以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
実施の形態1
実施の形態1にかかるアンテナ100について説明する。図1は、実施の形態1にかかるアンテナ100の構成を模式的に示す斜視図である。図2は、実施の形態1にかかるアンテナ100の構成を模式的に示す平面図である。図3は、実施の形態1にかかるアンテナ100の構成を模式的に示す正面図である。アンテナ100は、導電層1、誘電体層2、台部3、共振器4及び導電層5を有する。図1〜3では、アンテナ100はX方向に延伸して形成されているが、図面の簡略化のため、アンテナ100の一部のみを表示している。
導電層1は、例えばアルミなどの導電性材料で構成されるシート状の部材であり、容易に曲げることができる可撓部材である。誘電体層2は、導電層1上に形成される。誘電体層2は、例えば高発泡ポリエチレンなどの誘電体で構成されるシート状の部材であり、容易に曲げることができる可撓部材である。
台部3は、並んで配置される。図1では、台部3は、誘電体層2の主面に平行な方向であるX方向に並んで配置されている。図1では、X方向に垂直かつ誘電体層2の主面に平行なY方向と、X方向及びY方向に垂直なZ方向を併せて表示している。台部3は、Y方向に延伸している斜面31を有する。台部3は、頂部32の幅が、底部33の幅と等しい、又は底部33の幅よりも小さくなるように形成される。つまり、隣接する台部3の斜面31に挟まれるように谷部34が形成される。台部3は、例えば誘電体により構成される。この際、台部3は、中空構造としてもよい。
1つの台部3が有する2つの斜面31上には、それぞれ共振器4が形成される。共振器4は、パラレル結合伝送線路として構成される。1つの台部3が有する2つの共振器4は、Y方向に離隔して形成されることが望ましい。1つの台部3が有する2つの共振器4は、頂部32及び斜面31に形成された導電層5を介して電気的に連結される。また、隣接する2つの台部3の共振器4は、それぞれ谷部34を挟んで対向するように形成される。谷部34を挟んで対向する共振器4は、共振することで電磁的に結合される。これにより、複数の台部3の導電層5と導電層1とは、一体となって開放型伝送線路の一形態であるマイクロストリップ線路として機能することができる。本構成により、図1〜3のZ方向の近接する領域に電磁場を放射することがきる。
上述のように、アンテナ100の導電層1及び誘電体層2は、可撓部材で構成される。そのため、アンテナ100は、Y方向と平行な軸を中心として、巻き取ることが可能である。図4は、実施の形態1にかかるアンテナ100を巻き取った場合の態様を模式的に示す正面図である。図4に示すように、谷部34の下方の導電層1及び誘電体層2が屈曲し、その結果、谷部34が狭まることで、Y方向と平行な軸を中心としてアンテナ100を巻き取って収納することが可能である。よって、本構成によれば、折りたたむことが可能なアンテナを実現することができる。
また、本構成では、台部3の厚みを厚くすることで、導電層1や誘電体層2などの厚みを変えることなく、アンテナ100の機械的強度を高めることができる。したがって、本構成によれば、折りたたみ性能を損なうことなく、アンテナの機械的強度を高めることができる。
続いて、アンテナ100の挿入損失に関するシミュレーションについて説明する。図5は、アンテナ100のシミュレーションの条件を示す共振器4近傍の平面図である。このシミュレーションでは、誘電体層2及び台部3の厚みはともに1mm、誘電率は4.3とした。また、図5に示す各寸法は、W1=0.5mm、W2=22.5mm、W3=3mm、W4=8mm、W5=1.74mm、W6=3.92mm、L1=115mm、L2=88mm、L3=32mmである。
図6は、アンテナ100の挿入損失のシミュレーション結果を示すグラフである。図6では、2つの共振器間において、反射損失を示すSパラメータS11を破線で、挿入損失を示すS21を実線で表示している。図6に示すように、使用する帯域を950MHz近傍とすると、挿入損失は−0.4dB程度となり、良好な信号伝達が実現できる。
実施の形態2
実施の形態2にかかるアンテナ200について説明する。図7は、実施の形態2にかかるアンテナ200の共振器近傍の要部拡大図である。アンテナ200は、アンテナ100の共振器4を、共振器6に置換した構成を有する。アンテナ200の共振器以外の構成は、アンテナ100と同様であるので、説明を省略する。
実施の形態1にかかるアンテナ100では、共振器4はパラレル結合伝送線路共振器として構成されていた。これに対し、アンテナ200では、共振器6は、オープンリング共振器として構成される。この例では、谷部34を挟んで対向する共振器6は、リングのオープン部が谷部34側に向くように形成される。
本実施の形態で示すように、共振器には、パラレル結合伝送線路共振器だけでなく、オープンリング共振器を用いても、アンテナ100と同様に巻き取り収納が可能なアンテナを構成することが可能である。
実施の形態3
実施の形態3にかかるアンテナ300について説明する。図8は、実施の形態3にかかるアンテナ300の共振器近傍の要部拡大図である。アンテナ300は、アンテナ100の共振器4を、共振器7に置換した構成を有する。アンテナ300の共振器以外の構成は、アンテナ100と同様であるので、説明を省略する。
実施の形態1にかかるアンテナ100では、共振器4はパラレル結合伝送線路共振器として構成されていた。これに対し、アンテナ300では、共振器7は、スパイラルコイル共振器として構成される。この例では、谷部34を挟んで対向する共振器7は、スパイラルコイルの巻き方向が逆になるように形成される。
本実施の形態で示すように、共振器には、パラレル結合伝送線路共振器だけでなく、スパイラルコイル共振器共振器を用いても、アンテナ100と同様に巻き取り収納が可能なアンテナを構成することが可能である。
実施の形態4
実施の形態4にかかる物品管理システム4000について説明する。物品管理システム4000には、上述の実施の形態で説明したアンテナが組み込まれる。図9は、実施の形態4にかかる物品管理システム4000の構成を模式的に示す構成図である。実施の形態4にかかる物品管理システム4000は、アンテナ400、スペーサ402、RFIDリーダ403、RFタグ404、管理対象物品405及び整合終端抵抗Rtを有する。
アンテナ400は、実施の形態1にかかるアンテナ100と同様の構成を有する。本実施の形態では、アンテナ400が4つの台部3を有する例について説明する。台部3の頂部32に配置された導電層5は、RFタグ404を読み取るためのリーダアンテナとして機能する。RFタグ404は、例えば非導電性のスペーサ402を介して、それぞれの導電層5の上方に配置される。
