JP6132852B2 - サルモネラ微生物の検出方法 - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
(関連出願の相互参照)
[001]本出願は、2011年12月28日に出願された米国特許仮出願第61/580,849号の利益を主張し、その全体を参照として本明細書に組み込む。
(背景)
[002]腸内細菌科は、糖(例えば、グルコース)を発酵させて乳酸及び/又は他の酸性最終生成物にする能力を有する代謝的に多様な、通性嫌気性微生物(bacteria)を数多く含む。この科は、大腸菌、サルモネラ属のいくつかの亜種、エルシニア菌、クレブシエラ属のいくつかの種、及びシゲラ属のいくつかの種のような、いくつかの周知のヒト病原体を含む。
[003]サルモネラ属は、ヒトに病気を引き起こすことができる亜種を含む2つの種、S.エンテリカ及びS.ボンゴリを含む。病原性サルモネラのいくつかは、汚染された食物又は飲料の摂取を介してヒトに感染し得る。食物試料中のサルモネラ微生物の検出は、試料中のサルモネラ微生物(microorganisms)が比較的少数で存在すること、密接に関係する非サルモネラ腸内微生物が比較的多数存在すること、及び/又はサルモネラ微生物の増殖若しくは検出を邪魔し得る試料中の非微生物物質(例えば、食物粒子又は可溶性化学物質)の存在のために、困難であり得る。
[004]試料中のサルモネラ微生物を検出するため及び1つ以上の非サルモネラ微生物からそれらを区別するために、様々な選択的及び/又は識別的な微生物培養培地が開発されてきた。典型的には、これらの培養培地は、非腸内微生物の増殖を阻害する選択剤を含んでいる。加えて、これらの培養培地の多くは、サルモネラと非サルモネラ微生物とを区別する1つ以上の識別指示システムに依存する。
[005]試料中のサルモネラ微生物を検出するための様々な微生物培養培地があるものの、試料中のサルモネラ微生物を検出するための改善された方法は、なお必要とされている。
(要約)
[006]概して、本開示は、試験試料中のサルモネラ微生物の有無を検出するための組成物及び方法に関する。具体的には、組成物は、サルモネラ微生物の増殖を促進するものであり、グラム陽性微生物の増殖を阻害する少なくとも1つの選択剤を含んでいる。更に、組成物は、少なくとも2つの識別指示システムを含む。識別指示システムの少なくとも1つは、非サルモネラ微生物からサルモネラ微生物を陽性に識別し、識別指示システムの少なくとも1つは、非サルモネラ微生物からサルモネラ微生物を陰性に識別する。
[007]一態様において、本開示は、組成物を提供する。組成物は、ゲル化剤と、グラム陽性微生物の増殖を阻害する少なくとも1つの第1の選択剤と、少なくとも1つの第1の識別指示化合物を含む第1の識別指示システムと、ウレアーゼ酵素活性により第2の検出可能な生成物に変換される第2の識別指示化合物を含む第2の識別指示システムと、を含む、半固体の培養培地を含み得る。第1の識別指示化合物は、サルモネラ属に属する複数のメンバーにより第1の検出可能な生成物に変換され得る。第1の識別指示化合物は、培養培地の中及び/又は上に検出可能なコロニーを形成する複数の非サルモネラ属のグラム陰性腸内微生物により第1の検出可能な生成物に変換され得ない。
[008]組成物の任意の実施形態において、第1の識別指示化合物は、メリビオース、2−デオキシ−D−リボース、マンニトール、L−アラビノース、ダルシトール、マルトース、L−ラムノース、トレハロース、D−キシロース、ソルビトール、及び前述の化合物の任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される化合物を含むことができる。上記の実施形態のいずれかにおいて、組成物は、緩衝試薬を更に含むことができる。緩衝試薬は、MOPS、リン酸塩、TES、HEPES、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
[009]上記実施形態のいずれかにおいて、組成物は、β−ガラクトシダーゼ酵素活性により第3の検出可能な生成物に変換される第3の識別指示化合物を含む第3の識別指示システムを更に有し得る。任意の実施形態において、第3の識別指示化合物は、発色酵素基質を含み得る。任意の実施形態において、第3の識別指示化合物は、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド、p−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド、3,4−シクロヘキセノエスクレチン−β−D−ガラクトピラノシド、及び6−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシドからなる群から選択され得る。
[0010]上記実施形態のいずれかにおいて、少なくとも1つの第1の選択剤は、胆汁酸塩、コール酸、デオキシコール酸、クリスタルバイオレット、又は前述の化合物の任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択することができる。上記実施形態のいずれかにおいて、pH指示薬は、フェノールレッド、クロロフェノールレッド、ニュートラルレッド、ブロモチモールブルー、及びブロモチモールパープルからなる群から選択され得る。
[0011]上記実施形態のいずれかにおいて、組成物は、サルモネラ属に属するものではない少なくとも1つのグラム陰性腸内微生物の増殖を阻害する少なくとも1つの第2の選択剤を更に含み得る。少なくとも1つの第2の選択剤は、β−ラクタム系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、キノロン系抗生物質、サルファ系抗生物質、ポリミキシン系抗生物質、及び前述の抗生物質の任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、少なくとも1つの第2の選択剤の濃度は、サルモネラ微生物の増殖を可能にするように選択される。上記の実施形態のいずれかにおいて、ゲル化剤は、寒天、アガロース、ペクチン、ゼラチン、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン、及び前述のゲル化剤の任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
[0012]別の態様では、本開示は、サルモネラ微生物の検出方法を提供する。方法は、試験試料、培養装置、及び上記の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を準備することと、播種された培養装置を形成するために培養装置内で組成物と試験試料を接触させることと、第1の時間、播種された培養装置をインキュベートすることと、培養装置を観察して、第1の検出可能な生成物を検出することと、を含み、第1の検出可能な生成物はサルモネラ微生物の存在の第1の指示である。
[0013]方法の任意の実施形態において、第1の検出可能な生成物を検出することは、微生物により産生された酸性化合物とpH指示薬との反応を観察することを含み得る。任意の実施形態において、方法は、栄養培地を観察し、第2の検出可能な生成物を検出することを更に含み、第2の検出可能な生成物は非サルモネラ微生物の存在を示す。第2の検出可能な生成物を検出することは、微生物により産生された塩基性化合物とpH指示薬との反応を観察することを含み得る。任意の実施形態において、方法は、栄養培地を観察し、第3の検出可能な生成物を検出することを更に含むことができ、第3の検出可能な生成物は非サルモネラ微生物の存在を示す。第3の検出可能な生成物を検出することは、β−ガラクトシダーゼ酵素活性により産生される、着色された生成物を検出することを含み得る。
[0014]上記実施形態のいずれかにおいて、本方法は、サルモネラ微生物によって第4の検出可能な生成物に代謝され得る確定指示化合物を有する物品を提供することと、物品を培養培地と接触させることと、装置を第2の時間インキュベートすることと、培養装置を観察して、第4の検出可能な生成物を検出することと、を更に含み、第4の検出可能な生成物が存在する場合には、第1の検出可能な生成物、第2の検出可能な生成物、及び第3の検出可能な生成物から区別され得るものであり、第1の検出可能な生成物と並べて第4の検出可能な生成物を検出することは、試料中のサルモネラ微生物の存在の第2の指示である。
[0015]上記の実施形態のいずれかにおいて、方法は、第1のタイプの微生物のコロニーの数を計数することを更に含み得る。任意の実施形態において、方法は、第2のタイプの微生物のコロニーの数を計数することを更に含み得る。方法の任意の実施形態において、培養装置を観察することは、培養装置を目視で観察することを含み得る。方法の任意の実施形態において、培養装置を観察することは、撮像装置を使用して培養装置の画像を作成することを含み得る。任意の実施形態において、方法は、プロセッサを使用して画像を分析することを更に含み得る。
[0016]用語「好ましい」及び「好ましくは」とは、特定の状況下で、特定の利益をもたらすことができる、本発明の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態もまた、同じ状況又は他の状況下で、好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用ではないことを意味するものではなく、更に本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
