JP6136210B2 - 鋳型及びその製造方法、精密鋳造装置並びに精密鋳造方法 - Google Patents

鋳型及びその製造方法、精密鋳造装置並びに精密鋳造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋳型及びその製造方法、精密鋳造装置並びに精密鋳造方法に係り、特に、一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するための鋳型及びその製造方法、精密鋳造装置並びに精密鋳造方法に関する。
従来、一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するときには、結晶成長初期に金属溶湯を急冷して結晶粒を微細化させて多くの結晶粒を発生させ、さらには冷却プレートと加熱炉の温度差を利用し、その発生させた結晶粒を温度差の方向に一方向凝固させるために、水冷式の冷却プレートを有する加熱炉が使用されている。このような水冷式の冷却プレートに鋳型を載置して精密鋳造することにより、結晶方位が整った合金を精密鋳造することが可能であり、結晶成長中期以降も結晶方位の整った合金を一方向に成長させることができる。
特許文献1には、鋳型内の溶融物を一方向に凝固させて鋳造物を製造する鋳造物の製造装置が記載されており、製造装置の冷却機構は、鋳型を載置するためのチルプレートを備えており、このチルプレートは、その内部に冷却水が供給されて水冷により冷却されている。
特開2003−311390号公報
ところで、一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するときには、金属溶湯が注入されるキャビティを有する無底の鋳型(中空状の底面の無い鋳型)を水冷式の冷却プレートに載置し、金属溶湯が鋳型から流出しないように鋳型の外周端縁と冷却プレートとの間をシールした後に、キャビティ内に金属溶湯を注入して精密鋳造している。このように精密鋳造することで、金属溶湯を水冷式の冷却プレートに直接接触させて急冷することにより、結晶成長初期に結晶粒を微細化させて多くの結晶粒を発生させている。
しかし、このような無底の鋳型を用いた場合には、鋳型の外周端縁と水冷式の冷却プレートとの間をシールする作業が必要となるので、一方向凝固合金または単結晶合金の鋳造作業が煩雑となり、生産性が低下する可能性がある。
そこで、本発明の目的は、一方向凝固合金または単結晶合金の生産性をより向上させるための鋳型及びその製造方法、精密鋳造装置並びに精密鋳造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る鋳型は、一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するための鋳型であって、金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型本体を備え、前記鋳型本体は、前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面のみに、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化層を有していることを特徴とする。
本発明に係る鋳型において、前記結晶粒微細化層は、前記鋳型本体の底面のみに設けられていることを特徴とする。
本発明に係る鋳型において、前記鋳型は、前記単結晶合金を精密鋳造するためのものであり、前記鋳型本体は、セレクタとスタータとを有し、前記結晶粒微細化層は、前記スタータの底面のみに設けられていることを特徴とする。
本発明に係る精密鋳造用鋳型において、前記結晶粒微細化剤は、アルミン酸コバルト、酸化コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、スルフォン酸コバルト、硫酸アンモニウムコバルト、チオシアン酸コバルトまたは硝酸コバルトであることを特徴とする。
本発明に係る鋳型の製造方法は、一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するための鋳型の製造方法であって、金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型本体を形成するためのロウ型を成形するロウ型成形工程と、前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面のみに、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化スラリをコーティングして、結晶粒微細化スラリ層を形成すると共に、前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面を除いたロウ型面及び結晶粒微細化スラリ層に、耐火材を含む耐火材スラリをコーティングして、耐火材スラリ層を形成するスラリ層形成工程と、前記結晶粒微細化スラリ層と前記耐火材スラリ層とが形成されたロウ型を加熱して脱ロウし、鋳型成形体を形成する脱ロウ工程と、前記鋳型成形体を焼成する焼成工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る鋳型の製造方法は、一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するための鋳型の製造方法であって、金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型本体を形成するためのロウ型を成形するロウ型成形工程と、前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面のみに、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化シートを接合すると共に、前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面を除いたロウ型面及び前記結晶粒微細化シートに、耐火材を含む耐火