以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態の有機無機複合組成物は、(A)熱可塑性樹脂10〜50体積%、(B−1)球状フィラーが40〜60体積%、及び(B−2)球状以外のフィラーが10〜50体積%を含み、(B−1)球状フィラー及び/又は(B−2)球状以外のフィラーの表面の少なくとも一部が、(b−3)フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、及びオレフィン樹脂からなる群より選ばれるいずれか一種以上である樹脂並びに/又は(b−4)シランカップリング剤によって被覆された、有機無機複合組成物である。
本実施形態の有機無機複合組成物は、従来技術において使用されていた金属材料を使用せずとも、優れた熱伝導性と機械的強度を発揮し、さらに易成形性にも優れる。そのため、実質的に金属含有しない、非金属系(金属レス)の有機無機複合組成物として用いることもできる(但し、本実施形態の態様はこれに限定されるものではない。)。従来では高い熱伝導性を発現させるためには所謂熱伝導性フィラーをかなり高充填することが指向されていた。しかしながら、本実施形態の有機無機複合組成物では、必ずしも(B−2)成分を高充填せずとも、高い熱伝導性を有し、さらには機械的強度等も優れたものにできる。さらに、(B−2)成分の含有量を低減することも可能であるため、(A)熱可塑性樹脂に由来する易成形性等も高いレベルで維持できる。
(A)熱可塑性樹脂としては、溶融成形可能な熱可塑性樹脂であればよく、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテルを他の樹脂とブレンド又はグラフト重合させて変性させた変性ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリフェニレンエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリウレタン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系、ポリ1−ブテン、ポリ1−ペンテン、ポリメチルペンテン、エチレン/α−オレフィン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、EPR(エチレン−プロピレン共重合体)、変性エチレン・ブテン共重合体、EEA(エチレン−エチルアクリレート共重合体)、変性EEA、変性EPR、変性EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、アイオノマー、α−オレフィン共重合体、変性IR(イソプレンゴム)、変性SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)、ハロゲン化イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体、エチレン−アクリル酸変性体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びその酸変性物、(エチレン及び/又はプロピレン)と(不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)との共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)と(不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化して得られるポリオレフィン、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素のブロック共重合体、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素のブロック共重合体の水素化物、他の共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体、天然ゴム、各種ブタジエンゴム、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンとp−メチルスチレンの共重合体の臭化物、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリロブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等のアクリル、アクリロニトリルを主成分とするアクリロニトリル系共重合体、アクリロニトリル・ブタンジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、塩化ビニル/エチレン共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、及びエチレン/酢酸ビニル共重合体のケン化物等が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、ポリマーアロイとして用いてもよい。また、上記した熱可塑性樹脂が、不飽和カルボン酸、その酸無水物又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物により変性されたものも用いることもできる。
これらの中でも、耐熱性、成形性、及び機械特性の観点から、ポリアミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、及びポリエーテルイミドからなる群より選ばれるいずれか一種以上であることが好ましく、ポリアミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、及びポリイミドからなる群より選ばれるいずれか一種以上であることがより好ましい。
本実施形態の有機無機複合組成物では、(B−1)球状フィラー及び/又は(B−2)球状以外のフィラーの表面の少なくとも一部が、(b−3)フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、及びオレフィン樹脂からなる群より選ばれるいずれか一種以上である樹脂並びに/又は(b−4)シランカップリング剤によって被覆されたものを含む。これにより、優れた等方的熱伝導性を発揮することができ、その結果、優れた熱伝導性、機械的強度、及び易成形性を高いレベルで両立させることができる。
(B−1)球状フィラーは、球状であるフィラーである。本実施形態において、球状とは、長径に対する短径で表される真球度(短径/長径)が、0.6〜1.0であるものをいう。(B−1)球状フィラーの真球度は、0.8〜1.0であることが好ましく、0.9〜1.0であることがより好ましい。
(B−1)球状フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、5〜150μmであることが好ましい。平均粒子径について、より好ましい下限は8μm以上であり、更に好ましい下限は10μm以上であり、より更に好ましい下限は12μm以上である。平均粒子径の下限が上記値以上であることで、押出成形時のミクロボイドの発生を一層効果的に抑制することができる。また、平均粒子径について、より好ましい上限は130μm以下であり、更に好ましい上限は100μm以下であり、より更に好ましい上限は50μm以下である。平均粒子径の上限が上記値以下であることで、破砕による表面外観の悪化を一層効果的に抑制することができる。
一方、(B−2)球状以外のフィラーとは、球状でないフィラー(非球状フィラー)であり、上記した真球度が0.6未満であるものをいう。(B−2)球状以外のフィラーの真球度は、0.24未満であることが好ましく、0.1未満であることがより好ましい。(B−2)球状以外のフィラーの形状としては、例えば、平板状、針状、繊維状、鱗片状等が挙げられる。
