JP6142904B2 - インクジェット記録方法、インクジェット記録装置。 - Google Patents

インクジェット記録方法、インクジェット記録装置。 Download PDF

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Description

本発明は、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物に関する。
従来、紙などの被記録媒体に、画像データ信号に基づき画像を形成する記録方法として、種々の方式が利用されてきた。このうち、インクジェット方式は、安価な装置で、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、インクジェット方式は騒音が小さいため、記録方法として優れている。
近年、耐水性、耐溶剤性、及び耐擦過性などに優れた印字を被記録媒体の表面に形成するため、インクジェット方式の記録方法において、紫外線を照射すると硬化する紫外線硬化型インクジェット用インク組成物が使用されている。
例えば、特許文献1には、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、又はカプロラクトン変性(トリスアクリロキシエチル)イソシアヌレートと、ジエチレングリコールモノビニルエーテルアクリレートと、イソボルニルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、N−ビニルピロリドン、トリエチレングリコールジビニルエーテル、及びε−ビニルカプロラクタムからなる群より選択される1種以上と、からなる重合性モノマー、並びに所定の着色剤及び光重合開始剤を含む紫外線硬化型インクジェットインク組成物が開示されている。
特開2009−96910号公報
しかしながら、特許文献1に開示の紫外線硬化型インクジェットインク組成物から硬化膜を作製しようとすると、以下の問題が生じる。まず、薄膜においては、ラジカル重合反応系の場合に酸素阻害が影響するため硬化性に劣る。したがって、印刷時に酸素阻害が生じない程度にまで余分に膜を厚くせざるを得ず、印刷画質が劣悪となる問題が生じる。他方、特にブラックインクやイエローインクにおいて、厚膜の場合、顔料が活性放射線(特に紫外領域)の一部を吸収してしまう傾向が強く、そうすると、活性放射線を照射しても記録媒体上に吐出した塗膜を完全に硬化させるのに必要なエネルギーが不足するため、塗膜の表面近傍のみが硬化して、その塗膜の内部の硬化が不完全となったり、硬化に時間を要したりする場合がある。この塗膜の内部に存在する未硬化のインク組成物が硬化する前に不規則に流動するなどにより膜表面にシワが発生する。このシワに起因して、厚膜部分の膜特性に劣るという問題が生じる。
そこで、本発明は、薄膜状の硬化膜及び厚膜状の硬化膜の双方において、硬化性に優れた紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を提供することを目的の一つとする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、所定量の特定されたモノマーと、1分子当たり5つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、を含む紫外線硬化型インクジェット用インク組成物により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]
下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるモノマーAと、1分子当たり5つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物Bと、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートCと、を含む紫外線硬化型インクジェット用インク組成物であって、
前記単官能(メタ)アクリレートCは、該インク組成物の総質量に対し、5〜35質量%含まれる、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[2]
前記モノマーAが、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、[1]に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[3]
前記化合物Bは、1分子当たり6つの(メタ)アクリロイル基を有するヘキサ(メタ)アクリレート化合物、及び、1分子当たり5つの(メタ)アクリロイル基を有するペンタ(メタ)アクリレート化合物のうち少なくともいずれかを含有する、[1]又は[2]に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[4]
前記化合物Bは、ジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレートを含む、[1]〜[3]の何れか一項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[5]
前記化合物Bは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを、該インク組成物の総質量に対し5〜30質量%含む、[3]に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[6]
前記化合物Bは、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを、該インク組成物の総質量に対し8〜40質量%含む、[3]に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[7]
前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートCがベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかである、[1]〜[1]のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[8]
光重合開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド系化合物を含む、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[9]
光重合開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド系化合物を、インク組成物の総質量に対して7〜15質量%含む、[8]に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[10]
