以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図7を参照して、本発明の第1実施形態によるオイルポンプ100の構成について説明する。なお、図1および図2では、オイルポンプ100を構成する主な構成要素に対して符号を付しており、図3〜図7において、オイルポンプ100の詳細な構成(構造)に対して符号を付している。
本発明の第1実施形態によるオイルポンプ100は、図1に示すように、インナロータ10と、アウタロータ20と、インナロータ10およびアウタロータ20を接続する6個のベーン30とを備えている。また、オイルポンプ100は、図2に示すように、環状のアウタロータ20を矢印P2方向に回転可能に収容する鉄系の金属材料からなるハウジング40と、ハウジング40が移動可能(Y方向)に収容されるアルミニウム合金製のケーシング50とを備えている。なお、図1では、オイルポンプ100の内部構造を示すために、アウタロータ20を収容するハウジング40およびケーシング50(図2参照)の図示を省略している。また、オイルポンプ100は、たとえば、図示しない内燃機関(エンジン)などに搭載されるように構成されており、この場合、オイルパン内のオイル(潤滑油)1(図2参照)をピストンまわりやクランクシャフトなどの可動部(摺動部)に供給する機能を有している。
また、図2に示すように、オイルポンプ100は、オイル1を吸い込む吸込ポート91およびオイル1を吐出する吐出ポート92を備えている。吸込ポート91および吐出ポート92は、ハウジング40の背後(紙面奥側)においてケーシング50に形成されている。また、オイルポンプ100は、ケーシング50に紙面手前側から被せられる図示しないカバーを備えている。これにより、カバーにより閉じられたケーシング50内に、インナロータ10、アウタロータ20および6個のベーン30によって各々囲まれた6個の容積室61が形成されるように構成されている。ここで、各々の容積室61は、容積V1を有している。また、後述するが、容積V1は、オイルポンプ100の動作時にベーン30の伸縮(スライド移動)に伴う容積室61の形状の変化(拡大および縮小)に応じて増減されるように構成されている。なお、容積室61は、本発明の「第1容積変化部」の一例である。また、容積V1は、本発明の「第1容積」の一例である。なお、オイルポンプ100の動作については、後程、詳細に説明する。
鉄系の金属材料からなるインナロータ10は、図1および図2に示すように、回転中心Rとなる中心部に軸穴11を有している。また、軸穴11に図示しない駆動軸が接続されることによって、インナロータ10は、回転中心Rの位置が固定された状態で一方方向(矢印P2方向)に回転される。ここで、オイルポンプ100では、内燃機関(エンジン)のクランクシャフトがインナロータ10の駆動源として用いられている。また、インナロータ10は、インナロータ10の外周部に沿って設けられたベーン収容部12を有している。
ベーン収容部12は、インナロータ10の外周部から軸穴11(回転中心R)に向かって半径方向に延びる6個の凹部12aを有している。なお、ここに記載する「半径方向」とは、インナロータ10が回転中心Rまわりに回転される際の回転半径に沿った方向のことを示す。また、各々の凹部12aは、半径方向に所定の深さを有しており、凹部12aは、軸穴11を中心にして互いに等角度間隔(60度間隔)を有して配置されている。また、凹部12aは、インナロータ10の一方側(X2側)の端面から他方側(X1側)の端面までX方向に沿って溝状に延びている。また、ベーン30を摺動可能に挟み込む凹部12aのX方向に延びる一方側の内壁面から対向する他方側の内壁面までの幅W(図7参照)は、一定である。また、インナロータ10は、X方向に所定のロータ幅L(図1参照)を有している。なお、ロータ幅Lは、アウタロータ20およびハウジング40のX方向の長さ(幅)と同じである。
アルミニウム合金製のアウタロータ20は、図2に示すように、6個のアウタロータ片21を有している。また、個々のアウタロータ片21は、周状に順次接続(係合)されるように構成されている。これにより、アウタロータ20は、アウタロータ片21がハウジング40の内周面40aに沿って円環状に繋げられた状態でハウジング40に対して矢印P2方向に回転されるように構成されている。
また、アウタロータ片21は、図3に示すように、各々が部分円弧状に形成された第1係合片部21aと第2係合片部21bと第3係合片部21cと第4係合片部21dとを含んでいる。また、アウタロータ片21は、軸方向(X方向)に延びる基部21eをさらに含んでおり、第1係合片部21aおよび第4係合片部21dのP2側において軸方向(X方向)に延びる根元部が、基部21eにP1側から接続されている。また、第2係合片部21bおよび第3係合片部21cのP1側において軸方向(X方向)に延びる根元部が、基部21eにP2側から接続されている。ここで、本明細書では、P1側およびP2側は、それぞれ、アウタロータ片21における周方向の一方側および他方側に対応している。したがって、アウタロータ片21は、第1係合片部21a〜第4係合片部21dが基部21eを中心として周方向(P1側およびP2側)に円弧状の翼を広げた形状を有する一体構造部品である。なお、基部21eは、本発明の「ベーン連結部」の一例である。
また、1つのアウタロータ片21を図3における上方(Z2側)から矢印Z1方向に沿って見た場合、図4に示すように、基部21eを中心として互いに対角関係に配置された第1係合片部21aおよび第3係合片部21cは、アウタロータ片21における半径方向の外側(紙面手前側)に配置されている。これに対して、互いに対角関係に配置された第2係合片部21bおよび第4係合片部21dは、第1係合片部21aおよび第3係合片部21cに対して相対的に半径方向の内側(紙面奥側)に配置されている。したがって、第1係合片部21a〜第4係合片部21dは、この順に、半径方向の外側、内側、外側、内側のように、半径方向に沿って互い違い(段違い)の関係を有するように配置されている。また、図2に示すように、第1係合片部21aおよび第3係合片部21cの各々の外側表面3が、ハウジング40の内周面40aに対して油膜1aを介して周方向(矢印P方向)に摺動するように構成されている。
また、図5に示すように、第1係合片部21a〜第4係合片部21dが段違い構造を有するアウタロータ片21を繋げた場合、P2側のアウタロータ片21の第1係合片部21aは、P1側のアウタロータ片21の第2係合片部21bに対して半径方向外側(紙面手前側)から覆い被さるようにして係合される。また、P2側のアウタロータ片21の第4係合片部21dは、P1側のアウタロータ片21の第3係合片部21cに対して半径方向内側(紙面奥側)に潜り込むようにして係合される。すなわち、相対的にP2側の第1係合片部21aの半径方向内側の内側表面2と、相対的にP1方向に隣接する第2係合片部21bの半径方向外側の外側表面3とが当接(面接触)する。また、相対的にP2側の第4係合片部21dの半径方向外側の外側表面3と、相対的にP1方向に隣接する第3係合片部21cの半径方向内側の内側表面2とが当接(面接触)する。
したがって、図5および図6に示すように、P2側のアウタロータ片21における第1係合片部21aおよび第4係合片部21dと、このアウタロータ片21に対してP1側に隣接するアウタロータ片21における第2係合片部21bおよび第3係合片部21cとは、ロータ幅方向(X方向)に沿って互い違いに組み合わされる。そして、P2側の第1係合片部21aおよび第4係合片部21dと、P1側の第2係合片部21bおよび第3係合片部21cとにおける各々の内側表面2と外側表面3との係合が、P方向に沿って隣接するアウタロータ片21に順次繰り返される。このようにして6個のアウタロータ片21が円環状(円周状)に繋げられてアウタロータ20(図2参照)が構成されている。
また、第1係合片部21a〜第4係合片部21dは、部分円弧状に形成されているので、隣接するアウタロータ片21同士の周方向(矢印P方向)の重なりしろ(係合面積)は、所定範囲(各片部の周方向の長さの範囲)内で矢印P1方向または矢印P2方向に沿って増減可能に構成されている。なお、図6は、互いに隣接するアウタロータ片21をインナロータ10(図2参照)が配置される側から見ている。したがって、ハウジング40(図2参照)内に組み込まれたアウタロータ20は、隣接するアウタロータ片21同士が所定範囲内で周方向(矢印P方向)の距離(係合面積)を増加または減少させながらも、互いの係合状態が維持されるように構成されている。
