本発明においては、巻線機に送られる巻線に張力を付与するテンション装置において、一回の線材の巻線工程において、線材への張力を自在に可変とすることができるとともに、装置の大型化を防止することができるテンション装置を提供するという目的を以下のようにして実現した。
本発明に基づく実施例1の巻線機用のテンション装置5は、図1〜図11に示すように構成され、支持台10と、モータ(張力制御モータ)20と、テンションアーム30と、エンコーダ42と、プーリ44と、バネ(弾性部材)46と、モータ(繰出しモータ)50と、繰出しプーリ54と、エンコーダ56と、プーリ群Pと、エンコーダ80と、制御回路90と、記憶装置98とを有している。
ここで、支持台10は、テンション装置5における各構成要素を支持するための支持部であり、水平方向に設けられた基部12と、基部12に対して立設した立設部14とを有し、基部12、立設部14ともに板状(具体的には、平板状)を呈している。
なお、立設部14には、バネ46の下端を取り付けるためのバネ取付部16が設けられている。
また、モータ20は、立設部14の背面側に固定して設けられ、モータ20においては、モータ本体部21から回転軸22が突出し、該回転軸22は、立設部14に設けられた開口部(図示せず)から立設部14の正面側に突出している。回転軸22は、モータ20の回転力を出力するものである。つまり、モータ20は、回転軸22から回転力を出力することにより、テンションアーム30に対してトルクを与えるものである。なお、モータ20の回転軸22の軸線22pは、立設部14の正面側の面に対して垂直方向に形成されている。軸線22pは、テンションアーム30の回動中心の軸線ともいえる。
なお、立設部14に設けられた開口部(つまり、回転軸22が挿通する開口部)には、ベアリング(図示せず)が設けられ、該ベアリングに回転軸22が回転可能に取り付けられている。
また、テンションアーム30は、ワイヤ(巻線)Wに張力を与えるための略棒状の部材であり、モータ20の回転軸22に固定されている。すなわち、テンションアーム30は、帯板状(すなわち、帯状の平板状)の棒状を呈するアーム本体部32と、アーム本体部32の正面側の面における右側面側の端部領域に固定して設けられたバネ取付部34と、アーム本体部32の正面側の面に固定されるとともに、回転軸22に固定された固定具36aと、アーム本体部32の背面側の面に固定されるとともに、回転軸22に固定された固定具36bとを有している。
つまり、アーム本体部32は、棒状を呈し、具体的には、正面側の面と背面側の面とを有する細長略長方形状の板状(具体的には、平板状)を呈している。アーム本体部32における一対の長手辺32−1、32−2は互いに平行に形成され、両側の端部は略円弧状に形成されている。アーム本体部32の正面側の面と背面側の面は、立設部14の正面側の面と平行に形成されている。また、アーム本体部32には、回転軸22が挿通する穴部が設けられている。
また、バネ取付部34は、略円柱状を呈し、このバネ取付部34には、バネ46の端部が固定して設けられている。なお、バネ取付部34の中心線(前後方向の軸線)34pは、回転軸22の軸線22pと平行となっている。
また、固定具36a、36bはともにリング状を呈して、回転軸22が挿通するための穴部を有し、固定具36aは、ネジ止めによりアーム本体部32の正面側の面に固定されるとともに、ネジ止めにより回転軸22に固定され、また、固定具36bは、ネジ止めによりアーム本体部32の背面側の面に固定されるとともに、ネジ止めにより回転軸22に固定されている。なお、固定具36a、36bのアーム本体部32への固定は、ネジ止めではなく、溶接によりおこなってもよい。
以上のように、アーム本体部32が、固定具36a、36bを介して回転軸22に固定(支持としてもよい)されているので、モータ20の回転軸22が回転することにより、アーム本体部32が回転軸22の軸線22pを中心に回動する。つまり、軸線22pが、テンションアーム30の回動中心の軸線となり、軸線22pの位置がテンションアーム30の回動中心となる。
また、エンコーダ(テンションアーム用角度検出器)42は、モータ20の背面側の面(具体的には、モータ本体部21の背面側の面)に固定して設けられ、回転軸22の背面側の端部と連結されている。このエンコーダ42は、モータ20の回転軸22の回転角度を検出するものであり、つまり、テンションアーム30の回動角度を検出するものである。
また、バネ46は、コイルスプリングであり、その上端がバネ取付部34に取り付けられ、下端がバネ取付部16に取り付けられている。バネ46は、アーム本体部32のバネ取付部34側を下方に引っぱるものであり、プーリ44に巻かれたワイヤWに与えられる張力によるテンションアーム30の回動方向と反対の回動方向に張力を有している。
また、プーリ(テンションプーリ)44は、アーム本体部32の正面側の面における左側面側の端部(つまり、バネ取付部34側とは反対側の端部)にアーム本体部32に対して回転可能に設けられている。つまり、プーリ44は、アーム本体部32に固定された軸部32aに対して回転可能に設けられている。なお、プーリ44の回転中心の軸線44pは、モータ20の回転軸22の軸線22p及びバネ取付部34の中心線34pと平行になっていて、軸線22pと軸線44pと中心線34pとは、同一平面上にあり、正面視においては、軸線22pと軸線44pと中心線34pとは、同一直線上に形成されている。
また、モータ50は、立設部14の背面側に固定して設けられ、モータ50においては、モータ本体部51から回転軸52が突出し、回転軸52は、立設部14に設けられた開口部(図示せず)から立設部14の正面側に突出している。回転軸52は、モータ50の回転力を出力するものである。モータ50は、正逆回転可能であるが、基本的には、繰出しプーリ54がワイヤWを下流側に移送する方向に回転する。回転軸52の軸線は、プーリ44の回転中心の軸線44p及びモータ20の回転軸22の軸線22pと平行になっている。
また、繰出しプーリ54は、モータ50の回転軸52に固定して設けられている。つまり、モータ50が駆動して回転軸52が回転することにより、繰出しプーリ54が回転する。繰出しプーリ54は、基本的に、ワイヤWを下流側(具体的には、プーリ68側)に移送する方向(つまり、巻線機102側に繰り出す方向)に回転する。なお、繰出しプーリ54には、ワイヤWを移送するための溝部が二重に形成され、プーリ60からのワイヤWとプーリ64からのワイヤWとをそれぞれ案内するようになっている。
また、エンコーダ56は、モータ50の背面側の面(具体的には、モータ本体部51の背面側の面)に固定して設けられ、モータ50の回転軸52の回転角度を検出するものである。
また、プーリ群Pは、プーリ60と、プーリ64と、プーリ68と、プーリ72と、プーリ76とを有し、プーリ群Pにおける各プーリは、ワイヤWを移送するためのガイドプーリである。プーリ60は、ワイヤWの移送経路において、繰出しプーリ54よりも上流側に設けられ、プーリ64は、ワイヤWの移送経路において、繰出しプーリ54の上流側かつ下流側に設けられ、プーリ68は、ワイヤWの移送経路において、繰出しプーリ54の下流側に設けられ、プーリ72は、ワイヤWの移送経路において、プーリ44の下流側に設けられ、プーリ76は、ワイヤWの移送経路において、プーリ76の下流側に設けられている。
なお、プーリ60は、支持部62に対して回転自在に取り付けられ、プーリ64は、支持部66に回転自在に取り付けられ、プーリ68は、支持部70に回転自在に取り付けられ、プーリ72は、支持部74に回転自在に取り付けられ、プーリ76は、支持部78に回転自在に取り付けられている。ここで、支持部62、66、70、74、78は、いずれも立設部14に固定して設けられ、支持部62、66、70、74、78における各支持部は同一の構成であり、支持部62を例にとると、支持部62は、立設部14の正面側の面に対して直角方向に設けられるとともに、左右方向に形成された板状部62aと、板状部62aの正面側の端部から板状部62aに対して直角方向に上方に形成された板状部62bと、板状部62bに固定された軸部62cとを有し、板状部62aと板状部62bとは側面視において略L字状を呈している。該軸部62cはプーリ60を回転可能に軸支している。つまり、プーリ60は、支持部62、特に、軸部62cに対して回転可能となっている。板状部62aと板状部62bにより支持部本体部が構成される。プーリ64、68、72においても、プーリ60と同様に、プーリが支持部に対して回転する。なお、プーリ60、64、68、72においては、プーリに軸部が固定され、該軸部が支持部本体部に対して回転する構成としてもよい。なお、プーリが軸部に対して回転可能とする場合には、プーリ60にベアリングが設けられ、一方、プーリに軸部が固定され、軸部が支持部本体部に対して回転する場合には、支持部本体部にベアリングが設けられる。
また、エンコーダ80は、支持部78における板状部78bの正面側の面に取り付けられている。このエンコーダ80は、プーリ76を軸支する軸部77の回転角度を検出するものである。つまり、軸部77がプーリ76に固定され、軸部77の先端がエンコーダ80と連結されている。このエンコーダ80は、ワイヤWの巻線速度(送り速度(引出し方向の速度又は引出し方向と反対方向の速度)を検出するためのものであり、エンコーダ80とエンコーダ80から検出された角度値を微分することにより巻線速度を算出する制御回路90とで、速度検出部が構成される。
なお、支持部78は、立設部14の正面側の面に対して直角方向に設けられるとともに、左右方向に形成された板状部78aと、板状部78aの正面側の端部から板状部78aに対して直角方向に上方に形成された板状部78bとを有し、側面視において略L字状を呈している。
また、制御回路90は、巻線機102から送られた張力データに基づき、モータ20の動作を制御し、テンションアーム30が所定の方向(具体的には、水平方向)となるように、モータ50の動作を制御するものであり(具体的には、モータ20の回転軸22の軸線22pとプーリ44の回転中心の軸線44pとを結ぶ直線で軸線22p及び軸線44pと直交する直線が、所定の方向(具体的には、水平方向)となるようにモータ50の動作を制御する)、図6〜図9に示すフローチャートや図10に示す機能ブロックに従い制御を行なう。なお、本実施例では、モータ20の回転軸22の軸線22pは、テンションアーム30の回転中心の軸線と一致する。
制御回路90は、図4に示すように、具体的には、受信装置91と、CPU92と、PWM(Pulse Width Modulation)回路94a、94bと、電流センサ96a、96bとを有している。
ここで、受信装置91は、巻線機102から送信されるデータを受信する。また、CPU92は、受信した張力データに基づき、モータ20に供給する電流値のデータをPWM回路94aに出力するとともに、アーム本体部32が所定の方向となるように、モータ50に供給する電流値のデータをPWM回路94bに出力する。
PWM回路94aは、CPU92からの電流値の振幅を振幅が一定のパルス信号に変換して該パルス信号をモータ20に供給し、PWM回路94bは、CPU92からの電流値の振幅を振幅が一定のパルス信号に変換して該パルス信号をモータ50に供給する。
また、電流センサ96aは、PWM回路94aから出力されるパルス信号を電流値に変換し、電流値に定数を乗算してトルク値を算出してCPU92に出力し、電流センサ96bは、PWM回路94bから出力されるパルス信号を電流値に変換し、電流値に定数を乗算してトルク値を算出してCPU92に出力する。
また、記憶装置98は、図6〜図9に示すフローチャートや図10に示す機能ブロックに従い制御を行なうための動作プログラムを記憶するものである。また、記憶装置98には、アーム本体部32の方向についての指令データが記憶され、具体的には、水平方向を0度とした場合に、該0度である旨の指令値が記憶されている。
なお、テンション装置5におけるワイヤWの移送経路は、上流側からプーリ60、繰出しプーリ54、プーリ64、繰出しプーリ54、プーリ68、プーリ44、プーリ72、プーリ76の順となっている。プーリ60には、図3に示すワイヤボビン100からワイヤWが導かれ、また、プーリ76からは、巻線機102にワイヤWが導かれる。ワイヤボビン100には、ワイヤWが巻回されている。また、巻線機102は、巻付け対象のワーク103にワイヤWを巻き付ける装置である。
なお、テンション装置5において、テンションアーム30が水平方向の場合には、式(1)が成り立つ(図11参照)。なお、テンションアーム30が水平方向の場合には、アーム本体部32が水平方向となり、テンションアーム30の回動中心の軸線22pとプーリ44の回転中心の軸線44p間の方向(例えば、軸線22pや軸線44pと直角の方向)が水平方向となり、正面視において、軸線22pと軸線44pと中心線34pとを結ぶ直線(仮想直線)(軸線22pと軸線44pとを結ぶ直線(仮想直線)としてもよい)が水平方向となる(他においても同じ)。
つまり、アーム本体部32のプーリ44側を下方に回動させようとするトルク(左辺)と、アーム本体部32のバネ46側を下方に回動させようとするトルク(右辺)が等しくなり、上記の式(1)が成り立つ。
式(1)を変形すると、式(2)が導かれ、TaとZ1とZ2により(つまり、変数であるTaとZ1とZ2とが定まることにより)モータ20のトルクTmが算出される。
なお、式(1)及び式(2)においては、ワイヤWに掛かる張力をTa(N)、バネ46の張力をTb(N)、モータ20のトルク値(出力トルク値)をTm(N・m)、モータ20の回転軸22の軸線22pとプーリ44の軸線44p間の長さをL11(m)、軸線22pとバネ取付部34の中心線34p間の長さをL12(m)、慣性補償によるトルク値をZ1(N・m)、メカロス補償によるトルク値をZ2(N・m)としている。
ここで、モータ20のトルク値Tmは、アーム本体部32のプーリ44側が上方に回動する方向に回転力を付与する場合では、正の値であり、アーム本体部32のプーリ44側が下方に回動する方向に回転力を付与する場合では、負の値となる。
また、慣性補償によるトルク値とは、特に、テンションアーム30が回動することによるアーム本体部32のプーリ44側の先端の慣性を補償するものであり、慣性補償によるトルク値Z1は、ワイヤWの加速度と慣性比率(一定値)を積算した値となる。なお、慣性補償によるトルク値Z1の値は、加速度が正の場合には、正の値となり、加速度が負の場合には、負の値となる。つまり、加速度が正の場合には、慣性補償によるトルク値の分がワイヤWに余分に付加されているので、慣性補償によるトルク値を減算し(式(2)参照)、加速度が負の場合には、慣性補償によるトルク値の分が不足しているので、慣性補償によるトルク値を加算する。
また、メカロス補償によるトルク値とは、特に、ワイヤWの全経路における摩擦力(例えば、各プーリ群におけるプーリに設けられたベアリングとプーリを軸支する軸部間の摩擦力)によるメカロスを補償するものであり、ワイヤWの送り方向にかかわらず絶対値としては一定値が定められる。つまり、メカロス補償によるトルクは、ワイヤWの送り方向が上流から下流への方向(引出し方向(順方向)、図1における矢印DRに示す方向)と、引出し方向と逆方向(逆方向)の場合のいずれの場合も同じ値(絶対値)であり、メカロス補償によるトルクZ2の値は、引出し方向の場合には、正の値となり、引出し方向の逆方向の場合には、負の値となる。つまり、送り方向が引出し方向の場合には、メカロス補償によるトルク値の分がワイヤWに余分に付加されているので、メカロス補償によるトルク値を減算し(式(2)参照)、送り方向が引出し方向と逆方向の場合には、メカロス補償によるトルク値の分が不足しているので、メカロス補償によるトルク値を加算する。なお、ワイヤWの送りが停止している場合には、メカロス補償によるトルクの値は0となる。
なお、式(1)、式(2)において、2×Ta×L11は、ワイヤWに与える張力の値に従いテンションアーム30に与えられるトルク値であるとともに、ワイヤWに与えられる張力の値に従いワイヤWがテンションアーム30におけるテンションアーム30の回動中心よりもプーリ44側に与えるトルク値であり、また、Tb×L12は、バネ46によりテンションアーム30に与えられるトルク値であり、具体的には、バネ46によりテンションアーム30のバネ46の取付け位置に与えるトルク値である。
また、式(1)において、Tm/L11は、モータ20によりテンションアーム30におけるプーリ44の取付け位置に与えるトルク値である。
また、プーリ44に掛かるトルクは、2×Ta×L11としたが、厳密には、プーリ44の半径rを考慮すると、Ta×(L11+r)+Ta×(L11−r)となり、この式から2×Ta×L11が導かれる。
