JP6123502B2 - 熱可塑性樹脂成形品及び熱可塑性樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂成形品及び熱可塑性樹脂成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂成形品及び熱可塑性樹脂成形品の製造方法に関し、特に炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品及び炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品の製造方法に関するものである。
近年、電子機器の急速な普及に伴い、電子機器の誤作動防止、人体への影響防止等のために、例えばパーソナルコンピューター、携帯電話、自動車部品等に使用するハウジング等に導電性機能を付与し、電磁波をシールドすることが要求されている。また、ICの搬送用に使用されるICトレーには、成形加工が容易な熱可塑性樹脂の成形品が使用されつつあるが、ICを静電気から保護するために、熱可塑性樹脂製のICトレーに導電性を持たせ、帯電防止機能を付与することが要求されている。
あるいは、電磁波を用いて距離や速度のセンシングや障害物をセンシングする技術も種々実現化されていて、このような場合には正確にセンシングするために不要な電磁波をシールドすることが求められている。
電磁波シールドを行うため熱可塑性樹脂成形品に導電性機能を付与する方法としては、導電性樹脂を使用する方法もあるが、使用する導電性樹脂そのものが高価であることから、実用性に乏しい。このため、現在上市されている一般的な熱可塑性樹脂を用いつつ、成形品に導電性機能を持たせる方法が一般的である。一般的な熱可塑性樹脂製の成形品に導電性機能を付与する方法としては、大きく分けて次の2つの方法がある。一つは、熱可塑性樹脂で成形加工した後、メッキあるいは蒸着等の表面処理によって成形品表面に導電性皮膜を形成し、導電性の成形品とする方法である。もう一つは、カーボンブラック、金属等の粉末状の導電材料あるいは金属繊維、炭素繊維等の繊維状の導電材料を熱可塑性樹脂にブレンドし、これを成形加工して導電性の成形品とする方法である。
2つの方法のうち、前者の導電性皮膜を形成する方法は、熱可塑性樹脂による成形と、メッキあるいは蒸着等による表面処理という2段階での加工となってしまい、製造上の経済性に劣る問題がある。これに対して後者である熱可塑性樹脂に導電材料をブレンドする方法は、成形のみの1段での加工で済む利点がある。
熱可塑性樹脂に導電材料をブレンドして導電性機能を付与する場合、粉末状の導電材料あるいは繊維状の導電材料が使用されるが、同一添加量では、粉末状の導電材料より繊維状の導電材料の方が優れた導電性を示す。この理由は、熱可塑性樹脂中に分散している導電材料が相互に接触していることにより導電性機能が発現されるが、粉末状の導電材料より繊維状の導電材料の方がより相互に接触しやすいことに基づく。従って、同じ繊維状の導電材料であっても、より長い方が高度な導電性機能を付与できることも理解できる。繊維状の導電材料としては、上記の如く、金属繊維あるいは炭素繊維等が利用できるが、優れた導電性機能を付与するためには、この中でも特に樹脂との親和性に優れる炭素繊維、特に長繊維状炭素繊維が最も好ましい。
例えば特許文献1には、炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品において、マトリックスたる熱可塑性樹脂が70〜99.5wt%、成形品中に含まれる炭素繊維は、全含有量が0.5〜30wt%であり、更に(a)1.5mmを超える長さの炭素繊維が0.1〜4.7wt%(熱可塑性樹脂と炭素繊維のトータル量基準。以下同様)、(b)0.5〜1.5mmの長さの炭素繊維が0.2〜10.7wt%、(c)0.5mm未満の長さの炭素繊維が0.2〜14.6wt%であることを特徴とする炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品とすることにより、優れた機械的特性、電気的特性、特に表面外観に優れた成形品が得られると開示されている。
特開2000−218711号公報
