以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、最初に、本発明の実施形態と類似の参考形態を説明し、その後に、本発明の実施形態を説明する。
図1は、参考形態に係る自動変速機1のスケルトンを示す。この自動変速機1は、車両に搭載されるとともに、前進8速及び後退1速を達成するものである。
上記自動変速機1は、動力源4(詳しくは、動力源4の出力軸)に流体伝達装置を介さずに連結される入力軸3と、複数のプラネタリギヤセット(本参考形態では、第1プラネタリギヤセットPL1、第2プラネタリギヤセットPL2、第3プラネタリギヤセットPL3及び第4プラネタリギヤセットPL4の4つ)と、5つの摩擦締結要素CL1,CL2,B1,B2,B3と、4つのプラネタリギヤセットPL1,PL2,PL3,PL4のうちのいずれか1つのプラネタリギヤセット(本参考形態では、第4プラネタリギヤセットPL4)に連結され、上記動力源4からの動力が、上記4つのプラネタリギヤセットPL1,PL2,PL3,PL4により形成される動力伝達経路を介して伝達される出力部としての出力ギヤ7と、カウンタ機構11と、を備えている。
本参考形態では、入力軸3は、自動変速機1の一側(図1の右側)から他側(図1の左側)までの全体に亘って延びている。そして、入力軸3の軸方向一側端部が、動力源4に連結されている。
上記動力源4は、内燃機関であってもよく、電動モータであってもよい。入力軸3の軸方向一側端部は、上記のように、流体伝達装置を介さずに動力源4に連結されている。すなわち、本参考形態では、トルクコンバータ等の流体伝達装置は設けられておらず、入力軸3は、動力源4に直接連結されている。尚、入力軸3と動力源4との間に、トルクコンバータのような流体伝達装置が介在していなければよく、それ以外のもの(例えば断接クラッチ等)が介在していてもよい。
ここで、例えばトルクコンバータをなくした場合、トルクコンバータのトルク増幅機能による車両発進時の加速性が得られないことが懸念されるが、変速段の多段化により、各変速段のギヤ比の自由度が向上して加速性が損なわれないようにすることができるので、車両発進時の加速性は十分に得られるようになる。
本参考形態では、上記車両はFF車であり、該車両の前部に、動力源4及び自動変速機1が搭載されて、その搭載された状態での動力源4の出力軸及び自動変速機1の入力軸3は、上記車両の車幅方向に水平に延びている。
上記第1プラネタリギヤセットPL1は、入力軸3と同軸上に配設されていて、第1サンギヤS1、第1キャリアC1及び第1リングギヤR1を有する。第1キャリアC1には、シングルピニオンP1が設けられている。すなわち、第1プラネタリギヤセットPL1は、シングルピニオン型のプラネタリギヤセットである。
上記第2プラネタリギヤセットPL2は、入力軸3と同軸上に配設されていて、第2サンギヤS2、第2キャリアC2及び第2リングギヤR2を有する。第2キャリアC2には、シングルピニオンP2が設けられている。すなわち、第2プラネタリギヤセットPL2も、シングルピニオン型のプラネタリギヤセットである。
上記第3プラネタリギヤセットPL3は、入力軸3と同軸上に配設されていて、第3サンギヤS3、第3キャリアC3及び第3リングギヤR3を有する。第3キャリアC3には、シングルピニオンP3が設けられている。すなわち、第3プラネタリギヤセットPL3も、シングルピニオン型のプラネタリギヤセットである。
上記第4プラネタリギヤセットPL4は、入力軸3と同軸上に配設されていて、第4サンギヤS4、第4キャリアC4及び第4リングギヤR4を有する。第4キャリアC4には、ダブルピニオンP4が設けられている。すなわち、第4プラネタリギヤセットPL4は、ダブルピニオン型のプラネタリギヤセットである。
上記第1プラネタリギヤセットPL1及び上記第3プラネタリギヤセットPL3は、互いに径方向に重ねられた第1の複数段プラネタリギヤセットPLa(本参考形態では、2段プラネタリギヤセット)を構成し、第1プラネタリギヤセットPL1が径方向外側に位置し、第3プラネタリギヤセットPL3が径方向内側に位置する。尚、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaは、出力ギヤ7が連結されないプラネタリギヤセットで構成することが好ましい。
また、上記第2プラネタリギヤセットPL2及び上記第4プラネタリギヤセットPL4は、互いに径方向に重ねられた第2の複数段プラネタリギヤセットPLb(本参考形態では、2段プラネタリギヤセット)を構成し、第2プラネタリギヤセットPL2が径方向内側に位置し、第4プラネタリギヤセットPL4が径方向外側に位置する。第2の複数段プラネタリギヤセットPLbは、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaと入力軸方向に並ぶように配設されていて、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaの上記他側(動力源4とは反対側)に位置している。