ここで、第1実施形態では、互いに矢印P方向に隣接するアウタロータ片21間において、以下に説明する係合空間5〜8がそれぞれ形成されるように構成されている。
具体的には、図5および図6に示すように、まず、1つのアウタロータ片21におけるP2側の第1係合片部21aと、P1側に隣接するアウタロータ片21の第2係合片部21bとの係合によって、第2係合片部21bの外側表面3側に容積を増減(伸縮)可能とする1つの係合空間5が形成される。係合空間5は、第2係合片部21bの外側表面3とこれに対向するハウジング40の内周面40a(図2参照)との間に形成される空間である。また、係合空間5は、図7に示すように、隣接する2つのベーン30のうちP1側(一方側)に位置している。また、これと同時に、第1係合片部21aの内側表面2側に容積を増減(伸縮)可能とする1つの係合空間6が形成される。係合空間6は、インナロータ10(図2参照)側に直接的に露出する空間である。また、係合空間6は、隣接する2つのベーン30のうちP2側(他方側)に位置している。なお、係合空間5および6は、それぞれ、本発明の「第1係合空間」および「第2係合空間」の一例である。
また、基部21eと第2係合片部21bとの接続部には、1つの切欠部21fが形成されている。切欠部21fは、基部21eの一方側(X2側)の端部から軸方向(X方向)に所定の長さ(深さ)を有して第2係合片部21bの一部を厚み方向に沿って溝状に切り欠いている。これにより、第2係合片部21bの内側表面2側と外側表面3側とが連通されている。これにより、第1実施形態では、図7に示すように、アウタロータ20の外側表面3側に位置する係合空間5と、インナロータ10、アウタロータ20および隣接する2個のベーン30によって囲まれた容積室61とが、切欠部21fを介して連通されるように構成されている。なお、切欠部21fの容積は、オイル1の流動が容易に行われる範囲において係合空間5に対して極力小さいのが好ましい。なお、切欠部21fは、本発明の「溝部」の一例である。
また、アウタロータ20には、類似の構成がもう一つ存在する。図5および図6に示すように、1つのアウタロータ片21におけるP2側の第4係合片部21dと、P1方向に隣接するアウタロータ片21の第3係合片部21cとの係合によって、第4係合片部21dの外側表面3側に容積を増減(伸縮)可能とする1つの係合空間7が形成される。係合空間7は、第4係合片部21dの外側表面3とこれに対向するハウジング40の内周面40a(図2参照)との間に形成される空間である。また、係合空間7は、図7に示すように、隣接する2つのベーン30のうちP2側(他方側)に位置している。また、これと同時に、第3係合片部21cの内側表面2側に容積を増減(伸縮)可能とする1つの係合空間8が形成される。係合空間8は、インナロータ10側に直接的に露出する空間である。また、係合空間8は、隣接する2つのベーン30のうちP1側(一方側)に位置する。なお、係合空間7および8は、それぞれ、本発明の「第2係合空間」および「第1係合空間」の一例である。
また、第1係合片部21aと第4係合片部21dとが軸方向(X方向)に対向する端部には、周方向(P方向)に沿ってP1側の端部から基部21eまで延びる1つの切欠部21gが形成されている。また、切欠部21gは、X方向に所定の幅を有した状態で第4係合片部21dの一部を厚み方向に沿って溝状に切り欠いている。これにより、第1係合片部21aの内側表面2側と第4係合片部21dの外側表面3側とが連通されている。これにより、第1実施形態では、図6に示すように、アウタロータ20の外側表面3側に位置する係合空間7と、インナロータ10、アウタロータ20および隣接する2個のベーン30によって囲まれた容積室61(図7参照)とが、切欠部21gを介して連通されるように構成されている。なお、切欠部21gの容積は、オイル1の流動が容易に行われる範囲において係合空間7に対して極力小さいのが好ましい。なお、切欠部21gは、本発明の「溝部」の一例である。
なお、図6からも明らかなように、係合空間6および8はアウタロータ20の回転半径方向の内側表面2側に配置されているので、係合空間6および8は、実質的に容積室61(図7参照)に接続(連通)されている。
また、上記した係合空間5、6、7および8によって、互いに係合するアウタロータ片21間に容積V2を有する1つの容積室62が形成されるように構成されている。すなわち、係合空間5〜8の合計容積が、容積V2に相当する。なお、係合空間6および8は、実質的に容積室61に連通しているが、ここでは、アウタロータ20側に形成される増減可能な係合空間として容積室61とは区別して記載している。また、容積室62は、隣接するアウタロータ片21同士の周方向(矢印P方向)の重なりしろ(係合面積)が所定範囲内で増減されるのに伴って係合空間5〜8の各容積の増減動作が同期されるように構成されている。すなわち、隣接するアウタロータ片21が互いに離れる方向に変位された場合には重なりしろが少なくなり、係合空間5〜8を伴う容積V2は単調に増加される。また、隣接するアウタロータ片21が互いに近づく方向に変位された場合には重なりしろが多くなり、係合空間5〜8を伴う容積V2は単調に減少される。また、この係合空間5〜8の各容積の増減動作が、後述するアウタロータ20のポンプ機能を担う。なお、容積室62は、本発明の「第2容積変化部」の一例である。また、容積V2は、本発明の「第2容積」の一例である。
また、図3に示すように、アウタロータ片21の基部21eには、所定の内径を有するとともに半径方向内側の一部が部分円弧状(C字状)に切り欠かれた係合部21hが形成されている。また、図4に示すように、係合部21hは、基部21eの軸方向に沿った一方側(X2側)の端部から他方側(X1側)の端部にわたって直線状に延びており、係合部21hは、基部21eを軸方向(X方向)に貫通している。すなわち、係合部21hのX方向の長さは、ベーン30の幅(インナロータ10のロータ幅L)に等しい。なお、係合部21hは、本発明の「ベーン連結部」の一例である。
また、図3および図4に示すように、アウタロータ片21の半径方向外側の外側表面3に関して、第1係合片部21aの基部21eとは反対側(P1側)の側端部21j、第3係合片部21cの基部21eとは反対側(P2側)の側端部21kおよび基部21eのP2側の側端部21mは、それぞれ、半径方向の厚みを小さくして若干先細る形状を有している。これにより、6個のアウタロータ片21が組み合わされたアウタロータ20がハウジング40の内周面40aに沿って回転する際に、アウタロータ20の外表面20aとハウジング40の内周面40aとの僅かな隙間にオイル1(図2参照)が容易に引き込まれる。したがって、第1実施形態では、図2および図7に示すように、アウタロータ20の外表面20aに薄い油膜1aが形成された状態でアウタロータ20がハウジング40内で回転されるように構成されている。
アルミニウム合金製のベーン30は、図7に示すように、基部31と、先端部32とを有している。基部31は、先端部32側に厚みDを小さくして若干くびれた部分を有しており、このくびれた部分の先に先端部32が一体的に接続されている。また、基部31は、根元部31aを有している。また、ベーン30は、根元部31a側からインナロータ10の凹部12a(ベーン収容部12)に挿入されるように構成されている。なお、基部31は、本発明の「ベーン収容部に収容される部分」の一例である。
ここで、第1実施形態では、基部31の厚みDは半径方向(ベーン30の移動方向)に沿って一定である。また、凹部12aの幅Wは、基部31の厚みDよりも微小量だけ大きく形成されており、基部31のX方向に延びる外側面が、凹部12aのX方向に延びる内側面に対して回転半径方向に沿って滑らかに摺動(スライド移動)するように構成されている。すなわち、複数のベーン30は、インナロータ10の回転方向となる周方向(矢印P方向)には揺動せずに、先端部32が凹部12aに対して半径方向外側に飛び出る動作と、その反対となる根元部31aが凹部12aに向かって半径方向内側に引き込まれる動作とを伴うようなスライド移動動作が可能なように、インナロータ10のベーン収容部12の凹部12aに取り付けられている。