RFIDリーダ403は、4つの台部3のうちの一方の端に位置する台部3の導電層5の末端に接続される。RFIDリーダ403は、導電層5に送信信号を送出すると共に、導電層5を介してRFタグ404のタグアンテナが出力する応答信号を受信する。RFIDリーダ403は、生成した送信信号を導電層5に送り、導電層5と電磁界結合されたRFタグ404のタグアンテナに当該送信信号を伝達する。一方、RFIDリーダ403は、導電層5に無線通信により伝達されるRFタグ404で生成した応答信号を受信する。なお、4つの台部3のうちの他方の端に位置する台部3の導電層5の末端には、整合終端抵抗Rtが接続される。
RFタグ404は、管理対象物品が近傍に置かれた状態で導電層5から見通せる位置であって、導電層5と電磁界結合される位置に設置される。本実施の形態では、RFタグ404として受動型のタグを用いた例について説明するが、RFタグ404としては、能動型のタグを利用することもできる。受動型タグは、導電層5からID(以下、タグ情報と称す)を問合せる信号を受信すると、タグアンテナを介して得た信号の一部によりチップ内の電源回路(不図示)を用いて自チップが動作するための電力を生成する。また、受動型タグは、受信した信号の一部をデコードして受信データを生成する。そして、受動型タグは、チップ内の記憶回路に格納されたタグ情報と受信データとを照合し、タグ情報と受信データとが一致した場合は、変調回路(不図示)を動作させて変調信号を生成し、タグアンテナを介して当該変調信号を導電層5に送信する。
管理対象物品405は、RFタグ404のタグアンテナと電磁界結合する位置に設置される。この管理対象物品405が置かれる位置を以下では管理対象物品配置領域410と称す。この管理対象物品405は、水分のような誘電率の高い材料、あるいは金属を含んでいるものが望ましいがそれに限らない。より具体的には、ペットボトル飲料、缶飲料、アルミ包装入りスナック菓子の他に、書籍などの厚い紙の束、おにぎり、パン、プラスチックパック入り惣菜、手や足の人体、さらに靴などを管理対象物品とすることができる。このような水分の多い物品等、多様な物品への対応は、UHF帯やマイクロ波帯のRFIDシステムを使用していることに起因する。13.56MHzやそれ以下の周波数帯で使用されるRFIDシステムではまず、表皮厚さが長くなるため水分への反応が極めて弱くなる。また、これらの周波数帯ではリーダとタグの間の結合に電磁誘導が使用されている。電磁誘導は磁界による結合であるため、比透磁率の際には敏感なものの、一方で比誘電率の違いには敏感ではない。従って、水の比誘電率が80と極めて高くても、電磁誘導の場合にはタグアンテナの動作は水分に敏感に反応しない。また、一般的に物質の多くは磁性材料でもない限り比透磁率は1近辺の値を取る。一方、比誘電率は1とは大きく異なる場合が多い。さらに電磁誘導だけに依存するRFIDシステムと異なり、本発明では、準静電磁界、誘導電磁界、放射電磁界の電磁界成分を使用するため、タグとリーダアンテナとの相対的な配置自由度が高くなる。例えば、電磁誘導を用いたRFIDシステムのように、リーダアンテナの発生した磁束がタグのコイル状アンテナを貫くようにアライメントする必要がないか、あるいはアライメントの要請が少なくなる。また、使用周波数帯が高いことに伴い、データレートも電磁誘導を使用するRFIDシステムの場合より高くなる。従って、UHF帯やマイクロ波帯のRFIDシステムを使用することが望ましい。なお、RFタグ404は、プラスティック板等でカバーされているが、このRFタグの表面に結露などの微量の水分が着いた場合もあるが、このような場合はタグアンテナと管理対象物品との間の結合係数等を調整することにより、微量の水分の影響を排除することも可能である。
ここで、実施の形態4にかかる物品管理システム4000の動作について説明する。物品管理システム4000では、RFタグ404のタグ情報に基づき管理対象物品の有無を検出するものである。この検出動作をするに当たり、物品管理システム4000は、まず、RFIDリーダ403から導電層5を介してタグ情報読み出しコマンドを送信信号として送出する。
続いて、RFタグ404は、導電層5を介して送信信号を受信する。そして、RFタグ404は、受信した信号の一部を用いて電力を生成し、動作を開始する。その後、RFタグ404は、受信した信号をデコードして受信した信号に含まれる受信データを再生する。RFタグ404は、この受信データと内蔵する記憶回路中に含まれるタグ情報とを参照し、タグ情報と受信データとが一致していれば、変調信号を応答信号として導電層5に送出する。
このとき、RFIDリーダ403は、送出したタグ情報読み出しコマンドに対応したRFタグ404からの応答信号の有無により管理対象物品の有無を判断する。より具体的には、RFIDリーダ403は、RFタグ404からの応答信号の信号強度が強ければ管理対象物品があると判断し、RFタグ404からの応答信号の信号強度が弱ければ管理対象物品がないと判断する。例えば、図9に示す例では、図面の最も右側に配置されたRFタグ404の上には管理対象物品がないため、このRFタグ404は、強い信号強度で応答信号を送出することが可能であり、RFIDリーダ403は、このRFタグ404の位置には管理対象物品405はないと判断する。一方、図9の他の3つのRFタグ404の上には、管理対象物品405が置かれているため、他の3つのRFタグ404が送出する応答信号の信号強度は弱くなる。そのため、RFIDリーダ403は、他の3つのRFタグ404の位置には管理対象物品405があると判断する。なお、RFIDリーダ403は、コンピュータが接続されるもの、又は、コンピュータの一部として機能するものであり、管理対象物品405の有無の判断については当該コンピュータにより行われるものとする。
ここで、上記のように応答信号の信号強度が変化するのは、管理対象物品405とRFタグ404のタグアンテナとが電磁界結合するためである。そこで、以下では、管理対象物品405、RFタグ404及び導電層5の位置関係についてさらに詳細に説明を行う。
図10は、実施の形態4にかかる物品管理システム4000の構成を模式的に示す上面図である。図10では、管理対象物品405が1つ置かれる領域を拡大した図を示した。図10に示すように、物品管理システム4000では、導電層5の上方にRFタグ404が設置される。さらに、RFタグ404の上方であって、RFタグ404が覆われる位置に管理対象物品が置かれる管理対象物品配置領域410が設定される。また、RFタグ404は、RFIDチップ411及びタグアンテナ412を有する。
