JP2004277545A - 筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具 - Google Patents
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Abstract
【課題】インキ中に気泡が発生することを防止できるため、前記インキを用いた筆記具は経時により気泡が発生することなく、筆記先端部へのインキ導出が円滑に行われ、継続して良好な筆跡が形成できる筆記性能を有する。
【解決手段】着色剤、水、水溶性有機溶剤、グルタチオンを含んでなる筆記具用水性インキ組成物であって、前記グルタチオンはインキ中に気泡が発生することを防止する機能を有する。
前記筆記具用水性インキ組成物と、インキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を収容するボールペン等の筆記具。
【選択図】 なし
【解決手段】着色剤、水、水溶性有機溶剤、グルタチオンを含んでなる筆記具用水性インキ組成物であって、前記グルタチオンはインキ中に気泡が発生することを防止する機能を有する。
前記筆記具用水性インキ組成物と、インキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を収容するボールペン等の筆記具。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は筆記具用水性インキ組成物、及び、前記筆記具用水性インキ組成物とインキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を充填した筆記具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、水性インキのうち剪断減粘性を有するインキとしては、高分子多糖類等の剪断減粘性付与剤を含む水性ボールペン用インキ組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この種のインキは、剪断応力が加わらない静置時には高粘度であり、機構内において安定的に保持されており、筆記時にあっては高速回転するボールによる高剪断力によってボール近傍のインキが低粘度化し、その結果、インキはボールとボール収容部の間隙から吐出して紙面に転写される。前記紙面に転写されたインキは剪断力から開放されるため再び高粘度状態となり、従来の水性インキ組成物の欠点である筆跡の滲みを発生させない。
更に、前記した剪断減粘性に依存してインキ漏れが発生することなく、しかも、インキ流量を調節する流量調節部材(ペン芯)を要しないので、簡易な構造の筆記具が得られる。
前記した従来の剪断減粘性を示す水性インキを用いた筆記具は構造が簡易であり、前記流量調節部材を用いた筆記具のようにインキの消費に伴って内部に空気が入り込まないことから内部圧力の変化が少なく、インキのボタ落ちを生じない利点も有する反面、インキの調製及び充填に際し、特別な配慮が必要である。これは、インキ後端面には前記インキ中の溶剤が蒸発することを防止したり、或いは筆記先端部が上向き状態(正立状態)においてインキの逆流を防止するインキの消費に伴って追従するインキ逆流防止体(液栓)が充填されるためであり、インキは外部の空気と遮断された気密空間に存在するため、インキ中に気体が混入していると、経時により気体が集まって気泡が発生し、筆記時のインキ出に悪影響を与えると共に、筆記先端部に気泡が存在すると筆記不能になる虞れがあるからである。
これとは別に、前記インキ逆流防止体が充填されるタイプの筆記具として、筆記先端部近傍に弁機構を設けることによって、剪断減粘性を示さない水性インキ組成物を充填することもできるが、前記と同様に気泡が存在すると筆記性能に悪影響を与える。
前記した問題を解決するためには、機械的にインキ中の気体を取り除く脱泡処理が主に行われているが、この方法のみでは充分な脱泡ができ難く、インキ中に気体が残ることがある。又、顔料、金属粉、酸化チタン等の溶剤に不溶の着色剤を用いる場合、遠心脱泡等の処理を行うと着色剤がインキ収容容器中に偏在するといった不具合を生じる。
従って、インキ中の気体を化学的に除去する方法が考えられ、例えば、アスコルビン酸誘導体を添加したり、α−トコフェロールを添加したり、カテキン類を添加する試みが開示されている(例えば、特許文献2乃至4参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−214782号公報。
【0004】
【特許文献2】
特公平7−113101号公報。
【0005】
【特許文献3】
特開平10−330672号公報。
【0006】
【特許文献4】
特開平10−298483号公報。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記インキ中の気体を化学的に除去する化合物のうち、アスコルビン酸誘導体は着色剤として顔料を用いる系においては、前記顔料の凝集を生じ易くなり実用が制限される。また、α−トコフェロールは水不溶性のため経時によって分離し、気体の除去機能を永続して発現させ難い。また、前記カテキン類は適用する着色剤が限定されたり、気体の除去機能が短期間で消失してしまう等の不具合を生じることなく、良好な気体の除去が可能であるものの、カテキン類は天然抽出物のため純度が低く、しかも、還元性を示して気体を除去する官能基が僅かであり、所望の効果を得るために多量の添加を余儀なくされる。
本発明は、前記したインキ中の気体を化学的に除去する特定の化合物を用いることによって、実用性が広く、且つ、良好な筆記性能を得ることができる筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも着色剤、水、水溶性有機溶剤を含んでなる水性インキ組成物において、グルタチオンを含んでなる筆記具用水性インキ組成物を要件とする。更には、前記グルタチオンをインキ組成物中0.01〜5重量%含んでなること、剪断減粘性付与剤を含んでなること等を要件とする。更には、インキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を収容するタイプの筆記具に前記インキ組成物を充填してなる筆記具を要件とする。
