクロスフロー方式にて不純物を除去する装置と分散機とからなる装置を用いて有機物微粒子分散液を調製することによって、有機物微粒子分散液に含まれる有機物微粒子の分散性を制御でき、有機物微粒子分散液の処理時間に基づいて、pHまたは導電率を制御することによって分散安定性が向上できることがわった。また、本発明の分散液の改質方法について不純物の除去処理を行った後にpHまたは導電率を制御することによっても、有機物微粒子分散液中の有機物微粒子の分散性を制御できることがわかった。
(実験例B2、B3、B4)
実験例B2並びに実験例B3は実験例B1における分散機の回転数を変更した以外は実験例B1と同じ方法で改質処理を行い、実験例B4は図1(A)に記載した装置の分散機102並びに分散用容器101を除し、有機物微粒子分散液を満たした収容容器130から、除去部120へ、ポンプ104を用いて直接送液して濾過を行った以外は実験例B1と同じ方法で改質処理を行った。処理条件を表B3に、実験例B2の結果を表B4−2、実験例B3の結果を表B4−3、実験例B4の結果を表B4−4に示す。なお、実験例B2に係る分散液の改質実験は、本発明の実施例に相当し、実験例B3並びに実験例B4に係る分散液の改質実験は、本発明の比較例に相当する。
表B4−2に示した実験例B2の結果に見られるように、分散機の回転数を実験例B1に比べて低減させることによって、有機物微粒子分散液のpH並びに導電率を同等とするまでに長時間が必要になったが、有機物微粒子分散液のpH並びに導電率を実験例B1と同様の値となるまで調製することで、実験例B1で得られた有機物微粒子分散液と同様の分散性を示す分散液を調製することができた。また、実験例B1と同じ方法で実験例B2−5の有機物微粒子分散液にpH調整剤として0.05wt%炭酸水素ナトリウム水溶液を投入して調製した実験例B2−6は、実験例B2−5に比べて分散性が低下し、実験例B2−3並びに実験例B2−4と同様の分散性を示し、実験例B2−6に0.02wt%くえん酸水溶液を投入して調製した実験例B2−7は、実験例B2−5と同様の分散安定性を示した。すなわち、実験例B1と同様に本発明の分散液の改質方法における除去処理を行った後にpHまたは導電率を制御することによっても、有機物微粒子分散液中の有機物微粒子の分散性を制御できることがわかった。
表B4−3に示した実験例B3の結果に見られるように、分散機の回転数が周速度:10m/sec以下の条件の場合には、有機物微粒子分散液のpHを、例えば実験例B1において有機物微粒子分散液の分散安定性が向上した5.4から6.5に調整した場合であっても、有機物微粒子分散液の分散安定性が、実験例B1で得られた有機物微粒子に比べて低いものであり、全ての条件について3日以内に金属微粒子の沈降が確認された。分散機102から凝集体bへの物理的エネルギーEが不十分のため、処理途中から、凝集体bの分散が不十分となったことまたは分散機102から除去部120に送液する際に一部分散された粒子が全て凝集体bに戻ってしまい、図2(C)のような状態とったことが原因と考えられる。
表B4−4に示した実験例B4の結果に見られるように、分散機を敷設していない膜濾過装置によって有機物微粒子分散液の改質処理を行った場合には、処理を繰り返してもpHが5.29を上回るまでの処理は、困難であった。また、実験例B1と同等の分散性並びに分散安定性を確認することはできず、全ての条件について1日以内に有機物微粒子の沈降が確認された。
(実験例B5)
実験例B5として、実験例Bにて析出処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した有機物微粒子分散液をバッチ式での分散処理と、膜濾過による改質処理とをそれぞれ単独にて行った。なお、実験例B5は本発明における比較例に相当する。具体的には、析出処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した有機物微粒子の分散液を収容容器130に5kg(≒5.0L)投入し、クレアミックス(製品名:BLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック製)を用いて、20000rpm(周速度:31.4m/s)にて20分間の分散処理を行った。有機物微粒子分散液の温度は、処理中24から28℃であった。分散処理終了後、実験例B4と同様に、図1(A)に記載した装置の分散機102並びに分散用容器101、即ち分処理装置110を除した装置を用いて、有機物微粒子分散液を満たした収容容器130から、除去部120へ、ポンプ104を用いて直接送液して濾過を行った。処理に用いた濾過膜、洗浄液、ポンプ等は、実験例B1からB4と同じである。なお、分散処理終了後から、濾過開始までの時間は20分を要し、濾過開始の時点では既に有機物微粒子の明らかな凝集と沈降が見られた。膜濾過の処理は、収容容器内の有機物微粒子分散液が2L(≒2.0kg)となった時点で処理装置から有機物微粒子分散液を抜き出し、有機物微粒子分散液のpH、導電率並びに分散性並びに分散安定性を確認した。収容容器130に、純水を3.0L投入し、上記処理操作を繰り返すことで、有機物微粒子分散液の改質処理を行った結果を、表B4−5に示す。
