(第1実施形態)
以下、本実施形態を添付図面に基づいて説明する。まず、第1実施形態の耐震動性評価システムおよび耐震動性評価方法について図1から図4を用いて説明する。
図1の符号1は、第1実施形態の耐震動性評価システムである。この耐震動性評価システム1は、原子力プラントの耐震動性の評価を行うために用いられる。なお、本実施形態では、評価の対象となる施設として原子力プラントを例示しているが、火力プラントまたは工場などの施設の耐震動性の評価を耐震動性評価システム1で行っても良い。
原子力プラントは、複数の機器または複数の配管系で構成される。例えば、機器には、タンクまたは配電設備などの装置が含まれる。また、配管系には、水または蒸気などの流体を輸送する配管、配管同士を接続する継手、またはバルブが含まれる。耐震動性評価システム1では、これらの機器または配管系のそれぞれの耐震動性を評価することで、原子力プラント全体の評価を行うようにしている。以下の説明において、プラントを構成する機器または配管系を、評価の対象となる対象部分と称して説明する。
本実施形態の耐震動性評価システム1では、プラントを構成する複数の対象部分のそれぞれに対応させて予め特定モデルを構築し、この特定モデルに地震発生時に生じる加速度を入力するシミュレーションを行って耐震動性の評価を行う。特定モデルは、シェルモデルおよびソリッドモデル以外が好ましい。このようにすれば、モデルを用いた解析の計算コストを低減することができる。
特定モデルには、ばね質点系の1自由度モデル、ばね質点系の多自由度モデル、数理モデルのうちの少なくともいずれか1つが用いられる。このようにすれば、対象部分に応じて最適なモデルを構築することができる。例えば、タンクなどの装置は、振動の挙動が単純なため、1自由度モデルで充分な解析が行える。また、配管系のように振動の挙動が複雑なものは、多自由度モデルで解析を行うようにする。なお、全ての機器および配管系をいずれか1つのモデルで解析しても良い。
第1実施形態の耐震動性評価システム1のシステム構成を図1に示すブロック図を参照して説明する。
図1に示すように、第1実施形態の耐震動性評価システム1では、特定モデルとして、ばね質点系の1自由度モデルを用いて、対象部分の累積損傷係数を算出し、この算出に基づいて、耐震動性の評価を行うようにする。
第1実施形態の耐震動性評価システム1は、加速度検出部2とひずみ計測部3と評価用コンピュータ4とを備える。なお、ひずみ計測部3としては、例えば、ひずみゲージを用いることができる。
加速度検出部2は、地震発生時に生じる加速度を検出する。ひずみ計測部3は、それぞれの対象部分に設けられ、地震発生時に対象部分に実際に生じたひずみを計測する。
第1実施形態の評価用コンピュータ4は、メイン制御部5と対象部分選定部6と変位算出部7とひずみ算出部8とひずみ判定部9とモデル修正部10と累積損傷係数算出部11と損傷判定部12とリスト作成部13とリスト保存部14と評価部15と評価結果出力部16と1自由度モデルデータベース17と変位ひずみ関係データベース18と累積損傷係数データベース19とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
なお、第1実施形態では、変位算出部7とひずみ算出部8と累積損傷係数算出部11とにより、特定算出部20が構成される。この特定算出部20は、加速度検出部2で実際に記録された加速度を特定モデルとしての1自由度モデルに入力し、この1自由度モデルに対応する対象部分の損傷に関する特定値としての累積損傷係数を算出する。
1自由度モデルデータベース17は、プラントを構成する複数の対象部分のそれぞれに対応させて予め構築されたばね質点系の1自由度モデルを蓄積する。
変位ひずみ関係データベース18は、予め実施された対象部分の弾塑性解析により取得された対象部分の変位とひずみとの関係を示す情報を蓄積する。
累積損傷係数データベース19は、それぞれの対象部分の過去の累積損傷係数を記録している。
メイン制御部5は、評価用コンピュータ4を統括的に制御する。このメイン制御部5は、事前に入力された各種情報に基づいて、1自由度モデルデータベース17と変位ひずみ関係データベース18と累積損傷係数データベース19とを構築する。また、地震発生時に加速度検出部2が検出した加速度値(加速度波形)を取得する。さらに、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値を取得する。なお、メイン制御部5は、加速度値およびひずみ計測値を、地震発生時にリアルタイムで取得する。また、メイン制御部5は、加速度値の時系列順の変化に基づいて、加速度波形(地震波形)を取得することができる。