【0009】
本発明者は、前記したインキ中の気体を化学的に除去する化合物のうち、各種添加剤に対する影響が少なく、しかも、少量の添加で十分な気体の除去機能を示すと共に前記機能を永続的に発現させる化合物について鋭意検討した結果、グルタチオンが良好な筆記性能を維持しつつ、長期的に顕著な気体除去機能を示すことを見いだした。
【0010】
前記グルタチオンは還元性を示す化合物であり、インキ組成物中に添加することにより良好な酸素吸収能を発現する。従って、インキ中の酸素を含む気体が集まって気泡となることを抑制するものと推察される。
前記グルタチオンは下記一般式(1)で示される化合物である。
【0011】
【化1】
【0012】
前記グルタチオンは、インキ組成中0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%添加することができる。
0.01重量%以下では所期の気泡発生抑止効果を得ることは困難であり、又、5重量%以下であれば所期の効果が十分に得られるので、これ以上の添加を要しない。
【0013】
前記着色剤としては、水性系媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、
ニューコクシン(C.I.16255)、
タートラジン(C.I.19140)、
アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、
ギニアグリーン(C.I.42085)、
ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、
アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、
ソルブルブルー(C.I.42755)、
ナフタレングリーン(C.I.44025)、
エオシン(C.I.45380)、
フロキシン(C.I.45410)、
エリスロシン(C.I.45430)、
ニグロシン(C.I.50420)、
アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
【0014】
塩基性染料としては、
クリソイジン(C.I.11270)、
メチルバイオレットFN(C.I.42535)、
クリスタルバイオレット(C.I.42555)、
マラカイトグリーン(C.I.42000)、
ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、
ローダミンB(C.I.45170)、
アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、
メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
【0015】
直接染料としては、
コンゴーレッド(C.I.22120)、
ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、
バイオレットBB(C.I.27905)、
ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、
カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、
ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、
フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
【0016】
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、
C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分24%、山陽色素株式会社製〕、
C.I. Pigment Red 146〔品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、
C.I.Pigment Red 220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
なお、前記顔料を分散する樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル酸樹脂、マレイン酸樹脂、アラビアゴム、セルロース、デキストラン、ガゼイン等、およびそれらの誘導体、前記した樹脂の共重合体等が挙げられる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
また、二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、天然雲母、合成雲母、アルミナ、ガラス片から選ばれる芯物質の表面を二酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、コレステリック液晶型光輝性顔料等を使用することもできる。
前記顔料は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成物中1乃至25重量%、好ましくは2乃至15重量%の範囲で用いられる。
【0017】
前記水溶性有機溶剤としては、水に相溶性のある従来汎用の溶剤が用いられ、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオプレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
尚、前記水溶性有機溶剤は1種又は2種以上を併用することもでき、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
【0018】
その他、必要に応じてpH調整剤、防腐剤或いは防黴剤を添加することができる。