表B4−5に見られるように、有機物微粒子分散液のpHが5.39となるまで改質処理を行った。しかし、処理を繰り返してもpHが5.39を上回るまでの処理は、困難であった。また、実験例B1と同様のpHまで処理を行った場合であっても、実験例B1と同等の分散性並びに分散安定性を確認することはできなかった。これは、実験例B5においては、バッチ式での分散処理と、膜濾過による除去処理とをそれぞれ単独にて行ったため、不純物によって再凝集が全てなされる前に、除去部によって上記不純物を上記分散液から除去する除去処理を行うことができなかったためである。
(実験例B6からB9)
実験例B1の改質処理の条件を変更し、実験例B6からB9の実験を行った。なお、実験例B6からB8の実験は本発明の実施例に相当し、実験例B9の実験は比較例に相当する。変更した条件を表B4−6に示す。なお、表B4−6に示した圧力計表示Paは、図1(A)に示した圧力計Paの2本共の圧力表示である。
実験例B6の条件は、実験例B1よりもポンプ104の流量、即ち有機物微粒子分散液を収容容器130から分散処理装置110、除去部120への送液流量を増加させた実験例であり、また、Lea並びにLebを実験例B1と同じとしているため、直前移送経路における分散液の流速(FL)が向上し、T1が短くなっている。実験例B6の条件では、実験例B1と同様のpHまたは導電率まで改質処理を行うことで、実験例B1より優れた分散性または分散安定性を示す有機物微粒子分散液を調製することができた。表B4−6に見られるように、実験例B6の条件においては、ポンプ104の流量をB1よりも増加させることによって、濾液L3の排出量が増加させることができたため、処理時間を短縮することができた。実験例B7の条件は、実験例B1よりも有機物微粒子分散液の直前移送経路の圧力を上昇させた実験例である。実験例B1と同様のpHまたは導電率まで改質処理を行うことで、実験例B1と同様の分散性または分散安定性を示す有機物微粒子分散液を調製することができ、また、濾液L3の排出量が増加させることができたため、処理時間を短縮することができた。
なお、実験例B6で得られた有機物微粒子における、実験例B1より優れた分散性または分散安定性を示す有機物微粒子分散液とは、例えば実験例B1−4で得られたpHが5.52に調製された有機物微粒子分散液に対して、同pHに調製することによって、より初期沈降確認時間が長くなり、またTEM観察においても有機物微粒子が実験例B1−4よりも分散された状態を確認された有機物微粒子分散液のことを示している。
実験例B8の条件は、実験例B1よりもポンプ104の流量を低減させ、Leaを増加させた実験条件である。濾液L3の排出量が低減し、T1が長い条件であるが、実験例B1と同様のpHまたは導電率まで改質処理を行うことで、実験例B1と同様の分散性または分散安定性を示す有機物微粒子分散液を調製することができた。
実験例B9の条件は、実験例B1の条件からLea、Lebを変更することでT1が3秒以上なるように変更した条件であり、処理を繰り返してもpHが5.29を上回るまでの処理が困難であり、また実験例B1と同等の分散性並びに分散安定性を確認することはできず、全ての条件について3日以内に有機物微粒子の沈降が確認された。T1が3秒以上となったことによって、散機102から凝集体bへの物理的エネルギーEによって、一旦は分散した有機物微粒子が、分散機102から除去部120に送液する際に凝集体bに戻ってしまい、図2(C)のような状態となったことが原因と考えられる。
以上より、直前移送経路における流速、流量または流体圧を変更することで有機物微粒子分散液に含まれる有機物微粒子の分散性を制御でき、またそれらの変更によって、有機物微粒子の分散性を向上することが可能であった。
(実験例C:酸化物微粒子分散液の実験)
分散液を得る工程の前処理として高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、酸化物原料液、酸化物析出溶媒、並びにケイ素酸化物原料液を調製した。具体的には、表C1に示す第1流体(A液)の処方に基づいて、酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローターの回転数を20000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化物原料液を調製した。また、表C1に示す第2流体(B液)の処方に基づいて、酸化物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数を15000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化物析出溶媒を調製した。さらに、表C1に示す第3流体 ケイ素酸化物原料液(C液)の処方に基づいて、ケイ素酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度20℃、ローターの回転数6000rpmにて10分間撹拌することにより均質に混合し、ケイ素酸化物原料液を調製した。
なお、表C1に記載の化学式や略記号で示された物質については、97wt%HSOは濃硫酸(キシダ化学製)、NaOHは水酸化ナトリウム(関東化学製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬製)、Fe(NO33・9HOは硝酸鉄九水和物(関東化学製)を使用した。