材スラリをコーティングして、耐火材スラリ層を形成するスラリ層形成工程と、前記結晶粒微細化シートと前記耐火材スラリ層とが形成されたロウ型を加熱して脱ロウし、鋳型成形体を形成する脱ロウ工程と、前記鋳型成形体を焼成する焼成工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る精密鋳造装置は、一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するための精密鋳造装置であって、真空容器で形成された装置本体と、前記装置本体に設けられ、金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型本体における前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面のみに結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化層を有している鋳型を収容して加熱する筒状の加熱体と、前記装置本体に設けられ、前記鋳型における前記結晶粒微細化層が形成された鋳型面を載置する載置面を有し、前記加熱体に対して前記鋳型を挿入しまたは引き出すために昇降可能に形成された昇降体と、を備えていることを特徴とする。
本発明に係る精密鋳造装置は、前記装置本体に排気可能に設けられ、精密鋳造前の前記鋳型を供給する鋳型供給室と、前記装置本体に排気可能に設けられ、精密鋳造後の前記鋳型を取り出す鋳型取出室と、前記装置本体に設けられ、前記鋳型供給室から前記昇降体まで精密鋳造前の前記鋳型を搬送する鋳型供給用搬送手段と、前記装置本体に設けられ、前記昇降体から前記鋳型取出室まで精密鋳造後の前記鋳型を搬送する鋳型取出用搬送手段と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る精密鋳造方法は、一方向凝固合金または単結晶合金の精密鋳造方法であって、金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型本体における前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面のみに、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化層を有している鋳型の前記キャビティに金属溶湯を注入すると共に、前記金属溶湯が注入された鋳型を加熱する金属溶湯注入工程と、前記金属溶湯が注入された鋳型を前記結晶粒微細化層が形成された鋳型面から一方向に冷却させて、前記キャビティ内の金属溶湯を一方向に凝固させる凝固工程と、を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するための鋳型は、金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型本体を備え、鋳型本体は、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面のみに、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化層を有しているので、金属溶湯の凝固初期に結晶粒を微細化させて多くの結晶粒を発生させることが可能となる。そして、上記構成の鋳型を用いて一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造することにより、鋳型を昇降体の載置面に載置すればよく、従来のような鋳型と水冷式の冷却プレートとの間のシール作業が不要になるので、生産性をより向上させることができる。
本発明の実施の形態において、一方向凝固合金を精密鋳造するための鋳型の構成を示す断面図である。 本発明の実施の形態において、一方向凝固合金を精密鋳造するための鋳型の製造方法を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態において、単結晶合金を精密鋳造する鋳型の構成を示す断面図である。 本発明の実施の形態において、精密鋳造装置の構成を示す図である。 本発明の実施の形態において、一方向凝固合金の精密鋳造方法を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態において、一方向凝固合金の精密鋳造方法を示す図である。 本発明の実施の形態において、単結晶合金の精密鋳造方法を示す図である。 本発明の実施の形態において、精密鋳造装置の構成を示す図である。 本発明の実施の形態において、一方向凝固精密鋳造した鋳物の結晶粒径と、初期凝固時の鋳型底面温度との関係を示すグラフである。 本発明の実施の形態において、一方向凝固精密鋳造した鋳物の外観観察結果を示す写真である。
以下に、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。まず、一方向凝固合金を精密鋳造するための鋳型について説明する。図1は、一方向凝固合金を精密鋳造するための鋳型10の構成を示す断面図である。
鋳型10は、ニッケル合金等の金属溶湯が注入されるキャビティ12を有する有底の鋳型本体14を備えている。鋳型本体14は、アルミナ、ジルコニア、イットリア、シルカまたはジルコン等を主成分とする耐火材で形成されている。鋳型本体14のキャビティ12側は、精密鋳造される金属との反応を抑えるために、金属との反応性がより低い耐火材で形成されていることが好ましく、鋳型本体14の外側は、鋳型強度を確保するために、機械的強度の高い耐火材で形成されていることが好ましい。また、鋳型本体14には、金属溶湯をキャビティ12に注入するための注入口16が設けられている。