前記pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、トリエタノールアミンやジエタノールアミン等の水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等が挙げられる。
前記防腐剤或いは防黴剤としては、石炭酸、1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等が挙げられる。
その他、溶剤の浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン、アニオン、カチオン系界面活性剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤を添加することもできる。
【0019】
又、耐乾燥性を妨げない範疇でアルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルローズ誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の水溶性樹脂を1種又は2種以上添加したり、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤を1種又は2種以上添加することもできる。
【0020】
前記インキ組成物には、剪断減粘性付与剤を添加することもできる。
インキ組成物の剪断減粘性とは静止状態あるいは応力の低い時は著しく高粘度で流動し難い性質を有し、応力が増大すると低粘度化して良流動性を示すレオロジー特性を言うものであり、チクソトロピー性あるいは擬似可塑性とも呼ばれる液性を意味している。よって、インキ組成物は筆記時の高剪断応力下においては三次元構造が一時的に破壊されインキの粘度が低下し、筆記先端部のインキは筆記に適した低粘度インキとなり、紙面に転移される。非筆記時にはインキの粘度が高くなり、インキの漏出を防止したり、インキの分離、逆流を防ぐことができる。又、インキ物性を経時的に安定に保つことができる。
特に、筆記先端部にボールを抱持したボールペンは、筆記時の高剪断応力下においてはボール近傍のインキが筆記に適した低粘度となり、ボールとボールハウスの間隙を毛細管力によって移動して紙面に転移されるインキ特性が必要であり、また、非筆記時には、ボール近傍も含めてすべてのインキの粘度が高くなり、インキの漏出を防止したり、インキの分離、逆流を防止する必要があり、E型回転粘度計による100rpmにおけるインキ粘度が3〜200mPa・s(25℃)、好ましくは5〜200mPa・sを示し、且つ、剪断減粘性指数が0.1〜0.99、好ましくは0.1〜0.8を示すインキ組成物が好適である。
【0021】
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類等を例示でき、単独或いは混合して使用することができる。
更に、N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を用いることもできる。
前記剪断減粘性付与剤は、インキ組成物中0.1〜20重量%の範囲で用いることができる。
【0022】
その他、必要に応じて防錆剤、潤滑剤等を添加することができる。
前記防錆剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、サポニン、ジアルキルチオ尿素等が挙げられる。
前記潤滑剤としては、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩等が挙げられる。
【0023】
なお、好適に用いられる潤滑剤としては、下記一般式(2)又は特公平1−13508号公報に記載の燐酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0024】
【化2】
(式中、R1 は8〜18のアルキル基、アルケニル基、或いは、フェニル基、アルキルフェニル基を示し、R2 はOH、OM、R−O−(CH2 CH2 O)n を示し、Mは、アルカリ金属、アミン、アルカノールアミンを示し、nは、1〜30を示す。)
【0025】
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ、ボールペンチップを筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペンに充填される。
【0026】
ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、従来より汎用のものが適用でき、例えば、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンが例示できる。
【0027】
前記ボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属製のパイプや金属材料の切削加工により形成したチップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
又、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等の0.3〜1.2mm径程度のものが適用できる。
【0028】
前記インキ組成物を収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる成形体が、インキの低蒸発性、生産性の面で好適に用いられる。
又、前記インキ収容管は、2.5〜10mmの内径を有するものが好適に用いられる。
更に、前記インキ収容管として透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等を確認できる。
前記インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、前記レフィルを軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
【0029】