なお、巻線機(巻材巻付け装置)102は、鉄心(コア)等の巻付け対象のワーク(被巻線体、被巻付け体としてもよい)103にワイヤWを巻き付ける装置であり、巻線機102に設けられた記憶装置には、ワーク103の巻付け位置に応じてワイヤWに与える張力の値のデータ(張力データ)が記憶されており、巻線機102は、ワーク103への巻付け工程において、ワーク103におけるワイヤWを巻き付けようとする巻付け位置に対応した張力データをテンション装置5の受信装置91に対して送信する。つまり、巻線機102は、張力データを送信する送信装置を有し、該送信装置により、ワーク103の巻付け工程において、ワーク103に巻き付けようとするワイヤWに必要となる張力のデータをリアルタイムで送信する。
ここで、テンション装置5とワイヤボビン100と巻線機102とで、巻線システム(「巻付けシステム」としてもよい)が構成される。
次に、上記構成のテンション装置5の動作について説明する。まず、モータ20の動作の制御について説明する。
巻線機102から張力データが送信されたら、受信装置91によりこれを受信し(S11)、CPU92が該張力データを保持する。
次に、上記式(2)に従い、モータ20のトルク値を算出する(S12)。つまり、受信した張力データにおける張力の値と、慣性補償によるトルク値と、メカロス補償によるトルク値を式(2)に入力することによりモータ20のトルク値を算出する。
ここで、慣性補償によるトルク値は、図7に示すように算出される。すなわち、エンコーダ80からの出力を微分して巻線速度値(ワイヤWの移動速度値)を算出する(S41)。つまり、エンコーダからのカウント値の単位時間当たりの変化量を算出して、巻線速度値を算出する。
その後、算出された巻線速度値を微分して巻線加速度値を算出する(S42)。つまり、巻線速度値の単位時間当たりの変化量を算出して巻線加速度値を算出する。
その後、巻線加速度からトルク補償データを算出する(S43)。すなわち、巻線加速度値に対して慣性比率を乗算し、慣性補償によるトルク値を算出する。
また、メカロス補償によるトルク値は、エンコーダ80からの出力に基づき、ワイヤWの送り方向が引出し方向であるか、引出し方向と逆方向であるかを判定し(S51)、がその判定結果に従い、メカロス補償によるトルク値を決定する(S52)。つまり、ワイヤWの送り方向が引出し方向である場合には、予め定められた一定値の正の値をメカロス補償によるトルク値とし、ワイヤWの送り方向が引出し方向と逆方向である場合には、予め定められた一定値の負の値をメカロス補償によるトルク値とし、ワイヤWの送りが停止している場合には、トルク値を0とする。
つまり、2×Ta×L11(ワイヤWに与えられる張力の値に従いワイヤWがテンションアーム30におけるテンションアーム30の回動中心よりもプーリ44側に与えるトルク値)を第1トルク値とし、Tb×L12(バネ46によりテンションアーム30のバネ46の取付け位置に与えるトルク値)を第2トルク値とし、Tm/L11(モータ20によりテンションアーム30におけるプーリ44の取付け位置に与えるトルク値)を第3トルク値とした場合に、第2トルク値と第3トルク値を加算した値を少なくとも含む比較用トルク値(式(1)における右辺)と第1トルク値(式(1)における左辺)が同一となるようにモータ20の出力トルク値を算出している。
また、第2トルク値と第3トルク値と慣性補償によるトルク値とメカロス補償によるトルク値とを加算した値である比較用トルク値(式(1)における右辺)と第1トルク値(式(1)における左辺)が同一となるようにモータ20の出力トルク値を算出している。
次に、モータトルク値からエンコーダ42の出力から算出されるトルク値を減算して第1算出値(補正された出力トルク値)を算出する(S13)。
ここで、減算に用いるトルク値は、図9に示すように算出される。すなわち、エンコーダ42からの出力に対して予め定められた定数を乗算して速度値を算出する(S61)。なお、エンコーダ42からの出力は、アーム本体部32のプーリ44側が水平方向に対して上方に傾斜している場合には、正の値となり、アーム本体部32のプーリ44側が水平方向に対して下方に傾斜している場合には、負の値となる。
その後、ステップS61で算出された速度値に対して、予め定められた定数を乗算して、トルク値を算出する(S62)。このステップS62で算出される値は、アーム本体部32のプーリ44側が水平方向に対して上方に傾斜している場合には、正の値となり、アーム本体部32のプーリ44側が水平方向に対して下方に傾斜している場合には、負の値となる。つまり、アーム本体部32のプーリ44側が水平方向に対して上方に傾斜している場合には、傾斜している分だけ上向きへのトルクが必要ないので、ステップS13でその分(正の値)を減算し、アーム本体部32のプーリ44側が水平方向に対して下方に傾斜している場合には、傾斜している分だけ上向きへのトルクが余分に必要となるので、ステップS13でその分(負の値)を減算する(つまり、結果的に正の値を加算する)。このトルク値が、ステップS13において用いられる「エンコーダ42の出力から算出されるトルク値」である。
次に、第1算出値から電流センサ96aからのトルク値を減算して第2算出値を算出する(S14)。この第2算出値はトルク偏差の値といえる。
次に、第2算出値に対して、予め定められた定数を乗算して、PWM回路94aに出力する電圧値(PWM回路への電圧指令)を算出し(S15)、PWM回路94aに出力する(S16)。
PWM回路94aは、入力された信号に基づき電圧信号としてのパルス信号を出力して、モータ20に対して電流を供給する(S17)。以上のように、図6のフローチャートに示す処理を所定の周期で行なうことにより、モータ20の制御を行なう。
なお、モータ20は上記の制御において、ステップS13の出力値が正の値の場合には、アーム本体部32のプーリ44側が上方に回動するようにモータ20により回転力を付与させ、ステップS13の出力値が負の値の場合には、アーム本体部32のプーリ44側が下方に回動するようにモータ20により回転力を付与させる。
モータ20は、上記のように、ワイヤWに与える張力の値に従いテンションアーム30に与えられるトルク値(具体的には、2×Ta×L11で示されるトルク値)と、バネ46によりテンションアーム30に与えられるトルク値(具体的には、Tb×L12で示されるトルク値)とに基づき、テンションアームの回動中心の軸線(つまり、回転軸22の軸線22p)とテンションプーリの回転中心の軸線44pとを結ぶ直線が水平方向となることによりテンションアームが水平方向となるように制御される。つまり、テンションアームが水平方向の場合には、テンションアーム30の回動中心の軸線(つまり、回転軸22の軸線22p)とテンションプーリの回転中心の軸線44pとを結ぶ直線が水平方向となる。
次に、モータ50の動作制御について説明する。まず、記憶装置98には、アーム本体部32の方向についての指令値(0度である旨の指令値)が記憶されているので、この指令値を読み出す(S21)。
次に、指令値からエンコーダ42の出力値を減算して第3算出値を算出する(S22)。この第3算出値は、水平方向に対するアーム本体部32の傾斜角度を表している。つまり、アーム本体部32のプーリ44側が水平方向に対して上方に傾斜している場合には、正の値が減算され、アーム本体部32のプーリ44側が水平方向に対して下方に傾斜している場合には、負の値が減算される(つまり、結果的に正の値を加算する)。すなわち、アーム本体部32のプーリ44側が水平方向に対して上方に傾斜している場合には、ワイヤWへの張力が弱いのでワイヤWへの張力を強くするために、正の値を減算してモータ50の回転速度が遅くなるように制御し、一方、アーム本体部32のプーリ44側が水平方向に対して下方に傾斜している場合には、ワイヤWへの張力が強いのでワイヤWへの張力を弱くするために、負の値を減算して(結果的に正の値を加算する)モータ50の回転速度が速くなるように制御する。
次に、第3算出値に対して予め定められた定数を乗算して速度値を算出する(S23)。
次に、ステップS23で算出された速度値からステップS41で算出された巻線速度値を減算して第4算出値を算出する(S24)。ここで、このステップS24において、巻線速度値を考慮するのは、エンコーダ42の値のみに従いモータ50を制御すると、巻線速度が変化しているにもかかわらず、アーム本体部32が回動するまではモータ50の回転速度が変化しないので、巻線速度の変化によってもモータ50の回転速度を制御させるためである。つまり、巻線速度とモータ50の回転速度に差がある場合には、モータ50によりワイヤWへの張力が大きく増減されてしまい、その分テンションアーム30が水平方向に対して傾斜するため、テンションアーム30を水平方向とする制御が遅くなるが、巻線速度値を考慮することにより、巻線速度とモータ50の回転速度の差を小さくすれば、巻線速度とモータ50の回転速度の差によるアーム本体部32の傾斜が小さくできるので、テンションアーム30の水平方向とする制御を早くすることができる。なお、ワイヤWの送り方向が引出し方向の場合には、巻線速度値を正の値とし、ワイヤWの送り方向が引出し方向と逆方向の場合には、巻線速度値を負の値とする。
次に、第4算出値から繰出しモータ現在速度値を減算して第5算出値を算出する(S25)。なお、繰出しモータ現在速度値は、エンコーダ56からの出力を微分する(S41)ことにより得られる。ステップS41で算出された巻線速度値の減算(S24)を速度指令とすると、このステップS25における繰出しモータ現在速度値の減算は、該速度指令に対するフィードバック制御といえる。
次に、第5算出値に対して予め定められた定数を乗算して、トルク値を算出する(S26)。
次に、ステップS26で算出されたトルク値から電流センサ96aからのトルク値を減算して第6算出値を算出する(S27)。この第6算出値はトルク偏差の値といえる。
次に、第6算出値に対して予め定められた定数を乗算して、PWM回路94bに出力する電圧値(PWM回路への電圧指令)を算出し(S28)、PWM回路94bに出力する(S29)。
PWM回路94bは、入力された信号に基づき電圧信号としてのパルス信号を出力して、モータ50に対して電流を供給する(S30)。以上のように、図6のフローチャートに示す処理を所定の周期で行なうことにより、モータ50の制御を行なう。
モータ50においては、上記のように、エンコーダ42による検出値(エンコーダ42の出力値)に従い、テンションアームが水平方向となるように、モータ50の回転速度が制御されるとともに(S23)、ワイヤWの巻線速度値に従いモータ50の回転速度が制御される(S24)。すなわち、水平方向を示す角度値からエンコーダ42により検出された角度値を減算した値(角度減算値)に基づき(S22)モータ50の回転速度値を算出しているといえる(S23)。また、該角度減算値に基づく速度値から速度検出部により検出された送り速度値を減算して速度減算値を算出し(S24)、該速度減算値に基づき繰出しモータ50の回転速度を算出しているといえる。
以上のように、テンション装置5は、バネ46とモータ20によりワイヤWに張力を付与する構成となっていて、バネ46については、ワイヤWに与える張力の範囲における略中心の値の張力を有するバネを使用し、モータ20によりワイヤWによるトルクに対してトルクを増減させればよいので、バネ46が設けられない場合に比べて、モータ20を小型化する(つまり、モータの出力トルクを小さくする)ことができる。つまり、バネ46による張力付与の機能をモータ20により補助することになるので、モータ20を小型化することができる。
なお、ワイヤWに与える張力の範囲における略中心の値の張力を有するバネでなくても、モータ20によりワイヤWにかけるトルクを調整することにより、所望の張力を付与することができる。すなわち、バネの張力がワイヤWに与える張力の範囲における中心の値よりも小さい場合には、モータ20により与えるトルクの値における正の値の幅を大きくし、負の値の幅を小さくすればよく、逆に、バネの張力がワイヤWに与える張力の範囲における中心の値よりも大きい場合には、モータ20により与えるトルクの値における正の値の幅を小さくし、負の値の幅を大きくすればよい。
よって、バネ46について、複数の張力を有する複数種類のバネを用意しておくことにより、ワイヤWにかける所望の張力に近いワイヤを選択して、モータ20によりワイヤWにかけるトルクを調整すればよく、所定の張力差を有する複数種類のバネを用意しておけばよい。
以上のように、本実施例のテンション装置5によれば、巻線機102から送られる張力データに従いモータ20を制御するので、一回のワイヤWの巻線工程において、ワイヤWへの張力を自在に可変とすることができる。
また、上記のように、バネ46によりワイヤWにかかる張力をモータ20により増減させることにより、バネ46による張力付与の機能をモータ20により補助することになるので、モータ20を小型化することができる。つまり、バネ46とモータ20によりワイヤWに張力を付与するので、バネ46が設けられることにより、その分モータ20を小型化することができる。
また、上記のように、ステップS12において、巻線機102からの張力データに対して、エンコーダ80からの出力に基づく値を加算することにより、モータ20の制御に際して、慣性補償とメカロス補償を行なうことができる。
また、上記のように、ステップS13において、巻線機102からの張力データに対して、エンコーダ42の出力に基づく値を加算することにより、モータ20の制御に際してアーム本体部32の傾きを考慮するので、テンションアーム30が水平方向に対して傾斜している場合に、エンコーダ42の出力に基づく値を考慮してモータ20を動作制御することにより、テンションアーム30を水平方向に近づけることができる。
また、上記のように、ステップS22において、指令値からエンコーダ42の出力値を減算することにより、モータ50の制御に際して、アーム本体部32の傾きを考慮するので、モータ50を制御することにより、テンションアーム30を水平方向に近づけることができる。
また、上記のように、ステップS24において、ステップS23で算出された速度値からステップS41で算出された巻線速度値を減算することにより、モータ50の制御に際して巻線速度値を考慮するので、巻線速度が変化すると、その変化を即座にモータ50の回転速度の制御に反映させて、テンションアーム30を水平方向に早く近づけることができる。
次に、本発明に基づく実施例2の巻線機用のテンション装置について説明する。実施例2のテンション装置105は、図12に示すように構成され、実施例1のテンション装置5と略同一の構成であるが、モータ(張力制御モータ)120の回転軸122の軸線122pと一致した軸線148pを中心に回転するプーリ(補助プーリ)148が設けられ、ワイヤWの経路において、プーリ68とプーリ(テンションプーリ)144間に該プーリ148が設けられている点が異なる。
すなわち、本実施例のテンション装置105は、支持台110と、モータ(張力制御モータ)120と、テンションアーム130と、エンコーダ142と、プーリ144と、プーリ148と、モータ(繰出しモータ)150と、繰出しプーリ154と、エンコーダ156と、プーリ群Pと、エンコーダ180と、制御回路90と、記憶装置98とを有している。
ここで、支持台110は、テンション装置105における各構成要素を支持するための支持部であり、水平方向に設けられた基部112a、112bと、基部112a、112bに対して立設した立設部114とを有し、基部112a、112b、立設部14ともに板状(具体的には、平板状)を呈している。基部112aと基部112bとは、左右方向に間隔を介して形成されている。
また、モータ120は、モータ20と同一の構成であり、モータ120は、立設部114の背面側に固定して設けられ、モータ120においては、モータ本体部121から回転軸122が突出し、該回転軸122は、立設部114に設けられた開口部(図示せず)から立設部114の正面側に突出している。回転軸122は、モータ120の回転力を出力するものである。なお、モータ120の回転軸122の軸線122pは、立設部114の正面側の面に対して垂直方向に形成されている。軸線122pは、テンションアーム130の回動中心の軸線ともいえる。
なお、立設部114に設けられた開口部(つまり、回転軸122が挿通する開口部)には、ベアリング(図示せず)が設けられ、該ベアリングに回転軸122が回転可能に取り付けられている。
また、テンションアーム130は、ワイヤWに張力を与えるための略棒状の部材であり、モータ120の回転軸122に固定されている。すなわち、テンションアーム130は、帯板状(すなわち、帯状の平板状)の棒状を呈するアーム本体部132と、アーム本体部132の正面側の面における右側面側の端部領域に固定して設けられたバネ取付部134と、アーム本体部132の正面側の面に固定されるとともに、回転軸122に固定された固定具136aと、アーム本体部132の背面側の面に固定されるとともに、回転軸122に固定された固定具136bとを有している。
