急性心筋梗塞(“AMI”)は先進国における死亡の主因であり、世界中の死亡の13%を占めている。“心臓発作”とも呼ばれ、AMIは、冠動脈または冠血管が閉塞状態になり、結果として心筋組織への血液の供給の喪失がもたらされた際に起こる心疾患の1タイプである。もはや(灌流下で)十分な血液を受け取れない心筋組織は急速に死に、不十分に機能する、または機能しない線維性瘢痕組織で置き換えられ、それが拡張して機能する心筋組織の喪失の増大をもたらす可能性があり、それが今度は結果として機能不全の心臓をもたらし得る。米国では毎年50万人より多くの人々が最初のAMIを経験し、心筋梗塞を患う20万人を超える人々が病院に着く前に死亡している。
心臓の細胞性および非細胞性構成要素の間の複雑な関係が、適切な心臓の発生、恒常性、およびAMIのような病的傷害後の回復を駆動している。細胞性筋細胞、線維芽細胞、および内皮細胞は、細胞間情報伝達および心機能全体に寄与する特定の細胞外マトリックス因子を差次的に発現し、それに応答する。細胞外マトリックス(“ECM”)は、恒常性および発生プロセスの間の機械的、電気的、および化学的シグナルを促進する。これらのシグナルは細胞活動、例えば細胞の増殖、移動、接着、および遺伝子発現における変化を調節している。様々な生理学的な心臓の状態の間に、異なる細胞およびECM発現変化が起こる。Bowers et al., J. Molec. Cell. Cardiol., 48: 474-482 (2010)を参照。例えば、心筋梗塞の間に筋細胞はアポトーシスを経て、線維芽細胞は激しい増殖を経て、血管密度が減少し、コラーゲンI、コラーゲンIII、コラーゲンIV、フィブロネクチン、およびペリオスチンの増大した発現が線維症の増進および心機能の減少をもたらす。これらのプロセスは左心室の機能に有害な作用を有し、従ってそのような有害な作用を抑制する、または逆転させるための抗線維症剤の使用に関する療法的基礎を形成する。例えば、Sun et al., Cardiovasc. Res., 46: 250-256 (2000); Jugdutt, Circulation, 108: 1395-1403 (2003); Lopez et al., Am. J. Physiol. Heart. Circ. Physiol., 299: H1-H9 (2010)を参照。
AMIに関する処置は、典型的には冠血管の閉塞後迅速に実施された場合のみ有効である。積極的な血栓溶解療法には、血栓(血餅)を溶解する薬物または初回血管形成術およびステントが含まれる。長期に渡る梗塞後の処置には、アンギオテンシン変換酵素(“ACE”)阻害剤、ベータ遮断薬、利尿剤、およびカルシウムチャンネル拮抗薬が含まれ、それは大動脈圧を低減し、それによりそうでなければ梗塞の大きさを拡張してより多くの機能しない瘢痕組織をもたらし得る左心室(LV)の心室リモデリングを減少させることができる。開心手術法には、閉塞した冠血管を修復する、または置き換えるための冠動脈バイパス手術および心組織の機能しない梗塞領域を修復する、縮小させる、または除去するための方法が含まれる。
骨形成タンパク質−1(“BMP−1”、“BMP1”)は最初に高度に精製されたBMPウシ骨抽出物から単離され、最初に皮下(異所性)骨形成アッセイにおいてインビボで軟骨の形成を誘導することが報告された(Wozney et al., Science, 242: 1528-1534 (1988))。しかし、BMP−1(SEQ ID NO:1)は成長因子のTGFβスーパーファミリーのメンバーである他のBMPと有意なアミノ酸配列の相同性を共有しておらず、BMP−1は他のBMPにおいて見付かっている特徴的なシグナルペプチド、プロドメイン、カルボキシ末端(成熟ドメイン)、またはシステインノットも示さない。BMP−1がTGF−βファミリー内にある誤った状態は、最初の骨形成に関するバイオアッセイにおける不備の結果もたらされたものであり(Wozney et al., (1988))、ここでそのバイオアッセイにおいて観察された軟骨は新しく形成された組織であると誤認された不溶性の骨マトリックスに混入した古い成長板の軟骨であったようである(Reddi, Science, 271: 463 (1996)参照)。後で示すように、BMP−1は明らかに標準的な異所性骨形成アッセイにおいて軟骨または骨の形成を誘導しない。例えば、国際特許公開第2008/011193 A2号を参照。
実際、BMP−1はプロコラーゲンI、II、およびIIIのカルボキシプロドメインを切断して主要な線維性コラーゲンI、II、およびIIIの成熟単量体を生成する亜鉛メタロプロテイナーゼであるプロコラーゲンC−プロテイナーゼと同一であることが示され(Kessler et al., Science, 271: 360-362 (1996); Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93: 5127-5130 (1996));これは細胞外マトリックス(ECM)内の不溶性コラーゲンの適切な組み立ておよび様々な器官の疾患と関係して見付かるような線維性瘢痕組織の形成に必須である段階である(Turtle et al., Expert Opin. Ther. Patents, 14(8): 1185-1197 (2004))。プロコラーゲンの切断におけるその役割に加えて、BMP−1はプロリジルオキシダーゼ(Panchenko et al., J. Biol. Chem., 271: 7113-7119 (1996))、プロビグリカン(Scott et al., J. Biol. Chem., 275: 30504-30511 (2000))、およびプロラミニン−5(Amano et al., J. Biol. Chem., 275: 22728-22735 (2000))が含まれる他のECM高分子を切断する。BMP−1はまた、IGF1をその結合タンパク質から、そして他の成長因子をそれらの潜在型複合体(latent complexes)から遊離させる(Muir and Greenspan, J. Biol. Chem., 286(49): 41905-41911 (2011))。BMP−1タンパク質のドメイン構造は、N末端のプロドメイン、続いて数多くのタンパク質間相互作用に関わる保存されたプロテアーゼドメインを含む(Bork et al., J. Mol. Biol., 231: 539-545 (1993))。プロテアーゼドメインに対してC末端側にあるのがCUBおよびEGFドメインである。最もN末端側のBMP−1 CUBドメイン(“CUB1”)は、BMP−2およびBMP−4を活性化から保護するBMP拮抗因子であるコーディンを切断することができ(Petropoulou et al., J. Biol. Chem., 280: 22616-22623 (2005))、一方でEGFドメインはカルシウムイオン(Ca++)に結合し、BMP−1のイソ型の一部に構造的剛性を与える可能性がある(Werner et al. J. Mol. Biol., 296: 1065-1078 (2000))。
BMP1遺伝子はドロソフィラ(Drosophila)の遺伝子tolloid(“TLD”)と関連しており、それはTGF−β様モルフォゲンを活性化するその能力によりdecapentaplegic(“DPP”)遺伝子により制御されるパターン形成に関わっていることが示されている。BMP−1タンパク質は現在パターン形成のカスケードの間の形態形成の必須の制御点であることが知られている(Ge and Greenspan, Birth Defect Res., 78: 47-68 (2006))。Bmp1遺伝子に関してヌルであるマウスは腹部体壁閉鎖の不全および持続性の腸ヘルニア形成により周生期致死(perinatal lethal)であり、それはおそらく欠陥のあるECMおよび背腹パターン形成の限られた混乱によるものである(Suzuki et al., Development, 122: 3587-3595 (1996))。pCP活性の喪失と一致して、Bmp1−ヌルマウスは異常なコラーゲン原線維を有する。
BMP−1は、広い範囲の種に見られるメタロプロテイナーゼ類の小亜群の原型である。哺乳類には4種類のBMP−1/TLD関連(または“BMP−1/TLD様”)メタロプロテイナーゼ類が存在する。BMP−1をコードする遺伝子は第2のより長いプロテイナーゼもコードしており、それはオルタナティブスプライシングされたmRNAによりコードされている。TLDと本質的に同一であるドメイン構造により、このプロテイナーゼは哺乳類Tolloid(“mTLD”)と名付けられた(Takahara et al., J. Biol. Chem., 269: 32572-32578 (1994))。加えて、哺乳類Tolloid様1および2(“mTLL1”および“mTLL2”)と名付けられた2つの遺伝学的に異なる哺乳類のBMP−1/TLD関連プロテイナーゼが存在する。BMP−1/TLD様プロテイナーゼのプロドメインは、これらのプロテイナーゼの完全な活性を達成するためにサブチリシン様プロプロテインコンバターゼ(SPC)によりタンパク質分解的に除去されなければならない(Leighton and Kadler, J. Biol. Chem., 278: 18478-18484 (2003))。BMP−1/TLD様プロテイナーゼのプロドメインの役割は、BMP−1/TLD様プロテイナーゼを潜在形態で維持することにあるようである(Marques et al., Cell, 91: 417-426 (1997); Sieron et al., Biochemistry, 39: 3231-3239 (2000); Leighton and Kadler (2003))。
BMP−1/TLD関連メタロプロテイナーゼ類は、細胞外マトリックス(ECM)の形成に関連するいくつかの細胞外タンパク質のタンパク質分解による成熟の原因である。これらには、様々なコラーゲン類、小型ロイシンリッチプロテオグリカン類、SIBLINGタンパク質、リジルオキシダーゼ、ラミニン−5、および基底膜プロテオグリカンペルレカンからの抗血管新生因子が含まれる(Iozzo, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol., 6: 646-656 (2005); Greenspan, Top. Curr. Chem., 247: 149-183 (2005); Ge and Greenspan (2006))。BMP−1はECMからの真正(authentic)BMPの放出または潜在型TGF−βファミリーメンバー、例えばBMP−4、BMP−11およびGDF−8の活性化にも関わっている(Wolfman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100: 15842-15846 (2003); Ge et al, Mol. Cell. Biol., 25: 5846-5858 (2005))。
BMP−1の最初に発見された形態は“BMP−1−1”または(“BMP1−1”;SEQ ID NO:1)と名付けられており、スプライシング変異型RNA転写産物によりコードされる他のBMP−1のイソ型が転写レベルで説明されており、連続する接尾辞を用いて名付けられている:BMP−1−2、BMP−1−3、BMP−1−4、BMP−1−5、BMP−1−6、およびBMP−1−7。例えば、Kessler et al. (1996); Li et al. (1996); Wozney et al. (1988); Janitz et al., J. Mol. Med., 76: 141-146 (1998); Takahara et al. (1994); Hillman et al., Genome Biol., 5(2): R8.1-R8.16 (2004);およびGe and Greenspan, Birth Defect Res., 78: 47-68 (2006)を参照。予想されるように、スプライシング変異型転写産物によりコードされるBMP−1のイソ型は、リーダーペプチド、プロ領域、およびプロテアーゼ(触媒)領域が含まれるいくつかのドメインを共有している。以前は、最初のBMP−1、すなわちBMP−1−1のみがタンパク質レベルで確証されており、BMP−1−2および他のBMP−1のイソ型に関する配列はスプライシング変異型転写産物のヌクレオチド配列から推測されたがタンパク質レベルでは記載されていなかった。より最近になって、いくつかのBMP−1のイソ型が、様々な疾患、例えば慢性腎臓病および急性膵炎を有する患者の血中を、そして健康なヒトの個体(BMP−1−3のみを含有する)の血中を循環していることがタンパク質レベルで確証されてきた。例えば、国際特許公開第2008/011193 A2号;Grgurevic et al., J. Am. Soc. Nephrol., 21: 681-692 (2011)を参照。さらに、様々な疾患における線維症および瘢痕組織をもたらすプロコラーゲンのプロセシングにおけるBMP−1の役割ならびに様々な疾患の患者における個々のBMP−1のイソ型を含む血液プロフィールの発見は、BMP−1を新規の療法を開発するための魅力的な標的にしてきた。例えば、国際公開第2008/011193 A2号、Turtle et al. (2004)、およびGrgurevic et al. (2011)を参照。
