以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1ないし図4は、本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料ポンプを示している。
なお、本実施の形態の高圧燃料ポンプは、車両に搭載される内燃機関、例えば気筒内直接燃料噴射が可能ないわゆる筒内噴射式あるいはデュアル噴射式の多気筒のガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)に装備され、そのエンジンの燃料をプランジャにより高圧に加圧して吐出するプランジャポンプ型のものである。
図1に示す本実施の形態の高圧燃料ポンプ10は、その吸入側で、図示しない低圧燃料ポンプから燃料が供給される低圧燃料回路に配管接続されており、低圧燃料ポンプによって燃料タンク内から汲み上げられてフィード圧に加圧された燃料を吸入するようになっている。ここにいう低圧燃料ポンプは、例えばポンプインペラを駆動モータで回転駆動する電動式ポンプ等で構成されている。
また、高圧燃料ポンプ10は、その吐出側でデリバリーパイプを介して複数の筒内噴射用のインジェクタに配管接続されており、デリバリーパイプに対して高圧の燃料を圧送するようになっている。ここにいうデリバリーパイプは、高圧燃料ポンプ10から吐出される高圧の燃料を貯留し蓄圧するもので、前記エンジンの各気筒内直接燃料噴射(以下、筒内噴射という)用のインジェクタの開弁時に、そのインジェクタに高圧の燃料を分配・供給するようになっている。
図1に示すように、高圧燃料ポンプ10は、略円柱状のプランジャ11と、このプランジャ11の一端側を軸方向に往復変位可能に保持するポンプハウジング12と、ポンプハウジング12に対しプランジャ11の軸線と直交する径方向に向かって取り付けられた吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14と、を備えている。
プランジャ11は、図1中の下方側で駆動カム15に係合するとき、駆動カム15の回転に伴って図1中の上下方向に往復移動するように、復帰ばね16およびばね受け板17を介して駆動カム15側に付勢されるようになっている。この駆動カム15は、少なくとも周方向の一箇所でそのリフト量が大きくなるカムプロフィール、例えば楕円形または角が丸められた多角形のカムプロフィールを有している。この駆動カム15は、例えばエンジンの排気カムシャフト(詳細図示せず)に一体に装着されており、エンジンの動力により駆動される。
ポンプハウジング12の基端側には、複数のボルト穴12hが形成されたフランジ部12fと、図示しないヘッドカバー等のポンプ取付け穴部に嵌入される環状嵌合部12eとが設けられており、ポンプハウジング12は、複数のボルト穴12hに挿入された図示しない複数のボルトによってポンプ取付けケースに締結される。なお、プランジャ11とポンプハウジング12の間には、図示しない燃料シール用およびオイルシール用のシール部材が介装されている。
ポンプハウジング12は、プランジャ11が摺動可能なシリンダ部材21をハウジング本体22の中心部に圧入嵌合させた構成となっている。そして、これらシリンダ部材21およびハウジング本体22により、プランジャ11を介して燃料を加圧可能な燃料加圧室23と、その燃料加圧室23に連通する吸入側の燃料通路24aおよび吐出側の燃料通路24b(燃料吐出通路)とが形成されている。
吸入側の燃料通路24aは、低圧燃料ポンプからの燃料を燃料加圧室23に吸入させることができ、吐出側の燃料通路24bは、燃料加圧室23の内部で加圧された燃料を燃料加圧室23からデリバリーパイプ側に吐出させることができるようになっている。
ハウジング本体22は、図1中の左右方向に貫通する貫通穴31a,31bを有するカップ状すなわち有底筒状のカバー部材31と、カバー部材31の内方に収納されたバルブ保持部材32と、フランジ部12fや復帰ばね16のばね受け部を有し、シリンダ部材21とともにカバー部材31の開口端を閉止する取付け部材33と、を含んで構成されている。
そして、シリンダ部材21がハウジング本体22の長手方向中央部に軸直角方向に圧入嵌合された状態で、これらカバー部材31、バルブ保持部材32および取付け部材33が一体に結合されている。なお、カバー部材31の取付け部材33への結合方法や、シリンダ部材21の取付け部材33への結合方法としては、圧入やろう付け、ねじ結合等、任意の結合方法が採用できる。
ポンプハウジング12の内部であってバルブ保持部材32の周囲には、吸入ギャラリ室12gが形成している。この吸入ギャラリ室12gは、吸入側の燃料通路24aに連通する所定容積の室で、低圧側の燃料が貯留されるとともに図示しない公知のパルセーションダンパが収納されている。
吸入バルブユニット13は、詳細を図示しないが、吸入側の燃料通路24aの途中に弁座13cを形成する筒状の外筒部材13aと、その外筒部材13a内に収納された吸入弁体13bおよび弁ばね13dとを備えている。そして、その外筒部材13aは、バルブ保持部材32の吸入側の取付け穴32aに嵌入されるかねじ結合され、その取付け穴32aの内奥側の環状段付部32bに突き当てられている。また、吸入弁体13bは、弁ばね13dによって例えば閉弁側に常時付勢されており、その前後に燃料加圧室23側が低圧となる所定の開弁差圧が生じるときに開弁するようになっている。なお、吸入バルブユニット13は、吸入弁体13bを開弁操作することができるソレノイド等を実装したものであってもよいし、常開型の吸入弁体13bをソレノイド等により閉弁させるものでもよい。
吐出バルブユニット14は、図2に示すように、バルブ保持部材32の吐出側の取付け穴32cにねじ結合された外筒部材14aと、外筒部材14aのねじ先端側から内方に圧入された内筒部材14bとを有し、これら外筒部材14aおよび内筒部材14bによって吐出側の燃料通路24bの一部を形成している。また、外筒部材14aの内方には逆止弁機能を有する吐出弁体14vが収納されており、吐出バルブユニット14は、吐出側の燃料通路24bを吐出弁体14vによって開閉するようハウジング本体22にねじ結合された流体制御ユニットとなっている。