しかしながら、発明者らが特許文献1に開示された技術を実施したところ、電磁波のシールド性能において電磁波の振動面の向きによって違いが生じ、水平偏波と垂直偏波とのシールド性に大きな差が生じることが判明した。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、偏波方向が異なってもシールド性能に大きな差がない熱可塑性樹脂成形品を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明の熱可塑性樹脂成形品は、炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品であって、前記炭素繊維は0.4質量%以上10質量%以下含まれており、前記炭素繊維の平均長さは0.5mm以上15mm以下であり、前記熱可塑性樹脂はポリプロピレンであって、カルボキシル基及びカルボニル基の少なくとも一方を有するポリプロピレンを含んでおり、前記炭素繊維は表面にCl基を有している構成を有している。なお、ポリプロピレンには、ホモポリマーと、エチレンとのランダムコポリマーと、エチレンとのブロックコポリマーの3種類が一般的に存在している。エチレンとのブロックコポリマーはブロックポリプロピレンと呼ばれている。
上記の構成により、炭素繊維の表面とカルボキシル基及びカルボニル基の少なくとも一方を有するポリプロピレンとのなじみ性が高くなり、炭素繊維がポリプロピレン中に均一に分散して、樹脂成形品において入射する電磁波の偏波方向がいずれの方向であっても高いシールド性能を発揮することができる。
前記ポリプロピレンはブロックポリプロピレンであることが好ましい。この構成により、樹脂成形品の耐衝撃性が高いものとなる。
前記炭素繊維の径は5μm以上11μm以下であることが好ましい。
炭素繊維は0.5質量%以上5質量%以下含まれていることが好ましい。
炭素繊維の平均長さは0.5mm以上10mm以下であることが好ましい。
上記の熱可塑性樹脂成形品は、射出成型によって形成されていることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形品の製造方法は、炭素繊維と第1の熱可塑性樹脂とを含む第1の樹脂材料と、第2の熱可塑性樹脂を含む第2の樹脂材料とを混練して溶融材料とする工程と、前記溶融材料を金型内に射出する工程とを備えた熱可塑性樹脂成形品の製造方法であって、前記第1の樹脂材料に含まれる前記炭素繊維は、平均長さが0.5mm以上15mm以下であって表面にCl基を有しており、前記第1の熱可塑性樹脂はカルボキシル基及びカルボニル基の少なくとも一方を有するポリプロピレンであり、前記溶融材料には前記炭素繊維が0.4質量%以上10質量%以下含まれている構成を有している。
上記の構成により、炭素繊維の表面とカルボキシル基及びカルボニル基の少なくとも一方を有するポリプロピレンとのなじみ性が高くなり、炭素繊維がポリプロピレン中に均一に分散して、樹脂成形品において入射する電磁波の偏波方向がいずれの方向であっても高いシールド性能を発揮することができる熱可塑性樹脂成形品を製造できる。
前記第2の熱可塑性樹脂は、前記第1の熱可塑性樹脂とは異なるポリプロピレンであってもよい。
前記第2の熱可塑性樹脂は、前記第1の熱可塑性樹脂とは同じポリプロピレンであってもよい。
前記ポリプロピレンはブロックポリプロピレンであることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形品は、成形品中の炭素繊維表面とポリプロピレンとの親和性が高いので、ポリプロピレン中の炭素繊維の分散が様々な方向で均一になり、電磁波の振動面がいずれの方向であっても高い電磁波のシールド性能を有する。
電磁波の遮蔽性能の評価を行う装置の模式的な図である。 炭素繊維の添加量と電波減衰量との関係を表す図である。 炭素繊維の平均長さと電波減衰量との関係を表す図である。 実施例と比較例とを比べた図である。
本発明の実施形態を説明する前に本発明に至った経緯について説明をする。
物体が移動する際に、他の物体との衝突を避けて安全に効率的に移動を行うことは常に求められていることである。物体の移動とは、例えば人の歩行、工場内の部品や製品の製造ライン上の移動及び工程間の運搬、車両通行など多種多様である。この中で交通における衝突事故を避けることは、昔から検討され続けている課題である。
例えば後方から車両が接近してくることに気づかないと、ハンドル操作やブレーキ操作により追突されるおそれがある。このため、電磁波を利用したセンサ(いわゆる監視レーダー)により後方の車両を感知する検討が行われている。この場合、後方の車両から反射した電磁波のみを選択的に感知するようにしないと、ノイズの電磁波による警報を受けたり、後方車両からの電磁波がノイズに埋もれて感知できなかったりして、かえって危険な状況となる。
発信される電磁波はある程度の広がりをもって放射されるため、発信器周辺の車両部材において反射して受信部へ到達し、それがノイズとなってしまうことがある。後方車に向かう電磁波以外の不要な電波を遮断するように、受信部の周辺に電磁波シールド材を配置することが検討されている。