[0017]本明細書で使用する「サルモネラ微生物」は、サルモネラ属に属する任意の微生物を指す。
[0018]本明細書で使用する「識別指示システム」は、2種類の化合物の少なくとも1つ(本明細書では「識別指示化合物」と呼ぶ)を検出可能な生成物に変換する微生物のそれぞれの能力に基づいて、2種類の微生物を区別するために使用される1つ以上の化合物を指す。場合によっては、識別指示化合物(例えば、2−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシド)は、ある種の微生物によって、検出可能な生成物(例えば、2−ニトロフェノール)に直接変換され得る。場合によっては、例えば、識別指示化合物(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−α−D−ガラクトピラノシド)は、ある種の微生物によって空気の存在下で反応して検出可能な生成物(インディゴ染料の1種)を形成し得る中間生成物に変換され得る。場合によっては、例えば、識別指示化合物(例えば、メリビオースのような発酵性の炭水化物)は、ある種の微生物によって、その識別指示システム(例えば、クロロフェノールレッドのようなpH指示薬)のもう一方の成分と反応して検出可能な色の変化を他方の成分に引き起こすことができる、検出可能な生成物(例えば、乳酸)に変換され得る。
[0019]用語「含む」及びその変化形は、これらの用語が、本説明及び特許請求の範囲に現れる場合、限定する意味を有するものではない。
[0020]本明細書で使用するところの「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、互換可能に使用される。したがって、例えば、微生物は、「1つ以上の」微生物を意味すると解釈され得る。
[0021]用語「及び/又は」とは、列記される要素のうちの1つ若しくは全て、又は列記される要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
[0022]また本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲に含まれるすべての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
[0023]上記の本発明の課題を解決するための手段は、本発明の開示されるそれぞれの実施形態、又は本発明のすべての実施を説明することを目的としたものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示するものである。本出願の全体にわたるいくつかの箇所で、実施例のリストを通じて指針が提供され、それらの実施例は、様々に組み合わせて使用することができる。いずれの場合も、記載されるリストは、あくまで代表的な群としてのみの役割を果たすものであって排他的なリストとして解釈するべきではない。
[0024]これらの及び他の実施形態の更なる詳細が、添付の図面及び以下の説明に記載されている。他の特徴、目的、及び利点は、その説明と図面、及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
[0025]本開示によるサルモネラ微生物を検出する方法の一実施形態のブロック図を示す。 [0026]図1に示した方法を使用して得られた結果を解釈するために使用されるフローチャートの一実施形態のブロック図を示す。
(詳細な説明)
[0027]サルモネラ属には、2つの種、サルモネラエンテリカ及びサルモネラボンゴリが含まれる。2つの種の遺伝的関係は、Fookesらによって研究されている(参照により本明細書にその全体が援用される「Salmonella bongori Provides Insights into the Evolution of the Salmonellae」、PLOs Pathogens at www.plospathogens.org,2011,vol.7、記事番号e1002191、p 1〜16)。S.エンテリカの亜種は、人に病気を感染させる及び病気を引き起こす能力のために、S.ボンゴリよりもよく知られているが、S.ボンゴリもまた人の感染を引き起こすことが示されている。したがって、潜在的な病原性を有するサルモネラ微生物を検出するように設計されたテストは、両方の種を検出する能力を有する必要がある。
[0028]本開示は、広くは、試料中のサルモネラ微生物を検出する方法に関する。具体的には、本開示は、非サルモネラ微生物(例えば、大腸菌及び他の腸内細菌科の菌)からサルモネラ微生物を区別することができる組成物及び増殖に基づく検出方法に関する。本発明の方法は、複数の識別指示試薬を含む選択的増殖培地を組み合わせる。所望により、方法は、S.ボンゴリ微生物を非サルモネラβ−D−ガラクトシダーゼ産生微生物から区別するために上げられたインキュベーション温度を使用することができる。
[0029]サルモネラの増殖に基づく検出及び識別は、概して、非サルモネラ微生物の存在下でサルモネラ菌株を特異的に検出する生化学反応の使用を必要とする。残念ながら、従来の検出システムのほとんどは、試料中に存在し得る非サルモネラ腸内細菌微生物からサルモネラ微生物を十分に特異的に差別化するものではない。テストは、しばしば、試料中に見つかったサルモネラ微生物から非サルモネラ微生物を差別化するために追加的な試薬及び手順(例えば、免疫学的又は遺伝学的テスト)を必要とする。
[0030]不運にも、非サルモネラ腸内微生物(例えば、コリフォーム菌)の群を検出するために一般に使用される反応のいくつかは、サルモネラ菌株の全てを陰性に識別しない。例えば、サルモネラ微生物のいくつかは、特定の化合物(例えば、メリビオース、2−デオキシ−D−リボース、ダルシトール、トレハロースなど)を炭素源及び/又はエネルギー源として使用する代謝能力を有する。これらの化合物を利用するプロセスにおいて、サルモネラ微生物は、検出可能な最終生成物(すなわち、有機酸)を生成することができる。したがって、これらの化合物の利用を検出する指示システムを使用して、試験試料中のサルモネラ微生物の存在を検出することができる。他のほとんどの微生物は、同じ代謝能力を持っていない。しかし、いくつかの非サルモネラのグラム陰性腸内微生物は、化合物を利用する能力を有し得る。したがって、非サルモネラ微生物をサルモネラ微生物から区別するために、少なくとも1つの他の指示システムを含めることが望ましい。他の指示システムは、非サルモネラ微生物からサルモネラ微生物を陽性に識別する(すなわち、サルモネラ微生物が指示システムと概して反応し、非サルモネラ微生物が指示システムと概して反応しない)ように機能するか、又はサルモネラ微生物を非サルモネラ微生物から陰性に識別する(すなわち、サルモネラ微生物が指示システムと概して反応せず、非サルモネラ微生物が指示システムと概して反応する)ように機能することができる。
[0031]本開示の発明の組成物は、作業者がサルモネラ微生物を少なくとも2種類の非サルモネラのグラム陰性腸内微生物から区別(すなわち差別化)する方法を実行することを可能にする少なくとも2つの識別指示システムを含む。すなわち、本開示の組成物は、第1の指示化合物を代謝しない非サルモネラ微生物からサルモネラ微生物を陽性に識別し、同時に、この組成物は、第2の識別指示化合物を代謝する能力を有する非サルモネラ微生物から、第2の識別指示化合物を代謝することができないサルモネラ微生物を陰性に識別する。この方法及び組成物は、試験試料中のサルモネラ微生物の有無の推定証拠を提供する。更に、この組成物は、試験試料中のサルモネラ微生物の存在の確定証拠を提供するために、第3の識別指示システムを含むことができ、及び/又は第4の識別指示システムと共に方法において使用することができる。
[0032]本開示は、サルモネラ微生物を検出する組成物を提供する。組成物は、ゲル化剤と、グラム陽性微生物の増殖を阻害する少なくとも1つの第1の選択剤と、少なくとも1つの第1の識別指示化合物を含む第1の識別指示システムと、ウレアーゼ酵素活性により第2の検出可能な生成物に変換される第2の識別指示化合物を含む第2の識別指示システムと、を含む、半固体の培養培地を含む。少なくとも1つの第1の識別指示化合物は、サルモネラ属に属する複数のメンバーにより第1の検出可能な生成物に変換され得る。加えて、少なくとも1つの第1の識別指示化合物は、培養培地の中及び/又は上に検出可能なコロニーを形成する複数の非サルモネラ属のグラム陰性腸内微生物によって変換され得ない。
[0033]本開示の培養培地は、ゲル化剤を含む。ゲル化剤は、グラム陰性腸内微生物を培養するために使用される半固体の微生物培養培地での使用に適切な任意のゲル化剤を含み得る。適切なゲル化剤の非限定的な例としては、寒天、アガロース、ペクチン、ゼラチン、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン、及び前述のものの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。
[0034]本開示の培養培地は、グラム陰性腸内微生物の増殖を促進する栄養素を更に含み得る。このような栄養素は、当該技術分野で周知であり、例えば、1つ以上のペプトン(例えば、カゼインの膵臓消化物、動物組織のペプシン消化物、ペプトン、ゼラチンの膵臓消化物、プロテオースペプトンなど)及び/又は1つ以上の増殖補助剤(例えば、酵母エキス、肉エキス(ビーフ/ブタなど)、Mg、Mn及び/又はCaの塩、糖など)が含まれる。培養培地は、他の栄養素(例えば、ミネラル又は他の成分)を含んでもよく、もし存在する場合には、それらは第1の識別指示システム、第2の識別指示システム及び/又は第3の識別指示システムの機能を実質的に干渉しない。