(B−1)成分及び(B−2)成分として使用可能なフィラーの種類は、それぞれ特に限定されず、例えば、黒鉛、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、シラスバルーン、フライアッシュ、ガラスバルーン、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイト等のケイ酸塩;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩;炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;その他炭化珪素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
特に(B−1)成分としては、純度、耐圧強度、易表面処理性、及び真球度の観点から、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ウォラストナイト、アルミナ、破砕ガラス繊維、破砕シリカ・アルミナ繊維が好ましく、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アルミナ、破砕ガラス繊維がより好ましい。
特に(B−2)成分としては、熱伝導性やフィラー間の接触確率の観点から、黒鉛、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等が好ましい。
本実施形態では、(B−1)成分及び/又は(B−2)成分の表面の少なくとも一部が、(b−3)フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、及びオレフィン樹脂からなる群より選ばれるいずれか一種以上である樹脂並びに/又は(b−4)シランカップリング剤によって被覆されている。このような処理を行うことで、(A)成分との密着性が向上し、機械的特性が改善される。
(b−3)成分としては、フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、及びオレフィン樹脂からなる群より選ばれるいずれか一種以上である樹脂が挙げられる。(b−3)成分は、サイジング剤としても機能する。これらの中でも、フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれるいずれか一種以上であることが好ましい。
フェノール樹脂としては、その繰り返し単位にフェノール誘導体を含むものであればよく、特に限定されない。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール誘導体に対し、アルデヒド化合物、ケトン化合物、メチロール化合物、又はアルコキシメチル化合物を重合させて得られる樹脂;フェノール−ジエン系重合樹脂;ポリヒドロキシスチレン系樹脂;及びこれらの樹脂の誘導体が挙げられる。
フェノール誘導体としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ベンジルフェノール、アダマンタンフェノール、ベンジルオキシフェノール、キシレノール、カテコール、レゾルシノール、エチルレゾルシノール、ヘキシルレゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、パラロゾール酸、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシベンゼン)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−5−ビフェニルイル)プロパン、ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピバルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、トリオキサン、グリオキザール、シクロヘキシルアルデヒド、ジフェニルアセトアルデヒド、エチルブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキシル酸、5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルアルデヒド、サリチルアルデヒド、ナフトアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジシクロヘキシルケトン、ジベンジルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ビシクロヘキサノン、シクロヘキサンジオン、3−ブチン−2−オン、2−ノルボルナノン、アダマンタノン、2,2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
メチロール化合物としては、例えば、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、リビトール、アラビトール、アリトール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、モノアセチン、2−メチル−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、5−ノルボルネン−2,2−ジメタノール、5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール、ペンタエリスリトール、2−フェニル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、3,6−ビス(ヒドロキシメチル)デュレン、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、1,8−ビス(ヒドロキシメチル)アントラセン、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジメトキシベンゼン、4,4’−ビフェニルジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、2−ニトロ−p−キシリレングリコール、1,3−ベンゼンジメタノール等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルコキシメチル化合物としては、例えば、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、2,4,6−トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フェノール−ジエン系重合樹脂は、フェノール誘導体とジエン系化合物とを重合させて得ることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フェノール誘導体としては上述したものと同じものを用いることができ、ジエン系化合物としては、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、3−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ブタンジオール−ジメタクリラート、2,4−ヘキサジエン−1−オール、メチルシクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、1−ヒドロキシジシクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジアリルエーテル、ジアリルスルフィド、アジピン酸ジアリル、2,5−ノルボルナジエン、テトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸ジアリルプロピル等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリヒドロキシスチレン系樹脂は、不飽和結合をもつフェノール誘導体を付加重合させて得ることができる。