カードリーダが利用される業界においては、犯罪者が、たとえば、ATM(Automated Teller Machine)に設けられたカードリーダからのカードの引抜きを妨害する何らかの仕掛けをして、カードリーダからカードを取り出せないようにし、ユーザがATMから立ち去った後、この仕掛けを取り外してカードを不正に取得するいわゆるフィッシングが大きな問題となっている。特許文献1に記載のカードリーダでは、カードと連動して移動するスライダが排出バネによってカードの排出方向へ付勢されているが、犯罪者が何らかの仕掛けをしてユーザがカードを取れないようにした場合、排出バネの付勢力が小さいと、排出バネの付勢力によってカードを強制的に排出することができない。すなわち、このカードリーダでは、排出バネの付勢力が小さいと、フィッシングを阻止することができない。
一方で、特許文献1に記載のカードリーダにおいて、フィッシングを阻止することが可能になる程度まで、排出バネの付勢力を大きくすると、ユーザがカードリーダの内部へカードを挿入していくにしたがってカードの挿入負荷が大きくなる。手動式のカードリーダにおいて、カードの挿入負荷が次第に大きくなっていくと、挿入時のカードの移動速度が変動しやすくなる。挿入時のカードの移動速度が変動すると、たとえば、カードの挿入時にカードに記録された磁気データを読み取るカードリーダでは、磁気データの読取りエラーが発生しやすくなる等の問題が生じる。
そこで、本発明の課題は、手動式のカードリーダにおいて、フィッシングを阻止することが可能で、かつ、挿入時および引抜き時のカードの移動速度の変動を抑制することが可能なカードリーダを提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、カードの挿入および引抜きが手動で行われる手動式のカードリーダにおいて、カードに接触してカードを引抜き側へ移動させる排出手段と、カードに刺さってカードの引抜きを阻止する引抜き阻止手段とを備えるとともに、排出手段および引抜き阻止手段がカードに接触しないように退避している位置を退避位置とし、排出手段および引抜き阻止手段がカードに対して作用する位置を作用位置とすると、排出手段および引抜き阻止手段を退避位置と作用位置との間で移動させる移動機構を備え、退避位置にある排出手段および引抜き阻止手段が作用位置に向かって移動すると、まず、排出手段がカードに接触し、その後、引抜き阻止手段がカードに刺さることを特徴とする。
本発明のカードリーダは、カードに接触してカードを引抜き側へ移動させる排出手段と、カードに刺さってカードの引抜きを阻止する引抜き阻止手段とを備えている。そのため、本発明では、犯罪者が何らかの仕掛けをしてカードを詰まらせた場合であっても、排出手段によってカードリーダからカードを強制的に排出することが可能になって、ユーザがカードを持ち帰ることが可能になるとともに、引抜き阻止手段によってカードリーダからのカードの引抜きを阻止して、犯罪者によるカードの持ち去りを防止することが可能になる。したがって、本発明のカードリーダでは、フィッシングを阻止することが可能になる。
また、本発明のカードリーダは、排出手段および引抜き阻止手段を退避位置と作用位置との間で移動させる移動機構を備えているため、カードの挿入時および引抜き時に、排出手段および引抜き阻止手段を退避位置に退避させておくことが可能になる。したがって、本発明では、排出手段および引抜き阻止手段に起因するカードの挿入負荷やカードの引抜き負荷の変動を防止することが可能になる。その結果、本発明では、挿入時および引抜き時のカードの移動速度の変動を抑制することが可能になる。
また、本発明では、挿入時および引抜き時のカードの移動速度の変動を抑制することが可能になるため、ユーザによるカードリーダへのカードの挿入操作やカードリーダからのカードの引抜き操作が容易になる。また、本発明では、挿入時および引抜き時のカードの移動速度の変動を抑制することが可能になるため、たとえば、カードの挿入時または引抜き時に、カードに記録された磁気データをカードリーダで読み取る場合であっても、磁気データの読取りエラーが発生しにくくなる。また、本発明では、カードリーダは、排出手段および引抜き阻止手段を備え、退避位置にある排出手段および引抜き阻止手段が作用位置に向かって移動すると、まず、排出手段がカードに接触し、その後、引抜き阻止手段がカードに刺さるため、犯罪者の何らかの仕掛けによってカードが詰まっても、カードを強制的に排出できる場合には、引抜き阻止手段がカードに刺さらない。したがって、犯罪者の何らかの仕掛けによってカードが詰まっても、カードを強制的に排出できる場合には、カードの傷の発生を防止することが可能になり、その結果、強制排出されたカードを引き続き使用することが可能になる。
本発明において、カードリーダは、カードリーダにカードが挿入されていることを検知するための挿入検知手段を備え、移動機構は、挿入検知手段によって、カードが所定時間以上、カードリーダに挿入されていることが検知されると、排出手段および引抜き阻止手段を退避位置から作用位置へ移動させることが好ましい。カードが所定時間以上、カードリーダに挿入されている場合には、フィッシングが行われるおそれがあると推定されるため、このように構成すると、フィッシングが行われるおそれがあると推定されるときに、排出手段および引抜き阻止手段を退避位置から作用位置へ移動させることが可能になる。