[0035]本開示の培養培地は、少なくとも1つの第1の識別指示化合物を含む第1の識別指示システムを含む。第1の識別指示システムは、複数の非サルモネラのグラム陰性腸内微生物からサルモネラ微生物を陽性に識別する識別指示システムである。したがって、第1の識別指示化合物は、サルモネラ属に属する複数のメンバーにより第1の検出可能な生成物に変換され得る。更に、第1の識別指示化合物は、複数の非サルモネラ属のグラム陰性腸内微生物によって第1の検出可能な生成物に変換されない。
[0036]好ましくは、第1の識別指示化合物は、サルモネラボンゴリ種に属する微生物により第1の検出可能な生成物に変換され得る。より好ましくは、第1の識別指示化合物はまた、S.ボンゴリ以外の種に属するサルモネラ微生物(例えばS.エンテリカ)によって第1の検出可能な生成物に変換される。いくつかの実施形態では、第1の識別指示システムは、少なくとも1つの非サルモネラ腸内微生物により第1の検出可能な生成物に変換され得る第1の識別指示化合物を含み得る。有利には、第2の識別指示システム、及び/又は存在する場合は、第3の識別指示システムを使用して、組成物中又は組成物上に増殖している非サルモネラ微生物をサルモネラ属の微生物から陰性に識別することができる。
[0037]いくつかの実施形態では、第1の識別指示化合物は、微生物(例えば、サルモネラ属に属する微生物)によって(例えば、発酵を介して)第1の検出可能な生成物(例えば、乳酸のような1つ以上の酸性化合物、及び/又は例えば、二酸化炭素及び/又は水素のような気体)に変換され得る栄養素(例えば、炭水化物)である。当業者は、第1の検出可能な生成物が第1の識別指示化合物の発酵により産生される酸性化合物であるとき、2つの異なる微生物により産生される酸性化合物は同じ酸性化合物である場合もあり、又はそれらは異なる酸性化合物である場合もあることを理解するであろう。
[0038]酸性化合物が第1の検出可能な生成物である実施形態において、第1の識別指示システムは、pH指示薬を更に含み得る。当該技術分野では、微生物により産生される酸性化合物を検出する多数のpH指示薬が既知である。適したpH指示薬の非限定的な例としては、フェノールレッド、クロロフェノールレッド、ニュートラルレッド、ブロモチモールブルー、及びブロモチモールパープルが挙げられる。第1の検出可能な生成物が気体を含むいくつかの実施形態では、気体は、例えば、気体を捕捉することによって(例えば、本明細書にその全体が参照により組み込まれるPETRIFILM Enterobacteriaceae Count PlateのInterpretation Guideに記載のように、薄膜培養装置においてヒドロゲルにそれを捕捉することによって)検出され得る。
[0039]好ましくは、第1の識別指示化合物が栄養素を含む実施形態において、第1の識別指示化合物は、複数のサルモネラ種及び/又は亜種によって、第1の検出可能な生成物に変換される。より好ましくは、第1の識別指示薬は、サルモネラ属に属さないグラム陰性腸内微生物の多くの種によって第1の検出可能な生成物に変換されない栄養素を含む。より好ましくは、第1の識別指示薬の栄養素は、非サルモネラ微生物によって第1の検出可能な生成物に変換されない栄養素を含む。適した第1の識別指示化合物の非限定的な例としては、メリビオース、2−デオキシ−D−リボース、マンニトール、L−アラビノース、ダルシトール、マルトース、L−ラムノース、トレハロース、D−キシロース、ソルビトール、及び前述の化合物の任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される化合物が挙げられる。
[0040]いくつかの実施形態では、第1指示化合物は酵素基質を含み得る。適した酵素基質としては、サルモネラ属に属する微生物によって第1の検出可能な生成物(例えば、着色された生成物又は蛍光生成物)に(例えば、酵素による加水分解などにより)変換される発色酵素基質又は蛍光酵素基質が挙げられる。好ましくは、酵素基質は、サルモネラボンゴリ種に属する微生物によって、及びS.エンテリカ種に属する微生物によって、第1の検出可能な生成物に変換される。適した酵素基質の非限定的な例としては、カプリレートエステラーゼ酵素活性を検出する又はα−ガラクトシダーゼ酵素活性を検出する酵素基質が挙げられる。適した発色酵素基質としては、例えば、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルカプリレート、4−ニトロフェニルカプリレート、2−ナフチルカプリレート、4−メチルウンベリフェリルカプリレート、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−α−D−ガラクトピラノシド、6−クロロ−3−インドキシル−α−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル−α−D−ガラクトピラノシド、1−ナフチル−α−D−ガラクトピラノシド、2−ナフチル−α−D−ガラクトピラノシド、レソルフィニル−α−D−ガラクトピラノシド、4−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド、4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトピラノシド、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される酵素基質が挙げられる。
[0041]本開示の培養培地は、ウレアーゼ酵素活性の指示薬を含む第2の識別指示システムを含む。第2の識別指示システムは、複数の非サルモネラのグラム陰性腸内微生物からサルモネラ微生物を陰性に差別化する識別指示システムである。したがって、第2の識別指示化合物は、複数の非サルモネラ属のグラム陰性腸内微生物によって第2の検出可能な生成物に変換され得る。更に、第2の識別指示化合物は、サルモネラ属に属する複数のメンバーによって第2の検出可能な生成物に変換されない。
[0042]ウレアーゼは、特定の非サルモネラのグラム陰性腸内微生物に見出される酵素である(例えば、プロテウス属、クレブシエラ属、モルガネラ属、プロビデンシア属、及びセラチア属に属する特定の種)。これらの微生物のいくつか(例えば、プロテウス・ミラビリス。例えば、参照によりその全体が本明細書に援用されるJM Matsen et al.,1972,Appl.Microbiol.,vol.23,pp 592〜594を参照)は、1つ以上の第1の識別指示化合物(例えば、トレハロース、キシロース)を第1の検出可能な生成物に変換することができる。したがって、本明細書に記載の第1の識別指示システムのみを含有する識別培養培地において、これらの非サルモネラのグラム陰性腸内微生物の1つからサルモネラ微生物を区別することは不可能であり得る。有利には、サルモネラ微生物は、典型的には、ウレアーゼ酵素活性を有さないので、第2の識別指示システムを培養培地に加えることによって、サルモネラ微生物を非サルモネラ微生物から区別することができる。
[0043]本開示の第2の識別指示システムは、尿素及び適したpH指示薬(例えば、フェノールレッド、クロロフェノールレッド、ニュートラルレッド、ブロモチモールブルー、及びブロモチモールパープル、又はフタルヒドラジジルアゾアセチルアセトン)を含み得る。ウレアーゼ酵素活性は、尿素を二酸化炭素とアンモニアに加水分解し、水の存在下で水酸化アンモニウムを形成する。したがって、いくつかの実施形態では、第2の検出可能な生成物は、アンモニウム化合物を含む。ウレアーゼ活性を有し、尿素の存在下で増殖する微生物コロニーは、アンモニウム化合物を生成し、コロニーの周囲の培養培地のpHの上昇を引き起こす。培養培地に存在する適切なpH指示薬は、結果として生じたpHの変化を、典型的には、微生物コロニーを包囲する領域又は光の輪として指示し得る(例えば、pH指示薬がフェノールレッドである場合、コロニーはバイオレットに染色される場合がある及び/又はコロニーはその周囲にバイオレットの領域を有する場合がある)。ウレアーゼ酵素活性の他の指示薬も好適な場合があり、例えば、蛍光ウレアーゼ酵素基質(例えば、3−(1−アセチルアセトニルアゾ)フタルヒドラジド)が含まれる。
[0044]本開示の組成物は更に、グラム陽性微生物の増殖を阻害するために、少なくとも1つの第1の選択剤を含み、それにより、栄養素のための競争を減らし、サルモネラ属の微生物のようなグラム陰性微生物の増殖を促進する。好適な第1の選択剤の非限定的な例としては、抗生物質、胆汁酸塩、胆汁酸塩No.3、コール酸、デオキシコール酸、クリスタルバイオレット、塩化ナトリウム、ノボビオシン、ナリジクス酸、ストレプトマイシン、ポリミキシンB、及び前述の選択剤の任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される選択剤が挙げられる。