不飽和結合をもつフェノール誘導体を付加重合させた樹脂を合成する際のフェノール誘導体としてはヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、アリルフェノール、クマル酸、ヒドロキシカルコン、N−ヒドロキシフェニル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド、レスベラトロール、ヒドロキシスチルベン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上述のフェノール誘導体を脱水、若しくは脱アルコール、又は不飽和結合を開裂させながら重合させることにより樹脂化することができるが、重合時に触媒を用いてもよい。触媒としては、酸性触媒、アルカリ性触媒のいずれも用いることができる。
酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、酢酸、シュウ酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1’−ジホスホン酸、酢酸亜鉛、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素・フェノール錯体、三フッ化ホウ素・エーテル錯体等が挙げられる。
アルカリ性触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、ピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。
フェノール樹脂は複数の単量体成分の共重合体であってもよく、その共重合の際に、フェノール誘導体の一部にフェノール性水酸基を有さない化合物を用いてもよい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フェノール樹脂は、溶剤によって希釈されたものを用いることもできる。溶剤としては、例えば、アミド類、スルホキシド類、ウレア類、ケトン類、エステル類、ラクトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類等が挙げられる。具体的には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、モルフォリン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、アニソール、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶剤の添加量は、フェノール樹脂100質量部に対して、好ましくは100〜1000質量部であり、より好ましくは120〜700質量部であり、更に好ましくは150〜500質量部である。
フェノール樹脂を用いる際には、架橋剤が含有されていることが好ましい。架橋剤としては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、アルデヒド及びアルデヒド変性体、イソシアネート系架橋剤、金属キレート剤、N−メチロール系化合物、C−メチロール系化合物、その他の不飽和結合含有化合物等が挙げられる。
架橋剤として使用可能なエポキシ化合物としては、例えば、1,1,2,2−テトラ(p−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、オルソセカンダリーブチルフェニルグリシジルエーテル、1,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ナフタレン、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリグリシジル等が挙げられる。また、市販品を用いることもでき、例えば、「エピクロン830」、「エピクロン850」、「エピクロン1050」、「エピクロンN−680」、「エピクロンN−690」、「エピクロンN−695」、「エピクロンN−770」、「エピクロンHP−7200」、「エピクロンHP−820」、「エピクロンEXA−4850−1000」(商品名、いずれもDIC社製)、「デナコールEX−201」、「デナコールEX−313」、「デナコールEX−314」、「デナコールEX−321」、「デナコールEX−411」、「デナコールEX−511」、「デナコールEX−512」、「デナコールEX−612」、「デナコールEX−614」、「デナコールEX−614B」、「デナコールEX−731」、「デナコールEX−810」、「デナコールEX−911」、「デナコールEM−150」(商品名、いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
架橋剤として使用可能なオキセタン化合物としては、例えば、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン―イル)メトキシ]メチル}オキセタン等が挙げられる。
架橋剤として使用可能なオキサゾリン化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン、1,4−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン等が挙げられる。また、市販品を用いることもでき、例えば、「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスK−2030E」、「エポクロスWS−500」、「エポクロスWS−700」、「エポクロスRPS−1005」(商品名、いずれも日本触媒社製)等が挙げられる。
架橋剤として使用可能なカルボジイミド化合物としては、例えば、「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−01」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−03」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトV−05」、「カルボジライトV−07」、「カルボジライトV−09」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトLA−1」(商品名、いずれも日清紡ケミカル社製)等が挙げられる。
架橋剤として使用可能なアルデヒド及びアルデヒド変性体としては、例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、トリオキサン、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド等が挙げられる。
架橋剤として使用可能なイソシアネート系架橋剤としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアナート、1,3−フェニレンビスメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン―4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、市販品を用いることもでき、例えば、「タケネート500」、「タケネート600」、「コスモネートNBDI」、「コスモネートND」(商品名、いずれも三井化学社製)、「デュラネート17B−60PX」、「デュラネートTPA−B80E」、「デュラネートMF−B60X」、「デュラネートMF−K60X」、「デュラネートE402−B80T」(商品名、いずれも旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