第2の複数段プラネタリギヤセットPLbは、変速機ケース2内に収容され、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaは、変速機ケース2の入力軸方向の上記一側(動力源4側)に取り付けられたハウジング9内に収容されている。このハウジング9は、自動変速機に流体伝達装置(トルクコンバータ等)を設けた場合(入力軸3を流体伝達装置を介して動力源4に接続した場合)の該流体伝達装置を収容するために設けられるものであり、本参考形態では、上記のように流体伝達装置を設けていないので、ハウジング9内に流体伝達装置を収容する代わりに、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbを収容するようにしている。ハウジング9は、変速機ケース2の一部であるとも言える。ハウジング9の変速機ケース2とは反対側の端部は、動力源4の外壁部(例えば、動力源4としてのエンジンのシリンダブロック)に取付固定される。
上記第1キャリアC1及び上記第2リングギヤR2は、上記入力軸3に常時連結されている。また、上記第1リングギヤR1と上記第3キャリアC3とが常時連結され、上記第2サンギヤS2と上記第3サンギヤS3とが常時連結され、上記第3キャリアC3と上記第4サンギヤS4とが常時連結され、上記第2キャリアC2と上記第4キャリアC4とが常時連結されている。
上記5つの摩擦締結要素は、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3であって、入力軸3と同軸上に配設されている。第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2は、多板クラッチで構成され、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3は、本参考形態では、多板クラッチタイプで構成されるが、バンド式で構成されてもよい。
上記第1クラッチCL1は、上記第3リングギヤR3と上記第4キャリアC4との間を断接するものであり、上記第2クラッチCL2は、上記第2サンギヤS2と上記第2リングギヤR2との間を断接するものである。第1クラッチCL1は、入力軸方向において、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaと第2の複数段プラネタリギヤセットPLbとの間に配設されているとともに、変速機ケース2及びハウジング9の境界部内に収容されている。第2クラッチCL2は、入力軸方向において、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbの上記他側(動力源4とは反対側)に配設されているとともに、変速機ケース2内に収容されている。
上記第1ブレーキB1は、上記第1リングギヤR1及び上記第3キャリアC3と上記ハウジング9との間を断接するものであり、上記第2ブレーキB2は、上記第3リングギヤR3と上記ハウジング9との間を断接するものであり、上記第3ブレーキB3は、上記第1サンギヤS1と上記ハウジング9との間を断接するものである。このように、第1乃至第3ブレーキB1,B2,B3は、第1の複数段プラネタリギヤセットPLa(第1及び第3プラネタリギヤセットPL1,PL3)に連結されていて、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbのいずれのプラネタリギヤセットにも連結されていない。したがって、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaは、ブレーキ付き複数段プラネタリギヤセットに相当し、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbは、ブレーキ無し複数段プラネタリギヤセットに相当することになる。
第1ブレーキB1及び第3ブレーキB3は、ハウジング9と該ブレーキB1,B3が連結される第1の複数段プラネタリギヤセットPLa(第1プラネタリギヤセットPL1)との間の位置、つまり第1プラネタリギヤセットPL1の径方向外側の位置に配設されているとともに、ハウジング9内に収容されている。第2ブレーキB2は、入力軸方向において、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaと第2の複数段プラネタリギヤセットPLbとの間であって、第1クラッチCL1の径方向外側の位置に配設されているとともに、変速機ケース2及びハウジング9の境界部内に収容されている。
上記出力ギヤ7は、入力軸3と同軸上に配設され、かつ上記第4リングギヤR4に常時連結されていて、該第4リングギヤR4によって駆動されるように構成されている。出力ギヤ7は、入力軸方向において、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbの上記他側(動力源4とは反対側)であって、第2クラッチCL2の径方向外側の位置に配設されている。