[0045]本開示の組成物は、所望により、サルモネラ属に属するものではない少なくとも1つのグラム陰性腸内微生物の増殖を阻害するために、少なくとも1つの第2の選択剤を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の選択剤はまた、少なくとも1つのグラム陽性微生物の増殖を阻害し得る。有利には、第2の選択剤は第1の選択剤と組み合わされて、微生物(グラム陰性及び/又はグラム陽性微生物)を更に阻害し、それにより、栄養素のための競争を減らし、サルモネラ微生物の増殖を促進する。加えて、少なくとも1つの第2の選択剤はまた、さもなければ第1の識別化合物及び/又は第3の識別化合物をそのそれぞれの検出可能な生成物に変換するであろう非サルモネラのグラム陰性微生物の増殖を、実質的に防ぐことができる。したがって、第2の選択剤は、非サルモネラ微生物が組成物中又は組成物上で増殖する可能性、及び可能なサルモネラ微生物として解釈される可能性を、低減し得る。好適な第2の選択剤の非限定的な例としては、β−ラクタム系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、キノロン系抗生物質、サルファ系抗生物質、ポリミキシン系抗生物質、及び前述の抗生物質の任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される選択剤が挙げられる。一実施形態では、少なくとも1つの第2の選択剤は、ナリジクス酸、ストレプトマイシン、及びポリミキシンBを含む。好ましくは、栄養培地における少なくとも1つの第2の選択剤のそれぞれの濃度は、サルモネラ微生物の増殖を可能にするように選択される。より好ましくは、栄養培地における少なくとも1つの第2の選択剤のそれぞれの濃度は、全てのサルモネラ微生物の増殖を可能にするように選択される。
[0046]所望により、本開示の組成物は更に、β−ガラクトシダーゼ酵素活性により、第3の検出可能な生成物に変換される第3の識別指示化合物を含む第3の識別指示システムを含み得る。本開示の第3の識別指示システムは、β−ガラクトシダーゼ酵素活性により第3の検出可能な生成物に変換され得る第3の識別指示化合物を含む。したがって、第3の識別指示システムは、β−ガラクトシダーゼ酵素活性を生成する微生物と、β−ガラクトシダーゼ酵素活性を生成しない微生物と、を区別する。例えば、A.Rambach(本明細書に参照によりその全体が援用される「New plate medium for facilitated differentiation of Salmonella spp.From Proteus spp.And other enteric bacteria」,1990,Appl.Environ.Microbiol.,vol.56,pp.301〜303)により開示されているように、多くのサルモネラは、β−ガラクトシダーゼ酵素活性を生成せず、β−ガラクトシダーゼ酵素活性の指示薬を使用することによって、腸内細菌科のラクトース利用微生物から差別化することができる。
[0047]しかし、いくつかの報告書は、いくつかのサルモネラの種(例えば、S.ボンゴリ)及び亜種(例えば、S.エンテリカアリゾナエ及びS.エンテリカジアリゾナエ)からの単離された微生物の90%以上がβ−ガラクトシダーゼ酵素活性を生成することを見出したことを示している(例えば、参照によりその全体が本明細書に援用されるA.M.Littellの「Plating medium for differentiating Salmonella arizonae from other Salmonellae」,1977,Appl.Environ.Microbiol.,vol.33,pp 485〜487を参照)。したがって、β−ガラクトシダーゼ酵素活性に基づいてサルモネラ微生物と非サルモネラ微生物とを区別するように設計された培養培地及び/又は対応する手順は、試料中にβ−ガラクトシダーゼ産生サルモネラが存在する場合に、試料中のサルモネラ微生物の数を誤って過小評価する可能性がある。本研究者らは、驚くべきことに、その方法に使用される培養培地がサルモネラ微生物と非サルモネラ微生物とを区別するためにβ−ガラクトシダーゼ酵素活性の指示薬に依存するときでさえも、いくつかのβ−ガラクトシダーゼ産生サルモネラ微生物を区別することができる方法を発見した。
[0048]本開示に従った好適な第3の識別指示化合物の非限定的な例としては、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、2−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド、3,4−シクロヘキセノエスクレチン−β−D−ガラクトピラノシド、及び4−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシドが挙げられる。いくつかの実施形態では、第3の識別指示システムは、第3の識別指示化合物(例えば、ラクトース)及びpH指示薬を含む。任意の実施形態において、所望により、組成物は更に、例えば、イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)のようなβ−ガラクトシダーゼ酵素活性の誘導物質を含むことができる。
[0049]試験試料中の微生物を検出するために、組成物の任意の実施形態を培養装置において使用し得る。好適な培養装置としては、例えば、試料中に存在する微生物を検出するプロセスにおいて栄養培地を保持するために使用される任意の培養装置が含まれる。好適な培養装置の非限定的な例としては、ペトリ皿、マルチウェルプレート、試験管、フラスコ、薄膜培養装置などが挙げられる。
[0050]本開示の組成物は、米国特許第4,565,783号、同第5,601,998号、同第5,681,712号、同第6,265,203号、及び同第6,638,755号(これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に援用される)に開示されているような脱水された形態において薄膜培養装置に配置し得る。これらの実施形態において、試料(例えば、水性液体試料又は水性懸濁媒体中に懸濁された固体試料)は、例えば、培養装置に試料をピペッティングすることによって脱水成分と接触させることができる。この実施形態では、試料が培養装置内に堆積される前又は後に、組成物の成分の1つ以上が試料に溶解され得る又は懸濁され得る。
[0051]所望により、本開示の組成物を含有する培養装置(例えば、薄膜培養装置)は、非識別指示システムを更に含むことができる。好適な非識別指示化合物は、増殖している微生物によって代謝されるか又はそれらと反応する指示化合物を含み、そうすることにより、微生物コロニー又はそのコロニーに隣接している栄養培地が可視化、撮像及び/又は定量化の容易さのために着色されること又は蛍光することを引き起こすことができる第4の検出可能な生成物を生成する。非識別指示薬、及びそれに由来する第4の検出可能な生成物は、第1の検出可能な生成物又は第2の検出可能な生成物及び/又は播種した培地中に存在する場合、第3の検出可能な生成物の検出を、実質的に妨害してはならない。好適な非識別指示化合物の非限定的な例としては、トリフェニルテトラゾリウムクロライド、p−トリルテトラゾリウムレッド、テトラゾリウムバイオレット、ベラトリルテトラゾリウムブルー、及び5−ブロモ−4ークロロ−3−インドリル−リン酸二ナトリウム塩のような発色性レドックス指示薬が挙げられる。非識別指示システムは、所望により、米国特許第4,565,783号に記載されているように、薄膜培養装置の接着層に提供されてもよい。
[0052]一実施形態では、組成物は、ゲル化剤(例えば、本明細書に記載のような任意の好適なゲル化剤)と、サルモネラ微生物の増殖を促進する栄養素(例えば、本明細書に記載のような任意の好適な栄養素)と、グラム陽性微生物の増殖を阻害する少なくとも1つの第1の選択剤(例えば、本明細書に記載のような任意の好適な第1の選択剤)と、少なくとも1つの第1の識別指示化合物を含む第1の識別指示システム(例えば、本明細書に記載のような任意の好適な第1の識別指示システム及び第1の指示化合物)と、ウレアーゼ酵素活性によって第2の検出可能な生成物に変換される第2の識別指示化合物を含む第2の識別指示システム(例えば、本明細書に記載のような、任意の好適な第2の識別指示システム及び第2の識別指示化合物)と、から本質的になる。この実施形態では、第1の識別指示化合物は、サルモネラ属に属する複数のメンバーにより第1の検出可能な生成物に変換され得る。この実施形態では、第1の識別指示化合物は、培養培地の中及び/又は上に検出可能なコロニーを形成する複数の非サルモネラ属のグラム陰性腸内微生物によって変換され得ない。
[0053]一実施形態では、組成物は本質的に、ゲル化剤(例えば、本明細書に記載のような任意の好適なゲル化剤)と、サルモネラ微生物の増殖を促進する栄養素(例えば、本明細書に記載のような任意の好適な栄養素)と、グラム陽性微生物の増殖を阻害する少なくとも1つの第1の選択剤(例えば、本明細書に記載のような任意の好適な第1の選択剤)と、少なくとも1つの第1の識別指示化合物を含む第1の識別指示システム(例えば、本明細書に記載のような任意の好適な第1の識別指示システム及び第1の指示化合物)と、ウレアーゼ酵素活性によって第2の検出可能な生成物に変換される第2の識別指示化合物を含む第2の識別指示システム(例えば、本明細書に記載のような、任意の好適な第2の識別指示システム及び第2の識別指示化合物)と、β−ガラクトシダーゼ酵素活性によって第3の検出可能な生成物に変換される第3の識別指示化合物を含む第3の識別指示システム(例えば、本明細書に記載のような任意の好適な第3の識別指示システム及び第3の指示化合物)と、からなる。この実施形態では、第1の識別指示化合物は、サルモネラ属に属する複数のメンバーにより、第1の検出可能な生成物に変換され得る。この実施形態では、第1の識別指示化合物は、培養培地の中及び/又は上に検出可能なコロニーを形成する複数の非サルモネラ属のグラム陰性腸内微生物よって変換され得ない。