架橋剤として使用可能な金属キレート剤としては、例えば、アセチルアセトンアルミニウム(III)塩、アセチルアセトンチタン(IV)塩、アセチルアセトンクロム(III)塩、アセチルアセトンマグネシウム(II)塩、アセチルアセトンニッケル(II)塩、トリフルオロアセチルアセトンアルミニウム(III)塩、トリフルオロアセチルアセトンチタン(IV)塩、トリフルオロアセチルアセトンクロム(III)塩、トリフルオロアセチルアセトンマグネシウム(II)塩、トリフルオロアセチルアセトンニッケル(II)塩等が挙げられる。
架橋剤として使用可能なN−メチロール系化合物としては、例えば、「ニカラックMW−30MH」、「ニカラックMW−100LH」、「ニカラックBL−60」、「ニカラックMX−270」、「ニカラックMX−280」、「ニカラックMX−290」(商品名、いずれも三和ケミカル社製)、「サイメル300」、「サイメル303」、「サイメル1123」、「マイコート102」、「マイコート105」(商品名、いずれも日本サイテック社製)等が挙げられる。
架橋剤として使用可能なC−メチロール系化合物としては、例えば、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル等が挙げられる。
架橋剤として使用可能なその他の不飽和結合含有化合物としては、例えば、酢酸ビニル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリアリル、トリメリット酸トリアリル、ピロメリット酸テトラアリルエステル、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。また、市販品を用いることもでき、例えば、「NKエステル1G」、「NKエステル2G」、「NKエステル3G」、「NKエステル4G」、「NKエステル9G」、「NKエステル14G」、「NKエステルNPG」、「NKエステルBPE−100」、「NKエステルBPE−200」、「NKエステルBPE−500」、「NKエステルBPE−1400」、「NKエステルA−200」、「NKエステルA−400」、「NKエステルA−600」、「NKエステルTMPT」、「NKエステルA−TMM−3」(商品名、いずれも新中村化学工業社製)、「BANI−M」、「BANI−X」(商品名、いずれも丸善石油化学社製)等が挙げられる。
上記架橋剤としては、これら1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤を使用する場合の配合量としては、フェノール樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
フェノール樹脂は、サイジング剤とした際の引っ張り伸度が高い。その理由としては、水素結合又はベンゼン環同士のπ電子の相互作用、ファンデルワールス力等を統合したポリマー間の相互作用が適度に働くことができるからではないかと推測される。特に、分子間の水素結合を弱めるという観点から、フェノール樹脂の繰り返し単位において、炭素原子の数に対する酸素原子及び窒素原子の総数の割合が、0.1以下であることが好ましく、0.08以下であることがより好ましく、0.06以下であることが更に好ましい。また、フェノール樹脂の繰り返し単位において、炭素原子の数に対する水素原子及び窒素原子の総数の割合が、0.01以上であれば、上記水素結合を含めたポリマー間の相互作用を適度なものに制御しやすくなる(但し、本実施形態の作用はこれらに限定されない。)。
ウレア樹脂は、従来公知のものが使用可能であり、以下に限定されるものではない。ウレア樹脂は、尿素とホルムアルデヒドを反応させて得られる汎用ウレア樹脂、メラミンと尿素とホルマリンとの共縮合によって得られるメラミン/ウレア樹脂、フェノールと尿素とホルマリンとの共縮合によって得られるフェノール/ウレア樹脂、イソシアネート基とアミノ基を有する分子又は水分子等との反応により形成得られるウレア樹脂、上記ウレア樹脂中にウレタン結合を含むウレアウレタン樹脂を含む。例えば、アルコールとイソシアネートよりなる末端イソシアネートプレポリマーを原料とする場合、ウレアウレタン樹脂を形成することとなる。
イソシアネートの具体例としては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミンの具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリオキシアルキルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、ポリアミドアミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、メチレンビスシクロヘキシルアミン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、メタキシリレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン等の脂環式ポリアミン;ポリエチレングリコールビス(4−アミノベンゾエート)、ポリエチレングリコールビス(2−アミノベンゾエート)、ポリエチレングリコールビス(3−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレングリコールビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレングリコールビス(2−アミノベンゾエート)、ポリプロピレングリコールビス(4−アミノベンゾエート)、ポリプロピレングリコールビス(2−アミノベンゾエート)、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)グリコールビス(4−アミノベンゾエート)、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)グリコールビス(4−アミノベンゾエート)、ポリオキシブチレングリコールビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレングリコールビス(3,5−ジアミノベンゾエート)、ポリプロピレンエーテルグリセロールトリス(4−アミノベンゾエート)、ポリプロピレンエーテルペンタエリスリトールテトラキス(4−アミノベンゾエート)、ポリオキシエチレンビス(4−アミノベンズアミド)、ポリオキシプロピレンビス(4−アミノベンズアミド)、ポリオキシブチレングリコールビス(4−アミノベンゾエート)、ポリオキシプロピレンビス(3,5−アミノベンズアミド)等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化性の観点から、アミンに対するイソシアネートの混合比率は、NCO/NH2比(モル比)で、0.8〜1.3であることが好ましく、0.9〜1.2であることがより好ましい。
メラミン樹脂としては、従来公知のものが使用可能であり、以下に限定されるものではないが、例えば、グアナミン、メラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N”−トリフェニルメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、アメリン(N,N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン)等のメラミン類と、ホルムアルデヒド、及びアルコール類(例えば、メタノール等)の縮合物であることが好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
