JP6120559B2 - 多層構造物の残存耐震性能評価方法 - Google Patents

多層構造物の残存耐震性能評価方法 Download PDF

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本発明は多層構造物の残存耐震性能評価方法に関し,とくに多層構造物の保有耐震性能のうち地震被災後に残存する耐震性能を評価する方法に関する。
地震に被災した建物その他の多層構造物のなかには,本震時の損傷ゆえに余震によって更に損傷が拡大して居住者(利用者)に二次被害を生じるものがある一方で,逆に余震に対して十分な耐震性能を残しているにもかかわらず居住者(利用者)が恐怖心から避難するものがある。余震による二次被害と避難民を共に減らすためには,被災した構造物の残存耐震性能(構造物の保有耐震性能のうち地震被災後に残存する耐震性能。残余耐震性能ということもある。以下同じ)を迅速に評価することが必要である。従来は,専門技術者が目視によって構造物の骨組部材の損傷度を判定し,その判定結果に基づき残存耐震性能を評価する方法が一般的である。しかし,この方法は,判定すべき項目(例えば,鉄骨構造(S造)では鋼材の皺や破断状況等,鉄筋コンクリート構造(RC造)ではひび割れ状況等)は挙げられているものの,耐火被覆や仕上げ材によって骨組部材の損傷を簡単に目視できないことも多いため,残存耐震性能の評価に時間がかかる問題点がある。また,判定者によって評価結果にバラツキが生じる問題点もある。
これに対し,従来の目視判定による方法に代えて,地震に被災した構造物の残存耐震性能を迅速に評価する技術が提案されている(非特許文献1〜2,特許文献1〜3参照)。例えば非特許文献1は,被災した部材のひび割れ幅に基づく損傷度(耐震性能の低下係数)と残存耐震性能との関係を予め定量化しておき,地震直後に部材の損傷度から建物上部構造の被災度(地震時に消費された耐震性能)及び残存耐震性能を迅速に評価する方法を提案している。また特許文献1及び2は,建物の少なくとも基礎部と上層階とに設置した各加速度センサにより計測した加速度計測値を積分することにより建物上の計測点での絶対変位を算出し,建物の振動モード形を仮定して建物各階の相対変位と絶対加速度を算出し,これらの値から建物の応答変形量及び応答加速度を計算して性能曲線を算出し,他方で基礎部での加速度計測値を入力地震動として加速度応答スペクトル及び変位応答スペクトルを計算して建物の要求曲線を算出し,性能曲線と要求曲線との比較によって建物の残存耐震性能を迅速に評価する方法を提案している。
特開2003−344213号公報 特開2011−095237号公報 特開2008−039507号公報 特開2009−286927号公報 特許第2508244号公報
文野正裕ほか「部材の残余耐震性能に基づいた震災RC造建物の被災度評価法に関する研究」コンクリート工学年次論文集,Vol.22,No.3,2000年発行 楠浩一「建築物の地震後の残余耐震性能評価」コンクリート工学,Vol.44,No.5,2006年5月発行 秋山宏「エネルギーの釣合に基づく建築物の耐震設計」技報堂出版,1999年11月26日発行 日建設計東京オフィス構造設計室「建築物の性能設計と検証法−耐震設計を中心として」オーム社,pp.36〜45,2003年9月発行 高橋元美他「高層RC造骨組の柱の変動軸力を考慮した等価曲げせん断モデルによる地震応答解析」日本建築学会構造工学論文集,Vol.39B,pp.147〜154,1993年3月発行 生産計測技術研究センター「応力発光体を用いた構造物の安全管理」産総研TODAY,Vol.10,No.7,2010年7月,インターネット<http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol10_07/p18.html> 社団法人日本免震構造協会「免震構造−部材の基本から設計・施工まで−」オーム社,pp.91〜165,平成22年12月15日発行
非特許文献1の評価方法は,部材の損傷度から評価した建物上部構造の被災度と従来の目視判定による建物全体の被災度との間に線形関係があることを前提としている。ただし,建物全体の被災度を直接求めるものではなく,部材毎にバラツキのある損傷度から建物全体の被災度(残存耐震性能)を推定・評価しているので,評価結果のバラツキを避けることは困難である。これに対し,特許文献1及び2の評価方法は,建物の性能曲線と要求曲線とから建物全体の残存耐震性能を直接求めているので,部材毎の損傷度のバラツキに影響されることなく地震に被災した構造物自体の残存耐震性能を客観的・定量的に評価することができる。