鋳型本体14には、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面のみに、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化層18が設けられている。結晶粒微細化層18は、例えば、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面である鋳型本体14の底面のみに設けられている。金属溶湯が最も早く凝固する初期凝固領域に対応する鋳型面のみに結晶粒微細化層18を設けることにより、結晶粒微細化層18と接触した金属溶湯が凝固する際に結晶粒が微細化されるので、結晶成長の初期部分に多くの結晶粒を発生させることが可能となる。また、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面以外のキャビティ側の鋳型面には、結晶粒微細化層18を設けないことにより、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面以外のキャビティ側の鋳型面からの結晶粒の成長が抑制される。結晶粒微細化層18の厚みについては、例えば、0.1mmから0.5mmである。このように、結晶成長の初期部分に多くの結晶粒を発生させることにより、結晶成長しやすい結晶方位を有する結晶粒(例えば、ニッケル合金では、結晶方位がミラー指数で<100>方向の結晶粒)をより多く発生させることができる。また、結晶粒を微細化することにより、クリープ特性等を向上させることが可能となる。
結晶粒微細化層18は、例えば、結晶粒微細化剤と耐火材との混合物により形成されている。結晶粒微細化剤には、酸化コバルト、アルミン酸コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、スルフォン酸コバルト、硫酸アンモニウムコバルト、チオシアン酸コバルトまたは硝酸コバルト等が用いられる。
次に、一方向凝固合金を精密鋳造するための鋳型10の製造方法について説明する。図2は、一方向凝固合金を精密鋳造するための鋳型10の製造方法を示すフローチャートである。鋳型10の製造方法は、ロウ型成形工程(S10)と、スラリ層形成工程(S12)と、脱ロウ工程(S14)と、焼成工程(S16)と、を備えている。
ロウ型成形工程(S10)は、金属溶湯が注入されるキャビティ12を有する有底の鋳型本体14を形成するためのロウ型を成形する工程である。ロウ型は、金型内にロウ材を射出成形等により注入し、ロウ材を硬化させた後、金型から取り出して成形される。
スラリ層形成工程(S12)は、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面のみに、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化スラリ層を形成すると共に、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面を除いたロウ型面及び結晶粒微細化スラリ層に、耐火材スラリ層を形成する工程である。
まず、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面のみに、結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化スラリをコーティングする。結晶粒微細化スラリは、例えば、結晶粒微細化剤と、耐火材粒子と、バインダとを含んで構成されている。結晶粒微細化剤には、上述した、酸化コバルト、アルミン酸コバルト等が用いられる。耐火材粒子には、金属溶湯との反応性が低いジルコン(珪酸ジルコニウム)、アルミナ、ジルコニア、イットリア等の耐火物粒子を用いることが好ましい。バインダには、シリカゾルやジルコニアゾル等が用いられる。
次に、結晶粒微細化スラリをコーティングしたロウ型面に耐火材粒子を振りかけてスタッコ処理を行い、乾燥させる。このようにして、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面のみに、結晶粒微細化スラリ層を形成する。
次に、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面を除いたロウ型面に、初層用スラリをコーティングする。初層用スラリは、例えば、耐火材粒子とバインダとを含んで構成されている。耐火材粒子とバインダとについては、上述した結晶粒微細化スラリと同様である。初層用スラリをコーティングしたスラリ面に耐火材粒子を振りかけて初層スタッコ処理を行い、乾燥させる。このようにして、初層の耐火材スラリ層を形成する。このとき、結晶粒微細化スラリ層にも初層用スラリをコーティングし、耐火物粒子を振りかけて初層スタッコ処理を行い、乾燥させるようにしてもよい。
次に、結晶粒微細化スラリ層及び初層の耐火材スラリ層に、後層用スラリをコーティングする。後層用スラリは、例えば、耐火物粒子とバインダとを含んで構成されている。耐火材粒子には、機械的強度が大きいジルコン、シリカ、アルミナ、ムライト等を用いることが好ましい。バインダには、シリカゾルやジルコニアゾル等が用いられる。後層用スラリをコーティングしたスラリ面に耐火材粒子を振りかけて後層スタッコ処理を行い、乾燥させる。後層用スラリのコーティングと、後層スタッコ処理と、乾燥とからなる工程は、後層の耐火材スラリ層が所定の厚みになるまで繰り返し行われる。このようにして、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面を除いたロウ型面及び結晶粒微細化スラリ層に、耐火材スラリ層が形成される。
他の方法としては、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面のみをマスキングテープ等で予めマスキングし、ロウ型の周囲に初層用スラリをコーティングし、初層スタッコ処理を行い、乾燥させる。その後、マスキングを除去し、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面のみに結晶粒微細化スラリ層を形成するようにしてもよい。また、ロウ型の周囲に初層用スラリをコーティングし、初層スタッコ処理を行った後に、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面に設けられた初層のスラリ層のみを機械的手法または水洗で除去し、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面のみに結晶粒微細化スラリ層を形成するようにしてもよい。このようにロウ型に結晶粒微細化スラリ層を形成した後、上述した方法で耐火材スラリ層が形成される。