前記インキ収容管に収容したインキ組成物の後端にはインキ逆流防止体が充填される。
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、シリコーン油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム等を添加することもできる。
また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。
更に、前記液状及び固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、水と水溶性有機溶剤からなる媒体中に、染料又は顔料(顔料分散体)、グルタチオン、必要により剪断減粘性付与剤や各種添加剤を投入し、必要により加温して攪拌し、溶解及び分散することにより調製され、ボールペン、サインペン、フェルトペン、筆ペン等の形態の筆記具に充填して使用される。
【0031】
【実施例】
本発明のインキ組成及び比較例のインキ組成を以下に示す。
なお、配合中の数字は重量部を示す。
実施例1
青色顔料 25.0
〔山陽色素(株)製、商品名:SS BLUE GLL)
エチレングリコール 15.0
サクシノグリカン 0.3
(構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体)
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 0.1
〔ゼネカ(株)製、商品名:プロキセルXL−2〕
トリエタノールアミン 0.5
グルタチオン 0.3
水 58.8
合計 100.0
【0032】
前記配合物を混合して室温でディスパーにて3時間攪拌し、濾過することにより筆記具用水性インキ組成物が得られる。
なお、前記インキ組成物の25℃におけるEM型回転粘度計による1rpmにおける粘度は1400mPa・sであり、10rpmにおける粘度は200mPa・sであり、、100rpmにおける粘度は40mPa・sであり、剪断減粘性指数は0.228であった。
【0033】
実施例2
赤色染料 5.0
〔アイゼン(株)製、商品名:フロキシン、C.I.Acid Red92、
C.I.45410〕
ジエチレングリコール 15.0
キサンタンガム 0.3
炭酸ナトリウム 0.3
石炭酸 0.3
グルタチオン 0.1
水 79.0
合計 100.0
【0034】
前記配合物を混合して室温でディスパーにて3時間攪拌し、濾過することにより筆記具用水性インキ組成物が得られる。
なお、前記インキ組成物のEM型回転粘度計による1rpmにおける粘度は1300mPa・sであり、10rpmにおける粘度は190mPa・sであり、、100rpmにおける粘度は41mPa・sであり、剪断減粘性指数は0.249であった。
【0035】
実施例3
赤色染料 5.0
〔アイゼン(株)製、商品名:フロキシン、C.I.Acid Red92、
C.I.45410〕
ジエチレングリコール 15.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.2
〔第一工業製薬(株)製、商品名:セロゲンF−BSH〕
石炭酸 0.3
グルタチオン 0.1
トリエタノールアミン 0.3
水 79.1
合計 100.0
前記配合物を混合して室温でディスパーにて3時間攪拌し、濾過することにより筆記具用水性インキ組成物が得られる。
なお、前記インキ組成物のEL型回転粘度計による10rpmにおける粘度は7.8mPa・sであり、20rpmにおける粘度は7.8mPa・sであり、、50rpmにおける粘度は7.7mPa・sであり、剪断減粘性指数は0.99であった。
【0036】
実施例4
アルミペースト 7.0
〔東洋アルミニウム(株)製、商品名:96−2104)
グリセリン 15.0
サクシノグリカン 0.3
(構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体)
ナトリウムオマジン 0.3
〔パーマケム(株)製、商品名:トップサイド280〕
EDTAのアミン塩 1.0
〔キレスト(株)製、商品名:キレストM−50〕
α−サイクロデキストリン 3.0
〔塩水港製糖(株)製、商品名:デキシパールK−100〕
トリエタノールアミン 0.3
グルタチオン 0.2
水 72.9
合計 100.0
【0037】
前記配合物を混合して室温でディスパーにて3時間攪拌し、濾過することにより筆記具用水性インキ組成物が得られる。
なお、前記インキ組成物の25℃におけるEM型回転粘度計による1rpmにおける粘度は1400mPa・sであり、10rpmにおける粘度は205mPa・sであり、100rpmにおける粘度は44mPa・sであり、剪断減粘性指数は0.249であった。
【0038】
比較例1
実施例1で用いたグルタチオンを水に換えた以外は同様の方法により筆記具用水性インキ組成物を得た。
【0039】
比較例2
実施例2で用いたグルタチオンを水に換えた以外は同様の方法により筆記具用水性インキ組成物を得た。
【0040】
比較例3
実施例3で用いたグルタチオンを水に換えた以外は同様の方法により筆記具用水性インキ組成物を得た。
【0041】
比較例4
実施例4で用いたグルタチオンを水に換えた以外は同様の方法により筆記具用水性インキ組成物を得た。
【0042】
前記インキ調製方法により、実施例インキ及び比較例インキを調製し、直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填した後、前記ボールペンレフィルを軸筒に組み込み、ボールペンとした。
【0043】
前記の如くして得た初期のボールペン、及び、50℃で60日間放置したボールペンのインキ収容管内の気泡の有無、及び筆記試験により筆跡の状態を目視により観察した。
その結果を以下に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
尚、前記表中の判定基準は以下の通り。
筆跡の状態
○:良好な筆跡が得られる。
×:筆跡にカスレが見られる。