しかし,特許文献1及び2の方法は,主に地震時に生じる建物の最大変形に着目して残存耐震性能を評価するものであり,変形の繰り返しが建物の耐震性能に与える影響を適切に評価することができない問題点がある。例えば鉄骨構造(S造)の建物では,地震時に受ける振動の最大振幅が同じであっても,その振動の繰り返しが10回である梁は破断しないのに対し,振動の繰り返しが20回にも及ぶ梁は破断することが経験されている。地震に被災した構造物の残存耐震性能の評価精度及び評価の信頼度を高めるためには,構造物が受ける最大変形(振幅)の影響だけでなく,地震時に加わる変形の繰り返し回数の影響をも考慮して残存耐震性能を評価することが重要である。
そこで本発明の目的は,地震時に加わる変形の繰り返しの影響も考慮して地震被災後の多層構造物の残存耐震性能を評価できる方法を提供することにある。
本発明者は,地震時の構造物に入力されるエネルギーの釣り合いに注目した。地震時の構造物の揺れ方を把握するためには構造物の運動方程式を解かなければならないが,運動方程式の両辺を地震継続時間で積分してエネルギーの釣合式((1)式参照)を作成し,エネルギー授受の観点から地震時の構造物の挙動(壊れ方)を把握する手法(エネルギー法)が開発されている(非特許文献3参照)。(1)式に示すように,構造物に入力される地震の総エネルギーEは,構造物の弾性振動エネルギーWe,累積塑性ひずみエネルギーWp,及び減衰によるエネルギー吸収量Whの総和と釣り合っている。このうち,地震時の弾性変形は地震収束後に解放されて無ひずみ状態に復帰するが,塑性変形は解放されずに破壊状態に至るまで蓄積されることから,地震時に構造物が受けた被災度は(1)式における累積塑性ひずみエネルギーWpと対応している。
E=We+Wp+Wh ……………………………………………………………(1)
すなわち,地震時に構造物に蓄積された累積塑性ひずみエネルギーWpを求めれば,地震時の変形の大きさ及び繰り返し回数の両者の影響によって消費された構造物の耐震性能(消費耐震性能)を定量的に評価することができる。また,地震前に構造物に蓄積され得る累積塑性ひずみエネルギーWsを求めれば,その構造物が予め保有する耐震性能(保有耐震性能)を定量化することができ,その保有耐震性能と消費耐震性能とから地震後の構造物の残存耐震性能を定量的に評価することができる。本発明は,この着想に基づく研究開発により完成に至ったものである。
一般に,多層構造物の特定階層に一方向の水平力が入力されたときの荷重−層間変形の関係は図5(A)のように表すことができる。同図において,Qyは降伏耐力,δyは降伏耐力Qyに対応する降伏変形(弾性層間変形)を示す。また,この階層の塑性化の進展度合は塑性変形(δp−δy)として定義され,その塑性変形(δp−δy)と降伏変形δyとの比である(2)式の塑性変形倍率μにより計測することができ,この階層に蓄積される塑性ひずみエネルギーWpは塑性変形倍率μを用いて(3)式のように表すことができる。
δp=(1+μ)・δy …………………………………………………………(2)
Wp=Qy・(δp−δy)=μ・Qy・δy ………………………………(3)
他方,多層構造物の特定階層に地震動が入力されたときの荷重−層間変形の関係(復元力特性)は図5(B)のように表すことができる(非特許文献3〜5参照)。同図においても,Qyは降伏耐力,δyは降伏耐力Qyに対応する降伏変形(弾性層間変形)を示す。また,この場合の塑性化の進展度合は,荷重−層間変形の各ステップにおける塑性変形Δδp1,Δδp2,Δδp3,Δδp4を加算した(4)式の累積塑性変形δpとして定義され,累積塑性変形δpと降伏変形δyとの比である(5)式の累積塑性変形倍率ηpにより計測することができる(非特許文献3〜5参照)。従って,この階層に地震時に蓄積される塑性ひずみエネルギーWpは,累積塑性変形倍率ηpを用いて(6)式のように表すことができる。すなわち,上述した構造物の累積塑性ひずみエネルギーWp,Wsに対応する消費耐震性能及び保有耐震性能は,それぞれ入力地震動に対する構造物の累積塑性変形倍率ηp(=Wp/Qy・δy),ηs(=Ws/Qy・δy)を指標として求めることができる((6)式及び(7)式参照)。
δp=(Δδp1+Δδp3)+(Δδp2+Δδp4) …………………(4)
=ηp・δy …………………………………………………………………(5)
Wp=Qy・δp=ηp・Qy・δy …………………………………………(6)
Ws=Qy・δs=ηs・Qy・δy …………………………………………(7)
一側面において本発明は,図2の実施例及び図4の流れ図に示すように,多層構造物20の弾塑性応答解析モデルCに強さの異なる想定地震動Vsを入力して階層Fi毎の荷重−層間変形履歴(図6参照)を求めるサイクルを安全限界に達する階層Fk(例えば3階)が検出されるまで繰り返し且つその検出階層Fkの累積塑性変形倍率ηsとして構造物20の保有耐震性能を算出し(図4のステップS203〜S207),その保有耐震性能ηs以下の所定累積塑性変形倍率η1(例えば保有耐震性能ηs×50%)に相当するエネルギーを吸収した時点で破断,発熱又は発色するマーカー25(図2(C)及び図2(D)参照)を作成して構造物20の検出階層Fkに取り付け(図4のステップS208),地震被災後にマーカー25の破断,発熱又は発色状況により構造物20の残存耐震性能ηrを判定する(図4のステップS209)多層構造物の残存耐震性能評価方法を提供するものである。