図11は、実施の形態4にかかる物品管理システム4000の正面図である。図11では、図10と同様に、管理対象物品405が1つ置かれる領域を拡大した図を示した。図11に示すように、導電層5の一端と導電層1とは、整合終端抵抗Rtを介して接続される。また、導電層5の他端にはRFIDリーダ403が接続される。また、RFIDリーダ403の接続側では、導電層1は設置される。このような接続とすることで導電層5は整合終端される。
また、図11に示すように、管理対象物品405は、RFタグ404のタグアンテナ412との間の距離が第1の距離L1となる位置に配置される。RFタグ404のタグアンテナ412は、導電層5との間の距離が第2の距離L2となる位置に配置される。そして、第1の距離L1と第2の距離L2は、L1<L2となる関係に設定される。なお、図3では、管理対象物品405、タグアンテナ412、導電層5の距離の関係のみを示したが、上記距離の関係を満たすために、例えば、RFタグ404をプラスティック板等でカバーする場合に、プラスティック板の厚みを用いることが可能である。つまり、RFタグ404をプラスティック板に内蔵し、当該プラスティック板によりRFタグが組み込まれたシートを形成することで上記第1の距離L1と第2の距離L2の関係を確保することができる。なお、プラスティック板によりシートを形成する手法は、第1の距離L1と第2の距離L2との関係を確保するための一形態であり、他の手法を用いることも可能である。
図12は、実施の形態4にかかる物品管理システム4000の側面図である。図12では、図10と同様に、管理対象物品405が1つ置かれる領域を拡大した図を示した。図12に示すように、実施の形態4では、導電層5は、RFタグ404の下部の一部に設置される。また、物品管理システム4000では、側面視においても、第1の距離L1と第2の距離L2との関係はL1<L2の条件を満たすようにRFタグ404及び管理対象物品405が設置される。
ここで、上記図10〜図12を参照して、物品管理システム4000の各構成要素の関係による効果についてさらに詳細に説明する。
まず、図10に示すように、物品管理システム4000では、管理対象物品405が、RFタグ404のタグアンテナ412の上方であって、距離が第1の距離L1となる位置に配置される。さらに、RFIDリーダ403に接続される導電層5が、RFタグ404の下部であって、導電層5とタグアンテナ412との間の見通し距離が第2の距離L2だけ離して配置されている。このように、物品管理システム4000では、管理対象物品405が導電層5とRFタグ404との間に挟まれる領域以外に配置される。そのため、導電層5とRFタグ404との間の見通しが管理対象物品405により遮られることがない。また、物品管理システム4000では、導電層5とタグアンテナ412との距離を第2の距離L2とする。
上述したように、物品管理システム4000では、管理対象物品405とタグアンテナ412との間の第1の距離L1及びタグアンテナ412と導電層5の間の見通し距離である第2の距離L2を調節する。また、物品管理システム4000では、第1の距離L1及び第2の距離L2を調節することにより、管理対象物品405とタグアンテナ412との結合係数k2及びタグアンテナ412と導電層5との結合係数k1を調節する。そして、物品管理システム4000では、管理対象物品405の有無によって変化する結合係数k2に応じてタグアンテナ412と導電層5との間の信号強度を変化させ、当該信号強度の変化により管理対象物品405の有無を判断する。
そこで、第1の距離L1、第2の距離L2、結合係数k1、k2の関係及び当該設定に基づく実施の形態4にかかる物品管理システム4000の効果について以下で説明する。まず、本発明では電磁界結合を用いるがこの電磁界結合の強度を示す結合係数については、電磁界シミュレータにより比較的容易に評価可能である。また、電磁界結合の説明では、タグアンテナ412と導電層5との間の無線信号の波長をλとすると、波源(例えば、アンテナ)からの距離がλ/2π(πは円周率)より近い領域をリアクティブ近傍界(reactive near-field)、距離がλ/2πより遠く、且つ、λより近い領域を放射近傍界(radiative near-field)、さらにこれら二つの領域を合わせて近傍界(near-field region)と称す。
この近傍界では、電磁界は複雑な様相を示し、準静電磁界、誘導電磁界、放射電磁界が各々無視しえない強度比で存在し、それらの合成された電磁界のベクトルも空間的、時間的に様々に変化する。一例として波源を微小ダイポールアンテナとした場合に、このアンテナが形成する電界E[V/m]と磁界H[A/m]を球座標系(γ、θ、φ)及びフェーザー表示で示すと、式(1)〜式(4)で示すことができる。
ここで、上記式(1)〜式(4)では、微小ダイポールアンテナに蓄えられる電荷をq[C]、アンテナの長さをl[m]、波長をλ[m]、波源から観測点までの距離をγ[m]とした。また、πは円周率、εは誘電率、μは透磁率である。この式(1)〜式(4)の中で、1/γ3に比例する項が準静電磁界、1/γ2に比例する項が誘導電磁界、1/γに比例する項が放射電磁界を示している。これらの電磁界成分は、各々距離γに対する依存性が異なるため、距離γに依存してその相対強度が変化する。
続いて、図13に電界Eθにおける準静電界、誘導電界、放射電界の相対強度について波長λで規格化した距離γに関する依存性を示す表を示す。なお、図13で示した表の2行目は、国内電波法で許可されているUHF(Ultra High Frequency)帯RFIDの周波数とほぼ同じ950MHzの自由空間波長で換算した距離を示した。
図13に示した表から分かる通り、距離γが大きくなると、各々の電界強度が小さくなり、さらに各々の成分比も変化する。例えば、γ<λ/2πの領域では準静電界、誘導電界、放射電界の順に電界強度が強く、γ>λ/2πの領域では準静電界、誘導電界、放射電界の順に電界強度が弱くなる。さらに、γ>λの領域では準静電界と誘導電界の寄与は極めて小さくなり、γ>2λの領域となる遠方界ではほぼ放射電界成分のみとなる。一方で、γ<λの領域では準静電界と誘導電界の寄与が十分残っており、さらにγ<λ/2πのリアクティブ近傍界では準静電界と誘導電界が大きな寄与を占める。また、式(1)〜式(4)に見られるように放射電界と比較して、準静電磁界と誘導電磁界はθ方向成分以外にγ方向成分とφ方向成分を有しており、多様な方向の成分を有している。