また、第1実施形態では、凹部12aとベーン30の根元部31aとによって、インナロータ10のベーン収容部12に容積V3を有する1つの容積室63が形成されるように構成されている。また、ベーン30が凹部12aに対して出没自在にスライド移動されるのに伴って、容積室63の容積V3が増減されるように構成されている。つまり、ベーン30(先端部32)が凹部12aから飛び出す際に容積V3が増加されるとともに、ベーン30(根元部31a)が凹部12aに引き込まれる際に容積V3が減少される。なお、容積室63は、本発明の「第3容積変化部」の一例である。なお、容積V3は、本発明の「第3容積」の一例である。
また、ベーン30における先端部32は、丸みを帯びており、先端部32は、アウタロータ片21の基部21eに形成されている係合部21hに嵌め込まれるように構成されている。なお、係合部21hの断面積は、先端部32の断面積よりも微小量だけ大きく形成されており、先端部32の外周面が係合部21hの内周面に対して若干の空隙を有して連結(係合)されるように構成されている。これにより、ベーン30は、ベーン30とアウタロータ片21との連結角度に拘束されずにインナロータ10の凹部12aに対して半径方向にスライド移動することが可能に構成されている。また、円環状に繋げられたアウタロータ片21側においても、ベーン30との連結角度に拘束されることなく全体として環状形状を保ったままハウジング40内を回転することが可能とされている。
また、インナロータ10の内部には、凹部12aとベーン30の根元部31aとによって形成される容積室63と、インナロータ10、アウタロータ20および隣接する2個のベーン30によって囲まれた容積室61とを連通させるための連通路13(図2に破線で示す)が形成されている。これにより、第1実施形態では、隣接するベーン30間に位置する1つの容積室61と、この部分において周方向(矢印P方向)に係合されたアウタロータ片21間に形成される容積室62と、容積室61近傍の容積室63とが、互いに連通されるように構成されている。すなわち、これらの容積室61〜63が一組となった容積室がインナロータ10まわりに互いに区画された状態で6個形成されるように構成されている。
インナロータ10、アウタロータ20およびベーン30が上記のように構成されることによって、オイルポンプ100では、各々の部品が以下のようにして組み込まれる。すなわち、図2に示すように、インナロータ10および6個のアウタロータ片21が環状に繋げられたアウタロータ20が共にハウジング40内に配置された状態で、ベーン30の基部31がインナロータ10の凹部12a(ベーン収容部12)にX方向に沿ってスライド挿入されるとともに、ベーン30の先端部32がアウタロータ片21の係合部21hにX方向に沿って嵌め込まれる。また、6個のベーン30が同様に嵌め込まれてインナロータ10とアウタロータ20とがベーン30を介して接続される。その後、図示しないカバーが被せられてケーシング50が閉じられる。そして、駆動源(クランクシャフト)によりインナロータ10が矢印P2方向に回転された場合、6個のベーン30を介してアウタロータ20もインナロータ10と同じ矢印P2方向に回転されるように構成されている。
なお、図2では、インナロータ10の回転中心Rとアウタロータ20の回転中心Uとが完全に一致した状態を示している。この場合、各ベーン30は、先端部32が凹部12a(ベーン収容部12)から同じ量だけアウタロータ片21側に突出している。したがって、インナロータ10を回転させても各ベーン30は同じ突出量のまま回転移動されてアウタロータ20を連れ回りさせるにとどまるので、オイルポンプ100には後述するようなポンプ機能は発揮されない。
また、アウタロータ20を保持するハウジング40がY方向(矢印Y1方向または矢印Y2方向)に所定量だけ移動される。これにより、アウタロータ20の回転中心Uは、インナロータ10の回転中心Rに対して相対的に横方向(矢印Y1方向または矢印Y2方向)に偏心されるように構成されている。この場合、個々のベーン30は、図7に示すように、矢印P2方向に沿った回転位置ごとに、先端部32が凹部12a(ベーン収容部12)から偏心に応じた量だけアウタロータ片21側に突出される。したがって、インナロータ10の回転とともに個々のベーン30が凹部12aに対して出没しながら回転移動されてアウタロータ20を連れ回りさせる。これにより、オイルポンプ100は、ポンプ機能を有して動作されるように構成されている。
次に、図2および図6〜図9を参照して、第1実施形態におけるオイルポンプ100の動作について説明する。
まず、図2に示すように、インナロータ10が矢印P2方向に回転された場合、6個のベーン30を介してアウタロータ20もインナロータ10と同じ矢印P2方向に回転される。その後、所定の制御動作に基づき、図8に示すように、アウタロータ20を保持するハウジング40が矢印Y1方向に移動されることにより、インナロータ10の回転中心Rに対してアウタロータ20の回転中心Uが横方向(Y1方向)に偏心される。
ここで、第1実施形態では、アウタロータ20がインナロータ10対して所定の偏心量を有して矢印P2方向に回転された場合、この偏心量に応じて、容積室61、62および63が各々の形状(容積)を変化させながらポンプ機能を担うように動作される。すなわち、オイルポンプ100では、アウタロータ20のインナロータ10に対する偏心量に応じて容積室61の容積V1、容積室62の容積V2および容積室63の容積V3をそれぞれ変化(増減)させてポンプ機能を発揮する動作が行われる。
個別に説明すると、まず、容積室61は、アウタロータ20のインナロータ10に対する偏心量に応じてベーン30の半径方向外側の先端部32(図7参照)の半径方向のスライド位置がアウタロータ20の回転移動に伴って変化することにより、容積V1を増減させる動作を繰り返す。具体的には、図8および図9に示すように、各容積室61がケーシング50における吸込ポート91(図8参照)付近を矢印P2方向に順次通過するのに伴って、ベーン30は、半径方向に沿って凹部12a(図7参照)から徐々に先端部32(図7参照)の突出量を増やす。また、先端部32の突出に伴い、1つの容積室61をとり囲む隣接するアウタロータ片21間の周方向(矢印P方向)の距離が徐々に大きくなる。これにより、容積室61の容積V1は、徐々に大きくなる。また、各容積室61がケーシング50における吐出ポート92(図8参照)付近を矢印P2方向に順次通過するのに伴って、ベーン30は、半径方向に沿って凹部12a(図7参照)に対して徐々に根元部31a(図7参照)の挿入量を増やす。また、根元部31aの挿入に伴い、1つの容積室61をとり囲む隣接するアウタロータ片21間の周方向(矢印P方向)の距離が徐々に小さくなる。これにより、容積室61の容積V1は、徐々に小さくなる。
また、容積室62は、アウタロータ20のインナロータ10に対する偏心量に応じてベーン30の半径方向外側の先端部32の半径方向のスライド位置がアウタロータ20の回転移動に伴って変化することにより、容積V2を増減させる動作を繰り返す。具体的には、各容積室62が吸込ポート91(図8参照)付近を矢印P2方向に順次通過するのに伴って、ベーン30の突出量の増加とともに、隣接するアウタロータ片21が互いに離れる方向に変位されてアウタロータ片21間の周方向(矢印P方向)の距離が徐々に大きくなる。これにより、係合空間5〜8からなる容積室62の容積V2は、徐々に大きくなる。また、各容積室62が吐出ポート92付近を矢印P2方向に順次通過するのに伴って、ベーン30の挿入量の増加とともに、隣接するアウタロータ片21が互いに近づく方向に変位されてアウタロータ片21間の周方向(矢印P方向)の距離が徐々に小さくなる。これにより、係合空間5〜8からなる容積室62の容積V2は、徐々に小さくなる。
また、容積室63は、アウタロータ20のインナロータ10に対する偏心量に応じて複数のベーン30が半径方向にスライド移動することにより、インナロータ10のベーン収容部12における容積V3を増減させる動作を繰り返す。具体的には、各容積室63が吸込ポート91(図8参照)付近を矢印P2方向に順次通過するのに伴って、ベーン30の突出量の増加とともに、容積室63の容積V3は、徐々に大きくなる。また、各容積室63が吐出ポート92付近を矢印P2方向に順次通過するのに伴って、ベーン30の挿入量の増加とともに、容積室63の容積V3は、徐々に小さくなる。なお、図9は、図8に対してインナロータ10およびアウタロータ20が矢印P2方向に約30度だけ回転された状態を示している。