メラミン樹脂としては、常温で液体であることが好ましい。メラミン樹脂の具体例としては、例えば、メトキシメチル化メラミン樹脂、エトキシメチル化メラミン樹脂、プロポキシメチル化メラミン樹脂、ブトキシメチル化メラミン樹脂等が好ましく、これらの中でも、メトキシメチル化メラミン樹脂がより好ましい。
エポキシ樹脂としては、従来公知のものが使用可能であり、以下に限定されるものではない。エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂主剤に、硬化促進剤、必要に応じて希釈剤が配合されたものを用いることができる。エポキシ樹脂主剤は、常温で固体であってもよいし、液体であってもよい。エポキシ樹脂主剤の具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物;テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類;アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物;脂環式エポキシ樹脂;グリシジルアミン系エポキシ樹脂;グリシジルエステル系エポキシ樹脂やそれらの変性物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂の希釈剤としては、反応性希釈剤が好ましいが、非反応性希釈剤でも構わない。
反応性希釈剤としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o−クレジルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェノールモノグリシジルエーテル等の単官能希釈剤;レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,2:8,9−ジエポキシリモネン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の2官能希釈剤;グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の3官能以上の多官能希釈剤等が挙げられる。非反応性希釈剤としては、テトラヒドロフラン、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、パインオイル、キシレン樹脂、トルエン樹脂、ミネラルスピリット、灯油等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物等が挙げられる。硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
十分な硬化が可能であるとともに、良好な硬化物の物性が得られるという観点から、エポキシ樹脂において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量であることが好ましい。
エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類;トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類;オクチル酸スズ等の金属化合物;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜15質量部であることが好ましい。
ウレタン樹脂としては、特に限定されず、例えば、ウレタンプレポリマーとしてのポリイソシアネート成分、ポリオール成分、及び必要に応じて公知の硬化触媒を含む樹脂であればよい。
ポリイソシアネート成分としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、キシリレンジイソシアネート及びα,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート及び4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、或いはこれらの混合物等のジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、或いはこれらの混合物等のトルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート及びこれらの一部をカルボジイミド変性、ビウレット変性、アロファネート変性、イソシアヌレート変性したもの等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等の水酸基数2のポリオール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の水酸基数3のポリオール;ペンタエリスリトール等の水酸基数4のポリオール;ソルビトール等の水酸基数6のポリオール;ショ糖等の水酸基数8のポリオール;水酸基数2又は3のポリオールにアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール;アニリン、トリレンジアミン、エチレンジアミン及びジエチレントリアミン等のアミン化合物にアルキレンオキサイドを付加したアミンポリオール等;その他のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ひまし油系ポリオール、アルキレンジオール等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化触媒としては、通常、ポリウレタン樹脂の製造に使用されるものを用いることもできる。硬化触媒の具体例としては、例えば、金属触媒、アミン系触媒等が挙げられる。金属触媒としては、例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクテート等の錫触媒;オクチル酸鉛、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛触媒;オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等のビスマス触媒等が挙げられる。アミン系触媒としては、例えば、ジエチレントリアミン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化性が良好であるという観点から、ポリオールに対するイソシアネートの混合比率は、NCO/OH比(モル比)で、0.8〜1.3であることが好ましく、0.9〜1.2であることがより好ましい。
ポリウレタン樹脂組成物中の硬化触媒の含有量は、求める硬化速度に応じて適宜調整することができるが、一般的には、主剤(I)及び硬化剤(II)の合計100質量部に対して、0.0001〜3質量部であることが好ましい。
ポリアミド樹脂としては、特に限定されず、アミノ酸、ラクタム又はジアミンと、ジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミド樹脂であればよい。
アミノ酸としては、例えば、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタン、ビス−p−アミノシクロヘキシルプロパン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、1,4/1,8/2,6/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。得られるポアミド樹脂はホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。