対象部分選定部6は、プラントを構成する複数の対象部分のうち、評価の対象となる対象部分の選定を行う。なお、評価用コンピュータ4は、それぞれの対象部分に対応して順次評価を行い、全ての対象部分の評価後に、それぞれの評価結果に基づいて、プラント全体の評価を行う。
変位算出部7は、1自由度モデルデータベース17に蓄積された判定対象の対象部分の1自由度モデルに、加速度検出部2で実際に記録された加速度を入力して対象部分に生じた変位を算出する。例えば、地震による加速度波形を含む時刻歴データ、対象部分の1自由度モデルに入力して時刻歴解析を行う。そして、対象部分の代表的な変位波形を取得する。
ひずみ算出部8は、変位算出部7で算出した変位波形と、変位ひずみ関係データベース18に蓄積された情報とに基づいて、対象部分に生じたひずみを算出する。例えば、変位算出部7で算出した対象部分の変位波形に基づいて、対象部分のひずみ波形を取得する。
ひずみ判定部9は、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値以上か否かの判定を行う。つまり、ひずみ算出部8で算出したひずみが、ひずみ計測部3で計測された実際のひずみと異なっているか否かの判定を行う。
モデル修正部10は、ひずみ計測部3で計測された値に基づいて、対象部分の1自由度モデルを修正する。例えば、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値未満である場合に、1自由度モデルデータベース17の1自由度モデルの修正を行う。つまり、ひずみ算出部8で算出したひずみが、ひずみ計測部3で計測された実際のひずみと異なっている場合には、事前に構築した1自由度モデルに誤差があるものとして、1自由度モデルの修正を行う。このようにすれば、実際に計測したひずみに基づいて1自由度モデルを修正することができるため、1自由度モデルの精度を高めることができる。
第1実施形態では、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値未満である場合に、1自由度モデルの修正を行い、それ以外の場合には、1自由度モデルの修正を行わないようにしている。つまり、1自由度モデルにより算出されたひずみ波形の最大値が、実際に生じたひずみよりも大きい場合には、1自由度モデルの修正を行わないようにしている。そのため、常に安全側の評価結果を得ることができるようになり、耐震動性の評価の安全性と精度を高めることができる。
なお、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値と、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値との誤差の範囲が所定値以上である場合に、1自由度モデルの修正を行い、それ以外の場合には、1自由度モデルの修正を行わないようにしても良い。ここで、1自由度モデルにより算出されたひずみ波形の最大値が、実際に生じたひずみよりも大きい場合であっても、1自由度モデルの修正を行うようにしても良い。
累積損傷係数算出部11は、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形に基づいて、対応する対象部分の地震発生時の累積損傷係数を算出する。そして、この累積損傷係数と累積損傷係数データベースに記録された過去の累積損傷係数とを足し合わせることで、対応する対象部分の累積損傷係数を更新する。
損傷判定部12は、累積損傷係数算出部11で更新された累積損傷係数に基づいて、対象部分が損傷しているか否かを判定する。このようにすれば、過去の累積損傷係数と地震発生時の累積損傷係数とを含めた特定値に基づいて、対象部分の損傷の有無の判定を行うことができる。
リスト作成部13は、損傷していると判定された対象部分を記録した損傷リストを作成するとともに、損傷していないと判定された対象部分を記録した非損傷リストを作成する。
リスト保存部14は、リスト作成部13が作成した損傷リストおよび非損傷リストを保存(記憶)する。このようにすれば、損傷した対象部分または損傷していない対象部分を管理することができる。
評価部15は、リスト作成部13が作成した損傷リストおよび非損傷リストに基づいて、プラント全体の健全性の評価を行う。
評価結果出力部16は、評価部15で評価されたプラント全体の健全性の評価結果の出力を行う。なお、プラントの健全性が保たれていない場合には、評価結果出力部16がプラントの運転を停止させるプラント停止信号を出力する。
次に、第1実施形態の耐震動性評価システム1が実行するデータベース構築処理について図2のフローチャートを用いて説明する。なお、図1に示すブロック図を適宜参照する。