なお、オイルポンプ100では、隣接するベーン30間に位置する1つの容積室61と、この部分において周方向に係合されたアウタロータ片21間に形成される容積室62(係合空間5〜8)と、容積室61近傍の容積室63とは、上述の切欠部21f(図6参照)、切欠部21g(図6参照)および連通路13(図7参照)により相互に連通されており、かつ、互いに拡大および縮小の動作を同期させている。これにより、吸込ポート91付近を通過する際に流路的に一組となった容積室61〜63は、容積V1と容積V2と容積V3とを共に拡大させながらオイル1を吸い込む。そして、その後、吐出ポート92付近を通過する際に流路的に一組となった容積室61〜63が、容積V1と容積V2と容積V3とを共に縮小させながらオイル1を吐き出す。なお、容積室61〜63が容積的に一体となった拡大および縮小のポンプ動作は、インナロータ10の1回転あたり1回となる。
また、アウタロータ20のインナロータ10に対する偏心量はハウジング40(図2参照)の移動位置によって任意の大きさに調整される。すなわち、偏心量が相対的に小さい場合には、容積室61〜63が容積的に一体となった拡大および縮小のポンプ動作量は相対的に小さく、オイル1の吐出量は相対的に少なくなる。また、偏心量が相対的に大きい場合には、容積室61〜63が容積的に一体となった拡大および縮小のポンプ動作量は相対的に大きく、オイル1の吐出量は相対的に多くなる。
オイルポンプ100では、1回転における一組の容積室61〜63の容積の縮小状態から拡大状態へと向かう動作および拡大状態から縮小状態へと向かう一連の動作が、各容積室の組ごとに60度の位相ずれを伴って順次実施される。これにより、オイル1が吸込ポート91からポンプ本体に吸い込まれるとともに吐出ポート92から吐出される連続的なポンプ動作が実現される。ここで、図示しない駆動源の駆動力は、インナロータ10を回転させ、インナロータ10を回転に伴ってベーン30を介してその外側に環状に接続されたアウタロータ20を回転させる。この際、6個のアウタロータ片21が係合状態を周期的に変化させてアウタロータ20(容積室62)にポンプ動作を発生させる。また、駆動源の駆動力は、インナロータ10とアウタロータ20とを連れ回りさせる際に、アウタロータ20のインナロータ10に対する偏心状態に基づいてベーン30をスライド(往復)移動させる。この際、ベーン30の単なる往復移動のみならず、ベーン収容部12の凹部12a内にも容積室63を拡大および縮小させるポンプ動作を発生させる。
このように、オイルポンプ100では、ハウジング40内に内在しインナロータ10の回転とともに変形する可動部(空間部:容積室61〜63)の変形運動をポンプ動作にすべて転換している。この際、基部31が細められず一定の厚みDを有するベーン30が用いられるので、容積室63が容積V3を減少させる過程で容積室61に容積室63とは反対の容積V1を増加させるようなマイナス要因も発生せず、容積室61〜63の同期の取れた容積変化をオイルポンプ100全体のポンプ動作に有効に作用させている。また、上述の通り、可動部(容積室61〜63)の変形運動にはインナロータ10に入力される駆動源の駆動力が利用される。したがって、オイルポンプ100では、容積室61〜63が一体となって動作される仕組みが、駆動源の駆動力を可能な限りポンプ動作に転換してオイル1を吐出することに寄与している。特に、容積室61のみならず容積室62および63の変形運動までもがポンプ動作に組み込まれているので、容積室61の容積V1に容積室62の容積V2および容積室63の容積V3が有効に加算される。このことは、単位回転あたりのオイル1の正味吐出量が増加されることを意味する。オイルポンプ100は、上記のように構成されている。
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、第1実施形態では、上記のように、6個のベーン30の各々が半径方向にスライド移動可能に収容されるベーン収容部12(6個の凹部12a)を含むインナロータ10と、6個のベーン30の各々の半径方向外側の先端部32が連結される6箇所の基部21eを含むアウタロータ20と、インナロータ10のアウタロータ20に対する偏心量に応じて容積V1が変化することによりポンプ機能を有する容積室61と、アウタロータ20に設けられ、インナロータ10のアウタロータ20に対する偏心に応じて隣接する基部21e間の周方向の距離が変化することにより、容積V2が変化することによってポンプ機能を有する容積室62とを備えることによって、ベーン30によって互いに仕切られた容積室61の高効率なポンプ動作に加えて、アウタロータ20に新たに設けられた容積室62のポンプ動作も有効に利用することができる。これにより、オイルポンプ100における単位回転あたりのオイル1の正味吐出量を十分に増加させることができる。その結果、オイルポンプ100のポンプ効率を向上させることができる。
また、第1実施形態では、オイル1の吐出量が効率よく確保される容積室61に、アウタロータ20側の容積室62のポンプ動作が加算される分、オイル1の吐出量を効率よく増加させることができる。したがって、同一吐出量で比較した場合には、ロータ幅L(図1参照)を短くするなどしてオイルポンプ100を小型化することができるので、内燃機関(エンジン)などへのオイルポンプ100の搭載性を向上させることができる。また、オイルポンプ100が小型化されることによってオイルポンプ100の駆動時のメカニカルロス(機械損失)を低減することができるので、オイルポンプ100を駆動する駆動源の負荷が低減されて省エネルギー化を図ることができる。
また、第1実施形態では、インナロータ10のアウタロータ20に対する偏心量に応じて複数のベーン30が半径方向にスライド移動することにより、インナロータ10のベーン収容部12における容積V3が変化することによってポンプ機能を有する容積室63をさらに備える。これにより、容積室61および容積室62が有するポンプ動作に加えて、ベーン30がベーン収容部12に対して半径方向に直線的にスライド移動されることによりベーン収容部12における容積室63の容積変化をも看過することなくオイル1を吸い込み吐き出すポンプ動作に組み入れてオイルポンプ100を構成することができるので、容積室63が有するポンプ動作が有効に加わる分、オイルポンプ100が有する単位回転あたりのオイル1の吐出量をさらに増加させることができる。その結果、オイルポンプ100をより小型化することができる。また、半径方向に直線的にスライド移動されるベーン30を用いるので、ベーン収容部12(凹部12a)に対して出没する個々のベーン30の中間部を細らせる必要もない。したがって、容積室63が容積V3を減少させる方向に容積変化を起こす過程で、容積室63近傍に容積室61側の部分で新たに容積を増加させる(容積室を新たに出現させる)ようなマイナス要因なども発生しないので、容積室61〜63の容積変化をオイルポンプ100全体のポンプ動作に有効に作用させることができる。
また、第1実施形態では、オイル1を吸い込む吸込ポート91およびオイル1を吐出する吐出ポート92をさらに備える。そして、吸込ポート91では、ベーン収容部12に収容されるベーン30が半径方向外側に徐々にスライド移動することにより、インナロータ10のベーン収容部12における容積V3が徐々に大きくなるとともに、吐出ポート92では、ベーン収容部12に収容されるベーン30が半径方向内側に徐々にスライド移動することにより、インナロータ10のベーン収容部12における容積V3が徐々に小さくなるようにオイルポンプ100を構成する。これにより、半径方向外側方向および内側方向へのベーン30の直線的な往復移動とともにベーン収容部12(凹部12a)に出現(増加)と消滅(減少)とを繰り返す容積V3の容積変化をポンプ動作として容易に利用することができる。この際、オイルポンプ100の駆動力(インナロータ10の駆動力)をベーン30のスライド移動に伴う容積室61(容積V1)および容積室62(容積V2)の容積変化のみならず、ベーン30のスライド移動に伴う容積室63(容積V3)の容積変化にも変換することができるので、駆動力が無駄とならずオイルポンプ100の機械効率を向上させることができる。