ポリアミドの重合度については、特に限定されない。また、ポリアミド樹脂は、その末端基がモノカルボン酸化合物及び/又はジカルボン酸化合物、或いは、モノアミン化合物及び/又はジアミン化合物の1種以上を、任意の段階でポリアミドに添加することにより末端基濃度が調節されていてもよい。
オレフィン樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、オレフィン単量体の単独重合体の他、オレフィン単量体の共重合体、オレフィン単量体と他の共重合性単量体との共重合体が挙げられる。オレフィン単量体の具体例としては、例えば、鎖状オレフィン、環状オレフィンが挙げられる。鎖状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数2〜20(好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜4)のα−オレフィン等が挙げられる。環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン等の炭素数4〜10のシクロアルケン;シクロペンタジエン等の炭素数4〜10のシクロアルカジエン;ノルボルネン、ノルボルナジエン等の炭素数8〜20のビシクロアルケン又は炭素数8〜20のビシクロアルカジエン;ジヒドロジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等の炭素数10〜25のトリシクロアルケン又はトリシクロアルカジエン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい上記オレフィン単量体のうち、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のα−オレフィン等の鎖状オレフィンが好ましい。
オレフィン単量体と共重合可能な他の共重合性単量体に使用可能な他の共重合性単量体の具体例としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系単量体;マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物;カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)等];ノルボルネン、シクロペンタジエン等の環状オレフィン;及びブタジエン、イソプレン等のジエン類等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
オレフィン樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1等の三元共重合体等の鎖状オレフィン(特に炭素数2〜4のα−オレフィン)の(共)重合体等が挙げられる。また、オレフィン単量体と他の共重合性単量体との共重合体の具体例としては、例えば、鎖状オレフィン(特に、エチレン、プロピレン等の炭素数2〜4のα−オレフィン)と脂肪酸ビニルエステル単量体との共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重合体等);鎖状オレフィンと(メタ)アクリル単量体との共重合体[鎖状オレフィン(特に炭素数2〜4のα−オレフィン)と(メタ)アクリル酸との共重合体(例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー等);鎖状オレフィン(特に炭素数2〜4のα−オレフィン)とアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(例えば、エチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合体等);等];鎖状オレフィン(特に炭素数2〜4のα−オレフィン)とジエンとの共重合体(例えば、エチレン−ブタジエン共重合体等);オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレンゴム等)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(b−4)シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基含有シラン系カップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シラン系カップリング剤、アミノ基含有シラン系カップリング剤、エポキシ基含有シラン系カップリング剤、メルカプト基含有シラン系カップリング剤、カルボキシル基含有シラン系カップリング剤、ハロゲン原子含有シラン系カップリング剤等が挙げられる。
(b−4)シランカップリング剤の具体例としては、例えば、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシ−プロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、2−[N−(2−アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシ−プロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシ−プロピルメチルジエトキシシラン、2−グリシドキシ−エチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシ−エチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、カルボキシメチルトリエトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
上記の中でも、反応速度の観点から、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシ−プロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシ−プロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシ−プロピルメチルジエトキシシラン、2−グリシドキシ−エチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシ−エチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランがより好ましい。さらには、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシ−プロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシ−プロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシ−プロピルメチルジエトキシシラン、2−グリシドキシ−エチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが更に好ましい。