【0046】
【発明の効果】
本発明のインキ組成物は、グルタチオンが配合されているので気泡を除去することができ、従って、前記インキを用いた筆記具は、経時により気泡が発生せず、筆記先端部へのインキ導出が円滑に行われ、安定した筆記性能を持続させることができ、継続して良好な筆跡が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は筆記具用水性インキ組成物、及び、前記筆記具用水性インキ組成物とインキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を充填した筆記具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、水性インキのうち剪断減粘性を有するインキとしては、高分子多糖類等の剪断減粘性付与剤を含む水性ボールペン用インキ組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この種のインキは、剪断応力が加わらない静置時には高粘度であり、機構内において安定的に保持されており、筆記時にあっては高速回転するボールによる高剪断力によってボール近傍のインキが低粘度化し、その結果、インキはボールとボール収容部の間隙から吐出して紙面に転写される。前記紙面に転写されたインキは剪断力から開放されるため再び高粘度状態となり、従来の水性インキ組成物の欠点である筆跡の滲みを発生させない。
更に、前記した剪断減粘性に依存してインキ漏れが発生することなく、しかも、インキ流量を調節する流量調節部材(ペン芯)を要しないので、簡易な構造の筆記具が得られる。
前記した従来の剪断減粘性を示す水性インキを用いた筆記具は構造が簡易であり、前記流量調節部材を用いた筆記具のようにインキの消費に伴って内部に空気が入り込まないことから内部圧力の変化が少なく、インキのボタ落ちを生じない利点も有する反面、インキの調製及び充填に際し、特別な配慮が必要である。これは、インキ後端面には前記インキ中の溶剤が蒸発することを防止したり、或いは筆記先端部が上向き状態(正立状態)においてインキの逆流を防止するインキの消費に伴って追従するインキ逆流防止体(液栓)が充填されるためであり、インキは外部の空気と遮断された気密空間に存在するため、インキ中に気体が混入していると、経時により気体が集まって気泡が発生し、筆記時のインキ出に悪影響を与えると共に、筆記先端部に気泡が存在すると筆記不能になる虞れがあるからである。
これとは別に、前記インキ逆流防止体が充填されるタイプの筆記具として、筆記先端部近傍に弁機構を設けることによって、剪断減粘性を示さない水性インキ組成物を充填することもできるが、前記と同様に気泡が存在すると筆記性能に悪影響を与える。
前記した問題を解決するためには、機械的にインキ中の気体を取り除く脱泡処理が主に行われているが、この方法のみでは充分な脱泡ができ難く、インキ中に気体が残ることがある。又、顔料、金属粉、酸化チタン等の溶剤に不溶の着色剤を用いる場合、遠心脱泡等の処理を行うと着色剤がインキ収容容器中に偏在するといった不具合を生じる。
従って、インキ中の気体を化学的に除去する方法が考えられ、例えば、アスコルビン酸誘導体を添加したり、α−トコフェロールを添加したり、カテキン類を添加する試みが開示されている(例えば、特許文献2乃至4参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−214782号公報。
【0004】
【特許文献2】
特公平7−113101号公報。
【0005】
【特許文献3】
特開平10−330672号公報。
【0006】
【特許文献4】
特開平10−298483号公報。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記インキ中の気体を化学的に除去する化合物のうち、アスコルビン酸誘導体は着色剤として顔料を用いる系においては、前記顔料の凝集を生じ易くなり実用が制限される。また、α−トコフェロールは水不溶性のため経時によって分離し、気体の除去機能を永続して発現させ難い。また、前記カテキン類は適用する着色剤が限定されたり、気体の除去機能が短期間で消失してしまう等の不具合を生じることなく、良好な気体の除去が可能であるものの、カテキン類は天然抽出物のため純度が低く、しかも、還元性を示して気体を除去する官能基が僅かであり、所望の効果を得るために多量の添加を余儀なくされる。
本発明は、前記したインキ中の気体を化学的に除去する特定の化合物を用いることによって、実用性が広く、且つ、良好な筆記性能を得ることができる筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも着色剤、水、水溶性有機溶剤を含んでなる水性インキ組成物において、グルタチオンを含んでなる筆記具用水性インキ組成物を要件とする。更には、前記グルタチオンをインキ組成物中0.01〜5重量%含んでなること、剪断減粘性付与剤を含んでなること等を要件とする。更には、インキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を収容するタイプの筆記具に前記インキ組成物を充填してなる筆記具を要件とする。
【0009】
本発明者は、前記したインキ中の気体を化学的に除去する化合物のうち、各種添加剤に対する影響が少なく、しかも、少量の添加で十分な気体の除去機能を示すと共に前記機能を永続的に発現させる化合物について鋭意検討した結果、グルタチオンが良好な筆記性能を維持しつつ、長期的に顕著な気体除去機能を示すことを見いだした。
【0010】
前記グルタチオンは還元性を示す化合物であり、インキ組成物中に添加することにより良好な酸素吸収能を発現する。従って、インキ中の酸素を含む気体が集まって気泡となることを抑制するものと推察される。
前記グルタチオンは下記一般式(1)で示される化合物である。
【0011】
【化1】
【0012】
前記グルタチオンは、インキ組成中0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%添加することができる。