次に、分散液を得る工程として、調製した酸化物原料液、酸化物析出溶媒、並びにケイ素酸化物原料液を図3(A)に示す析出処理装置にて混合した。具体的には、A液として酸化物原料液を処理用面1,2間に導入し、処理用部10を回転数1130rpmで運転しながら、B液として酸化物析出溶媒を処理用面1,2間に導入して、酸化物析出溶媒と酸化物原料液とを薄膜流体中で混合し、処理用面1,2間において、酸化物微粒子を析出させた。次に、C液としてケイ素酸化物原料液を処理用面1,2間に導入し、薄膜流体中おいて先に析出させた酸化物微粒子を含む混合流体と混合した。その結果、先に析出させた酸化物微粒子の表面にケイ素酸化物が析出され、ケイ素酸化物に被覆された酸化物微粒子を含む流体(以下、ケイ素酸化物に被覆された酸化物微粒子分散液)を析出処理装置の処理用面1、2間から吐出させた。吐出させたケイ素酸化物に被覆された酸化物微粒子分散液を、ベッセルvを介してビーカーに回収した。
表C2に、析出処理装置の運転条件を示す。表C2に示したA液、B液並びにC液の導入温度(送液温度)と導入圧力(送液圧力)は、処理用面1、2間に通じる密封された導入路(第1導入部d1と第2導入部d2、並びに第3導入部d3)内に設けられた温度計と圧力計とを用いて測定したものであり、表C2に示したA液の導入温度は、第1導入部d1内の導入圧力下における実際のA液の温度であり、同じくB液の導入温度は、第2導入部d2内の導入圧力下における実際のB液の温度であり、C液の導入温度は、第3導入部d3内の導入圧力下における実際のC液の温度である。
pH測定には、堀場製作所製の型番C−71のpHメーターを用いた。A液、B液およびC液を析出処理装置に導入する前に、そのpHを室温にて測定した。また、酸化物原料液と酸化物析出溶媒との混合直後の混合流体のpH、並びに先に析出させた酸化物微粒子を含む流体とケイ素酸化物原料液との混合直後のpHを測定することは困難なため、同装置から吐出させ、ビーカーに回収したケイ素酸化物に被覆された酸化物微粒子分散液のpHを室温にて測定した。
(実験例C1)
実験例C1に係る分散液の改質実験は、本発明の実施例に相当する。
分散液を改質する工程においては、析出処理装置から吐出させ、ビーカーに回収したケイ素酸化物に被覆された酸化物微粒子分散液より、図1(A)の分散液改質装置100を用いて不純物の除去、並びにpH調整を行った。後述する表C12に、本発明の各実験例C1からC3、並びに実験例C5からC6に係る改質処理の方法並びに条件について示す。表C12に記載した条件以外は、実験例Aと同様の操作にて処理を行った。
表C12に示した実験例C1の条件で、改質処理を継続中に、収容容器130から処理時間毎に分取した酸化物微粒子分散液を、実験例C1−1から実験例C1−9とし、実験例C1−9の酸化物微粒子分散液にpH調整剤を加えた分散液を実験例C1−10、実験例C1−11並びに実験例C1−12とした。実験例C1−1から実験例C1−12の酸化物微粒子分散液中の酸化物微粒子の濃度は、全てFe3として4.0wt%であった。表C3に、酸化物微粒子分散液の改質処理中における、酸化物微粒子分散液のpH、並びに導電率を示す。改質処理を行うことによって、酸化物微粒子分散液のpH並びに導電率がクロスフロー用洗浄液並びに収容容器130に投入した純水と同様の値に近づいた。実験例C1−1から実験例C1−12についてそれぞれ分取した酸化物微粒子分散液の一部はプロピレングリコール(以下、PG)にて希釈し、クレアミックス(製品名:CLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック製)にて20000rpm(周速度:31.4m/s)にて30min分散処理した。得られた酸化物微粒子のPG分散液の一部をイソプロピルアルコール(以下、IPA)にて希釈し、超音波洗浄機にて5min処理した液をコロジオン膜に滴下して大気雰囲気にて4時間乾燥させ、TEM観察試料とした。また、酸化物微粒子のPG分散液の残りについては、UV−Visスペクトルを測定した。
(UV−Visスペクトル)
UV−Visスペクトルは、可視紫外吸光分光光度計(製品名:UV−2450、島津製作所製)を使用した。測定範囲を200nmから800nm、サンプリングレートを0.2nm、測定速度を低速としてとして透過スペクトルを測定した。透過スペクトル測定には、PGにケイ素酸化物被覆酸化鉄を2.1×10-3mol/L(Fe23として)の濃度で分散させた分散液を測定試料として用いた。
(分散安定性および自己分散性)
実験例C1−1、実験例C1−2、実験例C1−8、実験例C1−9の酸化物微粒子分散液については、表C3の初期沈降確認時期に記載の時間で酸化物微粒子の沈降が見られ、酸化物微粒子が含まれる層と、ほぼ酸化物微粒子が含まれていない層とに分離した。実験例C1−3並びに実験例C1−4については分取後1週間静置した時点で僅かに酸化物微粒子の沈降が見られ、実験例C1−5から実験例C1−7の酸化物微粒子分散液については、分取後1週間静置した時点で、極僅かに酸化物微粒子の沈降が見られたが、沈降物の量は、分散液中に含まれる酸化物微粒子の0.1wt%程度であった。また、実験例C1−3並びに実験例C1−4については更に1週間(分取後2週間)静置した時点で、分取後1週間静置した時点よりも僅かに多い酸化物微粒子の沈降が見られたものの、沈降物の量は、分散液中に含まれる酸化物微粒子の0.2wt%程度であった。本発明の分散液改質装置を用いて酸化物微粒子分散液のpHが6.5から8.5の範囲とすることで、酸化物微粒子分散液の分散安定性が向上することがわかった。さらに実験例C1−5から実験例C1−7ついては、分取後2週間静置した時点では、驚くことに沈降物は確認できなかった。pHが6.5から7.5の範囲とした酸化物微粒子分散液中の酸化物微粒子は、1週間の静置にて一旦発生した沈降物について、特に分散処理をすることなく再度分散したことから、自己分散性を有する酸化物微粒子を含むことが考えられた。
