<二核金属錯体化合物>
本発明の二核金属錯体化合物は、下記の一般式(1)の二核金属錯体化合物である。以下、本化合物について詳細に説明する。
(式中、M1及びM2は、同一又は異なっていても良く、Ru、Rh、Pd、Os、Ir又はPtを示す。AはSi又はGeを示し、ピリジン環の3〜6位いずれの炭素と結合していてもよい。R1、R2及びR3は、同一又は異なっていても良く、炭素数6〜14のアリール基又は炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。前記のアリール基及びアルキル基上の任意の水素原子はハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基で置換されていても良い。なお、R1、R2及びR3は互いに結合して環を形成していても良い。R4、R5、R6及びR7は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、ハロゲン原子を示す。なお、R4及びR5、R6及びR7は互いに結合して環を形成していても良い。ZはCH又はNを示す。)
前記一般式(1)記載の置換基AはSi又はGeのいずれでも良いが、好ましくはSiである。
前記一般式(1)記載の置換基Aはピリジン環上の3〜6位いずれの炭素原子と結合していても良いが、下記一般式(2)で示されるように、ピリジン環の4位の炭素と結合していることが好ましい。
(式中、M1及びM2は、同一又は異なっていても良く、Ru、Rh、Pd、Os、Ir又はPtを示す。AはSi又はGeを示す。R1、R2及びR3は、同一又は異なっていても良く、炭素数6〜14のアリール基又は炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。前記のアリール基及びアルキル基上の任意の水素原子はハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基で置換されていても良い。なお、R1、R2及びR3は互いに結合して環を形成していても良い。R4、R5、R6及びR7は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、ハロゲン原子を示す。なお、R4及びR5、R6及びR7は互いに結合して環を形成していても良い。ZはCH又はNを示す。)
前記M1及びM2は、Ru、Rh、Pd、Os、Ir又はPtであり、好ましくはRh、Irであり、更に好ましくはIrである。なお、M1及びM2は、同一又は異なっていても良いが、同一であることが好ましい。
前記R1、R2及びR3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、シクロブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などの直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜6のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基等の炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基、更に好ましくはメチル基又はフェニル基である。前記のアルキル基及びアリール基上の任意の水素原子は後述のハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基で置換されていても良い。なお、これらのR1、R2及びR3は、同一あっても異なっていても良いが、少なくとも2つの置換基はアルキルキ基であることが好ましく、少なくとも2つのアルキル基はメチル基であることが更に好ましい。また、R1、R2及びR3は互いに結合して環を形成していても良い。
前記水素原子の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
前記水素原子の置換基であるアルキル基としては、炭素数1〜20、特に炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等が挙げられる。なお、これら置換基は、その異性体も含む。
前記水素原子の置換基であるシクロアルキル基としては、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。
前記水素原子の置換基であるアルケニル基としては、炭素数2〜20、特に炭素数2〜12のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基等が挙げられる。なお、これら置換基は、その異性体も含む。
前記水素原子の置換基であるアリール基としては、炭素数6〜12のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基(及びその異性体)、キシリル基(及びその異性体)、ナフチル基(及びその異性体)、及びジメチルナフチル基(及びその異性体)等が挙げられる。
前記水素原子の置換基であるアラルキル基としては、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、ナフチルメチル基、インデニルメチル基、及びビフェニルメチル基などが挙げられる。
前記水素原子の置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンタノキシ基、ヘキサノキシ基、ヘプタノキシ基、オクタノキシ基、ノナノキシ基、及びデカノキシ基等が挙げられる。なお、これら置換基は、その異性体も含む。
前記水素原子の置換基であるアリールオキシ基としては、炭素数6〜14のアリールオキシ基が好ましく、フェノキシ基、トリロキシ基、キシリロキシ基、ナフトキシ基、及びジメチルナフトキシ基等が挙げられる。なお、これら置換基は、その異性体も含む。
前記R4、R5、R6及びR7としては、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜10のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子が挙げられ、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基、更に好ましくは水素原子又はメチル基である。なお、R4、R5、R6及びR7は、同一であっても異なっていても良いが、同一であることが好ましい。また、R4、R5、R6及びR7のうち、隣接しているR4及びR5、R6及びR7は互いに結合して環を形成していても良い。
前記ZがCHの場合にはベンゼン骨格、ZがNの場合にはピリジン骨格を形成する。
なお、本発明の二核イリジウム錯体化合物は、特許文献6記載の方法に準じて製造することができる。
<有機EL素子>
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極との間に有機化合物層を備え、単層又は多層の素子であって、前記の一般式(1)の二核金属錯体化合物を発光層に含むものである。
<素子構成>
次に、本発明の有機EL素子の構成について説明する。本発明の有機EL素子は本発明の二核金属錯体化合物、特にはイリジウム錯体化合物を含有するものである。本発明の二核金属錯体化合物は、通常、発光材料として使用される。
本発明の有機EL素子は、本発明の二核金属錯体化合物が例えば発光層等において使用される以外、公知の構造、材料を使用することができる。
本発明の有機EL素子は、好ましくは一対の電極間に単層又は多層の有機化合物層を有する有機EL素子であり、本発明の二核金属錯体化合物を、有機化合物薄層のうちの少なくとも1層に含むものである。なお、有機化合物層とは、バッファ層、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等である。この中で、本発明の二核金属錯体化合物は発光層に含まれることが好ましい。
単層型の有機EL素子は、陽極と陰極との間に発光層を有する。発光層は、発光材料を含有し、更に、陽極から注入したホール、又は陰極から注入した電子を発光材料まで輸送させるための有機化合物層に用いられる材料、例えば、ホール輸送材料や電子輸送材料を含有してもよい。
多層型の有機EL素子としては、例えば、(陽極/バッファ層/ホール輸送層/発光層/ホール阻止層/電子輸送層/陰極)や(陽極/バッファ層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極)等の多層構成が挙げられるが、他に(陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/ホール阻止層/電子輸送層/金属酸化物層/陰極)、(陽極/ホール注入層/発光層/陰極)、(陽極/発光層/電子輸送層/陰極)、(陽極/ホール注入層/発光層/電子輸送層/陰極)等の多層構成も挙げられ、その構成はこれらに限定されるものではない。
また、バッファ層、ホール輸送層、電子輸送層、及び発光層のそれぞれの層は、一層構造であっても、多層構造であってもよい。又、ホール輸送層、電子輸送層は、それぞれの層で、注入機能を有する層(ホール注入層及び電子注入層)と輸送機能を有する層(ホール輸送層及び電子輸送層)を別々に設けることもできる。
本発明の有機EL素子では、発光層における二核金属錯体化合物が、前記電極間に電圧を印加することにより燐光を発光することを特徴とする。
以下、本発明の有機EL素子の構成要素に関して、(陽極/バッファ層/ホール輸送層/発光層/ホール阻止層/電子輸送層/陰極)の素子構成を例に詳細に説明する。
本発明の有機EL素子において有機層の発光層のホスト材料として使用される材料は、公知のホスト材料の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、3,5−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン)、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル(CBP)、1,3−ジ(N−カルバゾリル)ベンゼン(mCP)、2,2’―ジ〔4’’−(N−カルバゾリル)フェニル〕−1,1’−ビフェニル(4CzPBP)、ジフェニルジ(o−トリル)シラン、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、4、4’、4’’−トリス(N−カルバゾリル)−トリフェニルアミン(TCTA)、49,10−ビス−〔1,1,3’,1’〕ターフェニル−5’−イル−アントラセン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の二核金属錯体は、通常、発光層においてホスト材料と組み合わせて使用され、その場合、発光材料である本発明の二核金属錯体はホスト材料に対して、好ましくは0.005質量%〜40質量%、より好ましくは3質量%〜40質量%、更に好ましくは3質量%〜10質量%の量で使用される。
ホール阻止層として使用される材料(以下、ホール阻止材料という)は、公知の材料の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(トリフェニルシラノラート)アルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
電子輸送層として使用される材料(以下、電子輸送材料という)は、公知の材料の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、フルオレン、フェナントロリン、バソフェナントロリン、バソクプロイン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、アントラキノジメタン、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等や、それらの化合物、金属錯体化合物もしくは含窒素五員環誘導体を挙げることができる。金属錯体化合物としては、具体的には、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリ(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)−4−フェニルフェノラート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、上記の含窒素五員環誘導体としては、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4’−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4ートリアゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、ポリマー有機発光素子に使用されるポリマー材料も使用することができる。例えば、ポリパラフェニレン及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一方、ホール輸送層として使用される材料(以下、ホール輸送材料という)は、公知の材料の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、p,p’−[N,N’−テトラ(p−トルイル)ジアニリノ−o,o’−ビフェニル](3DTAPBP)等の芳香族ジアミン化合物、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、ポリアリールアルカン、4,4’,4’−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン、及びポリビニルカルバゾール等の高分子材料が挙げられるが、これに限定されるものではない。
又、有機EL素子には、ホールの注入性向上のために、ホール輸送層と陽極との間にバッファ層を設けることができる。バッファ層に用いる材料としては、公知の材料の中から任意のものを選択して用いることができる。バッファ層に用いる材料として、より好適には、上記ホール輸送材料に酸化モリブデンを1質量%〜30質量%ドープしたものが使用されるが、これらに限定されるものではない。
陽極に使用される導電性材料としては、仕事関数が4eV前後より大きいもの、例えば、炭素原子、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム及びそれらの合金、ITO(酸化インジウムに酸化スズを5〜10%添加した物質)基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、更にポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂を用いることが出来る。ただし、陽極に使用される導電性材料の仕事関数が当該素子の陰極に使用される導電性材料の仕事関数より0.1eV以上大きなものを用いることが望ましい。
陰極に使用される導電性材料としては、仕事関数が4eV前後より小さいもの、例えば、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム等又はそれらの合金を用いることが出来る。ここで合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が挙げられる。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、特に限定されない。ただし、陰極に使用される導電性材料の仕事関数が当該素子の陽極に使用される導電性材料の仕事関数より0.1eV以上小さいものを用いることが望ましい。
陽極及び陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていてもよい。
本発明の有機EL素子は、電子注入性向上のために、電子輸送層と陰極との間に電子注入層を設けることも出来る。電子注入層に用いる材料として、例えば、LiF等のアルカリ金属フッ化物;BaF2、SrF2等のアルカリ土類金属フッ化物;Li2O等のアルカリ金属酸化物;RaO、SrO等のアルカリ土類金属酸化物を用いることが出来るが、これらに限定されるものではない。
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方の面は素子の発光波長領域において透明であることが望ましい。又、基板も透明であることが望ましい。
透明電極は、例えば、前記の導電性材料を使用して、蒸着又はスパッタリング等の方法で、所定の透光性を確保するように設定して形成することができる。
発光面の電極は、光透過率を10%以上にすることが望ましい。
基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものであれば特に限定されるものではないが、ガラス基板又は透明性樹脂フィルムが好適に使用される。
透明性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
本発明の有機EL素子は、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けるか、又はシリコンオイル、樹脂等により素子全体を保護してもよい。
また、有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法、又はスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれかを適用することができる。各層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.1nm〜10μm、更に好ましくは0.5nm〜0.2μmである。
湿式成膜法の場合、各層に使用する材料をエタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、クロロベンゼン、イオン交換水等の溶媒に溶解又は分散させたものを用いて、薄膜を調製(成膜)することが出来る。
<製造方法>
本願発明の一般式(6)で示される二核金属錯体化合物の製造方法は下記の反応工程式(1)で示される。
(式中、M1及びM2は、同一又は異なっていても良く、Ru、Rh、Pd、Os、Ir又はPtを示す。AはSi又はGeを示し、ピリジン環の3〜6位いずれの炭素と結合していてもよい。R1、R2及びR3は、同一又は異なっていても良く、炭素数6〜14のアリール基又は炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。前記のアリール基及びアルキル基上の任意の水素原子はハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基で置換されていても良い。なお、R1、R2及びR3は互いに結合して環を形成していても良い。R4、R5、R6及びR7は同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、ハロゲン原子を示す。なお、R4及びR5、R6及びR7は互いに結合して環を形成していても良い。X1及びX2はハロゲン原子を示す。ハロゲン化二核金属錯体化合物中の2つのXはX1又はX2を示し、同一又は異なっていても良い。mはM1X1 m中のM1に対するX1の元素比を表し、nはM2X2 n中のM2に対するX2の元素比を表す。m及びnは1〜5の整数である。)
本製造方法の一つ目の工程は前記一般式(3)で示されるピリジン化合物とRu、Rh、Pd、Os、Ir及びPtから選ばれる少なくとも1種の金属を含むハロゲン化物とを反応させ、前記一般式(4)で示されるハロゲン化二核金属錯体化合物を製造する。この工程は錯体合成工程と称することもある。
二つ目の工程は塩基の存在下でハロゲン化二核金属錯体化合物と前記一般式(5)で示されるビイミダゾール化合物とを反応させ、前記一般式(6)で示される二核金属錯体化合物を製造する。この工程は配位子交換工程と称することもある。
これら二工程について順次説明する。ただし、A、M1、M2、R1〜R7については前記と同義である。
(錯体合成工程)
反応工程式(1)中のM1及びM2は、Ru、Rh、Pd、Os、Ir又はPtであり、好ましくはRh、Irであり、更に好ましくはIrである。M1及びM2は同一又は異なっていても良い。
反応工程式(1)中のX1及びX2はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくは塩素原子、臭素原子であり、更に好ましくは塩素原子である。X1及びX2は同一又は異なっていても良い。また、ハロゲン化二核金属錯体化合物中の2つのXはX1又はX2を示し、同一又は異なっていても良い。mはM1X1 m中のM1に対するX1の元素比を表し、nはM2X2 n中のM2に対するX2の元素比を表す。m及びnは同一又は異なっていても良く、1〜5の整数である。
金属のハロゲン化物M1X1 m及びM2X2 nとしてはIrCl3、IrBr3、PdCl2、PtCl4などが挙げられるが、好ましくはIrCl3である。また、M1X1 m及びM2X2 nは水和物でもよい。
錯体合成工程で使用するハロゲン化物M1X1 m及びM2X2 nの使用量の合計は、一般式(3)で示されるピリジン化合物1モルに対して、好ましくは0.3モル〜0.6モル、更に好ましくは0.4モル〜0.5モルである。この範囲とすることで、高い反応速度を維持しながら、反応後における反応液からの未反応の原料の分離や副生成物の生成の抑制を容易にすることができる。
本工程の反応においては、溶媒の存在下で行うことが望ましく、使用する溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、エトキシエタノールなどのアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;N,N’−ジメチル尿素などの尿素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、水が挙げられるが、好ましくはアルコール類が使用される。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
前記溶媒の使用量は、反応の均一性や攪拌性により適宜調節するが、一般式(3)で示されるピリジン化合物1gに対して、好ましくは5ml〜30ml、更に好ましくは10ml〜20mlである。この範囲とすることで、良好な攪拌性を維持しながら、副生成物の生成を抑制することができる。
本工程の反応における反応温度は、使用する溶媒によって適宜調節するが、好ましくは70℃〜150℃、更に好ましくは100℃〜130℃であり、反応圧力は特に制限されない。この範囲とすることで、高い反応速度を維持しながら、反応による副生成物の発生を抑制することができる。
本工程の反応は空気中、不活性ガス中いずれにおいても行うことができるが、不活性ガス中で行うことが好ましい。なお、不活性ガスとは、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。
本発明の錯体合成工程によって一般式(4)で示されるハロゲン化二核金属錯体化合物が得られる。これは、反応終了後、例えば、中和、抽出、濾過、濃縮、蒸留、再結晶、晶析、カラムクロマトグラフィーなどの一般的な方法によって単離・精製される。
(配位子交換工程)
配位子交換工程で使用する、一般式(5)で示されるビイミダゾール化合物の使用量は、一般式(4)で示されるハロゲン化二核金属錯体化合物1モルに対して、好ましくは0.8モル〜2.0モル、更に好ましくは1.0モル〜1.5モルである。この範囲とすることで、高い反応速度を維持しながら、反応後における反応液からの未反応の原料の分離や副生成物の生成の抑制を容易にすることができる。
本工程において使用する塩基は、具体的には、例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、tert−ブトキシドカリウムなどの金属アルコキシド;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどのカルボン酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどの炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素塩;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジンなどのアミン類;ピリジンなどの含窒素複素環化合物類;カリウムヘキサメチルジシラジド等の金属アミド;メチルリチウム、ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウムが挙げられるが、好ましくは金属アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、更に好ましくは金属アルコキシドが使用される。なお、これらの塩基は単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
前記塩基の使用量は、一般式(5)で示されるビイミダゾール化合物1モルに対して、好ましくは1.5モル〜3.0モル、更に好ましくは2.0モル〜2.5モルである。なお、塩基は水溶液やアルコールなどの有機溶媒溶液(例えば、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液)として使用しても良い。この範囲とすることで、高い反応速度を維持しながら、反応後における反応液からの塩基の除去を容易とすることができる。
本工程の反応においては、溶媒の存在下で行うことが望ましく、使用する溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、エトキシエタノールなどのアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;N,N’−ジメチル尿素などの尿素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、水が挙げられるが、好ましくはエーテル類が使用される。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
前記溶媒の使用量は、反応の均一性や攪拌性により適宜調節するが、一般式(4)で示されるハロゲン化二核金属錯体化合物1gに対して、好ましくは50ml〜200ml、更に好ましくは100ml〜150mlである。この範囲とすることで、良好な攪拌性を維持しながら、副生成物の生成を抑制することができる。
本工程の反応における反応温度は、使用する溶媒によって適宜調節するが、好ましくは10℃〜120℃、より好ましくは20℃〜80℃、更に好ましくは20℃〜40℃であり、反応圧力は特に制限されない。この範囲とすることで、高い反応速度を維持しながら、反応による副生成物の発生を抑制することができる。
本工程の反応は空気中、不活性ガス中いずれにおいても行うことができるが、不活性ガス中で行うことが好ましい。なお、不活性ガスとは、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。
本発明の配位子交換工程によって前記一般式(6)で示される二核金属錯体化合物が得られる。これは、反応終了後、例えば、中和、抽出、濾過、濃縮、蒸留、再結晶、晶析、カラムクロマトグラフィーなどの一般的な方法によって単離・精製される。
<用途>
本発明に係る有機EL素子は、公知の方法で、マトリックス方式またはセグメント方式による画素として画像表示装置に好適に用いられる。また、上記有機EL素子は、画素を形成せずに、面発光光源としても好適に用いられる。
本発明に係る有機EL素子は、具体的には、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に用いられる。
以下に実施例を挙げて、更に本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
参考例1(2−クロロ−4−ジメチルフェニルシリル−ピリジンの合成)
アルゴン雰囲気下、攪拌装置を備えた50mlシュレンク管に、2−クロロ−4−ヨードピリジン1.68g(7.0mmol)、ジエチルエーテル21mlを加え、−78℃に冷却した後、ノルマルブチルリチウム(1.6M/ヘキサン)4.4ml(7.0mmol)を加え1時間攪拌した後、ジメチルフェニルシリルクロライド1.2ml(7.0mmol)を加え、攪拌しながら室温(20℃〜30℃)で16時間反応させた。反応後、反応液に水を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。さらに、得られた水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を合わせて水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮し、得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;30/1))で精製し、黄色液体である目的物を1.14g得た。(単離収率;66%)
なお、得られた2−クロロ−4−ジメチルフェニルシリル−ピリジンは、以下の物性値で示される化合物である。
1H−NMR(CD2Cl2,δ(ppm));8.30(dd,1H)、7.52−7.49(m,2H)、7.44−7.36(m,4H)、7.30−7.28(m,1H)、0.58(s,6H)
EI−MS;(M/Z)247(M+)
参考例2(2’,6’−ジフルオロ−4−ジメチルシリルフェニル−2、3’−ビピリジンの合成)
アルゴン雰囲気下、攪拌装置を備えた100mlシュレンク管に、2−クロロ−4−ジメチルフェニルシリル−ピリジン1.1g(4.4mmol)、2,4−ジフルオロピリジンボロン酸706mg(4.44mmol)テトラヒドロフラン22ml、炭酸カリウム614mg(4.44mmol)、水9ml、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム254mg(0.22mmol)を加え、攪拌しながら80℃〜90℃で22時間反応させた。反応後、反応液に水を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。さらに、得られた水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を合わせて水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮し、得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;7/1))で精製し、黄色液体である目的物を795mg得た。(単離収率;55%)
なお、得られた2’,6’−ジフルオロ−4−ジメチルシリルフェニル−2、3’−ビピリジンは、以下の物性値で示される化合物である。
1H−NMR(CD2Cl2,δ(ppm));8.65−8.58(m,2H)、7.93−7.92(m,1H)、7.57−7.52(m,2H)、7.43−7.33(m,4H)、6.98−6.95(m,1H)、0.62(s,6H)
EI−MS;(M/Z)326(M+)
実施例1(M1=M2=Ir、A=Si、R1=R2=メチル基、R3=フェニル基、R4=R5=R6=R7=メチル基、X=Cl;ジ−μ−クロロテトラキス−2’,6’−ジフルオロ−4−ジメチルシリルフェニル−2、3’−ビピリジンジイリジウムの合成)
アルゴン雰囲気下、攪拌装置を備えた50mlシュレンク管に、2’,6’−ジフルオロ−4−ジメチルシリルフェニル−2、3’−ビピリジン790mg(2.42mmol)、三塩化イリジウム三水和物359mg(0.97mmol)及びエトキシエタノール10mlを加え、攪拌しながら115〜125℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温(20℃〜30℃)まで冷却し、減圧下で濃縮した。得られた濃縮物をメタノールで洗浄した後に乾燥させ、黄色固体として目的物を667mg得た(単離収率;78%)。
なお、得られたジ−μ−クロロテトラキス−2’,6’−ジフルオロ−4−ジメチルシリルフェニル−2、3’−ビピリジンジイリジウム、以下の物性値で示される化合物である。
1H−NMR(CD2Cl2,δ(ppm));9.04(d,4H)、8.40(s,4H)、7.58−7.56(m,8H)、7.51−7.43(m,12H)、7.06−7.04(m,4H)、5.13(s,4H)、0.65(s,12H)、0.61(s,12H)
FD−MS;(M/Z)1756(M+)
実施例2(M1=M2=Ir、A=Si、R1=R2=メチル基、R3=フェニル基、R4=R5=R6=R7=メチル基、Z=N、X=Cl;テトラキス(2’,6’−ジフルオロ−4−ジメチルシリルフェニル−2、3’−ビピリジナト)(μ−テトラメチルビベンゾイミダゾリル)ジイリジウム(III),略称;[Ir(dfpydmpspy)2BIm]2)の合成)
アルゴン雰囲気下、攪拌装置を備えた50mlシュレンク管に、6,6’,7,7’−テトラメチル−2,2’−ビイミダゾール29mg(0.10mmol)、テトラヒドロフラン20ml、tert−ブトキシカリウム(t−BuOK(85質量%品))28mg(0.21mmol)を加え、室温(20℃〜30℃)で1時間攪拌した後、ジ−μ−クロロテトラキス(2’,6’−ジフルオロ−5−ジメチルシリルフェニル−2、3’−ビピリジナト)ジイリジウム(III)176mg(0.10mmol)を加え攪拌しながら24時間反応させた。反応後、テトラヒドロフランを減圧留去し、得られた残留物に塩化メチレンを加え、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮し、得られた反応粗生成物をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:塩化メチレン/酢酸エチル、容量比;3/1)によって精製し、薄黄色固体である目的物を107mg得た。(単離収率;54%)
得られた目的物は2種類の異性体混合物で、その生成比は異性体1:異性体2=50:50と考えられた。なお、テトラキス(2’,6’−ジフルオロ−4−ジメチルシリルフェニル−2、3’−ビピリジナト)(μ−テトラメチルビベンゾイミダゾリル)ジイリジウム(III)は、以下の物性値で示される新規な化合物であった。
1H−NMR(400MHz,CD2Cl2,δ(ppm))8.29(s,4H), 8.24(s,4H),7.86(d,4H),7.64(d,4H),7.52−7.35(m,40H),7.00−6.98(d,4H),6.81−6.79(d,4H),6.03(s,8H),5.92−5.90(m,8H),2.00−1.99(s,24H),0.60−0.53(s,48H)
FD−MS(M/Z):1974 M+
参考例3(2−クロロ−4−トリメチルシリル−ピリジンの合成)
アルゴン雰囲気下、攪拌装置を備えた100mlシュレンク管に、2−クロロ−4−ヨードピリジン4.79g(20.0mmol)、ジエチルエーテル60mlを加え、−78℃に冷却した後、ノルマルブチルリチウム(1.6M/ヘキサン)12.5ml(20.0mmol)を加え2時間攪拌した後、トリメチルシリルクロライド2.7ml(21.0mmol)を加え、攪拌しながら室温(20℃〜30℃)で15時間反応させた。反応後、反応液に水を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。さらに、得られた水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を合わせて水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮し、得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;40/1))で精製し、黄色液体である目的物を2.98g得た。(単離収率;80%)
なお、得られた2−クロロ−4−トリメチルシリル−ピリジンは、以下の物性値で示される化合物である。
1H−NMR(CD2Cl2,δ(ppm));8.30(d,1H)、7.42(s,1H)、7.31(d,1H)、0.29(s,9H)
EI−MS;(M/Z)185(M+)
参考例4(2’,6’−ジフルオロ−4−トリメチルシリル−2、3’−ビピリジンの合成)
アルゴン雰囲気下、攪拌装置を備えた100mlシュレンク管に、2−クロロ−4−トリメチルシリル−ピリジン800mg(4.3mmol)、2,4−ジフルオロピリジンボロン酸822mg(5.2mmol)トルエン30ml、エタノール15ml、炭酸ナトリウム2.19g(20.1mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム242mg(0.21mmol)を加え、攪拌しながら75℃〜80℃で15時間反応させた。反応後、反応液に水を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。さらに、得られた水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を合わせて水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮し、得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;7/1))で精製し、黄色液体である目的物を1.0g得た。(単離収率;87%)
なお、得られた2’,6’−ジフルオロ−4−トリメチルシリル−2、3’−ビピリジンは、以下の物性値で示される化合物である。
1H−NMR(CD2Cl2,δ(ppm));8.70−8.60(m,2H)、7.93−7.92(m,1H)、7.42−7.41(m,1H)、7.00−6.97(m,1H)、0.33(s,9H)
EI−MS;(M/Z)264(M+)
実施例3(M1=M2=Ir、A=Si、R1=R2=R3=メチル基、R4=R5=R6=R7=メチル基、X=Cl;ジ−μ−クロロテトラキス−2’,6’−ジフルオロ−4−トリメチルシリル−2、3’−ビピリジンジイリジウムの合成)
アルゴン雰囲気下、攪拌装置を備えた30mlシュレンク管に、2’,6’−ジフルオロ−4−トリメチルシリル−2、3’−ビピリジン661mg(2.5mmol)、三塩化イリジウム三水和物370mg(1.0mmol)及びエトキシエタノール10mlを加え、攪拌しながら115℃〜125℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温(20℃〜30℃)まで冷却し、減圧下で濃縮し、得られた濃縮物をジエチルエーテルで洗浄した後に乾燥させ、黄色固体として目的物を626mg得た(単離収率;83%)。
なお、得られたジ−μ−クロロテトラキス−2’,6’−ジフルオロ−4−トリメチルシリル−2、3’−ビピリジンジイリジウム、以下の物性値で示される化合物である。
1H−NMR(CD2Cl2,δ(ppm));9.02(d,4H)、8.45(s,4H)、7.06(d,4H)、5.15(m,4H)、0.66(s,36H)
FD−MS;(M/Z)1508(M+)
実施例4(M1=M2=Ir、A=Si、R1=R2=R3=メチル基、R4=R5=R6=R7=メチル基、Z=N、X=Cl;テトラキス(2’,6’−ジフルオロ−4−トリメチルシリル−2、3’−ビピリジナト)(μ−テトラメチルビベンゾイミダゾリル)ジイリジウム(III),略称;[Ir(dfpytmspy)2BIm]2)の合成)
アルゴン雰囲気下、攪拌装置を備えた50mlシュレンク管に、6,6’,7,7’−テトラメチル−2,2’−ビイミダゾール44mg(0.15mmol)、テトラヒドロフラン30ml、tert−ブトキシカリウム(t−BuOK(85質量%品))42mg(0.32mmol)を加え、室温(20℃〜30℃)で1時間攪拌した後、ジ−μ−クロロテトラキス(2’,6’−ジフルオロ−5−トリメチルシリル−2、3’−ビピリジナト)ジイリジウム(III)226mg(0.11mmol)を加え攪拌しながら24時間反応させた。反応後、テトラヒドロフランを減圧留去し、得られた残留物に塩化メチレンを加え、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮し、得られた反応粗生成物をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:塩化メチレン)によって精製し、薄黄色固体である目的物を171mg得た。(単離収率;66%)
得られた目的物は2種類の異性体混合物で、その生成比は異性体1:異性体2=50:50と考えられた。なお、テトラキス(2’,6’−ジフルオロ−4−トリメチルシリル−2、3’−ビピリジナト)(μ−テトラメチルビベンゾイミダゾリル)ジイリジウム(III)は、以下の物性値で示される新規な化合物であった。
1H−NMR(400MHz,C4D8O,δ(ppm))8.39(s,4H), 8.33(s,4H),8.00(d,4H),7.63(d,4H),7.34−7.32(dd,4H),7.11−7.09(dd,4H),6.09−6.08(s,8H),5.95−5.90(m,8H),2.02(s,24H),0.33−0.31(s,72H)
FD−MS(M/Z):1727(M+H)+
実施例5(Ir(dfpydmpspy)2BIm]2の有機EL素子の作成)
イーエッチシー製インジウムスズ酸化物(以下、ITOと略す)被膜付きガラスを透明電極基板として用い、アルバック機工製真空蒸着装置を使用して、同基板上に5×10−4Pa以下の真空度で、順次、次のようにホール輸送層3、発光層4、電子輸送層5、電子注入層6、アルミニウム電極7を真空蒸着により成膜して有機EL素子を作製した。
なお、真空蒸着は、基板に対向して置かれた坩堝に原料を仕込み、坩堝ごと原料を加熱することによって行った。
前記基板上に、ホール輸送材料であるp,p’−[N,N’−テトラ(p−トルイル)ジアニリノ−o,o’−ビフェニル](以下、3DTAPBPと略す)を膜厚60nmで成膜し、ホール輸送層3を形成した後、発光層4として質量比3,5−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン)(以下、35DCzPPyと略す):二核イリジウム錯体Ir(dfpydmpspy)2BIm]2(実施例2と同様な方法で合成)=95:5を膜厚40nmで成膜した。次いで、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール(以下、TAZと略す)を膜厚40nmで成膜し、電子輸送層5を形成した。更に電子輸送層の上に、フッ化リチウム(以下、LiFと略す)を膜厚0.5nmで成膜し、電子注入層6を形成した。その上にアルミニウム(Al)を膜厚100nmで成膜し、電極7を形成した。
本素子の層構成を簡略化して示すと、
陽極2: ITO(130nm)
ホール輸送層3: 3DTAPBP(60nm)
発光層4: 35DCzPPy:二核イリジウム錯体(1)(40nm、質量比95/5)
電子輸送層5: TAZ(40nm)
電子注入層6: LiF(0.5nm)
陰極7: Al(100nm)
である。
前記素子のITO電極2を正極、Al電極7を負極として通電し、電極間電圧を上げていくと、+8V付近から素子は肉眼ではっきりと分かる程度の水青色発光を開始し、+27Vにおいて3789cd/m2で発光した。電流効率は+16Vで3.93cd/Aであった。
この素子の発光色を、プレサイスゲージ社製有機EL評価装置EL1003を用いて測定した。電極間電圧+20Vにおいて得られたスペクトルより、JIS Z8701によって求めた色度座標の値はx=0.123,y=0.269であった(CIE(国際照明委員会)表色系より)。
実施例6(Ir(dfpytmspy)2BIm]2の有機EL素子の作成)
二核イリジウム錯体Ir(dfpydmpspy)2BIm]2をIr(dfpytmspy)2BIm]2(実施例4と同様な方法で合成)に変更した以外は実施例5と同様にして有機EL素子を作製した。
前記素子のITO電極2を陽極、Al電極7を陰極として通電し、電極間電圧を上げていくと、+8V付近から素子は肉眼ではっきりと分かる程度の水青色発光を開始し、+16Vにおいて1659cd/m2で発光した。電流効率は+16Vで2.26cd/Aであった。
電極間電圧+16Vにおいて得られたスペクトルより、JIS Z8701によって求めた色度座標の値はx=0.115,y=0.200であった。
比較例1(M1=M2=Ir、A=無し、R4=R5=R6=R7=メチル基、Z=N;(テトラキス(2’,6’−ジフルオロ−2、3’−ビピリジナト)(μ−テトラメチルビベンゾイミダゾリル)ジイリジウム(III)の有機EL素子の作成)
二核イリジウム錯体(1)を(テトラキス(2’,6’−ジフルオロ−2、3’−ビピリジナト)(μ−テトラメチルビベンゾイミダゾリル)ジイリジウム(III)に変更した以外は実施例5と同様にして有機EL素子を作製した。
前記素子のITO電極2を正極、Al電極7を負極として通電し、電極間電圧を上げていくと、+10V付近から素子は肉眼ではっきりと分かる程度の水青色発光を開始し、+24Vにおいて645cd/m2で発光した。電流効率は+16Vで1.40cd/Aであった。
電極間電圧+16Vにおいて得られたスペクトルより、JIS Z8701によって求めた色度座標の値はx=0.229、y=0.232であった。