一般的に、アンテナから空間中に放射されて伝搬する放射電磁界と比較して、このようにリアクティブ近傍界ではアンテナ近傍に留まる準静電磁界と誘導電磁界が支配的であり、さらに絶対的な電磁界強度も強い。放射近傍界では、一般的に、絶対的な電磁界強度は波源からの距離が長くなればなるほど弱くなる。また、準静電磁界と誘導電磁界の相対強度は弱まり、放射電磁界の相対強度が強くなる。以上の通り、近傍界では準静電磁界と誘導電磁界が存在し、これらの電磁界により、導電層5とタグアンテナ412との間の結合やタグアンテナ412と管理対象物品405との間の結合を生じる。
通常のUHF帯やマイクロ波帯を使用する受動型RFIDシステムでは、導電層5とタグアンテナ412の間の距離γはγ>λの関係を満たしており、交信に放射電磁界を使用する。その放射電磁界を効率よく生成するため、導電層5はパッチアンテナを代表とする共振型アンテナが用いられる。このような共振型アンテナをγ<λの近傍界で使用すると、共振型アンテナ中の定在波により、電磁界強度が場所により大幅に変化する。例えば定在波の頂点付近では最も振幅が大きくなり、定在波の中点では振幅は0となる。従って、このような共振型アンテナを用いた導電層5とタグアンテナ412の間の距離γがγ<λの関係を満たす場合、リーダアンテナ中の定在波の中点に近い部分ではリーダアンテナからの信号をタグアンテナが受けることができなかったり、極めて受信信号強度が弱くなったりする。即ち、不感領域ができ、使用に支障を生じる。
このようなことから、RFIDを用いた一般的な物品管理システムでは、物品が置かれる棚、管理対象物品405及びRFタグからRFIDリーダを十分に離して設置することで、棚より十分小さいリーダアンテナから電波が照射され、カバーエリアを広く取る形態とならざるを得ない。従って、RFIDリーダとRFタグの間に広い空間を必要とする。また、棚の材質によっては、特に金属材質の棚などの場合、マルチパス現象を生じ、電波の干渉によってタグの読取が不安定になり、タグ情報が読めないことがある。また、リーダアンテナと物品を配置する場所の間に人やモノが入った場合、物品があるのと同様にタグが読めなくなり、物品が無いにもかかわらず、あると誤検知してしまうという問題を生じる。
一方、γ<λの近傍界、さらに望ましくはγ<λ/2πのリアクティブ近傍界に存在する準静電磁界と誘導電磁界を通してアンテナ間が電磁界結合して結合回路を形成することもできる。この場合、その条件通りRFIDリーダとRFタグの間に広い空間を必要としない。しかしながら、単純に導電層5に共振型アンテナを用いると、不感領域ができ、使用に支障を生じる。また、定在波アンテナは一般的にその大きさがλ程度であり、タグと近接して用いると、カバーエリアが極端に狭くなってしまう。
そこで、実施の形態4にかかる物品管理システム4000では、RFIDリーダ403に接続される導電層5が整合終端され、導電層5とRFタグ404のタグアンテナ412とが電磁界結合されるようにRFタグ404を配置する。そして、物品管理システム4000では、RFIDリーダ403の導電層5として電波の放射の少ない開放形伝送線路を用いることで、開放形伝送線路周囲に生じる準静電磁界と誘導電磁界を通して、導電層5とタグアンテナ412とを電磁界結合させて結合回路を形成する。即ち、開放形伝送線路を近傍界で動作する進行波型アンテナとして用いている。この構成により、導電層5とRFタグ404との間に広い空間を必要としなくなる。また、導電層5とタグアンテナ412との間の交信が結合回路を通じて近距離で行われるため、マルチパス現象の発生と、導電層5と管理対象物品405を配置する場所との間に人やモノが入るといったことによる誤検知を抑制することができる。さらに、導電層5として整合終端された開放形伝送線路を用いるため、アンテナ中を伝搬する電磁波の主たる成分は定在波を生じず、進行波として整合終端まで伝搬する。ここで、定在波を生じないとは、厳密には十分定在波が小さいことを意味しており、通常、定在波比が2以下、望ましくは1.2以下の値であることを意味する。
伝送線路の終端が十分な精度で整合している場合、或いは、伝送線路中を伝わる電磁波が終端付近で十分減衰している場合に、伝送線路内に大きな定在波が生じずに進行波が主成分となる。そして、このような伝送線路における電磁界分布を利用することにより進行波アンテナを形成することができる。さらに、この線路周辺の空間に形成される電磁界は放射電磁界が相対的に少なく、静電磁界と誘導電磁界が主たる成分となっている。これら、静電磁界と誘導電磁界の電磁界強度は、放射電磁界の強度より強く、リーダが同一の出力で動作していても、RFタグ404が得られる電磁界強度は強くなる。換言すれば、タグの動作を保証しながらも、周囲に放射電磁界をまきちらさない環境を形成できる。
通常用いられているパッチアンテナなどの定在波型のアンテナでは、アンテナ内部の定在波に応じてアンテナ近傍の電磁界分布が極めて不均一になっており、不感部分を避けるため、管理対象物品405を管理できる領域が限定される。これに対して本実施の形態に記載する開放形伝送線路からなる進行波型アンテナの場合、アンテナ近傍でも、電磁界分布に節のような変化しない部分が無く、至る所常に変化している。従って、近傍界においてもアンテナに沿った定在波に伴う電磁界の不均一がないため、RFタグ404のタグ情報を読み取れないエリアができない。即ち、導電層5とタグアンテナ412の配置の自由度が向上する。
また、物品管理システム4000では、この進行波を信号として、導電層5とタグアンテナ412との間の電磁界結合を通じて交信するため、共振型アンテナと異なり、不感領域ができず、使用に支障を生じることがない。従って、物品管理システム4000は、開放形伝送線路周囲に生じる準静電磁界と誘導電磁界の強度がRFタグ404を動作させるに十分大きい範囲内で伝送線路を波長に無関係に延伸することにより、カバーエリアを広く取ることができる。即ち、実施の形態4にかかる物品管理システム4000では上記の開放形伝送線路を使用することで、電力の放射損を抑制し、カバーエリアの拡大が容易になる。
なお、ここでいう開放形伝送線路は、基本的に放射を抑制して線路長手方向に電磁波を伝送することを目的とした伝送線路であって、開放形のものを指す。例としては、平衡二線型伝送線路やそれに類似の伝送線路、マイクロストリップライン、コプレーナライン、スロットラインなどの伝送線路とそれらの伝送線路の変形であるグラウンデッドコプレーナ線路やトリプレート線路等が挙げられる。また、メッシュ状の導体部とシート状の導体部とに挟まれる狭間領域とメッシュ状の導体部側外側の浸出領域とにおいて電磁場を変化させて信号を伝達する面状に広がるアンテナも条件によっては利用することが可能である。この面状に広がるアンテナは、定在波が混在し、不完全ながら進行波アンテナとしても動作するものであり、定在波により生じる電磁界分布の不均一を無視できれば使用可能である。一方で伝送線路周囲をシールドしている同軸ケーブルや導波管など伝送線路周囲にこのような電磁界を生じない遮蔽型伝送線路は、使用できない。