本発明において、排出手段は、カードに接触して回転する駆動ローラであることが好ましい。このように構成すると、比較的簡易な構成で、カードの強制排出量を確保することが可能になる。すなわち、ユーザがカードを引き抜くことが可能となるカードの排出量を確保することが可能になる。
本発明において、カードリーダは、作用位置にある駆動ローラに対向配置され、駆動ローラとカードとの接触圧を高める対向部を備えることが好ましい。このように構成すると、駆動ローラによるカードの強制排出力を高めることが可能になり、その結果、フィッシングを効果的に阻止することが可能になる。
本発明において、移動機構の駆動源と駆動ローラの駆動源とは共通であることが好ましい。このように構成すると、カードリーダの構成を簡素化することが可能になる。
本発明において、引抜き阻止手段は、たとえば、カードに刺さる引抜き阻止爪を有する爪部材である。
本発明において、カードリーダは、排出手段として、カードに接触して回転する駆動ローラを備えるとともに、引抜き阻止手段として、カードに刺さる引抜き阻止爪を有する爪部材を備え、移動機構は、爪部材を回動可能に保持する支持軸と、支持軸を回転させるモータと、支持軸の回転力を爪部材に伝達する第1歯車列と、支持軸の回転力を駆動ローラに伝達する第2歯車列とを備え、駆動ローラは、爪部材に回転可能に保持され、駆動ローラおよび爪部材は、支持軸および第1歯車列を介して伝達されるモータの動力によって、支持軸を回動の中心にして回動して、退避位置と作用位置との間を移動し、駆動ローラは、支持軸および第2歯車列を介して伝達されるモータの動力によって回転することが好ましい。
このように構成すると、共通のモータを用いて、駆動ローラおよび爪部材を退避位置と作用位置との間で移動させるとともに、駆動ローラを回転させることができる。したがって、カードリーダの構成を簡素化することが可能になる。また、このように構成すると、駆動ローラが爪部材に回転可能に保持されているため、駆動ローラを保持するための部材を別途、設ける必要がなくなる。したがって、カードリーダの構成を簡素化することが可能になる。また、このように構成すると、第1歯車列の減速比と第2歯車列の減速比とを任意に設定することで、駆動ローラおよび爪部材の移動量と駆動ローラの回転量とを任意に設定することが可能になる。
本発明において、爪部材には、支持軸の軸心を曲率中心とする円弧状の係合孔が形成され、移動機構は、係合孔に係合する係合ピンと、モータから爪部材への動力の伝達方向において第1歯車列と爪部材との間に配置され支持軸に回転可能に保持されるとともに係合ピンが固定されるピン固定部材と、支持軸を中心にして係合ピンに対して爪部材を付勢する付勢部材とを備え、ピン固定部材には、モータから爪部材への動力の伝達方向において第1歯車列の最も爪部材側に配置される出力歯車に係合する歯部が形成され、支持軸を中心とする爪部材の回動方向における退避位置側を第1方向とし、支持軸を中心とする爪部材の回動方向における作用位置側を第2方向とすると、付勢部材は、円弧状に形成される係合孔の第1方向端に係合ピンが接触するように第2方向へ爪部材を付勢しており、退避位置にある駆動ローラおよび爪部材が第2方向へ回動すると、まず、駆動ローラがカードに接触し、その後、引抜き阻止爪がカードに刺さるようになっており、爪部材は、駆動ローラがカードに接触することで生じる第1方向への爪部材に対する抗力が付勢部材の付勢力と釣り合うまでピン固定部材と一緒に退避位置から第2方向へ回動し、第1方向への爪部材に対する抗力が付勢部材の付勢力よりも大きくなると、ピン固定部材が回動しても係合孔の第2方向端に係合ピンが接触するまで停止し、係合孔の第2方向端に係合ピンが接触すると、引抜き阻止爪がカードに刺さるまでピン固定部材と一緒に第2方向へ回動することが好ましい。
このように構成すると、退避位置にある駆動ローラおよび爪部材が第2方向へ回動すると、まず、駆動ローラがカードに接触し、その後、引抜き阻止爪がカードに刺さるようになっているため、犯罪者の何らかの仕掛けによってカードが詰まっても、カードを強制的に排出できる場合には、引抜き阻止爪がカードに刺さらない。したがって、犯罪者の何らかの仕掛けによってカードが詰まっても、カードを強制的に排出できる場合には、カードの傷の発生を防止することが可能になり、その結果、強制排出されたカードを引き続き使用することが可能になる。また、この場合には、爪部材に形成された係合孔と係合ピンと付勢部材とを用いた比較的簡易な構成で、退避位置にある駆動ローラおよび爪部材が第2方向へ回動すると、まず、駆動ローラがカードに接触し、その後、引抜き阻止爪がカードに刺さるように、カードリーダを構成することが可能になる。また、このように構成すると、爪部材に対する抗力が付勢部材の付勢力よりも大きくなって、係合孔の第2方向端に係合ピンが接触するまで爪部材が停止しても、ピン固定部材に固定された係合ピンが支持軸を中心に回動するため、付勢部材による第2方向への爪部材の付勢力が高くなる。すなわち、付勢部材による第2方向への駆動ローラの付勢力が高くなり、駆動ローラとカードとの接触圧を高めることが可能になる。したがって、駆動ローラによるカードの強制排出力を高めることが可能になり、その結果、カードを傷つけることなく、フィッシングを阻止することが可能になる。