吐出バルブユニット14の外筒部材14aは、ハウジング本体22にねじ結合するねじ結合部14sを有しており、そのねじ結合部14sの先端側で内筒部材14bのフランジ部14fを介してバルブ保持部材32の取付け穴32cの内奥側段付部32dに突き当たるようになっている。
内筒部材14bには、吐出側の燃料通路24bの一部を形成するとともに吐出弁体14vが係合および離脱することによって開閉される弁座14wが形成されている。また、内筒部材14bには、吐出弁体14vを閉弁方向に常時付勢する弁ばね14pが収納されている。さらに、内筒部材14bの弁座14wより下流側の部分は、外筒部材14aとともに吐出弁体14vより下流側の高圧通路部分24cの一部を画成している。
そして、吐出弁体14vは、燃料加圧室23から吐出される燃料の圧力が下流側の燃料圧力に対して所定の吐出弁開弁差圧(例えば数十kPaの差圧)分だけ余計に加圧されたときに開弁する。すなわち、プランジャ11が燃料加圧室23の容積を減少させるよう図1中の上方側に変位するとき、燃料加圧室23内の燃料が加圧され、吐出弁体14vの前後に吐出弁開弁差圧以上の差圧が生じることにより、吸入弁の閉弁状態下で吐出弁体14vが開弁方向に変位し得るようになっている。
このように、本実施の形態の高圧燃料ポンプ10は、シリンダ部材21を有するとともに燃料加圧室23、吸入側の燃料通路24aおよび吐出側の燃料通路24bがそれぞれ形成されたポンプハウジング12を備え、さらに、吸入側の燃料通路24aおよび吐出側の燃料通路24bを開閉するようポンプハウジング12に装着された吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14を備えている。
また、ポンプハウジング12のハウジング本体22を構成するバルブ保持部材32は、吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14が結合されたヘッド部となっており、このバルブ保持部材32を覆うカップ状のカバー部材31は、貫通穴31a,31bに吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14を貫通させたカバー部となっている。
ここで、カバー部材31の貫通穴31aの内径は、その内方を貫通する吸入バルブユニット13の外筒部材13aの内端側部分の外径より大径に形成されており、カバー部材31と吸入バルブユニット13との間には、予め設定された例えば数十μm程度(それ以上でもよい)の環状隙間g1が形成されている。また、カバー部材31の貫通穴31bの内径は、その内方を貫通する吐出バルブユニット14の外筒部材14aの内端側部分の外径より大径に形成されており、カバー部材31と吐出バルブユニット14との間には、予め設定された例えば数十μm程度(それ以上でもよい)の環状隙間g2が形成されている。
そして、カバー部材31と吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14との間の環状隙間g1,g2は、略L字形断面の環状補助部材51,52によってそれぞれ気密的に閉塞されている。
具体的には、図3(a)に示すように、環状補助部材51は、貫通穴31aの周囲で溶接によりカバー部材31の外周面に固着された外周縁部51aと、吸入バルブユニット13の外筒部材13aの外周面に溶接により固着された内周縁部51bと、これら外周縁部51aおよび内周縁部51bを連結する湾曲断面(例えば円弧断面)の環状曲げ部51cを有している。そして、内周縁部51bが形成される環状補助部材51の内周側の軸方向一端から軸方向他端までの軸方向である同図中のAd方向における長さA1は、環状補助部材51の内周面51dから外周縁部51aの外周までの半径方向である同図中のRd方向における幅B1より大きくなっている。また、軸方向長さA1の半径方向幅B1に対する比率は、一定比率、例えば1.2倍より大きくなっている。なお、環状補助部材51の内周面51dと吸入バルブユニット13の外筒部材13aの外周面との間には、例えば環状隙間g1よりわずかに狭い嵌合隙間が形成されている。また、図3(a)中では、外周縁部51aを形成する環状補助部材51の外周側の環状板部分と、内周縁部51bおよび内周面51dを形成する環状補助部材51の内周側の略円筒部分とが直交し、曲げ内側の角度θ1が90度となっているが、この角度θ1が90度を超えてもよいし、内周面51dはカバー部材31に近いほど大径となるテーパ面であってもよい。
この環状補助部材51は、カバー部材31に対する吸入バルブユニット13の外筒部材13aの支持剛性を、環状補助部材51の軸方向であるAd方向では相対的に大きく、環状補助部材51の内周面51dから外周縁部51aまでの半径方向であるRd方向では相対的に小さくする機能を有している。すなわち、環状補助部材51は、カバー部材31に対する吸入バルブユニット13の外筒部材13aの支持剛性を、Ad方向とRd方向で相違させており、予め設定された第1の特定方向、例えばRd方向における吸入バルブユニット13の支持剛性を低下させるようになっている。
ここにいう第1の特定方向とは、カバー部材31やバルブ保持部材32の剛性と、カバー部材31および吸入バルブユニット13の間の環状隙間g1を環状補助部材51により封止する際における吸入バルブユニット13の取付け位置や取付け姿勢の変化の傾向とに基づいて、吸入バルブユニット13の取付けに起因してシリンダ21やその近傍のバルブ保持部材32の中心部等に不均一な歪が生じてしまうことを抑制するように設定されている。
