JP6132595B2 - ラマン増幅器、光中継装置、光通信システム、ラマン増幅制御方法及びプログラム - Google Patents

ラマン増幅器、光中継装置、光通信システム、ラマン増幅制御方法及びプログラム Download PDF

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本発明は、光ファイバを伝搬する信号光をラマン増幅効果によって増幅するラマン増幅器、ラマン増幅器を用いた光中継装置と光通信システム、ラマン増幅制御方法及びプログラムに関する。
波長多重された信号光を長距離伝送するために、多数の中継装置において光増幅し中継するシステムが実用化されている。このようなシステムにおいて、光増幅にラマン増幅器を用いた場合、信号光の光SNR(Signal to Noise Ratio:信号対雑音比)を改善することができるため、伝送距離の延伸化に効果があると期待されている。
伝送距離の延伸化に伴い光増幅中継数が多くなった場合、信号品質を保つために、信号光の波長帯域内における各光増幅器の利得の波長特性を平坦化し、各波長の信号光のパワーと光SNRの波長依存性を小さくする必要がある。
ここで、ラマン増幅器の利得を、励起光の有無に対する出力信号光のパワーの比と定義する。ラマン増幅器の利得の波長特性を平坦化するためには、ラマン増幅の利得の波長特性を補償するような損失の波長特性を持つ利得等化器を信号光伝送路に挿入することが考えられる。しかし、ラマン増幅の利得の波長特性は、平均利得に応じて変化するため、平均利得によっては利得等化器で波長特性を十分に補償できなくなるという問題がある。
この問題に対して、ラマン増幅の平均利得を一定化する技術がある(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の光中継伝送システムは、送信側から複数の波長の信号光とラマン増幅を受けない参照光を多重した信号光をファイバ伝送する。そして、ラマン増幅器において、光ファイバを伝送する信号光の一部から信号光と参照光を分波し、信号光レベルと参照光レベルをそれぞれ検出し、検出された参照光レベルに基づいてラマン増幅の平均利得を所定の値に保つための信号光レベル制御目標値を算出する。算出した信号光レベル制御目標値に検出された信号光のレベルが一致するように励起光の出力を制御する。
特開2004−193640号公報
特許文献1に記載の光中継伝送システムは、参照光をファイバ伝送し、ラマン増幅器における参照光レベルに基づいて、ラマン増幅の利得を制御するものであるため、送信側または伝送路において参照光に障害が発生したときに、利得の制御が正常に行えなくなるという問題があった。そして利得の制御が正常に行えなくなった結果、利得等化器等による利得の補償ができなくなり、所望の利得の波長特性を得ることができないという課題があった。
また、信号光に参照光を重畳するために、送信装置側では参照光用の発光素子を別途用意する必要があり、中継装置側では参照光レベルを検出する構成が必要となり、構成が複雑であり、低コスト化の弊害となっていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で所望の利得の波長特性を得ることのできるラマン増幅器等を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のラマン増幅器は、複数の波長の信号光を伝送するとともに、信号光を含む光をラマン増幅する光ファイバと、信号光を含む光をラマン増幅するための励起光を光ファイバに入射する励起光源と、光ファイバを伝送しラマン増幅された光から、ラマン増幅帯域内で且つ信号光の波長を含まない波長帯域の雑音光を抽出する雑音光抽出部と、雑音光のパワーを検出する雑音光パワー検出部と、を有する。雑音光パワー検出部が検出する雑音光のパワーの対数の変化率と、励起光のパワーの対数の変化率が、絶対値が同じで、符号が逆となるように、励起光のパワーの変化率を決定し、その変化率で励起光のパワーが変化するように励起光源を制御する。
本発明によれば、簡易な構成で所望の利得の波長特性を得ることができる。
本発明の実施の形態に係る光通信システムを示すブロック図である。 信号光パワー及び雑音光パワーの波長特性を示す図である。 励起光源駆動処理のフローチャートである。 (A)はフィードバック制御を施さない場合の利得の変化を示した表である。(B)は雑音光パワーを一定化する制御を施した場合の利得の変化を示した表である。(C)は実施の形態に係る制御を施した場合の利得の変化を示した表である。 実施の形態に係る光通信システムの他の構成を示すブロック図である。
実施の形態.