監視レーダーは設置場所が限定されるため、電磁波シールド材は一般に複雑な形状となる。さらには電磁波シールド材には、電磁波のシールド性能が高く、軽量であって機械的強度が大きく、かつ低コストで製造できるという条件が必要とされる。例えば金属板は、電磁波シールド性能は十分であるが、重くて複雑な形状にするには不向きであり、防錆対策も必要となる。そこで本願発明者らは、特許文献1を参考にしながら、上述の必要条件を満たすよう、且つ電磁波の振動面の方向によって電磁波シールド性能の差が出ないように種々検討を行って本発明に至った。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
(実施形態1)
炭素繊維を含有する樹脂成形品を電磁波シールド材として使用するに当たって、電磁波のシールド性能を所望のものとするために検討を行った。具体的には、監視レーダーとして24GHzの水平偏波の電磁波を用い、厚み3.0mmの樹脂板のシールド性能を検討した。そして、電磁波を樹脂板に垂直に入射させて、電磁波の偏波面を進行方向の周りに任意に回転させても、導電性材料を塗布した樹脂板と同等の電磁波のシールド性能である11dB以上の減衰量に常になる樹脂成形品を検討した。なお、熱可塑性樹脂としては、コストの面と機械的特性の面を考慮してポリプロピレンとした。
導電体である炭素繊維は樹脂成形品中において分散して存在しており、この樹脂成形品に監視レーダーのような高周波数の電磁波が照射されると電磁誘導効果により炭素繊維に電流が流れる。この電流が渦電流となると、この渦電流によって発生した、電磁波とは逆向きの磁力線が電磁波を打ち消してシールド機能を発揮する。渦電流が発生するためには炭素繊維同士が接触して、この接触により電磁波の波長の半分以下の径の導電体のループが生じる必要がある。なお、24GHzの電磁波の波長は約1cmである。
炭素繊維の含有量が大きくなると樹脂成形品中で隣り合う炭素繊維同士が接触するようになる。ここで炭素繊維が熱可塑性樹脂中に非常に多く含有されていれば、上記の電磁波の波長の半分以下の導電体のループを生じさせる炭素繊維同士の接触が十分に生じる。しかしながら、炭素繊維の含有量を多くするとコストが大きくなるとともに、熱可塑性樹脂の流れ性が悪化し、混練機のシリンダーや金型の摩耗が大きくなってしまう。さらには、熱可塑性樹脂中の炭素繊維の長さが短くなると、長い場合に比べて含有量を増やさないと隣り合う炭素繊維同士の接触が十分に生じなくなる。熱可塑性樹脂中の炭素繊維は、混練工程及び射出時の流路によって短くなっていく。
本願発明者らは上記の点について検討を行ってきたが、電磁波の振動方向によって減衰量に差が出る現象を見出した。これは射出成型を行うと、樹脂の流れる方向に炭素繊維も並びやすいことが原因と考えられ、実際に樹脂の流れた方向に対して水平に振動面を合わせた電磁波は減衰量が大きく、垂直な振動面の電磁波は減衰量が最も小さくなった。しかしながら、減衰量の最小値を11dB以上にする必要があるため、振動面の方向による減衰量の差が大きい場合は炭素繊維の含有量を増やさざる得ないことになる。そこで種々検討を行った結果、炭素繊維のある種の表面処理と、熱可塑性樹脂のある種の変性処理との組み合わせにより、振動面の方向による減衰量の差を小さくできて炭素繊維の含有量を小さくできることを見出した。以下に本実施形態の熱可塑性樹脂成形品について説明を行う。
<樹脂成形品の製造方法>
樹脂成形品の製造法は以下の通りである。
原材料として、第1の熱可塑性樹脂に多量の炭素繊維が含有されているマスターチップ(第1の樹脂材料)と、第2の熱可塑性樹脂からなる希釈用のチップ(第2の樹脂材料)とを混合して混練押出機に投入する。混練押出機は例えば2軸の押出機であり、マスターチップと希釈用チップとを溶融混練させて炭素繊維を熱可塑性樹脂内に均一に分散させる。
次に溶融混練された溶融材料を金型内に射出して、冷却して樹脂成形品を製造する。樹脂成形品は監視レーダーの電磁波送受信装置を取り付ける部材であって、下側や側方、上方に遮蔽部を備えている。
<樹脂成形品の電磁波遮蔽性能の評価>
樹脂成形品は図1に示す評価装置を用いて、電磁波の遮蔽性能の評価を行った。評価装置は電波の送信と受信にプローブアンテナを用いている。送信アンテナ20と、検波器のフランジ部を剥き出しとした受信アンテナ30とは、12mmの距離を隔てて設置する。そして送信アンテナ20の前に樹脂成形品サンプル10を置く。送受信する電磁波40は、周波数24.2GHzの水平偏波であり、樹脂成形品サンプル10は、溶融材料の流れ方向を電磁波の振動面と水平にして置く場合と、垂直にして置く場合の2種類の設置形態で評価を行った。
<実施例>
炭素繊維が含有されているマスターチップとして、無水マレイン酸により変性させたブロックポリプロピレンに、表面に塩素系処理を施してCl基を導入した径が5〜7μm、長さ8mmの炭素繊維を加えたチップを用いた。このマスターチップは、熱可塑性樹脂と炭素繊維との質量比率は6:4である。変性ブロックポリプロピレンは、FT−IRにより赤外線領域の波長吸収を測定することでカルボニル基を有していることが確認された。また、炭素繊維の表面にCl基が存在することはXPSにより確認された。
