JP6120746B2 - 水性ボールペン用インク組成物 - Google Patents
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そこで、滲み性を解消するために、水性ボールペン用インク組成物に、剪断減粘性(非ニュートン性)付与の粘度調整剤(ゲル化剤)などが含有されている。
他方、ホウ酸アルカリ金属塩を用いた水性インキ組成物等としては、ペン先部分の超硬合金製ボールについての耐腐食性を改良するために、ケイ酸アルカリ金属塩及び/又はホウ酸アルカリ金属塩を含むことを特徴とする水性インキ組成物とそれを備えた水性ボールペン(例えば、特許文献4参照)が知られている。
また、上記特許文献4の水性インキ組成物におけるホウ酸アルカリ金属塩はボールに当該ホウ酸アルカリ金属塩の薄膜を形成して、ボールやチップホルダーの腐食を妨げるために使用するものであり、本発明とはその目的、課題が相違するものであり、しかも、ポリビニルアルコールとの併用等についても全く記載や認識もないものである。
(1) 重合度50〜2000のポリビニルアルコールと、ホウ酸及びその塩の少なくとも1種とを含有し、温度25℃において、コーンプレート型回転粘度計による50rpmにおけるインク粘度が1〜50mPa・sの範囲であることを特徴とする水性ボールペン用インク組成物。
(2) 重合度50〜2000のポリビニルアルコールの含有量が水性ボールペン用インク組成物全量に対して、0.1〜8質量%であることを特徴とする上記(1)に記載の水性ボールペン用インク組成物。
(3) ホウ酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種の含有量が水性ボールペン用インク組成物全量に対して、0.01〜3質量%であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の水性ボールペン用インク組成物。
(4) ホウ酸及びその塩がホウ酸、ホウ酸のアルカリ金属塩、ホウ酸のアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の水性ボールペン用インク組成物。
(5) 上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の水性ボールペン用インク組成物を搭載したことを特徴とする水性ボールペン。
本発明の水性ボールペン用インク組成物は、重合度50〜2000のポリビニルアルコールと、ホウ酸及びその塩の少なくとも1種とを含有し、温度25℃において、コーンプレート型回転粘度計による50rpmにおけるインク粘度が1〜50mPa・sの範囲であることを特徴とするものである。
本発明に用いる重合度50〜2000のポリビニルアルコール(以下、単に「PVA」と略記する)は、一般式、−〔CH2−CH(OH)〕m−〔CH2−CH(OCOCH3〕n−で表されるものであり、筆記感、着色性を損なうことなく、低粘度でありながら、筆記描線に滲みもなく、また、紙裏面へのインクの裏抜けもなく、しかも、カスレやボテ、線割れもなく、美文字感を高め、本発明の効果を発揮せしめる点から、その重合度(m+n)は、50〜2000とすることが必要であり、好ましくは、200以上、更に好ましくは、300〜2000、特に好ましくは、300〜1800が望ましい。
この重合度が50未満であると、粘度が充分に付与されず、描線が滲みやすくなり、一方、2000を超えて大きすぎると、線割れが発生しやすくなったり、経時安定性が悪くなり、好ましくない。
また、インクの経時安定性、粘度付与性の点から、そのケン化度{〔m/(m+n)〕×100}は、好ましくは、50mol%以上とすることが望ましく、更に好ましくは、75mol%以上であることが望ましい。
これらのポリビニルアルコールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
具体的に用いることができる変性ポリビニルアルコールとしては、市販の日本合成化学工業社製のゴーセネックスLシリーズ、ゴーセネックスWOシリーズ(日本合成化学工業社製の商品名)、日本酢ビ・ポバール社製のアニオン変性PVA(Aシリーズ)(日本酢ビ・ポバール社製の商品名)、クラレ社製のKポリマーシリーズ(クラレ社製の商品名)等が挙げられる。また、アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合PVAとしては、大同化成工業社製のPOVACOAT(大同化成工業社製の商品名)等が挙げられる。
これらの変性ポリビニルアルコールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
この含有量が0.1質量%未満では、粘度付与性能が充分でなく、描線の滲み耐性が低下し、一方、8%を越えると、粘度が高すぎてインクの追従性能が低下し、好ましくない。
好ましくは、インク成分に対する溶解性や汎用性の点から、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウム、三酸化二ホウ酸の使用が望ましい。
このホウ酸及びその塩の含有量が0.01質量%未満であると、粘度付与性が充分でなく、一方、1質量%を超えると、インク粘度の経時安定性が低下するなどの不具合を招くことがある。
染料としては、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6−C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154,ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットB00B等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料などが挙げられる。
これらの色材は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの色材の含有量は、水性ボールペン用インク組成物全量に対して、0.1〜40質量%に範囲で適宜調整することが可能である。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、水性ボールペン用インク組成物全量に対して、好ましくは、3〜30質量%とすることが望ましい。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、リン酸エステル、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。