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態に係る光通信システム1は、図1に示すように、送信装置10、伝送路光ファイバ20、中継装置30、受信装置50からなる。図1には中継装置30を一つのみ記載しているが、送信装置10と受信装置50の間には任意の数の中継装置30が接続されている。任意の数の中継装置30は、互いに略同じ構成を有している。
送信装置10は、任意の変調方式を用いて送信電気信号で光変調した複数の波長の光信号を生成し、これらを波長多重した波長多重信号光を伝送路光ファイバ20に送出する。
伝送路光ファイバ20は、波長多重信号光を伝送する伝送路であるとともに、励起光を入射することでラマン増幅効果を得る増幅媒体でもある。本実施の形態では、伝送路光ファイバ20の受信装置50側、つまり伝送路光ファイバ20の後方から励起光を入射するため、いわゆる後方励起によるラマン増幅を行っている。
中継装置30は、送信装置10側の伝送路光ファイバ20、つまり上流の伝送路光ファイバ20でのラマン増幅を制御する機能を有しており、上流の伝送路光ファイバ20で増幅された波長多重信号光を、受信装置50側の伝送路光ファイバ20、つまり下流の伝送路光ファイバ20に送出する。
受信装置50は、伝送路光ファイバ20を伝送してきた波長多重信号光を受信し、送信装置10の変調方式に対応する復調方式で復調し、受信電気信号を取得する。
中継装置30には、合分波器31、励起光源32、第1分岐器33、第2分岐器34、雑音光透過フィルタ35、信号光パワー検出部36、雑音光パワー検出部37、記憶部38、演算回路39、利得等化器(Gain EQualizer:GEQ)40が備えられている。なお、上流の伝送路光ファイバ20と、中継装置30内の合分波器31、励起光源32、第1分岐器33、第2分岐器34、雑音光透過フィルタ35、信号光パワー検出部36、雑音光パワー検出部37、記憶部38、演算回路39とで、ラマン増幅器60を構成している。
合分波器31は、励起光源32から出力される励起光を上流の伝送路光ファイバ20に導くための合分波器であり、波長帯の異なる励起光と信号光とを所定の方向に通過させる波長フィルタや、方向性結合機能を有するサーキュレータから構成される。合分波器31は、上流の伝送路光ファイバ20側から入力される信号光を、第1分岐器33側に出力し、励起光源32から入力される励起光を、上流の伝送路光ファイバ20側に出力する。
励起光源32は、伝送路光ファイバ20でラマン増幅を行うために、伝送路光ファイバ20の後方から入射する励起光を発生させる光源であり、例えば波長が1.4〜1.5μmの高出力レーザである。励起光源32の駆動電流値を制御することにより、励起光源32が出力する励起光パワーを制御する。なお、励起光源32は、ラマン利得の偏光依存性を低減するために、デポラライザを備えた光源であっても良い。
第1分岐器33は、合分波器31が出力する光を2分岐する1入力2出力の光分岐器であり、例えば10dBカプラ、15dBカプラ、20dBカプラ等から構成される。第1分岐器33は、合分波器31側の入力ポート331から入力される光を分岐して、信号伝送経路側である主信号ポート332と、光パワー検出用の副信号ポート333から出力する。第1分岐器33が10dBカプラの場合、入力光に対して−10dBのパワーの光が副信号ポート333から出力される。
第2分岐器34は、第1分岐器33の副信号ポート333から出力される光を2分岐する1入力2出力の分岐器であり、例えば、3dBカプラから構成される。第2分岐器34は、第1分岐器33側の入力ポート341から入力される光を分岐して、信号光パワー検出用の第1ポート342と、雑音光パワー検出用の第2ポート343から出力する。第2分岐器34が3dBカプラの場合、入力光に対してそれぞれ−3dBのパワーの光が第1ポート342と第2ポート343から出力される。
雑音光透過フィルタ35は、特定の波長帯域の光のみを透過させる波長フィルタから構成され、第2分岐器34の第2ポート343に接続されている。雑音光透過フィルタ35は、第2分岐器34の第2ポート343から出力される光のうち信号光の波長を含まない波長帯域の雑音光を透過し、雑音光パワー検出部37側に出力する。