(除去工程終了後のpH調整)
実験例C1−9の酸化物微粒子分散液にpH調整剤として0.05wt%アンモニア水溶液を投入し、クレアミックス(製品名:CLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック製)にて20000rpmにて30分間分散処理して実験例C1−10から実験例C1−12を調製した。実験例C1−10から実験例C1−12の結果を表C3に示す。
pHを6.72、導電率を3.51μS/cm(測定温度:26.7℃)に調製した実験例C1−10、並びにpHを7.24、導電率を6.25μS/cm(測定温度:26.8℃)に調製した実験例C1−11は、実験例C1−5から実験例C1−7の酸化物微粒子分散液と同様の分散安定性および自己分散性を示した。pHを8.35、導電率を25.9μS/cm(測定温度:26.9℃)に調製した実験例C1−12は、実験例C1−3並びに実験例C1−4の酸化物微粒子分散液と同様の分散安定性および自己分散性を示した。なお、実験例C1−1の酸化物微粒子分散液に0.1wt%硝酸水溶液を加えて、pHを6.90(測定温度23.4℃)としたものについては、導電率は12460μS/cm(12.46mS/cm)であり、調整後0.1時間以内に明らかな沈降が見られ、酸化物微粒子が含まれる層と、ほぼ酸化物微粒子が含まれていない層とに分離した。これより本発明の改質処理における不純物の除去処理を行っていない場合には、pHを調整した場合にあっても分散性を制御できないことがわかった。
(分散性の評価:TEM観察)
実験例C1−6の酸化物微粒子のTEM写真を図10に示す。図10(a)の10000倍のTEM写真より、酸化物微粒子が均一に分散している様子が確認された。また、図10(b)の800000倍のTEM写真より一次粒子径は8nm程度であることが確認された。また同様の結果が実験例C1−5、実験例C1−7、実験例C1−10並びに実験例C1−11の酸化物微粒子についても得られた(図示無し)。なお、実験例CにおけるTEM観察は、透過型電子顕微鏡、JEM−2100(JEOL製)を用いて、観察条件として、加速電圧を80kV、観察倍率を10000倍以上として酸化物微粒子分散液の分散性を評価した。
実験例C1−9の酸化物微粒子のTEM写真を図11に示す。図11(a)の10000倍のTEM写真並びに(b)の100000倍のTEM写真より、酸化物微粒子が実験例C1−6に比べて凝集している様子が観察され、また凝集体の数も多く観察された。また同様の結果が実験例C1−8の酸化物微粒子についても得られた(図示無し)。
実験例C1−4の酸化物微粒子のTEM写真を図12に示す。図12(a)の10000倍のTEM写真並びに(b)の25000倍のTEM写真より、酸化物微粒子が実験例C1−6に比べて凝集している様子が観察されたが、実験例C1−9の酸化物微粒子に比べると、凝集体の数も少なく、均一に分散している様子が観察された。また同様の結果が実験例C1−3、並びに実験例C1−12の酸化物微粒子についても得られた。
実験例C1−1、並びに実験例C1−2のTEM写真においては、酸化物微粒子分散液の洗浄工程が未だ開始された直後であるため、実験例C1−8、並びに実験例C1−9と同様の酸化物微粒子の凝集体に加えて、不純物(NaOH、NaNO3、NaSO4等)についても観察された(図示無し)。
(UV−Visスペクトル測定結果)
実験例C1−2、実験例C1−4、実験例C1−6、実験例C1−9の酸化物微粒子分散液を用いて調製したPG分散液を用いて行ったUV−Visスペクトル測定結果(透過スペクトル)を図13に示す。実験例C1−4、実験例C1−6の酸化物微粒子分散液を用いて調製したPG分散液は、略同じスペクトル形状を示し、波長200nmから400nmの領域においては吸収を示し、700nmから800nmの領域においては95%以上の透過率を示した。それに対し、実験例C1−2、実験例C1−9の酸化物微粒子分散液を用いて調製したPG分散液は700nmから800nmの領域における透過率が実験例C1−4、実験例C1−6に比べて低いものとなった。実験例C1−2、実験例C1−9の酸化物微粒子分散液中の酸化物微粒子の分散性が、実験例C1−4、実験例C1−6に比べて低いため、実験例C1−2、実験例C1−9の酸化物微粒子分散液に含まれる酸化物微粒子がPG分散液中において均一に分散しておらず、凝集体も形成されたために、実験例C1−4、1−6のPG分散液よりも可視領域の光の透過率が低いと考えられる。
以上の結果より、酸化物微粒子分散液より濾過膜を用いたクロスフロー方式にて不純物を除去する装置と分散機とからなる装置を用いて酸化物微粒子分散液を調製することによって、酸化物微粒子分散液の処理時間に基づいて、pHまたは導電率を制御することによって分散安定性が向上できることがわかった。また得られた酸化物微粒子分散液を用いて他の分散媒を用いた分散液を調製する場合の酸化物微粒子分散液の分散性も向上することが分かった。また、本発明の分散液の改質方法について不純物の除去処理を行った後に、分散液のpHまたは導電率を制御することで、酸化物微粒子分散液に含まれる酸化物微粒子の分散性を制御できることが分かった。また、例えばpHを6.01とした酸化物微粒子分散液についてもpHを6.5から8.5の範囲に再度調整することによって分散安定性が向上し、また得られた酸化物微粒子分散液を用いて他の分散媒を用いた分散液を調製する場合の酸化物微粒子分散液の分散性も向上することが分かった。