また、第1実施形態では、ベーン収容部12に収容される基部31のベーン30の厚みDは、一定である。これにより、ベーン収容部12に収容される基部31の厚みDが一定となったベーン30によって、ベーン収容部12においてベーン30をがたつかせずに半径方向に安定的にスライド移動させることができる。また、往復移動時にベーン30ががたつかないので、容積室63が拡大(増加)と縮小(減少)とを繰り返す際の気密性を向上させることができる。これにより、容積室63のポンプ効率を高いレベルに維持することができる。
また、第1実施形態では、容積室62は、インナロータ10のアウタロータ20に対する偏心に応じてベーン30の半径方向外側の先端部32の半径方向のスライド位置が変化することにより、アウタロータ20における複数の基部21e間の周方向の距離が変化することによって、容積室62の容積V2を変化可能に構成する。これにより、ベーン30の半径方向外側の先端部32の半径方向のスライド位置の変位を適切に利用してアウタロータ20における複数の基部21e間の周方向の距離を容易に変化(伸縮)させることができる。これにより、ベーン30の半径方向の駆動力を適切に利用して容積室62にポンプ機能を発揮させることができる。
また、第1実施形態では、アウタロータ20は、複数のベーン30毎に設けられ、基部21eを各々含む複数のアウタロータ片21を含む。そして、隣接するアウタロータ片21が互いの周方向(矢印P方向)の距離を変化可能に係合された状態で、複数のアウタロータ片21を円周状に配置するようにアウタロータ20を構成する。これにより、隣接するアウタロータ片21同士の周方向(矢印P方向)の離合動作(伸縮動作)を適切に利用して、容積室62が拡大と縮小とを繰り返すポンプ機能を発揮させることができる。
また、第1実施形態では、隣接するアウタロータ片21は、容積室62を構成する係合空間5〜8を有した状態で周方向(矢印P方向)に互いに係合するとともに、隣接するアウタロータ片21間の周方向(矢印P方向)の距離が変化することにより、係合空間5〜8の容積V2が変化するようにオイルポンプ100を構成する。これにより、アウタロータ片21同士が係合する際の係合空間5〜8を容積V2として適切に利用して、容積室62に容積V2が拡大と縮小とを繰り返すポンプ機能を発揮させることができる。
また、第1実施形態では、アウタロータ片21は、隣接するアウタロータ片21同士が半径方向に重なり合った状態で周方向に係合可能な第1係合片部21a〜第4係合片部21dを有する。そして、容積室62の一部を構成する係合空間5および6は、第1係合片部21aと第2係合片部21bとの重なり量に応じて周方向の距離が変化されるとともに、容積室62の一部を構成する係合空間7および8は、第3係合片部21cと第4係合片部21dとの重なり量に応じて周方向の距離が変化されることにより、係合空間5〜8を合計した容積V2が変化されるようにアウタロータ20を構成する。これにより、互いに重なり合う第1係合片部21a〜第4係合片部21d間の重なり量に応じて係合空間5〜8の容積V2を容易に増減させることができるので、アウタロータ20(容積室62)にポンプ機能を容易に発揮させることができる。
また、第1実施形態では、容積室62を構成する係合空間5と容積室61とを連通する切欠部21fと、容積室62を構成する係合空間7と容積室61とを連通する切欠部21gとを、1つのアウタロータ片21に設ける。これにより、切欠部21fおよび切欠部21gを介して容積V1を有する容積室61と容積V2を有する容積室62とが互いに連通されるので、容積室の拡大時にオイル1を容積室61と容積室62とに共に吸入することができる。また、容積室の縮小時にオイル1を容積室61と容積室62とから共に吐出することができる。
また、第1実施形態では、隣接する2つのベーン30のうち一方側(図5におけるP1側)に位置する係合空間5および8と、隣接する2つのベーン30のうち他方側(図5におけるP2側)に位置する係合空間6および7とによって一組の係合空間5〜8が構成されるようにアウタロータ20を構成する。これにより、隣接するアウタロータ片21が順次繋げられて全体として円環状(円周状)のアウタロータ20を構成した際に、1つのアウタロータ片21を中心としてたとえば係合空間5および8を介して一方側(P1側)に隣接するアウタロータ片21と容易に係合させることができるとともに、係合空間6および7を介して他方側(P2側)に隣接するアウタロータ片21と容易に係合させることができる。
また、第1実施形態では、吸込ポート91において隣接するアウタロータ片21間の周方向(矢印P方向)の距離が徐々に大きくなることにより容積V2が徐々に大きくなるとともに、吐出ポート92において隣接するアウタロータ片21間の周方向(矢印P方向)の距離が徐々に小さくなることにより容積V2が徐々に小さくなるようにアウタロータ20を構成する。これにより、環状のアウタロータ20が回転する際の各々の容積室62における容積V2の拡大および収縮を、各々の容積室62が吸込ポート91および吐出ポート92を順次通過するタイミングに同期させて行うことができるので、容積室62が有するポンプ機能を有効に発揮させることができる。
また、第1実施形態では、アウタロータ20の外表面20aには、油膜1aが形成されている。これにより、複数の基部21eを含むとともに隣接する基部21e間の周方向の距離を変化させて容積室62の容積V2を変化させる形状変化を伴うようにアウタロータ20を構成した場合であっても、アウタロータ20の外表面20aに油膜1aが形成されているので、このような形状変化を伴う環状のアウタロータ20をオイルポンプ100のハウジング40内で滑らかに回転させることができる。また、この油膜1aによって容積室62の容積V2を滑らかに変化させることができる。
また、第1実施形態では、複数のベーン30は、周方向(矢印P方向)には揺動せずに半径方向にスライド移動可能なようにインナロータ10のベーン収容部12の凹部12aに取り付けられている。これにより、オイルポンプ100の動作時に半径方向に沿った直線的(一次元的)なスライド移動を伴って個々のベーン30をベーン収容部12(凹部12a)に対して出没させることができるので、ベーン収容部12に対して出没するベーン30の基部31を部分的に細らせるなどの特異な形状をベーン30に形成する必要がない。これにより、ベーンの中間部が両端部(先端部および根元部)よりも細められて振り子状に揺動するようなベーンの構成とは異なり、基部31が細められず一定の厚みDを有するベーン30を用いることによりポンプ動作の効率を低下させるような要因を排除することができる。すなわち、容積室61に高効率なポンプ機能をもたらすことができる。
(第2実施形態)
次に、図2および図10〜図14を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態において用いたアウタロータ20(図2参照)とは異なる形状を有するアウタロータ片221を組み合わせて環状のアウタロータ220を構成した例について説明する。なお、図10では、オイルポンプ200を構成する主な構成要素に対して符号を付しており、図11〜図14において、オイルポンプ200の詳細な構成(構造)に対して符号を付している。また、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
本発明の第2実施形態によるオイルポンプ200は、図10に示すように、インナロータ10と、アウタロータ220と、6個のベーン30とを備えている。また、ケーシング50内には、インナロータ10、アウタロータ220および6個のベーン30によって各々囲まれた6個の容積室261が形成される。また、容積室261の容積V1は、オイルポンプ200の動作時にベーン30の伸縮(スライド移動)に伴う容積室261の拡大および縮小に応じて増減される。なお、容積室261は、本発明の「第1容積変化部」の一例である。
ここで、第2実施形態では、アウタロータ220は、周状に順次接続(係合)可能に構成された6個のアウタロータ片221を有している。これにより、アウタロータ220は、アウタロータ片221がハウジング40内で円環状に繋げられた状態でハウジング40に対して矢印P2方向に回転されるように構成されている。