雑音光透過フィルタ35の入出力について、図2を用いて説明する。第2分岐器34の第2ポート343から雑音光透過フィルタ35に入力する光は、図2(a)に示すように、等間隔で配列された波長を有する光が多重された信号光と、雑音光を含んでいる。雑音光透過フィルタ35から出力する光は、ラマン増幅帯域内でかつ信号光を含まない帯域の雑音光の一部である。透過する帯域は、例えば、図2(b)の実線で示すように、信号光より長波長の帯域でも良いし、信号光より短波長の帯域でもよい。
以上のように、直列に接続された第1分岐器33、第2分岐器34、雑音光透過フィルタ35が、伝送路光ファイバ20を伝送しラマン増幅された光から、信号光の波長を含まない波長帯域の雑音光を抽出する機能を有している。
信号光パワー検出部36は、第2分岐器34の第1ポート342に接続され、第1ポート342から出力される光のパワーに対応した電圧信号である信号光パワー信号を出力する。信号光パワー検出部36は、例えば、入力光を光電変換して入力光パワーに対応した電流を出力するフォトダイオードと、フォトダイオードの出力電流を電圧信号に変換する電流電圧変換アンプから構成される。
信号光パワー検出部36が検出する光は、第2分岐器34の第1ポート342から出力される光であり、雑音光透過フィルタ35に入力する光と略同じであるから、図2(a)に示すように信号光と雑音光を含んだものである。しかし、雑音光のパワーは、信号光のパワーに比較して十分に小さいため、実質的に信号光のパワーを検出している。
雑音光パワー検出部37は、雑音光透過フィルタ35の第2分岐器34側と逆側に接続され、雑音光透過フィルタ35から出力された光のパワーに対応した電圧信号である雑音光パワー信号を出力する。雑音光パワー検出部37は、例えば、信号光パワー検出部36と同様に、フォトダイオードと、電流電圧変換アンプから構成される。
雑音光パワー検出部37が検出する光は、雑音光透過フィルタ35を透過した後の光であるから、図2(b)に示すように特定の帯域内の雑音光である。つまり、雑音光パワー検出部37は、特定の帯域内の雑音光のパワーを検出している。
ここで、雑音光透過フィルタ35を透過する雑音光のパワーは、ラマン増幅利得を一定に保つ制御に利用するパラメータであるため、ラマン増幅で発生した雑音光パワーを検出するのが望ましい。ラマン増幅で発生した雑音の主要素は、自然放出光が増幅されて出力されるASE(Amplified spontaneous emission:自然放出光)雑音である。このため、送信装置10の発光部で発生するショット雑音等を排除するために、送信装置10の光出力部に、雑音光透過フィルタ35で透過させる波長帯域の雑音光を除去するフィルタを備えてもよい。
記憶部38は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリから構成される。記憶部38は、励起光源32の駆動電流の初期値や、励起光源32の駆動電流と励起光パワーとの関係を示すデータや、演算回路39で実行するプログラム等を記憶する。
記憶部38に記憶されている、励起光源32の駆動電流と励起光パワーとの関係を示すデータは、例えば、ラマン増幅器60の組立時において、励起光源32を合分波器31に接続したときの励起光源32の駆動電流と、合分波器31の伝送路光ファイバ20側のポートから出力する励起光パワーとの関係を測定した測定結果を示す表データである。
演算回路39は、記憶部38に記憶されているプログラムを実行することにより、ラマン増幅器60の利得が一定となるように励起光源32を駆動制御する励起光源駆動処理等を実行する。
また、演算回路39は、信号光パワー検出部36から出力される信号光パワー信号に基づいて、伝送信号の出力異常の発生を監視し、異常があった場合には警告を行い、外部にその情報を送信する等の処理を行う。
演算回路39が実行する励起光源駆動処理は、定期的に雑音光パワー検出部37から出力される雑音光パワー信号を読込み、雑音光パワーの変化率に基づいて励起光パワーの変化率を決定する。そして、決定した変化率で励起光パワーが変化するように駆動電流を決定する。励起光源駆動処理を図3に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。
励起光源駆動処理が開始されると、まず、タイマーをリセットしてからスタートする(ステップS101)。演算回路39は、励起光源32の駆動電流の初期値を記憶部38より読み込み、励起光源32に対して出力する(ステップS102)。励起光源32は、演算回路39から入力された駆動電流の初期値の情報に基づいて駆動する。