本発明において、付勢部材は、支持軸が挿通されるとともに、その一端が爪部材に係合しその他端が係合ピンに係合するネジリコイルバネであることが好ましい。このように構成すると、付勢部材を小型化することが可能になる。
本発明において、係合孔の第1方向端に接触する係合ピンが係合孔の第2方向端に接触するまでピン固定部材が回動する間に、駆動ローラは、カードに外力が作用していなければ、カードの挿入側端が駆動ローラから抜けるまでカードを引抜き側へ移動させることが好ましい。このように構成すると、引抜き阻止爪がカードに刺さる前の駆動ローラによる引抜き側へのカードの移動量を大きくすることが可能になる。すなわち、引抜き阻止爪がカードに刺さる前の、駆動ローラによるカードリーダからのカードの排出量を大きくすることが可能になる。
本発明において、カードリーダは、カードに記録された情報の読取りおよびカードへの情報の書込みの少なくともいずれか一方を行うカードリーダ本体部を備えるとともに、排出手段および引抜き阻止手段の少なくともいずれか一方と、移動機構とがユニット化されたユニット部を備え、ユニット部は、カードリーダ本体部に対して着脱可能になっていることが好ましい。このように構成すると、市場に設置されて既に使用されているカードリーダ本体部に、ユニット部を後付けすることが可能になる。したがって、市場で既に使用されているカードリーダ本体部に対して、フィッシング対策を容易に行うことが可能になる。
以上のように、本発明の手動式のカードリーダでは、フィッシングを阻止することが可能になり、また、挿入時および引抜き時のカードの移動速度の変動を抑制することが可能になる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(カードリーダの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の平面図である。図2は、図1に示すカードリーダ1を奥側から示す斜視図である。図3は、図2に示すカードリーダ1をカードリーダ本体部3とフィッシング阻止ユニット4とに分解した状態の分解斜視図である。
本形態のカードリーダ1は、カード2の挿入および引抜きが手動で行われる手動式のカードリーダである。具体的には、カードリーダ1は、ユーザが手動でカードリーダ1の内部にカード2を挿入する際、あるいは、ユーザが手動でカードリーダ1からカード2を引き抜く際に、磁気データの読取りや書込みを行ういわゆるディップ式のカードリーダである。このカードリーダ1は、たとえば、ATM(Automated teller machine)等の所定の上位装置に搭載されて使用される。
本形態では、図1等に示すX方向でカード2が移動する。具体的には、X1方向にカード2が挿入され、X2方向にカード2が引き抜かれる。すなわち、X1方向は、カード2の挿入方向であり、X2方向は、カード2の引抜き方向である。また、X方向に直交する図1等のZ方向は、カードリーダ1に挿入されたカード2の厚さ方向であり、X方向とZ方向とに直交する図1等のY方向は、カードリーダ1に挿入されたカード2の幅方向(短手幅方向)である。なお、以下の説明では、X1方向側を「奥(後ろ)」側、X2方向側を「手前(前)」側、Y1方向側を「右」側、Y2方向側を「左」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
カードリーダ1は、カード2に記録された磁気データの読取りおよびカード2への磁気データの書込みの少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッド(図示省略)を有するカードリーダ本体部3と、カードリーダ1におけるフィッシングを阻止するためのフィッシング阻止ユニット4とを備えている。フィッシング阻止ユニット4は、カードリーダ本体部3の上面側に取り付けられている。
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。カード2には、磁気データが記録される磁気ストライプが形成されている。なお、カード2には、ICチップが内蔵されても良いし、通信用のアンテナが内蔵されても良い。また、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
カードリーダ本体部3は、カード2が挿入されるカード挿入口が形成されるカード挿入部7と、カード2が通過するカード通過路8(図3参照)が形成される本体フレーム9と、制御基板10とを備えている。制御基板10は、本体フレーム9の下面側に固定されている。また、カードリーダ本体部3は、カードリーダ1にカード2が挿入されていることを検知するための挿入検知手段(図示省略)を備えている。この挿入検知手段は、たとえば、発光素子と受光素子とを有する光学式のセンサと、本体フレーム9に回動可能に保持されるレバー部材とから構成されており、レバー部材は、カードリーダ1にカード2が挿入されているときに、センサの発光素子と受光素子との間を遮っている。