発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線を、300mJ/cm2以下の照射エネルギーで照射することにより硬化可能である、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[11]
20℃での粘度が3〜30mPa・sである、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[12]
厚さ0.5〜3μmの薄膜の状態で硬化可能である、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[13]
[1]〜[12]のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を被記録媒体に吐出し、吐出した紫外線硬化型インクジェット用インク組成物に、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にあるUV−LEDを用いて照射して硬化させる、インクジェット記録方法。
[14]
[1]〜[12]のいずれか一項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を被記録媒体に吐出し、吐出した紫外線硬化型インクジェット用インク組成物に、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にあるUV−LEDを用いて照射して硬化させる、インクジェット記録装置。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルのうち少なくともいずれかを意味する。
本明細書において、「硬化性」とは、光の照射により、光重合開始剤の存在下又は不存在下で重合硬化する性質をいう。
[紫外線硬化型インクジェット用インク組成物]
本発明の一実施形態は、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物に係る。当該紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表される、所定量のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(以下、「モノマーA」という。)と、1分子当たり5つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「化合物B」という。)と、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートCと、を含む。
以下、本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)に含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)を説明する。
〔重合性化合物〕
本実施形態のインク組成物に含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により光照射時に重合されて、印刷されたインクを硬化させることができる。
(1.モノマーA)
本実施形態において必須の重合性化合物であるモノマーAは、上記一般式(I)で表される。インク組成物がモノマーAを含むことにより、インクの硬化性を良好なものとすることができる。
上記の一般式(I)において、R2で表される2価の有機残基としては、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
上記の一般式(I)において、R3で表される炭素数1〜11の1価の有機残基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
上記の有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数に含まれる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基及びハロ基が挙げられる。
上記のモノマーAの具体例としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1’−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
上記したものの中でも、硬化性に一層優れるため、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチルが好ましい。
これらの中でも、低粘度で、引火点が高く、かつ、硬化性に優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、すなわち、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、及びメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルのうち少なくともいずれかが好ましく、前者がより好ましい。(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(以下「VEEA」ともいう。)及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。
モノマーAは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
モノマーAの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、特に制限は無いが、好ましくは10〜75質量%であり、より好ましくは30〜75質量%、特に好ましくは40〜75質量%、さらに好ましくは50〜70質量%である。含有量が上記範囲内であると、例えば厚さ0.5〜3μmという、薄い硬化膜の硬化性に極めて優れる。
モノマーAの製造方法としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法D)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル交換する方法(製法F)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法G)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法H)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とカルボン酸ビニルとをビニル交換する方法(製法I)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とアルキルビニルエーテル類とをエーテル交換する方法(製法J)が挙げられる。