すなわち、環状隙間g1を封止する環状補助部材51の溶接部の凝固収縮等に伴う歪みを、カバー部材31やバルブ保持部材32の剛性に応じて環状補助部材51を第1の特定方向に容易に変形させることで吸収させ、シリンダ21やその近傍のバルブ保持部材32の中心部等に不均一な歪が生じてしまうことを抑制するようになっている。この第1の特定方向は、カバー部材31やバルブ保持部材32の剛性、あるいは、吸入バルブユニット13の取付け形態や吸入バルブユニット13に対する環状補助部材51の固着位置等によっては、Ad方向になり得るし、カバー部材31に対する環状補助部材51の固着面形状等に応じて、Rd方向のうち特定の角度方向にもなり得る。
また、環状補助部材51は、その外周側の固着部位we1を先にカバー部材31の貫通穴31aの近傍に溶接して固着させた後に、その内周側の固着部位wi1を吸入バルブユニット13の外筒部材13aに溶接して固着させている。さらに、環状補助部材51は、カバー部材31より低剛性(受ける力に対して変形し易い意)の素材によって形成されている。ただし、ここにいう低剛性の素材は、材料の弾性率等の相違によって剛性が低くなっているものに限らず、板厚が小さいことによって曲げ剛性が低くなっている素材等を含む。
一方、図3(b)に示すように、環状補助部材52は、貫通穴31bの周囲で溶接によりカバー部材31に固着された外周縁部52aと、吐出バルブユニット14の外筒部材14aに溶接により固着された内周縁部52bと、これら外周縁部52aおよび内周縁部52bを連結する湾曲断面の環状曲げ部52cを有している。そして、内周縁部52bが形成される環状補助部材52の内周側の軸方向一端から軸方向他端までの軸方向長さA2は、環状補助部材52の内周面52dから外周縁部52aまでの半径方向幅B2より大きくなっている。また、軸方向長さA2の半径方向幅B2に対する比率は、一定比率、例えば1.2倍より大きくなっている。なお、環状補助部材52の内周面52dと吸入バルブユニット13の外筒部材13aの外周面との間には、例えば環状隙間g2よりわずかに狭い嵌合隙間が形成されている。また、図3(b)中では、外周縁部52aを形成する環状補助部材52の外周側の環状板部分と、内周縁部52bおよび内周面52dを形成する環状補助部材52の内周側の略円筒部分とが直交し、曲げ内側の角度θ2が90度となっているが、この角度θ2が90度を超えてもよいし、内周面52dはカバー部材31に近いほど大径となるテーパ面であってもよい。
この環状補助部材52は、カバー部材31に対する吐出バルブユニット14の外筒部材14aの支持剛性を、環状補助部材52の軸方向であるAd方向では相対的に大きく、環状補助部材52の内周面52dから外周縁部52aまでの半径方向であるRd方向では相対的に小さくする機能を有している。すなわち、環状補助部材52は、カバー部材31に対する吐出バルブユニット14の外筒部材14aの支持剛性を、Ad方向とRd方向で相違させており、予め設定された第2の特定方向、例えばRd方向における吐出バルブユニット14の支持剛性を低下させるようになっている。
ここにいう第2の特定方向とは、カバー部材31やバルブ保持部材32の剛性と、カバー部材31および吐出バルブユニット14の間の環状隙間g2を環状補助部材52により封止する際における吐出バルブユニット14の取付け位置や取付け姿勢の変化の傾向とに基づいて、吐出バルブユニット14の取付けに起因してシリンダ21やその近傍のバルブ保持部材32の中心部等に不均一な歪が生じてしまうことを抑制するように設定されている。
すなわち、環状隙間g2を封止する環状補助部材52の溶接部の凝固収縮等に伴う歪みを、カバー部材31やバルブ保持部材32の剛性に応じて環状補助部材52を第2の特定方向に容易に変形させることで吸収させ、シリンダ21やその近傍のバルブ保持部材32の中心部等に不均一な歪が生じてしまうことを抑制するようになっている。この第2の特定方向は、カバー部材31やバルブ保持部材32の剛性、あるいは、吐出バルブユニット14の取付け形態や吐出バルブユニット14に対する環状補助部材52の固着位置等によっては、Ad方向になり得るし、カバー部材31に対する環状補助部材52の固着面形状等に応じて、Rd方向のうち特定の角度方向にもなり得る。
このように、環状補助部材51,52は、カバー部材31に対する吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の支持剛性を、両バルブユニット13,14をカバー部材31に直付けする場合よりも十分に低い剛性に低下させることに加え、特に第1および第2の特定方向Rdにおいて、カバー部材31に対する吐出バルブユニット14の外筒部材14aの支持剛性を他の方向における支持剛性よりも低下させるようになっている。
また、環状補助部材52は、その外周側の固着部位we2を先にカバー部材31の貫通穴31bの近傍に溶接して固着させた後に、その内周側の固着部位wi2を吐出バルブユニット14の外筒部材14aに溶接して固着させている。さらに、環状補助部材52は、カバー部材31より低剛性の素材によって形成されている。
すなわち、本実施の形態においては、本発明にいうバルブユニットが、バルブ保持部材32に結合された吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14とのうち双方によって構成されている。そして、環状補助部材51,52の外周縁部51a,52aがカバー部材31の貫通穴31a,31bの近傍にそれぞれ溶接されるとともに、環状補助部材51,52の内周縁部51b,52bが吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の外筒部材13a,14aにそれぞれ溶接されている。さらに、燃料加圧室23の図1中における左方側で吸入側の燃料通路24aの一部を形成している吸入バルブユニット13と、燃料加圧室23の図1中における右方側で吐出側の燃料通路24bの一部を形成している吐出バルブユニット14とは、互いに同一軸線上に配置されている。