[0054]本開示の組成物は、試料中のサルモネラ微生物を検出する方法に使用し得る。本開示の方法で試験した試料は、サルモネラ微生物を含有することが疑われ得る様々な試料を含む。特に関心のもたれる試料としては、食品加工作業又は飲料加工作業からの原材料、中間生成物、又は完成品が含まれる。他の好適な試料としては、水試料(例えば、地表水、処理水)、環境試料(例えば、空気試料、壁、床、ドレン、食品接触面、処理装置からの表面試料)、及び臨床試料が挙げられる。臨床試料の非限定的な例としては、血液、胆汁、胃腸試料、大腸試料、及び糞便試料が挙げられる。試験試料としては、液体、並びに液体媒質中に溶解又は懸濁した固体を挙げることができる。
[0055]図1は、本開示に従って試料中のサルモネラ微生物を検出する方法10の一実施形態を示す。方法10は、試験試料、組成物の成分、及び培養装置を提供する工程45を含む。組成物の成分は、培養装置内に準備してもよく(例えば、水和された成分としてペトリ皿に、実質的に無水の、再水和可能な1つ又は複数のコーティングとして薄膜培養装置に、など)、又は当該技術分野で既知の方法に従って培養装置に添加してもよい。
[0056]方法10は、組成物と試料とを接触させて、播種した培養装置を形成する工程50を更に含む。試料は、様々な方法のいずれかにおいて、組成物を有する培養装置内で接触させることができる。例えば、方法の一実施形態では、組成物は、水和された形態(例えば、水和された半固体培養培地)の混合物として、培養装置内に配置し得る。この実施形態では、試料(例えば、液体サンプル、固体サンプル、フィルター上に捕捉された液体及び/又は固体試料、液体培地中に懸濁された固体試料)を、例えば、ピペッティング、拡散板播種法、及びストリークプレート播種法のような、当該技術分野で既知の技術によって、混合物の中又は上に堆積し、所望により、分配することができる。
[0057]代替実施形態では、組成物を含む混合液(例えば、溶融し、焼戻した寒天溶液)に試料(例えば、液体及び/又は固体材料を含む)を接触させ、混合する。培養装置にまだ存在していない場合は、試料と組成物を含む混合液を培養装置に移動する。
[0058]また別の代替実施形態では、組成物は、脱水された形態で、例えば、本明細書に記載の薄膜培養装置のような培養装置に配置される。好適な水性液(例えば、滅菌水、滅菌希釈剤などであり、所望により、組成物の1つ以上の成分を含む)を培養装置にピペッティングし、ゲル化剤を再び水和させる。その後、試料を、組成物と接触している培養装置に(例えば、ピペッティング、ストリーキング、試料を含むメンブレンフィルターの配置などにより)堆積することができる。
[0059]当業者は、培養装置内の試料に組成物を接触させ得る様々な他の手順を認識するであろう。
[0060]図1を再び参照し、方法10は、播種した培養装置を第1の時間インキュベートする工程55を更に含む。典型的には、播種した培養装置は、腸内微生物の増殖を促進するために、昇温(例えば、約35〜45℃)で(インキュベータ又は炉など)インキュベートされる。いくつかの実施形態では、播種した培養装置は、約37℃の温度でインキュベートされる。いくつかの実施形態では、培養装置のインキュベーションは、41℃〜44℃の温度で培養装置をインキュベートすることを含み得る。いくつかの実施形態では、β−ガラクトシダーゼ酵素活性を検出する指示システムを含む組成物の場合、参照により本明細書にその全体が援用される米国特許出願第61/580,860号(2011年12月28日出願)に記載されているように、播種した培養装置は、サルモネラボンゴリを試料中の他のグラム陰性腸内微生物から差別化するために、40℃よりも高い温度でインキュベートされ得る。
[0061]培養装置は、試料中に存在する腸内微生物の増殖及び増殖を可能にするために十分な第1の時間インキュベートされる。典型的には、培養装置は、少なくとも6時間の第1の時間インキュベートされる。いくつかの実施形態では、培養装置は、少なくとも8時間の第1の時間インキュベートされる。いくつかの実施形態では、培養装置は、少なくとも10時間の第1の時間インキュベートされる。いくつかの実施形態では、培養装置は、約14〜約48時間の第1の時間インキュベートされる。いくつかの実施形態では、培養装置は、約18〜48時間の第1の時間インキュベートされる。いくつかの実施形態では、培養装置は、約24〜約36時間の第1の時間インキュベートされる。好ましい実施形態では、培養装置は、約24±2時間の第1の時間インキュベートされる。
[0062]方法10は、検出可能な生成物を検出するために培養装置を観察する工程60を更に含む。検出可能な生成物は、本明細書に記載の第1の検出可能な生成物であり得る。第1の検出可能な生成物は、試験試料中にサルモネラ微生物が存在する可能性を示す指示である。サルモネラ微生物は、第1の識別指示化合物を(例えば、発酵により、代謝活性により、酵素活性により)第1の検出可能な生成物に変換する。典型的には、培養装置内の栄養培地は、第1のインキュベーション時間の後に観察する。任意の実施形態において、第1の検出可能な生成物を検出するために栄養培地を観察することは、第1の検出可能な色を検出するために培養装置を観察することを含み得る。いくつかの実施形態では、第1の検出可能な色は、(例えば、第1の識別指示化合物が4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトピラノシドを含む実施形態において)蛍光により検出することができる。
[0063]第1の識別指示システムが発酵性炭水化物及びpH指示薬を含む実施形態では、第1の検出可能な色は、炭水化物を1つ以上の酸性生成物に変換することができる微生物のコロニーに近接する(例えば、隣接する)pH指示薬と関連付けられる着色された領域であり得る。いくつかの実施形態では、コロニーは、周囲の栄養培地中のpH指示薬と同じ色を有する外観である場合がある。
[0064]第1の識別指示化合物が発色酵素基質を含む実施形態では、第1の検出可能な色は、微生物コロニーに近接する着色された領域であり得る。例えば、着色された領域は、発色基質(例えば、4−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド)と反応する微生物酵素から生じる拡散性の水溶性生成物(例えば、4−ニトロフェノール)を含む場合がある。あるいは、着色された領域は、発色基質(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−α−D−ガラクトピラノシド)と反応する微生物酵素から生じる水不溶性の生成物(例えば、インジゴ)を含む場合がある。
[0065]培養装置の観察(工程60)は、本明細書に記載の第2の検出可能な生成物の有無を検出するために培養装置を観察することを含む。第2の検出可能な生成物は、微生物コロニーと関連付けられ得るウレアーゼ酵素活性によるウレアーゼ酵素基質の加水分解により産生される。いくつかの実施形態では、第2の検出可能な生成物は、水性液中のウレアーゼ酵素活性による尿素の加水分解により生成される生成物である、水酸化アンモニウムの存在下で色を変えるpH指示薬を含み得る。例えば、第1の識別指示薬と反応するコロニーに隣接する培養培地のpHを下げる、発酵により酸性生成物になる炭水化物を含み得る第1の識別指示システムとは対照的に、第2の識別指示薬(例えば、尿素)と反応するコロニーは、たとえコロニーが第1の指示化合物を発酵させて酸性生成物にする能力を有する場合でさえも、コロニーに隣接する培養培地のpHを上げるように十分な水酸化アンモニウムを生成する。したがって、微生物コロニーに隣接する第2の検出可能な生成物(例えば、尿素の加水分解と関連付けられる着色領域)の観察は、そのコロニーがサルモネラ属に属していないことの指示である。
[0066]第3の識別指示システムが、培養装置に存在する(例えば、組成物中に存在する)ときは、培養装置を観察すること(工程60)は、本明細書に記載の第3の検出可能な生成物の有無を検出するために培養装置を観察することを含む。第2の検出可能な生成物の検出と同様に、第3の検出可能な生成物(例えば、着色又は蛍光微生物コロニー及び/又はそのコロニーに隣接する領域)の観察は、そのコロニーがサルモネラ属に属していないことの指示である。
[0067]いくつかの実施形態では、方法10は更に、播種した栄養培地を、第3の識別指示化合物を含む第4の識別指示システムと接触させる任意の工程65を含み得る。サルモネラ微生物により第4の検出可能な生成物に変換され得、したがって第4の識別指示システムになり得る第3の識別指示化合物は、第1の識別指示システムの結果(すなわち、サルモネラ微生物の指示)を確定するように機能する。すなわち、第1の検出可能な生成物及び第4の検出可能な生成物の両方が、サルモネラ微生物の存在の指示を提供する。
[0068]第4の識別指示化合物は、それに由来する第4の検出可能な生成物が、第1の識別指示システムの第1の検出可能な生成物、第2の識別指示システムの第2の検出可能な生成物、及び第3の識別指示システムの第3の検出可能な生成物から区別可能であること、好ましくは光学的に区別可能であること、より好ましくは目視で区別可能であることを条件として、サルモネラ微生物を検出する任意の好適な指示化合物であってよい。したがって、一実施形態では、第4の識別指示システムは、本明細書に記載のように、第1の検出可能な生成物(例えば、乳酸のような酸性化合物及び/又は例えば、二酸化炭素のような気体など)に(例えば、発酵を介して)変換され得る栄養素(例えば、炭水化物)と共にpH指示薬を含み得る。別の実施形態では、第4の識別指示システムは、本明細書に記載のような発色酵素基質を含み得る。また別の実施形態では、第4の識別指示システムは、本明細書に記載のような発色酵素基質であり得る。本明細書に記載の第1の識別指示システムのいずれも、それが第1及び第2の識別指示システム及び/又は第4の指示システム(存在する場合)を実質的に干渉せず、それらから区別可能である限りは、第4の識別指示システムとしての使用に好適であり得る。