望ましい実施例では,多層構造物20の保有耐震性能ηsを,前記検出階層Fkに代えて,構造物20の振動モードの振幅が最大となる階層又は構造物20の指定された階層の累積塑性変形倍率として算出し,その算出した階層にマーカー25を取り付ける。また,好ましい実施例では,図2(C)及び図2(D)に示すように,マーカー25に,多層構造物20の保有耐震性能ηs以下の複数の異なる所定累積塑性変形倍率η1,η2,η3(例えば累積塑性変形倍率ηs×50%,×70%,×90%;図1の設計手段13参照)に相当するエネルギーを吸収した時点で順次に破断,発熱又は発色する複数の順番付き部材26a,26b,26c,……を含め,地震被災後に破断,発熱又は発色した部材26a,26b,26c,……の順番により多層構造物20の残存耐震性能ηrを判定する
例えば,図2(C)に示すように,順番付き部材26a,26b,26c……をそれぞれ,複数の異なる所定累積塑性変形倍率η1,η2,η3に相当するエネルギーを吸収した時点で順次に破断する鋼材ダンパーとすることができる。或いは,図2(D)に示すように,順番付き部材26a,26b,26c……をそれぞれ,複数の異なる所定累積塑性変形倍率η1,η2,η3に相当するエネルギーを吸収した時点で所要温度に発熱し且つその発熱により変色又は融解する組成物28d,28e,28f……が表面に塗布された摩擦ダンパー又は鋼材ダンパーとすることもできる。
本発明による多層構造物の残存耐震性能評価方法は,多層構造物20の弾塑性応答解析モデルCに強さの異なる想定地震動Vsを入力して安全限界に達する階層Fkを検出し,その検出階層Fkに蓄積された累積塑性ひずみエネルギーWs(累積塑性変形倍率ηs)に基づいて構造物20の保有耐震性能ηsを求め又は視覚化し,地震被災時に検出階層Fkに蓄積された累積塑性ひずみエネルギーWp(累積塑性変形倍率ηp)に基づいて構造物20の消費耐震性能ηpを求め又は視覚化し,構造物20の消費耐震性能ηpと保有耐震性能ηsとを比較することにより被災後の構造物20の残存耐震性能ηr(=ηs−ηp)を判定するので,次の有利な効果を奏する。
(イ)構造物20に蓄積された累積塑性ひずみエネルギーWpに基づいて保有耐震性能及び消費耐震性能を求めることにより,地震時の最大変形だけでなく変形の繰り返し回数の影響も考慮して構造物20の残存耐震性能を評価することができる。
(ロ)地震計(加速度計,変位計等)の計測地震動Vpを利用して被災後の残存耐震性能を算出することもできるが,所定の累積塑性ひずみエネルギーを吸収した時点で破断,発熱又は発色するマーカー25によって構造物20の保有耐震性能を予め視覚化しておくことにより,たとえ被災時に計測地震動Vpが利用できないときでも,地震被災後にマーカー25を観察するだけで構造物20の残存耐震性能を容易に評価することが可能となる。
(ハ)マーカー25は,専門知識を持たない構造物の居住者(利用者)が自ら地震直後に観察して残存耐震性能を簡単に評価することができ,避難すべきか否かについて迅速で直感的な判断を援助することができる。
(ニ)また,マーカー25は電力その他の外部エネルギーの供給を要としないものとすることができるので,インフラが使用できないような大地震直後においてもマーカー25を確実に動作させて構造物20の残存耐震性能を評価することが可能となる。
(ホ)さらに,マーカー25は構造物20の竣工時に取り付けておけばメンテナンスその他の維持コストを必要としないので,地震計(加速度計,変位計等)を利用する場合よりも経済的に残存耐震性能を評価することが可能である。
以下,添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
本発明で用いる残存耐震性能評価プログラムの一実施例の機能ブロック図である。 本発明による残存耐震性能評価マーカーの一実施例の説明図である。 本発明で用いる残存耐震性能評価プログラムの流れ図の一例である。 本発明によるマーカーを用いた残存耐震性能評価方法の流れ図の一例である。 累積塑性変形倍率の説明図である。 図2の実施例における階層毎の荷重−層間変形履歴の説明図である。 図2の実施例における階層毎の地震動応答及び累積塑性変形倍率の説明図である。 図2の実施例における安全限界に到達する階層の検出手法の説明図である。 図2の実施例における構造物の保有耐震性能の算出方法説明図である。