これらの中でも、本実施形態に所望の効果を一層発揮することができるため、製法Fが好ましい。
(2.化合物B)
本実施形態において必須の重合性化合物である化合物Bは、1分子当たり5つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する。換言すると、化合物Bは、5官能以上の(メタ)アクリレート系化合物である。本実施形態のインク組成物が、重合性化合物として、上記モノマーAとともに化合物Bを含むことにより、インクの硬化性を非常に良好なものとすることができる。
また、硬化性に一層優れるため、化合物Bはその分子中に水酸基を有することが好ましい。
5官能の(メタ)アクリレートとして、以下に限定されないが、例えば、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性テトラペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、並びにこれらのエチレンオキサイド(EO)付加物及びプロピレンオキサイド(PO)付加物のうち少なくともいずれかが挙げられる。
6官能の(メタ)アクリレートとして、以下に限定されないが、例えば、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性テトラペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、並びにこれらのEO付加物及びPO付加物のうち少なくともいずれかが挙げられる。
7官能以上の(メタ)アクリレートとして、以下に限定されないが、例えば、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性テトラペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性テトラペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレート、並びにこれらのEO付加物及びPO付加物のうち少なくともいずれかが挙げられる。
化合物Bは、6官能の(メタ)アクリレート、すなわち1分子当たり6つの(メタ)アクリロイル基を有するヘキサ(メタ)アクリレート化合物、及び、5官能の(メタ)アクリレート、すなわち1分子当たり5つの(メタ)アクリロイル基を有するペンタ(メタ)アクリレート化合物のうち少なくともいずれかを含有することが好ましい。この場合、インクの粘度が比較的低くなり、かつ、インクの硬化性が良好になる。
また、化合物Bは、ジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。この場合、インクの硬化性が特に良好となる。ジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどがあげられる。
化合物Bの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは5〜40質量%である。含有量が上記範囲内であると、インクの硬化性を極めて良好にすることができる。
上記の中でも特に、化合物Bがジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(より好ましくはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)である場合、その含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは5〜15質量%である。含有量が上記範囲内であると、膜厚が例えば0.5〜3μmである、薄膜状の硬化膜の場合に硬化性に優れ、かつ、インクを低粘度化することができる。
上記の中でも特に、化合物Bがジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(より好ましくはジペンタエリスリトールペンタアクリレート)である場合、その含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは8〜40質量%であり、より好ましくは8〜20質量%である。含有量が上記範囲内であると、膜厚が例えば0.5〜3μmである、薄膜状の硬化膜の場合に硬化性に優れ、かつ、インクを低粘度化することができる。
化合物Bは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(3.芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートC)
本実施形態において必須の重合性化合物である単官能(メタ)アクリレートCは、芳香環骨格を有する。本実施形態のインク組成物が、重合性化合物として、上記モノマーAと化合物Bとともに芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートCを含むことにより、光重合開始剤の溶解性を良くし、インクの硬化性を良好なものとすることができる。
芳香環骨格を有する単官能の(メタ)アクリレートとして、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートCは、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかがより好ましく、ベンジルアクリレート及びフェノキシエチルアクリレートのうち少なくともいずれかがさらに好ましい。この場合、インクの粘度が低くなり、かつ、開始剤の溶解性が良好になる。
インク組成物が含む芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートCのうち少なくともいずれかの、その(それらの)含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜35質量%であり、好ましくは5〜30質量%である。含有量が上記範囲内であると、光重合開始剤の溶解性を良くし、硬化性を良好な状態に維持しつつインクの粘度を低くすることができる。
上記の芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートCは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(上記以外の重合性化合物)
本実施形態において、さらに上記以外の重合性化合物(以下、「その他の重合性化合物」という。)を含んでいても良い。その他の重合性化合物としては、従来公知の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びアクリロイルモルホリン、並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
その他の重合性化合物のうち、4官能以下の(メタ)アクリル酸のエステル、即ち4官能以下の(メタ)アクリレートについて、以下に具体例を挙げる。
単官能の(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
2官能の(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
3官能の(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
4官能の(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、その他の重合性化合物のうち単官能の(メタ)アクリレートは、芳香環骨格、飽和脂環骨格、及び不飽和脂環骨格からなる群より選択される1種以上の骨格を有してもよい。その他の重合性化合物が、上記骨格を有する単官能の(メタ)アクリレートであることにより、インク組成物の粘度を低下させることができる。飽和脂環骨格を有する単官能の(メタ)アクリレートとして、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、不飽和脂環骨格を有する単官能の(メタ)アクリレートとして、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記のその他の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記のその他の重合性化合物を含む場合、その含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、限られるものではないが、5質量%以上であり、好ましくは5〜40質量%である。
〔光重合開始剤〕
本実施形態のインク組成物に含まれ得る光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて印字を形成するために用いられる。照射光として紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
上記の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
これらの中でも、特にインクの硬化性を良好にすることができるため、アシルフォスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物のうち少なくともいずれかが好ましく、アシルフォスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物がより好ましい。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
これらの中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、及び2,4−ジエチルチオキサントンが好適に用いられる。
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製商品名)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co.,Ltd.)製商品名)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製商品名)、及びユベクリルP36(UCB社製商品名)などが挙げられる。
上記光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤は、インクの硬化性を良好にし、かつ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色を避けるため、その含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、1〜20質量%であることが好ましい。
なお、前述の重合性化合物として光重合性の化合物を用いることで、光重合開始剤の添加を省略することが可能であるが、光重合開始剤を用いた方が、重合の開始を容易に調整することができ、好適である。
また、光重合開始剤が、アシルフォスフィンオキサイド化合物を含む場合、その含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、7〜15質量%が好ましく、8〜14%がより好ましく、9〜13%が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、インク組成物の硬化性を一層優れたものとでき、インク組成物への溶解性を良くすることができる。
また、光重合開始剤が、チオキサントン化合物を含む場合、その含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、0.5〜4質量%が好ましく、1〜3%がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、インク組成物の硬化性をより一層優れたものとできる。
〔色材〕
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
(顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
更に詳しくは、ブラックインクとして使用されるカーボンブラックとしては、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製商品名)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(以上、キャボット社 (Cabot JAPAN K.K.)製商品名)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4等(以上、デグッサ(Degussa)社製商品名)が挙げられる。
ホワイトインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、及びC.I.ピグメント ヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、及びC.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
また、マゼンタ、シアン及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7、10、及びC.I.ピグメント ブラウン 3、5、25、26、及びC.I.ピグメント オレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63が挙げられる。