次に、演算回路39は、雑音光パワー検出部37が検出する雑音光パワーを取得する(ステップS103)。つまり初期状態の雑音光パワーを取得し、演算回路39の内部メモリに一時保存する。その後タイマーをモニタし、タイマー時間tが雑音光パワー検出間隔tを超えるまで待機する(ステップS104:No)。そして、タイマー時間tが雑音光パワー検出間隔tを超えた場合には(ステップS104:Yes)、雑音光パワーを再取得する(ステップS105)。
ステップS105で取得した雑音光パワーから、雑音光パワーの変化率を算出する(ステップS106)。本実施の形態では、ステップS105で取得した雑音光パワーを、演算回路39の内部メモリに一時保存している前回取得した雑音光パワーで除算してデシベル値に変換する。
その後、ステップS105で取得した雑音光パワーを演算回路39の内部メモリに一時保存する(ステップS107)。この内部メモリへの一時保存は、次の変化率算出時に使用するためである。
次に、ステップS106で算出した雑音光パワーの変化率に基づいて、励起光パワーの変化率を決定する(ステップS108)。本実施の形態は、雑音光パワーの変化率のデシベル値と励起光パワーの変化率のデシベル値が、絶対値が同じで、符号が逆となるように励起光パワーの変化率を求める。換言すると、雑音光パワーの変化率のデシベル値と励起光パワーの変化率のデシベル値との和が0dBとなるように励起光パワーの変化率を求める。
次に、演算回路39は、記憶部38の表データを参照し、ステップS108で決定した励起光パワーの変化率に対応する駆動電流の変化率を算出する。そして、現在の駆動電流に対して、算出した駆動電流の変化率分変化させた励起光源の駆動電流を決定し、その駆動電流の情報を励起光源32に対して出力する(ステップS109)。
その後、電源OFF等、励起光源駆動処理を終了する指示があるか否かを判定し(ステップS110)、終了する指示がない場合には(ステップS110:No)、タイマーをリセットして(ステップS111)、ステップS104に戻る。終了する指示がある場合には(ステップS110:Yes)、本処理を終了する。
以上説明した本実施の形態に係る励起光源駆動処理を実行したときの結果を、雑音光パワーに基づくフィードバック制御を施さない場合及び雑音光パワーを一定化する制御を施した場合と比較して説明する。
図4に示した表は伝送路光ファイバ20の送信装置10又は前段の中継装置30に近い位置(送信端付近)で1dBの損失増加が発生した場合と、当該中継装置30の合分波器31に近い位置(受信端付近)で1dBの損失増加が発生した場合において、各光パワーとラマン増幅の利得の変化率を見積もった結果を示している。
なお、ここでのラマン増幅の利得とは、伝送路光ファイバ20における実質的な増幅利得であり、ラマン増幅器全体での利得とは異なり、受信端での損失や合分波器31や第1分岐器33等の挿入損失を考慮しないものである。すなわち、利得の波長特性に影響を及ぼすラマン増幅の利得である。
図4(A)の表は、励起光源32に対してフィードバック制御を施さない場合の各光パワーと利得の変化率を示している。
まず、送信端付近で1dBの損失増加が発生した場合について説明する。送信端付近では、励起光パワーは微弱に減衰しており、雑音光パワーは損失増加の影響をほとんど受けないため、雑音光パワーの変化率は±0dBである。励起光パワーの変化率はフィードバック制御を施していないため±0dBである。よって、雑音光パワーの変化率と励起光パワーの変化率の和は±0dBである。一方、信号光パワーの変化率は、損失の影響で−1.0dBである。ラマン増幅の利得については、励起光パワーが変化していないため、利得も変化せず±0dBである。
次に、受信端付近で1dBの損失増加が発生した場合について説明する。フィードバック制御を施していない励起光パワーは伝送路光ファイバ20伝搬時に1dB低下しているため、ラマン増幅の利得が低下する。利得の低下量は諸条件に依存するが、ここでは伝送路光ファイバ20入力時の励起光パワーが1dB低下したことによる利得の低下量を1.5dBとする。この場合、伝送路で発生する雑音光パワーも1.5dB低下して、さらに受信端付近の1dBの損失も加わり雑音光パワー検出部37が検出する雑音光パワーは合計2.5dB低下する。信号光パワーについても、1.5dBの利得低下と受信端付近の1dBの損失により、信号光パワー検出部36が検出する信号光パワーは合計2.5dB低下する。なお、このときの励起光源32が出力する励起光パワーの変化率は±0dBであり、雑音光パワーの変化率と励起光パワーの変化率の和は−2.5dBである。