本発明の詳細は実施例1において説明するが,その前提として先ず,本発明で用いる多層構造物の残存耐震性能評価プログラムについて説明する。図1は,残存耐震性能評価プログラムを内蔵したコンピュータ1のブロック図の一例を示す。図示例のコンピュータ1は,キーボード・マウス等の入力装置2とディスプレイ・プリンタ等の出力装置3と加速度計・変位計等の地震計9とが接続され,多層構造物20の弾塑性応答解析モデルC等を記憶する記憶手段7を有している。記憶手段7に記憶するデータは,入力装置2から入力手段5を介して入力することができる。また図示例のコンピュータ1は,内蔵プログラムとして,算出手段11と判定手段12と,入力手段5及び出力手段6とを有している。出力手段6は,判定手段12による評価結果(残存耐震性能)を出力装置3に出力するプログラムである。なお,図示例のコンピュータ1は内蔵プログラムとして,算出手段11の算出した構造物20の保有耐震性能に基づいて後述する残存耐震性能評価マーカー25(図2(C)及び図2(D)参照)を設計するマーカー設計手段13を有している。ただし,マーカー25使用しない場合はマーカー設計手段13省略できる。
図3は,図1のコンピュータ1によって,図2に示すような多層構造物20の地震被災後の残存耐震性能を評価する方法の流れ図を示す。図2の多層構造物20は,コンクリート充填鋼管構造(CFT造)の柱とH形鋼の梁とを骨組部材とした23階建ての鉄骨構造(S造)である。以下,図3の流れ図を参照して図1の各プログラムの機能を説明するが,本発明は鉄骨構造(S造)への適用に限定されるものではなく,鉄筋コンクリート構造(RC造),鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)等の残存耐震性能を評価する場合にも適用可能である。
先ずステップS101において,多層構造物20の弾塑性応答解析モデルCを構築して記憶手段7に記憶する。解析モデルCは,後述するように想定地震動Vs又は計測地震動Vpを入力して各階層Fiの荷重−層間変形履歴(図6参照)を算出するためのものである。例えば,構造物20の弾塑性応答解析モデルCを,層全体を1つのバネとして各階層Fiの質点を直列につないだ平面モデル(質点モデル)とし,各階層Fiの復元力特性を適切にモデル化して荷重−層間変形履歴を算出する。好ましくは,構造物20の弾塑性応答解析モデルCを各骨組部材の位置と形状と弾塑性応答特性(復元力特性等)とを含む立体解析モデルとし,地震動Vs,Vpの入力に応じて各階層Fiの荷重−層間変形履歴と共に各骨組部材の荷重−層間変形履歴を算出する。立体解析モデルを用いることにより,簡易な平面モデル(質点モデル)を用いた場合に比して,後述する構造物20の保有耐震性能ηsの算出精度を高めることが期待できる。
次いでステップS102において,想定地震動データVsを記憶手段7に記憶する。例えば,過去の適当な地震記録を選択して想定地震動データVsとすることができる。好ましくは,評価対象の多層構造物20の設置位置において発生が予測される周辺の震源位置・震源規模(マグニチュード)等を選択し,その震源距離と震源規模と距離減衰式とから経験的手法により,実際に発生する可能性の高い地震動データVsを予想して記憶手段7に記憶する。更に好ましくは,構造物20の設置位置における地盤特性データ(増幅特性)Uを記憶手段7に記憶し,構造物20の設置地盤による増幅を考慮して地震動データVsを予想する。後述するように,想定地震動データVsの入力に応じて各階層Fiの荷重−層間変形履歴を算出し,その荷重−層間変形履歴に基づいて構造物20の保有耐震性能を算出するので,実際に発生する可能性の高い想定地震動データVsを用いる(更に構造物20周辺の地盤による増幅を考慮する)ことにより,構造物20の保有耐震性能ηsの算出精度を高めることが期待できる。
ステップS103〜S107は,図1のコンピュータ1の算出手段11によって構造物20の保有耐震性能を算出する処理を示す。算出手段11は,ステップS103において記憶手段7から想定地震動Vsを読み出して初期強度(×1.0)に設定したうえで構造物20の弾塑性応答解析モデルCに入力し,ステップS104において解析モデルCの各階層Fiの荷重−層間変形履歴を算出する。図6(A)は,ステップS104で算出された階層Fi別の荷重−層間変形履歴の一例を示す(図示例は3階F3)。図5(B)を参照して上述したように,図示例のような荷重−層間変形履歴の各ステップにおける塑性変形Δδp1,Δδp2,Δδp3,Δδp4から,各階層Fi及び各骨組部材の累積塑性変形δp((4)式)及び累積塑性変形倍率ηs((6)式)を算出することができる(図7(B)参照)。また,各ステップにおける降伏変形δy及び塑性変形Δδp1,Δδp2,Δδp3,Δδp4の大きさから,各階層Fi及び各骨組部材の最大層間変形(例えば最大層間変形角等)を算出することができる(図7(A)参照)。