(b−3)成分及び(b−4)成分の総量は、フィラーである(B−1)成分及び(B−2)成分の総量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。(b−3)成分及び(b−4)成分の総量を上記下限値以上とすることで、フィラー表面に十分に付着させることができ、マトリックス樹脂に対するアンカー効果を一層向上させることができ、その結果、密着性や強度向上効果が一層優れたものになる。また、表面処理剤の使用量を上記上限値以下とすることで、経済性に優れるとともに、フィラー表面の表面処理剤の量が適量となりフォノンの散乱を効果的に抑制でき、結果として熱伝導性が一層優れたものとなる(但し、本実施形態の作用はこれらに限定されない。)。
上記した(b−3)成分や(b−4)成分をフィラー表面に付着させる方法としては、浸漬による湿式処理や、スプレー等による乾式処理等の各種公知の処理方法を適宜使用することができる。
本実施形態の有機無機複合組成物は、(A)成分10〜50体積%、(B−1)成分40〜60体積%、及び(B−2)成分10〜50体積%を含有する。(A)成分の含有量は、12〜48体積%であることが好ましく、15〜45体積%であることがより好ましい。(B−1)成分の含有量は、43〜48体積%であることが好ましく、45〜55体積%であることがより好ましい。(B−2)成分の含有量は、15〜48体積%であることが好ましく、20〜45体積%であることがより好ましい。各成分の含有量を上記範囲とすることで、熱伝導性を一層向上させることができる。
さらに、本実施形態の有機無機複合組成物には、その効果を損なわない範囲において、その他の各種添加剤を含有してもよい。その他の各種添加剤としては、例えば、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物等のカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物等の可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物等の結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物等の離型剤、次亜リン酸塩等の着色防止剤、その他、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤等の通常の添加剤を配合することができる。
本実施形態の有機無機複合組成物における上記各種添加剤の含有量の総量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。上記上限値以下とすることで、有機無機複合組成物の熱伝導性や機械的強度等を高いレベルで維持しつつ、所望の特性を発現させることができる。
本実施形態の有機無機複合組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、原料の混合物を単軸或いは二軸の押出機、バンバリーミキサ、ニーダ、ミキシングロール等通常公知の溶融混合機に供給して、200〜400℃の温度で混練する方法等が挙げられる。また、原料の混合順序も特に限定されず、例えば、(A)熱可塑性樹脂、表面が被覆されたフィラー(以下、表面被覆フィラーという場合がある。)や被覆されていないフィラー、及び必要に応じて添加するその他の充填剤や添加剤等を予めブレンドした後、(A)熱可塑性樹脂の融点以上の温度で、単軸又は二軸押出機で均一に溶融混練する方法、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法等が用いられる。
これらの中でも生産性の点で、単軸又は二軸押出機で均一に溶融混練する方法が好ましく、二軸押出機を用いて(A)熱可塑性樹脂の融点より10℃以上高い温度において均一に溶融混練する方法がより好ましい。
混練方法としては、例えば、(1)熱可塑性樹脂や表面被覆フィラー等を一括混練する方法、(2)まず表面被覆フィラーを高濃度に含む熱可塑性樹脂組成物(マスターバッチペレット)を作製し、次いで規定の濃度になるように熱可塑性樹脂を更に添加し、溶融混練する方法(マスターバッチペレット法)等が挙げられる。特に繊維状成分を配合する場合には、繊維状成分の折損を抑制するために、熱可塑性樹脂、表面被覆フィラー及びその他必要な添加剤を押出機の供給口から投入し、サイドフィーダーを用いて押出機へ充填剤を供給することにより有機無機複合組成物を製造する方法が好ましい。
本実施形態の有機無機複合組成物は、各種成形体に成形して使用できる。成形方法としては、特に限定されず、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法を用いることができる。
本実施形態の有機無機複合組成物は、熱伝導性、流動性に優れ、かつ容易に成形することができるため、様々な用途の成形体として使用可能である。例えば、発光ダイオード等の電子部品、ノートパソコン等の携帯型コンピューター、PDA、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯型音楽プレーヤー、携帯型TV/ビデオ機器、携帯型ビデオカメラ、等の小型或いは携帯型電子機器類の筐体・部品・基盤、ハウジング、外装材用樹脂、自動車や電車等におけるバッテリー周辺用樹脂、家電機器の携帯バッテリー用樹脂、ブレーカー等の配電部品用樹脂、モーター等の封止用材料に代表される工業部品として好適に使用できる。
以下、実施例及び比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。まず、実施例及び比較例で使用した成分や評価方法を以下に示す。
使用した成分
(樹脂成分)
ポリオキシメチレン樹脂:
旭化成ケミカルズ社より入手可能な下記グレードを用いた。
・商品名「テナックTM 3520」(以下、単にPOM1と略記する。)
MFR(ISO 1133 A法に準拠 190℃,2.16kg荷重)=3g/10分、比重1.41g/cm3
・商品名「テナックTM 4520」(以下、単にPOM2と略記する。)
MFR(190℃,2.16kg荷重)=9g/10分、比重1.41g/cm3
・商品名「テナックTM 8520」(以下、単にPOM3と略記する。)
MFR(190℃,2.16kg荷重)=45g/10分、比重1.41g/cm3
変性ポリフェニレンエーテル樹脂:
旭化成ケミカルズ社より入手可能な下記グレードを用いた。
・商品名「ザイロンTM 1000H」(以下、単にPPEと略記する。)
MFR(250℃,98N)=9.40g/10分、比重1.07g/cm3
ポリアミド樹脂:
旭化成ケミカルズ社より入手可能な下記グレードを用いた。
・商品名「レオナTM 8000」(以下、単にPAと略記する。)
融点220℃、比重1.15g/cm3
融点は示差走査熱量(DSC)測定によって求めた。
(フィラー)
透過型電子顕微鏡によりフィラー粒子を撮像し、その長径(粒子の最も長い部分の径)と短径(粒子の最も短い部分の径)を求めた。100個のフィラー粒子についてそれぞれ長径と短径を求め、それらの算術平均値である真球度(長径/短径比)が0.6〜1.0の範囲にあるものを「球状」とし、そうでないものを「非球状」とした。
(B−1)球状フィラー
シリカとして、マイクロン社より入手可能な以下のグレードを用いた。
・商品名「シリカHS−102」(以下、単にSと略記する。)
平均粒子径D90=50μm、比重=2.2g/cm3、比表面積=1.5m2/g
アルミナとして、マイクロン社より入手可能な以下のグレードを用いた。
・商品名「アルミナ AX−116」(以下、単にAと略記する。)
平均粒子径D90=55μm、比重=4.0g/cm3、比表面積=0.13m2/g
フィラーの平均粒子径(D90)は島津製作所社製、ナノ粒子径分布測定装置「SALD−7100」を用いて、算出した。キシレンをキャリア液とし、1分間の超音波照射を行い、分散させたのち、レーザ回折・散乱法で測定して算出(体積平均径)した。
(B−2)非球状フィラー:
日本黒鉛社より入手可能な下記グレードの黒鉛を用いた。