別の方法としては、まず、結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化シートを作製する。結晶粒微細化シートについては、結晶粒微細化剤と耐火材粒子とを混合した後、シート状に作製してもよいし、結晶粒微細化剤を水に溶かした結晶粒微細化溶液を多孔質の耐火材シートに含浸させた後、乾燥させて作製してもよい。なお、結晶粒微細化溶液には、水溶性である酢酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、スルフォン酸コバルト、硫酸アンモニウムコバルト、チオシアン酸コバルトまたは硝酸コバルト等が適用可能である。
次に、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面のみに結晶粒微細化シートを接合する。接着剤には、樹脂系接着剤やセラミックス系接着剤が用いられる。このようにロウ型面に結晶粒微細化シートを接合した後、上述した方法で耐火材スラリ層が形成される。
脱ロウ工程(S14)は、結晶粒微細化スラリ層と耐火物スラリ層とが形成されたロウ型を加熱して脱ロウし、鋳型成形体を形成する工程である。結晶粒微細化スラリ層と耐火物スラリ層とが形成されたロウ型を加熱することにより、ロウ型が溶け出して脱ロウし、鋳型成形体が形成される。脱ロウ処理は、結晶粒微細化スラリ層と耐火物スラリ層とが形成されたロウ型をオートクレーブ等に入れて、100℃から180℃、4気圧から8気圧で加熱・加圧処理して行われる。この脱ロウ処理により、ロウ型が溶け出してキャビティ12となり、キャビティ12を有する鋳型成形体が得られる。
焼成工程(S16)は、鋳型成形体を焼成する工程である。鋳型成形体を焼成炉等で900℃から1300℃で加熱して焼成することにより、結晶粒微細化スラリ層と耐火材スラリ層とが焼き固められて各々結晶粒微細化層18と耐火材層となることによって殻体(シェル)となり、キャビティ12を有する鋳型10が形成される。
次に、単結晶合金を精密鋳造する鋳型について説明する。なお、一方向凝固合金を精密鋳造する鋳型10と同様の構成については、詳細な説明を省略する。図3は、単結晶合金を精密鋳造する鋳型20の構成を示す断面図である。
単結晶合金を精密鋳造する鋳型20では、有底の鋳型本体22は、金属溶湯が注入されるキャビティ23を有しており、セレクタ24と、スタータ26と、を備えている。鋳型本体22は、一方向凝固合金を精密鋳造する鋳型10の鋳型本体14と同様に耐火材で形成されている。
鋳型20では、金属溶湯の初期凝固領域であるスタータ26の底面のみに、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化層29が設けられている。金属溶湯の初期凝固領域であるスタータ26の底面のみに結晶粒微細化層29を設けることにより、結晶粒微細化層29と接触した金属溶湯が凝固する際に結晶粒が微細化されるので、結晶成長の初期部分に多数の結晶粒を発生させることが可能となる。結晶粒微細化剤については、一方向凝固合金を精密鋳造する鋳型と同様であるので詳細な説明を省略する。
次に、単結晶合金を精密鋳造するための鋳型20の製造方法について説明する。なお、一方向凝固合金を精密鋳造する鋳型10の製造方法と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
ロウ型成形工程では、金属溶湯が注入されるキャビティ23を有し、セレクタ24とスタータ26とを備えた有底の鋳型本体22を形成するためのロウ型を成形する。
スラリ層形成工程では、金属溶湯の初期凝固領域に対応するスタータ26の底面となるロウ型面のみに結晶粒微細化スラリをコーティングし、スラリ面に耐火材粒子を振りかけてスタッコ処理を行い、結晶粒微細化スラリ層を形成する。そして、スタータ26の底面に対応するロウ型面を除いたロウ型面及び結晶粒微細化スラリ層に耐火材スラリ層を形成する。なお、結晶粒微細化スラリや耐火材スラリ層の形成方法については、一方向凝固合金を精密鋳造するための鋳型10の製造方法と同様なので詳細な説明を省略する。また、スラリ層形成工程後に行われる脱ロウ工程及び焼成工程についても、一方向凝固合金を精密鋳造するための鋳型10の製造方法と同様なので詳細な説明を省略する。
次に、一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するための精密鋳造装置について説明する。
図4は、精密鋳造装置30の構成を示す図である。精密鋳造装置30は、装置本体32と、鋳型10、20を加熱する加熱体34と、鋳型10、20を載置して昇降する昇降体36と、を備えている。
装置本体32は、真空容器からなり、加熱体34や昇降体36等を収容可能に形成されている。装置本体32には、真空ポンプ等で排気するためや、不活性ガス等のガスを供給するためのバルブ等が設けられている。
加熱体34は、装置本体32に設けられ、鋳型10、20が挿入可能に筒状に形成されており、鋳型10、20を加熱する機能を有している。加熱体34には、高周波コイル等が設けられている。また、加熱体34には、金属溶湯を溜めた坩堝(図示せず)から金属溶湯を鋳型10、20へ注入するための開口部34aと、加熱体34内に鋳型10、20を挿入するためや、加熱体34内から鋳型10、20を引き抜くための開口部34bとが形成されている。
昇降体36は、装置本体32に設けられており、加熱体34に対して鋳型10、20を挿入し、または引き出すために昇降可能に形成されている。昇降体36は、鋳型10、20における結晶粒微細化層18、29が形成された鋳型面を載置する載置面36aを有している。載置面36aには、爪やリング等の鋳型を支持する支持部材を設けるようにしてもよい。昇降体36は、例えば、一般的なアクチュエータ等で構成されている。
制御部(図示せず)は、装置本体32、加熱体34、昇降体36等を制御する機能を有している。制御部は、一般的なコンピュータシステム等で構成されている。
次に、一方向凝固合金の精密鋳造方法について説明する。
図5は、一方向凝固合金の精密鋳造方法を示すフローチャートである。図6は、一方向凝固合金の精密鋳造方法を示す図である。一方向凝固合金の精密鋳造方法は、金属溶湯注入工程(S20)と、凝固工程(S22)と、を備えている。
金属溶湯注入工程(S20)は、鋳型10のキャビティ12に金属溶湯38を注入すると共に、金属溶湯38が注入された鋳型10を加熱する工程である。まず、鋳型10は、結晶粒微細化層18を設けた鋳型本体12の底面が昇降体36の載置面36aに位置するように昇降体36に載置される。制御部は、昇降体36を上昇させて鋳型10を加熱体34内に挿入する。そして、制御部は、金属溶湯38を溜めた坩堝(図示せず)を制御することにより、鋳型10のキャビティ12に金属溶湯38を注入する。そして、制御部は、加熱体34を制御して、金属溶湯38が注入された鋳型を輻射加熱等で加熱する。
また、制御部は、金属溶湯38が注入された鋳型10を加熱するときに、鋳型本体14の底面の温度が、結晶粒微細化剤が金属溶湯38に溶け込む温度より低くなると共に、鋳型本体14の底面に隣接する鋳型本体14の側面から凝固を開始しないように、昇降体36を制御して鋳型本体14の底面を加熱体34に対して位置決めする。この理由は、鋳型本体14の底面の温度が、結晶粒微細化剤が金属溶湯38に溶け込む温度より高くなると、結晶粒微細化剤が金属溶湯38に溶け込むので結晶粒の微細化効果が低減するからであり、鋳型本体14の側面から凝固を開始すると金属溶湯38を一方向に凝固させることが難しくなるからである。なお、加熱体36に対する鋳型本体14の底面の位置は、例えば、予備試験や解析等を行って予め定められる。
例えば、金属溶湯38がニッケル合金の溶湯からなる場合には、鋳型本体14の底面の温度は、1350℃以上1450℃以下であることが好ましい。鋳型本体14の底面の温度が1350℃より低い場合には、鋳型本体14の底面に隣接する側面からも凝固が始まり、鋳型本体14の底面からニッケル合金の溶湯が一方向に凝固しない場合があるからである。また、鋳型本体14の底面の温度が1450℃より高い場合には、結晶粒微細化剤がニッケル合金の溶湯に溶け込むことで結晶粒の微細化効果が低減するからである。
凝固工程(S22)は、鋳型10を結晶粒微細化層18が形成された鋳型面から一方向に冷却させて、キャビティ内の金属溶湯38を一方向に凝固させる工程である。制御部は、昇降体36を制御することにより、昇降体36を下降させて鋳型10を加熱体34内から引き抜く。これにより、キャビティ12内の金属溶湯38は、結晶粒微細化層18と接している鋳型本体14の底面から凝固を開始するので、金属溶湯38の凝固初期に結晶粒が微細化されて多くの結晶粒が発生する。そして、制御部の制御により、昇降体36を、例えば150mm/hから400mm/hの速度で徐々に下降させて鋳型10を加熱帯から出すことで輻射冷却することにより、キャビティ12内の金属溶湯38に温度勾配を生じさせて、金属溶湯38が鋳型本体14の底面から鋳型本体14の上方へ向けて一方向に冷却されて凝固し、結晶粒が一方向に成長して柱状晶となり一方向凝固合金が鋳造される。
次に、単結晶合金の精密鋳造方法について説明する。なお、一方向凝固合金の精密鋳造方法と同様の構成については、詳細な説明を省略する。図7は、単結晶合金の精密鋳造方法を示す図である。
金属溶湯注入工程では、まず、鋳型20は、結晶粒微細化層29を設けたスタータ26の底面が昇降体36の載置面36aに位置するように昇降体36に載置されている。制御部は、昇降体36を上昇させて鋳型20を加熱体34内に挿入し、金属溶湯38を溜めた坩堝(図示せず)から鋳型20のキャビティ23に金属溶湯38を注入し、加熱体36で金属溶湯38が注入された鋳型20を輻射加熱等で加熱する。
凝固工程では、制御部は、昇降体36を制御することにより、昇降体36を下降させて鋳型20を加熱体34内から引き抜き、鋳型20を結晶粒微細化層29が形成されたスタータ26の底面から一方向に冷却させて、キャビティ内の金属溶湯38を一方向に凝固させる。これにより、キャビティ23内の金属溶湯38は、結晶粒微細化層29と接しているスタータ26の底面から凝固を開始するので、金属溶湯38の凝固初期に結晶粒が微細化されて多くの結晶粒を発生させることができる。そして、制御部の制御により、昇降体36を徐々に下降させることにより、スタータ26内で多くの結晶粒が引き抜き方向に一方向に成長し、これらの多くの一方向に成長した結晶粒がセレクタ24を通過するときに1つの結晶粒が選択されて単結晶合金が鋳造される。
次に、他の精密鋳造装置について説明する。図8は、精密鋳造装置40の構成を示す図である。なお、同様な要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
真空容器からなる装置本体42には、鋳造前の鋳型10を装置本体42に供給するための鋳型供給室44と、鋳造後の鋳型10aを装置本体42から取り出すための鋳型取出室46と、が設けられている。鋳型供給室44と、鋳型取出室46とは、真空ポンプ等と接続されており、排気可能に形成されている。装置本体42と鋳型供給室44との間には、開閉可能な鋳型供給用ゲート扉47aが設けられており、装置本体42と鋳型取出室46との間には、開閉可能な鋳型取出用ゲート扉47bが設けられている。
装置本体42には、鋳造前の鋳型10を鋳型供給室44から昇降体36まで搬送するベルトコンベア等の鋳型供給用搬送手段48と、鋳造後の鋳型10aを昇降体36から鋳型取出室46まで搬送するベルトコンベア等の鋳型取出用搬送手段50と、が設けられている。
鋳型供給室44には、鋳造前の鋳型10を押出して鋳型供給用搬送手段48に載せるためのアクチュエータ等の鋳型供給用手段52が設けられている。また、装置本体42には、昇降体36に載置された鋳造後の鋳型10aを押出して鋳型取出用搬送手段50に載せるためのアクチュエータ等の鋳型取出用手段54が設けられている。
制御部(図示せず)は、鋳型供給用ゲート扉47a、鋳型取出用ゲート扉47b、鋳型供給用搬送手段48、鋳型取出用搬送手段50、鋳型供給用押出し手段52、鋳型取出用押出し手段54等を制御する機能を有しており、一般的なコンピュータシステムで構成されている。
次に、精密鋳造装置40の動作について説明する。
鋳型供給用ゲート扉47aを閉じた状態で鋳造前の鋳型10を鋳型供給室44に入れる。制御部の制御により、鋳型供給室44を排気し、鋳型供給用ゲート扉47aを開け、鋳型供給用手段52により鋳造前の鋳型10を押出して鋳型供給用搬送手段48に載置し、昇降体36まで搬送する。昇降体36を昇降させて、昇降体36の載置面36aの高さを鋳型供給用搬送手段48の位置に合わせた後に、鋳型供給用搬送手段48で搬送された鋳造前の鋳型10を昇降体36の載置面36aに載置する。
昇降体36を上昇させて鋳造前の鋳型10を加熱体34内に挿入する。制御部で、加熱体34を制御して所定の温度まで鋳型10を加熱する。鋳型10が所定の温度まで昇温し所定の時間が経過したら、制御部は、金属溶湯38を溜めた坩堝を制御することにより、鋳型10のキャビティに金属溶湯38を注入する。
制御部の制御により、昇降体36を徐々に下降させて金属溶湯38が注入された鋳型10を加熱体内から引き抜く。これにより、キャビティ12内の金属溶湯38は、結晶粒微細化層18を設けた鋳型本体14の底面から凝固を開始するので、金属溶湯38の凝固初期に結晶粒が微細化され、多数の結晶粒を発生させることが可能になる。そして、引き続き昇降体36を徐々に下降させることにより、金属溶湯38は鋳型本体14の底面から上方へ向けた温度勾配を有するので、底面に多数発生した微細な結晶粒が一方向に凝固して柱状晶となり一方向凝固材が鋳造される。
次に、制御部の制御により、昇降体36の載置面36aの高さを鋳型取出用搬送手段50の位置に合わせた後に、鋳型取出用手段54で鋳造後の鋳型10aを押出し、鋳型取出用搬送手段50に載置する。そして、鋳造後の鋳型10aを鋳型取出用搬送手段50で昇降体36から鋳型取出用ゲート扉47bまで搬送する。予め、鋳型取出室46を真空ポンプ等で排気しておき、鋳型取出用ゲート扉47bを開けて、鋳造後の鋳型10aを鋳型取出室46に搬入する。その後、鋳型取出用ゲート扉47bを閉じて鋳型取出室46を大気開放し、鋳造後の鋳型10aを取り出す。
精密鋳造装置40によれば、鋳型10を昇降体36の載置面36aに載置する際に、鋳型10の外周端縁と載置面36aとの間のシール作業等が不要になるので、連続鋳造が可能となる。なお、上記構成では、一方向凝固材を鋳造する場合について説明したが、単結晶材を鋳造する場合でも連続鋳造が可能となる。
以上、上記構成によれば、一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するための鋳型は、金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型本体を備え、鋳型本体は、金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面のみに、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化層を有しているので、金属溶湯の凝固初期に結晶粒が微細化されて多くの結晶粒を発生させ、その多数の結晶粒の中から結晶方位の良い結晶粒のみ成長させることが可能となる。
そして、上記構成の鋳型を用いて一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造することにより、鋳型を昇降体の載置面に載置すればよく、従来のように鋳型と水冷式の冷却プレートとの間のシール作業が不要になるので、炉を大気開放して鋳型をチルプレートに取り付ける作業が必要なくなり生産性を向上させることができると共に、生産コストをより低減することが可能となる。また、鋳型と水冷式の冷却プレートとの間のシール作業が不要になるので、連続鋳造も可能となり生産性をより向上させることができる。更に、水冷式の冷却プレートを用いる必要がないので、精密鋳造装置をより簡素化することができる。
ニッケル合金について一方向凝固精密鋳造を行った。
(鋳型の作製)
まず、ニッケル合金について一方向凝固精密鋳造するための鋳型の作製方法について説明する。
金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型を形成するためのロウ型を成形した後に、ニッケル合金の溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型底面となるロウ型面のみに、結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化スラリを塗布した。結晶粒微細化スラリには、結晶粒微細化剤であるアルミン酸コバルト10質量%と、耐火材であるジルコン90質量%と、バインダとを混合したものを用いた。そして、結晶粒微細化スラリを塗布した面にスタッコ処理して乾燥し、結晶粒微細化スラリ層を形成した。スタッコには、アルミナを用いた。
次に、結晶粒微細化スラリ層を形成したロウ型面以外のロウ型面に、初層用スラリを塗布した。初層用スラリには、アルミナとバインダとを混合したものを用いた。そして、初層用スラリを塗布した面に初層スタッコ処理を行って乾燥し、初層の耐火材スラリ層を形成した。初層スタッコ処理には、アルミナを用いた。
次に、結晶粒微細化スラリ層と初層の耐火材スラリ層とに、スラリ塗布とスタッコ塗布と乾燥とを繰り返して第2層から第8層からなる後層の耐火材スラリ層を形成した。第2層用スラリには、アルミナとバインダとを混合したものを用いた。第2層のスタッコ処理には、アルミナを用いた。第3層から第8層の各層の形成に用いたスラリには、ジルコン30質量%と、シリカ70質量%と、バインダとを混合したものを使用した。また、第3層から第8層のスタッコには、ムライトを使用した。そして、第8層に、第9層用のスラリを塗布し、乾燥させて最外層となる第9層を形成した。第9層用スラリには、ジルコン30質量%と、シリカ70質量%と、バインダとを混合したものを使用した。
次に、第9層まで積層したロウ型を十分に乾燥させた後、オートクレーブに入れて加熱し、ロウ型を溶かして脱ロウ処理し、鋳型成形体を形成した。脱ロウ処理については、加熱温度が約150℃、圧力0.7MPaとした。
次に、鋳型成形体を焼成炉に入れて焼成した。焼成条件は、焼成温度1100℃、保持時間2時間とした。以上によりニッケル合金について一方向凝固精密鋳造するための鋳型を作製した。
(一方向凝固精密鋳造)
作製した鋳型を用いてニッケル合金の一方向凝固精密鋳造を行った。ニッケル合金には、MarM247−LC合金を使用した。また、一方向凝固鋳造については、上述した図4に示す精密鋳造装置を使用した。結晶粒微細化層が設けられた鋳型底面が昇降体の載置面に位置するように鋳型を昇降体に載置した後に、鋳型を加熱体内に挿入し、鋳型のキャビティにニッケル合金の溶湯を注入した。そして、昇降体を徐々に下降させて加熱体内から鋳型を引き抜くことで、ニッケル合金の溶湯を一方向に凝固させた。鋳型を加熱炉から引き抜くときの引抜速度については、200mm/hとした。
また、結晶粒微細化剤における結晶粒の微細化効果を評価するために、ニッケル合金の溶湯の初期凝固時の鋳型底面温度を1350℃から1500℃の範囲で変えて一方向凝固精密鋳造を行った。一方向凝固精密鋳造した鋳物の結晶粒径と鋳型底面温度との関係について調べるために、昇降体の載置面から15mmの位置における結晶粒の最大粒径と平均粒径とを測定した。
図9は、一方向凝固精密鋳造した鋳物の結晶粒径と、初期凝固時の鋳型底面温度との関係を示すグラフである。図9のグラフでは、横軸に鋳型底面温度を取り、縦軸に結晶粒径を取り、最大結晶粒径を黒四角形で示し、平均結晶粒径を黒三角形で示している。
鋳型底面温度が1350℃以上1450℃以下の範囲では、最大結晶粒径は約4mm/個であり、平均結晶粒径は1mm/個から2mm/個であった。また、鋳型底面温度が1450℃を超えると最大結晶粒径及び平均結晶粒径がより大きくなった。この結果から、初期凝固時の鋳型底面温度を1350℃以上1450℃以下とすることにより、一方向凝固合金の結晶粒をより微細化できることがわかった。
図10は、一方向凝固精密鋳造した鋳物の外観観察結果を示す写真であり、図10(a)は、鋳型底面温度1380℃で一方向凝固精密鋳造した鋳物の外観観察結果を示す写真であり、図10(b)は、鋳型底面温度1480℃で一方向凝固精密鋳造した鋳物の外観観察結果を示す写真である。なお、図10に示す矢印の方向は、鋳型を加熱体から引き抜くときの引抜方向を表している。
各鋳物について昇降体の載置面から100mmの位置(通常、製品となる部分)で結晶粒の数を測定したところ、鋳型底面温度1380℃で一方向凝固精密鋳造した鋳物の結晶粒は25個であり、鋳型底面温度1480℃で一方向凝固精密鋳造した鋳物の結晶粒は4個であった。このように、鋳型底面温度1380℃で一方向凝固した鋳物の結晶粒は、鋳型底面温度1480℃で一方向凝固精密鋳造した鋳物の結晶粒より微細化していた。
これらの結果から、ニッケル合金の溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型底面のみに結晶粒微細化層を設けて鋳型を鋳型底面から一方向に冷却させることによって、ニッケル合金の溶湯を一方向に凝固させて一方向凝固合金の精密鋳造が可能であることが明らかとなった。また、ニッケル合金の溶湯の初期凝固時の鋳型底面温度を1350℃以上1450℃以下とすることにより、一方向凝固合金の結晶粒をより微細化できることがわかった。
10、20 鋳型、12、28 キャビティ、14、22 鋳型本体、16 注入口、18、29 結晶粒微細化層、24 セレクタ、26 スタータ、30、40 精密鋳造装置、32、42 装置本体、34 加熱体、36 昇降体、38 金属溶湯、44 鋳型供給室、46 鋳型取出室、48 鋳型供給用搬送手段、50 鋳型取出用搬送手段、52 鋳型供給用手段、54 鋳型取出用手段。

Claims (9)

  1. 一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するための鋳型であって、
    金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型本体を備え、
    前記鋳型本体は、前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面のみに前記鋳型本体と一体で設けられ、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化層を有し、
    前記結晶粒微細化剤は、アルミン酸コバルト、酸化コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、スルフォン酸コバルト、硫酸アンモニウムコバルト、チオシアン酸コバルトまたは硝酸コバルトであることを特徴とする鋳型。
  2. 請求項1に記載の鋳型であって、
    記結晶粒微細化層は、前記鋳型本体の底面のみに設けられていることを特徴とする鋳型。
  3. 請求項1または2に記載の鋳型であって、
    前記鋳型は、前記単結晶合金を精密鋳造するためのものであり、
    前記鋳型本体は、セレクタとスタータとを有し、
    前記結晶粒微細化層は、前記スタータの底面のみに設けられていることを特徴とする鋳型。
  4. 一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するための鋳型の製造方法であって、
    金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型本体を形成するためのロウ型を成形するロウ型成形工程と、
    前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面のみに、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化スラリをコーティングして、結晶粒微細化スラリ層を形成すると共に、前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面を除いたロウ型面及び結晶粒微細化スラリ層に、耐火材を含む耐火材スラリをコーティングして、耐火材スラリ層を形成するスラリ層形成工程と、
    前記結晶粒微細化スラリ層と前記耐火材スラリ層とが形成されたロウ型を加熱して脱ロウし、鋳型成形体を形成する脱ロウ工程と、
    前記鋳型成形体を焼成し、前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面のみに結晶粒微細化層を一体で設ける焼成工程と、
    を備え、
    前記結晶粒微細化剤は、酸化コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、スルフォン酸コバルト、硫酸アンモニウムコバルト、チオシアン酸コバルトまたは硝酸コバルトであることを特徴とする鋳型の製造方法。
  5. 一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するための鋳型の製造方法であって、
    金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型本体を形成するためのロウ型を成形するロウ型成形工程と、
    前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面のみに、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化シートを接合すると共に、前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面となるロウ型面を除いたロウ型面及び前記結晶粒微細化シートに、耐火材を含む耐火材スラリをコーティングして、耐火材スラリ層を形成するスラリ層形成工程と、
    前記結晶粒微細化シートと前記耐火材スラリ層とが形成されたロウ型を加熱して脱ロウし、鋳型成形体を形成する脱ロウ工程と、
    前記鋳型成形体を焼成し、前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面のみに結晶粒微細化層を一体で設ける焼成工程と、
    を備え、
    前記結晶粒微細化剤は、酸化コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、スルフォン酸コバルト、硫酸アンモニウムコバルト、チオシアン酸コバルトまたは硝酸コバルトであることを特徴とする鋳型の製造方法。
  6. 請求項5に記載の鋳型の製造方法であって、
    前記スラリ層形成工程において、
    前記結晶粒微細化剤は、酢酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、スルフォン酸コバルト、硫酸アンモニウムコバルト、チオシアン酸コバルトまたは硝酸コバルトであり、
    前記結晶粒微細化シートは、前記結晶粒微細化剤を水に溶かした結晶粒微細化溶液を多孔質の耐火材シートに含浸させた後、乾燥させて作製されることを特徴とする鋳型の製造方法。
  7. 一方向凝固合金または単結晶合金を精密鋳造するための精密鋳造装置であって、
    真空容器で形成された装置本体と、
    前記装置本体に設けられ、金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型本体における前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面のみに前記鋳型本体と一体で設けられ、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化層を有している鋳型を収容して加熱する筒状の加熱体と、
    前記装置本体に設けられ、前記鋳型における前記結晶粒微細化層が形成された鋳型面を載置する載置面を有し、前記加熱体に対して前記鋳型を挿入しまたは引き出すために昇降可能に形成された昇降体と、
    を備え、
    前記結晶粒微細化剤は、酸化コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、スルフォン酸コバルト、硫酸アンモニウムコバルト、チオシアン酸コバルトまたは硝酸コバルトであることを特徴とする精密鋳造装置。
  8. 請求項7に記載の精密鋳造装置であって、
    前記装置本体に排気可能に設けられ、精密鋳造前の前記鋳型を供給する鋳型供給室と、
    前記装置本体に排気可能に設けられ、精密鋳造後の前記鋳型を取り出す鋳型取出室と、
    前記装置本体に設けられ、前記鋳型供給室から前記昇降体まで精密鋳造前の前記鋳型を搬送する鋳型供給用搬送手段と、
    前記装置本体に設けられ、前記昇降体から前記鋳型取出室まで精密鋳造後の前記鋳型を搬送する鋳型取出用搬送手段と、
    を備えることを特徴とする精密鋳造装置。
  9. 一方向凝固合金または単結晶合金の精密鋳造方法であって、
    金属溶湯が注入されるキャビティを有する有底の鋳型本体における前記金属溶湯の初期凝固領域に対応する鋳型面のみに前記鋳型本体と一体で設けられ、結晶粒を微細化させる結晶粒微細化剤を含む結晶粒微細化層を有している鋳型の前記キャビティに金属溶湯を注入すると共に、前記金属溶湯が注入された鋳型を加熱する金属溶湯注入工程と、
    前記金属溶湯が注入された鋳型を前記結晶粒微細化層が形成された鋳型面から一方向に冷却させて、前記キャビティ内の金属溶湯を一方向に凝固させる凝固工程と、
    を備え、
    前記結晶粒微細化剤は、アルミン酸コバルト、酸化コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、スルフォン酸コバルト、硫酸アンモニウムコバルト、チオシアン酸コバルトまたは硝酸コバルトであることを特徴とする精密鋳造方法。
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