多様な薬物および手順が利用可能であるにも関わらず、毎年数十万人の人々が急性心筋梗塞で死亡している。明らかに、急性心筋梗塞を処置および予防するための新規の組成物および方法に関する必要性が残っている。
本明細書で記載される発明は、BMP−1−3およびBMP−1−4タンパク質の両方が急性心筋梗塞(AMI、心臓発作)に耐えてきた成人のヒトの個体の血液中に存在し、これらの2種類のBMP−1のイソ型はAMIを処置するための療法標的でもあるという発見に基づいている。
本発明が完全に理解され得る目的で、以下の用語を定義する。
本明細書で記載される完全長の(プロセシングされていない)BMP−1−1タンパク質のアミノ酸配列は、次のアミノ酸配列を有する:
。
本明細書で記載される完全長の(プロセシングされていない)BMP−1−3タンパク質のアミノ酸配列は、次のアミノ酸配列を有する:
。
本明細書で記載される完全長の(プロセシングされていない)BMP−1−4タンパク質のアミノ酸配列は、次のアミノ酸配列を有する:
。
別途示さない限り、用語“約”および“おおよそ”が量、数、または値との組み合わせで用いられた場合、その組み合わせは、列挙された量、数、または値単独ならびにその量、数、または値プラスまたはマイナスその量、数、または値の10%を記載している。限定的でない例として、句“約40%”および“おおよそ40%”は、“40%”および“36%から44%まで(36%および44%を含む)”の両方を開示している。
“抗体”または“抗体分子”は、本明細書で用いられ、理解される際、天然に、合成により、または半合成的に生成されたものであれ、免疫グロブリン軽鎖可変領域もしくはドメイン(VL)もしくその一部、免疫グロブリン重鎖可変領域もしくはドメイン(VH)もしくその一部、またはそれらの組み合わせを含む抗原結合ドメインを有し、特異的な標的分子(抗原)に結合するタンパク質分子またはその一部である特異的な結合メンバーを指す。用語“抗体”は、免疫グロブリンの抗原結合ドメインと同一または相同である抗原結合ドメインを有するあらゆるポリペプチドまたはタンパク質分子も包含する。抗体は“ポリクローナル”、すなわち多数の異なる細胞において産生され、結果的に抗原の異なる部位に結合する抗原結合分子の集団であってよく、または“モノクローナル”、すなわち単一の細胞株から産生され、抗原の1つの部位(すなわち抗原の同じエピトープ)にのみ結合する同一の抗原結合分子の集団であってよい。抗体分子の例には、本明細書で用いられ、理解される際、周知の免疫グロブリンのクラス(例えば、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD)およびそれらのイソ型;抗原結合ドメインを含む免疫グロブリンの断片、例えばFabまたはF(ab’)2分子;単鎖抗体(scFv)分子;二重scFv分子;単一の重鎖可変ドメインの3つのCDRのみを含む機能する抗原結合ドメインを有し、対応する軽鎖可変ドメインなしで抗原に1:1の比率で結合することができる単一ドメイン抗体(dAb)分子(例えば、Ward et al., Nature, 341: 544-546 (1989);国際公開第90/05144号;Hamers-Casterman et al., Nature, 363: 446-448 (1993)、Muyldermans et al., Protein Eng., 7: 1129-1135 (1994)を参照);Fd分子(抗体重鎖定常ドメインCH1、CH2、CH3、および場合によりCH4に連結された抗体VH領域からなる);二重特異性抗体(diabody)分子;ならびにそのような分子を含む融合タンパク質の全てが含まれる。二重特異性抗体は2個の二重特異性抗体単量体の結合により形成され、それは2個の完全な抗原結合ドメインを含有する2量体を形成し、ここでそれぞれの結合ドメインはそれ自体がその2個の単量体のそれぞれからの領域の分子間結合により形成されている(例えばHolliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)を参照)。本明細書で記載される組成物および方法において有用であるBMP−1−3またはBMP−1−4に対する抗体は、BMP−1−3の分子に特異的に結合する抗原結合ドメインおよびBMP−1−4の分子に特異的に結合する別の抗原結合ドメインを含む二特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。本明細書で記載される組成物および方法において用いることができるBMP−1−3またはBMP−1−4に対する抗体分子は二重可変ドメイン(DVD)結合タンパク質(例えば、国際特許公開第2007/024715号参照)であってもよく、それはBMP−1−3に特異的に結合する抗原結合ドメインもしくはBMP−1−4に特異的に結合する抗原結合ドメインを含み、またはそれはBMP−1−3の分子に特異的に結合する抗原結合ドメインおよびBMP−1−4の分子に特異的に結合する別の抗原結合ドメインを含む。上記の分子の全てが、それらはBMP−1−3に関する機能する結合ドメインおよび/またはBMP−1−4に関する機能する結合ドメインを含むため、本明細書で記載される方法において有用な結合タンパク質である。BMP−1−3またはBMP−1−4に結合する抗体は、あるいは本明細書においてそれぞれ“BMP−1−3抗体”または“BMP−1−4抗体”と、そしてそれぞれ“抗BMP−1−3抗体”および“抗BMP−1−4抗体”とも呼ばれるであろう。
“単離された抗体”は、異なる抗原特異性を有する他の抗体分子および抗体断片を実質的に含まない抗体を指すことを意図している(例えば、特定のBMP−1のイソ型、例えばBMP−1−3またはBMP−1−4に特異的に結合する単離された抗体は、その特定のBMP−1のイソ型以外の抗原に特異的に結合する抗体分子を実質的に含まない)。しかし、特定のBMP−1−3に特異的に結合する“単離された抗体”は、他の抗原、例えば他の種からのBM−1−3に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、他の細胞性物質および/または化学物質を実質的に含まない可能性がある。
用語“モノクローナル抗体”または“mAb”は実質的に均質な抗体分子の集団から得られる抗体を指し、すなわちその集団を構成する個々の抗体分子はわずかな量で存在し得る可能性のある自然発生変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原に対して方向付けられている。さらに、典型的には抗原の異なる抗原決定基(エピトープ)に対して方向付けられた異なる抗体分子が含まれるポリクローナル抗体調製物とは対照的に、それぞれのmAb分子はその抗原の単一のエピトープに対して方向付けられている。修飾語“モノクローナル”は、いずれかの特定の方法による抗体の産生を要求するものと解釈されるべきではない。
用語“ヒト抗体”には、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体が含まれる。ヒト抗体には、例えばCDRおよび特にCDR−H3中の、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えばインビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発により、またはインビボでの体細胞突然変異により導入された変異)が含まれていてよい。しかし、用語“ヒト抗体”には、別の哺乳類種、例えばマウスの生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトのフレームワーク配列上に移植されている抗体は含まれない。
用語“組み換えヒト抗体”には、組み換え的手段により調製、発現、作製、または単離された全てのヒト抗体、例えば宿主細胞中にトランスフェクションした組み換え発現ベクターを用いて発現させた抗体、組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(Hoogenboom, Trends Biotechnol., 15: 62-70 (1997); Azzazy and Highsmith, Clin. Biochem., 35: 425-445 (2002); Gavilondo and Larrick, BioTechniques, 29: 128-145 (2000); Hoogenboom and Chames, Immunol. Today, 21: 371-378 (2000))、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al., Nucl. Acids Res., 20: 6287-6295 (1992); Kellermann and Green, Curr. Opin. Biotechnol., 13: 593-597 (2002); Little et al., Immunol. Today, 21: 364-370 (2000)を参照);または他のDNA配列に対するヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを含むあらゆる他の手段により調製、発現、作製、または単離された抗体が含まれる。そのような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する。しかし、特定の態様において、そのような組み換えヒト抗体に対してインビトロ変異誘発(または、ヒトIg配列に関してトランスジェニックの動物が用いられる場合、生体内での体細胞突然変異)が実施され、従ってその組み換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVHおよびVL配列に由来および関連するが、天然には生体内のヒト抗体の生殖細胞系列のレパートリー内には存在しない可能性がある。
用語“キメラ抗体”は、ある種からの重鎖および軽鎖可変領域の配列ならびに別の種からの定常領域の配列を含む抗体、例えばヒトの定常領域に連結されたマウスの重鎖および軽鎖可変領域を有する抗体を指す。
用語“CDR”は、抗体可変領域内の相補性決定領域を指す。それぞれの抗体可変領域中に3個のCDRが存在し、それらは“CDR1”、“CDR2”、および“CDR3”と呼ばれ、ここで慣例により本明細書で採用される際に“CDR1”は抗体可変領域内の3個のCDRの最もN末端に近位のものを指し、“CDR3”は抗体可変領域内の3個のCDRの最もC末端に近位のものを指す。抗体重鎖可変領域(VH)内のCDRは“CDR−H1”、“CDR−H2”、および“CDR−H3”と呼ばれ、抗体軽鎖可変領域(VL)内の(with)CDRは“CDR−L1”、“CDR−L2”、および“CDR−L3”と呼ばれる。
用語“CDRのセット”は、本明細書で用いられる際、抗原分子の特定のエピトープに結合することができる単一の可変領域中に存在する3個のCDRの群を指す。これらのCDRの正確な境界は、異なる番号付けシステムに従って異なるように定義されてきた。Kabatにより記載されたシステム(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest(国立衛生研究所、メリーランド州ベセスダ(1987)および(1991)); Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健福祉省、NIH公開番号91-3242 (1991))は、最も広く用いられている番号付けシステムである。Kabat番号付けシステムは可変領域内の残基に関する残基番号付けシステムを提供し、3個のCDRを定める正確な残基の境界を提供する。後で他の番号付けシステムが考案されたが、Kabat番号付けシステムは、抗体可変領域内で残基の位置を割り当てるための、そして抗体可変領域内のCDRのそれぞれに関するアミノ酸配列を同定するための、なお最も広く用いられている番号付けシステムである。