次に、希釈材料として、未変性のブロックポリプロピレンとエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマとタルク(平均粒径4μm)とを60:15:25の質量割合で混合したものを用意した。そして、射出成形装置の原料ホッパーにマスターチップと前述の希釈材料とを、所定の質量割合で混合して投入し、1点ダイレクトゲートの金型(360mm×250mm×3mm)へ射出して樹脂成形品サンプルを作製した。樹脂成形品の厚みは3.0mmとした。成形条件は、樹脂温度240℃、金型温度60℃、スクリュー回転数80rpm(スクリューはダブルフライトスクリュー)、背圧10MPa、射出速度40mm/s、保圧40MPa×4sec、とした。
図2に、樹脂成形品サンプル中に含まれる炭素繊維の量を変化させて電磁波の遮蔽性能を評価した結果を示す。このとき射出成形により炭素繊維が破断して短くなったが、画像解析により炭素繊維の長さの分布を測定した結果、樹脂成形品サンプル中の炭素繊維の平均長さはいずれも0.5mmよりも長かった。溶融材料の流れ方向を電磁波の振動面に対して水平にして樹脂成形品サンプルを置く場合が電波減衰量が最も大きく、垂直にして置く場合が最も小さく、それ以外の角度でおいた場合は両者の間の減衰量となった。
炭素繊維の添加量が0.2質量%のときに電波減衰量が13.8dB以上となり、電磁波の振動面に対してサンプル内の溶融材料の流れ方向を変化させても電波減衰量の変動が1.7dBと小さい値となった。この電波減衰量及びその変動量は、製品として十分な電磁波遮蔽性能である。そして炭素繊維の添加量を1質量%にまで増やすにつれて電波減衰量は増大していったが、サンプルの向きを変えることによる電波減衰量の変動は1.7〜5.3dBと小さかった。炭素繊維の添加量を0.2質量%よりも減らしたときの電波減衰量を図2のグラフを外挿することに推定すると、製品として必要な電磁波遮蔽性能である11dBは、炭素繊維の添加量を0.1質量%以上とすることにより確保できることがわかるが、データの信頼性の点から0.2質量%以上添加することが好ましい。なお、原料や製造工程のばらつきによる個々の製品の電磁波遮蔽性能のばらつきや製品内の場所によるばらつきを考えると、電波減衰量は20dB以上であることが好ましく、この電磁波遮蔽性能は炭素繊維の添加量が0.4質量%以上であれば達成できる。
次に、樹脂成形品サンプル中の炭素繊維の平均長さによって電磁波遮蔽性能がどのように変わるかを図3に示す。炭素繊維は射出成形機において混練される度合いが高ければ高いほど破断度合いが高まり、短くなっていくと考えられるので、炭素繊維の添加量1質量%として混練度合いを変化させて、複数の樹脂成形品サンプルを作製し、その中の炭素繊維の平均長さを計測した。
図3に示すように、炭素繊維の平均長さが0.50mmから1.14mmの範囲において平均長さと電波減衰量とは比例関係にあって、サンプルの向きを変えることによる電波減衰量の変動は0.9〜5.3dBであった。炭素繊維の平均長さが0.5mmのときに電波減衰量が11.5dB以上となり、製品として十分な電磁波遮蔽性能を確保できた。なお、炭素繊維の平均長さは、マスターチップに含有される炭素繊維の長さや混練工程の条件、金型形状などによって変わり、電磁波遮蔽性能が優れている上限としては15mmである。
<比較例>
比較例の樹脂成形品サンプルを次のように作製した。炭素繊維が含有されているマスターチップとして、未変性のブロックポリプロピレンに、表面に酸化処理を施してカルボニル基を導入した径が5〜7μm、長さ8mmの炭素繊維を加えたチップを用いた。希釈材料は実施例と同じものを用いた。
実施例、比較例ともに炭素繊維の含有量を1質量%とし、同じ射出条件で厚み1.5mmの樹脂成形品サンプルを作製した。サンプル中の炭素繊維の平均長さは実施例では1.14mm、比較例では1.10mmであった。
図4(a)に示されているのが実施例の電磁波遮蔽性能であり、図4(b)に示されているのが比較例の電磁波遮蔽性能である。比較例では、溶融材料の流れ方向を電磁波の振動面に対して水平にして樹脂成形品サンプルを置いた場合に36dBという良好な電波減衰量となったが、垂直にしておいた場合は28dBとなり、サンプルの向きによって電波減衰量が大きく変わってしまう。一方実施例では、サンプルの向きを変えても電波減衰量は34dB〜39dBの範囲内であって、どの方向であっても必要とされる電磁波遮蔽性能を備えているとともに向きによる電波減衰量の変化量が小さい。