本体フレーム9の前端側は、カードリーダ1に挿入されたときのカード2の前端側をユーザが摘めるように形成されている。具体的には、本体フレーム9の前端側は、上下方向から見たときの形状が略U形状となるように形成されている。本体フレーム9には、磁気ヘッドが取り付けられている。カード通過路8は、上下方向における本体フレーム9の中間位置に形成されている。
本体フレーム9の上面側には、図3に示すように、開口部9aが形成されている。開口部9aは、上下方向において、本体フレーム9の上面からカード通過路8まで形成されており、カードリーダ1の上面側に取り付けられるフィッシング阻止ユニット4を取り外すと、図3に示すように、カード通過路8が露出する。また、本体フレーム9には、フィッシング阻止ユニット4を構成する後述の駆動ローラ12に対向配置される対向部が形成されている。この対向部は、後述のようにカード2に接触して回転する駆動ローラ12と、カード2との接触圧を高める機能を果たしている。
カード挿入部7は、本体フレーム9の前端側を覆うように形成されたハウジングであり、上下方向から見たときの形状が略U形状となるように形成されている。カード挿入口は、上下方向におけるカード挿入部7の中間位置に形成されており、カード通過路8に繋がっている。
フィッシング阻止ユニット4は、カード2に接触してカード2を手前側へ移動させる排出手段としての駆動ローラ12と、カード2に刺さってカード2の引抜きを阻止する引抜き阻止手段としての爪部材13と、駆動ローラ12および爪部材13を上下方向へ移動させる移動機構14と、制御基板15とを備えている。フィッシング阻止ユニット4では、駆動ローラ12、爪部材13、移動機構14および制御基板15等が共通のフレーム16に取り付けられており、これらの構成がユニット化されている。本形態のフィッシング阻止ユニット4は、排出手段である駆動ローラ12と、引抜き阻止手段である爪部材13と、移動機構14とがユニット化されたユニット部である。
上述のように、フィッシング阻止ユニット4は、カードリーダ本体部3の上面側に取り付けられている。具体的には、フィッシング阻止ユニット4は、ネジを用いて、フレーム16を本体フレーム9に固定するとともに、コネクタを介して制御基板15に接続されたフレキシブルフラットケーブル(FFC)17の一端を制御基板10のコネクタに差し込むことで、本体フレーム9の上面側に取り付けられており、FFC17の一端を制御基板10のコネクタから抜いて、フレーム16を本体フレーム9に固定するためのネジを取り外せば、フィッシング阻止ユニット4をカードリーダ本体部3から容易に取り外すことができる。すなわち、フィッシング阻止ユニット4は、カードリーダ本体部3に対して着脱可能となっている。以下、フィッシング阻止ユニット4の具体的な構成について説明する。なお、FFC17に代えて、フレキブルプリント基板(FPC)が設けられても良い。
(フィッシング阻止ユニットの構成)
図4は、図3に示す駆動ローラ12、爪部材13および移動機構14の平面図である。図5は、図4のE−E方向から駆動ローラ12、爪部材13および移動機構14を示す側面図である。図6は、図4に示す爪部材13およびその周辺部分を示す斜視図である。図7は、図4に示す爪部材13の斜視図である。図8は、図3に示すフィッシング阻止ユニット4の動作を説明するための図である。
上述のように、フィッシング阻止ユニット4は、駆動ローラ12と爪部材13と移動機構14とを備えている。移動機構14は、フレーム16に回転可能に保持されるとともに爪部材13を回動可能に保持する支持軸21と、支持軸21を回転させる駆動源としてのモータ22と、モータ22の動力を支持軸21に伝達する歯車列23と、支持軸21の回転力を爪部材13に伝達する第1歯車列としての歯車列24と、支持軸21の回転力を駆動ローラ12に伝達する第2歯車列としての歯車列25と、爪部材13に形成される後述の係合孔13eに係合する係合ピン26と、支持軸21に回動可能に保持されるとともに係合ピン26が固定されるピン固定部材27とを備えている。
支持軸21は、その軸方向と左右方向とが略一致するように配置されている。支持軸21の両端側は、軸受30を介してフレーム16に保持されており、支持軸21は、左右方向を回転の軸方向としてフレーム16に対して回転可能となっている。また、支持軸21は、フレーム16の前端側に配置されている。モータ22は、フレーム16の左後端側に固定されており、支持軸21の後ろ側に配置されている。このモータ22は、出力軸の軸方向が上下方向と略一致するように配置されている。歯車列23は、モータ22の出力軸と支持軸21の左端側とを連結する減速歯車列である。この歯車列23は、ウォームギアを備えており、このウォームギアによって、上下方向を回転の軸方向とするモータ22の回転が左右方向を回転の軸方向とする支持軸21の回転に変換される。