過去20年にわたる可変重鎖および軽鎖領域のアミノ酸配列の広範囲にわたる公的データベースの成長および分析は、可変領域配列内のフレームワーク領域(FR)およびCDR配列の間の典型的な境界の理解をもたらし、この技術分野の当業者がKabat番号付け、Chothia番号付け、または他のシステムに従ってCDRを正確に決定することを可能にしてきた。例えば、Antibody Engineering, (KontermannおよびDuebel編集) (Springer-Verlag、ベルリン、2001)中のMartin, “Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains”第31章、特に432〜433ページを参照。可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)領域のアミノ酸配列内のKabat CDRのアミノ酸配列を決定する有用な方法を下記で提供する:
CDR−L1アミノ酸配列を同定するため:
VL領域のアミノ末端からおおよそ24アミノ酸残基で始まり;
CDR−L1配列の前の残基は常にシステイン(C)であり;
CDR−L1配列の後の残基は常にトリプトファン(W)残基であり、典型的にはTrp−Tyr−Gln(W−Y−Q)であるがTrp−Leu−Gln(W−L−Q)、Trp−Phe−Gln(W−F−Q)、およびTrp−Tyr−Leu(W−Y−L)であることもあり;
長さは典型的には10〜17アミノ酸残基である。
CDR−L2アミノ酸配列を同定するため:
常にCDR−L1の終了後16残基で始まり;
CDR−L2配列の前の残基は一般にIle−Tyr(I−Y)であるが、Val−Tyr(V−Y)、Ile−Lys(I−K)、およびIle−Phe(I−F)であることもあり;
長さは常に7アミノ酸残基である。
CDR−L3アミノ酸配列を同定するため:
常にCDR−L2の終了後33アミノ酸で始まり;
CDR−L3アミノ酸配列の前の残基は常にシステイン(C)であり;
CDR−L3配列の後の残基は常にPhe−Gly−X−Gly(F−G−X−G)(SEQ ID NO:4)であり、ここでXはあらゆるアミノ酸であり;
長さは典型的には7〜11アミノ酸残基である。
CDR−H1アミノ酸配列を同定するため:
VH領域のアミノ末端からおおよそ31アミノ酸残基および常にシステイン(C)の9残基後で始まり;
CDR−H1配列の前の残基は常にCys−X−X−X−X−X−X−X−X(SEQ ID NO:5)であり、ここでXはあらゆるアミノ酸であり;
CDR−H1配列の後の残基は常にTrp(W)であり、典型的にはTrp−Val(W−V)であるが、Trp−Ile(W−I)、およびTrp−Ala(W−A)であることもあり;
長さは典型的には5〜7アミノ酸残基である。
CDR−H2アミノ酸配列を同定するため:
常にCDR−H1の終了後15アミノ酸残基で始まり;
CDR−H2配列の前の残基は典型的にはLeu−Glu−Trp−Ile−Gly(L−E−W−I−G)(SEQ ID NO:6)であるが他のバリエーションもあり;
CDR−H2配列の後の残基は通常Lys/Arg−Leu/Ile/Val/Phe/Thr/Ala−Thr/Ser/Ile/Ala(K/R−L/I/V/F/T/A−T/S/I/A)であり;
長さは典型的には16〜19アミノ酸残基である。
CDR−H3アミノ酸配列を同定するため:
常にCDR−H2の終了後33アミノ酸残基および常にシステイン(C)の3残基後で始まり;
CDR−H3配列の前の残基は常にCys−X−X(C−X−X)であり、ここでXはあらゆるアミノ酸であり、典型的にはCys−Ala−Arg(C−A−R)であり;
CDR−H3配列の後の残基は常にTrp−Gly−X−Gly(W−G−X−G)(SEQ ID NO:7)であり、ここでXはあらゆるアミノ酸であり;
長さは典型的には3〜25アミノ酸残基である。
用語“CDRを移植された抗体”は、ある種からの重鎖および軽鎖可変領域の配列を含むが、その中でVHおよび/またはVL領域中のCDR領域の1個以上の配列が別の種のCDR配列で置き換えられている抗体分子、例えばヒトの重鎖および軽鎖可変領域を有し、その中でヒトのCDRの1個以上(例えばCDR3)がマウスのCDR配列で置き換えられている抗体を指す。ある種の抗体のCDRを別の種の抗体の可変ドメイン中に移植するための方法は、当該技術で周知である。例えば、Jones et al., Nature, 321: 522-525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332: 323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536 (1988);およびQueen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 10029-10033 (1989)を参照。
“循環する”および“循環している”は、個体の脈管系を通って移動する、または他の方法で輸送されるあらゆるものを記載している。
用語“障害”および“疾患”は同義であり、原因または病原体に関わりなく、あらゆる病理学的状態を指す。組織中の“欠陥”は、異常または不十分な組織成長の部位を差す。“疾患”または“障害”は、1以上の組織における1以上の“欠陥”により特性付けられる可能性がある。この発明に対する対象の疾患(または障害)は、急性心筋梗塞(“AMI”、“心臓発作”)である。
本明細書で用いられる際、用語“処置”および“処置する”は、疾患もしくは障害の1種類以上の症状もしくは徴候を緩和する、疾患もしくは障害の進行を抑制する、疾患もしくは障害の進行を止める、もしくは進行を逆行させる(後退を引き起こす)、または疾患もしくは障害の開始を予防するあらゆる計画を指す。用語“処置”には、そうしなければその処置の非存在下でその疾患を特性付けるであろう症状または徴候の程度を改善または抑制することが含まれる、疾患の1種類以上の症状または徴候の予防(防止)が含まれる。
“療法上有効量”は、疾患の進行を完全もしくは部分的に抑制する;疾患の1種類以上の症状を少なくとも部分的に緩和する;または疾患を処置するために用いられる別の化合物の療法的もしくは他の方式で有益な作用を増進もしくは触媒する化合物(例えばBMP−1−3に対する抗体、BMP−1−4に対する抗体、またはそれらの組み合わせ)の量である。療法上有効量は、予防的に有効である量であることもできる。療法上有効である量は、その患者の大きさおよび性別、処置すべき疾患、その疾患の重症度、および求める結果に依存するであろう。所与のヒトの個体に関して、療法上有効量は当業者に既知の方法により決定することができる。
用語“単離された”は、本明細書で開示される様々なタンパク質またはポリペプチドを記載するために用いられた場合、その天然環境の構成要素から同定および分離および/または回収されたタンパク質またはポリペプチドを意味する。その天然環境の混入構成要素は、そのポリペプチドに関する診断的または療法的使用に典型的に干渉するであろう物質であり、それには酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の種が含まれ得る。単離されたタンパク質またはポリペプチドには、それを発現するように操作された組み換え細胞内の原位置でのタンパク質またはポリペプチドが、そのタンパク質またはポリペプチドの天然環境の少なくとも1種類の構成要素が存在しないと考えられるため、含まれる。しかし、通常は、単離されたタンパク質またはポリペプチドは、少なくとも1つの精製工程により調製されるであろう。
本明細書で1以上の名前付きの要素または工程を“含んでいる”と記載される組成物または方法は開放型(open−ended)であり、これはその名前付きの要素または工程が必須であるが他の要素または工程をその組成物または方法の範囲内に加えることができることを意味する。冗長性を避けるため、本明細書で1以上の名前付きの要素または工程を“含んでいる”(または“含む”)と記載されるあらゆる組成物または方法は、同じ名前付きの要素または工程“で本質的に構成されている”(または“で本質的に構成される”)対応するより限定された組成物または方法も記載しており、これはその組成物または方法にその名前付きの必須の要素または工程が含まれ、その組成物または方法の基本的および新規の特徴(単数または複数)に実質的に影響を及ぼさない追加の要素または工程も含まれてよいことを意味することも理解されている。本明細書で1以上の名前付きの要素または工程を“含んでいる”、またはそれ“で本質的に構成されている”と記載されたあらゆる組成物または方法は、あらゆる他の名前付きでない要素または工程を除外してその名前付きの要素または工程“で構成されている”(または“で構成される”)対応するより限定された閉鎖型(close−ended)の組成物または方法も記載していることも理解されている。本明細書で開示されるあらゆる組成物または方法において、あらゆる名前付きの必須の要素または工程の既知の、または開示された均等物をその要素または工程の代わりに用いることができる。
別途示さない限り、他の用語の意味は、医学、免疫学、生化学、分子生物学、および組織再生の分野が含まれる技術分野の当業者により理解され、用いられている意味と同じである。
本発明は、BMP−1−4は急性心筋梗塞(AMI)に耐えてきたヒトの個体の血液中に存在するが健康な個体の血液中には存在しないという発見に基づいている。健康な個体の血液中で循環して存在しているBMP−1−3イソ型タンパク質は、AMIに耐えてきた個体の血液中にも存在する。従って、BMP−1−4はAMIに関する新規の血液の生物学的マーカー(バイオマーカー)として有用である。
前に示したように、BMP−1のイソ型タンパク質は、血液の試料中で、その血液を特定のBMP−1のイソ型に特有である1種類以上のペプチド(例えばトリプシン分解ペプチド)の存在に関して分析することにより検出することができる。例えば、国際公開第2008/011193号;Grgurevic et al. (2011)を参照。下記の実施例1で示すように、このタイプのペプチド分析はヒトにおいてBMP−1−4のイソ型タンパク質の存在をタンパク質レベルで始めて実証した。さらに、BMP−1−4タンパク質は急性心筋梗塞に耐えてきた患者の血液中で検出されたが、健康な志願者の血液中では検出されなかった。BMP−1−4およびBMP−1−3は、BMP−1−3およびBMP−1−4に対する抗体を用いて、発生中のヒトの胎児の心臓において、そしてAMIに耐えてきたヒトの個体の心臓の切片において局在していた(データは示していない)。従って、BMP−1−4は通常は正常な心組織において発現しているが、AMIに耐えてきた個体の血中に現れる。AMIに耐えてきたヒトの個体の血液中のBMP−1−4の出現は、AMIに耐えてきた個体の血液中の血漿トロポニンt(“Tn−T”)の出現およびクレアチンキナーゼ心筋バンド(CK−MB)の高められたレベルとも相関している。従って、BMP−1−4はAMIに関する血液バイオマーカーとして有用である。
BMP−1−4はAMIに耐えてきた個体の血液中に現れ、BMP−1−4は健康な心組織に局在しているという本明細書で記載される発見、ならびにBMP−1−1およびBMP−1−3は他の器官において線維症および瘢痕組織を促進することを示す先行する発見(例えば、Turtle et al. (2004)、国際公開第2008/011193号、Grgurevic et al. (2011)を参照)は、本発明者らを、BMP−1−3およびBMP−1−4のどちらかまたは両方があるいはAMIを処置するための療法標的として有用であり得るかどうか調べるように導いた。下記の実施例において記載されているAMIに関する標準的なラットモデルを用いた研究の結果は、BMP−1−3およびBMP−1−4の両方がAMIを処置するための療法標的であることを明確に示している。例えば、BMP−1−3に対するモノクローナル抗体(“BMP−1−3 mAb”)のAMIを有するラットへの投与は、結果としてAMIを有する未処置の対照ラットにおけるバイオマーカーCK−MBの血漿レベルの上昇と比較した場合に有意に低いバイオマーカーCK−MBの血漿レベルの上昇をもたらした。実施例4および図2を参照。AMIを有するラットへのBMP−1−4に対する抗体の投与も、結果としてAMIを有する未処置の対照ラットにおけるCK−MBの血漿レベルの上昇と比較した場合に有意に低いCK−MBの血漿レベルの上昇をもたらした。実施例5および図3を参照。BMP−1−3 mAbおよびBMP−1−4 mAbの組み合わせのAMIを有するラットへの投与はまた、トロポニンt(“Tn−T”)の血漿レベルの未処置の対照ラットにおけるよりも有意に低いレベルをもたらした。実施例6および図4を参照。