また、図11に示すように、アウタロータ片221は、各々が部分円弧状に形成された第1係合片部221aと第2係合片部221bと第3係合片部221cとを含んでいる。また、アウタロータ片221は、軸方向(X方向)に延びる基部221eをさらに含んでおり、第1係合片部221aおよび第2係合片部221bのP2側において軸方向(X方向)に延びる根元部が、基部221eにP1側から接続されている。また、第3係合片部221cのP1側において軸方向(X方向)に延びる根元部が、基部221eにP2側から接続されている。したがって、アウタロータ片221は、第1係合片部221aおよび第2係合片部221bが基部221eに対してP1側で、かつ、第3係合片部221cが基部221eに対してP2側でそれぞれ円弧状の翼を広げた形状を有する一体構造部品である。また、アウタロータ片221は、図12に示すように、X2側の端部からX1側の端部までが後述する切欠部221fおよび切欠部221gを除いて一様な断面形状を有して形成されている。なお、基部221eは、本発明の「ベーン連結部」の一例である。
また、図13に示すように、アウタロータ片221を繋げた場合、P2側のアウタロータ片221の第1係合片部221aおよび第2係合片部221bによって、P1側に隣接するアウタロータ片221の第3係合片部221cが半径方向外側および内側から挟み込まれるようにして係合される。そして、P1側(一方側)のアウタロータ片221の第1係合片部221aおよび第2係合片部221bによって、P2側(他方側)のアウタロータ片221の第3係合片部221cが挟み込まれる係合関係が、P方向に沿って隣接するアウタロータ片221に順次繰り返される。このようにして6個のアウタロータ片221が円環状(円周状)に繋げられてアウタロータ220(図10参照)が構成されている。
また、図13に示すように、隣接するアウタロータ片221同士の周方向(矢印P方向)の重なりしろ(係合面積)は、所定範囲(各片部の周方向の長さの範囲)内で矢印P方向に沿って増減可能に構成されている。したがって、ハウジング40(図10参照)内に組み込まれたアウタロータ220は、隣接するアウタロータ片221同士が所定範囲内で周方向(矢印P方向)の距離(係合面積)を増加または減少させながらも、各々の係合状態が維持されるように構成されている。
ここで、第2実施形態では、互いに矢印P方向に隣接するアウタロータ片221間において、以下に説明する係合空間201〜203がそれぞれ形成されるように構成されている。
具体的には、図13に示すように、1つのアウタロータ片221におけるP2側の第1係合片部221aおよび第2係合片部221bと、P1側に隣接するアウタロータ片221の第3係合片部221cとの係合によって、第3係合片部221cの外側表面3側に容積を増減(伸縮)可能とする1つの係合空間201が形成される。この係合空間201は、第3係合片部221cの外側表面3とこれに対向するハウジング40の内周面40a(図10参照)との間に形成される空間である。また、これと同時に、第3係合片部221cの内側表面2側に容積を増減(伸縮)可能とする1つの係合空間202が形成される。この係合空間202は、インナロータ10(図10参照)側に直接的に露出する空間である。また、第1係合片部221aと第2係合片部221bとが互いに対向する第3係合片部221cが差し込まれる部分に容積を増減(伸縮)可能とする1つの係合空間203が形成される。また、係合空間201および202は、図14に示すように、隣接する2つのベーン30のうちP1側(一方側)に位置している。また、係合空間203は、隣接する2つのベーン30のうちP2側(他方側)に位置している。なお、係合空間201および202は、本発明の「第1係合空間」の一例である。また、係合空間203は、本発明の「第2係合空間」の一例である。
また、図11および図12に示すように、基部221eと第2係合片部221bとの接続部には、1つの切欠部221fが形成されている。切欠部221fは、基部221eの一方側(X2側)の端部から軸方向(X方向)に所定の長さ(深さ)を有して第2係合片部221bの一部を厚み方向に沿って溝状に切り欠いている。これにより、第2係合片部221bの内側表面2側と外側表面3側とが連通するように構成されている。これにより、第2実施形態では、第1係合片部221aと第2係合片部221bとの間に位置する係合空間203と、インナロータ10、アウタロータ220および隣接する2個のベーン30によって囲まれた容積室261とが、切欠部221fを介して連通される。なお、切欠部221fの容積は、オイル1の流動が容易に行われる範囲において係合空間203に対して極力小さいのが好ましい。なお、切欠部221fは、本発明の「溝部」の一例である。
また、基部221eと第3係合片部221cとの接続部には、1つの切欠部221gが形成されている。切欠部221gは、基部221eの一方側(X2側)の端部から軸方向(X方向)に所定の長さ(深さ)を有して第3係合片部221cの一部を厚み方向に沿って溝状に切り欠いている。これにより、第3係合片部221cの内側表面2側と外側表面3側とが連通するように構成されている。これにより、第2実施形態では、第3係合片部221cの外側表面3側に位置する係合空間201と、第3係合片部221cの内側表面2側に位置する係合空間202(容積室261)とが切欠部221gを介して連通される。なお、切欠部221gの容積は、オイル1の流動が容易に行われる範囲において係合空間201に対して極力小さいのが好ましい。なお、切欠部221gは、本発明の「溝部」の一例である。
また、図13に示すように、上記した係合空間201、202および203によって、互いに係合するアウタロータ片221間に容積V2を有する1つの容積室262が形成されるように構成されている。すなわち、係合空間201〜203の合計容積が、容積V2に相当する。なお、係合空間202は、実質的に容積室261に連通しているが、ここでは、アウタロータ220側に形成される増減可能な係合空間として容積室261とは区別して記載している。また、容積室262は、隣接するアウタロータ片221同士の周方向(矢印P方向)の重なりしろ(係合面積)が所定範囲内で増減されるのに伴って係合空間201〜203の各容積の増減動作が同期されるように構成されている。これにより、隣接するアウタロータ片221が互いに離れる方向に変位された場合には重なりしろが少なくなり、係合空間201〜203を伴う容積V2は単調に増加される。また、隣接するアウタロータ片221が互いに近づく方向に変位された場合には重なりしろが多くなり、容積V2は単調に減少される。また、この係合空間201〜203の各容積の増減動作が、アウタロータ220のポンプ機能を担う。なお、容積室262は、本発明の「第2容積変化部」の一例である。
また、図11に示すように、アウタロータ片221の基部221eには、所定の内径を有するとともに半径方向内側の一部が部分円弧状(C字状)に切り欠かれた係合部221hが形成されている。また、係合部221hは、基部221eの軸方向に沿った一方側の端部から他方側の端部にわたって直線状に延びており基部221eを軸方向(X方向)に貫通している。なお、係合部221hは、本発明の「ベーン連結部」の一例である。
また、第2実施形態では、図14に示すように、凹部12aとベーン30の根元部31aとによって、インナロータ10のベーン収容部12に容積V3を有する1つの容積室263が形成される。なお、容積室263は、本発明の「第3容積変化部」の一例である。また、ベーン30が凹部12aに対して出没自在にスライド移動されるのに伴って、容積室263の容積V3は、増減される。
これにより、第2実施形態では、隣接するベーン30間に位置する1つの容積室261と、この部分において周方向(矢印P方向)に係合されたアウタロータ片221間に形成される容積室262と、容積室261近傍の容積室263とが、互いに連通されるように構成されている。すなわち、これらの容積室261〜263が一組となった容積室がインナロータ10まわりに互いに区画された状態で6個形成される。