図2に示すように、まず、ステップS11において、評価用コンピュータ4のメイン制御部5は、プラントを構成する複数の対象部分のそれぞれに対応する1自由度モデルの構築を予め行う。なお、1自由度モデルは、従来公知の方法で構築することができる。
次のステップS12において、メイン制御部5は、複数の対象部分のそれぞれに対応する1自由度モデルを1自由度モデルデータベース17に登録する。1自由度モデルデータベース17には、複数の対象部分に対応する1自由度モデルが蓄積される。
次のステップS13において、メイン制御部5は、複数の対象部分のそれぞれに対応する弾塑性解析を予め実施する。そして、この弾塑性解析の解析結果に基づいて、対象部分の変位とひずみとの関係を示す情報を取得する。
次のステップS14において、メイン制御部5は、弾塑性解析の解析結果に基づいて、対象部分の変位とひずみとの関係を示す情報を変位ひずみ関係データベース18に蓄積する。
次のステップS15において、メイン制御部5は、それぞれの対象部分の過去の累積損傷係数を取得する。なお、過去の累積損傷係数は、対象部分の管理状況または使用履歴などに基づいて取得しても良いし、評価用コンピュータ4で算出された累積損傷係数が蓄積されたものであっても良い。
次のステップS16において、メイン制御部5は、対象部分の過去の累積損傷係数を累積損傷係数データベース19に蓄積する。そして、処理を終了する。
次に、第1実施形態の耐震動性評価システム1が実行するプラント評価処理について図3のフローチャートを用いて説明する。なお、図1に示すブロック図を適宜参照する。この処理は、一定時間毎に繰り返される処理である。この処理が繰り返されることで、耐震動性評価システム1で耐震性評価方法が実行される。なお、耐震動性評価システム1が他のメイン処理を実行中に、この処理を割り込ませて実行しても良い。
図3に示すように、まず、ステップS21において、メイン制御部5は、加速度検出部2が検出した加速度値(加速度波形)に基づいて、地震が発生したか否かを判定する。ここで、地震が発生していない場合(ステップS21がNO)は、処理を終了する。一方、地震が発生した場合(ステップS21がYES)は、ステップS22に進む。
次のステップS22において、メイン制御部5は、プラントにおいて耐震動性に関わる全ての対象部分を、耐震動性評価の判定対象としてセットする。この判定対象は、評価用コンピュータ4にセットされる。
次のステップS23において、メイン制御部5は、評価用コンピュータ4を用いて、判定対象の対象部分の特定モデルを用いた評価を行うモデル判定処理を実行する。
次のステップS24において、メイン制御部5は、モデル判定処理による対象部分の評価結果に基づいて、プラントの健全性の評価を行う。
次のステップS25において、評価部15は、プラントの健全性の評価に基づいて、プラントの運転継続が可能か否かを判定する。つまり、プラントの健全性が保たれているか否かの判定を行う。ここで、プラントの運転継続が可能である場合(ステップS25がYES)は、処理を終了する。一方、プラントの運転継続が可能でない場合(ステップS25がNO)は、ステップS26に進む。
次のステップS26において、評価結果出力部16は、プラントの運転を停止させるプラント停止信号を出力する。そして、処理を終了する。
次に、第1実施形態の耐震動性評価システム1が実行するプラント評価処理について図4のフローチャートを用いて説明する。なお、図1に示すブロック図を適宜参照する。この処理は、一定時間毎に繰り返される処理である。この処理が繰り返されることで、耐震動性評価システム1で耐震性評価方法が実行される。なお、耐震動性評価システム1が他のメイン処理を実行中に、この処理を割り込ませて実行しても良い。
図4に示すように、まず、ステップS31において、メイン制御部5は、地震発生時に加速度検出部2が検出した加速度波形を取得する。
次のステップS32において、メイン制御部5は、対象部分のそれぞれに対応するひずみ計測部3が計測したひずみ計測値を取得する。
次のステップS33において、対象部分選定部6は、耐震動性評価の判定対象としてセットされた全ての対象部分のうち、未だ判定されていない1つの対象部分を判定対象として選定する。
次のステップS34において、変位算出部7は、1自由度モデルデータベース17を参照し、判定対象の対象部分に対応する1自由度モデルを特定する。この1自由度モデルに対して、地震発生時に加速度検出部2が検出した加速度波形を入力する。