さらに、BMP−1−3 mAbのAMIを有するラットへの投与の療法的有効性は心臓の径および機能の心エコー検査での評価によっても示され、それは未処置の対照ラットにおけるそれらと比較して有意に高い拡張期における心室中隔径(IVSd)および収縮期における心室中隔径(IVSs)、有意に低い収縮期における左心室内径(LVIDs)、有意に低い収縮期における左心室後壁径(LVPWs)、有意に高い駆出率(EF)、ならびに有意に高い短縮率(ES)を明らかにした。実際、抗体で処置したラットの心臓の径および機能はAMIを有しない偽処置ラットの心臓の径および機能に類似していた。実施例7および表1を参照。
BMP−1−3 mAbを用いた処置は、AMI後の心臓の梗塞領域においてより高い質の瘢痕組織および機能する心筋組織を促進することも示された。この抗体処置の療法的作用は、実施例8で記載されるように陽電子放出断層撮影(PET)を用いて1ヶ月の過程にわたって心臓の梗塞領域を監視することにより劇的に示された。図5において示されるように、AMIを有するラットの心臓を、手術によるAMIの誘発の前(“手術前”)、手術の1週間後(“1週間”)、および手術の1ヶ月後(“1ヶ月”)にPET走査した。BMP−1−3 mAbにより処置したラットの心臓のPET走査画像および未処置の対照ラットの心臓のPET走査画像は手術の1週間後において梗塞領域における機能しない組織を明確に示しているが、未処置の対照ラットの梗塞領域は処置したラットの梗塞領域よりも際立っているように見える。図5中の“1週間”における心臓の画像を参照。しかし、手術によるAMIの誘発の1ヶ月後に、PET走査画像は処置した動物および未処置の動物の心臓の最初の梗塞領域において生成されている組織の質における劇的な差を明らかにした。特に、BMP−1−3 mAb処置を受けたラットの心臓のPET走査画像はその梗塞領域における機能する心筋組織の実質的な修復を示し、一方で未処置の対照ラットの梗塞領域における機能しない組織は明確に保持されており、1週間の時点よりもさらにもっと際立っていた。図5中の“1ヶ月”における心臓の画像を参照。その結果は、抗体療法を受けたラットの心臓における修復された組織は未処置の対照ラットの心臓において生成された修復組織よりも明らかに質が高く、より機能性であったことを示している。
下記の実施例9で記載するように、AMIを有する未処置の対照ラットの心臓からの、およびBMP−1−3 mAbで処置したAMIを有するラットからの心筋組織の組織学的分析もBMP−1−3抗体を用いた処置の有益な作用を示した。特に、AMIを誘発するための左冠動脈の外科的結紮の1週間後において、未処置の対照ラットからの心筋組織のシリウスレッド染色は早期のコラーゲン沈着を明らかにした(図6B参照)。手術の1ヵ月後において、未処置の対照ラットからの心筋組織のシリウスレッド染色は損傷した心筋線維に明確に囲まれた残存線維性瘢痕組織を明らかにした(図6C参照)。対照的に、AMIの1週間後における線維性領域は、未処置の対照ラットの心筋組織と比較して、BMP−1−3 mAbで処置したラットの心筋組織において有意に小さかった(図6D参照)。図6Dにおいて示した組織のより高い倍率は、新しく形成された筋線維のスポット(図6E参照)および未処置の対照ラットにおいて観察された線維性組織よりも明らかに低密度である線維性組織を有する周囲の細胞(図6F)を明らかにした。
当該技術で既知の様々な方法のいずれかを用いて、対象の特定のBMP−1のイソ型(例えばBMP−1−3またはBMP−1−4)またはその特定のBMP−1のイソ型の少なくとも1つのエピトープ(すなわち特異的な抗体結合部位)を含む対象の特定のBMP−1のイソ型の一部に特異的に結合するポリクローナルまたはモノクローナル抗体分子を生成することができる。
ポリクローナル抗体は当該技術で既知の標準的な方法を用いて生成することができ、ここで抗原(例えば、BMP−1−3、BMP−1−4、またはBMP−1−3もしくはBMP−1−4のエピトープを含むペプチド)を動物にその動物による免疫応答を誘発する条件化で投与し、結果としてその抗原に対する抗体が産生される。典型的には、そのようなポリクローナル抗体は動物の血液中で産生され、その血液の血清部分(抗血清)において単離することができる。さらなる精製は、高められた純度のポリクローナル抗体調製物またはその抗血清からの特定のクラスの抗体の単離を提供することができる。
本明細書で記載される組成物および方法における使用のための好ましい抗体分子は、BMP−1−3に対する、およびBMP−1−4に対するモノクローナル抗体(mAb)である。モノクローナル抗体は当該技術で利用可能な標準的なハイブリドーマ技術を用いて調製することができる。そのような技法は当該技術の標準的な実験室の手引書において記載されている。例えば、Harlowe et al., Antibodies: A Laboratory Manual、第2版 (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988); Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas (Elsevier、ニューヨーク、1981)を参照;それらを本明細書に援用する。BMP−1−3およびBMP−1−4に対する抗体は、当該技術で利用可能ないくつかの他の方法のいずれかをもちいて生成することもできる。例えば、BMP−1−3およびBMP−1−4に対する抗体は、単一の単離されたリンパ球から、選択リンパ球抗体法(selected lymphocyte antibody method)(SLAM)を用いて生成することができる。例えば、米国特許第5,627,052号;国際公開第92/02551号;Babcook et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93: 7843-7848 (1996)を参照;それらを本明細書に援用する。BMP−1−3およびBMP−1−4に対する抗体は、ヒトの免疫グロブリン座位の全部または一部を含むトランスジェニック動物を用いて調製することもでき、それはそのトランスジェニック動物をBMP−1−3またはBMP−1−4のタンパク質またはそのペプチド断片を用いて免疫した際にヒト抗体を生成するであろう。例えば、Green et al., Nature Genetics, 7:13-21 (1994);米国特許第5,916,771号;国際特許公開第91/10741号を参照;それらを本明細書に援用する。本明細書で記載される組成物および方法において有用なBMP−1−3およびBMP−1−4抗体を生成するための他の方法には、限定ではなく、ファージディスプレイ法(例えば、本明細書に援用されるBrinkmann et al., J. Immunol. Methods, 182: 41-50 (1995); Ames et al., J. Immunol. Methods, 184: 177-186 (1995), Kettleborough et al., Eur. J. Immunol., 24:952-958 (1994))、酵母ディスプレイ法(例えば、本明細書に援用される米国特許第6,699,658号を参照)、および抗体ライブラリーのRNA−タンパク質融合物としての発現(例えば、本明細書に援用される国際特許公開第98/31700号を参照)が含まれる。
好ましくは、BMP−1−3 mAbをR−Y−T−S−T−K−F−Q−D−T−L−H−S−R−K(SEQ ID NO:2のアミノ酸残基972〜986)のアミノ酸配列を有するペプチド免疫原を用いて生成する。特に好ましいBMP−1−3 mAbは、注文でProMab(米国カリフォルニア州リッチモンド)により調製されたハイブリドーマ細胞株により産生され、それはブダペスト条約下でライプニッツ研究所DSMZ−ドイツ微生物細胞培養コレクションGmbH(“DSMZ”)に寄託された(受入番号DSM ACC3198)。
好ましくは、BMP−1−4 mAbはC−G−S−R−N−G−A−S−F−P−S−S−L−E−S−S−T−H−Q−A(SEQ ID NO:8)のアミノ酸配列を有するペプチド免疫原を用いて生成される。BMP−1−4 mAbは、注文でProMabにより生成され、DSMZに寄託された(受入番号DSM ACC3213)。
モノクローナル抗体(“mAb”)を産生する齧歯類のハイブリドーマ細胞株は、mAb分子の定常および可変領域をコードするDNAの便利な源である。BMP−1−3 mAbまたはBMP−1−4 mAbの個々の相補性決定領域(“CDR”)およびフレームワーク領域(“FR”)をコードするDNAの単離および配列決定は特に有用である。齧歯類のBMP−1−3 mAbまたはBMP−1−4 mAbの個々のCDR、FR、および/またはその一部をコードする単離または合成されたDNAは、BMP−1−3またはBMP−1−4に結合する様々な他の組み換え抗体分子のいずれかを生成するために標準的な方法においてすぐに用いることができる。そのような組み換え抗体分子には、CDRを移植された抗体分子;キメラ抗体、ヒト化抗体;親和性成熟ヒト化抗体;単鎖抗体(“scFv”)分子;二重scFv分子;二重特異性抗体分子;BMP−1−3またはBMP−1−4のどちらかまたは両方に結合する二特異性抗体;ならびにBMP−1−3およびBMP−1−4のどちらかまたは両方に結合する二重可変ドメイン免疫グロブリン結合タンパク質が含まれるが、それらに限定されない。特に好ましい組み換え抗体はヒト化抗体であり、それは元の齧歯類のmAbと同じ抗原(BMP−1−3またはBMP−1−4)に結合するが、ヒト中に注入した際に免疫原性がより低い。例えば、米国特許第5,693,762号;Queen et al. (1989);欧州特許第0 239 400 B1号を参照。
好ましくは、急性心筋梗塞を処置するための本発明の方法および組成物において用いられるBMP−1−3およびBMP−1−4に対する抗体は、その抗体のインビトロでBMP−1−3またはBMP−1−4に媒介されるプロコラーゲンの切断を阻害する能力により(例えば、Kessler et al. (1996); Li et al. (1996); Garrigue Antar et al., J. Biol. Chem., 276(28): 26237-26242 (2001); Hartigan et al., J. Biol. Chem., 278(20):18045-18049 (2003)を参照);その抗体のインビトロでBMP−1−3またはBMP−1−4に媒介される象牙質マトリックスタンパク質1(DMP−1)の切断を阻害する能力により(例えば、Qin et al., J. Biol. Chem., 278(36): 34700-34708 (2003); Steiglitz et al., J. Biol. Chem., 279(2): 980-986 (2004)を参照);またはその抗体の急性心筋梗塞のラットモデルにおいて心筋組織への損傷の程度を抑制する能力により(Zornoff et al., Arq. Bras. Cardiol., 93(3): 403-408 (2009)におけるラットモデルの総説を参照)示されるような中和抗体である。
本発明に従って急性心筋梗塞(AMI)に関して個体を処置するための方法は、その個体にBMP−1−3に対する抗体、BMP−1−4に対する抗体、またはBMP−1−3に対する抗体およびBMP−1−4に対する抗体の組み合わせを投与する工程を含む。好ましくは、ヒトの個体をAMIに関して処置するために用いられる抗体分子は、AMIを処置するための抗体を投与される個体において免疫応答を誘発する可能性を低減するために、ヒトの抗体の領域およびドメインである、または実質的にヒトの抗体の領域およびドメインである領域およびドメインを有する。従って、AMIを処置するために用いられるBMP−1−3およびBMP−1−4に対する抗体は、好ましくは完全にヒト抗体またはヒト化抗体である。それほど好ましくないが、その抗体はキメラ抗体である。それほど好ましくないが、その抗体はヒト抗体に由来するドメインまたは領域を一切欠いている非ヒト抗体である。