本発明にいうバルブユニットは、吸入側および吐出側のうち、バルブ保持部材32を介してシリンダ部材21の近傍に歪みを生じさせるモーメント等の発生が予測される少なくとも一方側のバルブユニットで構成される。また、そのバルブユニットは、吸入弁や吐出弁以外の弁、例えば吐出燃料圧力の上限を規定するリリーフ弁を内蔵するものであってもよいし、他の流体制御要素を内蔵するものであってもよい。また、吸入弁または吐出弁を内蔵するバルブユニットに、リリーフ弁その他の流体制御要素が併せて組み込まれてもよい。なお、リリーフ弁は、吐出弁より十分に高設定圧の逆止弁機能を有し、吐出弁をバイパスするバイパス通路に吐出弁とは逆向きに設置される。
カバー部材31は、吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の共通の軸線に対し直交しつつ互いに平行に離間する少なくとも一対の平行面、例えば4対の平行面31fを外周側に有している。そして、カバー部材31の貫通穴31a,31bは、吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の共通の軸線方向におけるバルブ保持部材32の両端と平行をなす一対の平行面31f1,31f2上に開口しており、カバー部材31の両平行面31f1,31f2に対してこれらに対応する環状補助部材51,52が固着されている。
なお、吐出バルブユニット14の外筒部材14aの一端側の外周には、ねじ締結時に工具を係合させるための係合部、例えば6角形に拡径された工具係合部14hxが設けられているとともに、図示しない配管接続用のねじ部等が設けられている。
次に、作用を説明する。
上述のように、構成された本実施の形態の高圧燃料ポンプにおいては、カバー部材31に対する吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の支持剛性が、Ad方向とRd方向とで相違するよう環状補助部材51,52によって調整され、第1および第2の特定方向Rdにおいて低剛性化されている。したがって、環状補助部材51,52の外周側の固着部位we1,we2に対して内周側の固着部位wi1,wi2を相対変位させるような力、特に溶接された固着部位we1,we2,wi1,wi2の収縮等に伴う応力に対して、環状補助部材51,52が有効に低剛性化されていることになる。
すなわち、図3(a)および図3(b)に示す環状補助部材51,52の内周側および外周側の固着部位we1,we2,wi1,wi2に変形や凝固収縮が生じたとしても、そのような変形や収縮が環状補助部材51,52の変形によって吸収され得る。そして、吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の取付け端側を支点として両バルブユニット13,14の外端側を変位させるモーメント等の発生が有効に抑制される。その結果、両バルブユニット13,14の取付けに起因してシリンダ部材21やその近傍のバルブ保持部材32等に不均一な歪が生じてしまうことが有効に抑制され、ポンプ寿命やポンプ効率を向上させることのできる低コストの高圧燃料ポンプ10となる。
特に、本実施形態では、環状補助部材51,52が、カバー部材31に対する吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の支持剛性を、両バルブユニット13,14をカバー部材31に直付けする場合より低下させているので、カバー部材31と両バルブユニット13,14との結合部における歪みが環状補助部材51,52によって十分に吸収される。また、環状補助部材51,52は、環状補助部材51,52の一端から他端までの軸方向長さA1、A2と環状補助部材51,52の内周面から外周縁部までの半径方向幅B1,B2とのうち一方が他方より大きくなっているので、カバー部材31に対する吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の支持剛性を、第1および第2の特定方向Rdで容易に低剛性化できることになる。
しかも、本実施の形態では、カバー部材31と両バルブユニット13,14との間に環状隙間g1,g2が設定されることに加えて、環状補助部材51,52の外周側の固着部位we1,we2を先にカバー部材31に溶接して固着させ、次いで、環状補助部材51,52の内周側の固着部位wi1,wi2を吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14に溶接して固着させている。したがって、環状補助部材51,52の内周側の固着部位wi1,wi2を吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14に溶接する際には固着部位wi1,wi2の凝固収縮等の影響を排除でき、吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の取付け端側を支点として両バルブユニット13,14の外端側を変位させるモーメント等の発生が非常に有効に抑制される。なお、環状補助部材51をカバー部材31に溶接する際に、環状補助部材51を吸入バルブユニット13の外筒部材13aに対し極力センタリングした状態にするのがよい。同様に、環状補助部材52をカバー部材31に溶接する際に、環状補助部材52を吐出バルブユニット14の外筒部材14aに対し極力センタリングした状態にするのがよい。
本実施の形態では、また、バルブ保持部材32に結合された吸入バルブユニットおよび吐出バルブユニット14のそれぞれに対応して環状補助部材51,52が設けられ、両環状補助部材51,52の外周縁部51a,52aがカバー部材31に溶接されるとともに、環状補助部材51,52の内周縁部51b、52bが両バルブユニット13,14に溶接されている。したがって、両バルブユニット13,14やシリンダ部材21が組み付けられるポンプハウジング12のバルブ保持部材32における位置ずれやシリンダ部材21における不要な歪みの発生を抑えることができ、プランジャ11の摺動抵抗の増加によって高圧燃料ポンプ10のポンプ寿命が低下したりポンプ効率が低下したりすることをより有効に防止できる。