次のステップS35において、変位算出部7は、1自由度モデルに基づいて、対応する対象部分の代表的な変位波形を算出する。例えば、以下の数式1に表される1自由度モデルの時刻歴解析には、Newmarkのβ法などの直接時間積分法を用いることができる。
次のステップS36において、ひずみ算出部8は、変位算出部7で算出した変位波形と、変位ひずみ関係データベース18に蓄積された情報とに基づいて、対象部分に生じたひずみ波形を算出する。例えば、ひずみ算出部8は、変位算出部7より算出した変位波形を以下の数式2に表される変位ひずみ関係を用いてひずみ波形に変換する。
なお、変位ひずみ関係ε(x)は、対応する対象部分に対応付けて、変位ひずみ関係データベース18に予め蓄積される情報である。
次のステップS37において、ひずみ判定部9は、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値以上か否かの判定を行う。ここで、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値以上の場合(ステップS37がYES)は、ステップS38に進む。一方、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値未満の場合(ステップS37がNO)は、ステップS42に進む。
ステップS42において、モデル修正部10は、1自由度モデルデータベース17の1自由度モデルの修正を行う。例えば、前述の数式1の復元力特性f(x)または減衰定数cの修正を行う。ここで、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値以上になるように、1自由度モデルを修正する。そして、前述のステップS34に戻る。
ステップS38において、累積損傷係数算出部11は、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形に基づいて、対応する対象部分の地震発生時の累積損傷係数を算出する。例えば、対象部分の1自由度モデルに対して入力した加速度波形(地震波形)に対する累積損傷係数を以下の数式3のように算出する。
さらに、累積損傷係数と累積損傷係数データベースに記録された過去の累積損傷係数とを足し合わせることで、対応する対象部分の累積損傷係数を更新する。例えば、以下の数式4のように算出する。
なお、更新された累積損傷係数Dが、対象部分の損傷の有無の判定に用いられる総累積損傷係数Dとなる。このようにすれば、過去の地震動による疲労損傷を含めて評価することができる。そして、ステップS39に進む。
次のステップS39において、損傷判定部12は、総累積損傷係数(特定値)が1以上(閾値以上)か否かを判定する。ここで、総累積損傷係数が1以上である場合(ステップS39がYES)は、ステップS40に進む。一方、総累積損傷係数が1未満である場合(ステップS39がNO)は、ステップS43に進む。なお、総累積損傷係数が1以上の場合は対象部分が損傷しているものとし、総累積損傷係数が1未満の場合は対象部分が損傷していないものとする。
ステップS40において、リスト作成部13は、損傷していると判定された対象部分を損傷リストに記録する。この損傷リストは、リスト保存部14に保存される。そして、ステップS41に進む。
ステップS43において、リスト作成部13は、損傷していないと判定された対象部分を非損傷リストに記録する。この非損傷リストは、リスト保存部14に保存される。そして、ステップS41に進む。
次のステップS41において、メイン制御部5は、耐震動性評価の判定対象としてセットされた全ての対象部分のうち、未だ判定されていない対象部分が残っているか否かを判定する。ここで、未だ判定されていない対象部分が残っている場合(ステップS41がYES)は、前述のステップS33に戻る。一方、未だ判定されていない対象部分が残っていない場合(ステップS41がNO)は、処理を終了する。
第1実施形態では、プラントを構成する機器または配管系に対して塑性変形を考慮した疲労評価を実施できる。また、損傷リストに基づいて、機器または配管系の詳細解析の対象、検査または補修の対象を絞り込むことができる。
また、変位ひずみ関係データベース18を備えることで、1自由度モデルのような簡易的なモデルを用いた場合であっても、対象部分に生じたひずみを算出することができる。
また、プラントの運転継続が可能でないと評価された場合に、評価結果出力部16がプラントの運転を停止させるプラント停止信号を出力する。そのため、地震発生時に必要に応じてプラントを停止することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の耐震動性評価システムおよび耐震動性評価方法について図5から図7を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