本発明に従うヒトの個体における急性心筋梗塞(AMI)の処置における使用に関して、BMP−1−3に対する抗体分子またはBMP−1−4に対する抗体分子または両方の抗体分子の組み合わせを含む組成物は、ヒトの個体に療法用抗体を投与するための医薬組成物を調製するための当該技術で周知の技法および成分を用いて調製される。BMP−1−3に対する抗体またはBMP−1−4に対する抗体または両方の抗体分子の組み合わせを含む組成物は、様々な投与の経路または方式のいずれによる投与のために配合することもできる。BMP−1−3に対する抗体またはBMP−1−4に対する抗体または両方の抗体分子の組み合わせを含む組成物は、非経口または非非経口(non−parenteral)投与のために配合することができる。好ましくは、AMIの処置における使用のためのBMP−1−3に対する抗体またはBMP−1−4に対する抗体または両方の抗体分子の組み合わせを含む組成物は、非経口投与、例えば(それらに限定されないが)静脈内、皮下、腹腔内、または筋内投与のために配合される。より好ましくは、組成物は静脈内投与のために配合される。そのような非経口投与は好ましくはその組成物の注射または注入により実施される。
ヒトの個体への投与のためのBMP−1−3に対する抗体またはBMP−1−4に対する抗体または両方の抗体分子の組み合わせを含む組成物は、有効量のどちらかまたは両方の抗体分子を1種類以上の医薬的に許容できる構成要素、例えば医薬的に許容できるキャリヤー(ビヒクル、緩衝剤)、賦形剤、または他の成分との組み合わせで含んでいてよい。“医薬的に許容できる”により、組成物の化合物、構成要素、または成分がヒトの個体の生理と適合性であり、BMP−1−3抗体もしくはBMP−1−4抗体構成要素の有効な活性に対して、またはヒトの個体に投与されるべき組成物中に存在することができるあらゆる他の構成要素の望ましい特性もしくは活性に対して有害でもないことを意味する。医薬的に許容できるキャリヤーの例には、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、ならびにそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。多くの場合において、糖類;ポリアルコール類、例えばマンニトールまたはソルビトール;塩化ナトリウム;およびそれらの組み合わせが含まれるがそれらに限定されない等張剤が含まれることが好ましいであろう。医薬的に許容できるキャリヤーはさらに、その組成物の貯蔵寿命または有効性を高めるための微量の補助物質、例えば湿潤もしくは乳化剤、保存剤、または緩衝剤を含んでいてよい。賦形剤は一般に組成物に所望の特徴を提供するあらゆる化合物または化合物の組み合わせである。pHを組成物において必要に応じて、例えば構成成分の可溶性を促進もしくは維持するために、その配合物中の1種類以上の成分の安定性を維持するために、および/またはその手順中のある点において導入され得る可能性のある微生物の望ましくない増殖を阻止するために調節することができる。
BMP−1−3抗体またはBMP−1−4抗体または両方の抗体分子の組み合わせを含む組成物には、1種類以上の他の成分、例えば他の医薬(例えば、抗生物質、抗炎症性化合物、抗ウイルス剤、抗癌剤)、増量剤、配合補助剤、およびそれらの組み合わせも含まれていてよい。
本発明に従う組成物は様々な形態であってよい。これらには、液体、半固体、および固体剤形、分散物、懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム、および坐剤が含まれるが、それらに限定されない。好ましい形態は、意図される投与経路に依存する。好ましい組成物は、注射可能な、または不融性の(infusible)溶液、例えばヒトにおける使用に関して認可された療法用抗体の投与において用いられる組成物(例えば、療法用TNF−α抗体分子アダリムマブ(adalimumab)またはインフリキシマブ(infliximab)に関して用いられるような組成物)と類似の組成物の形態である。好ましい態様において、BMP−1−3抗体またはBMP−1−4抗体または両方の抗体分子の組み合わせは、静脈内注射または注入により投与される。別の態様において、抗体は筋内または皮下注射により投与される。
療法用組成物は、製造および貯蔵の条件下で無菌かつ安定でなければならない。その組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散物、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の構造として配合することができる。無菌の注射用溶液は、その有効化合物、すなわちBMP−1−3に対する抗体またはBMP−1−4に対する抗体または両方の抗体分子の組み合わせを、必要とされる量で適切な溶媒中で、場合により必要に応じてその組成物に有益な特徴を提供する1種類の成分または成分の組み合わせと共に組み込み、続いて濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散物はその有効成分を基礎的な分散媒(例えば、滅菌水、滅菌等張生理食塩水等)および場合により適切な分散のために必要とされ得る1種類以上の他の成分を含有する無菌のビヒクル中に組み込むことにより調製される。無菌の注射用溶液の調製のための無菌の凍結乾燥された粉末の場合、好ましい調製の方法には、その有効成分+あらゆる追加の望ましい成分の粉末を予め滅菌濾過したその溶液から生成する真空乾燥および噴霧乾燥が含まれる。溶液の適切な流動性は、例えばコーティング、例えばレシチンの使用により、分散物の場合では必要とされる粒径の維持により、そして界面活性剤の使用により維持することができる。注射可能な組成物の延長された吸収は、その組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩および/またはゼラチンを含ませることによりもたらすことができる。
BMP−1−3に対する抗体またはBMP−1−4に対する抗体または両方の抗体分子の組み合わせは当該技術で既知の様々な方法により投与することができるが、好ましい投与の経路または方式は非経口投与であり、より好ましくは静脈内投与である。当業者には理解されるであろうように、投与の経路または方式は所望の結果に依存して様々であろう。特定の態様において、抗体はその化合物を急速な放出に対して保護するであろうキャリヤーを用いて調製することができ、それは例えば植込錠、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムが含まれる制御放出配合物である。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を用いることができる。そのような配合物の調製のための様々な方法が当業者に既知である。
BMP−1−3またはBMP−1−4に結合する抗体分子は、インビトロまたはインビボで所望の抗原を検出するための当該技術で利用可能な様々な抗体に基づく免疫検出システムおよび形式の全てにおいて用いることができる。そのようなシステムおよび形式は、全血、血漿、血清、様々な組織抽出物、および体液が含まれるがそれらに限定されない様々な組成物のいずれかにおいてBMP−1−3またはBMP−1−4を検出または測定するために容易に適合させられる。BMP−1−3またはBMP−1−4を検出するために適合させることができるそのようなシステムまたは形式の例には、免疫ブロット(例えばウェスタンブロット、ドットブロット)、酵素結合免疫吸着アッセイ(“ELISA”)、放射免疫アッセイ(“RIA”)、免疫沈降法、親和性法、免疫チップ等が含まれるが、それらに限定されない。
本発明に従って、ヒトの個体において急性心筋梗塞(AMI)を診断するための方法であって、その個体の血液をBMP−1−4の存在に関してアッセイすることを含む方法が提供され、ここで血液中のBMP−1−4の検出はその個体がAMIに耐えてきたことを示している。好ましい態様において、BMP−1−4抗体を用いてその個体の血液中のBMP−1−4を検出する。例えば適切な画像化システムおよび適切な検出可能な標識に結合させたBMP−1−4抗体を用いて、抹消中を循環している間にインビボでBMP−1−4の存在を検出することが可能である可能性がある。しかし、ヒトの個体においてAMIを診断するための方法のより好ましい態様では、血液の試料をヒトの個体から得て、インビトロでBMP−1−4の存在に関してアッセイする。
典型的な免疫アッセイ形式において、個体から得た血液の試料をBMP−1−4抗体分子と接触させる。次いでBMP−1−4抗体分子および血液の試料中に存在するBMP−1−4タンパク質の間の結合複合体の形成を、抗体−抗原結合複合体を検出するための当該技術で利用可能な様々な検出システムのいずれかを用いて検出する。
血液中に存在するBMP−1−4を検出する、またはその量を測定する(すなわち定量化する)ために用いられるBMP−1−4抗体は溶液中で用いることができ、あるいは様々な固体支持体のいずれかの表面上に固定することができる。本明細書で記載される方法および組成物における使用のためのBMP−1−4抗体を固定することができる固体支持体には、磁性マトリックス粒子;クロマトグラフィー用マトリックスまたは樹脂粒子(例えばアガロース);プラスチックのアッセイプレート(例えばマイクロタイターアッセイプレート)の1個以上のウェルの表面;血液試料またはアッセイ溶液中に浸漬する、または他の方法で接触した状態に置くことができる、固体支持体材料の小片、例えばプラスチック、ナイロン、木材、紙、または他の固体材料の小片または細片;およびシリコンチップ(または他のチップ材料)の表面が含まれるが、それらに限定されない。BMP−1−4抗体のマイクロタイタープレートのウェルの表面またはチップ(例えばシリコンチップ、スライドガラス等)の表面への固定は、標準的な高スループットELISAまたはバイオチップアッセイ手順においてルーチン的に用いられる半自動または完全自動装置を用いて1個または多数の血液試料中のBMP−1−4を検出する、またはその量を測定するための形式の使用を可能にする。そのような装置は、多数の非常に少量の血液をBMP−1−4の存在に関してアッセイするために特に有用である。
BMP−1−4抗体を固体支持体の表面に、BMP−1−4を含有する血液の試料と接触させた際にBMP−1−4に結合して結合複合体を形成するその抗体の能力を保つあらゆる手段により固定することができる。例えば、抗体を固体支持体に吸着(非共有結合性の付着)により、または当該技術で利用可能な方法を用いてその抗体を直接その固体表面に、もしくはその抗体がその固体支持体に繋がれることを可能にするリンカー分子に共有結合的に連結することにより固定することができる。
BMP−1−4およびBMP−1−4抗体を含む結合複合体を検出するための方法は、好ましくはヒトの目により容易に検出される、またはシグナル検出機器(例えば分光光度計)により容易に検出もしくは測定されるシグナルを生成するであろう1種類以上のシグナル生成分子(検出可能な標識)を用いる検出システムを用いる。結合複合体の検出において有用なそのようなシグナルには、蛍光シグナル、例えばBMP−1−4抗体に直接または間接的に結合させることができる蛍光色素またはシアニン分子から生成されるような蛍光シグナル;目に見える色のシグナル、例えばBMP−1−4抗体に直接または間接的に結合させることができる酵素または有色の分子(例えば色素)により生成されるような目に見える色のシグナル;放射性シグナル、例えばBMP−1−4抗体に直接または間接的に結合させることができる放射性同位体により生成されるような放射性シグナル;および光シグナル、例えば化学発光または生物発光系により生成されるような光シグナルが含まれるが、それらに限定されない。生物発光系の例はルシフェリン−ルシフェラーゼ系であり、ここでルシフェラーゼを抗体に直接または間接的に結合させてルシフェリン基質の存在下で検出可能な光シグナルを生成させることができる。
検出可能な標識は、当該技術で利用可能な標準的な試薬およびプロトコルを用いて、BMP−1−4抗体に直接またはリンカー分子を介してコンジュゲートさせることができる。あるいは、BMP−1−4抗体は未標識であってよく、BMP−1−4抗体に結合するかまたは抗原−抗体結合複合体中のBMP−1−4に第1のBMP−1−4抗体が結合しないエピトープにおいて結合するかのどちらかである二次結合分子(例えば抗体)を用いて検出可能なシグナルを生成することができる。この形式は標準的なサンドウィッチ免疫アッセイにより例示され、ここで“捕捉抗体”(例えばBMP−1−4抗体)が対象の抗原(例えばBMP−1−4)に結合して結合複合体を形成し、次いで検出可能な標識を含む二次抗体(検出抗体)が提供され、それがその捕捉抗体に結合し、またはその結合複合体中の対象の抗原にその捕捉抗体が結合していないエピトープにおいて結合する。その二次抗体もBMP−1−4抗体である場合、それはその捕捉抗体が結合しておらず、かつその捕捉抗体およびBMP−1−4の間で形成された結合複合体上に露出している(接近可能である)BMP−1−4上のエピトープに結合しなければならないことは理解されている。そのサンドウィッチ免疫アッセイの他のバリエーションは当業者には既知であり、本明細書で記載される方法における使用に適合させることができる。