(実験例C2)
実験例C2に係る分散液の改質実験は、本発明の比較例に相当する。
実験例C2として、図1(A)に記載した装置の分散機102並びに分散用容器101を除し、酸化物微粒子分散液を満たした収容容器130から、除去部120へ、ポンプ104を用いて直接送液して濾過を行った以外は、実験例C1と同様の方法で酸化物微粒子分散液中の不純物の除去並びにpH調整を行い、酸化物微粒子分散液の改質処理を行った。表C4に実験例C2の結果を示す。
表C4に示したように、酸化物微粒子分散液のpHが7.48となるまで改質処理を行った。しかし、処理を繰り返してもpHが7.48を下回るまでの処理は、困難であった。また、実験例C1と同様のpH並びに導電率まで改質処理を行った場合であっても、実験例C1と同等の分散性並びに分散安定性を確認することはできなかった。
(実験例C3)
実験例C3に係る分散液の改質実験は、本発明における分散機の周速度が10m/s以下である実施例に相当する。
実験例C3として、図1(A)に記載した装置について分散機の周速度を7.1m/sとした以外は、実験例C1と同様の方法で酸化物微粒子分散液の改質処理を行った。実験例C3の条件を表C12に、結果を表C5に示す。
表C5に示したように、実験例C1に比べて、酸化物微粒子分散液のpH並びに導電率を同等とするまでに時間を要したが、処理の繰り返しによってpHが6.31となるまでの処理を行った。また、改質処理を継続して実験例C1と同様のpHまで改質処理を行った例(例えば実験例C3−5から実験例C3−7)についても、実験例C1と同等の分散性並びに分散安定性を確認することはできなかったが、比較例に相当する実験例C2−5から実験例2−7に比して改善が見られた。
(分散工程及び除去工程終了後のpH調整)
また、実験例C3−8(pH6.31)の酸化物微粒子分散液にpH調整剤として0.05wt%アンモニア水溶液を投入し、クレアミックス(製品名:CLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック製)にて20000rpmにて30分間分散処理して実験例C3−9から実験例C3−11を作製した。pHを6.81、導電率を6.12μS/cm(測定温度:26.7℃)に調製した実験例C3−9は、pHを7.36、導電率を6.77μS/cm(測定温度:26.8℃)に調製した実験例C3−10は、実験例C3−6並びに実験例C3−7の酸化物微粒子分散液と同様の分散安定性および自己分散性を示した。pHを8.25、導電率を23.3μS/cm(測定温度:26.9℃)に調製した実験例C3−11は、実験例C3−4並びに実験例C3−5の酸化物微粒子分散液と同様の分散安定性および自己分散性を示した。
(実験例C4)
実験例C4として、実験例Cにて析出処理装置から吐出させ、ビーカーに回収したケイ素酸化物に被覆された酸化物微粒子分散液をバッチ式での分散処理と、膜濾過による除去処理とをそれぞれ単独にて行った。なお、実験例C4は本発明の比較例に相当する。具体的には、析出処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した酸化物微粒子の分散液を収容容器130に14kg(≒14L)投入し、クレアミックス(製品名:CLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック製)を用いて、20000rpm(周速度:31.4m/s)にて30分間の分散処理を行った。酸化物微粒子分散液の温度は、処理中22℃から24℃であった。分散処理終了後、図1(A)に記載した装置の分散機102並びに分散用容器101、即ち分処理装置110を除した装置を用いて、酸化物微粒子分散液を満たした収容容器130から、除去部120へ、ポンプ104を用いて直接送液して濾過を行った。処理に用いた濾過膜、洗浄液、ポンプ等は、実験例C1からC3と同じである。なお、分散処理終了後から、濾過開始までの時間は20分を要し、濾過開始の時点では既に酸化物微粒子の明らかな凝集と沈降が見られた。膜濾過の処理は、収容容器内の酸化物微粒子分散液が1.5L(≒1.5kg)となった時点で処理装置から酸化物微粒子分散液を抜き出し、酸化物微粒子分散液のpH、導電率並びに分散性並びに分散安定性を確認した。収容容器130に、純水を13.5L投入し、上記操作を繰り返すことで、酸化物微粒子分散液の改質処理を行った結果を、表C6に示す。
表C6に見られるように、酸化物微粒子分散液のpHが7.04となるまで改質処理を行った。しかし、処理を繰り返してもpHが7.04を下回るまでの処理は、困難であった。また、実験例C1と同様のpHまで洗浄した場合であっても、実験例C1と同等の分散性並びに分散安定性を確認することはできなかった。これは、実験例C4においては、バッチ式での分散処理と、膜濾過による除去処理とをそれぞれ単独にて行ったため、不純物によって再凝集が全てなされる前に、除去部によって上記不純物を上記分散液から除去する除去処理を行うことができなかったためである。
(実験例C5と6とに用いる分散液の作製)