・商品名「黒鉛F#3」(以下、単にF−1と略記する。)
平均粒子径D90=80μm、比重2.2g/cm3
ティムカル・グラファイト・アンド・カーボン社より入手可能な下記グレードの黒鉛を用いた。
・商品名「KS 5−44」(以下、単にF−2と略記する。)
平均粒子径D90=53μm、比重2.2g/cm3
・商品名「SFG−44」(以下、単にF−3と略記する。)
平均粒子径D90=49μm、比重2.2g/cm3
トクヤマ社より入手可能な下記グレードの窒化アルミニウムを用いた。
・商品名「Hグレード」(高純度窒化アルミニウム粉末;以下、単にF−4と略記する。)
平均粒子径D90=3.0μm 、比重3.3g/cm3、BET比表面積=2.5m2/g、なおBET比表面積は、JIS K6217に準拠し、窒素吸着量からBET式により求めた。
フジメタル工業社より入手可能な下記グレードのSn/Bi系低融点合金を用いた。
・商品名「低融点合金No.9」(Sn/Bi系低融点合金;以下、単にF−5と略記する。)
比重8.72g/cm3、融点=200℃
使用したフィラーの平均粒子径(D90)は島津製作所社製、ナノ粒子径分布測定装置「SALD−7100」を用いて、算出した。キシレンをキャリア液とし、1分間の超音波照射によって分散させたのち、レーザ回折・散乱法で測定して算出した。
(フィラーの表面処理−1)
「アデカレジンEP−4100」(アデカ社製;ビスフェノールF型エポキシ樹脂)とジアミノジフェニルメタン(和光純薬社製)を、エポキシ価とアミン価が等量となるように混合し、テトラヒドロフラン(THF)に溶解させてエポキシ溶液を得た。フィラーとエポキシ溶液をフィラー/エポキシ溶液=1.8〜300(体積比)となるように混合・攪拌を行い、スラリー状物質(スラリーB)を得た。得られたスラリーBを室温下で十分に乾燥させ、さらに150℃の揮発炉で5時間の減圧乾燥を行い、フィラーのエポキシ処理品を得た。得られたフィラーエポキシ処理品は、TGA分析の結果、0.3〜3.0質量%エポキシで表面処理されていた。上記処理方法を「処理−1」とする。なお、TGA分析は、窒素雰囲気下で、室温から300℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、その後300℃を3時間保持した条件にて行った。
(フィラーの表面処理−2)
25%アンモニア水溶液(和光純薬社製)1gに精製水(和光純薬社製、TOC測定用)49gを加え、さらに和光純薬社製エタノール30gを加え攪拌し、30分静置し、アンモニア/エタノール水溶液を得た。アンモニア/エタノール水溶液に「KBE−04」(シランカップリング剤、信越化学社製;テトラエトキシシラン)を6:1の重量比で混合・攪拌し、シロキサン水溶液を得た。次に、フィラーとシロキサン水溶液を、フィラー/シロキサン水溶液=1.0〜2.5(体積比)の割合で混合、攪拌を行い、スラリー状物質(スラリーA)を得た。得られたスラリーAを室温下で十分に乾燥させ、さらに150℃の揮発炉で5時間の減圧乾燥を行い、フィラーのシロキサン処理品を得た。得られたフィラーのシロキサン処理品は、TGA分析の結果、0.1〜1.0質量%シロキサンで表面処理されていた。上記処理方法を「処理−2」とする。
<有機無機複合組成物の製造>
上流側と下流側に1か所ずつ供給口を有する、L/D比=58.4(バレル数:13)の2軸押出機(東芝機械社製、「TEM48−SS」)を用い、シリンダー温度を各樹脂の融点より50℃高い温度に設定し、スクリュー回転数400rpm、押出量200kg/hで押出を行った。この際、上流側供給口より、各熱可塑性樹脂とその他添加剤の混合物を、下流側供給口よりフィラー・球状粒子を供給し、有機無機複合組成物のペレットを得た。
<曲げ弾性率の評価方法>
実施例及び比較例の有機無機複合組成物を用いて、射出成形機(東芝機械社製、「EC75NII」)により、シリンダー温度を205℃、金型温度を90℃に設定し、射出時間35秒、冷却15秒の射出条件でISO294−1に準拠した多目的試験片を作製した。その他の条件は、ISO9988−2に準拠した。得られた多目的試験片を用いて、ISO178に準拠して曲げ弾性率を測定した。
<熱伝導率>
射出成形機(東芝機械社製、「EC75NII」)を用いて、シリンダー温度を各樹脂の融点より50℃高い温度に設定し、金型温度を90℃に設定し、射出時間35秒、冷却15秒の射出条件でISO294−1に準拠した多目的試験片を作製した。その他の条件は、ISO9988−2に準拠した。得られた多目的試験片の小片を切り取り、熱プレスした試験片を作製した。薄片状の試験片を試料とし、パーキンエルマー社製「DSC 8500」を用いて比熱(J/gk)の測定を行った。また、得られた多目的試験片を用いて、ISO1183のA法(水中置換法)に準拠し、試験片の密度(g/cm3)を測定した。そして、薄片状の試験片を試料とし、アイフェイズモバイル社製「アイフェイズモバイル1u型」を用いて、熱拡散率(m2/s)及び熱伝導率(W/m・K)の測定を行った。
<固化押出品のミクロボイドの発生の有無>
実施例及び比較例の有機無機複合組成物の製造により得られたペレットを、引き取り装置と、押出機ダイ部に水冷ゾーンを有した30mm単軸固化押出成形機のシリンダー温度各樹脂の融点より50℃高い温度に設定し、直径100mmの丸棒を固化押出した。この際、押出成形体のヒケと、ミクロボイドの発生を抑制するため、押出速度が3mm/分となるよう、引き取り装置をダイ側に向かって駆動させた。得られた、丸棒の断面を切出し、その断面を観察し、ミクロボイドの有無を確認した。ミクロボイドが観察されたものについては、そのボイドが発生している領域の大きさを測定し、発生領域の直径で数値として表した。
[実施例1、2、参考例3,比較例1〜2]
各成分を表1に示す割合で配合し、溶融混練を行い、有機無機複合組成物のペレットを
得た。そして、得られたペレットを用いて各種物性を評価した。実施例2と比較例1を対
比すると、一定の樹脂の体積中にフィラーが存在しないと、熱伝導性が著しく悪化するこ
とが分かった。一方、比較例2ではミクロボイドが発生し、多目的試験片を成形できなか
った。
一例として、図1及び図2に、実施例2における有機無機複合組成物のペレットをRIGAKU社製「Nano3DX」で観察した際の撮像写真を示す。図1は、実施例2において作製したペレットの高分解能3DX線顕微鏡によるXZ平面方向からの撮像写真であり、図2は、実施例2において作製したペレットの高分解能3DX線顕微鏡によるXY平面方向からの撮像写真である。写真の白色部分が球状粒子「S」であり、黒色部分がフィラー「F−1」である。フィラー同士が直接接触していることが観察され、また多方向にフィラーが配向していることが分かる。
[参考例4、5、実施例6〜9、比較例3]
各成分を表2に示す割合で配合し、溶融混練を行い、有機無機複合組成物のペレットを
得て、得られたペレットを用い、各種物性を評価した。参考例4、参考例5、実施例6、比較例3を対比させると表面処理方法によってフィラー表面の親和性が変化し、熱伝導性に差が生じることが少なくとも確認できた。実施例2、実施例7、及び実施例8を対比することで、樹脂の流動性を向上させることにより、熱伝導性が向上しやすいことが少なくとも確認できた。
[実施例10〜14、比較例4〜8]
各成分を表3に示す割合で配合し、溶融混練を行い、有機無機複合組成物ペレットを得て、得られたペレットを用い、各種物性を評価した。実施例10、実施例11、及び実施例12を比較するとフィラーを変化しても熱伝導性は良好であり、かつ機械的強度も向上していることが確認できた。また、実施例13、実施例14からは、POM以外の樹脂を用いても熱伝導性や機械的強度の向上が確認できた。一方、比較例4及び比較例5では樹脂成分が分解し、成形することは困難であった。