出力ギヤ7は、カウンタ機構11のカウンタ入力部としてのカウンタ入力ギヤ13と噛み合っていて、該カウンタ入力ギヤ13を駆動する。このカウンタ機構11は、入力軸3と平行に延びるように配設されたカウンタ軸12と、該カウンタ軸12上に配設され、出力ギヤ7により駆動される上記カウンタ入力ギヤ13と、該カウンタ軸12上に配設されたカウンタ出力部としてのカウンタ出力ギヤ14とを有していて、変速機ケース2内に配設されている。カウンタ軸12、カウンタ入力ギヤ13及びカウンタ出力ギヤ14は、一体的に回転するようになされている。そして、カウンタ出力ギヤ14は、デファレンシャル機構21のデフ入力部としてのデフリングギヤ22と噛み合っていて、該デフリングギヤ22を駆動する。カウンタ軸12は、入力軸3に対して車両後側でかつ上側に位置している。また、カウンタ軸12は、カウンタ軸12の両端部にそれぞれ配設されたカウンタ軸受15(本参考形態では、テーパローラベアリング)によって回転可能に支持されている。
上記カウンタ入力ギヤ13及び上記カウンタ出力ギヤ14は、カウンタ軸方向(入力軸方向でもある)において、互いに離れて配設されている。すなわち、カウンタ入力ギヤ13は、カウンタ軸12における動力源4から遠い側の端部近傍に位置し、カウンタ出力ギヤ14は、カウンタ軸12における動力源4に近い側の端部近傍に位置している。つまり、カウンタ出力ギヤ14は、カウンタ軸12上においてカウンタ入力ギヤ13よりも上記一側(動力源4側)に配設されている。
上記第1の複数段プラネタリギヤセットPLaは、入力軸方向において、カウンタ出力ギヤ14に対して上記一側(動力源4側)に配設され、上記第2の複数段プラネタリギヤセットPLbは、入力軸方向において、カウンタ出力ギヤ14に対して上記他側(動力源4とは反対側)に配設されている。本参考形態では、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbは、入力軸方向において、カウンタ入力ギヤ13とカウンタ出力ギヤ14との間に配設されている。
上記デファレンシャル機構21は、上記デフリングギヤ22に固定されたデフケース23を有している。デフリングギヤ22及びデフケース23は、デフ軸受28(本参考形態では、テーパローラベアリング)によって、デフリングギヤ22の中心軸回りに回転可能に支持されていている。
上記デフケース23内には、2つのデフピニオンギヤ24と、デフリングギヤ22と同心上に配置された2つのデフサイドギヤ25とが配設されている。各デフピニオンギヤ24は、デフケース23に固定されているとともに、2つのデフサイドギヤ25と噛み合っている。各デフピニオンギヤ24は、デフケース23と共にデフリングギヤ22の中心軸回りに回転するとともに、各デフピニオンギヤ24の中心軸回りに自転することが可能に構成されている。そして、各デフピニオンギヤ24は、デフケース23がデフリングギヤ22の中心軸回りに回転すると、その回転を2つのデフサイドギヤ25に伝達する。このとき、2つのデフサイドギヤ25にかかる負荷が同じであれば、デフピニオンギヤ24は自転しないで、デフケース23の回転を2つのデフサイドギヤ25に同じ回転数でもって伝達する一方、負荷が異なれば、デフピニオンギヤ24が自転することで、差動回転を2つのデフサイドギヤ25に伝達する。
上記2つのデフサイドギヤ25は、該デフサイドギヤ25と同心上に配置された左右のドライブシャフト26にそれぞれ連結されており、左右のドライブシャフト26は、上記車両の車幅方向(入力軸3及びカウンタ軸12と平行な方向)に延びて左右の前輪(図示せず)にそれぞれ連結されている。こうして、出力ギヤ7に生じる動力は、カウンタ機構11及びデファレンシャル機構21を介して、上記車両の前輪に伝達されることになる。左右のドライブシャフト26は、カウンタ軸12に対して車両後側でかつ下側に位置している。
デファレンシャル機構21は、主としてハウジング9内に収容されているが、デフリングギヤ22は、変速機ケース2内に収容されている。
次に、上記自動変速機1の変速方法について説明する。
図2は、各変速段時における第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3の締結状態を示す。○印が締結していることを示し、空欄が締結を解除していることを示す。
また、図2には、第1プラネタリギヤセットPL1、第2プラネタリギヤセットPL2、第3プラネタリギヤセットPL3及び第4プラネタリギヤセットPL4の各構成ギヤを、以下のように設定したときの各変速段時におけるギヤ比(減速比)と、変速段間のギヤステップ(第1速のギヤ比/第2速のギヤ比、第2速のギヤ比/第3速のギヤ比、第3速のギヤ比/第4速のギヤ比、第4速のギヤ比/第5速のギヤ比、第5速のギヤ比/第6速のギヤ比、第6速のギヤ比/第7速のギヤ比、第7速のギヤ比/第8速のギヤ比)とを併せて示す。尚、図2のギヤ比では、レシオレンジ(第1速のギヤ比/第8速のギヤ比)は、7.533となる。