また算出手段11は,ステップS105において安全限界に達する階層Fkが検出されたか否かを判断し,検出されない場合はステップS106に進んで想定地震動Vsの強さを1段階増大させたうえでステップS103へ戻り,安全限界に達する階層Fkが検出されるまで上述したステップS103〜S106のサイクルを繰り返す。例えば,初期強度(×1.0)の想定地震動Vsの入力では安全限界に達する階層Fkが検出されない場合に,ステップS106において想定地震動Vsの入力倍率を×1.2,×1.4,×1.6,×1.8,×2.0に増大させながらステップS103〜S106のサイクルを繰り返す(図7参照)。図6(B)は,想定地震動Vsの入力倍率を増大したときにステップS104で算出された階層Fi別の荷重−層間変形履歴を示す(図示例は3階F3)。
多層構造物20の特定の階層Fkが安全限界に達したか否かは,例えば各骨組部材に累積疲労損傷則を適用し,その階層Fkの何れかの骨組部材が破断(疲労破壊)を起こすか否かにより判断することができる(図8参照)。例えば,予め骨組部材(例えば梁部材)に発生する応力振幅σ1,σ2,……,σiがそれぞれ破断に至るまでの繰り返し回数N1,N2,……,Niを求めて記憶手段7に記録しておき,ステップS104において各階層Fiの荷重−層間変形履歴から各骨組部材に発生する応力振幅σ1,σ2,……,σiの繰り返し回数n1,n2,……,niを計測し,(11)式のように各応力振幅σ1,σ2,……,σiの損傷度の総和によって各骨組部材の破断に対する損傷度Dを算出する。ステップS105において,各階層Fiにおいて何れかの骨組部材の損傷度Dが1以上となるか否かを検出し,損傷度Dが1以上の骨組部材の発生した階層Fkを安全限界に達したと判断する。
D(破断に対する損傷度)=Σ(ni/Ni) ………………………………(11)
図8は,想定地震動Vsの入力倍率が×1.4以下であれば骨組部材の損傷度Dが1以上となる階層Fkは検出されないが,入力倍率が×1.6のときは3階F3において損傷度Dが1以上となり,入力倍率が×1.8のときは3階F3だけでなく2階F2においても損傷度Dが1以上となり,入力倍率が×2.0になると2〜5階において損傷度Dが1以上となることを示している。ただし,ステップS105の安全限界の判断は,骨組部材の損傷度Dを用いた方法に限定されず,従来技術に属する他の方法によって判断することも可能である。例えば,図7(B)に示す骨組部材毎の更累積塑性変形倍率ηから破断の危険性を判断して各階層Fiが安全限界に達したか否かを判断してもよい。
ステップS105において安全限界に達する階層Fkが検出されたときはステップS107に進み,安全限界到達が検出された階層Fk(図示例では3階F3)を評価対象階層Fkとして選定すると共に,その想定地震動Vsの入力倍率における評価対象階層Fkの累積塑性変形倍率ηsとして構造物20の保有耐震性能ηsを算出する。図9は,想定地震動Vsの入力倍率の変化に応じて各階層Fiの累積塑性変形倍率ηsを算出した結果を表しており,上述したように入力倍率が×1.6のときの3階F3を評価対象階層とする場合は,この構造物20の保有耐震性能ηsが14であることを示している。算出した構造物20の保有耐震性能ηsは記憶手段7に記憶し,後述する判定処理(ステップS110)で利用する(図1も参照)。
なお,構造物20の保有耐震性能ηsを算出するべき評価対象階層Fkは,必ずしも安全限界到達が検出された階層を選定しなくてもよく,例えば図7(A)において入力倍率が×1.6のときに最大層間変形(最大層間変形角)が最も大きい値となる4階F4を評価対象階層Fkとして選定し,ステップS107において安全限界到達が検出された3階F3と異なる4階F4の累積塑性変形倍率ηsを構造物20の保有耐震性能ηsとすることができる。この場合は,ステップS105において評価対象階層Fk(4階F4)の安定限界到達が検出されるまで上述したステップS103〜S106のサイクルを繰り返し,ステップS107において安全限界到達が検出された評価対象階層Fk(4階F4)の累積塑性変形倍率ηsとして構造物20の保有耐震性能ηsを算出する。
また,例えば図示例の多層構造物20内の重要な設備等がおかれた指定階層(例えば5階F5)を評価対象階層Fkとして選定し,そのような指定階層(例えば5階F5)の安全限界到達が検出されるまでステップS103〜S106のサイクルを繰り返し,ステップS107において指定階層(例えば5階F5)の安全限界到達時の累積塑性変形倍率ηsとして構造物20の保有耐震性能ηsを算出してもよい。更に,別途の固有振動モード解析等によって1〜3次モードまでの振幅(変位モード)が最大となる階層Fkが検出されているときは,その振幅が最大となる階層Fkを評価対象階層Fkとして選定し,その評価対象階層Fkの安全限界到達時の累積塑性変形倍率ηsとして構造物20の保有耐震性能ηsを算出することも可能である。