上記顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の顔料を使用する場合、その平均粒子径は300nm以下が好ましく、50〜200nmがより好ましい。平均粒子径が上記の範囲内にあると、インク組成物における吐出安定性や分散安定性などの信頼性に一層優れるとともに、優れた画質の画像を形成することができる。ここで、本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法により測定される。
(染料)
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
上記染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
色材の含有量は優れた隠蔽性及び色再現性が得られるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5〜10質量%が好ましい。
〔分散剤〕
本実施形態のインク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、第一工業製薬社(Dai―ichi Kogyo Seiyaku Co., Ltd.)製のディスコールシリーズ、ルーブリゾール社(Lubrizol Corporation)製のソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズが挙げられる。
〔スリップ剤〕
本実施形態のインク組成物は、優れた耐擦性が得られるため、スリップ剤(界面活性剤)をさらに含んでもよい。スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(ビックケミー・ジャパン社(BYK Japan KK)製)を挙げることができる。
〔重合禁止剤〕
本実施形態のインク組成物は、重合禁止剤をさらに含んでもよい。インク組成物が重合禁止剤を添加することにより、インク組成物の保存安定性が向上する。重合禁止剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、及びキノン化合物からなる群より選択される一種以上が挙げられる。重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)が挙げられる。
重合禁止剤の市販品としては、IRGASTAB UV10及びUV22(以上、BASF社製商品名)などを用いることができる。
〔その他の添加剤〕
本実施形態のインク組成物は、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、重合促進剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
[被記録媒体]
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、後述するインクジェット記録方法によって、被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。本実施形態のインクジェット記録方法は、水溶性インク組成物の浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、水溶性インク組成物の浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く適用できる。ただし、当該インク組成物を非吸収性の被記録媒体に適用した場合は、紫外線を照射し硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、水性インクの浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)から、水性インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。
非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック類のフィルムやプレート、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート等が挙げられる。
[インクジェット記録方法]
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、インクジェット記録方法に用いることができる。当該インクジェット記録方法は、被記録媒体上に、上記インク組成物を吐出する吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインク組成物に紫外線を照射して、上記インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む。このようにして、被記録媒体上で硬化したインク組成物により、塗膜(硬化膜)が形成される。
〔吐出工程〕
上記吐出工程においては、従来公知のインクジェット記録装置を用いることができる。インク組成物を吐出する際、吐出安定性を良好なものとするため、インク組成物の20℃での粘度を3〜30mPa・sとするのが好ましく、5〜15mPa・sとするのがより好ましい。
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、通常のインクジェット用インクで使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。かかるインクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こし得る。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。
〔硬化工程〕
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出されたインク組成物が、紫外線(光)の照射によって硬化する。これは、インク組成物に含まれる光重合開始剤が紫外線の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、光重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。あるいは、紫外線の照射によって、光重合性化合物の重合反応が開始するためである。このとき、インク組成物において光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が紫外線を吸収して励起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
紫外線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。その一方で、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV−LED)及び紫外線レーザダイオード(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線硬化型インクジェット用光源として期待されている。これらの中でも、UV−LEDが好ましい。