つまり、アーム本体部132は、棒状を呈する第1構成部132−1と、第1構成部132−1のプーリ144側の端部から連設され、略L字状に屈曲した板状の第2構成部132−2とを有している。
ここで、第1構成部132−1は、正面側の面と背面側の面とを有する細長略長方形状の板状(具体的には、平板状)を呈し、第1構成部132−1における一対の長手辺は互いに平行に形成され、バネ取付部134側の端部は略円弧状に形成されている。第1構成部132−1の正面側の面と背面側の面は、立設部114の正面側の面と平行に形成されている。また、第1構成部132−1には、回転軸122が挿通する穴部が設けられている。
また、第2構成部132−2は、第1構成部132−1の端部から連設された突出部132−2aと、突出部132−2aの正面側の端部から連設された延設部132−2bとを有している。突出部132−2aは、第1構成部132−1の端部から第1構成部132−1に対して正面側に直角に形成され、板状を呈している。また、延設部132−2bは、突出部132−2aの正面側の端部から突出部132−2aに対して直角に形成され、板状を呈している。つまり、延設部132−2bは、第1構成部132−1と同じ方向に形成されている。延設部132−2bの突出部132−2aと反対側の端部は、略円弧状に形成されている。
以上のように、アーム本体部132は、屈曲して形成されていて、第1構成部132−1の正面側の面と、延設部132−2bの正面側の面とは前後方向にずれて形成されている。アーム本体部132が上記のように構成されているのは、プーリ144とプーリ148とを前後方向において同じ位置に設けて、プーリ148とプーリ144間のワイヤWを立設部114の正面側の面と平行にするためである。
また、バネ取付部134は、第1構成部132−1の正面側の面におけるプーリ144側とは反対側に設けられ、略円柱状を呈している。このバネ取付部134には、バネ146の端部が固定して設けられている。なお、バネ取付部134の中心線(前後方向の軸線)134pは、回転軸122の軸線122pと平行となっている。
また、固定具136a、136bは、固定具36a、36bと同一の構成であり、固定具136a、136bは、ともにリング状を呈して、回転軸122が挿通するための穴部を有し、固定具136aは、ネジ止めによりアーム本体部132の第1構成部132−1の正面側の面に固定されるとともに、ネジ止めにより回転軸122に固定され、また、固定具136bは、ネジ止めによりアーム本体部132の第1構成部132−1の背面側の面に固定されるとともに、ネジ止めにより回転軸122に固定されている。なお、固定具136a、136bのアーム本体部132への固定は、ネジ止めではなく、溶接によりおこなってもよい。
以上のように、アーム本体部132が、固定具136a、136bを介して回転軸122に固定(支持としてもよい)されているので、モータ120の回転軸122が回転することにより、アーム本体部132が回動する。
また、エンコーダ142と、バネ146と、プーリ144と、モータ150と、繰出しプーリ154は、実施例1におけるエンコーダ42と、バネ46と、プーリ44と、モータ50と、繰出しプーリ54と同一の構成である。
すなわち、エンコーダ142は、エンコーダ42と同一の構成であり、エンコーダ142は、モータ120の背面側の面(具体的には、モータ本体部121の背面側の面)に固定して設けられ、回転軸122の背面側の端部と連結されている。このエンコーダ142は、モータ120の回転軸122の回転角度を検出するものであり、つまり、テンションアーム130の回動角度を検出するものである。
また、バネ146は、その上端がバネ取付部134に取り付けられ、下端がバネ取付部116に取り付けられている。
また、プーリ(テンションプーリ)144は、アーム本体部132の延設部132−2bの正面側の面における左側面側の端部(つまり、バネ取付部134側とは反対側の端部)にアーム本体部132に対して回転可能に設けられている。つまり、プーリ144は、アーム本体部132に固定された軸部132aに対して回転可能に設けられている。なお、プーリ144の回転中心の軸線144pは、モータ120の回転軸122の軸線122p及びバネ取付部134の中心線134pと平行になっていて、軸線122pと軸線144pと中心線134pとは、同一平面上にあり、正面視においては、軸線122pと軸線144pと中心線134pとは、同一直線上に形成されている。
また、プーリ148は、支持部140に回転可能に設けられている。支持部140は、立設部114の正面側の面に対して直角方向に設けられるとともに、左右方向に形成された板状部140aと、板状部140aの正面側の端部から板状部140aに対して直角方向に上方に形成された板状部140bと、板状部140bに固定された軸部140cとを有し、板状部140aと板状部140bとは側面視において略L字状を呈している。該軸部140cはプーリ148を回転可能に軸支している。つまり、プーリ148は、支持部140、特に、軸部140cに対して回転可能となっている。なお、軸部140cは、モータ120の回転軸122と分離している。板状部140aと板状部140bにより支持部本体部が構成される。なお、プーリ148に軸部140cが固定され、該軸部140cが支持部本体部に対して回転する構成としてもよい。
なお、プーリ148の回転中心の軸線148pは、モータ120の回転軸122の軸線122pと一致している。
また、モータ150は、立設部114の背面側に固定して設けられ、モータ150においては、モータ本体部151から回転軸152が突出し、回転軸152は、立設部114に設けられた開口部(図示せず)から立設部114の正面側に突出している。回転軸152は、モータ150の回転力を出力するものである。回転軸152の軸線は、プーリ144の回転中心の軸線及びモータ120の回転軸122の軸線と平行になっている。
また、繰出しプーリ154は、モータ150の回転軸152に固定して設けられている。つまり、モータ150が駆動して回転軸152が回転することにより、繰出しプーリ154が回転する。
また、エンコーダ156は、モータ150の背面側の面(具体的には、モータ本体部151の背面側の面)に固定して設けられ、モータ150の回転軸152の回転角度を検出するものである。
また、プーリ群Pは、プーリ60と、プーリ64と、プーリ68と、プーリ72と、プーリ76とを有し、プーリ群Pにおける各プーリは、ワイヤWを移送するためのガイドプーリである。
なお、プーリ60は、支持部62に回転自在に取り付けられ、プーリ64は、支持部66に回転自在に取り付けられ、プーリ68は、支持部70に回転自在に取り付けられ、プーリ72は、支持部74に回転自在に取り付けられ、プーリ76は、支持部78に回転自在に取り付けられている。
ここで、プーリ60及び支持部62は、実施例1のプーリ60及び支持部62と同一の構成であり、プーリ64及び支持部66は、実施例1のプーリ64及び支持部66と同一の構成であり、プーリ68及び支持部70は、実施例1のプーリ68及び支持部70と同一の構成であり、プーリ72及び支持部74は、実施例1のプーリ72及び支持部74と同一の構成であり、プーリ76及び支持部78は、実施例1のプーリ76及び支持部78と同一の構成であるので、詳しい説明を省略する。
また、エンコーダ180は、支持部78における板状部78bの正面側の面に取り付けられている。このエンコーダ180は、プーリ76を軸支する軸部77の回転角度を検出するものである。つまり、軸部77がプーリ76に固定され、軸部77の先端がエンコーダ180と連結されている。このエンコーダ180は、ワイヤWの巻線速度を検出するためのものである。
また、制御回路90は、実施例1の制御回路90と同様に、巻線機102から送られた張力データに基づき、モータ220の動作を制御し、アーム本体部232が所定の方向(具体的には、水平方向)となるように、モータ250の動作を制御するものであり(具体的には、テンションアーム130の回転中心の軸線237pとプーリ244の回転中心の軸線244pとを結ぶ直線で軸線237p及び軸線244pと直交する直線が、所定の方向(具体的には、水平方向)となるようにモータ250の動作を制御する)、図6〜図9に示すフローチャートや図10に示す機能ブロックに従い制御を行なう。
本実施例における制御回路90は、実施例1の制御回路90と同一の構成であるので、詳しい説明を省略する。
また、記憶装置98は、実施例1の制御回路90と同様に、図6〜図9に示すフローチャートや図10に示す機能ブロックに従い制御を行なうための動作プログラムを記憶する。また、記憶装置98には、アーム本体部132の方向についての指令データが記憶され、具体的には、水平方向を0度とした場合に、該0度である旨の指令値が記憶されている。
なお、テンション装置105におけるワイヤWの移送経路は、上流側からプーリ60、繰出しプーリ154、プーリ64、繰出しプーリ254、プーリ68、プーリ148、プーリ144、プーリ72、プーリ76の順となっている。プーリ60には、図3に示すワイヤボビン100からワイヤWが導かれ、また、プーリ76からは、巻線機102にワイヤWが導かれる。つまり、補助プーリ148は、ワイヤWの移送経路における繰出しプーリ154とプーリ144の間の位置に設けられ、補助プーリ148には、ワイヤWにおける繰出しプーリ154の下流側で、かつ、プーリ144の上流側の部位(すなわち、ワイヤWにおける繰出しプーリ154よりも下流側で、かつ、プーリ144よりも上流側の部位)が巻回される。
なお、テンション装置105において、テンションアーム130が水平方向の場合には、式(3)が成り立つ(図13参照)。なお、テンションアーム130が水平方向の場合には、アーム本体部132が水平方向となり、テンションアーム130の回動中心の軸線122pとプーリ144の回転中心の軸線144p間の方向(例えば、軸線122pや軸線144pと直角の方向)が水平方向となり、正面視において、軸線122pと軸線144pと中心線134pとを結ぶ直線(仮想直線)(軸線122pと軸線144pとを結ぶ直線(仮想直線)としてもよい)が水平方向となる(他においても同じ)。
なお、式(3)の左辺は、厳密には、プーリ44の半径rを考慮すると、Ta×(L21+r)となるが、rを小さくすれば無視できるので、式(3)ではプーリ44の半径を考慮していない。
式(3)を変形すると、式(4)が導かれ、TaとZ1とZ2により(つまり、変数であるTaとZ1とZ2とが定まることにより)モータ120のトルクTmが算出される。
なお、式(3)及び式(4)においては、ワイヤWに掛かる張力をTa(N)、バネ146の張力をTb(N)、モータ120のトルク値をTm(N・m)、モータ120の回転軸122の軸線122pとプーリ144の軸線144p間の長さをL21(m)、軸線122pとバネ取付部134の中心線134p間の長さをL22(m)、慣性補償によるトルク値をZ1(N・m)、メカロス補償によるトルク値をZ2(N・m)としている。
なお、式(3)、式(4)において、Ta×L21は、ワイヤWに与える張力の値に従いテンションアーム130に与えられるトルク値であるとともに、ワイヤWに与えられる張力の値に従いワイヤWがテンションアーム130におけるテンションアーム130の回動中心よりもプーリ144側に与えるトルク値となり、また、Tb×L12は、バネ146によりテンションアーム130に与えられるトルク値であり、具体的には、バネ146によりテンションアーム130のバネ146の取付け位置に与えるトルク値である。
また、式(3)において、Tm/L21は、モータ120によりテンションアーム130におけるプーリ144の取付け位置に与えるトルク値である。
次に、上記構成のテンション装置105の動作は、実施例1のテンション装置5の場合と同様であり、モータ120の動作はモータ20の動作と同様であり、モータ150の動作はモータ50の動作と同様であるので詳しい説明を省略する。すなわち、本実施例においては、モータ20の代わりにモータ120が用いられ、エンコーダ42の代わりにエンコーダ142が用いられ、モータ50の代わりにモータ150が用いられ、エンコーダ56の代わりにエンコーダ156が用いられ、エンコーダ80の代わりにエンコーダ180が用いられる以外は、実施例1の場合と同様に動作が行われる。また、ステップS12におけるモータ120のトルク値の計算においては、式(4)に従い計算を行なう。
なお、本実施例のテンション装置105では、モータ120の軸線と一致した軸線を有するプーリ148が設けられているので、モータ120のトルク値を実施例1におけるモータ20のトルク値よりも小さくすることができ、モータ120を小型化する(つまり、モータの出力トルクを小さくする)ことができる。
つまり、L21とL11が等しく、かつ、L22がL12と等しいと仮定して式(4)と式(2)を比較すると、Ta×L21は、2×Ta×L11よりも小さく、プーリ44の半径を考慮したとしても、L11はrよりも大きいので、L21+rは、2×L11よりも小さく、よって、Tmを実施例1の場合よりも小さくすることができる。
また、実施例1の場合と同様に、モータ120によりワイヤWによるトルクに対してトルクを増減させればよいので、バネ146が設けられない場合に比べて、モータ120を小型化する(すなわち、モータの出力トルクを小さくする)ことができる。
以上のように、本実施例のテンション装置105によれば、巻線機102から送られる張力データに従いモータ120を制御するので、一回のワイヤWの巻線工程において、ワイヤWへの張力を自在に可変とすることができる。
また、上記のように、バネ146によりワイヤWにかかる張力をモータ120により増減させることにより、バネ146による張力付与の機能をモータ120により補助することになるので、モータ120を小型化することができる。つまり、バネ146とモータ120によりワイヤWに張力を付与するので、バネ146が設けられることにより、その分モータ120を小型化することができる。
また、上記のように、プーリ148が設けられているので、モータ120をより小型化することができる。
また、実施例1の場合と同様に、ステップS12において、巻線機102からの張力データにおける張力の値に対して、エンコーダ180からの出力に基づく値を加算することにより、モータ120の制御に際して、慣性補償とメカロス補償を行なうことができる。
また、実施例1の場合と同様に、ステップS13において、巻線機102からの張力データにおける張力の値に対して、エンコーダ142の出力に基づく値を加算することにより、モータ120の制御に際してアーム本体部132の傾きを考慮するので、テンションアーム130が水平方向に対して傾斜している場合に、モータ120を動作制御することにより、アーム本体部132を水平方向に近づけることができる。
また、実施例1の場合と同様に、ステップS22において、指令値からエンコーダ142の出力値を減算することにより、モータ150の制御に際して、アーム本体部132の傾きを考慮するので、モータ150を制御することにより、アーム本体部132を水平方向に近づけることができる。
また、実施例1の場合と同様に、ステップS24において、ステップS23で算出された速度値からステップS41で算出された巻線速度値を減算することにより、モータ150の制御に際して巻線速度値を考慮するので、巻線速度が変化すると、その変化を即座にモータ150の回転速度の制御に反映させて、アーム本体部132を水平方向に近づけることができる。
なお、実施例2においては、プーリ148の回転中心の軸線とモータ120の回転中心の軸線とが一致するとしたが、プーリ148の回転中心をプーリ144の回転中心とバネ取付部34の間のいずれかの位置としてもよい。つまり、テンションアーム130に対して回転可能な補助プーリの取付け位置は、テンションアーム130におけるプーリ144の回転中心とバネ146の取付け位置の間のいずれかの位置とすればよい。
例えば、図14に示すテンション装置5’に示すように、実施例1のテンション装置5の構成にさらにプーリ(補助プーリ)49を設けてもよい。すなわち、プーリ49は、アーム本体部32におけるモータ20の回転軸22の軸線22pとバネ取付部34間の位置に回転可能に設けられ、具体的には、軸部32bがアーム本体部32における軸線22pとバネ取付部34間の位置に固定され、プーリ49が軸部32bに対して回転可能に設けられている。