図3のステップS108〜S110は,地震が発生した場合に,図1のコンピュータ1の判定手段12によって被災時の構造物20の消費耐震性能を算出し,その消費耐震性能ηpとステップS107で算出した保有耐震性能ηsとから構造物20の残存耐震性能ηrを判定する処理を示す。判定手段12は,ステップS108において地震計9による被災時の計測地震動Vpを構造物20の弾塑性応答解析モデルCに入力し,ステップS109において解析モデルCの各階層Fiの荷重−層間変形履歴を算出する。荷重−層間変形履歴の算出方法は,入力地震動が相違する点を除いて上述したステップS104と同様である。また判定手段12は,ステップS109において,計測地震動Vpにおける評価対象階層Fkの累積塑性変形倍率ηsを構造物20の消費耐震性能ηpとして算出する。この消費耐震性能ηpの算出方法も,入力地震動が相違する点を除いて上述したステップS107における保有耐震性能ηsの算出方法と同様である。
更に判定手段12は,ステップS110において,構造物20の消費耐震性能ηpと保有耐震性能ηsとを比較することにより,被災後の構造物20の残存耐震性能ηr(=ηs−ηp)を判定する。上述したように図示例の多層構造物20は保有耐震性能ηs=14であるから,例えば消費耐震性能ηp=6程度であれば残存耐震性能ηr=8(=14−6)であると判定し,保有耐震性能ηsの約57%(=8/14)が残っているので余震によっても構造物20は倒壊するおそれがないと判定することができる。また,例えば消費耐震性能ηp=12程度であれば残存耐震性能ηr=2(=14−12)であると判定し,保有耐震性能ηsの約14%(=2/14)しか残っていないので構造物20が余震により倒壊するおそれがあると判定することができる。
図3の流れ図のステップS111〜S112は,残存耐震性能ηrに基づいて構造物20の倒壊のおそれを判断し,必要に応じて構造物20を補修・改築する処理を示す。また,ステップ113において残存耐震性能ηrの評価を継続するか否かを判断し,継続する場合はステップS108に戻って例えば余震の発生を待ち合わせ,余震が発生したときはその計測地震動Vpを判定手段12に入力して余震による消費耐震性能ηp´を算出し,本震後の構造物20の残存耐震性能ηrと比較することにより余震後の残存耐震性能ηr´(=ηr−ηp´)を判定する。ステップS108〜S113を繰り返すことにより,余震が繰り返し発生する場合にも構造物20の倒壊のおそれを適切に判定することが可能となる。
図3の流れ図によれば,多層構造物20の保有耐震性能及び消費耐震性能を評価対象階層Fkの累積塑性変形倍率ηsとして,すなわち評価対象階層Fkに蓄積された累積塑性ひずみエネルギーWpに基づいて算出するので,地震時の最大変形だけでなく変形の繰り返し回数の影響も考慮して構造物20の残存耐震性能を評価することができる。また,被災時の計測地震動Vpを入力するだけで構造物20の残存耐震性能を迅速に且つ定量的に評価することができ,余震に対する安全性の判断を援助することができる。更に,余震が繰り返されるような場合でも,累積塑性ひずみエネルギーWpに基づき耐震性能の段階的な低下(消費)を把握して構造物20の倒壊のおそれを適切に判定することができる。
上述した図3の流れ図では,地震計9の計測地震動Vpを利用して地震被災後の多層構造物20の残存耐震性能を算出しているが,残存耐震性能を評価すべき構造物20にそれぞれ地震計9を設けることは合理的・経済的ではなく,被災直後に地震計9の計測地震動Vpを利用できない場合もある。図4の流れ図は,地震計9の計測地震動Vpの利用に代えて,残存耐震性能評価マーカー25(図2(C)及び図2(D)参照)を利用して地震被災後の構造物20の残存耐震性能を評価する本発明の評価方法の流れ図を示す。また,図1のコンピュータ1は,残存耐震性能評価マーカー25を設計するマーカー設計手段13を有している。以下,図4の流れ図を参照して,マーカー25を利用した残存耐震性能評価方法及び図1のマーカー設計手段13の機能を説明する。
図4のステップS201〜207は,上述した図3のステップS101〜S107と同様に,コンピュータ1の算出手段11によって多層構造物20の保有耐震性能ηsを算出する処理を示す。ステップS208において,算出手段11の算出した構造物20の保有耐震性能ηsをマーカー設計手段13に入力し,先ず保有耐震性能ηs以下の所定累積塑性変形倍率η1を設定する。図1のマーカー設計手段13は,例えば保有耐震性能ηsに対して50%,70%,90%の3つの累積塑性変形倍率η1,η2,η3を設定しているが,設定数及び設定割合は任意に選択することができ,少なくとも1個の所定累積塑性変形倍率η1(例えば保有耐震性能ηs×50%)を設定すれば足りる。次いでマーカー設計手段13は,設定した所定累積塑性変形倍率η1に相当するエネルギーを吸収した時点で破断,発熱又は発色する残存耐震性能評価マーカー25を設計して製造する。