ここで、発光ピーク波長が、好ましくは350〜420nmの範囲、より好ましくは365〜405nmの範囲にある紫外線を、好ましくは300mJ/cm2以下、より好ましくは100〜250mJ/cm2の照射エネルギーで照射することにより、硬化可能であるような紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を用いることが好ましい。この場合、本実施形態におけるインク組成物の組成に起因して低エネルギー且つ高速での硬化が可能となる。照射エネルギーは、照射時間に照射強度を乗じて算出される。本実施形態におけるインク組成物の組成によって照射時間を短縮することができ、その場合、印刷速度が増大する。他方、本実施形態におけるインク組成物の組成によって照射強度を減少させることもでき、その場合、装置の小型化やコストの低下が実現する。その際の紫外線照射には、UV−LEDを用いることが好ましい。このようなインク組成物は、上記波長範囲の紫外線照射により重合を開始する重合性化合物、及び上記波長範囲の紫外線照射により分解する光重合開始剤を含むことにより得られる。
また、好ましくは厚さ0.5〜3μm、より好ましくは0.8〜2.5μmの薄膜の状態で硬化可能であるような紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を用いることが好ましい。この場合、本実施形態におけるインク組成物の組成に起因して薄膜で画像形成が可能となり、塗膜の盛り上がり感が少なくなるという有利な効果が得られる。かかるインク組成物は、前述した各種方法により得られる。
このように、本実施形態によれば、薄膜状(例えば膜厚0.5〜3μm)の硬化膜及び厚膜状(例えば膜厚10μm以上)の硬化膜の双方において、硬化性に優れた紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を提供することができる。具体的にいえば、膜厚が例えば0.5〜3μmである薄膜又は直径が例えば0.5〜3μmであるドットにおける硬化性が改善される。そのため、より微少なインク滴が被記録媒体上に付着することによる印刷が可能となり、印刷画質が向上する。また、特にブラックインクやイエローインクで、厚膜(例えば膜厚10μm以上)における硬化性が改善されてシワの発生を抑制できる。そのため、インクの塗膜特性が向上する。
[インクジェット記録装置]
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、インクジェット記録装置に用いることができる。当該インクジェット記録装置は、被記録媒体上に、上記インク組成物を吐出する前述の吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインク組成物に紫外線を照射して、上記インク組成物を硬化する前述の硬化工程とにより記録を行なう。このようにして、被記録媒体上で硬化したインク組成物により、塗膜(硬化膜)を形成する記録装置である。
以下、本発明の実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[使用成分]
下記の実施例及び比較例において使用した成分は、以下の通りである。
〔モノマーA〕
・アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA〔商品名〕、日本触媒(Nippon Shokubai Co.,Ltd.)社製、表1及び表2ではVEEAと略記した。)
〔化合物B〕
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(A−DPH〔商品名〕、新中村化学社製、表1及び表2ではDPHAと略記した。)
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR399〔商品名〕、SARTOMER社製、表1及び表2ではDPPAと略記した。)
〔単官能(メタ)クリレートC〕
・フェノキシエチルアクリレート(ビスコート#192〔商品名〕、大阪有機化学社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL INDUSTRY LTD.)製、表1及び表2ではPEAと略記した。)
・ベンジルアクリレート(FA−BZA〔商品名〕、日立化成工業社製、表1及び表2ではBAと略記した。)
・イソボルニルアクリレート(IBXA〔商品名〕、大阪有機化学社製、表1ではIBXAと略記した。)
〔上記以外の重合性化合物〕
・ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(SR355〔商品名〕、SARTOMER製、表1及び表2ではDTMPTAと略記した。)
・トリメチロールプロパントリアクリレート(SR351S〔商品名〕、SARTOMER製、表1及び表2ではTMPTAと略記した。)
〔光重合開始剤〕
・IRGACURE 819(BASF社製商品名、固形分100%、表1及び表2では819と略記した。)
・DAROCURE TPO(BASF社製商品名、固形分100%、表1及び表2ではTPOと略記した。)
・KAYACURE DETX−S(日本化薬社製商品名、固形分100%、表1及び表2ではDETX−Sと略記した。)
〔スリップ剤〕
・シリコーン系表面調整剤 BYK−UV3500(BYK社製商品名、表1及び表2ではUV3500と略記した。)
〔重合禁止剤〕
・p−メトキシフェノール(MEHQ〔商品名〕、関東化学社製)
〔顔料〕
・ピグメントブルー15:4(IRGALITE BLUE GLVO〔商品名〕、BASF社製、表1ではブルー15と略記した。)
・ピグメントブラック 7(カーボンブラック)(Microlith Black C−K〔商品名〕、BASF社製)
〔分散剤〕
・Solsperse 36000(LUBRIZOL社製商品名、表1及び表2ではSol36000と略記した。)
[例1〜44]
下記表1〜表5に記載の成分を、表1〜表5に記載の組成(単位:質量%)となるように添加し、これを高速水冷式撹拌機で撹拌することにより、シアン色(例1〜26、44)及びブラック色(例27〜43)の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を得た。
〔評価項目〕
(1.薄膜の硬化膜に関する硬化性)