第2実施形態の耐震動性評価システム1Aのシステム構成を図5に示すブロック図を参照して説明する。
図5に示すように、第2実施形態の耐震動性評価システム1Aでは、特定モデルとして、ばね質点系の多自由度モデルを用いて、対象部分の累積損傷係数を算出し、この算出に基づいて、耐震動性の評価を行うようにする。
第2実施形態の耐震動性評価システム1Aは、加速度検出部2とひずみ計測部3と評価用コンピュータ4Aとを備える。
第2実施形態の評価用コンピュータ4Aは、メイン制御部5と対象部分選定部6とひずみ算出部8とひずみ判定部9とモデル修正部10と累積損傷係数算出部11と損傷判定部12とリスト作成部13とリスト保存部14と評価部15と評価結果出力部16と多自由度モデルデータベース21と累積損傷係数データベース19とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
なお、第2実施形態では、ひずみ算出部8と累積損傷係数算出部11とにより、特定算出部20Aが構成される。この特定算出部20Aは、加速度検出部2で実際に記録された加速度を特定モデルとしての多自由度モデルに入力し、この多自由度モデルに対応する対象部分の損傷に関する特定値としての累積損傷係数を算出する。
多自由度モデルデータベース21は、プラントを構成する複数の対象部分のそれぞれに対応させて予め構築されたばね質点系の多自由度モデルを蓄積する。メイン制御部5は、事前に入力された各種情報に基づいて、多自由度モデルデータベース21を構築する。
ひずみ算出部8は、多自由度モデルデータベース21に蓄積された判定対象の対象部分の多自由度モデルに、加速度検出部2で実際に記録された加速度を入力して対象部分に生じたひずみを算出する。例えば、地震発生時の加速度波形(地震波形)に基づいて、対象部分のひずみ波形を取得する。
モデル修正部10は、ひずみ計測部3で計測された値に基づいて、対象部分の多自由度モデルを修正する。例えば、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値未満である場合に、多自由度モデルデータベース21の多自由度モデルの修正を行う。
次に、第2実施形態の耐震動性評価システム1Aが実行するデータベース構築処理について図6のフローチャートを用いて説明する。なお、図5に示すブロック図を適宜参照する。
図6に示すように、まず、ステップS51において、評価用コンピュータ4Aのメイン制御部5は、対象部分を構成するはり要素などを含む弾塑性材料モデルの構築を行う。
次のステップS52において、メイン制御部5は、プラントを構成する複数の対象部分のそれぞれに対応する多自由度モデルの構築を予め行う。ここで、多自由度モデルには、前述の弾塑性材料モデルを適用する。
次のステップS53において、メイン制御部5は、複数の対象部分のそれぞれに対応する多自由度モデルを多自由度モデルデータベース21に登録する。多自由度モデルデータベース21には、複数の対象部分に対応する多自由度モデルが蓄積される。なお、それぞれの多自由度モデルに対応する弾塑性材料モデルを含めて多自由度モデルデータベース21に登録される。
次のステップS54において、メイン制御部5は、それぞれの対象部分の過去の累積損傷係数を取得する。
次のステップS55において、メイン制御部5は、対象部分の過去の累積損傷係数を累積損傷係数データベース19に蓄積する。そして、処理を終了する。
なお、第2実施形態の耐震動性評価システム1Aが実行するプラント評価処理については前述の第1実施形態のフローチャート(図3参照)と同様である。
次に、第2実施形態の耐震動性評価システム1Aが実行するプラント評価処理について図7のフローチャートを用いて説明する。なお、図5に示すブロック図を適宜参照する。この処理は、一定時間毎に繰り返される処理である。この処理が繰り返されることで、耐震動性評価システム1Aで耐震性評価方法が実行される。なお、耐震動性評価システム1Aが他のメイン処理を実行中に、この処理を割り込ませて実行しても良い。
図7に示すように、まず、ステップS61において、メイン制御部5は、地震発生時に加速度検出部2が検出した加速度波形を取得する。
次のステップS62において、メイン制御部5は、対象部分のそれぞれに対応するひずみ計測部3が計測したひずみ計測値を取得する。
次のステップS63において、対象部分選定部6は、耐震動性評価の判定対象としてセットされた全ての対象部分のうち、未だ判定されていない1つの対象部分を判定対象として選定する。