爪部材13は、金属板を略角溝状に折り曲げることで形成されている。この爪部材13は、カード2に刺さる引抜き阻止爪13aが形成される2個の爪形成部13bと、2個の爪形成部13bを繋ぐ連結部13cとから構成されている。2個の爪形成部13bは、左右方向に直交する平板状に形成されており、左右方向に所定の間隔をあけた状態で連結部13cによって連結されている。連結部13cは、2個の爪形成部13bの奥上端側を繋いでいる。引抜き阻止爪13aは、先端が尖った突起状に形成されている。また、引抜き阻止爪13aは、爪形成部13bの後ろ下端側に形成されている。
爪形成部13bには、軸受31が取り付けられる円形の貫通孔13dが形成されている(図7参照)。貫通孔13dは、爪形成部13bの前上端側に形成されている。爪形成部13bは、軸受31を介して支持軸21に保持されており、爪部材13は、左右方向を回動の軸方向として支持軸21に対して回動可能となっている。また、爪部材13は、左右方向における支持軸21の略中心部分に保持されている。
左側に配置される爪形成部13bには、係合ピン26が係合する係合孔13eが形成されている。係合孔13eは、左側に配置される爪形成部13bを貫通するように形成されている。また、係合孔13eは、左右方向から見たときの形状が円弧状となるように形成されている。具体的には、係合孔13eは、支持軸21の軸心(すなわち、貫通孔13dの中心)を曲率中心とする円弧状に形成されている。また、係合孔13eは、中心角の比較的小さな円弧状に形成されている。この係合孔13eは、貫通孔13dの上側に形成されている。連結部13cの前端には、後述のネジリコイルバネ44の一端が係合する切欠き部13fが形成されている。なお、以下では、係合孔13eの、図8における時計回りの方向(時計方向)端を一端13gとし、係合孔13eの、図8における反時計回りの方向(反時計方向)端を他端13hとする。
駆動ローラ12は、中心側に配置される金属製の芯金と、芯金の外周面に固定されるゴム製の外周側部材とから構成されるゴムローラである。この駆動ローラ12は、爪形成部13bの奥端側に固定される固定軸32に回転可能に保持されている。すなわち、駆動ローラ12は、固定軸32を介して爪部材13に回転可能に保持されている。固定軸32の両端側のそれぞれは、2個の爪形成部13bのそれぞれに固定されており、固定軸32は、2個の爪形成部13bの間に配置されている。また、固定軸32は、その軸方向と左右方向とが略一致するように配置されており、駆動ローラ12は、左右方向を回転の軸方向として回転可能となっている。
歯車列25は、支持軸21に固定される歯車33と、駆動ローラ12の右側面に固定される歯車34と、歯車33および歯車34に係合する歯車35とから構成されている。歯車35は、固定軸36に回転可能に保持されている。固定軸36は、右側に配置される爪形成部13bに固定されている。歯車33〜35は、右側に配置される爪形成部13bと隣接するように、右側に配置される爪形成部13bの左側に配置されている。なお、本形態では、歯車33のピッチ円の径と歯車34のピッチ円の径とが等しくなっており、歯車列25は、支持軸21の回転を減速せずに駆動ローラ12に伝達している。
歯車列24は、支持軸21に固定される歯車37と、フレーム16に回転可能に保持される複数の歯車とから構成された減速歯車列である。複数の歯車は、フレーム16に固定される2本の固定軸38に回転可能に保持されており、固定軸38を介してフレーム16に回転可能に保持されている。歯車列24は、爪部材13よりも左側に配置されている。
ピン固定部材27は、左右方向に直交する平板状に形成されている。ピン固定部材27の略中心には、軸受41が取り付けられる円形の貫通孔が形成されている。ピン固定部材27は、軸受41を介して支持軸21に保持されており、左右方向を回動の軸方向として支持軸21に対して回動可能となっている。ピン固定部材27の奥端側には、複数の歯からなる歯部27aが形成されている。歯部27aは、モータ22から爪部材13への動力の伝達方向において歯車列24の最も爪部材13側に配置される出力歯車としての歯車42に係合している。ピン固定部材27は、爪部材13と隣接するように爪部材13の左側に配置されている。また、ピン固定部材27は、モータ22から爪部材13への動力の伝達方向において歯車列24と爪部材13との間に配置されている。
係合ピン26は、ピン固定部材27から右側へ突出するようにピン固定部材27の上端側に固定されている。2個の爪形成部13bの間には、付勢部材としてのネジリコイルバネ44が配置されている。ネジリコイルバネ44には、支持軸21が挿通されている。ネジリコイルバネ44の一端は、爪部材13の切欠き部13fに係合し、ネジリコイルバネ44の他端は、係合ピン26の右端側部分(すなわち、先端側部分)に係合している。ネジリコイルバネ44は、支持軸21を中心にして係合ピン26に対して爪部材13を付勢している。具体的には、ネジリコイルバネ44は、支持軸21を中心にして図8の反時計方向へ係合ピン26に対して爪部材13を付勢している。すなわち、ネジリコイルバネ44は、係合孔13eの一端13gに係合ピン26が接触するように、爪部材13を付勢している。