上記各構成ギヤの歯数は、
第1サンギヤS1:54、第1リングギヤR1:86、シングルピニオンギヤP1:16
第2サンギヤS2:54、第2リングギヤR2:108、シングルピニオンギヤP2:27
第3サンギヤS3:54、第3リングギヤR3:86、シングルピニオンギヤP3:16
第4サンギヤS4:46、第4リングギヤR4:108、ダブルピニオンギヤP4:31
となっている。尚、上記歯数は例示であって、これに限るものではない。
後退速は、第1クラッチCL1及び第2ブレーキB2の締結により形成される。このとき、入力軸3に連結された第1キャリアC1及び第2リングギヤR2が、入力軸3の回転数をN0として、回転数N0で入力軸3と同じ向きに回転する。尚、以下、断りのない限り、回転の向きは入力軸3と同じとし、入力軸3の回転とは逆の向きに回転する場合には、その旨を記載する。
第2ブレーキB2の締結により、第3リングギヤR3は、固定されて回転しない。また、第1クラッチCL1の締結により、第3リングギヤR3に連結された第4キャリアC4及び第2キャリアC2も回転しない。
第1リングギヤR1、第3キャリアC3及び第4サンギヤS4は、同じ回転数であって入力軸3の回転とは逆の向きで回転数N10で回転し、第2サンギヤS2及び第3サンギヤS3は、同じ回転数であって入力軸3の回転とは逆の向きでN10よりも高い回転数で回転する。
第1リングギヤR1が入力軸3の回転とは逆の向きで回転数N10で回転しかつ第1キャリアC1がN0で回転するので、第1サンギヤS1は、N0よりも高い回転数で回転する。
第4サンギヤS4が入力軸3の回転とは逆の向きでN10で回転しかつ第4キャリアC4が回転しないので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、入力軸3の回転とは逆の向きでN10よりも低い回転数で回転することになる。
第1速は、第1クラッチCL1及び第1ブレーキB1の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第2リングギヤR2が、上記回転数N0で回転する。
第1ブレーキB1の締結により、第1リングギヤR1、第3キャリアC3及び第4サンギヤS4は、固定されて回転しない。
第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1リングギヤR1が回転しないので、第1サンギヤS1は、N0よりも高い回転数で回転する。
第1クラッチCL1の締結により、第2キャリアC2、第3リングギヤR3及び第4キャリアC4が、同じ回転数であってN0よりも低い回転数N11で回転する。また、第2サンギヤS2及び第3サンギヤS3は、同じ回転数であって入力軸3の回転とは逆の向きで回転する。
第4サンギヤS4が回転せずかつ第4キャリアC4がN11で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N11よりも低い回転数N1で回転することになる。
第2速は、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第2リングギヤR2が、上記回転数N0で回転する。
第1ブレーキB1の締結により、第1リングギヤR1、第3キャリアC3及び第4サンギヤS4は、固定されて回転しない。また、第2ブレーキB2の締結により、第3リングギヤR3も、固定されて回転しない。第3キャリアC3及び第3リングギヤR3が回転しないので、第3サンギヤS3も回転せず、第3サンギヤS3に連結された第2サンギヤS4も回転しない。
第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1リングギヤR1が回転しないので、第1サンギヤS1は、N0よりも高い回転数で回転する。
第2サンギヤS2が回転せずかつ第2リングギヤR2がN0で回転するので、第2キャリアC2が、N0よりも低い回転数N12(>N11)で回転し、第2キャリアC2に連結された第4キャリアC4も、N12で回転する。
第4サンギヤS4が回転せずかつ第4キャリアC4がN12で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N12よりも低い回転数N2(>N1)で回転することになる。
第3速は、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第2リングギヤR2が、上記回転数N0で回転する。
第2クラッチCL2の締結により、第2サンギヤS2、第2リングギヤR2及び第2キャリアC2は、一体的に回転する、つまり同じ上記回転数N0で回転する。また、第2サンギヤS2に連結された第3サンギヤS3もN0で回転し、第2キャリアC2に連結された第4キャリアC4もN0で回転する。
第1ブレーキB1の締結により、第1リングギヤR1、第3キャリアC3及び第4サンギヤS4は、固定されて回転しない。