[0069]有利には、第4の識別指示システムは、試料中のサルモネラ微生物の存在を「確定する」ための手段として使用され得る。すなわち、培養装置に第1の検出可能な生成物の存在が観察されたとき、その存在は、試料中のサルモネラ微生物の存在の可能性の指示であると推定され得る。しかし、第1の検出可能な生成物の存在と並んで第4の検出可能な生成物の存在が観察された(すなわち、第1及び第4の検出可能な生成物が、同じ微生物コロニーと関連付けられる)とき、その観察は、試料中のサルモネラ微生物の存在の可能性がより高い(例えば、有意により高い可能性である)ことを指示し得る。
[0070]第1のインキュベーション時間の後、例えば、第4の指示システムを含む物品を栄養培地と接触させることによってなどを含む様々な手順を使用して、播種した培養装置内で第4の識別指示システムを栄養培地と接触させることができる。これは例えば、第4の識別指示システムを含むコーティングを有する物品を用いることにより実行され得る。例えば、第4の識別指示システムを含むコーティングを有する物品は、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第6,022,682号に記載の方法と同様の方法を使用して作製し得る。
[0071]第4の識別指示化合物を含む第4の識別指示システムを、播種した栄養培地と接触させた後、方法は、第2の時間プレートをインキュベートする任意の工程(図示せず)を含み得る。
[0072]播種した培養装置を第2の時間インキュベートすることは、昇温で装置を保持することを含み得る(例えば、温度制御されたインキュベータ内で)。播種した培養装置を(例えば、25℃より高いが約44℃以下である)昇温でインキュベートすることは、腸内微生物(例えば、サルモネラ属の微生物)による第4の識別指示化合物の第4の検出可能な生成物への変換を促進し得る。好ましくは、播種した培養装置を第2の時間インキュベートすることは、35℃〜42℃の温度で培養装置をインキュベートすることを含む。好ましくは、播種した培養装置を第2の時間インキュベートすることは、42℃±1℃の温度で培養装置をインキュベートすることを含む。
[0073]いくつかの実施形態では、第4の識別指示システムを、第1のインキュベーション時間の後に、播種した栄養培地と接触させる。有利には、これは、第4の検出可能な生成物を検出するために要する第2のインキュベーション時間の長さを短縮することができる。したがって、いくつかの実施形態では、第2のインキュベーション時間は、1時間〜約6時間であり得る。いくつかの実施形態では、第2のインキュベーション時間は約2時間〜約5時間であり得る。好ましい実施形態では、第2のインキュベーション時間は4時間±1時間である。
[0074]当業者は、任意の実施形態において、第1、第2、第3の、又は存在する場合は第4の検出可能な生成物のいずれか1つが、他の検出可能な生成物のいずれの検出をも(例えば、色のマスキング又は蛍光の消失によって)実質的に干渉してはならないことを理解するであろう。当業者は、第1、第2、第3、及び/又は第4の検出可能な生成物が、色及び/又は蛍光により検出される実施形態において、それぞれの検出可能な生成物が、他の検出可能な生成物と異なる(すなわち色彩により区別可能な)発色団及び/又はフルオロフォアを含むべきであることを理解するであろう。
[0075]本開示の方法は、第1、第2、第3、及び/又は第4の検出可能な生成物を検出する培養装置を観察することを含む。方法の任意の実施形態において、培養装置を観察することは、培養装置内の栄養培地を観察することを含み得る。方法の任意の実施形態において、培養装置を観察することは、培養装置を目視で(例えば、1つ以上の人の目を使用して)観察することを含み得る。
[0076]追加的に又は代替的に、任意の実施形態において、培養装置を観察することは、(例えば、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第6,243,486号、同第7,496,225号、及び同第7,351,574号に記載の撮像システムのような撮像システムを使用して)機械的に培養装置を観察することを含み得る。この実施形態において、培養装置を観察することは、撮像装置を使用して培養装置の画像を作成することを含み得る。培養装置の画像を作成することに加えて、方法は、所望により、プロセッサを使用して画像を分析することを含み得る。
[0077]本開示の方法は、試料中の微生物を検出し、所望により計数するために使用することができる。例えば、培養装置における第1の検出可能な生成物の存在を観察することは、試料中のサルモネラ微生物(例えば、サルモネラボンゴリ種の仲間及び/又はサルモネラエンテリカ種の仲間)の存在の可能性を示すことができる。しかし、本開示による方法において、第2の検出可能な生成物と並べて第1の検出可能な生成物の存在を観察することは、サルモネラ微生物以外の微生物の存在を示す。
[0078]本開示に従って微生物を計数する工程は、1つ以上のタイプの微生物を計数することを更に含み得る。タイプは、1つ以上の任意の指示システムとのそれらのそれぞれの反応によって又は反応の欠如によって区別され得る。本発明の方法で列挙できる微生物のタイプの非限定的な例としては、サルモネラ微生物、非サルモネラ微生物、β−ガラクトシダーゼ産生微生物、及びウレアーゼ産生微生物が挙げられる。
[0079]本発明に従って使用されると、本方法は、試料中のサルモネラ微生物の有無を検出することができる。図2は、図1に示した方法から得られた結果と共に使用した分析フローチャートの一実施形態を示す。フローチャートは、任意の所与の微生物のコロニーが、実質的に純粋であり、空間的に他の微生物コロニーから分離されている場合に、サルモネラ属の微生物又は非サルモネラ属のグラム陰性腸内微生物を含むかどうかを決定するために使用することができる。
[0080]上述した第1のインキュベーション時間の後、培養装置は、第1の検出可能な生成物の有無(ステップ100)及び第2の検出可能な生成物の有無を検出する(ステップ110)ために観察される。第1及び/又は第2の検出可能な生成物は、本明細書に記載のように検出することができる。
[0081]第1の検出可能な生成物がインキュベーション時間の後に検出された場合、試験試料はサルモネラ微生物を含有していないと推定される(すなわち、結果105は「推定陰性」であるとみなされる)。第1の検出可能な生成物が観察された場合、第1の検出可能な生成物と並べて第2の検出可能な生成物の存在を検出するために、更に培養装置を観察する。第1の検出可能な生成物及び第2の検出可能な生成物の両方が微生物コロニーと関連付けられることが観察された場合、微生物コロニーはサルモネラ微生物を含有しないと推定される(すなわち、結果115は「陰性」とみなされる)。
[0082]第1の検出可能な生成物と微生物コロニーとの関連が観察され、第2の検出可能な生成物とそのコロニーとの関連が観察されない場合、結果117は、「推定陽性」とみなされる(すなわち、結果は、コロニーがサルモネラ属に属し得ることを示している)。この場合、作業者は、本明細書に記載の第4の識別指示システムを使用して、その微生物がサルモネラ属に属するものであるかどうかを確認することができる。このように、第1及び第2の検出可能な生成物を検出するために微生物コロニーを観察した後に、第4の検出可能な生成物の有無を検出するためにコロニーを観察する(工程120)。第4の検出可能な生成物が、第1の検出可能な生成物を生成するが第2の検出可能な生成物は生成しないコロニーと関連付けられることが観察された場合、そのコロニーに関する結果125は、「確定陽性」とみなされる(すなわち、コロニーに存在する微生物がサルモネラ属に属することを示す3つの独立した結果がある)。第4の検出可能な生成物が、第1の検出可能な生成物を生成するが第2の検出可能な生成物は生成しないコロニーと関連付けられることが観察されなかった場合、結果135は、その微生物コロニーがサルモネラ属に属する可能性も属さない可能性もあることを指示するものであり、追加の試験(例えば、遺伝子試験、生化学試験など)を使用して、その微生物の特定を助けることができる。
(実施形態)
[0083]実施形態1は
ゲル化剤と、
グラム陽性微生物の増殖を阻害する少なくとも1つの第1の選択剤と、
少なくとも1つの第1の識別指示化合物を含む第1の識別指示システムと、
ウレアーゼ酵素活性により第2の検出可能な生成物に変換される第2の識別指示化合物を含む第2の識別指示システムと、を含む、半固体の培養培地を含み、
第1の識別指示化合物は、サルモネラ属に属する複数のメンバーにより第1の検出可能な生成物に変換され得るものであり、
第1の識別指示化合物は、上記培養培地の中及び/又は上に検出可能なコロニーを形成する複数の非サルモネラ属のグラム陰性腸内微生物によって変換され得ないものである、組成物である。
[0084]実施形態2は、第1の識別指示化合物は、メリビオース、2−デオキシ−D−リボース、マンニトール、L−アラビノース、ダルシトール、マルトース、L−ラムノース、トレハロース、D−キシロース、ソルビトール、及び前述の化合物の任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される化合物である、実施形態1の組成物である。
[0085]実施形態3は、緩衝試薬を更に含む、実施形態1又は実施形態2の組成物である。
[0086]実施形態4は、上記緩衝試薬が、MOPS、リン酸塩、TES、HEPES、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態3の組成物である。