比較例の場合は、熱可塑性樹脂が未変性のブロックポリプロピレンであるので炭素繊維との濡れ性が劣り、熱可塑性樹脂成形品において炭素繊維の分散が不均一になってしまう。そのため、サンプルの向きによって電波減衰量が大きく変わってしまうと考えられる。
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
上述の実施形態では射出成型により樹脂成形品を製造しているが、プレスによる成形により樹脂成形品を製造しても構わない。プレスによる場合、炭素繊維は射出成形による破断が行われないので、15mmまでの平均長さの炭素繊維を含有させることができる。マスターチップに用いる変性ポリプロピレンは、カルボキシル基とカルボニル基の両方を有していてもよいし、いずれか一方を有しているものでもよい。
本願の熱可塑性樹脂成形品は車両の部材に限定されず、電子機器の筐体やロボットのボディなど、電磁波を遮蔽する必要がある部材であればどのような部材であっても構わない。
本願の熱可塑性樹脂成形品には炭素繊維の他にフィラーや添加剤、エラストマなどが含まれていても構わない。炭素繊維含有ペレットに含まれるポリプロピレンは1種類であってもよいし、複数種のブレンドであってもよく、複数種の場合はそのうちの少なくとも1種がカルボキシル基及びカルボニル基の少なくとも一方を有していればよい。希釈用のポリプロピレンも1種類であってもよいし、複数種類のブレンドであってもよい。希釈用のポリプロピレンはマスターチップのポリプロピレンと同じポリプロピレンであってもよい。
本願の熱可塑性樹脂成形品に含まれるポリプロピレンはブロックポリプロピレンに限定されず、ホモポリマーであってもよいし、エチレンとのランダムコポリマーであってもよい。
以上説明したように、本発明に係る熱可塑性樹脂成形品は、電磁波遮蔽性能に優れており、電磁波遮蔽部材等として有用である。
10 樹脂成形品サンプル
20 送信アンテナ
30 受信アンテナ
40 電磁波

Claims (10)

  1. 炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品であって、
    前記炭素繊維は0.2質量%以上質量%以下含まれており、
    前記炭素繊維の平均長さは0.5mm以上15mm以下であり、
    前記熱可塑性樹脂はポリプロピレンであって、カルボキシル基及びカルボニル基の少なくとも一方を有するポリプロピレンを含んでおり、
    前記炭素繊維は表面にCl基を有している、熱可塑性樹脂成形品。
  2. 前記ポリプロピレンはブロックポリプロピレンである、請求項1に記載されている熱可塑性樹脂成形品。
  3. 前記炭素繊維の径は5μm以上11μm以下である、請求項1又は2に記載されている熱可塑性樹脂成形品。
  4. 炭素繊維は0.4質量%以上質量%以下含まれている、請求項1から3のいずれか一つに記載されている熱可塑性樹脂成形品。
  5. 炭素繊維の平均長さは0.5mm以上10mm以下である、請求項1から4のいずれか一つに記載されている熱可塑性樹脂成形品。
  6. 射出成型によって形成されている、請求項1から5のいずれか一つに記載されている熱可塑性樹脂成形品。
  7. 炭素繊維と第1の熱可塑性樹脂とを含む第1の樹脂材料と、第2の熱可塑性樹脂を含む第2の樹脂材料とを混練して溶融材料とする工程と、
    前記溶融材料を金型内に射出する工程と
    を備えた熱可塑性樹脂成形品の製造方法であって、
    前記第1の樹脂材料に含まれる前記炭素繊維は、平均長さが0.5mm以上15mm以下であって表面にCl基を有しており、
    前記第1の熱可塑性樹脂はカルボキシル基及びカルボニル基の少なくとも一方を有するポリプロピレンであり、
    前記溶融材料には前記炭素繊維が0.2質量%以上質量%以下含まれている、熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
  8. 前記第2の熱可塑性樹脂は、前記第1の熱可塑性樹脂とは異なるポリプロピレンである、請求項7に記載されている熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
  9. 前記第2の熱可塑性樹脂は、前記第1の熱可塑性樹脂と同じポリプロピレンである、請求項7に記載されている熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
  10. 前記ポリプロピレンはブロックポリプロピレンである、請求項7から9のいずれか一つに記載されている熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
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