別のアッセイ形式において、血液の試料中のBMPM−1−4を、BMP−1−4抗体を吸着させた、または共有結合的に連結したアッセイ細片を用いて検出する。そのようなアッセイ細片は、血液の試料中のBMP−1−4を検出または測定するための便利な手段を提供する。例えば、固定されたBMP−1−4抗体を含有するアッセイ細片を血液試料と、その細片をその試料中に手作業で、もしくはロボットにより浸漬する、または血液の試料をその細片上に滴下することにより接触させることができる。好ましくは、干渉する可能性のある分子による非特異的結合を低減するため、そのアッセイ細片をまずブロッキング剤、例えばウシ血清アルブミンまたは他の組成物中に浸漬する。必要であれば、そのアッセイ細片をさらに、その細片上の固定されたBMP−1−4抗体に結合したBMP−1−4を含む結合複合体の存在を示す検出可能または測定可能なシグナルを発現または生成させるために必要なあらゆる試薬に浸漬する、または接触させることができる。次いでそのアッセイ細片を目視観察し、または適切な検出機器により読み取って、その試料中のBMP−1−4の存在または量を決定する。
個体からの血液中のBMP−1−4を検出するための本明細書で記載される方法は、全血または全血の画分、例えば血漿または血清を用いることができる。いずれかの特定のアッセイ形式において全血、血漿、または血清、またはさらには何らかの他の血液画分を用いるかどうかの最終的な決定は、十分に当業者の理解および判断の範囲内である。一般には血漿が好まれる。
ヒトの個体から血液試料を得るための無菌の針、無菌の注射器、無菌の部分的に排気した血液試料チューブが含まれる(限定ではない)、個体から血液試料を得るための標準的な方法および設備の使用は、専門採血者(phlebotomists)および医療提供者には周知である。
個体から得た血液の試料中の(そしてそれにより個体の循環中の)BMP−1−4のレベル(量、濃度)を正確に測定する(定量化する)ため、本明細書で記載されるようなアッセイを用いて標準曲線を図表で、または計算的に生成することができる。例えば、本明細書で記載されるアッセイを、既知の濃度のBMP−1−4またはBMP−1−4の1つ以上のエピトープを含有するペプチドもしくはペプチドのコレクションを含有する1個以上の血液試料において、および一連の溶液において実施することができる(BMP−1−4標準)。次いでそれぞれのBMP−1−4標準に関して得られたシグナルの強度または大きさを用いて、シグナルの強度または大きさをBMP−1−4の量または濃度と関連付ける標準曲線を構築する。次いで未知のBMP−1−4含有量の試料からのシグナルの強度または大きさをその標準曲線上で読んで、その試料中に存在するBMP−1−4の対応するレベル(量、濃度)を決定することができる。好ましくは、未知のBMP−1−4含有量の試料中の未知のBMP−1−4のレベルは内挿により、すなわち未知のBMP−1−4含有量の試料からのシグナルの大きさまたは強度を少なくとも2個のBMP−1−4標準の点の間で生成された、または引かれた標準曲線の領域上で読むことにより決定される。それほど好ましくないが、場合により、試料中のBMP−1−4の量の決定を外挿により行うことができ、ここでシグナルの大きさまたは強度は、2個以上のBMP−1−4標準の点を越えて、またはその外側で引かれた、または生成された標準曲線の領域上にある。
本明細書において記載される方法および組成物は、好ましくはBMP−1−4抗体を血液の試料中のBMP−1−4の存在を検出する、またはそれを定量化するための好ましいBMP−1−4結合パートナーとして用いる。それでもなお、そのような方法および組成物は、BMP−1−4抗体分子以外のBMP−1−4結合パートナーの使用を、その結合パートナーをその方法および組成物において同様に用いる、またはその方法および組成物における使用に適合させることができる場合、含むことができることも理解されている。
血液の試料中のBMP−1−4の検出に必要な材料は、医療提供者が個体が急性心筋梗塞(AMI)に耐えてきたかどうかを決定することを可能にするキットへと好都合に組み立てることができる。1態様において、本発明のキットはBMP−1−4抗体および血液の試料中のBMP−1−4を検出するためのアッセイを実施するためにそのキットをどう用いるかを示す説明書を含む。別の態様において、キットは、BMP−1−4抗体に結合する第1抗体(捕捉抗体);第2抗体分子(検出抗体)、ここでその第2抗体は検出可能な標識を含有し、その捕捉抗体に結合し、またはその捕捉抗体が結合しないBMP−1−4のエピトープに結合する;および血液の試料中のBMP−1−4を検出または定量化するためのアッセイを実施するためにそのキットをどう用いるかを示す説明書を含んでいてよい。キット中の捕捉抗体として用いられるBMP−1−4抗体は溶液中で用いることができ、または固体支持体、例えばチップ、ビーズ、アッセイ細片、マイクロタイタープレートのウェルの表面等の上に固定することができ、それを血液の試料と接触させることができる。本明細書で記載されるキット中の構成要素である捕捉抗体および検出抗体は、様々な条件、例えば乾燥状態、未水和状態、凍結乾燥状態、脱水状態、または生理学的緩衝溶液中での水和状態のいずれかで包装することができる。水和させる、洗浄する、非特異的結合をブロッキングするための、またはその検出抗体上の検出可能な標識からのシグナル生成のための溶液も、本明細書で記載されるキット中に含まれていてよい。キットには、ヒトの個体から血液の試料を得るための1個以上の装置も含まれていてよい。そのような装置には、無菌のピン、無菌の針、無菌の針および注射器、ならびに無菌の排気された血液試料チューブが含まれるが、それらに限定されない。
本発明の追加の態様および特徴は、以下の限定的でない実施例から明らかであろう。
実施例1.ヘパリンSepharose親和性クロマトグラフィーによるヒトの血漿からのBMP−1−3およびBMP−1−4イソ型の同定(真正骨原性BMPは同定されなかった)、ならびに液体クロマトグラフィー−質量分析(“LC−MS”)を用いたタンパク質の同定。
ヒトの対象からの血液のBMP−1−3およびBMP−1−4イソ型に関する分析を、以前に記載されたように実施した。Grgurevic et al. (2011)、国際公開第2008/011193号を参照。
血漿の収集
血液試料を健康な成人の志願者および急性心筋梗塞(AMI)に耐えてきた患者から集めた。その血液試料を3.8%クエン酸ナトリウムを含有する注射器中に引き入れ、1:9の抗凝固剤対血液比(v/v)を形成した。血漿を遠心分離(3000×gにおいて15分間)により得て、それぞれの成人の血液試料の分割量(aliquots)を用いてプールされた血漿ストックを作製した。分割量の試料は分析の前に−80℃で保管された。
親和性カラム精製
プールされたヒト血漿(80ml)を10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)で2倍希釈し、予め10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)で平衡化した5mlヘパリンSepharoseカラム(Amersham Pharmacia Biotech)に適用した。結合したタンパク質をそのカラムから1.0Mおよび2.0M NaClを含有する10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)で溶離した。
硫酸アンモニウム沈殿
飽和硫酸アンモニウム(“SAS”)をそのタンパク質溶離液中に、ボルテックス上で混合しながら35%(w/v)の終濃度まで1滴ずつ添加した。試料を氷上に10分間おき、12,000×gで5分間遠心分離した。その上清を廃棄し、そのペレットをドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によるその後の分析のために準備した。
精製されたタンパク質のSDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析
そのペレットを、Laemmliの方法(Nature, 227: 680-685 (1970))に従う10%ゲルを用いる標準的なSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)上で泳動させた。電気泳動後、そのSDS−PAGEゲルの一部をニトロセルロースに転写し、その他の部分をクーマシーブリリアントブルー(“CBB”)で直接染色した。ニトロセルロース膜をまず真正の骨原性BMP、例えばBMP−7イソ型に特異的な抗体(Genera Research Laboratory)またはBMP−1イソ型に特異的な抗体と共に保温し、4℃で一夜保った。アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗マウス抗体を二次抗体として室温で1時間用いた。その膜を5mlの発色性基質を用いて現像した。そのゲルの他の部分を、標準的な染色手順(45%メタノール、10%酢酸中0.1%CBB;室温で30分間)の下でクーマシーブリリアントブルー(CBB)で染色した。
そのゲルを切って、CBBによる染色により明らかにされたようなそれぞれのタンパク質のバンドに対応する切片にした。次いでそのゲル切片を処理して、OlsenおよびMannにより記載され(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101: 13417-13422 (2004))、Grgurevicらにより改変された(J. Nephrol., 20: 311-319 (2007))ようなナノエレクトロスプレーLC−MSインターフェースを用いたHPLCおよび質量分析(“MS”)によりそれぞれのタンパク質のバンドから遊離されたトリプシン分解ペプチドを分析する方法を用いて、何のタンパク質がそれぞれの切片中に存在するかを決定した。この研究に特に関連するこの方法の工程の観点を下記で示す。
ゲル内(In−gel)トリプシン消化プロトコル
ゲル中のバンドをCBB染色したゲルから切り出し、トリプシン消化した。簡潔には、ゲル片を100μlのアセトニトリルにより8分間収縮させた。液体を除去し、ゲル片を100μlの炭酸水素アンモニウムで12分間再膨潤させ、次いでSpeedVac中で10分間乾燥させた。ジチオスレイトール(“DTT”、100μl)を添加し、57℃で45分間保温した。ゲル片を100μlのアセトニトリルにより57℃で8分間収縮させ、遠心沈殿させ、液体を除去した。ヨードアセトアミド(100μl)をそれぞれのゲル片に添加し、攪拌せずに暗所で室温において45分間保温した。トリプシン(10μl)をゲル片ごとに添加した。次いでそのゲル片を遠心沈殿させ、10分間再膨潤させた。試料をサーモミキサー中で37℃で一夜保温した。
ペプチド抽出プロトコル
試料を37℃のサーモミキサーから取り出した。アセトニトリル、水、およびギ酸を含有する溶液(50μl)を添加した。試料を15分間超音波処理した。上清を貯蔵用チューブに移し、50μlのアセトニトリルを添加した。抽出物をSpeedVac中で真空下で完全に乾燥するまで(約40分間)乾燥させた。ペプチドを10μlの水、メタノール、およびギ酸を含有する溶液で再溶解させた。試料を5分間超音波処理し、分析まで−20℃で保管した。
質量分析