例えば,力学的エネルギーを吸収して弾性変形領域ないし塑性変形領域で発光する応力発光物質が開発されており(特許文献4,非特許文献6参照),その発光の繰り返し回数,発光時間,発光量等から吸収したエネルギーを推定することができる。このことから,所定累積塑性変形倍率η1に相当するエネルギー(塑性ひずみエネルギー)を吸収した段階で所定の発光繰り返し回数,発光時間,又は発光量を示すような発光物質を設計・製造して残存耐震性能評価マーカー25とすることができる。
図2(A)及び図2(B)に示すように,そのように設計・製造したマーカー25を,多層構造物20の評価対象階層Fkの層間部材(例えば壁,間柱,犠牲部材等)に塗布又は充填することにより取り付け,地震被災後にマーカー25の発色状況(発光の繰り返し回数,発光時間,発光量等)を観察することにより,構造物20の蓄積された塑性ひずみエネルギー(累積塑性ひずみエネルギーWp)が所定累積塑性変形倍率η1(例えば保有耐震性能ηs×50%)を超えたか否か,すなわち構造物20の残存耐震性能を判定することができる(後述のステップS209参照)。マーカー25には,必要に応じて,発光の繰り返し回数,発光時間,発光量等を記録する受光手段及びメモリ等を含めることができる。
好ましくは,図2(C)及び図2(D)に示すように,多層構造物20の保有耐震性能ηs以下の複数の異なる所定累積塑性変形倍率η1,η2,η3(例えば保有耐震性能ηsの50%,70%,90%)に相当するエネルギーを吸収した時点で順次に破断,発熱又は発色するような複数の順番付き部材26a,26b,26c,……を残存耐震性能評価マーカー25に含める。そのような複数の順番付き部材26a,26b,26c,……を用いることにより,地震被災後に破断,発熱又は発色した部材26a,26b,26c,……の順番から,構造物20の残存耐震性能ηrをより詳細に判定することができる。
順番付き部材26a,26b,26c……は,例えば図2(C)に示すように,複数の異なる累積塑性変形倍率η1,η2,η3……に相当するエネルギーを吸収した時点で順次に破断する鋼材ダンパーとすることができる。図示例の鋼材ダンパー26は,地震の揺れ(塑性変形エネルギー)を吸収して破断するように蜂の巣状のハニカム孔27を設けた鋼材(例えば鹿島建設株式会社製のハニカム・ダンパー,特許文献5参照)であり,鋼材の材質とハニカム孔27の形状とから設計手段13によって破断を起こす累積塑性変形倍率ηを設計することができる。例えば構造物20の保有耐震性能ηsに応じて3つの鋼材ダンパー26a,26b,26cを備えた残存耐震性能評価マーカー25を設計・製造し,図2(A)及び図2(B)に示すように,それを構造物20の評価対象階層Fkの層間(例えば壁等)に配置して取り付ける。好ましくは,構造物20の評価対象階層Fkの水平2方向の壁面にそれぞれマーカー25を設置するが,設置位置・設置数は図示例に限定されない。
また,図2(D)に示すように,順番付き部材26d,26e,26f……を,複数の異なる累積塑性変形倍率η1,η2,η3……に相当するエネルギーを吸収した時点で所要温度に発熱し,その発熱によって変色又は融解する組成物28d,28e,28f……が表面に塗布された摩擦ダンパー又は鋼材ダンパーとすることも可能である。図示例の摩擦ダンパー26は,所要摩擦係数の滑り材を滑り面に所要圧縮力で押し付け,滑り材と滑り面との摩擦力によって地震の揺れ(塑性変形エネルギー)を吸収するものであり,滑り材の摩擦係数と圧縮力とから設計手段13によって塑性変形エネルギーの吸収に応じた発熱量を設計することができる(非特許文献7参照)。また,例えば上述したハニカム・ダンパーその他の鋼材ダンパー26も,破断する前は塑性変形エネルギーの吸収に応じて発熱するので,その発熱量を破断設計手段13により設計することが可能である。
図2(D)において,摩擦ダンパー又は鋼材ダンパー26の表面に塗布する組成物28は,例えば所定温度になると色調変化を起こし且つ色調変化後は温度が低下しても色調が元に戻らない化学物質(感温組成物)とすることができる。不可逆的に変質する感温組成物28を用いることで,地震収束後にダンパー26が冷却した後に吸収した塑性変形エネルギーを検出することができる。例えば異なる塑性変形エネルギーη1,η2,η3を吸収した時点で同じ所定温度に発熱する3つのダンパー26d,26e,26fの表面にそれぞれ所定温度で変質する感温組成物28を塗布した残存耐震性能評価マーカー25を設計・製造し,構造物20の評価対象階層Fkの層間に(柱又は壁等に)取り付ける。同じ構造のダンパー26d,26e,26fの表面に,異なる発熱温度で変質する感温組成物28を塗布してマーカー25とすることも可能である。或いは,組成物28を所定温度になると溶解する接着剤等の化学物質(感温接着剤)とし,所定温度になるとダンパー26の表面に貼り付けた目印が不可逆的に剥離するように構成してもよい。