0.01重量%以下では所期の気泡発生抑止効果を得ることは困難であり、又、5重量%以下であれば所期の効果が十分に得られるので、これ以上の添加を要しない。
【0013】
前記着色剤としては、水性系媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、
ニューコクシン(C.I.16255)、
タートラジン(C.I.19140)、
アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、
ギニアグリーン(C.I.42085)、
ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、
アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、
ソルブルブルー(C.I.42755)、
ナフタレングリーン(C.I.44025)、
エオシン(C.I.45380)、
フロキシン(C.I.45410)、
エリスロシン(C.I.45430)、
ニグロシン(C.I.50420)、
アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
【0014】
塩基性染料としては、
クリソイジン(C.I.11270)、
メチルバイオレットFN(C.I.42535)、
クリスタルバイオレット(C.I.42555)、
マラカイトグリーン(C.I.42000)、
ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、
ローダミンB(C.I.45170)、
アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、
メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
【0015】
直接染料としては、
コンゴーレッド(C.I.22120)、
ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、
バイオレットBB(C.I.27905)、
ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、
カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、
ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、
フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
【0016】
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、
C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分24%、山陽色素株式会社製〕、
C.I. Pigment Red 146〔品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、
C.I.Pigment Red 220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
なお、前記顔料を分散する樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル酸樹脂、マレイン酸樹脂、アラビアゴム、セルロース、デキストラン、ガゼイン等、およびそれらの誘導体、前記した樹脂の共重合体等が挙げられる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
また、二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、天然雲母、合成雲母、アルミナ、ガラス片から選ばれる芯物質の表面を二酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、コレステリック液晶型光輝性顔料等を使用することもできる。
前記顔料は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成物中1乃至25重量%、好ましくは2乃至15重量%の範囲で用いられる。
【0017】
前記水溶性有機溶剤としては、水に相溶性のある従来汎用の溶剤が用いられ、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオプレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
尚、前記水溶性有機溶剤は1種又は2種以上を併用することもでき、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
【0018】
その他、必要に応じてpH調整剤、防腐剤或いは防黴剤を添加することができる。
前記pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、トリエタノールアミンやジエタノールアミン等の水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等が挙げられる。
前記防腐剤或いは防黴剤としては、石炭酸、1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等が挙げられる。
その他、溶剤の浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン、アニオン、カチオン系界面活性剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤を添加することもできる。
【0019】