図14に示すテンション装置5’においては、プーリ49が設けられているので、プーリ44に付与されるトルクを実施例1におけるプーリ44よりも小さくする(つまり、モータの出力トルクを小さくする)ことができ、モータ20を小型化することができる。
つまり、モータ50は、アーム本体部32が水平となるように制御されるが、アーム本体部32が水平の場合(つまり、正面視において、軸線122pと軸線144pと中心線134pとを結ぶ直線が水平方向の場合)には、式(5)が成り立つ(図15参照)。
式(5)を変形すると、式(6)が導かれ、TaとZ1とZ2により(つまり、変数であるTaとZ1とZ2とが定まることにより)モータ20のトルクTmが算出される。
なお、式(5)及び式(6)においては、ワイヤWに掛かる張力をTa(N)、バネ46の張力をTb(N)、モータ20のトルクをTm(N・m)、モータ20の回転軸22の軸線22pとプーリ44の回転中心の軸線44p間の長さをL11(m)、軸線22pとバネ取付部34の中心線34p間の長さをL12(m)、軸線22pとプーリ49の回転中心の軸線49p間の長さをL13(m)、慣性補償によるトルク値をZ1(N・m)、メカロス補償によるトルク値をZ2(N・m)としている。
なお、式(5)、式(6)において、Ta×L11は、ワイヤWに与える張力の値に従いテンションアーム30に与えられるトルク値であるとともに、ワイヤWに与えられる張力の値に従いワイヤWがテンションアーム30におけるテンションアーム30の回動中心よりもプーリ44側に与えるトルク値であり、また、Tb×L12は、バネ146によりテンションアーム130に与えられるトルク値であり、具体的には、バネ146によりテンションアーム130のバネ146の取付け位置に与えるトルク値であり、Ta×L13は、ワイヤWに与える張力の値に従いテンションアーム30に与えられるトルク値であるとともに、ワイヤWに与えられる張力の値に従いワイヤWがテンションアーム30におけるテンションアーム30の回動中心よりもバネ46側に与えるトルク値である。
また、式(5)において、Tm/L11は、モータ20によりテンションアーム30におけるプーリ44の取付け位置に与えるトルク値である。
つまり、Ta×L11(ワイヤWに与えられる張力の値に従いワイヤWがテンションアーム30におけるテンションアーム30の回動中心よりもプーリ44側に与えるトルク値)を第1トルク値とし、Tb×L12(バネ46によりテンションアーム30のバネ46の取付け位置に与えるトルク値)を第2トルク値とし、Tm/L11(モータ20によりテンションアーム30におけるプーリ44の取付け位置に与えるトルク値)を第3トルク値とし、Ta×L13(ワイヤWに与えられる張力の値に従いワイヤWがテンションアーム30におけるテンションアーム30の回動中心よりもバネ46側に与えるトルク値)を第4トルク値とした場合に、第2トルク値と第3トルク値と第4トルク値を加算した値を少なくとも含む比較用トルク値(式(5)における右辺)と第1トルク値(式(1)における左辺)が同一となるようにモータ20の出力トルク値を算出している。
また、第2トルク値と第3トルク値と第4トルク値と慣性補償によるトルク値とメカロス補償によるトルク値とを加算した値である比較用トルク値(式(1)における右辺)と第1トルク値(式(1)における左辺)が同一となるようにモータ20の出力トルク値を算出している。
なお、式(5)の左辺は、厳密には、プーリ44の半径rを考慮すると、Ta×(L11+r)となり、式(5)の右辺における「Ta×L13」は、プーリ49の半径r(つまり、プーリ44の半径と同じとする)を考慮すると、Ta×(L13+r)となるが、式(6)においては、Ta×(L11+r)−Ta×(L13+r)=Ta×L11−Ta×L13となり、式(6)と同じとなる。
ここで、式(6)を実施例2における式(4)と比較すると、L11=L21、L12=L22とした場合に、式(6)には「Ta×L13」があるので、その分、モータ20の出力トルク値を小さくすることができ、実施例2の場合に比べてモータ20を小型化することができる。
なお、プーリ49がアーム本体部32におけるプーリ44の回転中心の軸線44pとモータ20の回転軸22の軸線22p間の位置にある場合(つまり、プーリ49がテンションアーム30の回動中心よりもプーリ44側にある場合)には、式(5)において、Ta×L13が左辺に移るが、Ta×L13はTa×L11よりも小さいので、実施例1の場合に比べて、モータ20を小型化することができる。なお、プーリ49がテンションアーム30の回動中心よりもプーリ44側にある場合には、プーリ49の回転中心の軸線と軸線22p間の長さをL13とすると、式(5)における左辺は、Ta×L11+Ta×L13となり、式(5)における左辺が、「巻材に与えられる張力の値に従い巻材がテンションアームにおけるテンションアームの回動中心よりもテンションプーリ側に与えるトルク値」となる。
以上のように、補助プーリをテンションアーム130におけるプーリ144の回転中心とバネ146の取付け位置の間のいずれかの位置に設けることにより、プーリ(テンションプーリ)44の取付け位置に与えるトルク値を小さくでき、その分、モータ20の出力トルク値を小さくすることができる。
次に、本発明に基づく実施例3の巻線機用のテンション装置について説明する。実施例3のテンション装置205は、図16〜図24に示すように構成され、実施例1及び実施例2のテンション装置においては、張力制御用のモータの回転軸がテンションアーム30の回転中心に設けられているのに対して、本実施例においては、張力制御用のモータ220の回転軸がテンションアーム230の回転中心と一致せず、アーム本体部232のバネ246取付け側とは反対側の端部に近い側に設けられている点が異なる。
すなわち、本実施例のテンション装置205は、支持台210と、テンションアーム回動部219と、テンションアーム230と、エンコーダ取付部240と、エンコーダ242と、プーリ244と、モータ(繰出しモータ)250と、繰出しプーリ254と、エンコーダ256と、プーリ群Pと、エンコーダ280と、制御回路90と、記憶装置98とを有している。
ここで、支持台210は、実施例1の支持台10と略同一の構成であり、基部212と立設部214とを有しているが、立設部214には、回動アーム224のカムフォロア228が挿通するための開口部218が設けられている。この開口部218は、円弧状の帯状を呈し、カムフォロア228の回動範囲に沿って設けられ、カムフォロア228の回動に支障がないように形成されている。また、立設部214には、テンションアーム230の回転軸となる軸部237が挿通する開口部(図示せず)が設けられている。また、立設部214には、バネ246の下端を取り付けるためのバネ取付部216が設けられている。
また、テンションアーム回動部219は、モータ(張力制御モータ)220と、モータ220に取り付けられた回動アーム224とを有している。
ここで、モータ220は、立設部214の背面側に固定して設けられ、モータ220においては、モータ本体部221から回転軸222が突出し、該回転軸222は、正逆両方向に回転する。モータ本体部221には、図19に示すように、正面側に4つの脚部221−1が設けられ、この脚部221−1が立設部214の固定されている。脚部221が設けられていることにより、回動アーム224が回動するための空間が設けられる。
該回転軸222の軸線222pは、テンションアーム230の回転中心の軸線237p(軸部237の軸線)と平行に設けられ、該回転軸222の軸線222pの位置は、テンションアーム230の回転中心の軸線237p(軸部237の軸線)よりもアーム本体部232のプーリ244側の位置に設けられ、正面視において、軸線222pと軸線237pを結ぶ直線(仮想直線)が水平方向となっている。具体的には、テンションアーム230が水平方向の場合(つまり、アーム本体部232が水平方向の場合であり、正面視において、軸線222pと軸線244pと中心線234pを結ぶ直線(仮想直線)(軸線222pと軸線244pとを結ぶ直線(仮想直線)としてもよい)が水平方向の場合(他においても同じ))に、軸線222pは、軸線237pと軸線244pの間の位置にあり、図23に示すように、正面視において、軸線222pは、軸線237pと軸線244pとを結ぶ直線上にある。
また、回動アーム224は、モータ220の回転軸222に固定して設けられ、回動アーム224は、回転軸222に固定された回動アーム本体部226と、回動アーム本体部226の先端側に設けられたカムフォロア228とを有している。
回動アーム本体部226は、先端側に向けて先細りの板状(具体的には、平板状)を呈し、回転軸222の軸線222pに対して直角方向に形成されている。また、カムフォロア228は、回動アーム本体部226の正面側の面の先端側の領域に設けられ、軸部228aと、外輪228bと、該軸部228aと該外輪228bの間に設けられたニードル(図示せず)とを有していて、外輪228bが軸部228aに対して回転する。つまり、外輪228bがローラであり、軸部228aとニードルがローラを回転可能に軸支する軸支部である。カムフォロア228の回転中心の軸線228p(軸部228aの軸線)は、回転軸222の軸線222pと平行となっている。テンションアーム230が水平方向の場合には、軸線228pの延長線は、軸線244pと一致する。なお、カムフォロア228のようにローラを有していなくても、円柱状のピン(突状部)が溝部238a内をスライドする構成としてもよい。
また、図23に示すように、テンションアーム230が水平方向の場合(つまり、軸線244pと軸線237pを結ぶ直線が水平方向の場合)、回動アーム224が水平方向にあり、正面視において、軸線222pと軸線228pを結ぶ直線(仮想直線)が軸線244pと軸線237pを結ぶ直線と一致する(つまり、軸線222pと軸線228pを結ぶ直線が、軸線237pを中心とする放射方向にある)。つまり、テンションアーム230が水平方向の場合において、カムフォロア(係合部)228におけるモータ220の回転軸222の軸線222pと平行な軸線(中心線)228pとモータ220の回転軸222の軸線222pとを通り、かつ、モータ220の回転軸222の軸線222pと直角方向の直線(仮想直線)が、テンションアーム230の回転中心の軸線237pを通る。
また、テンションアーム230が水平方向の場合に、正面視において、プーリ244の回転中心の軸線244pとカムフォロア228の回転中心の軸線228pとが一致する。
また、テンションアーム230は、ワイヤWに張力を与えるための略棒状の部材であり、帯板状の棒状を呈するアーム本体部232と、アーム本体部232の正面側の面における右側面側の端部領域に固定して設けられたバネ取付部234と、アーム本体部232の正面側の面に固定された固定具236aと、アーム本体部232の背面側の面に固定された固定具236bと、固定具236aとアーム本体部232と固定具236bと立設部214とに挿通して設けられた軸部237と、軸部237の背面側の端部が挿通された固定具236cと、アーム本体部232の背面側の面に固定された溝形成部(溝形成部材、スライド用部材としてもよい)238とを有している。
ここで、アーム本体部232は、実施例1のアーム本体部32と同一の構成であり、略棒状を呈し、正面側の面と背面側の面とを有する細長略長方形状の板状を呈している。アーム本体部32の正面側の面と背面側の面は、立設部14の正面側の面と平行に形成されている。また、アーム本体部32には、回転軸22が挿通する穴部が設けられている。
また、バネ取付部234は、略円柱状を呈し、このバネ取付部34には、バネ46の端部が固定して設けられている。
また、固定具236a、236b、236cはともにリング状を呈しており、軸部237が挿通するための穴部を有し、固定具236aは、ネジ止めによりアーム本体部232の正面側の面に固定されるとともに、ネジ止めにより軸部237に固定され、また、固定具236bは、ネジ止めによりアーム本体部32の背面側の面に固定されるとともに、ネジ止めにより軸部237に固定されている。なお、固定具236a、236bのアーム本体部232への固定は、ネジ止めではなく、溶接によりおこなってもよい。また、固定具236cは、立設部214の背面側に設けられ、ネジ止めにより軸部237に固定されている。
また、軸部237は、軸状を呈し、固定具236a、236b、236cのそれぞれの穴部に挿通されて、上記のように固定具236a、236b、236cに固定されている。
また、溝形成部238は、アーム本体部232の背面側の面に固定して設けられ、溝形成部238は、板状部材に断面方形状(断面略方形状としてもよい)の溝部238aを形成した形状を呈している。つまり、溝形成部238は、断面略コ字状を呈し、溝部238aの形成方向(長手方向)は、テンションアーム230の回転中心の軸線237pと直角の方向であり(つまり、溝部238aは、テンションアーム230の回転中心の軸線237pと直角の方向に形成されている)、溝部238aの中心線238pの延長線がテンションアーム230の回転中心の軸線237pと直交する。別の言い方をすると、溝部238aの形成方向(長手方向)は、軸部237の回転中心の軸線とプーリ244の回転中心の軸線244pとを結ぶ方向で、それらの軸線に対して直角の方向(アーム本体部232の形成方向としてもよい)となっている。
なお、中心線238pと溝部238aにおける一方の内壁部間の長さ238−L1と、中心線238pと溝部238aにおける他方の内壁部間の長さ238−L2とは同一である。例えば、溝部238aの中心線238pを溝部238aにおける背面側の面における溝部238aの幅方向の2つの中心位置を結ぶ直線とした場合に、該中心線238pは、テンションアーム230の回転中心の軸線237pと直交する。
溝部238aの幅方向(Z1−Z2方向)の長さ(長手方向に対する直角方向の長さ)は、カムフォロア228の外輪が回転しながら溝部238a内をスライド可能な長さに形成され、カムフォロア228の外輪の直径よりも若干長い長さに形成されている。つまり、カムフォロア228の外輪は、溝部238aに沿ってスライド可能に溝部238aに係合している。つまり、カムフォロア228は、溝部238a内をスライドする突状部であり、テンションアーム230と係合する係合部である。
このように溝部238aが設けられているのは、軸部237の軸線とモータ220の回転軸222の軸線222pとが一致せずにずれていることから、回動アーム224が回動して、カムフォロア228が溝形成部238の溝部238aの壁部(溝部238aを構成する相対する壁部のうちのいずれかの壁部)を押すことにより、テンションアーム230が回動すると、カムフォロア228のアーム本体部232に対する位置がずれるためである。つまり、溝部238aが設けられていることにより、軸部237の軸線とモータ220の回転軸222の軸線222pとが一致せずにずれていても、回動アーム224の回動に支障がない。
なお、立設部214に設けられた開口部(つまり、軸部237が挿通する開口部)には、ベアリング(図示せず)が設けられ、該ベアリングに軸部237が回転可能に取り付けられている。
テンションアーム230は以上のように構成されているので、アーム本体部232と、バネ取付部234と、固定具236a、236b、236cと、軸部237と、溝形成部238とは、一体に構成され、テンションアーム230が回動する際には、テンションアーム230を構成する上記各部が一体に回動し、軸部237も回転する。
また、モータ220の回転軸222の軸線222pとカムフォロア228の回転中心の軸線228p間の長さL33は、テンションアーム230の回転中心の軸線237pとプーリ244の回転中心の軸線244p間の長さL31よりも短く形成されている(L33<L31)。
また、モータ220の回転軸222の軸線222pとカムフォロア228の回転中心の軸線228p間の長さL33は、テンションアーム230の回転中心の軸線237pとモータ220の回転軸222の軸線222p間の長さL34よりも短く形成されている(L33<L34)。
また、モータ220の回転軸222の軸線222pとカムフォロア228の回転中心の軸線228p間の長さL33は、テンションアーム230の回転中心の軸線237pとカムフォロア228の回転中心の軸線228p間の長さL34よりも短く形成されている(L33<L34)。
また、モータ220の回転軸222の軸線222pとプーリ244の回転中心の軸線244p間の長さL35は、モータ220の回転軸222の軸線222pとテンションアーム230の回転中心の軸線237p間の長さL34よりも短くなっている(L35<L34)。
また、モータ220の回転軸222の軸線222pとカムフォロア228の回転中心の軸線228p間の長さL33は、テンションアーム230の回転中心の軸線237pとカムフォロア228の回転中心の軸線228p間の長さL36よりも短く形成され(L33<L36)。
また、エンコーダ取付部240は、立設部214の正面側の面に対して直角方向に設けられるとともに、左右方向に形成された板状部240aと、板状部240aの正面側の端部から板状部240aに対して直角方向に上方に形成された板状部240bとを有し、側面視において略L字状を呈している。板状部240bには、開口部(図示せず)が設けられ、該開口部に軸部237が回転可能に取り付けられている。また、軸部237は、板状部240bの正面側の面から正面側に突出して形成されている。
また、エンコーダ242は、エンコーダ取付部240の板状部240bの正面側の面に取り付けられていて、軸部237の先端と連結されている。このエンコーダ242は、軸部237の回転角度を検出するものであり、つまり、テンションアーム230の回動角度を検出するものである。
また、プーリ(テンションプーリ)244は、アーム本体部232の正面側の面における左側面側の端部(つまり、バネ取付部234側とは反対側の端部)にアーム本体部232に対して回転可能に設けられている。つまり、プーリ244は、アーム本体部232に固定された軸部232aに対して回転可能に設けられている。なお、プーリ244の回転中心の軸線244p(軸部232aの軸線)は、アーム本体部232の幅方向(長手方向と直角の方向)における中央位置に設けられている。
プーリ244の回転中心は、該中心位置238pと対応していて、プーリ244の回転中心の軸線244p(軸部232aの軸線)は該中心線238pを通る位置となっており(つまり、軸線244pが中心線238pとは直角に交差する)、さらに、プーリ244の回転中心の軸線244pは、溝部238aの長手方向(形成方向)における略中心位置に設けられている。
また、バネ246は、その上端がバネ取付部234に取り付けられ、下端がバネ取付部216に取り付けられている。
また、モータ250は、立設部214の背面側に固定して設けられ、モータ250においては、モータ本体部251から回転軸252が突出し、回転軸252は、立設部214に設けられた開口部(図示せず)から立設部214の正面側に突出している。回転軸252は、モータ250の回転力を出力するものである。
また、繰出しプーリ254は、モータ250の回転軸252に固定して設けられている。つまり、モータ250が駆動して回転軸252が回転することにより、繰出しプーリ254が回転する。なお、繰出しプーリ254は、ワイヤWを下流側(具体的には、プーリ68側)に移送する方向に回転する。
ここで、テンションアーム230の回転中心の軸線237pと、モータ220の回転軸222の軸線222pと、プーリ244の回転中心の軸線244pと、モータ250の回転軸252の軸線252pとは互いに平行になっている。
また、エンコーダ256は、モータ250の背面側の面(具体的には、モータ本体部251の背面側の面)に固定して設けられ、モータ250の回転軸252の回転角度を検出するものである。
また、プーリ群Pは、プーリ60と、プーリ64と、プーリ68と、プーリ72と、プーリ76とを有し、プーリ群Pにおける各プーリは、ワイヤWを移送するためのガイドプーリである。
なお、プーリ60は、支持部62に回転自在に取り付けられ、プーリ64は、支持部66に回転自在に取り付けられ、プーリ68は、支持部70に回転自在に取り付けられ、プーリ72は、支持部74に回転自在に取り付けられ、プーリ76は、支持部78に回転自在に取り付けられている。
ここで、プーリ60及び支持部62は、実施例1のプーリ60及び支持部62と同一の構成であり、プーリ64及び支持部66は、実施例1のプーリ64及び支持部66と同一の構成であり、プーリ68及び支持部70は、実施例1のプーリ68及び支持部70と同一の構成であり、プーリ72及び支持部74は、実施例1のプーリ72及び支持部74と同一の構成であり、プーリ76及び支持部78は、実施例1のプーリ76及び支持部78と同一の構成であるので、詳しい説明を省略する。
また、エンコーダ280は、支持部78における板状部78bの正面側の面に取り付けられている。このエンコーダ280は、プーリ76を軸支する軸部77の回転角度を検出するものである。つまり、軸部77の先端がエンコーダ280と連結されている。このエンコーダ280は、ワイヤWの巻線速度を検出するためのものである。
また、制御回路90は、実施例1の制御回路90と同様に、巻線機102から送られるとともに記憶装置98に保持されたトルクデータに基づき、モータ220の動作を制御し、アーム本体部232が所定の方向(具体的には、水平方向)となるように、モータ250の動作を制御するものであり(具体的には、テンションアーム230の回転中心の軸線237pとプーリ244の回転中心の軸線244pとを結ぶ直線で軸線237p及び軸線244pと直交する直線が、所定の方向(具体的には、水平方向)となるようにモータ250の動作を制御する)、図6〜図9に示すフローチャートや図21に示す機能ブロックに従い制御を行なう。
本実施例における制御回路90は、実施例1の制御回路90と同一の構成であるので、詳しい説明を省略する。
また、記憶装置98は、実施例1の制御回路90と同様に、図6〜図9に示すフローチャートや図21に示す機能ブロックに従い制御を行なうための動作プログラムを記憶するとともに、巻線機102から送られるトルクデータを保持する。
また、記憶装置98には、アーム本体部232の方向についての指令データが記憶され、具体的には、水平方向を0度とした場合に、該0度である旨の指令値が記憶されている。
なお、テンション装置205におけるワイヤWの移送経路は、上流側からプーリ60、繰出しプーリ254、プーリ64、繰出しプーリ254、プーリ68、プーリ244、プーリ72、プーリ76の順となっている。プーリ60には、図3に示すワイヤボビン100からワイヤWが導かれ、また、プーリ76からは、巻線機102にワイヤWが導かれる。
なお、テンション装置205において、テンションアーム230が水平方向の場合には、式(7)が成り立つ(図22、図23参照)。なお、テンションアーム230が水平方向の場合には、アーム本体部232が水平方向となり、テンションアーム230の回動中心の軸線237pとプーリ244の回転中心の軸線244p間の方向(例えば、軸線237pや軸線244pと直角の方向)が水平方向となり、正面視において、軸線237pと軸線244pと中心線234pとを結ぶ直線(仮想直線)(軸線237pと軸線244pとを結ぶ直線(仮想直線)としてもよい)が水平方向となる(他においても同じ)。
すなわち、式(7)の右辺におけるTm/L33(モータ220によりプーリ244の回転中心の軸線244pの位置に与えるトルク)をRとすると、回動アーム224が水平方向に対して回動するとともに、テンションアーム230が水平方向に対して回動した状態では、Rは式(8)に示すようになるが(図24参照)、テンションアーム230が水平方向の場合には、cosαとL36/L31はそれぞれ1となるため、結果的に、R=Tm/L33となり、式(7)のようになる。
式(7)を変形すると、式(9)が導かれ、TaとZ1とZ2により(つまり、変数であるTaとZ1とZ2とが定まることにより)モータ220のトルクTmが算出される。
なお、式(7)及び式(9)においては、ワイヤWに掛かる張力をTa(N)、バネ246の張力をTb(N)、モータ220のトルク値をTm(N・m)、テンションアーム230の回転中心の軸線237pとプーリ244の軸線244p間の長さをL31(m)、軸線237pとバネ取付部234の中心線234p間の長さをL32(m)、モータ220の回転軸222の軸線222pとカムフォロア228の回転中心の軸線228p間の長さをL33(m)、慣性補償によるトルク値をZ1(N・m)、メカロス補償によるトルク値をZ2(N・m)としている。
なお、式(7)、式(9)において、2×Ta×L31は、ワイヤWに与える張力の値に従いテンションアーム230に与えられるトルク値であるとともに、ワイヤWに与えられる張力の値に従いワイヤWがテンションアーム230におけるテンションアーム230の回動中心よりもプーリ244側に与えるトルク値であり、また、Tb×L32は、バネ246によりテンションアーム230に与えられるトルク値であり、具体的には、バネ246によりテンションアーム230のバネ246の取付け位置に与えるトルク値である。
また、式(7)において、Tm/L33は、モータ220によりテンションアーム230におけるプーリ244の取付け位置に与えるトルク値である。
つまり、2×Ta×L31(ワイヤWに与えられる張力の値に従いワイヤWがテンションアーム230におけるテンションアーム230の回動中心よりもプーリ244側に与えるトルク値)を第1トルク値とし、Tb×L32(バネ246によりテンションアーム230のバネ246の取付け位置に与えるトルク値)を第2トルク値とし、Tm/L33(モータ220によりテンションアーム230におけるプーリ244の取付け位置に与えるトルク値)を第3トルク値とした場合に、第2トルク値と第3トルク値を加算した値を少なくとも含む比較用トルク値(式(7)における右辺)と第1トルク値(式(7)における左辺)が同一となるようにモータ220の出力トルク値を算出している。
また、第2トルク値と第3トルク値と慣性補償によるトルク値とメカロス補償によるトルク値とを加算した値である比較用トルク値(式(7)における右辺)と第1トルク値(式(7)における左辺)が同一となるようにモータ220の出力トルク値を算出している。
なお、回動アーム224が水平方向から回動することにより、カムフォロア228の回転中心の軸線228pの位置とプーリ244の軸線244pの位置がずれた場合には、モータ220のプーリ244の取付け位置に与えるトルクの値は、厳密にはTm/L33と同一ではないが、当該ずれ量はわずかであるので、モータ220のプーリ244の取付け位置に与えるトルクの値はTm/L33としている。
次に、上記構成のテンション装置205の動作は、実施例1のテンション装置5の場合と同様であり、モータ220の動作はモータ20の動作と同様であり、モータ250の動作はモータ50の動作と同様であるので詳しい説明を省略する。すなわち、本実施例においては、モータ20の代わりにモータ220が用いられ、エンコーダ42の代わりにエンコーダ242が用いられ、モータ50の代わりにモータ250が用いられ、エンコーダ56の代わりにエンコーダ256が用いられ、エンコーダ80の代わりにエンコーダ280が用いられる以外は、実施例1の場合と同様に動作が行われる。また、ステップS12におけるモータ220のトルク値の計算においては、式(9)に従い計算を行なう。
なお、本実施例のテンション装置205では、モータ220の回転軸222は、テンションアーム230の軸部237よりもずれた位置に設けられ、テンションアーム230が水平方向の場合(つまり、軸線244pと軸線237pを結ぶ直線が水平方向の場合)、回動アーム224が水平方向にあり、正面視において、軸線222pと軸線228pを結ぶ直線が軸線244pと軸線237pを結ぶ直線と一致し、正面視において、プーリ244の回転中心の軸線244pとカムフォロア228の回転中心の軸線228pとが一致しているので、式(9)が適用され、軸線222pと軸線228p間の長さL33は、軸線237pと軸線244p間の長さL31よりも短く形成されているので、実施例1の場合に比べてモータ(張力制御モータ)220の出力トルク値を小さくすることができ、モータ220を小型化することができる。
つまり、L31とL11が等しく、かつ、L32がL12と等しいと仮定して式(9)と式(2)を比較すると、L33はL11よりも小さいので、よって、Tmを実施例1の場合よりも小さくすることができる。
なお、実施例3においては、図4の代わりに図20に示す構成となり、また、機能ブロック図は、図21に示すようになる。すなわち、図20は図4と略同一であり、図21は図10と略同一であるが、モータ220とエンコーダ242間の直線がない点が異なる。すなわち、実施例3では、エンコーダ242は、モータ220の回転軸222の回転角度を検出するものではないので、モータ220とエンコーダ242間の直線は描かれていない。
以上のように、本実施例のテンション装置205によれば、巻線機102から送られる張力データに従いモータ220を制御するので、一回のワイヤWの巻線工程において、ワイヤWへの張力を自在に可変とすることができる。
また、上記のように、バネ246による張力をモータ220により増減させることにより、バネ246による張力付与の機能をモータ220により補助することになるので、モータ220を小型化することができる。つまり、バネ246とモータ220によりワイヤWに張力を付与するので、バネ246が設けられることにより、その分モータ220を小型化することができる。
また、上記のように、モータ220の回転軸222は、テンションアーム230の軸部237とずれた位置に設けられているので、実施例1の場合に比べてモータ(張力制御モータ)220を小型化することができる。
また、実施例1の場合と同様に、ステップS12において、巻線機102からの張力データにおける張力の値に対して、エンコーダ280からの出力に基づく値を加算することにより、モータ220の制御に際して、慣性補償とメカロス補償を行なうことができる。
また、実施例1の場合と同様に、ステップS13において、巻線機102からの張力データにおける張力の値に対して、エンコーダ242の出力に基づく値を加算することにより、モータ220の制御に際してアーム本体部232の傾きを考慮するので、テンションアーム230が水平方向に対して傾斜している場合に、モータ220を動作制御することにより、アーム本体部232を水平方向に近づけることができる。
また、実施例1の場合と同様に、ステップS22において、指令値からエンコーダ242の出力値を減算することにより、モータ250の制御に際して、アーム本体部232の傾きを考慮するので、モータ250を制御することにより、アーム本体部232を水平方向に近づけることができる。
また、実施例1の場合と同様に、ステップS24において、ステップS23で算出された速度値からステップS41で算出された巻線速度値を減算することにより、モータ250の制御に際して巻線速度値を考慮するので、巻線速度が変化すると、その変化を即座にモータ250の回転速度の制御に反映させて、アーム本体部232を水平方向に近づけることができる。
なお、上記の構成においては、正面視において、プーリ244の回転中心の軸線244pとカムフォロア228の回転中心の軸線228pとが一致するとしたが、軸線244pと軸線228pとが一致しない構成としてもよい。
すなわち、例えば、図25に示すように、テンションアーム230が水平方向の場合に、正面視において、軸線228pが軸線244pよりも軸線237p側にずれた位置にある構成としてもよく、この場合には、溝形成部238もアーム本体部232におけるカムフォロア228の位置に対応した位置(すなわち、軸線244pよりも軸線237p側の位置)に設けられる。なお、図25の構成においては、式(7)におけるTm/L33をRとすると、Rは式(10)に示すようになる。つまり、モータ220によりテンションアーム230におけるプーリ244の取付け位置に与えるトルク値は、式(10)に示すようになる。
また、図26に示すように、テンションアーム230が水平方向の場合に、正面視において、軸線228pが軸線244pよりも軸線237p側と反対側にずれた位置にある構成としてもよく、この場合には、溝形成部238もアーム本体部232におけるカムフォロア228の位置に対応した位置(すなわち、軸線244pよりも軸線237p側と反対側の位置)に設けられる。なお、図26の構成においては、式(7)におけるTm/L33をRとすると、Rは式(10)に示すようになる。つまり、モータ220によりテンションアーム230におけるプーリ244の取付け位置に与えるトルク値は、式(10)に示すようになる。
また、実施例3における上記の説明において、溝形成部238がアーム本体部232に設けられ、回動アーム224の先端にカムフォロア228が設けられているとしたが、逆の構成としてもよく、図27、図28に示すように、溝形成部238を回動アーム本体部226の先端に設け、カムフォロア228をアーム本体部232に設けてもよい。
その場合には、カムフォロア228については、カムフォロア228の回転中心の軸線228pの延長線をプーリ244の回転中心の軸線244pと一致させた構成とし、溝形成部238については、溝部238aは、モータ220の回転軸222の軸線222pと直角方向に形成され、溝部238aの中心線238pの延長線がモータ220の回転軸222の軸線222pと直角に交差する構成とする。
この構成の場合でも、式(7)、(8)、(9)、(10)におけるL33は、モータ220の回転軸222の軸線222pとカムフォロア(アーム本体部232に設けられたカムフォロア)の回転中心の軸線間の長さとなる。
また、図27、図28の構成において、溝部238aの中心線238pの延長線は、テンションアーム230が水平方向の場合において、テンションアーム230の回転中心の軸線237pを通る。
なお、図21〜図24において、軸線237pを中心とする円は、軸線237pを中心として軸線237pと軸線244p間の長さを半径とする円を示している。また、軸線222pを中心とする円は、軸線222pを中心として、軸線222pと軸線228p間の長さを半径とする円を示している。
なお、上記実施例3においては、プーリ68を経たワイヤWはプーリ244に至るとしたが、実施例2のように補助プーリを設け、プーリ68を経たワイヤWが補助プーリに導かれ、補助プーリを経たワイヤWがプーリ244に至る構成としてもよい。その場合には、支持部140と同一の構成の支持部を立設部214の正面側の面に設け、補助プーリを該支持部に対して回転可能に設けるとともに、補助プーリとプーリ244間のワイヤWが立設部214の正面側の面と平行になるように、プーリ244の前後方向の位置を補助プーリの前後方向の位置と一致させる。プーリ244の前後方向の位置を補助プーリの前後方向の位置と一致させるには、軸部232aの長さを長くしてプーリ244を正面側に移動させた位置とするか、あるいは、アーム本体部232を実施例2のアーム本体部132のような構成とする。なお、繰出しプーリ254やその他のプーリ60、64、68、72、76についても、上記実施例3の場合に比べて、正面側に移動させた位置とする。また、補助プーリの回転中心の軸線がアーム本体部の回転中心の軸線と一致した構成とする。また、エンコーダ242及びエンコーダ取付部240は、立設部214の背面側に設け、エンコーダ取付部240に取り付けられたエンコーダ242は、固定具236cから背面側に突出した軸部237に連結されるものとする。
以上の構成とすることにより、上記実施例3の構成(図16〜図19の構成)に比べて、テンションアームのテンションプーリの取付け位置に与えるトルク値を小さくでき、上記実施例3の構成に比べてモータ220を小型化することができる。
さらに、補助プーリの回転中心の軸線とアーム本体部の回転中心の軸線とが一致した構成でなくても、補助プーリの回転中心をプーリ244の回転中心とバネ取付部234の間のいずれかの位置としてもよい。
次に、本発明に基づく実施例4の巻線機用のテンション装置について説明する。実施例4のテンション装置305は、図29〜図34に示すように構成され、実施例3のテンション装置と略同一の構成であるが、主として、テンションアーム回動部219を複数設けた点が異なる。
すなわち、本実施例のテンション装置305は、支持台310と、テンションアーム回動部319A〜319Cと、テンションアーム330と、エンコーダ取付部340と、エンコーダ342と、プーリ344と、モータ(繰出しモータ)350と、繰出しプーリ354と、エンコーダ356と、プーリ群Pと、エンコーダ380と、制御回路90と、記憶装置98とを有している。
支持台310は、実施例3の支持台210と略同一の構成であり、基部312と立設部314とを有しているが、立設部314には、回動アーム324A〜324Cのカムフォロア328A〜328Cが挿通するための開口部316A〜316Cが設けられている。すなわち、実施例3においては、立設部214にカムフォロアが挿通する開口部として、開口部218のみが設けられているが、本実施例では、3つの開口部が設けられている。また、立設部314には、バネ346の下端を取り付けるためのバネ取付部16が設けられている。
なお、開口部318A〜318Cにおける各開口部の構成は、実施例3における開口部218と同様であり、開口部318Aは、円弧状の帯状を呈し、カムフォロア328Aの回動範囲に沿って設けられ、また、開口部318Bは、円弧状の帯状を呈し、カムフォロア328Bの回動範囲に沿って設けられ、開口部318Cは、円弧状の帯状を呈し、カムフォロア328Cの回動範囲に沿って設けられている。また、開口部318Aと開口部318Bと開口部318Cは、1つの円弧状に沿って設けられ、開口部318A〜318Cにおける各開口部は、該1つの円弧に沿った形状となっている。
また、立設部314には、テンションアーム330の回転軸となる軸部337が挿通する開口部(図示せず)が設けられている。
また、テンションアーム回動部319Aは、モータ(張力制御モータ)320Aと、モータ320Aに取り付けられた回動アーム324Aとを有している。このテンションアーム回動部319Aは、実施例3におけるテンションアーム回動部219と同一の構成である。
ここで、モータ320Aは、立設部314の背面側に固定して設けられ、モータ320Aにおいては、モータ本体部321Aから回転軸322Aが突出し、該回転軸322Aは、正逆両方向に回転する。
該回転軸322Aの軸線322Apは、テンションアーム330の回転中心の軸線337p(軸部337の軸線)と平行に設けられ、該回転軸322Aの軸線322Apの位置は、テンションアーム330の回転中心の軸線337p(軸部337の軸線)よりもアーム本体部332のプーリ344側の位置に設けられ、正面視において、軸線322Apと軸線337pを結ぶ直線(仮想直線)が水平方向となっている。具体的には、テンションアーム330が水平方向の場合に、軸線322Apは、軸線337pと軸線344pの間の位置にあり、図34に示すように、正面視において、軸線322Apは、軸線337pと軸線344pとを結ぶ直線上にある。
また、回動アーム324Aは、モータ320Aの回転軸322Aに固定して設けられ、回動アーム324Aは、回転軸322Aに固定された回動アーム本体部326Aと、回動アーム本体部326Aの先端側に設けられたカムフォロア328Aとを有している。
回動アーム本体部326Aは、先端側に向けて先細りの板状を呈し、回転軸322Aの軸線に対して直角方向に形成されている。また、カムフォロア328Aは、回動アーム本体部326Aの正面側の面の先端側の領域に設けられ、軸部と、外輪と、該軸部と該外輪の間に設けられたニードルとを有していて、外輪が軸部に対して回転する。カムフォロア328Aにおける回転中心の軸線328Apは、回転軸322Aの軸線322Apと平行となっている。テンションアーム330が水平方向の場合には、軸線328Apの延長線は、軸線344pと一致する。
また、図34に示すように、テンションアーム330が水平方向の場合、回動アーム324Aが水平方向にあり、正面視において、軸線322Apと軸線328Apを結ぶ直線が軸線344pと軸線337pを結ぶ直線と一致し(つまり、軸線322Apと軸線328Apを結ぶ直線が、軸線337pを中心とする放射方向にある(すなわち、回動アーム324Aが軸線337pを中心とする放射方向にある))、正面視において、プーリ344の回転中心の軸線344pとカムフォロア328Aの回転中心の軸線328Apとが一致する。
また、テンションアーム回動部319Bは、モータ(張力制御モータ)320Bと、モータ320Bに取り付けられた回動アーム324Bとを有している。このテンションアーム回動部319Bは、テンションアーム回動部319Aと同一の構成である。
ここで、モータ320Bは、立設部314の背面側に固定して設けられ、モータ320Bにおいては、モータ本体部321Bから回転軸322Bが突出し、該回転軸322Bは、正逆両方向に回転する。また、図34に示すように、モータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bpとテンションアーム330の回転中心の軸線337pとを結ぶ直線で、それらの軸線と直交する直線(仮想直線)J2は、モータ320Aの回転軸322Aの軸線322Apとテンションアーム330の回転中心の軸線337pとを結ぶ直線で、それらの軸線と直交する直線(仮想直線)J1とは、角度α1をなしている。
該回転軸322Bの軸線322Bpは、テンションアーム330の回転中心の軸線337p(軸部337の軸線)と平行に設けられ、該回転軸322Bの軸線322Bpの位置は、該直線J2上で、軸線322Bpと軸線337p間の距離が軸線322Apと軸線337p間の距離とが同一となる位置に設けられている。
また、回動アーム324Bは、モータ320Bの回転軸322Bに固定して設けられ、回動アーム324Bは、回転軸322Bに固定された回動アーム本体部326Bと、回動アーム本体部326Bの先端側に設けられたカムフォロア328Bとを有している。
回動アーム本体部326Bは、先端側に向けて先細りの板状を呈し、回転軸322Bの軸線に対して直角方向に形成されている。また、カムフォロア328Bは、回動アーム本体部326Bの正面側の面の先端側の領域に設けられ、軸部と、外輪と、該軸部と該外輪の間に設けられたニードルとを有していて、外輪が軸部に対して回転する。カムフォロア328Bにおける回転中心の軸線328Bpは、回転軸322Bの軸線322Bpと平行となっている。
また、図34に示すように、テンションアーム330が水平方向の場合、正面視において、回動アーム324Bは軸線337pを中心とする放射方向にあり、正面視において、軸線322Bpと軸線328Bpを結ぶ直線(仮想直線)は、軸線337pを中心とする放射方向にあり、軸線337pと軸線322Bpとを結ぶ直線J2の延長線にある。つまり、カムフォロア328Bの回転中心の軸線328Bp(第2係合部におけるモータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bpと平行な中心線)とモータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bpとを通り、かつ、モータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bpと直角方向の直線が、テンションアーム330の回転中心の軸線337pを通る。
また、テンションアーム回動部319Cは、モータ(張力制御モータ)320Cと、モータ320Cに取り付けられた回動アーム324Cとを有している。このテンションアーム回動部319Cは、テンションアーム回動部319Aやテンションアーム回動部319Bと同一の構成である。
ここで、モータ320Cは、立設部314の背面側に固定して設けられ、モータ320Cにおいては、モータ本体部321Cから回転軸322Cが突出し、該回転軸322Cは、正逆両方向に回転する。また、モータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cpとテンションアーム320の回転中心の軸線337pとを結ぶ直線で、それらの軸線と直交する直線(仮想直線)J3は、直線J2と角度α2をなしている。なお、角度α1と角度α2とは同一に形成されている。
該回転軸322Cの軸線322Cpは、テンションアーム330の回転中心の軸線337p(軸部337の軸線)と平行に設けられ、該回転軸322Cの軸線322Cpの位置は、該直線J3上で、軸線322Cpと軸線337p間の距離が軸線322Apと軸線337p間の距離とが同一となる位置に設けられている。つまり、正面視において、軸線322Apと軸線322Bpと軸線322Cpとは、軸線337pを中心とする円弧上に同一間隔に形成されている。すなわち、モータ320Aとモータ320Bとモータ320Cとは同一間隔で円弧状に配設されているといえる。
また、回動アーム324Cは、モータ320Cの回転軸322Cに固定して設けられ、回動アーム324Cは、回転軸322Cに固定された回動アーム本体部326Cと、回動アーム本体部326Cの先端側に設けられたカムフォロア328Cとを有している。
回動アーム本体部326Cは、先端側に向けて先細りの板状を呈し、回転軸322Cの軸線に対して直角方向に形成されている。また、カムフォロア328Cは、回動アーム本体部326Cの正面側の面の先端側の領域に設けられ、軸部と、外輪と、該軸部と該外輪の間に設けられたニードルとを有していて、外輪が軸部に対して回転する。カムフォロア328Cにおける回転中心の軸線は、回転軸322Cの軸線と平行となっている。
また、図34に示すように、テンションアーム330が水平方向の場合、正面視において、回動アーム324Cは軸線337pを中心とする放射方向にあり、正面視において、軸線322Cpと軸線328Cpを結ぶ直線(仮想直線)は、軸線337pを中心とする放射方向にあり、軸線337pと軸線322Cpとを結ぶ直線J3の延長線にある。つまり、カムフォロア328Cの回転中心の軸線328Cp(第2係合部におけるモータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cpと平行な中心線)とモータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cpとを通り、かつ、モータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cpと直角方向の直線が、テンションアーム330の回転中心の軸線337pを通る。
なお、回動アーム324Aの長さと回動アーム324Bの長さと回動アーム324Cの長さは同一に形成され、正面視において、軸線322Apと軸線328Ap間の長さと、軸線322Bpと軸線328Bp間の長さと、軸線322Cpと軸線328Cp間の長さとは同一に形成されている。
また、テンションアーム330は、ワイヤWに張力を与えるための部材であり、板状を呈するアーム本体部332と、アーム本体部332の棒状部332bの正面側の面における右側面側の端部領域に固定して設けられたバネ取付部334と、アーム本体部332の正面側の面に固定された固定具336aと、アーム本体部332の背面側の面に固定された固定具336bと、固定具336aとアーム本体部232と固定具336bと立設部314とに挿通して設けられた軸部337と、軸部337の背面側の端部が挿通された固定具336cと、アーム本体部332の背面側の面に固定された溝形成部(溝形成部材、スライド用部材としてもよい)338A、338B、338Cとを有している。
ここで、アーム本体部332は、扇状部332aと、扇状部332aから連設された棒状部332bとを有し、全体に平板状を呈している。
すなわち、扇状部332aは、直線状の辺部332a−1と直線状の辺部332a−2と円弧状の辺部332a−3とを有する扇状を呈している(図33参照)。辺部332a−1と辺部332a−2とは直角をなしているが、他の角度であってもよい。また、円弧状をなす辺部332a−3は、テンションアーム330の回転中心(すなわち、軸部337の軸線)を中心とした円の一部をなしている。
また、棒状部332bは、扇状部332aの辺部332a−2における辺部332a−1側の端部領域から連設され、棒状部332bは、略棒状を呈し、正面側の面と背面側の面とを有する細長略長方形状の板状を呈している。棒状部332bにおける一対の長手辺332b−1、332b−2は互いに平行に形成され、扇状部332aとは反対側の端部は略円弧状に形成されている。扇状部332aの辺部332a−1と、棒状部332bの辺部332b−2とは、1つの直線状に形成されている。
アーム本体部332の正面側の面と背面側の面は、立設部314の正面側の面と平行に形成されている。また、扇状部332aには、軸部337が挿通する穴部が設けられている。すなわち、軸部337を挿通するための穴部は、扇状部332aにおける辺部332a−1と辺部332a−2の延長線とが接する点の近傍に設けられている。
また、バネ取付部334は、棒状部332bにおける扇状部332aとは反対側の端部領域に設けられ、バネ取付部334は、略円柱状を呈し、このバネ取付部334には、バネ346の端部が固定して設けられている。
また、固定具336a、336b、336cはともにリング状を呈しており、軸部337が挿通するための穴部を有し、固定具336aは固定具236aと同一の構成であり、固定具336bは固定具236bと同一の構成であり、固定具336cは固定具236cと同一の構成である。すなわち、固定具336aは、ネジ止めによりアーム本体部332の正面側の面に固定されるとともに、ネジ止めにより軸部337に固定され、また、固定具336bは、ネジ止めによりアーム本体部332の背面側の面に固定されるとともに、ネジ止めにより軸部337に固定されている。なお、固定具336a、336bのアーム本体部332への固定は、ネジ止めではなく、溶接によりおこなってもよい。また、固定具336cは、立設部314の背面側に設けられ、ネジ止めにより軸部337に固定されている。
また、軸部337は、軸状を呈し、固定具336a、336b、336cのそれぞれの穴部に挿通されて、上記のように固定具336a、336b、336cに固定されている。軸部337の軸線337p(テンションアーム330の回転中心の軸線)は、モータ320A〜320Cの回転軸322A〜322Cの軸線と平行になっている。
また、溝形成部338A〜338Cにおける各溝形成部は、同一の構成であり、溝形成部238と同一の構成となっている。
すなわち、溝形成部338Aは、板状部材に断面方形状(断面略方形状としてもよい)の溝部338Aaを形成した形状を呈している。つまり、溝形成部338Aは、断面略コ字状を呈し、溝部338Aaの形成方向(長手方向)は、テンションアーム330の回転中心の軸線337pと直角の方向であり(つまり、溝部338Aaは、テンションアーム330の回転中心の軸線337pと直角の方向に形成されている)、溝部338Aの中心線338Apの延長線がテンションアーム330の回転中心の軸線337pと直交する。別の言い方をすると、溝部338Aaの形成方向(長手方向)は、軸部337の回転中心の軸線とプーリ344の回転中心の軸線344pとを結ぶ方向で、それらの軸線に対して直角の方向となっている。なお、溝部338Aaの中心線338Apは、溝部338Aaの幅方向(溝の形成方向に対して直角の方向)における中心位置とを結ぶ直線である。
溝部338Aaの幅方向の長さ(長手方向に対する直角方向の長さ)は、カムフォロア328Aの外輪が回転しながら溝部338Aa内をスライド可能な長さに形成され、カムフォロア328Aの外輪の直径よりも若干長い長さに形成されている。つまり、カムフォロア328Aの外輪は、溝部338Aaに沿ってスライド可能に溝部338Aaに係合している。
また、溝形成部338Bは、板状部材に断面方形状(断面略方形状としてもよい)の溝部338Baを形成した形状を呈している。つまり、溝形成部338Bは、断面略コ字状を呈し、溝部338Baの形成方向(長手方向)は、テンションアーム330の回転中心の軸線337pと直角の方向であり(つまり、溝部338Baは、テンションアーム330の回転中心の軸線337pと直角の方向に形成されている)、溝部338Baの中心線338Bpの延長線がテンションアーム330の回転中心の軸線337pと直交する。別の言い方をすると、溝部338Baの形成方向(長手方向)は、軸部337の回転中心の軸線とプーリ344の回転中心の軸線344pとを結ぶ方向で、それらの軸線に対して直角の方向となっている。なお、溝部338Aaの中心線338Bpは、溝部338Baの幅方向(溝の形成方向に対して直角の方向)における中心位置とを結ぶ直線である。
溝部338Baの幅方向の長さ(長手方向に対する直角方向の長さ)は、カムフォロア328Bの外輪が回転しながら溝部338Ba内をスライド可能な長さに形成され、カムフォロア328Bの外輪の直径よりも若干長い長さに形成されている。つまり、カムフォロア328Bの外輪は、溝部338Baに沿ってスライド可能に溝部338Baに係合している。
なお、溝部338Baの中心線338Bpが溝部338Aaの中心線338Apとなす角度は、上記角度α11となっていて、角度α11は角度α1と同一となっている。
また、溝形成部338Cは、板状部材に断面方形状(断面略方形状としてもよい)の溝部338Caを形成した形状を呈している。つまり、溝形成部338Cは、断面略コ字状を呈し、溝部338Caの形成方向(長手方向)は、テンションアーム330の回転中心の軸線337pと直角の方向であり(つまり、溝部338Caは、テンションアーム330の回転中心の軸線337pと直角の方向に形成されている)、溝部338Caの中心線338Cpの延長線がテンションアーム330の回転中心の軸線337pと直交する。別の言い方をすると、溝部338Caの形成方向(長手方向)は、軸部337の回転中心の軸線とプーリ344の回転中心の軸線344pとを結ぶ方向で、それらの軸線に対して直角の方向となっている。なお、溝部338Caの中心線338Cpは、溝部338Caの幅方向(溝の形成方向に対して直角の方向)における中心位置とを結ぶ直線である。
溝部338Caの幅方向の長さ(長手方向に対する直角方向の長さ)は、カムフォロア328Cの外輪が回転しながら溝部338Ca内をスライド可能な長さに形成され、カムフォロア328Cの外輪の直径よりも若干長い長さに形成されている。つまり、カムフォロア328Cの外輪は、溝部338Caに沿ってスライド可能に溝部338Caに係合している。
なお、溝部338Caの中心線338Cpが溝部338Baの中心線338Bpとなす角度は、上記角度α2となっていて、角度α12は角度α2と同一となっている。
また、溝形成部338Aと溝形成部338Bと溝形成部338Cとは、テンションアーム330の回転中心の軸線337pを中心とした円弧に沿って配設され、例えば、溝形成部338Aの中心線338Apの内側の端部338Ap−1と、溝形成部338Bの中心線338Bpの内側の端部338Bp−1と、溝形成部338Cの中心線338Cpの内側の端部338Cp−1とは、テンションアーム330の回転中心の軸線337pを中心とした円弧上に形成されている。
なお、立設部314に設けられた開口部(つまり、軸部337が挿通する開口部)には、ベアリング(図示せず)が設けられ、該ベアリングに軸部337が回転可能に取り付けられている。
テンションアーム330は以上のように構成されているので、アーム本体部332と、バネ取付部334と、固定具336a、336b、336cと、軸部337と、溝形成部338A〜338Cとは、一体に構成され、テンションアーム330が回動する際には、テンションアーム330を構成する上記各部が一体に回動し、軸部337も回転する。
また、モータ320Aの回転軸322Aの軸線322Apとカムフォロア328Aの回転中心の軸線328Ap間の長さL43Aと、モータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bpとカムフォロア328Bの回転中心の軸線328Bp間の長さL43Bと、モータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cpとカムフォロア328Cの回転中心の軸線328Cp間の長さL43Cとは、テンションアーム330の回転中心の軸線237pとプーリ244の回転中心の軸線244p間の長さL41よりも短く形成されている(L43A<L41、L43B<L41、L43C<L41)。また、長さL43Aと長さL43Bと長さL43Cとは同一に形成されている(L43A=L43B=L43C)。
また、モータ320Aの回転軸322Aの軸線322Apとカムフォロア328Aの回転中心の軸線328Ap間の長さL43Aは、テンションアーム330の回転中心の軸線337pとモータ320Aの回転軸322Aの軸線322Ap間の長さL44Aよりも短く形成され(L43A<L44A)、モータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bpとカムフォロア328Bの回転中心の軸線328Bp間の長さL43Bは、テンションアーム330の回転中心の軸線337pとモータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bp間の長さL44Bよりも短く形成され(L43B<L44B)、モータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cpとカムフォロア328Cの回転中心の軸線328Cp間の長さL43Cは、テンションアーム330の回転中心の軸線337pとモータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cp間の長さL44Cよりも短く形成されている(L43C<L44C)。
また、モータ320Aの回転軸322Aの軸線322Apとカムフォロア328Aの回転中心の軸線328Ap間の長さL43Aは、テンションアーム330の回転中心の軸線337pとカムフォロア328Aの回転中心の軸線328Ap間の長さL46Aよりも短く形成され(L43A<L46A)、モータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bpとカムフォロア328Bの回転中心の軸線328Bp間の長さL43Bは、テンションアーム330の回転中心の軸線337pとカムフォロア328Bの回転中心の軸線328Bp間の長さL46Bよりも短く形成され(L43B<L46B)、モータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cpとカムフォロア328Cの回転中心の軸線328Cp間の長さL43Cは、テンションアーム320の回転中心の軸線337pとカムフォロア328Cの回転中心の軸線328Cp間の長さL46Cよりも短く形成されている(L43C<L46C)。
また、エンコーダ取付部340は、実施例3のエンコーダ取付部240と同一の構成であり、立設部314の正面側の面に対して直角方向に設けられるとともに、左右方向に形成された板状部340aと、板状部340aの正面側の端部から板状部340aに対して直角方向に上方に形成された板状部340bとを有し、側面視において略L字状を呈している。板状部340bには、開口部(図示せず)が設けられ、該開口部に軸部337が回転可能に取り付けられている。また、軸部337は、板状部340bの正面側の面から正面側に突出して形成されている。
また、エンコーダ342は、エンコーダ取付部340の板状部340bの正面側の面に取り付けられていて、軸部337の先端と連結されている。このエンコーダ342は、軸部337の回転角度を検出するものであり、つまり、テンションアーム330の回動角度を検出するものである。
また、プーリ(テンションプーリ)344は、アーム本体部332の正面側の面における左側面側の端部(つまり、バネ取付部234側とは反対側の端部)にアーム本体部332に対して回転可能に設けられている。つまり、プーリ344は、アーム本体部332に固定された軸部332aに対して回転可能に設けられている。
また、バネ346は、その上端がバネ取付部334に取り付けられ、下端がバネ取付部316に取り付けられている。
また、モータ350は、立設部314の背面側に固定して設けられ、モータ350においては、モータ本体部351から回転軸352が突出し、回転軸352は、立設部314に設けられた開口部(図示せず)から立設部314の正面側に突出している。回転軸352は、モータ350の回転力を出力するものである。
また、繰出しプーリ354は、モータ350の回転軸352に固定して設けられている。つまり、モータ350が駆動して回転軸352が回転することにより、繰出しプーリ354が回転する。なお、繰出しプーリ354は、ワイヤWを下流側(具体的には、プーリ68側)に移送する方向に回転する。
ここで、テンションアーム330の回転中心の軸線337pと、モータ320Aの回転軸322Aの軸線322Apと、モータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bpと、モータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cpと、プーリ344の回転中心の軸線344pと、モータ350の回転軸352の軸線352pとは互いに平行になっている。
また、エンコーダ356は、モータ350の背面側の面(具体的には、モータ本体部351の背面側の面)に固定して設けられ、モータ350の回転軸352の回転角度を検出するものである。
また、プーリ群Pは、プーリ60と、プーリ64と、プーリ68と、プーリ72と、プーリ76とを有し、プーリ群Pにおける各プーリは、ワイヤWを移送するためのガイドプーリである。
なお、プーリ60は、支持部62に回転自在に取り付けられ、プーリ64は、支持部66に回転自在に取り付けられ、プーリ68は、支持部70に回転自在に取り付けられ、プーリ72は、支持部74に回転自在に取り付けられ、プーリ76は、支持部78に回転自在に取り付けられている。
ここで、プーリ60及び支持部62は、実施例1のプーリ60及び支持部62と同一の構成であり、プーリ64及び支持部66は、実施例1のプーリ64及び支持部66と同一の構成であり、プーリ68及び支持部70は、実施例1のプーリ68及び支持部70と同一の構成であり、プーリ72及び支持部74は、実施例1のプーリ72及び支持部74と同一の構成であり、プーリ76及び支持部78は、実施例1のプーリ76及び支持部78と同一の構成であるので、詳しい説明を省略する。
また、エンコーダ380は、支持部78における板状部78bの正面側の面に取り付けられている。このエンコーダ380は、プーリ76を軸支する軸部77の回転角度を検出するものである。つまり、軸部77の先端がエンコーダ380と連結されている。このエンコーダ380は、ワイヤWの巻線速度を検出するためのものである。
また、制御回路90は、実施例1の制御回路90と同様に、巻線機102から送られるとともに記憶装置98に保持されたトルクデータに基づき、モータ320A、320B、320Cの動作を制御し、アーム本体部332が所定の方向(具体的には、水平方向)となるように、モータ350の動作を制御するものであり(具体的には、テンションアーム330の回転中心の軸線337pとプーリ344の回転中心の軸線344pとを結ぶ直線で軸線337p及び軸線344pと直交する直線が、所定の方向(具体的には、水平方向)となるようにモータ350の動作を制御する)、図6〜図9に示すフローチャートや図21に示す機能ブロックに従い制御を行なう。
本実施例における制御回路90は、実施例1の制御回路90と同一の構成であるので、詳しい説明を省略する。
また、記憶装置98は、実施例1の制御回路90と同様に、図6〜図9に示すフローチャートや図21に示す機能ブロックに従い制御を行なうための動作プログラムを記憶するとともに、巻線機102から送られるトルクデータを保持する。
また、記憶装置98には、アーム本体部332の方向についての指令データが記憶され、具体的には、水平方向を0度とした場合に、該0度である旨の指令値が記憶されている。
なお、テンション装置305におけるワイヤWの移送経路は、上流側からプーリ60、繰出しプーリ354、プーリ64、繰出しプーリ354、プーリ68、プーリ344、プーリ72、プーリ76の順となっている。プーリ60には、図3に示すワイヤボビン100からワイヤWが導かれ、また、プーリ76からは、巻線機102にワイヤWが導かれる。
なお、テンション装置305において、テンションアーム330が水平方向の場合には、式(11)が成り立つ(図34参照)。なお、テンションアーム330が水平方向の場合には、アーム本体部332(特に、棒状部332b)が水平方向となり、テンションアーム330の回動中心の軸線337pとプーリ344の回転中心の軸線344p間の方向(例えば、軸線337pや軸線344pと直角の方向)が水平方向となり、正面視において、軸線337pと軸線344pと中心線334pとを結ぶ直線(仮想直線)(軸線337pと軸線344pとを結ぶ直線(仮想直線)としてもよい)が水平方向となる(他においても同じ)。
すなわち、式(7)と比較すると、L41=L31、L42=L32と仮定すると、Tm/L33の代わりにTm/L43A+Tm/L43B+Tm/L43Cとなっている点が異なる。
そして、L43A=L43B=L43Cであるので、式(11)は式(12)に示すようになる。
式(11)を変形すると、式(13)が導かれ、TaとZ1とZ2により(つまり、変数であるTaとZ1とZ2とが定まることにより)モータ320A、320B、320CのトルクTmが算出される。
なお、式(11)〜式(13)においては、ワイヤWに掛かる張力をTa(N)、バネ346の張力をTb(N)、モータ320A、320B、320Cのトルク値をTm(N・m)、テンションアーム330の回転中心の軸線237pとプーリ244の軸線244p間の長さをL41(m)、軸線337pとバネ取付部334の中心線334p間の長さをL42(m)、モータ320Aの回転軸322Aの軸線322Apとカムフォロア328Aの回転中心の軸線328Ap間の長さをL43A(m)、モータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bpとカムフォロア328Bの回転中心の軸線328Bp間の長さをL43B(m)、モータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cpとカムフォロア328Cの回転中心の軸線328Cp間の長さをL43C(m)、慣性補償によるトルク値をZ1(N・m)、メカロス補償によるトルク値をZ2(N・m)としている。