[0087]実施形態5は、β−ガラクトシダーゼ酵素活性により第3の検出可能な生成物に変換される第3の識別指示化合物を含む第3の識別指示システムを更に含む、上記実施形態のいずれか1つの組成物である。
[0088]実施形態6は、第3の識別指示化合物が発色酵素基質である、実施形態5に記載の組成物である。
[0089]実施形態7は、第3の識別指示化合物は、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド、p−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド、3,4−シクロヘキセノエスクレチン−β−D−ガラクトピラノシド、及び6−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシドからなる群から選択される、実施形態6に記載の組成物である。
[0090]実施形態8は、少なくとも1つの第1の選択剤は、胆汁酸塩、コール酸、デオキシコール酸、クリスタルバイオレット、又は前述の化合物の任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、上記実施形態のいずれか1つの組成物である。
[0091]実施形態9は、pH指示薬は、フェノールレッド、クロロフェノールレッド、ニュートラルレッド、ブロモチモールブルー、及びブロモチモールパープルからなる群から選択される、上記実施形態のいずれか1つの組成物である。
[0092]実施形態10は、サルモネラ属に属するものではない少なくとも1つのグラム陰性腸内微生物の増殖を阻害する少なくとも1つの第2の選択剤を更に含む、上記実施形態のいずれか1つの組成物である。
[0093]実施形態11は、少なくとも1つの第2の選択剤は、β−ラクタム系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、キノロン系抗生物質、サルファ系抗生物質、ポリミキシン系抗生物質、及び前述の抗生物質の任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、少なくとも1つの第2の選択剤の濃度は、サルモネラ微生物の増殖を可能にするように選択される、実施形態10の組成物である。
[0094]実施形態12は、少なくとも1つの第2の選択剤は、ナリジクス酸、ストレプトマイシン、及びポリミキシンBの組み合わせを含み、その組み合わせにおける少なくとも1つの選択剤のそれぞれの濃度は、サルモネラ微生物の増殖を可能にするように選択される、実施形態11の組成物である。
[0095]実施形態13は、第1の選択剤は胆汁酸塩を含み、少なくとも1つの第1の識別指示化合物は2−デオキシ−D−リボース及びメリビオースを含み、pH指示薬はフェノールレッドを含み、第2の識別指示化合物は尿素を含み、第3の識別指示化合物は5−クロロ−4−ブロモ−3−インドキシル−β−D−ガラクトピラノシドを含み、少なくとも1つの第2の選択剤はナリジクス酸、ストレプトマイシン、及びポリミキシンBを含む、実施形態5の組成物である。
[0096]実施形態14は、ゲル化剤は、寒天、アガロース、ペクチン、ゼラチン、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン、及び前述のもののいずれか2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、上記実施形態のいずれか1つの組成物である。
[0097]実施形態15は、本質的に、
ゲル化剤と、
複数のグラム陰性腸内微生物の増殖を促進する栄養素と、
グラム陽性微生物の増殖を阻害する少なくとも1つの第1の選択剤と、
少なくとも1つの第1の識別指示化合物を含む第1の識別指示システムと、
ウレアーゼ酵素活性により第2の検出可能な生成物に変換される第2の識別指示化合物を含む第2の識別指示システムと、を含む半固体の培養培地からなり、
第1の識別指示化合物は、サルモネラ属に属する複数のメンバーにより第1の検出可能な生成物に変換され得るものであり、
第1の識別指示化合物は、培養培地の中及び/又は上に検出可能なコロニーを形成する複数の非サルモネラ属のグラム陰性腸内微生物によって変換され得ないものである、組成物である。
[0098]実施形態16は、本質的に、
ゲル化剤と、
サルモネラ微生物の増殖を促進する栄養素と、
グラム陽性微生物の増殖を阻害する少なくとも1つの第1の選択剤と、
少なくとも1つの第1の識別指示化合物を含む第1の識別指示システムと、
ウレアーゼ酵素活性により第2の検出可能な生成物に変換される第2の識別指示化合物を含む第2の識別指示システムと、を含む半固体の培養培地を含み、
第1の識別指示化合物は、サルモネラ属に属する複数のメンバーにより第1の検出可能な生成物に変換され得るものであり、
第1の識別指示化合物は、培養培地の中及び/又は上に検出可能なコロニーを形成する複数の非サルモネラ属のグラム陰性腸内微生物によって変換され得ないものである、組成物である。
[0099]実施形態17は、本質的に、
ゲル化剤と、
サルモネラ微生物の増殖を促進する栄養素と、
グラム陽性微生物の増殖を阻害する少なくとも1つの第1の選択剤と、
少なくとも1つの第1の識別指示化合物を含む第1の識別指示システムと、
ウレアーゼ酵素活性により第2の検出可能な生成物に変換される第2の識別指示化合物を含む第2の識別指示システムと、
β−ガラクトシダーゼ酵素活性により第3の検出可能な生成物に変換される第3の識別指示化合物を含む第3の識別指示システムと、を含む半固体の培養培地を含み、
第1の識別指示化合物は、サルモネラ属に属する複数のメンバーにより第1の検出可能な生成物に変換され得るものであり、
第1の識別指示化合物は、培養培地の中及び/又は上に検出可能なコロニーを形成する複数の非サルモネラ属のグラム陰性腸内微生物によって変換され得ないものである、組成物である。
[00100]実施形態18は、
試験試料、培養装置、及び実施形態1〜17のいずれか1つの組成物を提供することと、
播種した培養装置を形成するために培養装置内で組成物と試験試料を接触させることと、
第1の時間、播種された培養装置をインキュベートすることと、
培養装置を観察して、第1の検出可能な生成物を検出することと、を含み、第1の検出可能な生成物がサルモネラ微生物の存在の第1の指示である、サルモネラ微生物の検出方法である。
[00101]実施形態19は、第1の検出可能な生成物を検出することが、pH指示薬と、微生物により産生された酸性化合物との反応を観察することを含む、実施形態18の方法である。
[00102]実施形態20は、栄養培地を観察して、第2の検出可能な生成物を検出することを更に含み、第2の検出可能な生成物は非サルモネラ微生物の存在を示す、実施形態18又は実施形態19の方法である。
[00103]実施形態21は、第2の検出可能な生成物を検出することが、pH指示薬と、微生物により産生された塩基性化合物との反応を観察することを含む、実施形態20の方法である。
[00104]実施形態22は、栄養培地を観察して第3の検出可能な生成物を検出することを更に含み、第3の検出可能な生成物は非サルモネラ微生物の存在を示す、実施形態18〜21のいずれか1つの方法である。
[00105]実施形態23は、第3の検出可能な生成物を検出することが、β−ガラクトシダーゼ酵素活性により産生される着色された生成物を検出することを含む、実施形態22の方法である。
[00106]実施形態24は、
サルモネラ微生物によって第4の検出可能な生成物に代謝され得る確定指示化合物を有する物品を提供することと、
物品を培養培地に接触させることと、
装置を第2の時間インキュベートすることと、
培養装置を観察して、第4の検出可能な生成物を検出することと、を更に含み、
第4の検出可能な生成物が、存在する場合には、第1の検出可能な生成物、第2の検出可能な生成物、及び、第3の検出可能な生成物から区別され得るものであり、第1の検出可能な生成物と並べて第4の検出可能な生成物を検出することが、試料中のサルモネラ微生物の存在の第2の指示である、実施形態18〜23のいずれか1つの方法である。
[00107]実施形態25は、装置をインキュベートすることが、装置を約2時間〜約5時間インキュベートすることを含む、実施形態24の方法である。
[00108]実施形態26は、第1のタイプの微生物のコロニーの数を計数することを更に含む、実施形態18〜25のいずれか1つの方法である。
[00109]実施形態27は、第2のタイプの微生物のコロニーの数を計数することを更に含む、実施形態26の方法である。
[00110]実施形態28は、培養装置をインキュベートすることが、41℃〜44℃の温度で培養装置をインキュベートすることを含む、実施形態18〜27のいずれか1つの方法である。
[00111]実施形態29は、培養装置を観察することが、培養装置を目視で観察することを含む、実施形態18〜28のいずれか1つの方法である。
[00112]実施形態30は、培養装置を観察することが、撮像装置を使用して培養装置の画像を作成することを含む、実施形態18〜29のいずれか1つの方法である。
[00113]実施形態31は、プロセッサを使用して画像を分析することを更に含む、実施形態30の方法である。
[00114]本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。特に指示がない限り、部及び百分率は全て重量基準であり、水は全て蒸留水であり、分子量は全て重量平均分子量である。TSAプレート(5%ヒツジ血液を有するトリプシン大豆寒天プレート;Hardy Diagnostics(Santa Maria,CA))上で、選択された微生物をストリーキングすることにより、純粋な細胞培養物を調整し、プレートを37℃で一晩インキュベートした。全ての微生物の計数は、標準的なコロニー形成単位の微生物計数方法に従って行われ、計数は概数である。