インクジェットプリンターPX−G5000(セイコーエプソン社〔Seiko Epson Corporation〕)製商品名)を用いて、上記の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物をそれぞれのノズル列に充填した。常温、常圧下でPETフィルム(ルミラー125E20〔商品名〕、パナック社製)上に、インクのドット径が中ドットで印刷物の膜厚が0.5〜3μmとなるような薄膜状のベタパターン画像(記録解像度720×720dpi)を印刷すると共に、キャリッジの横に搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから、照射強度が60mW/cm2であり、且つ波長が395nmである紫外線を200mJ/cm2照射してベタパターン画像を硬化させた。
以上のようにして、PETフィルム上にベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。ここで、ベタパターン画像とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像である。
照射エネルギー[mJ/cm2]は、光源から照射される被照射表面における照射強度[mW/cm2]を測定し、これと照射継続時間[s]との積から求めた。照射強度の測定は、紫外線強度計UM−10、受光部UM−400(いずれもコニカミノルタセンシング社(KONICA MINOLTA SENSING,INC.)製)を用いて行った。
薄膜の硬化膜に関する硬化性は、タックフリー時の照射エネルギーを指標として評価した。ここで、タックフリーといえるか否かは、下記の条件で判断した。すなわち、綿棒にインクが付着するか否か、又は被記録媒体上のインク硬化物に擦り傷が付くか否かで判断した。その際、使用した綿棒は、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson &Johnson)社製のジョンソン綿棒であった。擦る回数は往復10回とし、擦る強さは100g荷重とした。
硬化性評価時のインク塗膜(硬化膜)の膜厚は0.5〜3μmと、薄膜にした。評価結果を下記表6〜表10に示す。
AAA:タックフリー時の照射エネルギー 100mJ/cm2以下
AA:タックフリー時の照射エネルギー 100mJ/cm2超200mJ/cm2以下
A:タックフリー時の照射エネルギー 200mJ/cm2超300mJ/cm2以下
B:タックフリー時の照射エネルギー 300mJ/cm2超400mJ/cm2以下
C:タックフリー時の照射エネルギー 400mJ/cm2
(2.厚膜の硬化膜に関する硬化性)
インクジェットプリンターPX−G5000(セイコーエプソン社〔Seiko Epson Corporation〕)製商品名)を用いて、上記の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物をそれぞれのノズル列に充填した。常温、常圧下でPETフィルム(ルミラー125E20〔商品名〕、パナック社製)上に、インクのドット径が中ドットで印刷物の膜厚が10〜11μmとなるような厚膜状のベタパターン画像(記録解像度720×720dpi)を印刷すると共に、キャリッジの横に搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから、照射強度が60mW/cm2であり、且つ波長が395nmである紫外線を200mJ/cm2照射してベタパターン画像を硬化させた。タックフリーの状態に達していない例についてはタックフリーの状態になるまで照射を続けた。
以上のようにして、PETフィルム上に、タックフリーの状態まで硬化したベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。なお、タックフリー状態の確認方法、ベタパターン画像、並びに照射エネルギー及び照射強度の測定・算出については、上記「薄膜の硬化膜に関する硬化性」の項で述べたとおりである。
厚膜の硬化膜に関する硬化性は、タックフリーの状態まで硬化したベタパターン画像(硬化膜)にどの程度シワが発生したかという指標で評価した。シワの発生の程度は目視で観察した。
硬化性評価時のインク塗膜(硬化膜)の膜厚は10〜11μmと、厚膜にした。評価結果を下記表6〜表10に示す。
AAA:シワが全く発生していない。
AA:シワが硬化膜全体に対して5%未満の領域で発生した。
A:シワが硬化膜全体に対して5%以上20%未満の領域で発生した。
B:シワが硬化膜全体に対して20%以上100%未満の領域で発生した。
C:シワが硬化膜全体に発生した。
(3.粘度)
インク組成物の粘度(mPa・s)を、20℃下でレオメーター(MCR−300、Physica社製商品名)を用いて測定した。評価結果を下記表6〜表10に示す。
AA:3mPa・s以上20mPa・s以下
A:20mPa・s超30mPa・s以下
B:30mPa・s超
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上記表6〜表10より、モノマーAの一つであるVEEAと、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートの少なくとも何れかをインク組成物中に5〜35質量%と、を含むインク組成物(例1〜11、26〜36)は、これら以外のインク組成物に比べて、薄膜の硬化性の点で特に優れ、厚膜の硬化性の点と粘度の点でも優れることが明らかとなった。
また、化合物Bを含むインク組成物は、化合物Bを含まないインク組成物に比べて、特に厚膜の硬化膜の点で優れる傾向が見られた。
さらにいえば、上記の各点で優れるインク組成物の中でも、化合物Bとして、インク組成物の総質量に対し5〜30質量%の範囲でジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含むインク組成物は、当該範囲外でこれを含むインク組成物に比べて、薄膜の硬化膜に関する硬化性及び粘度の少なくともいずれかが一層優れることが明らかとなった。
また、上記の各点で優れるインク組成物の中でも、化合物Bとして、インク組成物の総質量に対し8〜40質量%の範囲でジペンタエリスリトールペンタアクリレートを含むインク組成物は、当該範囲外でこれを含むインク組成物に比べて、薄膜の硬化膜に関する硬化性及び粘度がいずれも一層優れることが明らかとなった。
また、上記の各点で優れるインク組成物の中でも、モノマーAの一つであるVEEAをインク組成物の総質量に対し75質量%以下含むインク組成物は、薄膜の硬化膜に関する硬化性の点で特に優れることが確認され、モノマーAの一つであるVEEAをインク組成物の総質量に対し10質量%以上含むインク組成物は、低粘度の点で特に優れることが確認された。
また、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートであるフェノキシエチルアクリレートとベンジルアクリレートの少なくとも何れかをインク組成物中に5質量%以上含まないインク組成物は、光重合開始剤の溶解性が悪く、光重合開始剤を溶解させるのに長時間を要した。これらの例が薄膜の硬化性に劣る原因として、光重合開始剤が充分溶解しておらず、光重合開始剤が、硬化性に充分寄与できなかった可能性も考えられる。また、これらの例のインク組成物は、化合物Bを含んでいるにもかかわらず、これら以外の例と比べて厚膜の硬化性がやや劣っており、光重合開始剤が硬化性に充分寄与できないことで、厚膜の硬化性が劣ったことが考えられる。