次のステップS64において、ひずみ算出部8は、多自由度モデルデータベース21を参照し、判定対象の対象部分に対応する多自由度モデルを特定する。この多自由度モデルに対して、地震発生時に加速度検出部2が検出した加速度波形を入力する。
次のステップS65において、ひずみ算出部8は、多自由度モデルに基づいて、対応する対象部分の代表的なひずみ波形を算出する。このとき、多自由度モデルには、弾塑性材料モデルが適用される。例えば、以下の数式5に表される多自由度モデルの時刻歴解析には、Newmarkのβ法などの直接時間積分法を用いることができる。
次のステップS66において、ひずみ判定部9は、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値以上か否かの判定を行う。ここで、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値以上の場合(ステップS66がYES)は、ステップS67に進む。一方、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値未満の場合(ステップS66がNO)は、ステップS71に進む。
ステップS71において、モデル修正部10は、弾塑性材料モデルの修正を行う。例えば、材料定数の修正を行う。ここで、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値以上になるように、弾塑性材料モデルを修正する。そして、ステップS72に進む。
ステップS72において、モデル修正部10は、多自由度モデルデータベース21の多自由度モデルの修正を行う。例えば、前述の数式5の減衰行列Cの修正を行う。ここで、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値以上になるように、多自由度モデルを修正する。そして、前述のステップS64に戻る。なお、ステップS71とステップS72はどちらかのみ実行することであっても良い。
ステップS67において、累積損傷係数算出部11は、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形に基づいて、対応する対象部分の地震発生時の累積損傷係数を算出する。例えば、対象部分の多自由度モデルに対して入力した加速度波形(地震波形)に対する累積損傷係数を以下の数式6のように算出する。そして、ステップS68に進む。
さらに、累積損傷係数と累積損傷係数データベースに記録された過去の累積損傷係数とを足し合わせることで、対応する対象部分の累積損傷係数を更新する。例えば、以下の数式7のように算出する。
なお、更新された累積損傷係数Dが、対象部分の損傷の有無の判定に用いられる総累積損傷係数Dとなる。このようにすれば、過去の地震動による疲労損傷を含めて評価することができる。
次のステップS68において、損傷判定部12は、総累積損傷係数(特定値)が1以上(閾値以上)か否かを判定する。ここで、総累積損傷係数が1以上である場合(ステップS68がYES)は、ステップS69に進む。一方、総累積損傷係数が1未満である場合(ステップS68がNO)は、ステップS73に進む。なお、総累積損傷係数が1以上の場合は対象部分が損傷しているものとし、総累積損傷係数が1未満の場合は対象部分が損傷していないものとする。
ステップS69において、リスト作成部13は、損傷していると判定された対象部分を損傷リストに記録する。この損傷リストは、リスト保存部14に保存される。そして、ステップS70に進む。
ステップS73において、リスト作成部13は、損傷していない判定された対象部分を非損傷リストに記録する。この非損傷リストは、リスト保存部14に保存される。そして、ステップS70に進む。
次のステップS70において、メイン制御部5は、耐震動性評価の判定対象としてセットされた全ての対象部分のうち、未だ判定されていない対象部分が残っているか否かを判定する。ここで、未だ判定されていない対象部分が残っている場合(ステップS70がYES)は、前述のステップS63に戻る。一方、未だ判定されていない対象部分が残っていない場合(ステップS70がNO)は、処理を終了する。
第2実施形態では、多自由度モデルのような詳細なモデルを用いて、対象部分に生じたひずみを算出することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の耐震動性評価システムおよび耐震動性評価方法について図8を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