フィッシング阻止ユニット4では、モータ22が回転すると、モータ22の動力が歯車列23を介して支持軸21に伝達され、支持軸21が回転する。支持軸21が回転すると、支持軸21の回転力が歯車列25を介して駆動ローラ12に伝達され、駆動ローラ12が固定軸32を中心にして回転する。すなわち、駆動ローラ12は、支持軸21および歯車列23、25を介して伝達されるモータ22の動力によって固定軸32を中心にして回転する。
また、支持軸21が回転すると、支持軸21の回転力が歯車列24を介してピン固定部材27に伝達され、ピン固定部材27が支持軸21を中心にして回動する。また、係合ピン26が係合孔13eに係合しているため、ピン固定部材27が回動すると、爪部材13が支持軸21を中心にして回動する。爪部材13が支持軸21を中心にして回動すると、固定軸32を介して爪部材13に保持されている駆動ローラ12も支持軸21を中心にして回動する。すなわち、駆動ローラ12および爪部材13は、支持軸21、歯車列23、24、ピン固定部材27および係合ピン26を介して伝達されるモータ22の動力によって支持軸21を中心にして回転する。
移動機構14は、図8(A)に示すように、カード通過路8に配置されるカード2に駆動ローラ12および爪部材13の引抜き阻止爪13aが接触しないように駆動ローラ12および爪部材13がカード通過路8の上方へ退避している位置(退避位置)と、図8(B)、(C)に示すように、カード通過路8に配置されるカード2に対して駆動ローラ12や爪部材13が作用する位置(より具体的には、駆動ローラ12がカード2に接触する位置や引抜き阻止爪13aがカード2に刺さる位置、作用位置)との間で、駆動ローラ12および爪部材13を移動させる。図8に示すように、駆動ローラ12および爪部材13が支持軸21を中心にして反時計方向へ回動すると、駆動ローラ12および爪部材13は、退避位置から作用位置へ向かって移動し、駆動ローラ12および爪部材13が支持軸21を中心にして時計方向へ回動すると、駆動ローラ12および爪部材13は、作用位置から退避位置へ向かって移動する。本形態の反時計方向は、支持軸21を中心とする爪部材13の回動方向における退避位置側となる第1方向であり、時計方向は、爪部材13の回動方向における作用位置側となる第2方向である。なお、作用位置にある駆動ローラ12および爪部材13の引抜き阻止爪13aは、本体フレーム9の開口部9aの中に配置されている。
本形態では、退避位置にある駆動ローラ12および爪部材13が支持軸21を中心に反時計方向へ回動したときに、図8(B)に示すように、まず、駆動ローラ12がカード2に接触するように、駆動ローラ12が形成され、また、配置されている。すなわち、退避位置にある駆動ローラ12および爪部材13が作用位置に向かって移動すると、まず、駆動ローラ12がカード2に接触する。具体的には、駆動ローラ12は、カード2の上面に接触する。また、駆動ローラ12がカード2に接触した後、さらに、駆動ローラ12および爪部材13が支持軸21を中心に反時計方向へ回動すると、図8(C)に示すように、引抜き阻止爪13aがカード2に刺さる。具体的には、引抜き阻止爪13aは、カード2の上面側からカード2に刺さる。
上述のように、ピン固定部材27に固定される係合ピン26が円弧状に形成される爪部材13の係合孔13eに係合し、かつ、ネジリコイルバネ44の付勢力によって、爪部材13が反時計方向へ付勢されているため、駆動ローラ12および爪部材13が退避位置にある状態で、モータ22が回転してピン固定部材27が反時計方向へ回動すると、駆動ローラ12がカード2に接触することで生じる時計方向への爪部材13に対する抗力がネジリコイルバネ44の付勢力と釣り合うまで、駆動ローラ12および爪部材13は、ピン固定部材27と一緒に支持軸21を中心にして反時計方向へ回動する。すなわち、図8(A)に示す状態から図8(B)に示す状態まで、駆動ローラ12および爪部材13は、ピン固定部材27と一緒に支持軸21を中心にして反時計方向へ回動する。
その後、ピン固定部材27がさらに反時計方向へ回動して、時計方向への爪部材13に対する抗力がネジリコイルバネ44の付勢力よりも大きくなると、ピン固定部材27が反時計方向へ回動しても、ネジリコイルバネ44が撓むため、駆動ローラ12および爪部材13は、係合孔13eの他端13hに係合ピン26が接触するまで停止する。また、その後、ピン固定部材27がさらに反時計方向へ回動して、係合孔13eの他端13hに係合ピン26が接触すると、爪部材13が係合ピン26に押されるため、駆動ローラ12および爪部材13は、図8(C)に示すように、引抜き阻止爪13aがカード2に刺さるまでピン固定部材27と一緒に支持軸21を中心にして反時計方向へ回動する。なお、ピン固定部材27が反時計方向へ回動している間は、モータ22の動力で支持軸21が回転しているため、固定軸32を中心とする反時計方向の回転力が駆動ローラ12に伝達されている。
本形態では、駆動ローラ12がカード2に接触することで生じる時計方向への爪部材13に対する抗力がネジリコイルバネ44の付勢力よりも大きくなって係合孔13eの一端13gに接触する係合ピン26が係合孔13eの他端13hに接触するまでピン固定部材27が反時計方向へ回動する間に、駆動ローラ12が反時計方向へ3〜4回転するように、歯車列24の減速比が設定されている。カード2に外力が作用していなければ、駆動ローラ12が反時計方向へ3〜4回転すると、カード2は、その奥端が駆動ローラ12から抜けるまで前側へ移動する。すなわち、カード2に外力が作用していなければ、係合孔13eの一端13gに接触する係合ピン26が係合孔13eの他端13hに接触するまでピン固定部材27が反時計方向へ回動する間に、駆動ローラ12は、カード2の奥端が駆動ローラ12から抜けるまでカード2を前側へ移動させる。