第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1リングギヤR1が回転しないので、第1サンギヤS1は、N0よりも高い回転数で回転する。また、第3サンギヤS3がN0で回転しかつ第3キャリアC3が回転しないので、第3リングギヤR3は、入力軸3の回転とは逆の向きに回転する。
第4サンギヤS4が回転せずかつ第4キャリアC4がN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N0よりも低い回転数N3(>N2)で回転することになる。
第4速は、第2クラッチCL2及び第2ブレーキB2の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第2リングギヤR2が、上記回転数N0で回転する。
第2クラッチCL2の締結により、第2サンギヤS2、第2リングギヤR2及び第2キャリアC2は、同じ上記回転数N0で回転する。また、第2サンギヤS2に連結された第3サンギヤS3もN0で回転し、第2キャリアC2に連結された第4キャリアC4もN0で回転する。
第2ブレーキB2の締結により、第3リングギヤR3は、固定されて回転しない。第3リングギヤR3が回転せずかつ第3サンギヤS3がN0で回転するので、第3キャリアC3が、N0よりも低い回転数N13で回転し、第3キャリアC3に連結された第1リングギヤR1及び第4サンギヤS4もN13で回転する。
第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1リングギヤR1がN13で回転するので、第1サンギヤS1は、N0よりも高い回転数で回転する。
第4サンギヤS4がN13で回転しかつ第4キャリアC4がN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N13よりも高くかつN0よりも低い回転数N4(>N3)で回転することになる。
第5速は、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第2リングギヤR2が、上記回転数N0で回転する。
第2クラッチCL2の締結により、第2サンギヤS2、第2リングギヤR2及び第2キャリアC2は、同じ上記回転数N0で回転する。また、第2サンギヤS2に連結された第3サンギヤS3もN0で回転し、第2キャリアC2に連結された第4キャリアC4もN0で回転する。また、第1クラッチCL1の締結により、第4キャリアC4に連結された第3リングギヤR3もN0で回転する。
第3サンギヤS3及び第3リングギヤR3がN0で回転するので、第3キャリアC3もN0で回転し、第3キャリアC3に連結された第4サンギヤS4もN0で回転する。
第4キャリアC4及び第4サンギヤS4がN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N0と同じ回転数N5(>N4)で回転することになる。
第6速は、第2クラッチCL2及び第3ブレーキB3の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第2リングギヤR2が、上記回転数N0で回転する。
第2クラッチCL2の締結により、第2サンギヤS2、第2リングギヤR2及び第2キャリアC2は、同じ上記回転数N0で回転する。また、第2サンギヤS2に連結された第3サンギヤS3もN0で回転し、第2キャリアC2に連結された第4キャリアC4もN0で回転する。
第3ブレーキB3の締結により、第1サンギヤS1は、固定されて回転しない。第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1サンギヤS1が回転しないので、第1リングギヤR1が、N0よりも高い回転数N14で回転し、第1リングギヤR1に連結された第3キャリアC3及び第4サンギヤS4も、N14で回転する。
第3キャリアC3がN14で回転しかつ第3サンギヤS3がN0で回転するので、第3リングギヤR4は、N14よりも高い回転数で回転する。
第4サンギヤS4がN14で回転しかつ第4キャリアC4がN0で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N0よりも高くかつN14よりも低い回転数N6(>N5)で回転することになる。
第7速は、第1クラッチCL1及び第3ブレーキB3の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第2リングギヤR2が、上記回転数N0で回転する。
第3ブレーキB3の締結により、第1サンギヤS1は、固定されて回転しない。第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1サンギヤS1が回転しないので、第1リングギヤR1が、N0よりも高い上記回転数N14で回転し、第1リングギヤR1に連結された第3キャリアC3及び第4サンギヤS4も、N14で回転する。