つまり、雑音光パワーに基づくフィードバック制御を施さない場合、送信端付近で損失があった場合には影響はほとんどないが、受信端付近で損失があった場合、実質的なラマン増幅の利得が大きく変化し、利得の波長特性が変化してしまう。
図4(B)の表は、雑音光パワーを一定化する制御を施した場合の各光パワーと利得の変化率を示している。
まず、送信端付近で1dBの損失増加が発生した場合について説明する。送信端付近では、励起光パワーは微弱に減衰しており、雑音光パワーは損失の影響をほとんど受けないため、雑音光パワーの変化率は±0dBである。励起光パワーの変化率は、雑音光パワーが変化していないため、±0dBである。よって、雑音光パワーの変化率と励起光パワーの変化率の和は±0dBである。一方、信号光パワーの変化率は、損失の影響で−1.0dBである。ラマン増幅の利得については、励起光パワーが変化していないため、利得もほとんど変化せず±0dBである。
次に、受信端付近で1dBの損失増加が発生した場合について説明する。損失増加による雑音光パワーの変化率を補償するように、励起光パワーを増やすように制御されるため、その結果、雑音光パワーと信号光パワーは損失増加前と同じパワー(±0dB)となる。この状態では、損失増加点より送信装置10側で、伝送路光ファイバを伝搬する雑音光パワーと信号光パワーは、損失増加前に比べて1dB高い状態のはずであるため、ラマン増幅の利得は1dB高いことになる。なお、利得を1dB増加するために必要な励起光パワーは諸条件に依存するが、1dBと考えると、損失増加分も考慮し、励起光パワーの変化率は+2.0dBとなる。また、雑音光パワーの変化率と励起光パワーの変化率の和は+2.0dBとなる。
つまり、雑音光パワーを一定にする制御を施した場合、送信端付近で損失があった場合には影響はほとんどないが、受信端付近で損失があった場合に実質的なラマン増幅の利得が変化し、利得の波長特性が変化してしまう。
図4(C)の表は、本実施の形態に係る制御を施した場合の、各光パワーと利得の変化率を示している。まず、送信端付近で1dBの損失増加が発生した場合について説明する。送信端付近では、励起光パワーは微弱に減衰しており、雑音光パワーは損失の影響をほとんど受けないため、雑音光パワーの変化率は±0dBである。励起光パワーの変化率は、雑音光パワーが変化していないため、±0dBである。よって、雑音光パワーの変化率と励起光パワーの変化率の和は±0dBである。一方、信号光パワーの変化率は、損失の影響で−1.0dBである。ラマン増幅の利得については、励起光パワーが変化していないため、利得もほとんど変化せず±0dBである。
次に、受信端付近で1dBの損失増加が発生した場合について説明する。受信端付近で1dBの損失増加が発生した場合には、信号光パワーと雑音光パワーの変化率は−1.0dBである。励起光パワーの変化率は、雑音光パワーの変化率と絶対値が同じで符号が逆である+1.0dBになるように制御する。よって、雑音光パワーの変化率と励起光パワーの変化率の和は±0dBである。この状態は、励起光パワーの増加が、損失(1dB)をちょうど補償した状態となっている。その結果、ラマン増幅の利得は損失増加前と同じ(±0dB)となる。
つまり、本実施の形態に係る制御を施した場合、送信端付近で損失があった場合のみならず受信端付近で損失があった場合にも実質的なラマン増幅の利得を一定に保つことができる。これにより利得の波長特性が変動しない。