又、耐乾燥性を妨げない範疇でアルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルローズ誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の水溶性樹脂を1種又は2種以上添加したり、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤を1種又は2種以上添加することもできる。
【0020】
前記インキ組成物には、剪断減粘性付与剤を添加することもできる。
インキ組成物の剪断減粘性とは静止状態あるいは応力の低い時は著しく高粘度で流動し難い性質を有し、応力が増大すると低粘度化して良流動性を示すレオロジー特性を言うものであり、チクソトロピー性あるいは擬似可塑性とも呼ばれる液性を意味している。よって、インキ組成物は筆記時の高剪断応力下においては三次元構造が一時的に破壊されインキの粘度が低下し、筆記先端部のインキは筆記に適した低粘度インキとなり、紙面に転移される。非筆記時にはインキの粘度が高くなり、インキの漏出を防止したり、インキの分離、逆流を防ぐことができる。又、インキ物性を経時的に安定に保つことができる。
特に、筆記先端部にボールを抱持したボールペンは、筆記時の高剪断応力下においてはボール近傍のインキが筆記に適した低粘度となり、ボールとボールハウスの間隙を毛細管力によって移動して紙面に転移されるインキ特性が必要であり、また、非筆記時には、ボール近傍も含めてすべてのインキの粘度が高くなり、インキの漏出を防止したり、インキの分離、逆流を防止する必要があり、E型回転粘度計による100rpmにおけるインキ粘度が3〜200mPa・s(25℃)、好ましくは5〜200mPa・sを示し、且つ、剪断減粘性指数が0.1〜0.99、好ましくは0.1〜0.8を示すインキ組成物が好適である。
【0021】
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類等を例示でき、単独或いは混合して使用することができる。
更に、N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を用いることもできる。
前記剪断減粘性付与剤は、インキ組成物中0.1〜20重量%の範囲で用いることができる。
【0022】
その他、必要に応じて防錆剤、潤滑剤等を添加することができる。
前記防錆剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、サポニン、ジアルキルチオ尿素等が挙げられる。
前記潤滑剤としては、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩等が挙げられる。
【0023】
なお、好適に用いられる潤滑剤としては、下記一般式(2)又は特公平1−13508号公報に記載の燐酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0024】
【化2】
(式中、R1 は8〜18のアルキル基、アルケニル基、或いは、フェニル基、アルキルフェニル基を示し、R2 はOH、OM、R−O−(CH2 CH2 O)n を示し、Mは、アルカリ金属、アミン、アルカノールアミンを示し、nは、1〜30を示す。)
【0025】
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ、ボールペンチップを筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペンに充填される。
【0026】
ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、従来より汎用のものが適用でき、例えば、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンが例示できる。
【0027】
前記ボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属製のパイプや金属材料の切削加工により形成したチップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
又、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等の0.3〜1.2mm径程度のものが適用できる。
【0028】
前記インキ組成物を収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる成形体が、インキの低蒸発性、生産性の面で好適に用いられる。
又、前記インキ収容管は、2.5〜10mmの内径を有するものが好適に用いられる。
更に、前記インキ収容管として透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等を確認できる。
前記インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、前記レフィルを軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
【0029】
前記インキ収容管に収容したインキ組成物の後端にはインキ逆流防止体が充填される。
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、シリコーン油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム等を添加することもできる。
また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。
更に、前記液状及び固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、水と水溶性有機溶剤からなる媒体中に、染料又は顔料(顔料分散体)、グルタチオン、必要により剪断減粘性付与剤や各種添加剤を投入し、必要により加温して攪拌し、溶解及び分散することにより調製され、ボールペン、サインペン、フェルトペン、筆ペン等の形態の筆記具に充填して使用される。
【0031】
【実施例】
本発明のインキ組成及び比較例のインキ組成を以下に示す。