なお、式(11)〜式(13)において、2×Ta×L41は、ワイヤWに与える張力の値に従いテンションアーム330に与えられるトルク値であるとともに、ワイヤWに与えられる張力の値に従いワイヤWがテンションアーム330におけるテンションアーム330の回動中心よりもプーリ344側に与えるトルク値であり、また、Tb×L42は、バネ346によりテンションアーム330に与えられるトルク値であり、具体的には、バネ346によりテンションアーム330のバネ346の取付け位置に与えるトルク値である。
また、式(11)において、Tm/L43Aは、モータ320Aによりテンションアーム330におけるプーリ344の取付け位置に与えるトルク値であり、Tm/L43Bは、モータ320Bによりテンションアーム330におけるプーリ344の取付け位置に与えるトルク値であり、Tm/L43Cは、モータ320Cによりテンションアーム330におけるプーリ344の取付け位置に与えるトルク値である。なお、テンションアーム回動部319Bにおける回動アーム324Bやテンションアーム回動部319Cにおける回動アーム324Cは、プーリ344の取付け位置とは離れているが、カムフォロア328B、328Cはカムフォロア328Aと軸線337pを中心とした同一円弧上に存在するので、Tm/L43BとTm/L43Cは、モータによりテンションアーム330におけるプーリ344の取付け位置に与えるトルク値であるといえる。
つまり、2×Ta×L41(ワイヤWに与えられる張力の値に従いワイヤWがテンションアーム330におけるテンションアーム330の回動中心よりもプーリ344側に与えるトルク値)を第1トルク値とし、Tb×L42(バネ346によりテンションアーム330のバネ346の取付け位置に与えるトルク値)を第2トルク値とし、(Tm/L43A)×3(モータ320によりテンションアーム330におけるプーリ344の取付け位置に与えるトルク値)を第3トルク値とした場合に、第2トルク値と第3トルク値を加算した値を少なくとも含む比較用トルク値(式(12)における右辺)と第1トルク値(式(12)における左辺)が同一となるようにモータ320の出力トルク値を算出している。
また、第2トルク値と第3トルク値と慣性補償によるトルク値とメカロス補償によるトルク値とを加算した値である比較用トルク値(式(12)における右辺)と第1トルク値(式(12)における左辺)が同一となるようにモータ320の出力トルク値を算出している。
なお、回動アーム324Aが水平方向から回動することにより、カムフォロア328Aの回転中心の軸線328Apの位置とプーリ344の軸線344pの位置がずれた場合には、モータ320Aのプーリ344の取付け位置に与えるトルクの値は、厳密にはTm/L43Aと同一ではないが、当該ずれ量はわずかであるので、モータ320Aのプーリ344の取付け位置に与えるトルクの値はTm/L43Aとしている。Tm/L43B、Tm/L43Cについても同様である。
次に、上記構成のテンション装置305の動作は、実施例1のテンション装置5の場合と同様であり、モータ320A〜320Cの動作はモータ20の動作と同様であり、モータ350の動作はモータ50の動作と同様であるので詳しい説明を省略する。すなわち、本実施例においては、モータ20の代わりにモータ320A〜320Cが用いられ、エンコーダ42の代わりにエンコーダ342が用いられ、モータ50の代わりにモータ350が用いられ、エンコーダ56の代わりにエンコーダ356が用いられ、エンコーダ80の代わりにエンコーダ380が用いられる以外は、実施例1の場合と同様に動作が行われる。また、ステップS12におけるモータ320A〜320Cのトルク値の計算においては、式(13)に従い計算を行なう。なお、モータ320Aとモータ320Bとモータ320Cとは、同期して動作を行なう。
なお、本実施例のテンション装置305では、モータ320A〜320Cの回転軸322A〜322Cは、テンションアーム330の軸部337よりもプーリ344側にずれた位置に設けられ、テンションアーム330が水平方向の場合(つまり、軸線344pと軸線337pを結ぶ直線が水平方向の場合)、回動アーム324Aが水平方向にあり、正面視において、軸線322Apと軸線328Apを結ぶ直線が軸線344pと軸線337pを結ぶ直線と一致し、正面視において、プーリ344の回転中心の軸線344pとカムフォロア328Aの回転中心の軸線328Apとが一致し、軸線322Bpと軸線328Bpを結ぶ直線(仮想直線)及び軸線322Cpと軸線328Cpを結ぶ直線(仮想直線)は、軸線337pを中心とする放射方向にあり、軸線322Apと軸線322Bpと軸線322Cpとは、軸線337pを中心とする円弧上に形成されているので、式(12)が適用され、L41=L31、L42=L32、L43A=L33とすると、式(12)におけるTmは式(9)におけるTmの1/3となり、実施例3の場合に比べてモータ(張力制御モータ)320A〜320Cにおける各モータを小型化することができる。
すなわち、長さL44A、L44B、L44Cは、長さL31、L45A、L45B、L45Cよりも短く形成されているので、実施例1の場合に比べて、モータ320A〜320Cは小さいトルクでテンションアーム330を回動させることができ、実施例1の場合に比べてモータ(張力制御モータ)320A〜320Cを小型化することができる。
また、実施例3の場合と比べて、複数のモータ(モータ320A〜320C)によりテンションアーム330を回動させるので、実施例3の場合に比べて、モータ320A〜320Cにおける各モータの出力トルク値を小さくすることができ、モータ320A〜320Cにおける各モータをより小型化することができる。
なお、実施例4においては、実施例3の場合と同様に、図4の代わりに図20に示す構成となる。すなわち、実施例4では、エンコーダ342は、モータ320A〜320Cの回転軸の回転角度を検出するものではないので、モータ320A〜320Cとエンコーダ342間の直線は描かれていない。
以上のように、本実施例のテンション装置305によれば、巻線機102から送られる張力データに従いモータ320A〜320Cを制御するので、一回のワイヤWの巻線工程において、ワイヤWへの張力を自在に可変とすることができる。
また、上記のように、バネ346による張力をモータ320A〜320Cにより増減させることにより、バネ346による張力付与の機能をモータ320A〜320Cにより補助することになるので、モータ320A〜320Cを小型化することができる。つまり、バネ346とモータ320A〜320CによりワイヤWに張力を付与するので、バネ346が設けられることにより、その分モータ320A〜320Cを小型化することができる。
また、上記のように、モータ320A〜320Cの回転軸322A〜322Cは、テンションアーム330の回転中心の軸線337pとずれた位置に設けられている(例えば、モータ320Aは軸線337pよりもプーリ344側にずれた位置に設けられている)ので、実施例1の場合に比べてモータ(張力制御モータ)を小型化することができ、また、複数のモータ(モータ320A〜320C)によりテンションアーム330を回動させるので、実施例3の場合に比べても、モータ320A〜320Cにおける各モータをより小型化することができる。
また、実施例1の場合と同様に、ステップS12において、巻線機102からの張力データにおける張力の値に対して、エンコーダ380からの出力に基づく値を加算することにより、モータ320A〜320Cの制御に際して、慣性補償とメカロス補償を行なうことができる。
また、実施例1の場合と同様に、ステップS13において、巻線機102からの張力データにおける張力の値に対して、エンコーダ342の出力に基づく値を加算することにより、モータ220の制御に際してアーム本体部232の傾きを考慮するので、テンションアーム330が水平方向に対して傾斜している場合に、モータ320A〜320Cを動作制御することにより、アーム本体部332を水平方向に近づけることができる。
また、実施例1の場合と同様に、ステップS22において、指令値からエンコーダ342の出力値を減算することにより、モータ350の制御に際して、アーム本体部332の傾きを考慮するので、モータ350を制御することにより、アーム本体部332を水平方向に近づけることができる。
また、実施例1の場合と同様に、ステップS24において、ステップS23で算出された速度値からステップS41で算出された巻線速度値を減算することにより、モータ350の制御に際して巻線速度値を考慮するので、巻線速度が変化すると、その変化を即座にモータ250の回転速度の制御に反映させて、アーム本体部232を水平方向に近づけることができる。
なお、上記実施例4においては、プーリ68を経たワイヤWはプーリ344に至るとしたが、実施例2のように補助プーリを設け、プーリ68を経たワイヤWが補助プーリに導かれ、補助プーリを経たワイヤWがプーリ344に至る構成としてもよい。その場合には、支持部140と同一の構成の支持部を立設部314の正面側の面に設け、補助プーリを該支持部に対して回転可能に設けるとともに、補助プーリとプーリ344間のワイヤWが立設部314の正面側の面と平行になるように、プーリ344の前後方向の位置を補助プーリの前後方向の位置と一致させる。プーリ344の前後方向の位置を補助プーリの前後方向の位置と一致させるには、軸部332aの長さを長くしてプーリ344を正面側に移動させた位置とする。なお、繰出しプーリ354やその他のプーリ60、64、68、72、76についても、上記実施例4の場合に比べて、正面側に移動させた位置とする。また、補助プーリの回転中心の軸線がアーム本体部の回転中心の軸線と一致した構成とする。また、エンコーダ342及びエンコーダ取付部340は、立設部314の背面側に設け、エンコーダ取付部340に取り付けられたエンコーダ342は、固定具336cから背面側に突出した軸部337に連結されるものとする。
以上の構成とすることにより、上記実施例4の構成(図29〜図31の構成)に比べて、テンションアームのテンションプーリの取付け位置に与えるトルク値を小さくでき、上記実施例4の構成に比べてモータ220を小型化することができる。
さらに、補助プーリの回転中心の軸線とアーム本体部の回転中心の軸線とが一致した構成でなくても、補助プーリの回転中心をプーリ344の回転中心とバネ取付部334の間のいずれかの位置としてもよい。
なお、上記の構成においては、テンションアーム330が水平方向の場合に、正面視において、プーリ344の回転中心の軸線344pとカムフォロア328Aの回転中心の軸線328Apとが一致するとしたが、軸線344pと軸線328Apとが一致しない構成としてもよい。
すなわち、テンションアーム330が水平方向の場合に、正面視において、軸線328Apが軸線344pよりも軸線337p側の位置にある構成としてもよく、また、テンションアーム330が水平方向の場合に、正面視において、軸線328Apが軸線344pよりも軸線337p側と反対側にずれた位置にある構成としてもよい。
なお、このように、軸線344pと軸線328Apとが一致しない構成とした場合でも、正面視において、回動アーム324A、324B、324Cは、軸線337pを中心とする放射方向にあり、軸線322Apと軸線322Bpと軸線322Cpとは、軸線337pを中心とした円弧上にある。
また、実施例4における上記の説明において、溝形成部338A、338B、338Cがアーム本体部332に設けられ、回動アーム324Aの先端にカムフォロア328Aが設けられ、回動アーム324Bの先端にカムフォロア328Bが設けられ、回動アーム324Cの先端にカムフォロア328Cが設けられているとしたが、逆の構成としてもよく、図35に示すように、溝形成部338Aを回動アーム本体部326Aに設け(つまり、回動アーム324Aは、回動アーム本体部326Aと溝形成部338Aにより構成される)、溝形成部338Bを回動アーム324Bに設け(つまり、回動アーム324Bは、回動アーム本体部326Bと溝形成部338Bにより構成される)、溝形成部338Cを回動アーム324Cに設け(つまり、回動アーム324Cは、回動アーム本体部326Cと溝形成部338Cにより構成される)、カムフォロア328A、328B、328Cをアーム本体部332に設けてもよい。その場合には、溝形成部338Aに対応するカムフォロア328Aについては、カムフォロア328Aの回転中心の軸線328Apの延長線をプーリ344の回転中心の軸線344pと一致させた構成とし、溝形成部338Bに対応するカムフォロア328Bと溝形成部338Cに対応するカムフォロア328Bについては、溝形成部338Aに対応するカムフォロアと軸線337pを中心とする円弧上に配置する。
また、図35の構成において、溝形成部338A、338B、338Cについては、溝部338Aaは、モータ320Aの回転軸322Aの軸線322Apと直角方向に形成され、溝部338Aaの中心線338Apの延長線がモータ320Aの回転軸322Aの軸線322Apと直角に交差し、溝部338Baは、モータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bpと直角方向に形成され、溝部338Baの中心線338Bpの延長線がモータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bpと直角に交差し、溝部338Caは、モータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cpと直角方向に形成され、溝部338Caの中心線338Cpの延長線がモータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cpと直角に交差する構成とする。
図35の構成の場合でも、式(11)におけるL43Aは、モータ320Aの回転軸322Aの軸線322Apとカムフォロア(アーム本体部332に設けられ、溝形成部338Aに対応したカムフォロア)の回転中心の軸線間の長さとなり、L43Bは、モータ320Bの回転軸322Bの軸線322Bpとカムフォロア(アーム本体部332に設けられ、溝形成部338Bに対応したカムフォロア)の回転中心の軸線間の長さとなり、L43Cは、モータ320Cの回転軸322Cの軸線322Cpとカムフォロア(アーム本体部332に設けられ、溝形成部338Cに対応したカムフォロア)の回転中心の軸線間の長さとなる。
また、図35の構成において、溝部338Aaの中心線338Apの延長線は、テンションアーム330が水平方向の場合において、テンションアーム330の回転中心の軸線337pを通り、溝部338Baの中心線338Bpの延長線は、テンションアーム330が水平方向の場合において、テンションアーム330の回転中心の軸線337pを通り、溝部338Caの中心線338Cpの延長線は、テンションアーム330が水平方向の場合において、テンションアーム330の回転中心の軸線337pを通る。
なお、図34において、軸線337pを中心とする円は、軸線337pを中心として軸線337pと軸線344p間の長さを半径とする円を示している。また、軸線322Apを中心とする円は、軸線322Apを中心として、軸線322Apと軸線328Ap間の長さを半径とする円を示し、軸線322Bpを中心とする円は、軸線322Bpを中心として、軸線322Bpと軸線328Bp間の長さを半径とする円を示し、軸線322Cpを中心とする円は、軸線322Cpを中心として、軸線322Cpと軸線328Cp間の長さを半径とする円を示している。
なお、上記の説明では、ステップS12におけるモータトルク値の算出において、慣性補償によるトルク値とメカロス補償によるトルク値を考慮しているが、慣性補償によるトルク値とメカロス補償によるトルク値を考慮せずにモータトルク値を算出してもよい。つまり、その場合には、上記各式において、Z1、Z2はないものとする。
また、上記の説明では、ステップS13において、算出されたモータトルク値からエンコーダ42の出力から算出されるトルク値を減算しているが、このステップS13の工程を削除してもよい。
また、上記の説明では、ステップS25において、ステップS23で算出された速度値からステップS41で算出された巻線速度値を減算しているが、このステップS24の工程を削除してもよい。
なお、上記各実施例において、巻材として、ワイヤを例にとったが、ワイヤ以外の線条材(巻線)でもよく、さらに、線条材以外の巻材(例えば、帯状のフィルム)であってもよい。その場合には、線条材以外の巻材は、テンション装置5から該巻材をワークに巻き付けるための巻材巻付け装置に送られる。なお、上記と同様に、該巻材巻付け装置は、ワークへの巻付け工程において、ワークにおけるワイヤWを巻き付けようとする巻付け位置に対応した張力データをテンション装置5の受信装置91に対して送信する。
また、上記各実施例において、バネ46、146、246、346の代わりに、紐状のゴム等他の弾性部材を用いてもよい。