次に、実験例C1からC4とは異なる酸化物微粒子の分散液によって、実験例C5と実験例C6とを行った。実験例C5と実験例C6とに用いる分散液を得る前工程として、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック製)を用いて、酸化物原料液及び酸化物析出溶媒を調製した。具体的には、表C7に示す第2流体(B液)の処方に基づいて、酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度70℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化物原料液を調製した。また、表C7に示す第1流体(A液)の処方に基づく酸化物析出溶媒については他の物質等溶解させていない単独の溶媒であるため、特に調製のための処理は行っていない。なお、表C7に記載の化学式や略記号で示された物質については、MeOHはメタノール(ゴードー製)、KOHは水酸化カリウム(日本曹達製)、ZnOは酸化亜鉛(関東化学製)を使用した。
次に調製した酸化物原料液、並びに酸化物析出溶媒を図3(A)に示す析出処理装置にて混合した。具体的には、A液として酸化物析出溶媒を処理用面1,2間に導入し、処理用部10を回転数1700rpmで運転しながら、B液として酸化物原料液を処理用面1,2間に導入して、酸化物析出溶媒と酸化物原料液とを薄膜流体中で混合し、処理用面1,2間において、酸化物微粒子を析出させ、酸化物微粒子を含む流体(以下、酸化物微粒子分散液)を析出処理装置の処理用面1、2間から吐出させた。吐出させた酸化物微粒子分散液を、ベッセルvを介してビーカーに回収した。
表C8に、析出処理装置の運転条件を示す。表C8に示したA液、B液の導入温度(送液温度)と導入圧力(送液圧力)は、処理用面1、2間に通じる密封された導入路(第1導入部d1と第2導入部d2)内に設けられた温度計と圧力計とを用いて測定したものであり、表C8に示したA液の導入温度は、第1導入部d1内の導入圧力下における実際のA液の温度であり、同じくB液の導入温度は、第2導入部d2内の導入圧力下における実際のB液の温度である。
pH測定には、堀場製作所製の型番C−71のpHメーターを用いた。A液およびB液を析出処理装置に導入する前に、そのpHを室温にて測定した。また、酸化物原料液と酸化物析出溶媒との混合直後の混合流体のpHを測定することは困難なため、同装置から吐出させ、ビーカーに回収した酸化物微粒子分散液のpHを室温にて測定した。
(実験例C5)
実験例C5に係る分散液の改質実験は、本発明の実施例に相当する。
分散液を改質する工程においては、析出処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した酸化物微粒子の分散液より、図1(A)の分散液改質装置100を用いて不純物の除去、並びにpH調整を行い、酸化物微粒子分散液の改質処理を行った。表C12に条件を示す。表C12に記載した条件以外は、実験例C1と同様の操作にて処理を行った。
上記の処理を継続中に、収容容器130から処理時間毎に分取した酸化物微粒子分散液を、実験例C5−1から実験例C5−7とした。実験例C5−1から実験例C5−7の条件で得られた酸化物微粒子分散液中の酸化物微粒子の濃度は、全てZnOとして4.0wt%であった。表C9に、実験例C5の結果を酸化物微粒子分散液の改質処理中における、酸化物微粒子分散液のpH、並びに導電率と共に示す。改質処理を行うことによって、酸化物微粒子分散液のpH並びに導電率が改質処理に用いたMeOHと同様に値に近づいた。また、表C9に示す実験例C5−1から実験例5−7の条件にて酸化物微粒子分散液を分取した。それぞれ分取した酸化物微粒子分散液の一部はプロピレングリコール(以下、PG)にて希釈し、クレアミックス(製品名:CLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック製)にて20000rpm(周速度:31.4m/s)にて30min分散処理した。得られた酸化物微粒子のPG分散液の一部をイソプロピルアルコール(以下、IPA)にて希釈し、超音波洗浄機にて5min処理した液をコロジオン膜に滴下して大気雰囲気にて4時間乾燥させ、TEM観察試料とした。また、酸化物微粒子のPG分散液の残りについては、UV−Visスペクトル測定に用いた。
(UV−Visスペクトル)
UV−Visスペクトルは、可視紫外吸光分光光度計(製品名:UV−2450、島津製作所製)を使用した。測定範囲を200nmから800nm、サンプリングレートを0.2nm、測定速度を低速としてとして透過スペクトルを測定した。透過スペクトル測定には、PGに酸化亜鉛を1.9×10-3mol/L(ZnOとして)の濃度で分散させた分散液を測定試料として用いた。
(分散安定性および自己分散性)
実験例C5−1、並びに実験例C5−2の酸化物微粒子分散液については、分取後2時間静置した時点で明らかな酸化物微粒子の沈降が見られ、酸化物微粒子が含まれる層と、ほぼ酸化物微粒子が含まれていない層とに分離した。実験例C5−3並びに実験例C5−4については分取後1週間静置した時点で僅かに酸化物微粒子の沈降が見られ、実験例C5−5から実験例C5−7の酸化物微粒子分散液については、分取後1週間静置した時点で、極僅かに酸化物微粒子の沈降が見られたが、沈降物の量は、分散液中に含まれる酸化物微粒子の0.2wt%程度であった。本発明の分散液改質装置を用いて酸化物微粒子分散液のpHを7.0から8.5とすることで、酸化物微粒子分散液の分散安定性が向上することがわかった。さらに実験例C5−5から実験例C5−7ついては、分取後2週間静置した時点で酸化物微粒子の沈降物が分取後1週間静置した時点の時点よりも少なくなっていることが確認され、実質的に沈降物は確認されなかった。pHが7.0から7.5の範囲とした実験例C5−5から実験例5−7の酸化物微粒子分散液中の酸化物微粒子は、1週間の静置にて一旦発生した沈降物について、特に分散処理をすることなく再度分散したことから、自己分散性を有する酸化物微粒子を含むことが考えられた。