さらに、本実施の形態においては、吸入バルブユニット13が、燃料加圧室23の一方側で吸入側の燃料通路24aの一部を形成し、吐出バルブユニット14が、燃料加圧室23の他方側で吐出側の燃料通路24bの一部を形成しているので、ポンプハウジング12のヘッド部を構成するバルブ保持部材32に対し、両バルブユニット13,14の基準位置からの取付け姿勢の変化を抑制することで、吸入側および吐出側の燃料通路24a,24bのシール性も良好に確保される。
加えて、本実施の形態においては、吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14が同一軸線上に配置されているので、バルブ保持部材32に対する吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の取付け作業や部品加工も容易化されることになる。
また、本実施の形態においては、環状補助部材51,52がカバー部材31より低剛性の素材からなるので、環状補助部材51,52の内周側および外周側の固着部位we1,we2,wi1,wi2に変形や凝固収縮が生じたとき、それらの変形や歪みは、形状のみならず素材面でも低剛性となる環状補助部材51,52の変形によって十分に吸収されることになる。
また、本実施の形態においては、カバー部材31が、吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の軸線と直交しつつ互いに平行に離間する少なくとも一対の平行面31f1,31f2を有し、これら平行面31f1,31f2のそれぞれに対して環状補助部材51,52が固着されている。したがって、環状補助部材51,52のカバー部材31および両バルブユニット13,14への溶接等による固着作業を容易化できるとともに、環状補助部材51,52を少なくともカバー部材31の平行面31f1,31f2に固着される一端面側で平坦化でき、製造コストを抑えることもできる。
図4は、環状補助部材51,52について軸方向長さA1,A2を相違させた実施例1−3と、吸入バルブユニット13側についてのみ環状補助部材51を介した溶接による固着を行い、吐出バルブユニット14については外周フランジ部を設けた実施例4−6とについて、溶接前後におけるポンプハウジング12のシリンダ部材21付近の真円度変化との関係を示している。
実施例1−3は、環状補助部材51,52の軸方向長さA1,A2を、それぞれ2mm、3mm、4mmと変化させたものであり、それぞれの環状補助部材51,52の外周側の固着部位we1,we2を先にカバー部材31に溶接して固着させた後に、環状補助部材51,52の内周側の固着部位wi1,wi2を吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14に溶接して固着させた。
この場合、同図中に○印およびE1,E2,E3で示すように、環状補助部材51,52の軸方向長さA1,A2が実施例1(同図中のE1)より長い実施例2(同図中のE2)の方が、溶接前後におけるポンプハウジング12のシリンダ部材21付近の真円度変化は小さくなっている。さらに、環状補助部材51,52の軸方向長さA1,A2が実施例2より長い実施例3(同図中のE3)の方が、溶接前後におけるポンプハウジング12のシリンダ部材21付近の真円度変化はさらに小さくなっている。よって、環状補助部材51,52の軸方向長さA1,A2を大きくすることで、溶接前後におけるポンプハウジング12のシリンダ部材21付近の真円度変化を抑える効果が期待できる。また、環状補助部材51,52の軸方向長さA1,A2の半径方向幅B1,B2に対する比率を、所定範囲に設定することで、そのような効果が確実に期待できることとなる。
図4中にE4,E5,E6の符号を付けて示す実施例4,5,6は、吸入バルブユニット13側についてのみ環状補助部材51を介した溶接による固着を行い、吐出バルブユニット14については環状補助部材52の外周縁部52aに対応するフランジ部を設けて、そのフランジ部をカバー部材31に溶接させたものである。また、軸方向長さA1,A2を、実施例1−3と同様に次第に大きくなるよう相違させている。
この場合、同図中に○印およびE4,E5,E6で示すように、環状補助部材51,52の軸方向長さA1,A2が実施例4より長い実施例5の方が、溶接前後におけるポンプハウジング12のシリンダ部材21付近の真円度変化は小さくなっている。さらに、環状補助部材51,52の軸方向長さA1,A2が実施例5より長い実施例6の方が、溶接前後におけるポンプハウジング12のシリンダ部材21付近の真円度変化はさらに小さくなっている。ただし、環状補助部材51,52の双方を用いる実施例1−3に比べると、溶接前後におけるシリンダ部材21付近の真円度変化は多少大きくなっており、歪み抑制効果が多少低減する。
このように、本実施の形態においては、吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の固着部位における変形や収縮を環状補助部材51,52に吸収させ、両バルブユニット13,14の取付け姿勢を変化させるモーメント等の発生を抑制するようにしているので、両バルブユニット13,14の取付けに起因してシリンダ部材21やその近傍のポンプハウジング12に不均一な歪が生じてしまうことを有効に抑制することができる。その結果、ポンプ寿命やポンプ効率を向上させることのできる低コストの高圧燃料ポンプ10を提供することができる。
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る高圧燃料ポンプを示している。
なお、以下の各実施の形態は、環状補助部材の具体的形状が上述の第1の実施の形態と相違するものの、高圧燃料ポンプの全体構成自体は前述の第1の実施の形態と類似するものである。したがって、以下の各実施の形態の構成のうち第1の実施の形態と同一の構成については、図1ないし図3に示した対応する構成要素と同一の符号を用い、以下の説明においては、主に第1の実施の形態との相違点について説明する。