(カードリーダの概略動作)
カードリーダ1では、通常、駆動ローラ12および爪部材13は、カード通過路8を通過するカード2に接触しないようにカード通過路8の上方へ退避しており(すなわち、退避位置にあり)、カード2の挿入操作時や引抜き操作時に、駆動ローラ12や爪部材13にカード2が接触することはない。
一方、挿入検知手段によって、カード2が所定時間以上、カードリーダ1に挿入されていることが検知されると、フィッシングが行われるおそれがあると推定して、モータ22が起動する。モータ22が回転して、退避位置にある駆動ローラ12および爪部材13が反時計方向へ回動すると、上述のように、まず、駆動ローラ12がカード2に接触して回転し、カード2の排出を試みる。すなわち、係合孔13eの一端13gに接触する係合ピン26が係合孔13eの他端13hに接触するまでピン固定部材27が反時計方向へ回動する間、駆動ローラ12を用いてカード2の排出を試みる。
駆動ローラ12によってカード2が排出されれば、ユーザは、排出されたカード2を持ち帰ることができる。一方、駆動ローラ12によってカード2が排出されない場合には、引抜き阻止爪13aがカード2に刺さるため、犯罪者によるカード2の持ち去りを阻止することが可能になる。
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のカードリーダ1は、カード2に接触してカード2を手前側へ移動させる駆動ローラ12と、カード2に刺さってカード2の引抜きを阻止する爪部材13とを備えており、挿入検知手段によって、カード2が所定時間以上、カードリーダ1に挿入されていることが検知されると、フィッシングが行われるおそれがあると推定して、退避位置にある駆動ローラ12および爪部材13が作用位置へ移動する。そのため、本形態では、犯罪者が何らかの仕掛けをしてカード2を詰まらせた場合であっても、上述のように、駆動ローラ12によってカードリーダ1からカード2を強制的に排出して、ユーザがカード2を持ち帰ることが可能になるか、あるいは、爪部材13によってカードリーダ1からのカード2の引抜きを阻止して、犯罪者によるカード2の持ち去りを防止することが可能になる。したがって、本形態では、フィッシングを阻止することが可能になる。
本形態では、通常、駆動ローラ12および爪部材13は、カード通過路8を通過するカード2に接触しないようにカード通過路8の上方へ退避しており、カード2の挿入操作時や引抜き操作時に、駆動ローラ12や爪部材13にカード2が接触することはない。そのため、本形態では、駆動ローラ12や爪部材13に起因するカード2の挿入負荷やカード2の引抜き負荷の変動を防止することが可能になる。したがって、本形態では、挿入時および引抜き時のカード2の移動速度の変動を抑制することが可能になる。その結果、本形態では、ユーザによるカードリーダ1へのカード2の挿入操作やカードリーダ1からのカード2の引抜き操作が容易になる。また、本形態では、挿入時および引抜き時のカード2の移動速度の変動を抑制することが可能になるため、カード2の挿入時や引抜き時に行われる磁気データの読取りや書込みのエラーが発生しにくくなる。
本形態では、退避位置にある駆動ローラ12および爪部材13が支持軸21を中心に反時計方向へ回動すると、まず、駆動ローラ12がカード2に接触し、その後、さらに、駆動ローラ12および爪部材13が支持軸21を中心に反時計方向へ回動すると、引抜き阻止爪13aがカード2に刺さる。そのため、本形態では、犯罪者の何らかの仕掛けによってカード2が詰まっても、カード2を強制的に排出できる場合には、引抜き阻止爪13aがカード2に刺さらない。したがって、本形態では、犯罪者の何らかの仕掛けによってカード2が詰まっても、カード2を強制的に排出できる場合には、カード2の傷の発生を防止することが可能になり、その結果、強制排出されたカード2を引き続き使用することが可能になる。
本形態では、駆動ローラ12がカード2に接触することで生じる時計方向への爪部材13に対する抗力がネジリコイルバネ44の付勢力よりも大きくなって、係合孔13eの他端13hに係合ピン26が接触するまで駆動ローラ12および爪部材13が停止しても、ピン固定部材27に固定された係合ピン26は支持軸21を中心に回動する。そのため、本形態では、駆動ローラ12および爪部材13が停止しても、ネジリコイルバネ44による反時計方向への爪部材13の付勢力が高くなる。すなわち、ネジリコイルバネ44による反時計方向への駆動ローラ12の付勢力が高くなり、駆動ローラ12とカード2との接触圧を高めることが可能になる。また、本形態では、カード2に接触して回転する駆動ローラ12に対向配置される対向部が本体フレーム9に形成されており、この対向部が駆動ローラ12とカード2との接触圧を高める機能を果たしている。したがって、本形態では、駆動ローラ12によるカード2の強制排出力を高めることが可能になり、その結果、カード2を傷つけることなく、フィッシングを阻止することが可能になる。