さらに、上述の例1及び例17と同じインク組成物を用いて、UV−LEDの代わりに、メタルハライドランプを用いて照射を行なったこと以外は、上述の厚膜の硬化性に関する硬化性の評価と同様にして評価をおこなったところ、例1と同じインク組成を用いた場合は厚膜の硬化性がAAAであり、例17と同じインク組成を用いた場合は厚膜の硬化性がAであったが、メタルハライドランプの発熱により被記録媒体に変形が生じた。このことから、モノマーAの一つであるVEEAと、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートの少なくとも何れかをインク組成物中に5〜35質量%と、化合物Bとを含むインク組成は、これらを全ては満たさないインク組成と比べて、いかなる光源を用いて硬化させる場合でも厚膜の硬化性が良好となることがわかり、特に、発熱が少ないUV−LEDを用いて硬化させる場合でも厚膜の硬化性が良好となることがわかった。

Claims (17)

  1. 紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を被記録媒体に吐出する吐出工程と、吐出した紫外線硬化型インクジェット用インク組成物に、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にあるUV−LEDを用いて照射して硬化させる硬化工程と、を含み、
    前記紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、
    下記一般式(I):
    CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
    (式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
    で表されるモノマーAと、1分子当たり5つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物Bと、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートCと、光重合開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド系化合物と、を含み、
    前記アシルフォスフィンオキサイド系化合物は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドのうち少なくともいずれかであり、
    前記単官能(メタ)アクリレートCは、該インク組成物の総質量に対し、5〜35質量%含まれる、インクジェット記録方法。
  2. 前記モノマーAが、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記化合物Bは、1分子当たり6つの(メタ)アクリロイル基を有するヘキサ(メタ)アクリレート化合物、及び、1分子当たり5つの(メタ)アクリロイル基を有するペンタ(メタ)アクリレート化合物のうち少なくともいずれかを含有する、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記化合物Bは、ジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜3の何れか一項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記化合物Bは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを、該インク組成物の総質量に対し5〜30質量%含む、請求項3に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記化合物Bは、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを、該インク組成物の総質量に対し8〜40質量%含む、請求項3に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートCがベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記アシルフォスフィンオキサイド系化合物を、インク組成物の総質量に対して15質量%以下含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記アシルフォスフィンオキサイド系化合物を、インク組成物の総質量に対して7〜15質量%含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記光重合開始剤としてさらに、チオキサントン系化合物をインク組成物に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  11. 前記チオキサントン系化合物を、インク組成物の総質量に対して0.5〜4質量%含む、請求項10に記載のインクジェット記録方法。
  12. 前記芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートCが前記光重合開始剤ではない、請求項1〜11のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  13. 発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線を、300mJ/cm2以下の照射エネルギーで照射することにより前記硬化工程を行う、請求項1〜12のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  14. インク組成物が、20℃での粘度が3〜30mPa・sである、請求項1〜13のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  15. 前記硬化工程が、インク組成物を厚さ0.5〜3μmの薄膜の硬化膜として行う硬化工程を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  16. 前記硬化工程が、インク組成物を厚さ10μm以上の厚膜の硬化膜として行う硬化工程をさらに含む、請求項15に記載のインクジェット記録方法。
  17. 請求項1〜16のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法により記録を行う、インクジェット記録装置。
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