このように、本実施の形態のラマン増幅器60により、信号光を一定の利得でラマン増幅することができる。一定の利得でラマン増幅した信号光は、中継装置30の光出力側に挿入された利得等化器40に入力される。利得等化器40は、ラマン増幅の利得の波長特性を補償するような損失の波長特性を有するフィルタから構成される。利得等化器を通過した光の出力パワーは、ラマン増幅前の光のパワーと略同等の波長特性を有する。つまり、伝送路光ファイバ20と中継装置30の全体としての利得の平坦性が確保できる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、ラマン増幅器60における伝送路光ファイバ20を伝送してきた光の一部を第1分岐器33、第2分岐器34で分岐し、雑音光透過フィルタ35を透過させた雑音光のパワーを雑音光パワー検出部37で検出し、雑音光パワーの変化率のデシベル値と励起光パワーの変化率のデシベル値が、絶対値が同じで符号が逆となるように励起光パワーの変化率を求め、その変化率で励起光パワーが変化するように励起光源32の駆動電流値を制御することとした。これにより、実質的なラマン増幅の利得を一定に保つことができ、伝送路光ファイバ20と中継装置30の全体としての利得の平坦性が確保できる。
このように本発明は、伝送路光ファイバに励起光源が出力する励起光を入射して信号光をラマン増幅するラマン増幅器において、光ファイバを伝送しラマン増幅された光から、信号光の波長を含まない波長帯域の雑音光を抽出して、雑音光のパワーを検出し、検出した雑音光のパワーの変化率に基づいて、励起光源の変化率を決定し、決定した変化率で励起光パワーが変化するように励起光源を制御することとした。これにより、簡易な構成で所望の利得の波長特性を得ることができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
例えば、上記実施の形態において、光通信システム1は、送信装置10と任意の数の中継装置30と受信装置50が直列に接続された構成について説明したが、送信器10又は中継装置30の内部、またはこれらとは別に1入力多出力の光分岐器を更に備えることにより、ツリー状の構成であってもよい。
また、上記実施の形態において、励起光源32が一つのみからなる構成について説明したが、励起光源32を複数備え、複数の励起光源32の励起光を合波したものを合分波器31で伝送路光ファイバ20に入射するようにしてもよい。この場合、記憶部38には、各励起光源32の駆動電流と励起光パワーの関係を示す表データを記憶しておき、演算回路39は、各励起光源32の励起光パワーが決定した変化率でそれぞれ変化するように、各励起光源32の駆動電流を決定する。異なる波長の励起光源32を複数備えることにより、増幅帯域を拡大し、利得の平坦性を改善することも可能となる。あるいは、同一波長の励起光源32を冗長化した構成にすることにより、中継装置30の信頼性を確保できる。
また、上記実施の形態において、雑音光を抽出するために、第1分岐器33、第2分岐器34、雑音光透過フィルタ35を直列に接続する構成としたが、所定の波長帯域の雑音光を抽出できれば、この構成に限られない。例えば、光分岐機能を有する導波路に波長フィルタを挿入して生成した1つの光部品で構成しても良い。
また、上記実施の形態において、中継装置30の出力段に利得等化器40を挿入する構成について説明したが、中継装置30による中継において、平坦でない利得を所望する場合には、ラマン増幅の利得と利得等化器の損失との合計が所望する利得となるようなフィルタを利得等化器40に代えて挿入しても良い。
また、所望の利得の波長特性によっては、利得等化器40を省略しても良い。
また、上記実施の形態において、演算回路39が実行する励起光源駆動処理のステップS106で、雑音光パワーの変化率をデシベル値に変換し、ステップS107で、雑音光パワーの変化率のデシベル値と励起光パワーの変化率のデシベル値が、絶対値が同じで、符号が逆となるように励起光パワーの変化率を求めるようにしたが、変化率はデシベル値に限らず、対数に変換した値であればよい。雑音光パワーの変化率の対数と励起光パワーの変化率の対数の符号と絶対値を比較するに過ぎないため、底の数を共通とすれば、他の底の対数でも比較できるからである。
また、励起光源駆動処理のステップS106では、雑音光パワーの変化率をデシベル値に変換せず、雑音光パワーの変化率(実数)と、励起光パワーの変化率(実数)の積が1となるように励起光パワーの変化率(実数)を求めても良い。これにより、伝送路光ファイバ20の損失の増加量が小さいときに精度良く利得を一定に保つことができる。また、演算回路39の処理量を軽減することができる。