第3実施形態の耐震動性評価システム1,1Aでは、まず、全ての対象部分について、ばね質点系の1自由度モデルを用いて累積損傷係数を算出し、この算出に基づいて、耐震動性の評価を行うようにする。なお、1自由度モデルを用いた評価は、前述の第1実施形態の評価用コンピュータ4を用いる。そして、損傷リストを抽出する。
次に、抽出した損傷リストに含まれる対象部分について、ばね質点系の多自由度モデルを用いて累積損傷係数を算出し、この算出に基づいて、耐震動性の評価を行うようにする。なお、多自由度モデルを用いた評価は、前述の第2実施形態の評価用コンピュータ4Aを用いる。つまり、評価用コンピュータ4Aの損傷判定部12は、1自由度モデルに基づいて既に判定済みの対象部分が損傷しているか否かを、多自由度モデルに基づいて再び判定する。
次に、第3実施形態の耐震動性評価システム1,1Aが実行するプラント評価処理について図8のフローチャートを用いて説明する。なお、図1および図5に示すブロック図を適宜参照する。この処理は、一定時間毎に繰り返される処理である。この処理が繰り返されることで、耐震動性評価システム1,1Aで耐震性評価方法が実行される。なお、耐震動性評価システム1,1Aが他のメイン処理を実行中に、この処理を割り込ませて実行しても良い。
図8に示すように、まず、ステップS81において、メイン制御部5は、加速度検出部2が検出した加速度値(加速度波形)に基づいて、地震が発生したか否かを判定する。ここで、地震が発生していない場合(ステップS81がNO)は、処理を終了する。一方、地震が発生した場合(ステップS81がYES)は、ステップS82に進む。
次のステップS82において、メイン制御部5は、プラントにおいて耐震動性に関わる全ての対象部分を、耐震動性評価の判定対象としてセットする。この判定対象は、前述の第1実施形態の評価用コンピュータ4にセットされる。
次のステップS83において、メイン制御部5は、前述の第1実施形態の評価用コンピュータ4を用いて、判定対象の対象部分の1自由度モデルを用いた評価を行う1自由度モデル判定処理を実行する。そして、全ての対象部分の評価後に損傷リストを抽出する。
次のステップS84において、メイン制御部5は、損傷リストに記録された対象部分を、耐震動性評価の判定対象としてセットする。この判定対象は、前述の第2実施形態の評価用コンピュータ4Aにセットされる。
次のステップS85において、メイン制御部5は、前述の第2実施形態の評価用コンピュータ4Aを用いて、判定対象の対象部分の多自由度モデルを用いた評価を行う多自由度モデル判定処理を実行する。
次のステップS86において、メイン制御部5は、1自由度モデル判定処理および多自由度モデル判定処理による対象部分の評価結果に基づいて、プラントの健全性の評価を行う。
次のステップS87において、評価部15は、プラントの健全性の評価に基づいて、プラントの運転継続が可能か否かを判定する。つまり、プラントの健全性が保たれているか否かの判定を行う。ここで、プラントの運転継続が可能である場合(ステップS87がYES)は、処理を終了する。一方、プラントの運転継続が可能でない場合(ステップS87がNO)は、ステップS88に進む。
次のステップS88において、評価結果出力部16は、プラントの運転を停止させるプラント停止信号を出力する。そして、処理を終了する。
第3実施形態では、先に1自由度モデルを用いて簡易的な判定を行い、詳細な判定を行いたい対象部分については、多自由度モデルを用いて判定を行うことができる。そのため、プラントを構成する機器または配管系の耐震動性評価の精度を維持したまま、多自由度モデルに係る計算コストを削減することができる。
なお、非損傷リストに記録された対象部分であっても、プラントの運転に重要な対象部分については、多自由度モデルを用いて評価を行うようにしても良い。
なお、第1実施形態の評価用コンピュータ4と第2実施形態の評価用コンピュータ4Aとが一体となった評価用コンピュータを用いて、第3実施形態のプラント評価処理を実行しても良い。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の耐震動性評価システムおよび耐震動性評価方法について図9から図11を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
第4実施形態の耐震動性評価システム1Bのシステム構成を図9に示すブロック図を参照して説明する。
図9に示すように、第4実施形態の耐震動性評価システム1Bでは、特定モデルとして、数理モデルを用いて、対象部分の累積損傷係数を算出し、この算出に基づいて、耐震動性の評価を行うようにする。
第4実施形態の耐震動性評価システム1Bは、加速度検出部2とひずみ計測部3と変位計測部22と評価用コンピュータ4Bとを備える。