ここで、第2実施形態では、図10に示すように、アウタロータ220がインナロータ10対して偏心量を有して矢印P2方向に回転された場合、この偏心量に応じて、容積室261、262および263が各々の形状(容積)を変化させながらポンプ機能を担うように構成されている。すなわち、容積室261、262および263は、それぞれ、アウタロータ220のインナロータ10に対する偏心量に応じて容積V1、V2およびV3を変化させてポンプ機能を発揮する。
なお、容積室262のポンプ機能の動作について説明すると、図10に示すように、吸込ポート91付近において、隣接するアウタロータ片221間の周方向の距離が徐々に大きくなることにより、係合空間201〜203からなる容積室262の容積V2が徐々に大きくなる。また、吐出ポート92付近において、隣接するアウタロータ片221間の周方向の距離が徐々に小さくなることにより、係合空間201〜203からなる容積室262の容積V2が徐々に小さくなるように動作される。この場合、隣接するアウタロータ片221は、容積室262を構成する係合空間201〜203を有した状態で周方向(矢印P方向)に互いに係合するとともに、隣接するアウタロータ片221間の周方向(矢印P方向)の距離が変化することにより、係合空間201〜203を合計した容積V2が変化する。なお、容積室261および263のポンプ動作については、上記第1実施形態において説明した容積室61および63のポンプ動作と同様である。
なお、オイルポンプ200においても、隣接するベーン30間に位置する1つの容積室261と、この部分において周方向に係合されたアウタロータ片221間に形成される容積室262と、容積室261近傍の容積室263とは、上述の切欠部221f(図13参照)、切欠部21g(図13参照)および連通路13(図14参照)により相互に連通されており、かつ、互いに拡大および縮小の動作を同期させている。これにより、吸込ポート91付近を通過する際に流路的に一組となった容積室261〜263が容積V1と容積V2と容積V3とを共に拡大させながらオイル1を吸い込む。また、吐出ポート92付近を通過する際に流路的に一組となった容積室261〜263が容積V1と容積V2と容積V3とを共に縮小させながらオイル1を吐き出す。
このように、オイルポンプ200では、ハウジング40内に内在しポンプ本体の回転とともに変形する可動部(空間部:容積室261〜263)の変形運動をポンプ動作にすべて転換している。また、上述の通り、可動部(容積室261〜263)の変形運動にはインナロータ10に入力される駆動源の駆動力が利用されている。したがって、オイルポンプ200においても、容積室261〜263が一体となって動作される仕組みが、駆動源の駆動力を可能な限りポンプ動作に転換してオイル1を吐出することに寄与している。このことは、単位回転あたりのオイル1の正味吐出量が増加されることを意味する。なお、第2実施形態によるオイルポンプ200のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、上記のように、6個のベーン30の各々が半径方向にスライド移動可能に収容されるベーン収容部12(6個の凹部12a)を含むインナロータ10と、6個のベーン30の各々の半径方向外側の先端部32が連結される6箇所の基部21eを含むアウタロータ220と、インナロータ10のアウタロータ220に対する偏心量に応じて容積V1が変化することによりポンプ機能を有する容積室261と、アウタロータ220に設けられ、インナロータ10のアウタロータ220に対する偏心に応じて隣接する基部221e間の周方向の距離が変化することにより、容積V2が変化することによってポンプ機能を有する容積室262とを備えることによって、ベーン30によって互いに仕切られた容積室261の高効率なポンプ動作に加えて、アウタロータ220に新たに設けられた容積室262のポンプ動作も有効に利用することができる。これにより、オイルポンプ200における単位回転あたりのオイル1の正味吐出量を十分に増加させることができる。その結果、オイルポンプ200のポンプ効率を向上させることができる。
また、第2実施形態では、インナロータ10のアウタロータ220に対する偏心量に応じて複数のベーン30が半径方向にスライド移動することにより、インナロータ10のベーン収容部12における容積V3が変化することによってポンプ機能を有する容積室263をさらに備える。これにより、容積室261および容積室262が有するポンプ動作に加えて、ベーン30がベーン収容部12に対して半径方向に直線的にスライド移動されることによりベーン収容部12における容積室263の容積変化をも看過することなくオイル1を吸い込み吐き出すポンプ動作に組み入れてオイルポンプ200を構成することができるので、容積室263が有するポンプ動作が有効に加わる分、オイルポンプ200が有する単位回転あたりのオイル1の吐出量をさらに増加させることができる。その結果、オイルポンプ200をより小型化することができる。また、半径方向に直線的にスライド移動されるベーン30を用いるので、ベーン収容部12(凹部12a)に対して出没する個々のベーン30の中間部を細らせる必要もない。したがって、容積室263が容積V3を減少させる方向に容積変化を起こす過程で、容積室263近傍に容積室261側の部分で新たに容積を増加させる(容積室を新たに出現させる)ようなマイナス要因なども発生しないので、容積室261〜263の容積変化をオイルポンプ200全体のポンプ動作に有効に作用させることができる。
また、第2実施形態では、アウタロータ220は、複数のベーン30毎に設けられ、基部221eを各々含む複数のアウタロータ片221を含む。そして、隣接するアウタロータ片221が互いの周方向(矢印P方向)の距離を変化可能に係合された状態で、複数のアウタロータ片221を円周状に配置するようにアウタロータ220を構成する。これにより、隣接するアウタロータ片221同士の周方向(矢印P方向)の離合動作(伸縮動作)を適切に利用して、容積室262が拡大と縮小とを繰り返すポンプ機能を発揮させることができる。
また、第2実施形態では、隣接するアウタロータ片221は、容積室262を構成する係合空間201〜203を有した状態で周方向(矢印P方向)に互いに係合するとともに、隣接するアウタロータ片221間の周方向(矢印P方向)の距離が変化することにより、係合空間201〜203の容積V2が変化するようにオイルポンプ200を構成する。これにより、アウタロータ片221同士が係合する際の係合空間201〜203を容積V2として適切に利用して、容積室262に容積V2が拡大と縮小とを繰り返すポンプ機能を発揮させることができる。
また、第2実施形態では、アウタロータ片221は、隣接するアウタロータ片221同士が半径方向に重なり合った状態で周方向に係合可能な第1係合片部221a〜第3係合片部221cを有する。そして、容積室262の一部を構成する係合空間201〜203は、第1係合片部221a〜第3係合片部221cの重なり量に応じて周方向の距離が変化されることにより、係合空間201〜203を合計した容積V2が変化されるようにアウタロータ220を構成する。これにより、互いに重なり合う第1係合片部221a〜第3係合片部221c間の重なり量に応じて係合空間201〜203の容積V2を容易に増減させることができるので、アウタロータ220(容積室262)にポンプ機能を容易に発揮させることができる。
また、第2実施形態では、容積室262を構成する係合空間203と容積室261とを連通する切欠部221fと、容積室262を構成する係合空間201および202と容積室261とを連通する切欠部221gとを、1つのアウタロータ片221に設ける。これにより、切欠部221fおよび切欠部221gを介して容積V1を有する容積室261と容積V2を有する容積室262とが互いに連通されるので、容積室の拡大時にオイル1を容積室261と容積室262とに共に吸入することができる。また、容積室の縮小時にオイル1を容積室261と容積室262とから共に吐出することができる。