また、上記実施の形態において、信号光パワー検出部36と雑音光パワー検出部37の出力を直接演算回路39に入力し、演算回路39では、雑音光パワー検出部37が出力する雑音光パワー信号に基づいて励起光源の駆動電流を決定するとしたが、図5に示すように、信号光パワー検出部36及び雑音光パワー検出部37と、演算回路39との間に、入力電圧を対数変換して出力するLogアンプ41、42を挿入してもよい。この場合、演算回路39は、雑音光パワー検出部37が出力する雑音光パワーを示す電圧をLogアンプ42で対数変換した電圧値に基づいて、励起光源32の駆動電流を決定する。具体的には、図3のフローチャートのステップS103、S105で取得する雑音光パワーは、対数変換された値であり、ステップS106で算出する雑音光パワーの変化率は、ステップS105で取得する雑音光パワーから、前回取得した雑音光パワーを減算することにより算出する。ステップS106で算出した雑音光パワーの変化率と励起光パワーの変化率が、絶対値が同じで、符号が逆となるように励起光パワーの変化率(対数)を求める。これにより、演算回路39の処理量を軽減することができる。
また、中継装置30においてエルビウム添加ファイバ増幅器(Erbium Doped Fiber Amplifier:EDFA)をラマン増幅器60又は利得等化器40の後段に接続しても良い。ラマン増幅器60における実質的なラマン増幅の利得を一定化することによる信号光パワーの低下を、EDFAの出力一定制御により補償することができる。
また、演算回路39が実行するプログラムを、既存の演算処理装置に適用することで、当該演算処理装置を備えたラマン増幅器60を構成することも可能である。
このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
1 光通信システム、10 送信装置、20 伝送路光ファイバ、30 中継装置、31 合分波器、32 励起光源、33 第1分岐器、331 入力ポート、332 主信号ポート、333 副信号ポート、34 第2分岐器、341 入力ポート、342 第1ポート、343 第2ポート、35 雑音光透過フィルタ、36 信号光パワー検出部、37 雑音光パワー検出部、38 記憶部、39 演算回路、40 利得等化器、41,42 Logアンプ、50 受信装置

Claims (12)

  1. 複数の波長の信号光を伝送するとともに、前記信号光を含む光をラマン増幅する光ファイバと、
    前記信号光を含む光をラマン増幅するための励起光を前記光ファイバに入射する励起光源と、
    前記光ファイバを伝送しラマン増幅された光から、ラマン増幅帯域内で且つ前記信号光の波長を含まない波長帯域の雑音光を抽出する雑音光抽出部と、
    前記雑音光抽出部が抽出する前記雑音光のパワーを検出する雑音光パワー検出部と、
    前記雑音光パワー検出部が検出する前記雑音光のパワーの対数の変化率と、前記励起光のパワーの対数の変化率が、絶対値が同じで、符号が逆となるように、前記励起光のパワーの変化率を決定し、当該変化率で前記励起光のパワーが変化するように前記励起光源を制御する励起光源制御部と、
    を備えるラマン増幅器。
  2. 前記雑音光パワー検出部が検出する雑音光のパワーを対数変換する対数変換部を更に有し、
    前記励起光源制御部は、前記対数変換部が対数変換した前記雑音光のパワーの対数の変化率と、前記励起光のパワーの対数の変化率が、絶対値が同じで、符号が逆となるように、前記励起光のパワーの変化率を決定し、当該変化率で前記励起光のパワーが変化するように前記励起光源を制御する、
    請求項1に記載のラマン増幅器。
  3. 複数の波長の信号光を伝送するとともに、前記信号光を含む光をラマン増幅する光ファイバと、
    前記信号光を含む光をラマン増幅するための励起光を前記光ファイバに入射する励起光源と、
    前記光ファイバを伝送しラマン増幅された光から、ラマン増幅帯域内で且つ前記信号光の波長を含まない波長帯域の雑音光を抽出する雑音光抽出部と、
    前記雑音光抽出部が抽出する前記雑音光のパワーを検出する雑音光パワー検出部と、
    記雑音光パワー検出部が検出する前記雑音光のパワーの実数の変化率と、前記励起光のパワーの実数の変化率との積が1となるように前記励起光のパワーの変化率を決定し、当該変化率で前記励起光のパワーが変化するように前記励起光源を制御する励起光源制御部と、
    を備えるラマン増幅器。
  4. 前記励起光源が所定のパワーの励起光を前記光ファイバに入射するときの、当該励起光のパワーと、前記励起光源の制御値と、を対応付けて記憶する記憶部をさらに有し、