本形態では、カード2に接触して回転する駆動ローラ12によってカード2の強制排出が行われている。そのため、本形態では、比較的簡易な構成で、カード2の強制排出量を確保することが可能になる。また、本形態では、駆動ローラ12がカード2に接触することで生じる時計方向への爪部材13に対する抗力がネジリコイルバネ44の付勢力よりも大きくなって係合孔13eの一端13gに接触する係合ピン26が係合孔13eの他端13hに接触するまでピン固定部材27が反時計方向へ回動する間に、カード2に外力が作用していなければ、カード2の奥端が駆動ローラ12から抜けるまで駆動ローラ12がカード2を前側へ移動させるため、引抜き阻止爪13aがカード2に刺さる前の駆動ローラ12による前側へのカード2の移動量を大きくすることが可能になる。すなわち、本形態では、引抜き阻止爪13aがカード2に刺さる前の、駆動ローラ12によるカードリーダ1からのカード2の排出量を大きくすることが可能になる。
本形態では、モータ22を用いて、支持軸21を中心にして駆動ローラ12および爪部材13を回動させるとともに、固定軸32を中心にして駆動ローラ12を回転させている。すなわち、本形態では、共通のモータ22を用いて、駆動ローラ12および爪部材13を回動させるとともに駆動ローラ12を回転させている。そのため、本形態では、カードリーダ1の構成を簡素化することが可能になる。また、本形態では、カード2に刺さる引抜き阻止爪13aを有する爪部材13に駆動ローラ12が回転可能に保持されているため、駆動ローラ12を保持するための部材や、退避位置と作用位置との間で駆動ローラ12を移動させるための機構を別途設ける必要がない。したがって、本形態では、カードリーダ1の構成を簡素化することが可能になる。
本形態では、フィッシング阻止ユニット4を構成する駆動ローラ12、爪部材13、移動機構14および制御基板15等が共通のフレーム16に取り付けられており、これらの構成がユニット化されている。また、本形態では、フィッシング阻止ユニット4は、ネジを用いて、フレーム16を本体フレーム9に固定するとともに、コネクタを介して制御基板15に接続されたFFC17の一端を制御基板10のコネクタに差し込むことで、本体フレーム9の上面側に取り付けられており、FFC17の一端を制御基板10のコネクタから抜いて、フレーム16を本体フレーム9に固定するためのネジを取り外せば、カードリーダ本体部3からフィッシング阻止ユニット4を容易に取り外すことができる。そのため、本形態では、市場に設置されて既に使用されているカードリーダ本体部3に、フィッシング阻止ユニット4を後付けすることが可能になる。したがって、本形態では、市場で既に使用されているカードリーダ本体部3に対して、フィッシング対策を容易に行うことが可能になる。
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
上述した形態では、フィッシング阻止ユニット4は、駆動ローラ12と爪部材13とを備えている。この他にもたとえば、フィッシング阻止ユニット4は、駆動ローラ12のみを備えていても良いし、爪部材13のみを備えていても良い。また、上述した形態では、フィッシング阻止ユニット4は、カード2に接触してカード2を手前側へ移動させる排出手段として、駆動ローラ12を備えているが、フィッシング阻止ユニット4は、駆動ローラ12に代えて、前後方向へ直線的に移動するカード排出爪等を備えていても良い。この場合には、このカード排出爪がカード2に接触してカード2を手前側へ移動させる。
上述した形態では、フィッシングが行われるおそれがあると推定されると、モータ22が起動して、引抜き阻止爪13aがカード2に刺さる位置まで、ピン固定部材27が回動している。この他にもたとえば、ピン固定部材27が反時計方向へ回動している状態で、カードリーダ1からカード2が引き抜かれたことが挿入検知手段によって検知された場合に、モータ22を停止させてピン固定部材27を停止させても良い。また、カードリーダ1からカード2が引き抜かれたことが挿入検知手段によって検知されない場合であっても、引抜き阻止爪13aがカード2に刺さる前に、モータ22を停止させてピン固定部材27を停止させても良い。すなわち、駆動ローラ12によるカード2の排出の試みのみを行っても良い。
上述した形態では、共通のモータ22を用いて、駆動ローラ12および爪部材13を回動させるとともに駆動ローラ12を回転させている。この他にもたとえば、駆動ローラ12および爪部材13を回動させるモータと、駆動ローラを回転させるモータとが個別に設けられても良い。また、上述した形態では、爪部材13は、ネジリコイルバネ44によって係合ピン26に対して付勢されているが、爪部材13は、引張りコイルバネ等の他のバネ部材によって係合ピン26に対して付勢されても良い。
上述した形態では、カードリーダ本体部3は、磁気ヘッドを備えている。この他にもたとえば、カードリーダ本体部3は、磁気ヘッドに加えて、または、磁気ヘッドに代えて、IC接点や通信用のアンテナ等を備えていても良い。