また、第2実施形態では、隣接する2つのベーン30のうち一方側(図5におけるP1側)に位置する係合空間201および202と、隣接する2つのベーン30のうち他方側(図5におけるP2側)に位置する係合空間203とによって一組の係合空間201〜203が構成されるようにアウタロータ220を構成する。これにより、隣接するアウタロータ片221が順次繋げられて全体として環状のアウタロータ220を構成した際に、1つのアウタロータ片221を中心としてたとえば係合空間201および202を介して一方側(P1側)に隣接するアウタロータ片221と容易に係合させることができるとともに、係合空間203を介して他方側(P2側)に隣接するアウタロータ片221と容易に係合させることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1および第2実施形態では、インナロータ10とアウタロータ20(220)との間に6個のベーン30を等角度間隔(60度間隔)で配置してオイルポンプ100(200)を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ベーン30の個数は6個以外の、たとえば、4個(90度間隔)、5個(72度間隔)、8個(45度間隔)または9個(40度間隔)などでもよい。この場合、ベーン30の個数に応じて、アウタロータを構成するアウタロータ片の個数も変更される。
また、上記第1実施形態では、アウタロータ片21に切欠部21fおよび21gを設けて容積部62と61とを連通させるとともに、上記第2実施形態では、アウタロータ片221に切欠部221fおよび221gを設けて容積部262と261とを連通させた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、アウタロータ片に連通孔を設けてもよい。一例として、図15に示す変形例のようにアウタロータ片321を構成してもよい。すなわち、基部21eと第2係合片部21bとの接続部に第2係合片部21bを厚み方向に貫通する連通孔301を設けるとともに、第1係合片部21aと第4係合片部21dとが軸方向(X方向)に対向する端部に第4係合片部21dを厚み方向に貫通する連通孔302を設けてもよい。なお、連通孔301および302は、本発明の「穴部」の一例である。
また、上記第1および第2実施形態では、インナロータ10の駆動源として内燃機関(エンジン)のクランクシャフトを用いた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、オイルポンプ(インナロータ)の駆動源として電動モータを用いてもよい。この場合、電動モータの回転数を一定にしてインナロータ10に対するアウタロータ20の偏心に応じてオイルポンプの吐出量を可変としてもよいし、この偏心に伴うアウタロータ20の機械的なポンプ動作に加えて、電動モータの回転数をさらに変更させることにより、要求される吐出量に対してよりきめ細かくオイルポンプ100(200)の吐出量が調整されるように構成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、ケーシング50内部で回転中心Rが固定されたインナロータ10に対してハウジング40を平行移動させることにより偏心量に応じて吐出量が可変なオイルポンプ100(200)を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ハウジング40の一方側に回動支点を設けるとともに、この回動支点を中心としてハウジング40の他方側を所定角度だけ回動させることによってインナロータ10に対するアウタロータ20の偏心を発生させるようにオイルポンプを構成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、回転中心Rが固定されたインナロータ10に対してハウジング40を偏心させた例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、インナロータ10の回転中心Rを移動可能に構成することによって、固定されたハウジング40に対してインナロータ10を偏心させて、偏心量に応じて吐出量が可変となるようにオイルポンプを構成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、インナロータ10を矢印P2方向に回転させることでアウタロータ20(220)を同じ方向に回転させてオイルポンプ100(200)を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、インナロータ10を矢印P2方向とは反対の矢印P1方向に回転させてオイルポンプ100(200)を構成してもよい。すなわち、ベーン30がインナロータ10に対して半径方向に沿った直線的な出没を繰り返す構成であるので、インナロータ10の回転方向は問われない。ただし、インナロータ10を矢印P1方向に回転させる場合には、吸込ポート91と吐出ポート92との配置関係を上記とは反対にする必要がある。
また、上記第2実施形態では、アウタロータ片221をX2側の端部からX1側の端部に渡って切欠部221fおよび221gを除いて一様な断面形状を有して形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、アウタロータ片221における第1係合片部221aと第2係合片部221bがX方向に沿った両端部で半径方向に一体的に繋げられていてもよい。そして、第1係合片部221aと、第2係合片部221bと、第1係合片部221aおよび第2係合片部221bをX方向の両端部で繋ぐ側端部とによって周状に囲まれた凹状部分に係合空間203が形成されるようにアウタロータ片を構成してもよい。したがって、第3係合片部221cは、この周囲が閉ざされた係合空間203に対して出没自在に係合される。また、この場合、切欠部221fの代わりに、第2係合片部221bを厚み方向に貫通する連通孔を設けて係合空間203と容積室261とを連通させるように構成すればよい。この変形例のように構成すれば、厚みの小さい(薄い)第1係合片部221aおよび第2係合片部221bがX方向の両端部で一体的に繋がれるので、係合空間203に第3係合片部221cが出没される動作を繰り返すアウタロータ片の剛性を向上させることができる。
また、上記第1および第2実施形態では、ケーシング50内部で回転中心Rが固定されたインナロータ10に対してハウジング40を平行移動させることにより偏心量に応じて吐出量が可変なオイルポンプ100(200)を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ハウジング40を平行移動させることなく、一定の偏心量により吐出量が一定なオイルポンプを構成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、アルミニウム合金を用いてアウタロータ20(220)を構成する個々のアウタロータ片21(221)を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、樹脂材料を用いてアウタロータ(アウタロータ片)を構成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、内燃機関(エンジン)にオイル(潤滑油)1を供給するオイルポンプ100(200)に本発明を適用した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、内燃機関の回転数に応じて変速比を自動的に切り替えるオートマチックトランスミッション(AT)にATフルード(ATオイル)を供給するためのオイルポンプに本発明を適用してもよい。また、ギアの組み合わせを替えて変速する上記AT(多段変速機)とは異なり連続的に無段階で変速比を変更可能な無段変速機(CVT)内の摺動部に潤滑油を供給するためのオイルポンプに本発明を適用してもよい。また、車両におけるステアリング(操舵装置)を駆動するパワーステアリング装置にパワーステアリングオイルを供給するためのオイルポンプに本発明を適用してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、内燃機関(エンジン)を備えた自動車などの車両にオイルポンプ100(200)を搭載した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、内燃機関(エンジン)を備えた車両以外の設備機器に搭載されたオイルポンプに対して本発明を適用してもよい。また、内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンおよびガスエンジンなどが適用可能である。