JP3978383B2 - ベーンポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、カムリングの内周にロータを回転自在に組み込んだベーンポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
図5〜図10に従来のベーンポンプを示す。
図5に示すように、ボディ1にボアaを形成するとともに、このボアa内にサイドプレート12とカムリング3とを組み込んでいる。
上記カムリング3は、図6に示すように、楕円形の内壁3aを有している。そして、この楕円形のカムリング3の内周に、ロータ4を設けている。
ロータ4には、シャフト9を貫通させている。このシャフト9のロータ4を貫通させた部分には、セレーション10を形成している。また、このシャフト9を挿入したロータ4の内周にも、セレーション16を形成している。そして、これらセレーション10,16をかみ合わせることで、シャフト9にロータ4を固定している。
なお、上記ロータ4の外周には、複数のベーン5を出没自在に組み込んでいる。
【0003】
上記ボディ1の側面には、図5に示すようにカバー2を固定している。そして、このカバー2によって、上記ボアaを塞いでいる。
上記ボディ1には、軸穴6aを形成するとともに、この軸穴6aに第1軸受部材7を組み込んでいる。また、上記カバー2には、軸穴6bを形成するとともに、この軸孔6bに第2軸受部材8を組み込んでいる。そして、これら両軸受部材7,8によって、上記シャフト9を回転自在に支持している。
なお、上記ボディ1には、オイルシール11を設け、このオイルシール11によってシャフト9の周囲をシールしている。
【0004】
上記シャフト9のボディ1から突出した側には、図示していないプーリを固定するとともに、このプーリに駆動ベルトを介してエンジンや電動モータなどの駆動源を連係している。そして、この駆動源を作動させると、駆動ベルトを介してプーリが回転し、このプーリとともにシャフト9が回転する。このようにシャフト9が回転すれば、ロータ4が回転することになる。
【0005】
また、図5に示すように、サイドプレート12には、一対の吐出穴14を形成している。そして、これら吐出穴14,14を介して吐出油を高圧室13,13に導くようにしている。また、この高圧室13に導いた高圧の作用によって、サイドプレート12を積極的にロータ4側に移動させるようにしている。したがって、吐出圧が高圧になればなる程、サイドプレート12とロータ4とのクリアランスが小さくなる。このようにクリアランスを小さくすることによって、吐出効率の低下を防止している。
【0006】
図7に示すように、カムリング3には、ピン穴17を二箇所に形成している。そして、これらピン穴17に、位置決めピンpをそれぞれ挿入している。
上記各位置決めピンpは、図8に示すように、ピン穴17を貫通し、その一端をサイドプレート12に形成した挿入穴18,18に挿入して固定している。また、この位置決めピンpの他端は、図9に示すように、カバー2に形成した位置決め穴19に挿入するようにしている。
【0007】
上記のように位置決めピンpの他端側をカバー2の位置決め穴19,19に挿入すると、カバー2に対してカムリング3およびサイドプレート12の位置が固定される。そして、このカバー2というのは、図示していないボルトによってボディ1に固定される。したがって、上記位置決めピンp、pとカバー2とを介して、ボディ1に対するカムリング3及びサイドプレート12の位置が決まることになる。
【0008】
次に、上記ベーンポンプの作用を説明する。
図示していない駆動源の作動により、図7中、シャフト9がk方向に回転すると、このシャフト9とともにロータ4が回転する。ロータ4が回転すると、その遠心力によってベーン5が突出し、その先端がカムリング3の内壁3aに押し付けられる。ただし、これらベーン5の先端が押し付けられるカムリング3の内壁3aが楕円形をしているため、この内壁3aの形状に応じてベーン5が、ロータ4に対して突出と収納とを繰り返す。
【0009】
また、ベーン5の先端がカムリング3の内壁3aに押し付けられると、各ベーン5間に独立した室が構成されるが、これら室の容積というのは、ロータ4の回転に応じて変化する。すなわち、図7の一点鎖線Aで示す吸い込み部分では、ロータ4の回転に伴って室の容積が拡大するが、一点鎖線Bで示す部分では、室の容積が縮小する。そして、室の容積が拡大するときに、この室内に作動油が吸い込まれる。この作動油を吸い込む一点鎖線Aの範囲を吸い込み行程とする。
また、室の容積が縮小するときに、この室内の作動油が圧縮される。この作動油を圧縮する一点鎖線Bの範囲を吐出行程とする。
【0010】
上記のようにロータ4が回転することによって、吸い込み行程と吐出行程とが交互に繰り返されるが、吸い込み行程において室内に吸い込んだ作動油を、吐出行程において室の容積を縮小することで、サイドプレート12に形成した吐出穴14,14に吐出する。そして、この吐出穴14,14に吐出した圧油を、高圧室13から図示していない通路を介して外部に吐出する。
また、上記のようにして高圧室13に圧油を導くと、その高圧の作用によってサイドプレート12がロータ4側に移動する。このようにサイドプレート12をロータ4側に移動すると、サイドプレート12とロータ4とのクリアランスが小さくなり、吐出効率が維持されることになる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例では、作動時において、図10に示すように、駆動ベルトのテンションTが、シャフト9に対して矢印方向に作用する。このように矢印方向のテンションTがシャフト9に作用すると、第1,第2軸受部材7,8を支持点にしてシャフト9が反る。このようにシャフト9が反ると、このシャフト9に固定したロータ4が矢印B方向に移動する。このようにロータ4がB方向に移動すると、カムリング3の軸心に対してロータ4の軸心がαだけずれる。
【0012】
このようにカムリング3の軸心に対してロータ4の軸心がαだけずれると、内圧の立ち上がるタイミングが変化し、非平衡力が大きくなるために、振動が発生したり、騒音が大きくなるという問題があった。
この発明の目的は、シャフトの他方側に、径方向の偏心荷重が作用することで、このシャフトが反ったとしても、振動や騒音の発生を防止することのできるベーンポンプを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ケーシングと、このケーシング内に組み込んだカムリングと、このカムリングの内周に回転自在に組み込んだロータと、このロータの周囲に出没自在に設けた複数のベーンと、ケーシングに回転自在に支持するとともに、一方側に上記ロータを固定し、他方側を駆動源側に連係したシャフトとを備え、上記カムリングは、その軸心をロータの軸心に対してずらしてケーシングに固定し、上記シャフトの他方側に作用する径方向の偏心荷重によって、シャフトが反ってロータが径方向に移動したときに、ロータの軸心とカムリングの軸心とが一致する構成にしたことを特徴とする。
【0014】
第2の発明は、上記第1の発明において、位置決めピンによってカムリングをケーシングに位置決めするとともに、ケーシングには、位置決めピンを挿入する位置決め穴を形成し、この位置決め穴の中心をオフセットすることより、カムリングの軸心をロータの軸心に対してずらすことを特徴とする。
【0015】
第3の発明は、上記第1の発明において、位置決めピンによってカムリングをケーシングに位置決めするとともに、位置決めピンは、カムリングに形成したピン穴に挿入する大径部と、ケーシングに形成した位置決め穴に挿入する小径部とからなり、上記小径部の軸心を大径部の軸心に対してオフセットすることにより、カムリングの軸心をロータの軸心に対してずらすことを特徴とする。
【0016】
第4の発明は、上記第1〜第3の発明において、ケーシング内に、カムリングに接するサイドプレートを組み込むとともに、このサイドプレートを、位置決めピンを介してカムリングに位置決めしたことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1に示す第1実施形態は、カバー2に形成した位置決め穴20a、20bの中心の位置を、矢印C方向にオフセットした点に特徴を有し、それ以外の構成については前記従来例と同じである。したがって、以下では、前記従来例と同じ構成要素については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
なお、この第1実施形態におけるボディ1とカバー2とで、この発明のケーシングを構成している。
【0018】
上記したように、この第1実施形態では、位置決め穴20a,20bの中心の位置を矢印C方向にオフセットしているが、このオフセット量αは、駆動ベルトのテンションTによりシャフト9が反ったときに、カムリング3に対してロータ4が移動する方向とその量を等しくしている。したがって、位置決め穴20aの中心と軸穴6bの中心との距離はA+αとなり、位置決め穴20bの中心と軸穴6bの中心との距離はA−αとなる。ここで、寸法Aは、図9に示すように、従来の軸穴6bの中心と位置決め穴19,19との距離を示している。
なお、上記オフセット量αというのは、ベーンポンプを実際に作動させたときに生じるロータ4のずれ量を測定して、その測定値に基づいて設定するようにしている。
【0019】
上記位置決め穴20a,20bに、位置決めピンp、pをそれぞれ圧入して、これら位置決めピンp、pを介してカムリング3及びサイドプレート12をカバー2側に位置決めすると、カムリング3の軸心が、ロータ4の軸心に対してαだけずれる。このようにカムリング3の軸心を、ロータ4の軸心に対してαだけずらしておけば、テンションTによってシャフト9が反ってロータ4の軸心がαだけ移動した場合に、このロータ4の軸心とカムリング3の軸心とを一致させることができる。つまり、ベーンポンプを作動させることによって、ロータ4の軸心とカムリング3の軸心とを一致させることができる。このようにロータ4の軸心とカムリング3の軸心とを一致させることができるので、作動中の振動や騒音を防止することができる。
【0020】
また、上記カムリング3は、位置決めピンp、pを介してサイドプレート12に連結して位置決めされているので、上記のようにカムリング3の位置をずらすと、サイドプレート12も一体となって移動する。つまり、サイドプレート12に対するカムリング3の位置は変わらない。もし、サイドプレート12に対するカムリング3の位置がずれたりとすると、たとえ上記したようにロータ4の軸心とカムリング3の軸心とが一致していたとしても、吐出圧力の発生状況にアンバランスが生じることで、脈動による振動や騒音が発生する。しかし、この実施形態によれば、カムリング3とサイドプレート12とを一体的に移動させる構成にしているの、上記不具合は生じない。
【0021】
なお、作動中にカムリング3の軸心とロータ4の軸心とが一致していれば、振動や騒音の発生を防止できるので、サイドプレート12とカムリング12と相対位置を、位置決めピンp、p以外によって位置決めしてもよい。
また、ボアaの内周とカムリング3およびサイドプレート12との隙間は、ごく僅かである。ただし、説明する都合上、図2、図4では、その隙間を大きくしている。
【0022】
上記第1実施形態では、位置決め穴20a,20bの中心をオフセットすることによって、カムリング3の軸心を、ロータ4の軸心に対してずらしているが、位置決めピンp、p自体を利用して、カムリング3の軸心をずらしてもよい。図3に示す第2実施形態は、位置決めピンP、Pを利用して、ロータ4の軸心に対するカムリング3の軸心をずらした例である。
【0023】
図示するように、位置決めピンPは、大径部21と小径部22とを備えるとともに、大径部21の軸心に対して小径部22の軸心をαだけずらしている。そして、図4に示すように、位置決めピンPの大径部21をカムリング3のピン穴17に挿入するとともに、サイドプレートの挿入穴18に固定し、小径部22をカバー2の位置決め穴19,19に圧入するようにしている。
また、この第2実施形態では、ピン穴17及び挿入穴18の内径を、大径部21に合わせて上記第1実施形態よりも大きくしている。一方、カバー2に形成した位置決め穴19は、上記第1実施形態のようにオフセットすることなく、その内径を上記第1実施形態と同じ径にしている。
【0024】
上記位置決めピンPを利用して、カバー2に対するカムリング3及びサイドプレート12の位置を決める。すなわち、シャフト9にかかるテンションTによってロータ4がカムリング3の軸心に対してαだけずれる方向に、ピンPの大径部21と小径部22のオフセット方向を合わせた状態で、カバー2に対するカムリング3及びサイドプレート12の位置を特定する。このようにすると、カムリング3及びサイドプレート12の軸心が、上記位置決めピンPの大径部21の軸心と小径部の軸心とのずれ量α分だけずれる。そのため、上記第1実施形態と同様に、カムリング3の軸心を、ロータ4の軸心に対してαだけずらすことができる。
したがって、ベーンポンプを作動させると、ロータ4の軸心とカムリング3との軸心とが一致して、振動や騒音の発生を防止することができる。
【0025】
また、この第2実施形態によれば、大径部21の軸心と小径部22の軸心とをずらすことで、ロータ4の軸心に対するカムリング3の軸心をずらしているが、大径部21の軸心と小径部22の軸心との間の距離が異なる位置決めピンPをいろいろ準備しておけば、位置決めピンPを交換するだけで、最適なオフセット量やオフセット方向を設定することができる。したがって、カバー2に形成する位置決め穴20a、20bの位置を変更する場合に比べて、部品コストの点で有利である。
【0026】
上記第1,第2実施形態によれば、カバー2側に位置決めピンp、Pを圧入しているが、サイドプレート12側に位置決めピンp、Pを圧入するようにしても構わない。すなわち、カバー2とカムリング3とサイドプレート12とが径方向にずれない構造であれば、位置決めピンp、Pを圧入する部材は、カバー2側でもサイドプレート12側でもよい。
【0027】
【発明の効果】
第1の発明によれば、シャフトの他方側に作用する径方向の偏心荷重により、シャフトが反ってロータが移動したときに、ロータの軸心とカムリングの軸心とが一致する構成にしたので、作動状態において、振動や騒音の発生を防止することができる。
【0028】
第2の発明によれば、位置決めピンによってカムリングをケーシングに位置決めする構成にしたので、位置決めピンを挿入する位置決め穴の位置をオフセットするだけで、カムリングの軸心をロータの軸心に対してずらすことができる。
【0029】
第3の発明によれば、位置決めピンの小径部の軸心を、大径部の軸心に対してオフセットすることにより、カムリングの軸心をロータの軸心に対してずらす構成にしたので、大径部の軸心と小径部の軸心とのずれ量の異なる位置決めピンをいろいろ準備しておけば、位置決めピンの種類を交換するだけで、最適なオフセット量に調整できる。
【0030】
第4の発明によれば、位置決めピンによってサイドプレートをカムリングに位置決めする構成にしたので、サイドプレートとカムリングとの相対位置がずれたりしない。サイドプレートとカムリングとの位置がずれたりしないので、吐出効率の維持というサイドプレートの機能を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態を示すカバーの側面図である。
【図2】第1実施形態の説明図である。
【図3】第2実施形態の位置決めピンを示す斜視図である。
【図4】第2実施形態の説明図である。
【図5】従来例の断面図である。
【図6】図5のVI−VI線矢視図である。
【図7】カムリング3とロータ4との組み付け状態を示す拡大図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図5のIX−IX線矢視図である。
【図10】従来例の作動状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 この発明のケーシングを構成するボディ
2 この発明のケーシングを構成するカバー
3 カムリング
4 ロータ
5 ベーン
9 シャフト
12 サイドプレート
17 ピン穴
19,20a、20b 位置決め穴
21 大径部
22 小径部
Claims (4)
- ケーシングと、このケーシング内に組み込んだカムリングと、このカムリングの内周に回転自在に組み込んだロータと、このロータの周囲に出没自在に設けた複数のベーンと、ケーシングに回転自在に支持するとともに、一方側に上記ロータを固定し、他方側を駆動源側に連係したシャフトとを備え、上記カムリングは、その軸心をロータの軸心に対してずらしてケーシングに固定し、上記シャフトの他方側に作用する径方向の偏心荷重によって、シャフトが反ってロータが径方向に移動したときに、ロータの軸心とカムリングの軸心とが一致する構成にしたことを特徴とするベーンポンプ。
- 位置決めピンによってカムリングをケーシングに位置決めするとともに、ケーシングには、位置決めピンを挿入する位置決め穴を形成し、この位置決め穴の中心をオフセットすることより、カムリングの軸心をロータの軸心に対してずらすことを特徴とする請求項1記載のベーンポンプ。
- 位置決めピンによってカムリングをケーシングに位置決めするとともに、位置決めピンは、カムリングに形成したピン穴に挿入する大径部と、ケーシングに形成した位置決め穴に挿入する小径部とからなり、上記小径部の軸心を大径部の軸心に対してオフセットすることにより、カムリングの軸心をロータの軸心に対してずらすことを特徴とする請求項1記載のベーンポンプ。
- ケーシング内に、カムリングに接するサイドプレートを組み込むとともに、このサイドプレートを、位置決めピンを介してカムリングに位置決めしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のベーンポンプ。
Priority Applications (1)
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- 2002-08-29 JP JP2002250964A patent/JP3978383B2/ja not_active Expired - Fee Related
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