また、対向する導電性シート体に挟まれる狭間領域に電磁場を存在させ、2つの導電性シート体の間の電圧を変化させて当該電磁場を変化させたり、当該電磁場の変化によって導電性シート体の間の電圧を変化させたりして、電磁場を所望の方向に進行させる電磁波伝達シートがある。さらに広い意味では、この電磁波伝達シートもシート長手方向に見れば、本発明の開放形伝送線路の一種とみなせる場合もある。但し、電磁波伝達シートは、シート内の定在波により、透過係数にふらつきが生じるため、定在波がかなり大きく、本発明の実施に必ずしも最適とは言えない。また、電磁波伝達シートの場合、導波管上面が波長より十分細かい金属メッシュとなり、エバネッセント波が上面より漏洩しているとみなすことができる。このような一般に波長の1/10未満の間隔、幅、長さで電磁界が漏洩するスロットが複数設けられているような伝送線路は実施の形態4にかかる物品管理システム4000の開放形伝送線路の一種とみなすことができる。
一方で、開放形伝送線路から放射させることを意図してクランク形状を設計したり、あるいは高次モードを積極的に利用することにより一定の放射電磁界強度を得る、いわゆるクランクラインアンテナ、メアンダラインアンテナ、漏洩同軸ケーブル等を用いて遠方界での電磁放射を目的とした進行波アンテナと、実施の形態1にかかる物品管理システム4000の開放形伝送線路は異なる。これらは波長程度のサイズ、一般的には波長の1/10以上のサイズで周期的に設けられるクランク形状やスロットから優先的に放射が起こるため、先に述べた共振型アンテナ同様、電磁界の強度が場所により大幅に変化する。従って、近傍界での使用ではタグ情報の読取が不安定になったり、場所によりタグが読めないことがあるため、使用に支障を生じる。さらに、UHF帯RFIDシステムにおいては、世界各国で割り当て周波数が異なっており、概ね860〜960MHzの帯域に分布している。これは比帯域にして約10%と広い幅があり、共振型アンテナの共振点の設計やクランク、メアンダ、スロットの周期に重大な変更を要求する。一方で実施の形態4にかかる物品管理システム4000では、もともと極めて帯域の広い開放形伝送線路を使用するため、特段の変更無しに同一のアンテナを導電層5として使用できる。
また、実施の形態4にかかる物品管理システム4000によれば、管理対象物品405とRFタグ404のタグアンテナ412とが電磁界結合するように、RFタグ404と離間して管理対象物品405を置く管理対象物品配置領域410が設けられる。従って、管理対象物品405がある場合には管理対象物品405とタグアンテナ412が結合回路を形成するため、管理対象物品405が無い場合と比較してタグアンテナ412の共振周波数が変化したり、タグアンテナ412の給電点インピーダンスが変化する。タグアンテナ412は、自由空間において交信に使用する信号の周波数で共振し、給電点インピーダンスも調整されていて、受信感度が最大となるように作成されているため、上記の変化は受信感度を下げ、さらにRFIDリーダ403に反射信号を送る際のタグアンテナ412の動作にも悪影響を与える。その結果、交信に使用する信号に対する受電感度が低下する。また、RFタグ404が反射する信号の送信出力も低下する。従って、RFタグ404はRFIDリーダ403からの信号を受電できない、または信号の受電強度が低く、タグの動作電力を確保できない、あるいはタグが十分な強度の反射電磁界を生成できなくなる。その結果、RFIDリーダ403はRFタグ404のタグ情報を読めなくなる。あるいはRFIDリーダ403に届く反射電磁界の強度や位相はタグの共振周波数変化などに伴い大きく変化する。即ち、管理対象物品405が管理対象物品配置領域410にある場合には、タグ情報が読めなくなる、あるいは管理対象物品405がない場合と比較してRFタグ404からの反射電磁界の強度や位相が大きく変化するため、RFIDリーダ403は管理対象物品405があることを検出できる。即ち、管理対象物品405の有無によるタグアンテナ412の動作特性の変化が生じた結果、RFIDリーダ403はRFタグ404からの反射信号の強度や位相変化を検出することができ、その検出結果から管理対象物品の有無を検出することができる。
このように、実施の形態4にかかる物品管理システム4000は、管理対象物品405の有無の検出にRFタグ404とRFIDリーダ403の見通しを管理対象物品405がさえぎることは必ずしも必要なく、管理対象物品405はタグアンテナ412と電磁界結合するように、タグアンテナ412(或いはRFタグ404)と離間して管理対象物品405を置く場所が設けられていればよいため、必ずしも管理する物品の配置はRFIDリーダ403とRFタグ404の間に限定されず、自由な配置が可能となる。
また、実施の形態4にかかる物品管理システム4000は、単に給電されているタグアンテナ412の近傍に物品が配置されたことを、そのアンテナの動作特性変化から見るのではなく、タグアンテナ412の動作特性の変化をRFIDリーダ403におけるタグ情報の読み出し結果の可否に基づき判断する。これにより、導電層5とRFタグ404の相対位置の自由度が高く設定することができるため、RFタグ404を介在させることにより導電層5と管理対象物品405を配置する場所の相対位置の自由度を向上させることができる。さらに、タグアンテナ412が管理対象物品405を配置する場所に形成する電磁界は、放射電磁界以外に準静電磁界や誘導電磁界の成分を含む。従って、電磁界成分は通常の遠方界の放射電磁界成分と比較して、様々な方向に広がっている。従って、実施の形態4にかかる物品管理システム4000は、管理する物品とタグの相対位置の自由度を向上させることができる。
また、実施の形態4にかかる物品管理システム4000では、RFIDシステムをベースとしており、RFタグ404が固有のID(タグ情報)を持っており、そのタグ情報を元に多元接続が可能である。従って、RFタグ404のタグ情報と管理対象物品405を配置する場所とをひも付けておけば、読めないRFタグ404のタグ情報から、管理対象物品405の有る場所を特定できる。一方で、管理対象物品405がない場合、RFタグ404はRFIDリーダ403からの信号に応答し、RFIDリーダ403はRFタグ404のタグ情報を読み取ることができる。従って、管理対象物品405がない場合には、通常の反射電磁界の強度でRFタグ404のタグ情報が読めるため、管理対象物品405がないことを検出できる。さらに読めたRFタグ404のタグ情報から、管理対象物品405の無い場所を特定できる。また、複数の管理対象物品405を管理する場合にも、管理対象物品405を配置する場所にひも付けたタグ情報が各々異なることにより、場所を特定して物品管理を行うことができる。以上の通り管理対象物品405の有無を検出できるため、実施の形態4にかかる物品管理システム4000は、RFタグ404を管理する物品に貼付する必要なく、管理対象物品405の有無を管理できる。
なお、実施の形態4にかかる物品管理システム4000では、管理対象物品405はRFタグ404のタグアンテナ412と電磁界結合するように、RFタグ404と離間して管理対象物品405を置く場所が設けられていればよいため、RFタグ404は管理対象物品405に貼付されず、RFタグ404は繰り返し使用できるため、物品一品当たりのタグコストは、実質的にタグの使用回数で除した値となる。即ち、RFタグ404のコストが高いという問題は、十分な使用回数を重ねることで解消できることは言うまでもない。
また、実施の形態4にかかる物品管理システム4000では、RFタグ404は管理対象物品405に貼付されないため、管理対象物品405に貼付されたRFタグ404を不正に読み取られることによるプライバシーの侵害や情報セキュリティ上の問題を生じない。即ち、実施の形態4にかかる物品管理システム4000は、第三者によるタグ情報の不正読み取りの問題を生じない。
また、実施の形態4にかかる物品管理システム4000は、RFIDリーダ403とRFタグ404が交信に使用する信号の波長をλとした場合、管理対象物品405とタグアンテナ412との間の第1の距離L1がL1≦λの関係を満たすように管理対象物品405を置く管理対象物品配置領域410が設けられる。また、実施の形態4にかかる物品管理システム4000は、RFIDリーダ403の導電層5とRFタグ404のタグアンテナ412との間の見通し距離である第2の距離L2がL2≦λの関係を満たす。なお、実施の形態4にかかる物品管理システム4000における距離とは、電波伝搬における距離であり、ほぼ幾何学的な最短距離に一致する。
管理対象物品405を配置する管理対象物品配置領域410とRFタグ404のタグアンテナ412との間の距離L1がL1≦λの関係を満たしていれば、RFタグ404から見て物品を配置する場所は近傍界の範囲内になる。従って、準静電界と誘導電界の寄与が十分あり、管理対象物品405が水分のような誘電率の高い材料、あるいは金属を具備する場合であって、管理対象物品配置領域410に管理対象物品405がある場合には、タグアンテナ412と管理対象物品405は準静電磁界や誘導電磁界を通して電磁界結合することができる。なお、管理対象物品405として、人体も多量の水分を含んでいるため、検出可能であり、人の動線管理などにも使用できる。
第1の距離L1をL1≦λとなる値に設定することで、タグアンテナ412の近傍界内では準静電磁界と誘導電磁界の成分が無視しえない強度で存在し、これら電磁界の成分はタグアンテナ412と管理対象物品405との間に相互インダクタンスやキャパシタンスなどを介した電磁界結合を生じる。従って、管理対象物品405の有無によりタグアンテナ412の回路定数が変化し、タグアンテナ412の動作特性が変化する。また、管理対象物品405の有無によるさらに分かりやすい変化として、タグアンテナ412の共振周波数が変化する。システムコスト抑制のために、通常市販されているRFタグをRFタグ404として使用すると、タグアンテナ412はダイポールアンテナを基本とする定在波アンテナである。このようなRFタグ404では、タグアンテナ412の共振周波数を無線通信の周波数に合わせて設定することで高感度化を実現する。このようにタグアンテナ412の共振周波数が設定した周波数で共振する状態が管理対象物品405がない状態に相当する。
次に、管理対象物品405がRFタグ404上に置かれた場合、タグアンテナ412は管理対象物品405と結合するために共振周波数は概ね低下する。従って、無線通信周波数におけるタグアンテナ412の感度は大幅に低下する。例えば、受信感度低下によりRFIDチップ411の動作電力を賄えない場合、RFタグ404はRFIDリーダ403の問い合わせに応答しない。あるいは、動作電力を賄えた場合にも、タグアンテナ412は、RFIDチップ411で生成した変調信号による、十分な強度の空間の電磁界変化を生じさせることができない。
その結果、管理対象物品405がある場合、RFIDリーダ403からの問い合わせに対してRFタグ404は応答しなくなる、或いは、管理対象物品405がない場合と比較してRFタグ404からの反射電磁界の強度が大きく変化する。この反射電磁界の強度変化をRFIDリーダ403で検出することで管理対象物品405がないことを判断できる。この判断の処理は、例えばコンピュータに行わせることができる。以上のように、実施の形態4にかかる物品管理システム4000は、RFタグ404を管理対象物品405に貼り付けることなく、管理対象物品405の有無を検出し、管理対象物品405の有無を管理することができる。
また、実施の形態4にかかる物品管理システム4000は、管理対象物品405の有無によるRFタグ404の応答の変化を生じるためには、RFタグ404と管理対象物品405との間の第1の距離L1がL1≦λの関係を満足すればよく、RFタグ404と導電層5の見通しを管理対象物品405により遮る必要はない。即ち、管理対象物品405の配置はRFIDリーダ403のタグアンテナ412とRFタグ404の間に限定されず、配置の自由度が向上する。例えば商品陳列棚上の商品の有無を検知する場合、導電層5とRFタグ404を棚板に組み込むことができ、アンテナが隠れることにより、美観上も極めて優れる。
なお、ここでは主としてタグアンテナ412の共振周波数が無線通信周波数とずれることによる、信号強度の変化を検出する方式について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。共振周波数がずれるならば、リーダが法律上許されている範囲内で無線通信周波数を掃引し、共振周波数のずれを検知することにより、物品の有無を検知してもよい。また、共振周波数前後では位相が大きく変化する。従って、位相変化を観察することによっても物品の有無を検知できることは言うまでもない。
また、上記第1の距離L1と同様に、タグアンテナ412と導電層5との間の見通し距離L2がL2≦λの関係を満たしていれば、導電層5とタグアンテナ412は近傍界の範囲内になる。ここで、見通し距離l2L2は、導電層5中で特に強い波源となるストリップ導体とタグアンテナ412の間の距離を意味する。見通し距離L2をλ以下とすることで、準静電界と誘導電界の寄与が十分あり、導電層5とタグアンテナ412とは電磁界結合することができる。特に実施の形態1にかかる物品管理システム4000では、RFタグ404からの反射電磁界の強度という、アナログ量により物品の有無を判定するため、電波干渉による反射電磁界強度の変化は誤検出を招きやすい。しかし、この構成により、実施の形態1にかかる物品管理システム4000では、導電層5とタグアンテナ412との間の無線通信は直接波が中心となり、マルチパス現象に伴う電波干渉が起こりにくい。従って、誤検知が抑制できる。また、RFIDリーダ403とRFタグ404の各々のアンテナが形成する電磁界は、放射電磁界以外に準静電磁界や誘導電磁界の成分を含む。従って、電磁界成分は通常の遠方界の放射電磁界成分のみの場合と比較して、様々な方向に広がっている。従って、実施の形態1にかかる物品管理システム4000では、導電層5とRFタグ404の相対位置の自由度を向上させることができる。
また、実施の形態1にかかる物品管理システムでは、RFタグ404からの反射電磁界の強度や位相変化、タグアンテナ412の共振周波数変化といった、アナログ量により物品の有無を判定するため、周囲環境に伴う電波干渉は誤検出を招く。しかしながら、実施の形態1にかかる物品管理システム4000によれば、L2≦λの関係を満たすことにより、導電層5とタグアンテナ412との間の無線通信は直接波が中心となり、周囲環境を反映したマルチパス現象に伴う電波干渉が起こりにくい。従って、誤検知が抑制できる。特に棚上の商品の有無を管理する場合に棚が金属であったり、金属の冷蔵ケースであったりする場合も多くあるが、このような環境においても安定してこのシステムを動作できる。
さらに、実施の形態1にかかる物品管理システム4000では、L2≦λの関係を満たすことにより、導電層5とRFタグ404との間の見通し距離L2は、RFID規格の周波数の一つであるUHF帯では約0.3m以下、2.4GHz帯では約0.12m以下となる。且つ、管理対象物品配置領域410とRFタグ404との間の距離L1もL1≦λの関係を満たすため、同じくRFID規格の周波数の一つであるUHF帯では約0.3m以下、2.4GHz帯では約0.12m以下となる。従って、導電層5と管理対象物品配置領域410の間の間隔もこのオーダーとなり、狭くなる。従って、実施の形態1にかかる物品管理システム4000を用いることで、管理対象物品405とRFタグ404或いは導電層5との間隔を狭くすることにより、管理対象物品405と異なる物や人が入ったりすることを抑制でき、誤検知を抑制できる。
また、実施の形態1にかかる物品管理システム4000は、円周率をπとした場合、第1の距離L1がL1≦λ/2πの関係を満たす。管理対象物品405がタグアンテナ412の周波数特性に影響を与える際、第1の距離L1がL1≦λ/2πの関係を満たすリアクティブ近傍界の範囲内に位置する場合には、L1>λ/2πの放射近傍界の場合と比較してタグアンテナ412が形成する電磁界の強度は強くなる。さらにアンテナ近傍に留まる準静電磁界と誘導電磁界の寄与が相対的に大きくなり、放射電磁界の寄与は小さくなる。従って、実施の形態1にかかる物品管理システム4000では、管理対象物品405とタグアンテナ412の結合が強くなる。その結果、管理対象物品405の有無によるタグアンテナ412の動作特性への影響が大きくなる。従って、実施の形態1にかかる物品管理システム4000は、RFタグ404からRFIDリーダ403へ送信される反射電磁界の変化も大きくなり、外乱やノイズに強い物品管理システムとなり、誤検知を抑制できる。
また、実施の形態1にかかる物品管理システム4000は、見通し距離L2がL2≦λ/2πの関係を満たす。このように、見通し距離L2がL2≦λ/2πの関係を満たすことで、実施の形態1にかかる物品管理システム4000は、見通し距離L2がL2>λ/2πの場合と比較してアンテナ近傍に留まる準静電磁界と誘導電磁界の寄与が相対的に大きくなり、導電層5とタグアンテナ412との結合が強くなる。従って、実施の形態1にかかる物品管理システム4000では、RFIDリーダ403とRFタグ404の間の交信も外乱やノイズを受けにくくなる。これにより、実施の形態1にかかる物品管理システム4000は、外乱やノイズを受けにくい物品管理システムを実現することができる。また、準静電磁界と誘導電磁界、放射電磁界の電磁界成分が十分な強度で混在し、かつベクトルの方向も時間的に様々に変化するため、実施の形態1にかかる物品管理システム4000は、導電層5とタグアンテナ412の相対的な向きの自由度を向上させることができる。
さらに実施の形態1にかかる物品管理システム4000では、L2≦λ/2πの関係を満たすことにより、導電層5とRFタグ404との間の見通し距離は、RFID規格の周波数の一つであるUHF帯では約0.05m以下、2.4GHz帯では約0.02m以下となる。従って、実施の形態1にかかる物品管理システム4000によれば、導電層5とRFタグ404の間に広い空間を必要としない物品管理システムが実現できる。例えば、商品棚に導電層5、RFタグ404及び管理する物品を納めることが可能となる。また、間隔が狭まることにより、さらに人やモノが間に入ったりすることを抑制でき、見通しを遮ることによる誤検知を抑制できる。
一方、通常、よく知られる、商品棚上の商品にRFタグを貼付して管理する場合には、RFタグの貼付位置はタグを貼付する商品に応じて変化する。従って、上記のL2≦λ/2πの関係を満たすことは商品の種別を限定したり、RFタグの貼付位置を限定することになり、好ましくない。そのため、RFタグを管理対象物品に貼付して管理する場合には、少々距離が離れてもリーダアンテナとRFタグが交信できるように、遠方界まで交信できる放射電磁界を用いたアンテナを使用する必要がある。従って、基本的に放射を抑制して線路長手方向に電磁波を伝送することを目的とした開放形伝送線路の使用には適さず、通常用いられるような共振型アンテナや漏洩同軸ケーブルが使用される。しかしながら、このような高効率に放射電磁界を生じるリーダアンテナを使用すると、放射電磁界は距離に対して1/γでしか強度が減衰しないため、読取領域が広がってしまう。これにより、隣接する他の棚上の商品に貼付されているRFタグも読み取ってしまうなど、商品管理上の不具合を生じる。