[00115]材料。特に記載しない限り、材料は、Alpha Biosciences(Baltimore,MD)から市販で入手可能である。ATCC番号で記載されている微生物培養物は、The American Type Culture Collection(ATCC、Manassas,VA)から購入した。実施例の調整で利用される材料を表1に示す。
[00116]
Figure 0006132852
[00117]実施例1.サルモネラ薄膜培養装置の調整
[00118]薄膜培養装置は、参照によりその全体が本明細書に援用される、2011年5月20日出願された米国特許出願第61/488,492号(代理人整理番号第67673US002号)に記載の手順に従って調整した。粉末コーティングされた紙の基質を調整するために使用される粉末組成物は、2−デオキシ−D−リボース(2DDR、Research Products International Corp.、Mt.Prospect,IL)2重量部とグアーガム(M150 guar MEYPROGAT gum,Meyhall Chemical AG)98重量部とを混合して作製した。粉末コーティングする前に、紙を、TTC含有接着剤でコーティングした。
[00119]容器中で、表2に列挙されている材料を1リットルの脱イオン水に添加することによってブロスコーティング混合物を調整し、米国特許第6,022,682号の実施例1に記載されている方法に従って混合した。
[00120]
Figure 0006132852
[00121]選択剤混合物は、50mLの無菌遠心管内で滅菌脱イオン水30mLにIPTG 0.1g、尿素2.0g、メリビオース(Sigma)5.0g、ナリジクス酸ナトリウム0.005g、ストレプトマイシン硫酸塩0.005g、及びポリミキシンB硫酸塩0.00075gを添加し、ボルテックスして混合することにより調製した。ブロス混合物を約40℃まで冷却し、激しく混合しながら選択剤混合物を添加した。2.9ミル(0.074mm)のポリエステルフィルムのコロナ処理した面をブロスでコーティングして、カバーフィルムを調製した。
[00122]培養装置は、米国特許第6,022,682号に従って組み立て、ベース部材(ウェルを提供するために直径7.3センチメートルの円が中央に切り抜かれている発泡体スペーサー)とカバープレートを、接着性移動テープを使用して共に貼り合わせた。プレートは約10.3cm×10.2cmと測定され、円形のウェルが、乾燥したブロスでコーティングされた混合物をプレートのほぼ中央に露出している。
[00123]実施例2サルモネラ微生物の検出方法
[00124]表2に列挙された微生物株の純粋培養物をそれぞれ緩衝ペプトン水に播種し(Merck(Darmstadt,Germany))、37℃で一晩インキュベートした。得られた微生物懸濁液はそれぞれ、約1×10コロニー形成単位(cfu/mL)の濃度を有していた。
[00125]実施例1の薄膜培養プレートは、ウェルのほぼ中央の粉末コーティング上に1.5mLの滅菌リン酸塩希釈剤(Butterfields Phosphate Diluent(Edge Biologicals,Inc.(Memphis,TN))を添加することにより、ストリーキングのために準備した。カバーフィルムを閉じ、3M Petrifilm Flat Spreader(3M Company(St.Paul,MN))を使用して液体を拡げ、約1時間ゲルを含水させた。カバーフィルムを開いたとき、ブロスコーティングはベース部材のゲル表面に移動していた。微生物懸濁液の10マイクロリットルのループを、ゲル上のブロス表面上にストリーキングした。カバーを閉じ、プレートを42℃で一晩インキュベートした。プレートは、微生物種のそれぞれについて調製した。コロニーの増殖、コロニーの色及びコロニーの領域の色に関してプレートを調査した。黄色の酸性領域(コロニーによる2−デオキシ−D−リボース及び/又はメリビオースの発酵を示す)によって囲まれている赤色〜茶色のコロニー(TTCの酸化を示す)は、サルモネラ微生物に対する仮定陽性試験結果を示す。紫色の領域に囲まれている赤紫色のコロニー(尿素の加水分解による)は、サルモネラ微生物に対する陰性の試験結果である。黄色の酸性領域が、コロニーを囲んでいる青緑色のコロニー(X−galの加水分解を示す)は、コロニーがサルモネラ微生物を含んでいる可能性又は含んでいない可能性があることを示し、追加の試験が指示される場合がある。観察結果を表3に示す。
[00126]
Figure 0006132852
[00127]実施例3サルモネラ微生物の検出のための検出物品の使用
[00128]検出物品(ディスク)は、参照により本明細書にその全体が援用されるPCT国際特許第2012/092181号の実施例1に記載のように調製した。
[00129]仮定陽性結果を含有する薄膜培養装置(すなわち、実施例2のプレート1及び2)を開き、ディスクをゲル表面上で転がした(気泡を最小限にするため)。プレートを閉じ、42℃で4時間インキュベートした。コロニーに隣接した色の変化についてディスクを分析して、検出物品に存在する指示薬(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−α−D−ガラクトピラノシド)にコロニーが反応したかどうかを確認した。赤又は茶色から青又は濃青色へのコロニーの色の変化が、コロニーにおけるサルモネラ微生物の存在を示した。試験結果を表4に示す。
[00130]
Figure 0006132852
[00131]本明細書に引用するすべての特許、特許出願、及び公開公報、並びに電子的に入手可能な資料の開示内容の全体を援用する。本出願の開示内容と本明細書に援用されるいずれかの文書の開示内容との間になんらかの矛盾が存在する場合には、本出願の開示内容が優先するものとする。上記の詳細な説明及び実施例はあくまで理解を助ける明確さのために示したものである。これらによって不要な限定をするものと理解されるべきではない。本発明は、示され記載された厳密な詳細事項に限定されるべきではないが、それは当業者に対して明らかな変形が特許請求の範囲において規定された本発明の範囲に包含されるからである。
[00132]全ての見出しは、読者の利便性のためであり、指定のない限り、その見出しに続く本文の意味を限定するために使用するべきではない。
[00133]本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行ってもよい。これらの実施例及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれるものである。

Claims (2)

  1. (1)ゲル化剤と、
    グラム陽性微生物の増殖を阻害する少なくとも1つの第1の選択剤と、
    少なくとも1つの第1の識別指示化合物及びpH指示薬を含む第1の識別指示システムと、
    ウレアーゼ酵素活性により第2の検出可能な生成物に変換される第2の識別指示化合物を含む第2の識別指示システムと、
    β−ガラクトシダーゼ酵素活性により第3の検出可能な生成物に変換される第3の識別指示化合物を含む第3の識別指示システムと、
    を含む、半固体の培養培地を含む組成物であって、
    前記第1の識別指示化合物は、サルモネラ微生物によって第1の検出可能な生成物に変換され得る発酵性炭水化物であり、前記第1の検出可能な生成物は酸性化合物及び/又は気体を含み、
    前記第1の識別指示化合物は、前記培養培地の中及び/又は上に検出可能なコロニーを形成する複数の非サルモネラ属のグラム陰性腸内微生物によって変換され得ないものである、組成物、
    (2)試験試料、及び
    (3)培養装
    準備することと
    記培養装置内で前記組成物と前記試験試料を接触させることにより、播種された培養装置を形成することと、
    第1の時間、前記播種された培養装置を41℃〜44℃の温度でインキュベートすることと、
    前記第1の検出可能な生成物、前記第2の検出可能な生成物及び前記第3の検出可能な生成物を検出するために、前記インキュベート後の培養装置を観察することと、を含み、
    前記第1の検出可能な生成物が検出され、かつ、前記第2の検出可能な生成物及び前記第3の検出可能な生成物が検出されないことが、前記試験試料中のサルモネラ微生物の存在の第1の指示である、サルモネラ微生物の検出方法。
  2. サルモネラ微生物によって第4の検出可能な生成物に代謝され得る確定指示化合物を有する物品を提供することと、
    前記物品を前記インキュベート後の培養装置における前記培養培地に接触させることと、
    前記物品を接触させた培養培地を含む培養装置を第2の時間インキュベートすることと、
    前記第2の時間のインキュベート後の培養装置を観察して、前記第4の検出可能な生成物を検出することと、を更に含み、
    前記第4の検出可能な生成物が、前記第1の検出可能な生成物、前記第2の検出可能な生成物、及び、前記第3の検出可能な生成物から区別され得るものであり、
    前記第1の検出可能な生成物と共に前記第4の検出可能な生成物検出されることが、前記試験試料中のサルモネラ微生物の存在の第2の指示である、請求項に記載の方法。
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