第1クラッチCL1の締結により、第3リングギヤR3、第4キャリアC4及び第2キャリアC2は、N0よりも高くかつN14よりも低い回転数N15で回転する。また、第2サンギヤS2及び第3サンギヤS3は、同じ回転数であってN14よりも高い回転数で回転する。
第4サンギヤS4がN14で回転しかつ第4キャリアC4がN15で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N15よりも高くかつN14よりも低い回転数N7(>N6)で回転することになる。
第8速は、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3の締結により形成される。このとき、第1キャリアC1及び第2リングギヤR2が、上記回転数N0で回転する。
第3ブレーキB3の締結により、第1サンギヤS1は、固定されて回転しない。第1キャリアC1がN0で回転しかつ第1サンギヤS1が回転しないので、第1リングギヤR1が、N0よりも高い上記回転数N14で回転し、第1リングギヤR1に連結された第3キャリアC3及び第4サンギヤS4も、N14で回転する。
第2ブレーキB2の締結により、第3リングギヤR3は、固定されて回転しない。第3リングギヤR3が回転せずかつ第3キャリアC3がN14で回転するので、第3サンギヤS3は、N14よりも高い回転数N16で回転し、第3サンギヤS3に連結された第2サンギヤS2もN16で回転する。
第2サンギヤS2がN16で回転しかつ第2リングギヤR2がN0で回転するので、第2キャリアC2は、N0よりも高くかつN16よりも低い回転数N17で回転し、第2キャリアC2に連結された第4キャリアC4もN17で回転する。
第4サンギヤS4がN14で回転しかつ第4キャリアC4がN17で回転するので、第4リングギヤR4(つまり出力ギヤ7)は、N14よりも高くかつN17よりも低い回転数N8(>N7)で回転することになる。
本参考形態では、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3は全て、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaの第1及び第3プラネタリギヤセットPL1,PL3に連結されており、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbの第2及び第4プラネタリギヤセットPL2,PL4には、ブレーキは1つも連結されていない。そして、上記のように、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaは、入力軸方向において、カウンタ出力ギヤ14に対して上記一側(動力源4側)に配設されている。すなわち、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaは、自動変速機に流体伝達装置を設けた場合の、該流体伝達装置を収容するための、径が比較的大きいハウジング9内に収容されている。この結果、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaを、第1乃至第3ブレーキB1,B2,B3と共に、ハウジング9内に容易に配設することができ、これにより、流体伝達装置を設けた自動変速機よりも、自動変速機1の入力軸方向の寸法を小さくすることができる。また、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaを構成する以外のプラネタリギヤセット(第2プラネタリギヤセットPL2及び第4プラネタリギヤセットPL4)が、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbを構成するので、カウンタ機構11を含む自動変速機1の入力軸方向の寸法をより一層小さくすることができる。
ここで、仮に、入力軸方向においてカウンタ入力ギヤ13とカウンタ出力ギヤ14との間に位置する第2の複数段プラネタリギヤセットPLbの少なくとも1つのプラネタリギヤセットにもブレーキが連結されていたとすると、そのブレーキは、通常、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbの径方向外側に配設されるため、そのブレーキにより、カウンタ機構11を第2の複数段プラネタリギヤセットPLb(入力軸3)に近づけることが困難になる。
これに対し、本参考形態では、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbのいずれのプラネタリギヤセットにもブレーキが連結されていないので、カウンタ機構11を第2の複数段プラネタリギヤセットPLb(入力軸3)に近づけることができるようになり、この結果、カウンタ機構11を含む自動変速機1の、入力軸3とカウンタ軸12とが対向する方向の寸法(特に自動変速機1の車両前後方向の寸法)を小さくすることができる。よって、カウンタ機構11を含む自動変速機1の大型化を抑制することができる。