トリプシン分解ペプチドを以下のように液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)により分析した。Agilent 1100ナノフローHPLCシステム(Agilent Technologies、カリフォルニア州パロアルト)を、ナノエレクトロスプレーLC−MSインターフェース(Proxeon Biosystems、デンマーク、オーデンセ)を用いて7−Tesla LTQ−FT質量分析計(Thermo Electron、ドイツ、ブレーメン)に連結した。ペプチドを自家製の75μm C18 HPLCカラム上で分離し、正イオンモードでオンザフライ(on−the−fly)で質量分析した。それぞれの測定サイクルは、完全質量分析(MS)走査、続いて選択イオンモニタリング(SIM)走査、MS/MS、および3つの最も強いイオンのMS/MS/MS走査で構成されていた。これは2ppmの典型的なペプチド質量精度ならびにMS/MSおよびMS/MS/MSフラグメントイオンからの追加の配列情報を提供した。得られたスペクトルの重心を決め(centroided)、Mascot検索エンジン(Matrix Science)を用いてNCBInrデータベースに対して検索した。検索は、トリプシン分解の特異性、固定された修飾としてのカルボキシアミドメチル化、および可変性修飾としての酸化されたメチオニンにより行われた。MSおよびMS/MSスペクトルに関して、それぞれ5ppmおよび0.6Daの質量許容差を用いた。
結果
健康なヒトの個体からの血液に関して、LS−MSおよび免疫ブロッティング分析は12種類(12)のトリプシン分解ペプチドを明らかにし、それをNCBInrデータベースと比較した。2種類のペプチドはいずれの既知の真正骨原性BMPにも属さないが、BMP−1−3の前駆体のスプライスイソ型3(Swiss−Prot:P13497−2;SEQ ID NO:2)、すなわちプロコラーゲンC−プロテイナーゼに属することが分かった。その2種類のペプチドのアミノ酸配列は以下の配列である:
S−G−L−T−A−D−S−K(SEQ ID NO:2のアミノ酸653〜660)、Mascotスコア=36;
G−I−F−L−D−T−I−V−P−K(SEQ ID NO:2のアミノ酸280〜289)、Mascotスコア=26。
NCBInrデータベース中の他のタンパク質で同じペプチドのセットに一致するものはなかった。真正骨原性BMPタンパク質は、LS−MSにより、または免疫ブロッティングにより100kDaおよび35kDaの分子量において検出されなかった。以前の発見(国際公開第2008/011193 A2号;Grgurevic et al. (2011))と一致して、その結果は、真正骨原性BMPは通常は健康な成人の血液中を循環していないが、BMP−1−3、すなわちプロコラーゲンC−プロテイナーゼイソ型は正常なヒトの血液の可溶性タンパク質構成要素であることを示している。
急性心筋梗塞に耐えてきたヒトの患者の血液に関して、そのLS−MSおよび免疫ブロッティング分析はBMP−1−3のペプチドおよび2種類のトリプシン分解ペプチドも明らかにし、それをNCBInrデータベースと比較した。その2種類のペプチドはBMP−1−4イソ型のアミノ酸配列(SEQ ID NO:3)に属することが分かった。その2種類のペプチドのアミノ酸配列は以下の配列である:
K−N−C−D−K−F−G−I−V−V−H−E−L−G(SEQ ID NO:3のアミノ酸203〜216)、Mascotスコア=51;
G−V−L−H−S−S−L−L−L−L−S−C−G(SEQ ID NO:3のアミノ酸244〜256)、Mascotスコア=64。
従って、健康な個体の血液はBMP−1−3を含有する(そして他のBMP−1のイソ型を含有しない)が、急性心筋梗塞に耐えてきたヒトの個体の血液はBMP−1−3およびBMP−1−4の両方を含有する。BMP−1−4イソ型タンパク質がタンパク質レベルで実証され、急性心筋梗塞のヒトの患者の血液中に存在するが健康な個体の血液中には存在しないことが示されたのはこれが最初である。従って、ヒトの個体の血液の試料中のBMP−1−4の検出は、その個体が急性心筋梗塞に耐えてきたことを示している。
実施例2.ヒトの心臓におけるBMP−1−4の局在
BMP−1−4抗体を用いて、発生中のヒトの胎児の心臓および胎盤にBMP−1−4が局在していた(データは示していない)。成人の心臓の切片において、BMP−1−4タンパク質は筋原線維および筋細胞において検出されたが、様々な他の主要な器官からの組織では検出されなかった(データは示していない)。その結果は、BMP−1−4イソ型の発現はヒトの心臓の発生および機能に独特に関連していることを示している。
実施例3.急性心筋梗塞に関する処置を研究するための材料および方法。
抗体の生成
BMP−1−3およびBMP−1−4に対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体は、BMP−1−3およびBMP−1−4のアミノ酸配列(それぞれSEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3)に由来する合成ペプチド断片を用いて生成された。
BMP−1−3タンパク質に対するモノクローナル抗体を生成するため、マウスを以下のBMP−1−3タンパク質のC末端領域のアミノ酸配列を有する合成ペプチドを用いて免疫した:
R−Y−T−S−T−K−F−Q−D−T−L−H−S−R−K(SEQ ID NO:2のアミノ酸残基972〜986)。
BMP−1−4タンパク質に対するモノクローナルおよびポリクローナル抗体を生成するため、動物を以下のアミノ酸配列を有する合成ペプチドを用いて免疫した:
C−G−S−R−N−G−A−S−F−P−S−S−L−E−S−S−T−H−Q−A(SEQ ID NO:8)。
このペプチドは、265位のシステイン(Cys)がセリン(Ser)により置き換えられていることを除いて、BMP−1−4(SEQ ID NO:3)のアミノ酸残基255〜274と同一のアミノ酸配列を有する。これは、抗BMP−1−4抗体の生成に関する望ましい免疫原性部位を塞いでいた可能性のあるスルフヒドリル架橋の形成を防いだ。
ペプチドに特異的な抗体を、精製された組み換えBMP−1−3(Genera Research Lab)を用いた酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて同定した。その抗体を親和性精製した。
BMP−1−3に対する、およびBMP−1−4に対するモノクローナル抗体を、ProMab(米国カリフォルニア州リッチモンド)から、製造業者のハイブリドーマ手順において上記のペプチドを用いてBalb/Cマウスを免疫して得た。BMP−1−3抗体の中和活性を、標準的な切断アッセイを用いてBMP−1−3に媒介されるプロコラーゲンまたは象牙質マトリックスタンパク質1(DMP−1)の切断の阻害により実証した(データは示していない)。例えば、Kessler et al. (1996)およびLi et al. (1996)(プロコラーゲン1切断アッセイ);Qin et al. (2003)およびSteiglitz et al. (2004)(DMP−1切断アッセイ)を参照。下記で記載される研究において示されるように、BMP−1−3 mAbおよびBMP−1−4 mAbの両方が急性心筋梗塞のその疾患に関するラットモデルにおける処置において有効であった。
急性心筋梗塞に関するラットモデル
本明細書で記載される研究は、ラットにおける実験急性心筋梗塞モデルを用いた。このモデルはヒトにおいて急性心筋梗塞後に起こる生理病理学的変化に類似した生理病理学的変化を示し、その梗塞後に起こり得る形態学的および機能的変化を最小限にするための療法的介入の研究に関して一般的に好まれるモデルである。例えば、Zornoff et al. (2009)を参照。6月齢のSprague−Dawleyラットを最初に一定温度(25℃)および日夜光周期の標準的な条件下で収容した。体重250〜300グラムのオスのラットを、腹腔内投与したキシラジン(0.6ml/kg、Rompun(登録商標)、Bayer AG、ドイツ、レバークーゼン)およびケタミン(Narketan、0.8ml/kg、Chassot GmbH、ドイツ)の組み合わせで麻酔した。第4肋間腔において左側開胸を実施した後、心膜を切開した。心臓を胸部の側方圧縮により体外移転した。結紮糸(6/0 Ethilon(商標)縫合糸、Ethicon、米国ニュージャージー州サマヴィル)を左主幹冠動脈の周りに、その基点の近くに、左心房境界および肺動脈溝の間に配置した。次いで、心臓を迅速に胸腔に戻し、肺をポジティブベンチレーションにより拡張させた。
血漿CK−MBおよびトロポニンtの測定
心筋細胞の損傷および壊死を、結紮に誘発された急性心筋梗塞(AMI)を実施したラットにおいて、本明細書で記載されるように、心組織損傷に関する確立されたマーカーである2種類の心臓マーカー、すなわちクレアチンキナーゼ心筋バンド(“CK−MB”)およびトロポニンt(“Tn−T”)の血漿レベルを測定することにより評価した。血液中のCK−MBおよびTn−Tの高められたレベルは、急性心筋梗塞からの心組織損傷が含まれる心組織損傷を示すものである。血液試料を動物の眼窩叢から引き出し、ヘパリン処理したチューブに集めた。試料を測定を行うまで2000×gで15分間迅速に遠心分離した。その2種類のAMIに関するマーカーを、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて測定した。
血液試料中のトロポニンt(“Tn−T”)のレベルを、下記の研究において商業的なELISAキット(トロポニンT hs STAT、Roche Diagnostics、ドイツ、マンハイム)を用いて決定した。この特別なELISAは、Tn−Tに特異的な抗体で予めコートしてあるウェルを有するマイクロタイタープレートを用いる定量的サンドウィッチ酵素免疫アッセイである。標準および試料をそのウェルに添加し、その標準または試料中に存在するあらゆるTn−Tが固定された抗体に結合される。あらゆる未結合の物質を除去した後、やはりTn−Tに特異的であるビオチンコンジュゲート抗体をそのウェルに添加する。洗浄した後、アビジンコンジュゲートホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)をそのウェルに添加する。次いでHRP酵素の基質であるTMB(3’,3’,5’,5’テトラメチルベンジジン)をそのウェルに添加してHRP反応を開始させる。保温期間の間、そのHRP反応は最初の工程でそのマイクロタイタープレートのウェルに結合したTn−Tの量に比例して色を生成する。その反応を停止溶液(硫酸溶液)を用いて終了させ、それぞれのウェル中の反応混合物の色を450nm±2nmにおいて分光測定により測定する。次いでその試料中のTn−Tの濃度をその試料の光学密度を標準曲線に対して比較することにより決定する。
血液試料中のCK−MBのレベルもELISAキット(クレアチンキナーゼ−MB、CKMBL、Roche Diagnostics、米国インディアナ州インディアナポリス)を用いて決定した。
心エコー検査での評価
下記の研究における全ての動物(ラット)は麻酔下で心エコー検査を受けた。動物をケタミンおよびキシラジンの組み合わせで軽く麻酔した。二次元(2D)ガイドMモード経胸壁心エコー検査を実施した。Mモードでの記録に関して、胸骨傍短軸像を用いて心臓を乳頭筋のレベルにおいて2Dで画像化した。左心室(LV)容積を式による2D測定により計算した。以下のMモード測定を決定した:拡張期および収縮期の両方におけるLV(左心室)内径(それぞれLVIDdおよびLVIDs)、拡張期および収縮期におけるLV後壁径(それぞれLVPWdおよびLVPWs)、ならびに拡張期および収縮期の両方における心室中隔径(それぞれIVSdおよびIVSs)。これらの測定から、駆出率(EF)および短縮率(FS)を得た。心エコー検査はそれぞれの動物に対して2人の異なる医師により3回実施され、その結果が平均値として示された。
PETデータの取得およびデータ分析
陽電子放出断層撮影(PET)は、実験動物中に注射された放射線学的に標識された生理活性分子の空間および時間における分布を追跡することにより体内の特定の機能プロセスの3次元(3D)画像を生成する核医学の画像化技法である。そのシステムは、生理活性分子に結合した陽電子放出放射性核種(トレーサー)から来る陽電子の消滅により生み出されるガンマ線の対を検出し、次いで体内のトレーサー濃度の3次元画像をコンピューター分析により再構成する。本明細書で記載される急性心筋梗塞の研究において、その生理活性分子はフルデオキシグルコース(fludeoxyglocose)(FDG、フルオロデオキシグルコース)であり、それはその実験動物中に静脈内注射することができたグルコースの類似体である。FDGは機能する心筋組織により取り込まれるが、機能しない虚血性心筋組織には取り込まれない。その技法は、おおよそ反対方向に動く光子の対の同時検出に依存する(それはそれらの重心系において正確に反対であろう)。