しかし、実施の形態1にかかる物品管理システム4000によれば、RFタグ404は商品に貼付しないため、例えば商品棚底面に導電層5を敷設し、その上に結合係数を調整して、RFタグ404をL2≦λ/2πの関係を満たして配置し、さらにその上に管理対象の商品を配置することは容易である。従って、実施の形態1にかかる物品管理システム4000では基本的に放射を抑制して線路長手方向に電磁波を伝送することを目的とした開放形伝送線路を使用できる。このように1/γでしか強度が減衰しない放射を抑制し、1/γ3で減衰する準静電磁界や1/γ2で減衰する誘導電磁界を主たる電磁界成分として用いる導電層5を使用することにより、商品棚上の商品の有無を管理する場合に、一つの導電層5でRFタグ404を読み商品管理を行う領域を限定することが容易になり、隣接する他の棚上のRFタグ404を読んでしまうと言った問題を生じにくい。なお、ここでは商品棚上の商品管理の例で説明したが、他の棚や床置きの物品を管理する場合であっても、同様に一つの導電層5でRFタグ404を読む領域を限定し、物品管理する領域を限定することが容易であることは言うまでもない。
また、実施の形態1にかかる物品管理システム4000は、第1の距離L1と第2の距離L2がL2>L1の関係を満たす。電磁界結合の強さはアンテナや共振器の構造、アンテナ間の媒質の特性によっても変化するが、距離にも大きく依存する。実施の形態1にかかる物品管理システム4000によれば、L2>L1とすることで、管理対象物品405を配置する管理対象物品配置領域410とタグアンテナ412との間の結合係数k2を、導電層5とタグアンテナ412との間の結合係数k1よりも大きくすることができる。つまり、L2>L1の関係を確保することで、タグアンテナ412と導電層5との間の交信の維持よりも、物品の有無によるタグアンテナ412の周波特性変化による反射波強度の変化が大きくなる。即ち、実施の形態1にかかる物品管理システム4000は、管理対象物品405の有無を確実に捉えることができるため、誤検知を抑制できる。
また、実施の形態1にかかる物品管理システム4000は、導電層5とタグアンテナ412との結合係数k1が10−5以上の値に設定される。現行のUHF帯RFタグの動作限界を与える受電感度はほぼ−20dBmである。一方、高出力版UHF帯RFIDリーダの出力は30dBmである。従って、結合係数k1が10−5以上の値であれば、UHF帯RFタグが動作する電力を給電できる。
また、実施の形態1にかかる物品管理システム4000は、導電層5とタグアンテナ412の結合係数k1が10−2以下の値に設定される。タグアンテナ412をダイポール共振器とみた場合、導電層5(例えば、開放形伝送線路)とタグアンテナ412とが電磁界結合することは、開放形伝送線路と共振器が結合していると回路的に解釈できる。従って、結合係数が強すぎる場合、開放形伝送線路の動作に大きく影響を与え、その結果結合共振器系として他のRFタグ404の動作にも影響を与えることになる。開放形伝送線路に複数の共振器が並列に結合する状況は、帯域阻止フィルタの回路として考えられる。その場合、UHF帯RFタグのタグアンテナは常温で銅やアルミを用いると、無負荷Q値が概ね100以下であるため、比帯域を決める結合係数k1が10−2以下の値であれば、ほとんど開放形伝送線路の動作に影響を与えなくなる。従って、結合係数k1を10−2以下の値とすることにより、タグアンテナ412の結合が開放形伝送線路に影響を与えることを抑制でき、さらに開放形伝送線路に並列に結合するRFIDリーダ403の間の相互に与える影響も抑制できる。
また、実施の形態1にかかる物品管理システム4000は、導電層5とタグアンテナ412の結合係数k1と、管理対象物品配置領域410に管理対象物品405がある場合における管理対象物品405とタグアンテナ412の結合係数k2とが、k1<k2の関係を満たす。本発明によれば、k1<k2、即ち、管理対象物品配置領域410とタグアンテナ412との間の結合係数k2を、導電層5とタグアンテナ412との間の結合係数k1よりも大きくすることにより、導電層5とタグアンテナ412との間の交信の維持よりも、物品の有無によるタグアンテナ412の周波特性変化による反射信号強度の変化が大きくなる。即ち、実施の形態1にかかる物品管理システム4000では、管理対象物品405の有無を確実に捉えることができるため、誤検知を抑制できる。
なお、上記実施の形態1では、導電層5、RFタグ404及び管理対象物品405の配置関係について具体的に説明したが、これら構成要素の相対位置や向きは図2に示した具体的な例に限定されるものでははい。
実施の形態5
実施の形態5にかかる物品管理システム5000について説明する。物品管理システム5000は、実施の形態4にかかる物品管理システム4000の変形例であり、スペーサ402を有せず、RFIDタグ404の配置が異なる。物品管理システム5000のその他の構成は物品管理システム4000と同様である。
図14は、実施の形態5にかかる物品管理システム5000の構成を模式的に示す上面図である。図14では、管理対象物品405が1つ置かれる領域を拡大した図を示した。図14に示すように、物品管理システム5000では、導電層5の側方に、導電層5と離隔してRFタグ404が設置される。さらに、RFタグ404の上方であって、RFタグ404が覆われる位置に管理対象物品が置かれる管理対象物品配置領域410が設定される。
以上のように、導電層5の側方に、導電層5と離隔してRFタグ404が設置されることで、スペーサ402がなくとも、導電層5とRFタグ404との距離を、一定(例えば、L2)に保つことができる。その結果、物品管理システム5000は、物品管理システム4000と同様に、管理対象物品405の有無を検出することができる。
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態では、アンテナに設けられる開放型伝送線路をマイクロストリップラインとして説明したが、これは例示に過ぎない。例えば、導電層1を設けずに、導電層5をコプレーナ線路又はスロット線路として形成してもよい。
また、図4では、台部3が内側を向くようにアンテナを巻き取る例について示したが、巻き取り方はこれに限らない。すなわち、上述の実施の形態にかかるアンテナを、台部3が外側を向くように巻き取ってもよい。
アンテナ200の共振器6はオープンリング共振器のオープン部の位置は上述の例に限られず、適宜変更することが可能である。
アンテナ300の共振器7はスパイラルコイル共振器の配置は上述の例に限られず、適宜変更することが可能である。
実施の形態4及び5にかかる物品管理システムに、アンテナ100以外にも、アンテナ200及び300をはじめとする上述の実施の形態にかかる他のアンテナを適用することができるのは勿論である。