上記参考形態では、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaの第1及び第3プラネタリギヤセットPL1,PL3にブレーキが連結されているが、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaの少なくとも1つのプラネタリギヤセットにブレーキが連結されていればよく、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbのいずれのプラネタリギヤセットにもブレーキが連結されていなければよい。
さらに、上記参考形態では、第2クラッチCL2が、第2サンギヤS2と第2リングギヤR2との間を断接する構成としたが、これに代えて、第2クラッチCL2が、図4に示すように、第2キャリアC2と第2リングギヤR2との間を断接する構成とするか、又は、図5に示すように、第2サンギヤS2と第2キャリアC2との間を断接する構成としてもよい。すなわち、第2クラッチCL2は、その締結により、第2サンギヤS2、第2キャリアC2及び第2リングギヤR2を一体的に回転させる(同じ回転数で回転させる)ことを目的にするものであり、この目的のためには、第2プラネタリギヤセットPL2における第2サンギヤS2、第2キャリアC2及び第2リングギヤR2のうちのいずれか2つの構成要素の間を断接するようにすればよい。
また、上記参考形態では、第1の複数段プラネタリギヤセットPLaにおいて、第1プラネタリギヤセットPL1が径方向外側に位置し、第3プラネタリギヤセットPL3が径方向内側に位置するようにしたが、図6に示すように、第1プラネタリギヤセットPL1と第3プラネタリギヤセットPL3との径方向の位置関係を、上記参考形態のものとは逆にしてもよい。すなわち、第1プラネタリギヤセットPL1が径方向内側に位置し、第3プラネタリギヤセットPL3が径方向外側に位置するようにする。
さらに、上記参考形態では、第4プラネタリギヤセットPL4からカウンタ機構11への動力伝達を、出力ギヤ7とカウンタ入力ギヤ13との噛み合いにより行うようにしたが、チェーンやベルトを介して行うようにしてもよい。この場合、第4プラネタリギヤセットPL4の第4リングギヤR4により駆動される出力部及びカウンタ機構11のカウンタ入力部は、チェーンが巻かれるチェーンスプロケットや、ベルトが巻かれるプーリで構成されることになる。また、同様に、カウンタ機構11からデファレンシャル機構21への動力伝達を、チェーンやベルトを介して行うようにしてもよい。この場合も、カウンタ機構11のカウンタ出力部及びデファレンシャル機構21のデフ入力部は、チェーンが巻かれるチェーンスプロケットや、ベルトが巻かれるプーリで構成されることになる。
加えて、上記参考形態では、第1及び第2の複数段プラネタリギヤセットPLa.PLbを、2段プラネタリギヤセットとしたが、プラネタリギヤセットの数が更に多くなれば、第1及び第2の複数段プラネタリギヤセットPLa.PLbを、3段以上で構成することも可能である。さらに、第1及び第2の複数段プラネタリギヤセットPLa.PLb以外に、複数段プラネタリギヤセットを構成しない少なくとも1つのプラネタリギヤセット(ブレーキが連結されていないことが好ましいが、連結されていてもよい)が、入力軸3と同軸上に設けられていてもよい。
上記参考形態では、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbを、入力軸方向において、カウンタ入力ギヤ13とカウンタ出力ギヤ14との間に配設するようにしたが、本発明の実施形態では、図3に示すように、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbを、入力軸方向において、カウンタ入力ギヤ13に対して動力源4とは反対側に配設する。こうすれば、カウンタ軸を入力軸により一層近づけることができる。一方、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbを、入力軸方向において、カウンタ入力ギヤ13に対して動力源4とは反対側に配設すると、カウンタ入力ギヤ13とカウンタ出力ギヤ14との間に配設する場合よりも、自動変速機1の入力軸方向の寸法が大きくなる可能性はあるが、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbの径は比較的小さいので、自動変速機1の動力源4とは反対側の部分の径方向の寸法が大きくなるのを抑制することができる。
尚、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbにおいて、第2プラネタリギヤセットPL2と第4プラネタリギヤセットPL4との径方向の位置関係を、上記実施形態のものとは逆にすることも可能である。この場合も、図7に示すように、第2の複数段プラネタリギヤセットPLbを、入力軸方向において、カウンタ入力ギヤ13に対して動力源4とは反対側に配設する。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。