(TEM観察)
実験例C5−6の酸化物微粒子のTEM写真を図14に示す。図14(a)のTEM写真より、酸化物微粒子が均一に分散している様子が確認された。また、図14(b)のTEM写真より一次粒子径は10nm程度であることが確認された。また同様の結果が、実験例C5−5並びに実験例C5−7の酸化物微粒子についても得られた(図示無し)。
実験例C5−3の酸化物微粒子のTEM写真を図15に示す。図15(a)のTEM写真並びに(b)のTEM写真より、酸化物微粒子が実験例C5−6に比べて凝集している様子が観察されたが、実験例C5−1、並びに実験例C5−2の酸化物微粒子に比べると、凝集体の数も少なく、均一に分散している様子が観察された。また同様の結果が、実験例C5−4の酸化物微粒子についても得られた(図示無し)。
実験例C5−2の酸化物微粒子のTEM写真を図16に示す。図16(a)のTEM写真並びに(b)のTEM写真より、酸化物微粒子が実験例C5−3、並びに実験例C5−6に比べて凝集している様子が観察され、また凝集体の数も多く観察された。また同様の結果が実験例C5−1の条件で作製した酸化物微粒子についても得られた。
(UV−Visスペクトル測定)
実験例C5−2、実験例C5−3、実験例C5−6の酸化物微粒子分散液を用いて調製したPG分散液を用いて行ったUV−Visスペクトル測定結果(透過スペクトル)を図17に示す。実験例C5−3、並びに実験例C5−6の酸化物微粒子分散液を用いて作製したPG分散液は、略同じスペクトル形状を示し、400nmから800nmの領域においては90%以上の透過率を示した。それに対し、実験例C5−2の条件で作製したPG分散液は700nmから800nmの領域における透過率が実験例C5−3、並びに実験例C5−6に比べて低いものとなった。実験例C5−2の条件で作製した酸化物微粒子分散液中の酸化物微粒子の分散性が、実験例C5−3、並びに実験例C5−6に比べて低いため、実験例C5−2の条件で作製した酸化物微粒子がPG分散液中において均一に分散しておらず、凝集体も形成されたために、実験例C5−3、並びに実験例C5−6のPG分散液よりも可視領域の光の透過率が低いと考えられる。
以上の結果より、酸化物微粒子分散液より濾過膜を用いたクロスフロー方式にて不純物を除去する装置と分散機とからなる装置を用いてを用いて酸化物微粒子分散液を調製することによって、酸化物微粒子分散液の処理時間に基づいて、pHまたは導電率を制御することによって分散安定性が向上できることがわかった。また得られた酸化物微粒子分散液を用いて他の分散媒を用いた分散液を調製する場合の酸化物微粒子分散液の分散性も向上することが分かった。また、本発明の分散液の改質方法について不純物の除去処理を行った後に、分散液のpHまたは導電率を制御することで、酸化物微粒子分散液の分散性を制御できることが分かった。
(実験例C6)
実験例C6に係る分散液の改質実験は、本発明の比較例に相当する。
実験例C6として、図1(A)に記載した装置の分散機並びに分散用容器を除し、酸化物微粒子分散液を満たした収容容器130から、除去部120へ、ポンプ104を用いて直接送液して濾過を行った以外は、実験例C5と同様の方法で酸化物微粒子分散液の改質処理を行った。表C10に実験例C6の結果を示す。
表C10に示したように、酸化物微粒子分散液のpHが7.59となるまで改質処理を行った。しかし、処理を繰り返してもpHが7.59を下回るまでの処理は困難であった。また、実験例C5と同様のpHとなるまで、処理を行った酸化物微粒子分散液(実験例C6−5から実験例C6−7)についても実験例C5で得られたような酸化物微粒子分散液のような分散性並びに分散安定性を確認することはできなかった。
(実験例C7)
実験例C7として、実験例C5に用いた酸化物微粒子分散液をバッチ式での分散処理と、膜濾過による除去処理とをそれぞれ単独にて行った。なお、実験例C7は、本発明における比較例に相当する。
具体的には、析出処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した酸化物微粒子の分散液を収容容器130に14kg(≒14L)投入し、クレアミックス(製品名:CLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック製)を用いて、20000rpm(周速度:31.4m/s)にて30分間の分散処理を行った。酸化物微粒子分散液の温度は、処理中23から24℃であった。分散処理終了後、図1(A)に記載した装置の分散機102並びに分散用容器101、即ち分処理装置110を除した装置を用いて、酸化物微粒子分散液を満たした収容容器130から、除去部120へ、ポンプ104を用いて直接送液して濾過を行った。処理に用いた濾過膜、洗浄液、ポンプ等は、実験例C1からC4と同じである。なお、分散処理終了後から、濾過開始までの時間は20分を要し、濾過開始の時点では既に酸化物微粒子の明らかな凝集と沈降が見られた。膜濾過の処理は、収容容器内の酸化物微粒子分散液が1.5L(≒1.2kg)となった時点で処理装置から酸化物微粒子分散液を抜き出し、酸化物微粒子分散液のpH、導電率並びに分散性並びに分散安定性を確認した。収容容器130に、MeOHを13.5L投入し、上記操作を繰り返すことで、酸化物微粒子分散液の改質処理を行った結果を、表C11に示す。