また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類など、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モルホリン、トリエチルアミン等のアミン化合物、アンモニア等が挙げられる。
このインク粘度が1mPa・s未満であると、描線の滲み耐性や裏抜け耐性が十分ではなく、一方、インク粘度が50mPa・sを超えると、線割れやボテが発生したり、インクの追従性能が低下して、好ましくない。
なお、上記範囲となるインク粘度の調整は、重合度50〜2000のポリビニルアルコールの各種と、ホウ酸及びその塩の少なくとも1種とを好適に組み合わせ、また、粘度調整剤を併用することにより、行うことができる。
用いることができる水性ボールペンは、上記組成となる水性ボールペン用インク組成物を搭載したものであり、好ましくは、金属ボール等を回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は中継部材を介して挿着したパイプ又はパイプ形状の成形物等からなるインク収容管内に上記特性のインク組成物を充填し、かつ、該インク組成物後端面にインク追従体を配設してなる構成となるものが望ましい。インク追従体としては、インク収容管内に収容された水性ボールペン用インク組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性ボールペン用インク組成物に対して比重が小さい物質、例えば、ポリブテン、シリコーンオイル、鉱油等が挙げられる。
なお、ボールペンの構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に上記構成の水性ボールペン用インク組成物を充填したコレクター構造(インキ保持機構)を備えた直液式のボールペンであってもよいものである。
本発明で用いる上記重合度範囲のポリビニルアルコール、ホウ酸及びその塩の少なくとも1種の併用による効果は、本発明の効果を発揮せしめる持続効果が極めて優れているために多くの含有量が必要でなく、しかも、その効果の発現期間・持続時間も長く、更に水溶性であるために経時的な安定性にも優れたものとなる。
下記表1に示す配合処方にしたがって、常法により各水性ボールペン用インク組成物を調製した。得られた各水性ボールペン用インク組成物(全量100質量%)について、下記方法により水性ボールペンを作製し、下記各評価方法等により、インク粘度、滲み・ボテ、カスレ、耐線割れ及び裏抜けについて評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
温度25℃において、コーンプレート型回転粘度計(TVE−20、TOKIMEC社製、1°34’R24コーン)による回転速度50rpmの条件下で測定した。
ボールペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:シグノUM−100〕の軸を使用し、内径3.8mm、長さ113mmのポリプロピレン製インク収容管とステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.7mm)及び該収容管と該チップを連結する継手からなるリフィールに上記各インクを充填し、インク後端にポリブテンからなるインク追従体を装填し、水性ボールペンを作製した。
上記で作製した各水性ボールペンを用いて筆記試験用紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、1画目の点の滲み、ボテの状態を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:滲み、ボテがほとんどなし。
△:滲み、またはボテが若干ある。
×:滲みやボテがひどく、描線が醜い。
上記で作製した各水性ボールペンを用いて筆記試験用紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、2画目の終筆部のハネの状態を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:終筆部の描線が非常に細く、カスレもなく、きれいな描線が表現できている。
△:描線が多少カスレており、描線濃度がうすい。
×:描線が酷くカスレており、描線が醜い。
上記で作製した各水性ボールペンを用いて筆記試験用紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、5画目の品位を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:線割れが全くなく、きれいな描線が表現できている。
△:線割れが多少あり、描線濃度がうすい。
×:線割れがあり、描線が醜い。
上記で作製した各水性ボールペンを用いて藁半紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、描線の裏面を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:裏抜けがほとんどない。
△:若干の裏抜けがあり。
×:明らかな裏抜けあり。
Claims (3)
- 重合度50〜2000のポリビニルアルコールの少なくとも1種0.1〜8質量%と、ホウ酸及びその塩の少なくとも1種0.01〜3質量%とを含有し、コーンプレート型回転粘度計による回転数50rpmにおける粘度が1〜50mPa・sであることを特徴とする水性ボールペン用インク組成物。
- ホウ酸及びその塩がホウ酸、ホウ酸のアルカリ金属塩、ホウ酸のアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の水性ボールペン用インク組成物。
- 請求項1又は2に記載の水性ボールペン用インク組成物を搭載したことを特徴とする水性ボールペン。
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