第2の実施の形態の高圧燃料ポンプ10においては、第1の実施の形態における一対の環状補助部材51,52に代えて、図5(a)および図5(b)に示すような一対の環状補助部材61,62が採用されている。すなわち、本実施の形態では、カバー部材31と吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14との間の環状隙間g1,g2が、略L字形断面の環状補助部材61,62によってそれぞれ気密的に閉塞されている。
具体的には、図5(a)に示すように、環状補助部材61は、貫通穴31aの周囲で溶接によりカバー部材31に固着された外周縁部61aと、吸入バルブユニット13の外筒部材13aに溶接により固着された内周縁部61bと、これら外周縁部61aおよび内周縁部61bを連結する湾曲断面(例えば円弧断面)の環状曲げ部61cを有している。そして、内周縁部61bが形成される環状補助部材61の内周側の軸方向一端から軸方向他端までの軸方向長さA1は、環状補助部材61の内周面61dから外周縁部61aまでの半径方向幅B1より大きくなっている。
この環状補助部材61においては、環状曲げ部61cの板厚が外周縁部61aおよび内周縁部61bのそれぞれの板厚よりも小さくなっており、それによって環状曲げ部61cの剛性を低下させた構成となっている。また、環状補助部材61は、その外周側の固着部位we1を先にカバー部材31の貫通穴31aの近傍に溶接して固着させた後に、その内周側の固着部位wi1を吸入バルブユニット13の外筒部材13aに溶接して固着させている。
図5(b)に示すように、環状補助部材62は、貫通穴31bの周囲で溶接によりカバー部材31に固着された外周縁部62aと、吸入バルブユニット13の外筒部材13aに溶接により固着された内周縁部62bと、これら外周縁部62aおよび内周縁部62bを連結する湾曲断面の環状曲げ部62cを有している。そして、内周縁部62bが形成される環状補助部材62の内周側の軸方向一端から軸方向他端までの軸方向長さA2は、環状補助部材62の内周面62dから外周縁部62aまでの半径方向幅B2より大きくなっている。
この環状補助部材62においては、環状曲げ部62cの板厚が外周縁部62aおよび内周縁部62bのそれぞれの板厚よりも小さくなっており、それによって環状曲げ部62cの剛性を低下させた構成となっている。また、環状補助部材62は、その外周側の固着部位we2を先にカバー部材31の貫通穴31bの近傍に溶接して固着させた後に、その内周側の固着部位wi2を吐出バルブユニット14の外筒部材14aに溶接して固着させている。
本実施の形態においても、吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の固着部位における変形や収縮を環状補助部材61,62に吸収させ、両バルブユニット13,14の取付け姿勢を変化させるモーメント等の発生を抑制するようにしているので、両バルブユニット13,14の取付けに起因してシリンダ部材21やその近傍のポンプハウジング12に不均一な歪が生じてしまうことを有効に抑制することができる。その結果、ポンプ寿命やポンプ効率を向上させることのできる低コストの高圧燃料ポンプ10を提供することができる。
しかも、本実施の形態では、環状補助部材61,62の環状曲げ部61c,62cの板厚が外周縁部61a,62aおよび内周縁部61b,62bのそれぞれの板厚よりも小さくなっているので、より効果的な歪み抑制効果を期待できる。
(第3の実施の形態)
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る高圧燃料ポンプを示している。
第3の実施の形態の高圧燃料ポンプ10においては、第1の実施の形態における一対の環状補助部材51,52に代えて、図6(a)および図6(b)に示すような一対の環状補助部材71,72が採用されている。すなわち、本実施の形態では、カバー部材31と吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14との間の環状隙間g1,g2が、略L字形断面の環状補助部材71,72によってそれぞれ気密的に閉塞されている。
具体的には、図6(a)に示すように、環状補助部材71は、貫通穴31aの周囲で溶接によりカバー部材31に固着された外周縁部71aと、吸入バルブユニット13の外筒部材13aに溶接により固着された内周縁部71bと、これら外周縁部71aおよび内周縁部71bを連結する板ばね機能を持つ環状曲げ部71cとを有している。そして、内周縁部71bが形成される環状補助部材71の内周側の軸方向一端から軸方向他端までの軸方向長さA1は、環状補助部材71の内周面71dから外周縁部71aまでの半径方向幅B1より大きくなっている。
環状曲げ部71cは、外周縁部71aおよび内周縁部71bを連結するその連結長さ方向の中央部で略U字形に湾曲した断面形状を有しており、第1、第2の実施の形態の環状曲げ部51c,61cとは逆側に凸となるように薄板状のばね鋼等で形成されている。
この環状補助部材71においては、環状曲げ部71cの板厚が外周縁部71aおよび内周縁部71bのそれぞれの板厚よりも十分に小さいことで低剛性となっているが、材料自体の弾性率等は外周縁部71aおよび内周縁部71bより大きくなっている。
また、環状補助部材71は、外周縁部71aおよび内周縁部71bを溶接に適した材料で形成したものであり、その外周側の固着部位we1を先にカバー部材31の貫通穴31aの近傍に溶接して固着させた後に、その内周側の固着部位wi1を吸入バルブユニット13の外筒部材13aに溶接して固着させている。
図6(b)に示すように、環状補助部材72は、貫通穴31bの周囲で溶接によりカバー部材31に固着された外周縁部72aと、吸入バルブユニット13の外筒部材13aに溶接により固着された内周縁部72bと、これら外周縁部72aおよび内周縁部72bを連結する板ばね機能を持つ湾曲断面の環状曲げ部72cとを有している。そして、内周縁部72bが形成される環状補助部材72の内周側の軸方向一端から軸方向他端までの軸方向長さA2は、環状補助部材72の内周面72dから外周縁部72aまでの半径方向幅B2より大きくなっている。