本明細書で記載される研究は、比較的長い期間にわたって起こるプロセスに関係していた。特に、急性心筋梗塞の研究におけるそれぞれの動物に関して、3つの時点において画像を得るために測定を行った:(1)それぞれの動物に関するベースラインを確立するための実験の前、(2)虚血作用をもたらした結紮の後(1週間)、およびその手術のはるかに長い期間の後(1ヶ月)。この方法で、回復プロセスの全ての段階がカバーされた:ベースライン(正常な取り込み)、急性期(手術の直後)、および長期回復。
データ分析はPMODソフトウェアのバージョン3.3を用いて実施され、それはClearPetカメラからの入力に関して同期および較正された。
その分析は2つの工程に分けられた:(1)定性的分析および(2)定量的分析。定性的作用を確立するため、以下の手順が考案された:まず、許容可能な時間フレームの時間平均を決定した。次いでFUSION PMODプログラムを用いて異なる測定を共記載した(co−register)(それらを同一の位置に持ち込んだ)。急性心筋梗塞の実験のため、全ての測定をベースライン測定と共記載した。次に、それぞれの実験に関して心臓の3D画像を得るためのSURFACEタイプモードでの3D PMODプログラム、しかし表面閾値を最小値からより高い値へと変動させて全ての動物における等活動線(isoactivity lines)を描いた。
実施例4.BMP−1−3に対するモノクローナル抗体で処置した急性心筋梗塞を有するラットの血漿中のCK−MB酵素の分析。
この研究は、手術前後にBMP−1−3に対するモノクローナル抗体(BMP−1−3 mAb)で処置した結紮に誘発される急性心筋梗塞を有するラットにおけるクレアチンキナーゼ心筋バンド(CK−MB)タンパク質の血漿レベルを決定した。合計16匹のラットを用いた。その動物を、6匹の動物で構成される対照群、およびBMP−1−3モノクローナル抗体(15μg/kg)で前処置した10匹のラットで構成される療法群に分けた。手術後、生存している動物を2つの群に分けた:(1)結紮された冠動脈を有する対照ラット(n=4)および(2)結紮された冠動脈を有し、第1週の間毎日BMP−1−3モノクローナル抗体で処置したラット(n=7)。血液を異なる時点で採取した:手術前、ならびに手術後1、2、3、および7日目。図2において示されるように、結紮前のCK−MB値は類似していたが、手術の24時間(1日)後にその値は抗体で処置したラットにおいてより低かった(未処置の対照群における459U/Lに対してBMP−1−3 mAbで処置した群において376.7U/L)。2日目に、CK−MBは未処置の対照ラットにおいて621.8であり、一方でそれはBMP−1−3 mAbで処置したラットでは441.9にすぎなかった(p<0.05)。より後の時点で、CK−MB値はやはりBMP−1−3 mAbで処置したラットにおいて未処置の対照ラットと比較してより低かった。図2参照。
その結果は、BMP−1−3が急性心筋梗塞に関する療法標的であり、BMP−1−3に対する抗体の投与は個体を急性心筋梗塞に関して処置するための有効な療法であることを示している。
実施例5.BMP−1−4に対するポリクローナル抗体で処置した急性心筋梗塞を有するラットの血漿中のCK−MB酵素の分析。
合計20匹のラットをこの実験において用いた。異なる時点におけるラットの血液中のCK−MBのレベルを測定した:冠動脈結紮手術前ならびに結紮後1、2、3、6、および7日目。10匹のラットをBMP−1−4ポリクローナル抗体(15μg/kg)で前処置した。手術後、冠動脈結紮を生き延びたラットを2つの群に分けた:(1)療法なしの結紮に誘発される急性心筋梗塞を有する対照ラット(n=8)および(2)結紮に誘発される急性心筋梗塞を有し、BMP−1−4ポリクローナル抗体で処置したラット(n=6)。図3において示されるように、BMP−1−4ポリクローナル抗体による処置はラットにおいて手術の2日後に未処置の対照ラットと比較してCK−MBの血清値を有意に低下させた(例えば、対照群における563.8対抗体で処置したラットにおける441.5)。より後の時点で、CK−MB値はやはりBMP−1−4ポリクローナル抗体で処置したラットにおいて未処置の対照ラットと比較してより低かった(例えば、7日目において、BMP−1−4ポリクローナル抗体で処置したラットにおける237.2と比較して対照群において395.5)。
その結果は、BMP−1−4が急性心筋梗塞に関する療法標的であり、BMP−1−4に対する抗体の投与が急性心筋梗塞を処置するための有効な療法であることを示している。
実施例6.BMP−1−3およびBMP−1−4モノクローナル抗体の組み合わせで処置した急性心筋梗塞を有するラットの血漿中のトロポニンtの分析。
この研究は、AMIを誘発するための結紮手術の前および後にBMP−1−3 mAbおよびBMP−1−4 mAbの組み合わせで処置した、誘発された急性心筋梗塞(AMI)を有するラットにおけるトロポニンt(“Tn−T”)のレベルを追跡した。合計21匹のラットをこの試験において用いた。冠動脈結紮の前に、7匹のラットを組み合わせ(BMP−1−3抗体+BMP−1−4抗体;それぞれの抗体に関して15μg/kg)で前処置し、一方で14匹のラットを未処置のままにした(対照群)。24時間後にラットは左冠動脈の外科的結紮を受けた。生存している動物を2つの群に分けた:(1)結紮された冠動脈を有する対照ラット(n=6)および(2)BMP−1−3 mAb+BMP−1−4 mAbで処置した誘発されたAMIを有するラット(n=3)。抗体で処置した動物は、手術の24および48時間後に15μg/kgのそれぞれの抗体を与えられた。血液を異なる時点で採取した:手術前、結紮手術後1日目、2日目、3日目、および6日目(図4)。抗体の組み合わせは、AMIを有する未処置の対照動物と比較して、血清Tn−Tレベルの低下における有意な作用を示した。1、2、および3日目の間に、未処置の対照ラットにおける値は7.8、3.26、1.18であり、一方で抗体で処置した動物ではその値は5.72、1.63、および0.24であった。図4参照。
その結果は、BMP−1−3 mAbおよびBMP−1−4 mAbの併用療法は急性心筋梗塞を処置するために有効であることを示している。
実施例7.急性心筋梗塞を有するラットにおける心機能の心エコー検査での評価。
抗体療法の機能的結果および線維症の形成を、未処置の冠動脈結紮した対照ラットの、およびBMP−1−3モノクローナル抗体(15μg/kg)で処置した冠動脈結紮したラットのMモードでの心臓の心エコー検査によりさらに研究した。合計19匹のラットをこの長期追跡研究のために用いた。手術後に生存していたラットを3つの群に分けた:(1)偽手術群:正常な健康な動物(n=3)、(2)対照群:誘発された急性心筋梗塞を有する未処置のラット(n=4)、(3)療法群:手術の前および手術後の最初の週の間にBMP−1−3モノクローナル抗体で処置した、誘発された急性心筋梗塞を有するラット(n=7)。心エコー検査を手術の45日後に実施した。健康なラットの分析を用いて、以下のように平均値を定めた:IVSd=1.1mm、LVIDd=5.3mm、LVPWd=1.77mm、IVSs=2.3mm、LVIDs=2.7mm、LVPWs=2.4mm、EF=85.5%、FS=49.1%。誘発された急性心筋梗塞を有する対照のラットは機能における重度の低下を有しており、それは心エコー検査のパラメーターにおいて現れた:IVSd=1mm、LVPWd=1.73mm、IVSs=1.1mm、EF=68.8%、FS=33.9%。BMP−1−3モノクローナル抗体を用いた処置(療法)は、心機能を高めた:IVSd=1.38mm、LVIDd=5.9mm、IVSs=2.7mm、EF=88.2%、FS=52.9%。下記の表1を参照。
実施例8.陽電子放出断層撮影(PET)のデータ取得およびデータ分析。
この実験において、20匹のラットを急性心筋梗塞のラットモデルにおける手術の前にPETにより走査した。手術の前に、そのラットを対照ラット(n=10)およびBMP−1−3 mAbで処置した動物(n=10)に分けた。手術後、死亡率は対照ラットにおいて50%および手術前にBMP−1−3 mAbで処置したラットにおいて30%であった。次いでラットをBMP−1−3 mAbにより、2、7、および14日目において15μg/kgの用量で処置した。手術前の最初のPET走査の他に、そのラットを最初の週および最初の月の後に走査して、梗塞の進行および療法の影響を評価した。対照群からの、およびBMP−1−3 mAb処置群からの動物の代表的な心臓の画像を図5において示す。第1週の後、両方の群は梗塞領域において低下したFDG取り込みを示した(0.36対0.38)。1ヵ月後、BMP−1−3 mAbで処置したラットにおいて、梗塞領域におけるFDGの取り込みが回復し(0.42)、これは前者の梗塞領域における機能する心筋組織の実質的な再構築および再生を示しており、一方で未処置の対照ラットでは取り込みは低いままであり(0.36)、これは機能しない瘢痕組織を示している。図5参照。
実施例9.急性心筋梗塞後の心筋の組織学的分析。
結紮に誘発される急性心筋梗塞(AMI)を有するラットの心筋において組織学的分析を実施し、BMP−1−3モノクローナル抗体(BMP−1−3 mAb)による処置の作用を評価した。ラット(n=16)を、6匹の動物で構成される対照群、およびBMP−1−3 mAb(15μg/kg)で前処置した10匹の動物で構成される療法群に分けた。手術後、生存している動物(n=11)を2つの群に分けた:(1)結紮された冠動脈を有する対照ラット(n=4、BMP−1−3 mAbによる前処置なし)および(2)BMP−1−3により前処置し、次いで最初の週の間毎日BMP−1−3 mAbで処置した結紮された冠動脈を有するラット(n=7)。
AMIラットの左心室からの心筋組織(厚さおおよそ2mm)を取り出した。試料を4%の予め冷却したパラホルムアルデヒド中で72時間固定し、組織学的研究のためにパラフィン中に包理した。パラフィン包理した組織をおおよそ5μmの厚さの薄片に切り分けた。切片を細胞構成要素を明らかにするために標準的なヘマトキシリンおよびエオジン(“H&E”)で染色し、線維性コラーゲン組織の蓄積を同定するためにシリウスレッド(およびピクリン酸)で染色した。画像を光学顕微鏡下で可視化した。
図6は、AMIを有する未処置の対照ラットおよびBMP−1−3 mAbで処置したAMIを有するラットに関する冠動脈結紮後のラットの心筋の組織学的分析からの顕微鏡写真を示す。図6Aは、AMIを誘発するための左冠動脈の結紮の1週間後における未処置の対照ラットの心臓の梗塞領域からの心臓切片を示す(図6Aにおいて4倍の倍率)。図6Bは、早期のコラーゲン沈着を示す、図6A中の長方形の領域(20倍の倍率)の組織のシリウスレッド染色を示す。図6B中の矢印を参照。図6Cは、損傷した心筋線維に囲まれた1ヵ月後の残存線維性瘢痕組織を明らかにする、ヘマトキシリンおよびエオジンにより染色したAMIを有する未処置の対照ラットからの心筋組織の切片を示す。図6C中の矢印を参照。図6Dは、AMIを誘発するための左冠動脈の結紮の前にBMP−1−3 mAb(15μg/kg)で処置し、次いで手術後の第1週の間毎日BMP−1−3 mAbで処置したラットの心臓の梗塞領域からの心臓切片を示す。AMI後の線維性領域が対照のラットにおいて観察された線維性領域よりも有意に小さかった。図6D中の矢印を参照。図6Eは、新しい再生筋線維のスポットを明らかにする、より高い倍率の図6D中の矢印により示された領域を示す。図6E中の矢印を参照。図6Fは、新しく形成された筋線維および未処置の対照ラットからの組織において観察された線維性組織よりも明らかに低密度である線維性組織を有する周囲の細胞を明らかにする、より高い倍率の図6E中の矢印により示された領域を示す。
AMI後の心筋組織の組織学的分析は、BMP−1−3 mAbによる処置が最初の梗塞領域において瘢痕の大きさを有意に減少させ、新しく形成された筋線維を有する結節の形成を促進したことを示している。
まとめると、上記の実施例の結果は、BMP−1−3に対する抗体および/またはBMP−1−4に対する抗体の投与は、急性心筋梗塞に耐えてきた個体の心臓において最初の梗塞領域の進行を低減するために、ならびに最初の梗塞領域において組織の再構築を促進して抗体処置の非存在下での修復および瘢痕組織よりも有意に高い質を有し、より機能する修復および瘢痕組織を形成させるために有効であることを明確に示している。
上記の本文において引用された全ての特許、出願、および刊行物を参照により本明細書に援用する。
本発明の開示または下記の特許請求の範囲から逸脱することのない、本明細書で記載される本発明の他の変形および態様は、ここで当業者には明らかであろう。