表C11に見られるように、酸化物微粒子分散液のpHが7.88となるまで改質処理を行った。しかし、処理を繰り返してもpHが7.88を下回るまでの処理は、困難であった。また、実験例C4と同様のpHまで洗浄した場合であっても、実験例C4と同等の分散性並びに分散安定性を確認することはできなかった。これは、実験例C7においては、バッチ式での分散処理と、膜濾過による除去処理とをそれぞれ単独にて行ったため、不純物によって再凝集が全てなされる前に、除去部によって上記不純物を上記分散液から除去する除去処理を行うことができなかったためである。
粒子
b 凝集体
c 不純物
d 濾過膜
E 物理的エネルギー

Claims (12)

  1. 微粒子の分散性を向上させる微粒子分散液の改質方法において、
    上記微粒子分散液に含有された上記微粒子の凝集体に対して物理的エネルギーを加えて上記微粒子の凝集体よりも小さな粒子に分散させる分散処理を行うことにより、上記凝集体中に含まれていた不純物を上記分散液中に放出させ、
    上記不純物によって再凝集が全てなされる前に、除去部によって上記不純物を上記分散液から除去する除去処理を行うものであり、
    上記不純物を放出させた後の上記分散液を上記除去部に送るための直前移送経路における経路長と、流速と、流量と、流体圧と、温度との少なくとも何れか一つを制御する事で、上記微粒子分散液中の微粒子の分散性を制御することを特徴とする微粒子分散液の改質方法。
  2. 微粒子の分散性を向上させる微粒子分散液の改質方法において、
    上記微粒子分散液に含有された上記微粒子の凝集体に対して物理的エネルギーを加えて上記微粒子の凝集体よりも小さな粒子に分散させる分散処理を行うことにより、上記凝集体中に含まれていた不純物を上記分散液中に放出させ、
    上記不純物によって再凝集が全てなされる前に、除去部によって上記不純物を上記分散液から除去する除去処理を行うものであり、
    上記除去処理を行った後の上記微粒子分散液のpHを制御する事で、上記微粒子分散液中の微粒子の分散性を制御することを特徴とする微粒子分散液の改質方法。
  3. 上記除去処理を行った後の上記微粒子分散液のpHを制御する事で、上記微粒子分散液中の微粒子の分散性を制御することを特徴とする請求項1に記載の微粒子分散液の改質方法。
  4. 上記不純物は、上記凝集体とは独立して上記分散液中に存在する液中不純物と、上記凝集体中に存在する粒子中不純物とを含み、
    上記分散処理によって、上記凝集体から上記粒子中不純物を上記分散液中に放出させて上記液中不純物とする放出ステップと、
    上記放出ステップを経た上記分散液を、上記液中不純物によって再凝集が全てなされる前に、上記除去部に送る移送ステップと、
    上記除去部にて上記液中不純物を上記分散液から除去する除去処理ステップと、
    を備えた請求項1から請求項3の何れかに記載の微粒子分散液の改質方法。
  5. 上記分散処理と上記除去処理とを連続的且つ繰り返し行うことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の微粒子分散液の改質方法。
  6. 上記除去部は濾過膜を備え、上記濾過膜を用いて上記不純物を上記分散液から除去することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の微粒子分散液の改質方法。
  7. 上記濾過膜は限外濾過膜であり、上記濾過膜へ上記分散液を供給してクロスフロー方式によって濾過することにより、上記不純物を上記分散液から除去することを特徴とする請求項6に記載の微粒子分散液の改質方法。
  8. 上記不純物を上記分散液中に放出させた後、3秒以内に上記分散液から除去する除去処理を開始することを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の微粒子分散液の改質方法。
  9. 上記分散処理は、上記分散液中で撹拌羽根を回転させる回転式の分散機により上記物理的エネルギーを上記凝集体に対して与える処理であり、上記撹拌羽根の周速度を10m/s以上として分散処理することを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載の微粒子分散液の改質方法。
  10. 上記微粒子の一次粒子径が200nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載の微粒子分散液の改質方法。
  11. 上記微粒子が、金属微粒子、有機物微粒子、または酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1から請求項10の何れかに記載の微粒子分散液の改質方法。
  12. 請求項1から請求項11の何れかに記載の微粒子分散液の改質方法と、上記改質方法を行う前になされる分散液を得る工程とを備え、
    上記分散液を得る工程は、接近・離反可能な相対的に回転する処理用面間において、上記微粒子の原料を少なくとも含む微粒子原料液と、上記微粒子を析出させるための微粒子析出物質を少なくとも含む微粒子析出溶媒とを混合させると共に当該混合させた流体中で上記微粒子を析出させる工程であることを特徴とする微粒子分散液の製造方法。
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