この環状補助部材72においては、環状曲げ部72cの板厚が外周縁部72aおよび内周縁部72bのそれぞれの板厚よりも十分に小さいことで低剛性となっているが、材料自体の弾性率等は外周縁部72aおよび内周縁部72bより大きくなっている。
また、環状補助部材72は、外周縁部72aおよび内周縁部72bを溶接に適した材料で形成したものであり、その外周側の固着部位we2を先にカバー部材31の貫通穴31bの近傍に溶接して固着させた後に、その内周側の固着部位wi2を吐出バルブユニット14の外筒部材14aに溶接して固着させている。
本実施の形態においても、吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の固着部位における変形や収縮を環状補助部材71,72に吸収させ、両バルブユニット13,14の取付け姿勢を変化させるモーメント等の発生を抑制するようにしているので、両バルブユニット13,14の取付けに起因してシリンダ部材21やその近傍のポンプハウジング12に不均一な歪が生じてしまうことを有効に抑制することができる。その結果、ポンプ寿命やポンプ効率を向上させることのできる低コストの高圧燃料ポンプ10を提供することができる。
また、本実施の形態では、環状補助部材71,72の環状曲げ部71c,72cの板厚が外周縁部71a,72aおよび内周縁部71b,72bのそれぞれの板厚よりも十分に小さく低剛性となっているので、より効果的な歪み抑制効果を期待でき、しかも、外周縁部72aおよび内周縁部72bの溶接性も向上させることができる。
なお、上述の各実施形態では、環状補助部材51、52等の軸方向長さA1,A2が環状補助部材51、52等の半径方向幅B1,B2よりそれぞれ大きくなっていたが、環状補助部材51、52等の半径方向幅B1,B2が環状補助部材51、52等の軸方向長さA1,A2より大きくなっていてもよい。また、支持剛性を直交2軸方向で相違させるために略L字形断面以外の任意の断面形状が採用できることはいうまでもない。さらに、吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の固着部位にてカバー部材31の剛性が高い方向について、カバー部材31に対する吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の支持剛性を、環状補助部材51,52等によりそれぞれ低下させることもできる。次に、そのような場合について説明する。
(第4の実施の形態)
図7は、本発明の第4の実施の形態に係る高圧燃料ポンプを示している。
第4の実施の形態の高圧燃料ポンプ10においては、第1の実施の形態における一対の環状補助部材51,52に代えて、図7(a)および図7(b)に示すような一対の環状補助部材81,82が採用されている。すなわち、本実施の形態では、カバー部材31と吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14との間の環状隙間g1,g2が、略L字形断面の環状補助部材81,82によってそれぞれ気密的に閉塞されている。
具体的には、図7(a)に示すように、環状補助部材81は、貫通穴31aの周囲で溶接によりカバー部材31に固着された外周縁部81aと、吸入バルブユニット13の外筒部材13aに溶接により固着された内周縁部81bと、これら外周縁部81aおよび内周縁部81bを連結する湾曲断面(例えば円弧断面)の環状曲げ部81cを有している。そして、環状補助部材81の内周面81dから外周縁部81aまでの半径方向幅B1は、内周縁部81bが形成される環状補助部材81の内周側の軸方向一端から軸方向他端までの軸方向長さA1より大きくなっている。
また、図7(b)に示すように、環状補助部材82は、貫通穴31bの周囲で溶接によりカバー部材31に固着された外周縁部82aと、吸入バルブユニット13の外筒部材13aに溶接により固着された内周縁部82bと、これら外周縁部82aおよび内周縁部82bを連結する湾曲断面の環状曲げ部82cを有している。そして、環状補助部材82の内周面82dから外周縁部82aまでの半径方向幅B2は、内周縁部82bが形成される環状補助部材82の内周側の軸方向一端から軸方向他端までの軸方向長さA2より大きくなっている。
すなわち、本実施形態では、環状補助部材81,82が、カバー部材31に対する吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の支持剛性を、環状補助部材51の内周面51dから外周縁部51aまでの半径方向であるRd方向では相対的に大きく、環状補助部材51の軸方向であるAd方向では相対的に小さくする機能を有している。したがって、本実施形態における第1および第2の特定方向は、Ad方向である。
本実施の形態においては、吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の固着部位における変形や収縮を環状補助部材81,82によりAd方向において十分に吸収させることができ、両バルブユニット13,14の取付け姿勢を変化させるモーメント等の発生を抑制することができる。
(第5の実施の形態)
図8(a)は、本発明の第5の実施の形態に係る高圧燃料ポンプの要部断面を示している。
第5の実施の形態の高圧燃料ポンプ10においては、第1の実施の形態における環状補助部材51に代えて、図8(a)に示すような環状補助部材91が採用されている。すなわち、本実施の形態では、カバー部材31と吸入バルブユニット13との間の環状隙間g1が、略L字形断面の環状補助部材91によって気密的に閉塞されている。
具体的には、図8(a)に示すように、環状補助部材91は、貫通穴31aの周囲で溶接によりカバー部材31に固着された外周縁部91aと、吸入バルブユニット13の外筒部材13aに溶接により固着された内周縁部91bと、これら外周縁部91aおよび内周縁部91bを連結する湾曲断面(例えば円弧断面)の環状曲げ部91cを有している。