なお、配合中の数字は重量部を示す。
実施例1
青色顔料 25.0
〔山陽色素(株)製、商品名:SS BLUE GLL)
エチレングリコール 15.0
サクシノグリカン 0.3
(構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体)
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 0.1
〔ゼネカ(株)製、商品名:プロキセルXL−2〕
トリエタノールアミン 0.5
グルタチオン 0.3
水 58.8
合計 100.0
【0032】
前記配合物を混合して室温でディスパーにて3時間攪拌し、濾過することにより筆記具用水性インキ組成物が得られる。
なお、前記インキ組成物の25℃におけるEM型回転粘度計による1rpmにおける粘度は1400mPa・sであり、10rpmにおける粘度は200mPa・sであり、、100rpmにおける粘度は40mPa・sであり、剪断減粘性指数は0.228であった。
【0033】
実施例2
赤色染料 5.0
〔アイゼン(株)製、商品名:フロキシン、C.I.Acid Red92、
C.I.45410〕
ジエチレングリコール 15.0
キサンタンガム 0.3
炭酸ナトリウム 0.3
石炭酸 0.3
グルタチオン 0.1
水 79.0
合計 100.0
【0034】
前記配合物を混合して室温でディスパーにて3時間攪拌し、濾過することにより筆記具用水性インキ組成物が得られる。
なお、前記インキ組成物のEM型回転粘度計による1rpmにおける粘度は1300mPa・sであり、10rpmにおける粘度は190mPa・sであり、、100rpmにおける粘度は41mPa・sであり、剪断減粘性指数は0.249であった。
【0035】
実施例3
赤色染料 5.0
〔アイゼン(株)製、商品名:フロキシン、C.I.Acid Red92、
C.I.45410〕
ジエチレングリコール 15.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.2
〔第一工業製薬(株)製、商品名:セロゲンF−BSH〕
石炭酸 0.3
グルタチオン 0.1
トリエタノールアミン 0.3
水 79.1
合計 100.0
前記配合物を混合して室温でディスパーにて3時間攪拌し、濾過することにより筆記具用水性インキ組成物が得られる。
なお、前記インキ組成物のEL型回転粘度計による10rpmにおける粘度は7.8mPa・sであり、20rpmにおける粘度は7.8mPa・sであり、、50rpmにおける粘度は7.7mPa・sであり、剪断減粘性指数は0.99であった。
【0036】
実施例4
アルミペースト 7.0
〔東洋アルミニウム(株)製、商品名:96−2104)
グリセリン 15.0
サクシノグリカン 0.3
(構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体)
ナトリウムオマジン 0.3
〔パーマケム(株)製、商品名:トップサイド280〕
EDTAのアミン塩 1.0
〔キレスト(株)製、商品名:キレストM−50〕
α−サイクロデキストリン 3.0
〔塩水港製糖(株)製、商品名:デキシパールK−100〕
トリエタノールアミン 0.3
グルタチオン 0.2
水 72.9
合計 100.0
【0037】
前記配合物を混合して室温でディスパーにて3時間攪拌し、濾過することにより筆記具用水性インキ組成物が得られる。
なお、前記インキ組成物の25℃におけるEM型回転粘度計による1rpmにおける粘度は1400mPa・sであり、10rpmにおける粘度は205mPa・sであり、100rpmにおける粘度は44mPa・sであり、剪断減粘性指数は0.249であった。
【0038】
比較例1
実施例1で用いたグルタチオンを水に換えた以外は同様の方法により筆記具用水性インキ組成物を得た。
【0039】
比較例2
実施例2で用いたグルタチオンを水に換えた以外は同様の方法により筆記具用水性インキ組成物を得た。
【0040】
比較例3
実施例3で用いたグルタチオンを水に換えた以外は同様の方法により筆記具用水性インキ組成物を得た。
【0041】
比較例4
実施例4で用いたグルタチオンを水に換えた以外は同様の方法により筆記具用水性インキ組成物を得た。
【0042】
前記インキ調製方法により、実施例インキ及び比較例インキを調製し、直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填した後、前記ボールペンレフィルを軸筒に組み込み、ボールペンとした。
【0043】
前記の如くして得た初期のボールペン、及び、50℃で60日間放置したボールペンのインキ収容管内の気泡の有無、及び筆記試験により筆跡の状態を目視により観察した。
その結果を以下に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
尚、前記表中の判定基準は以下の通り。
筆跡の状態
○:良好な筆跡が得られる。
×:筆跡にカスレが見られる。
【0046】
【発明の効果】
本発明のインキ組成物は、グルタチオンが配合されているので気泡を除去することができ、従って、前記インキを用いた筆記具は、経時により気泡が発生せず、筆記先端部へのインキ導出が円滑に行われ、安定した筆記性能を持続させることができ、継続して良好な筆跡が得られる。
Claims (4)
- 少なくとも着色剤、水、水溶性有機溶剤を含んでなる水性インキ組成物において、グルタチオンを含んでなる筆記具用水性インキ組成物。
- 前記グルタチオンをインキ組成物中0.01〜5重量%含んでなる請求項1記載の筆記具用水性インキ組成物。
- 剪断減粘性付与剤を含んでなる請求項1又は2記載の筆記具用水性インキ組成物。
- インキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を収容するタイプの筆記具において、請求項1乃至3記載のいずれかのインキ組成物を充填してなる筆記具。
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