図4のステップS209は,地震が発生した場合に,地震被災後の残存耐震性能評価マーカー25を観察して破断又は発熱した部材26の順番により構造物20の残存耐震性能を判定する処理を示す。例えば,保有耐震性能ηsの50%,70%,90%の塑性変形エネルギーη1,η2,η3を視覚化した3つの順序付き部材26を備えたマーカー25において,変形エネルギーη1の部材26aは破断又は発熱しているが変形エネルギーη2の部材26bは破断又は発熱していない場合は,保有耐震性能ηsの30%以上が残っていると判断することができる。また,変形エネルギーη1,η2,η3の部材26a,26b,26cが全て破断又は発熱している場合は,保有耐震性能ηsの10%未満しか残っていないので構造物20が余震により倒壊するおそれがあると判定することができる。図4のステップS210〜S212は,図3のステップS111〜S113と同様に,必要に応じて構造物20を補修・改築し,更に余震後の残存耐震性能ηr´を判定する処理を示す。
残存耐震性能評価マーカー25を利用する図4の流れ図によれば,構造物20の保有耐震性能を予め視覚化しておくことができ,たとえ被災時に計測地震動Vpが利用できないときでも,地震被災後にマーカー25を観察するだけで構造物20の残存耐震性能を容易に評価することができる。また,マーカー25の観察による残存耐震性能の評価は,専門知識を持たない構造物20の居住者(利用者)が自ら地震直後に行うことができるので,避難すべきか否かについて居住者(利用者)による迅速で直感的な判断を助けることができきる。更に,マーカー25は電力その他の外部エネルギーの供給を必要としないので,インフラが使用できないような大地震直後においても構造物20の残存耐震性能を評価することができる。
こうして本発明の目的である「地震時に加わる変形の繰り返しの影響も考慮して地震被災後の多層構造物の残存耐震性能を評価できる方法」の提供を達成することができる。
1…コンピュータ 2…入力装置
3…出力装置 5…入力手段
6…出力手段 7…記憶手段
9…地震計(加速度計,変位計等)
11…算出手段 12…判定手段
13…マーカー設計手段
20…多層構造物 21…柱
22…梁
25…残存耐震性能評価マーカー 26…ダンパー
26a,26b,26c…鋼材ダンパー
26d,26e,26f…滑りダンパー
27a,27b,27c…ハニカム孔
28d,28e,28f…変色又は溶融物質
C…応答解析モデル G…地盤
Fi…階層 Fk…検出階層
U…地盤特性データ(地盤モデル)
Vs…想定地震動 Vp…計測地震動
Q…荷重 δ…層間変形
μ…塑性変形倍率
ηs…保有耐震性能(安全限界到達時の累積塑性変形倍率)
ηp…消費耐震性能(地震被災時の累積塑性変形倍率)
ηr…残存耐震性能
η1,η2,η3…所定累積塑性変形倍率に相当するエネルギー
E…地震時の総エネルギー入力
We…地震時の構造物の弾性振動エネルギー
Wp…地震時の構造物の累積塑性ひずみエネルギー
Wh…地震時の構造物の減衰によるエネルギー吸収量

Claims (5)

  1. 多層構造物の弾塑性応答解析モデルに強さの異なる想定地震動を入力して階層毎の荷重−層間変形履歴を求めるサイクルを安全限界に達する階層が検出されるまで繰り返し且つその検出階層の累積塑性変形倍率として前記構造物の保有耐震性能を算出し,前記保有耐震性能以下の所定累積塑性変形倍率に相当するエネルギーを吸収した時点で破断,発熱又は発色するマーカーを作成して前記検出階層に取り付け,地震被災後に前記マーカーの破断,発熱又は発色状況により前記構造物の残存耐震性能を判定してなる多層構造物の残存耐震性能評価方法。
  2. 請求項1の方法において,前記構造物の保有耐震性能を,前記検出階層に代えて,前記構造物の振動モードの振幅が最大となる階層又は前記構造物の指定された階層の累積塑性変形倍率として算出し,その算出した階層に前記マーカーを取り付けてなる多層構造物の残存耐震性能評価方法。
  3. 請求項1又は2の方法において,前記マーカーに,前記構造物の保有耐震性能以下の複数の異なる所定累積塑性変形倍率に相当するエネルギーを吸収した時点で順次に破断,発熱又は発色する複数の順番付き部材を含め,地震被災後に前記マーカー内の破断,発熱又は発色した部材の順番により前記構造物の残存耐震性能を判定してなる多層構造物の残存耐震性能評価方法。
  4. 請求項3の方法において,前記順番付き部材をそれぞれ,前記複数の異なる所定累積塑性変形倍率に相当するエネルギーを吸収した時点で順次に破断する鋼材ダンパーとしてなる多層構造物の残存耐震性能評価方法。
  5. 請求項3の方法において,前記順番付き部材をそれぞれ,前記複数の異なる所定累積塑性変形倍率に相当するエネルギーを吸収した時点で所要温度に発熱し且つその発熱により変色又は融解する組成物が表面に塗布された摩擦ダンパー又は鋼材ダンパーとしてなる多層構造物の残存耐震性能評価方法。
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