本実施形態においては、内周縁部91bが形成される環状補助部材91の内周側の軸方向一端から軸方向他端までの軸方向長さA1は、環状補助部材91の内周面91dから外周縁部91aまでの半径方向幅B1と等しくなっている。
しかし、内周面91dを形成する環状補助部材91の内周側円筒部分における環状補助部材91の板厚t1が、外周縁部91aが形成される環状補助部材91の外周側環状板部における環状補助部材91の板厚t2より小さくなっている。
この環状補助部材91は、カバー部材31に対する吸入バルブユニット13および吐出バルブユニット14の支持剛性を、環状補助部材91の内周面91dから外周縁部91aまでの半径方向であるRd方向では相対的に小さく、環状補助部材91の軸方向であるAd方向では相対的に大きくする機能を有している。したがって、本実施形態における第1の特定方向は、Rd方向である。
本実施の形態においては、吸入バルブユニット13の固着部位における変形や収縮を環状補助部材91によりRd方向において十分に吸収させることができ、両バルブユニット13,14の取付け姿勢を変化させるモーメント等の発生を抑制することができる。
(第6の実施の形態)
図8(b)は、本発明の第6の実施の形態に係る高圧燃料ポンプの要部断面を示している。
第6の実施の形態の高圧燃料ポンプ10においては、第1の実施の形態における環状補助部材51に代えて、図8(b)に示すような環状補助部材101が採用されている。すなわち、本実施の形態では、カバー部材31と吸入バルブユニット13との間の環状隙間g1が、略L字形断面の環状補助部101によって気密的に閉塞されている。
具体的には、図8(b)に示すように、環状補助部材101は、貫通穴31aの周囲で溶接によりカバー部材31に固着された外周縁部101aと、吸入バルブユニット13の外筒部材13aに溶接により固着された内周縁部101bと、これら外周縁部101aおよび内周縁部101bを連結する環状曲げ部101cを有している。また、環状曲げ部101cは、吸入バルブユニット13の外筒部材13aの外周面に対して90度より小さい傾斜角度θ3をなしている。
本実施形態においては、内周縁部101bが形成される環状補助部材101の内周側の軸方向一端から軸方向他端までの軸方向長さA1が、環状補助部材101の内周面101dから外周縁部101aまでの半径方向幅B1より大きくなっている。
すなわち、この環状補助部材101は、カバー部材31に対する吸入バルブユニット13の支持剛性を、Rd方向では相対的に小さく、Ad方向では相対的に大きくする機能を有している。したがって、本実施形態における第1の特定方向は、Rd方向である。
(第7の実施の形態)
図8(c)は、本発明の第7の実施の形態に係る高圧燃料ポンプの要部断面を示している。
第7の実施の形態の高圧燃料ポンプ10においては、第1の実施の形態における環状補助部材51に代えて、図8(c)に示すような環状補助部材111が採用されている。すなわち、本実施の形態では、カバー部材31と吸入バルブユニット13との間の環状隙間g1が、外側に凸となる屈曲断面を有する環状補助部材111によって気密的に閉塞されている。
具体的には、図8(c)に示すように、環状補助部材111は、貫通穴31aの周囲で溶接によりカバー部材31に固着された外周縁部111aと、吸入バルブユニット13の外筒部材13aに溶接により固着された内周縁部111bと、これら外周縁部111aおよび内周縁部111bを連結する環状曲げ部111cを有している。
本実施形態においては、環状曲げ部111cが、吸入バルブユニット13の外筒部材13aの外周面とカバー部材31の外周面との双方から離隔しており、環状補助部材111の断面形状が図8(c)中の左上方側に凸となる略L字形断面となっている。
本実施形態においては、内周縁部111bが形成される環状補助部材111の軸方向一端から軸方向他端までの軸方向長さA1が、環状補助部材111の内周面111dから外周縁部111aまでの半径方向幅B1より大きくなっている。
すなわち、この環状補助部材111は、カバー部材31に対する吸入バルブユニット13の支持剛性を、Rd方向では相対的に小さく、Ad方向では相対的に大きくする機能を有している。したがって、本実施形態における第1の特定方向は、Rd方向である。
なお、上述の各実施の形態においては、環状補助部材51,52等のそれぞれがカバー部材31に溶接される一端側を平坦面とする構成となっていたが、カバー部材31の外周面を多角形(例えば8角形)でなく有底円筒形状にすることで、環状補助部材51,52等のそれぞれがカバー部材31に溶接される一端側を湾曲面とすることも考えられる。また、カバー部材31は、多角形や円筒面に限定されるものでなく、環状補助部材51または52等がカバー部材31に溶接される一端側の面に対応する接続面が設けられていればよい。したがって、カバー部材31は、円筒形状の外周の一箇所を平面カットしたD字形の横断面や、円筒形状の外周の二箇所を平行に平面カットした小判形の横断面等を有するものであってもよいし、その接合面部分のみを外周面より内方に窪ませた凹形状を有するものであってもよい。
また、環状補助部材51,52等の略L字形断面における軸方向長さA1,A2や半径方向幅B1,B2は同等のものとして説明したが、軸方向長さA1,A2が互いに相違し、半径方向幅B1,B2が互いに相違し得ることは勿論である。
さらに、本発明の高圧燃料ポンプは、ガソリンを燃料とするものに限定されないことはいうまでもなく、他の燃料を用いるエンジンにも効果的に適用できる。
以上説明したように、本発明に係る高圧燃料ポンプは、バルブユニットの取付けに起因してシリンダやその近傍のポンプハウジングに不均一な歪が生じてしまうことを有効に抑制することができ、ポンプ寿命やポンプ効率を向上させることのできる低コストの高圧燃料ポンプを提供することができるものである。このような本発明は、シリンダを有するポンプハウジングにバルブユニットが結合されている高圧燃料ポンプ全般に有用である。