    前記励起光源制御部は、前記記憶部を参照して、前記雑音光のパワーの変化率に基づいて決定した前記励起光のパワーの変化率で前記励起光のパワーが変化するように、前記励起光源の制御値を決定し、当該制御値で前記励起光源を駆動するように制御する、
    請求項1から3のいずれか1項に記載のラマン増幅器。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のラマン増幅器を有する光中継装置。
  6. 前記ラマン増幅器の利得の波長特性を補償する損失の波長特性を有する利得等化器を更に有し、前記ラマン増幅器と前記利得等化器を直列に接続する、
    請求項に記載の光中継装置。
  7. エルビウム添加ファイバ増幅器を更に有し、前記ラマン増幅器と前記エルビウム添加ファイバ増幅器を直列に接続する、
    請求項又はに記載の光中継装置。
  8. 請求項5から7のいずれか1項に記載の光中継装置を有する光通信システム。
  9. 複数の波長の信号光を伝送する光ファイバに励起光源からの励起光を入射して前記信号光を含む光をラマン増幅するラマン増幅器が行うラマン増幅制御方法であって
    前記光ファイバを伝送しラマン増幅された光から、ラマン増幅帯域内で且つ前記信号光の波長を含まない波長帯域の雑音光を抽出する雑音光抽出ステップと、
    雑音光抽出ステップで抽出した前記雑音光のパワーを検出する雑音光パワー検出ステップと、
    前記雑音光パワー検出ステップで検出した前記雑音光のパワーの対数の変化率と、前記励起光のパワーの対数の変化率が、絶対値が同じで、符号が逆となるように、前記励起光のパワーの変化率を決定し、当該変化率で前記励起光のパワーが変化するように前記励起光源を制御する励起光源制御ステップと、
    を備えるラマン増幅制御方法。
  10. 複数の波長の信号光を伝送する光ファイバに励起光源からの励起光を入射して前記信号光を含む光をラマン増幅するラマン増幅器が行うラマン増幅制御方法であって
    前記光ファイバを伝送しラマン増幅された光から、ラマン増幅帯域内で且つ前記信号光の波長を含まない波長帯域の雑音光を抽出する雑音光抽出ステップと、
    雑音光抽出ステップで抽出した前記雑音光のパワーを検出する雑音光パワー検出ステップと、
    前記雑音光パワー検出ステップで検出した前記雑音光のパワーの実数の変化率と、前記励起光のパワーの実数の変化率との積が1となるように、前記励起光のパワーの変化率を決定し、当該変化率で前記励起光のパワーが変化するように前記励起光源を制御する励起光源制御ステップと、
    を備えるラマン増幅制御方法。
  11. 複数の波長の信号光を伝送する光ファイバに励起光源からの励起光を入射して前記信号光を含む光をラマン増幅するラマン増幅器において、コンピュータに、励起光源の制御を実行させるプログラムであって、
    前記光ファイバを伝送しラマン増幅された光から、ラマン増幅帯域内で且つ前記信号光の波長を含まない波長帯域の雑音光を抽出したときの、前記雑音光のパワーを取得する雑音光パワー取得手順と、
    前記雑音光パワー取得手順で取得した前記雑音光のパワーの対数の変化率と、前記励起光のパワーの対数の変化率が、絶対値が同じで、符号が逆となるように、前記励起光のパワーの変化率を決定し、当該変化率で前記励起光のパワーが変化するように前記励起光源を制御する励起光源制御手順と、
    を実行させるプログラム。
  12. 複数の波長の信号光を伝送する光ファイバに励起光源からの励起光を入射して前記信号光を含む光をラマン増幅するラマン増幅器において、コンピュータに、励起光源の制御を実行させるプログラムであって、
    前記光ファイバを伝送しラマン増幅された光から、ラマン増幅帯域内で且つ前記信号光の波長を含まない波長帯域の雑音光を抽出したときの、前記雑音光のパワーを取得する雑音光パワー取得手順と、
    前記雑音光パワー取得手順で取得した前記雑音光のパワーの実数の変化率と、前記励起光のパワーの実数の変化率との積が1となるように、前記励起光のパワーの変化率を決定し、当該変化率で前記励起光のパワーが変化するように前記励起光源を制御する励起光源制御手順と、
    を実行させるプログラム。
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