変位計測部22は、それぞれの対象部分に設けられ、地震発生時に対象部分に実際に生じた変位を計測する。なお、メイン制御部5は、変位計測部22が計測した変位値を取得する。つまり、メイン制御部5は、加速度値、ひずみ計測値および変位値を含む所定の物理量を地震発生時にリアルタイムで取得する。
第4実施形態の評価用コンピュータ4Bは、メイン制御部5と対象部分選定部6とひずみ算出部8とひずみ判定部9とモデル修正部10と累積損傷係数算出部11と損傷判定部12とリスト作成部13とリスト保存部14と評価部15と評価結果出力部16と数理モデルデータベース23と累積損傷係数データベース19とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
なお、第4実施形態では、ひずみ算出部8と累積損傷係数算出部11とにより、特定算出部20Bが構成される。この特定算出部20Bは、加速度検出部2で実際に記録された加速度を特定モデルとしての数理モデルに入力し、この数理モデルに対応する対象部分の損傷に関する特定値としての累積損傷係数を算出する。
数理モデルデータベース23は、プラントを構成する複数の対象部分のそれぞれに対応させて予め構築された数理モデルを蓄積する。メイン制御部5は、事前に入力された各種情報に基づいて、数理モデルデータベース23を構築する。
ひずみ算出部8は、数理モデルデータベース23に蓄積された判定対象の対象部分の数理モデルに、加速度検出部2で実際に記録された加速度、ひずみ計測部3で実際に記録されたひずみ値、および変位計測部22で実際に記録された変位値を入力して対象部分に生じたひずみを算出する。
モデル修正部10は、ひずみ計測部3で計測された値に基づいて、対象部分の数理モデルを修正する。例えば、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値未満である場合に、数理モデルデータベース23の数理モデルの修正を行う。
次に、第4実施形態の耐震動性評価システム1Bが実行するデータベース構築処理について図10のフローチャートを用いて説明する。なお、図9に示すブロック図を適宜参照する。
図10に示すように、まず、ステップS91において、評価用コンピュータ4Bのメイン制御部5は、プラントを構成する複数の対象部分のそれぞれに対応する数理モデルの構築を予め行う。なお、数理モデルの作成には、応答局面またはカルマンフィルタなどの方法を用いる。
次のステップS92において、メイン制御部5は、複数の対象部分のそれぞれに対応する数理モデルを数理モデルデータベース23に登録する。数理モデルデータベース23には、複数の対象部分に対応する数理モデルが蓄積される。
次のステップS93において、メイン制御部5は、それぞれの対象部分の過去の累積損傷係数を取得する。
次のステップS94において、メイン制御部5は、対象部分の過去の累積損傷係数を累積損傷係数データベース19に蓄積する。そして、処理を終了する。
なお、第4実施形態の耐震動性評価システム1Bが実行するプラント評価処理については前述の第1実施形態のフローチャート(図3参照)と同様である。
次に、第4実施形態の耐震動性評価システム1Bが実行するプラント評価処理について図11のフローチャートを用いて説明する。なお、図9に示すブロック図を適宜参照する。この処理は、一定時間毎に繰り返される処理である。この処理が繰り返されることで、耐震動性評価システム1Bで耐震性評価方法が実行される。なお、耐震動性評価システム1Bが他のメイン処理を実行中に、この処理を割り込ませて実行しても良い。
図11に示すように、まず、ステップS101において、メイン制御部5は、地震発生時に加速度検出部2が検出した加速度波形を取得する。
次のステップS102において、メイン制御部5は、対象部分のそれぞれに対応するひずみ計測部3が計測したひずみ計測値を取得する。
次のステップS103において、メイン制御部5は、対象部分のそれぞれに対応する変位計測部22が計測した変位計測値を取得する。
次のステップS104において、対象部分選定部6は、耐震動性評価の判定対象としてセットされた全ての対象部分のうち、未だ判定されていない1つの対象部分を判定対象として選定する。
次のステップS105において、ひずみ算出部8は、数理モデルデータベース23を参照し、判定対象の対象部分に対応する数理モデルを特定する。この数理モデルに対して、加速度検出部2で実際に記録された加速度、ひずみ計測部3で実際に記録されたひずみ値、および変位計測部22で実際に記録された変位値を入力する。
次のステップS106において、ひずみ算出部8は、数理モデルに基づいて、対応する対象部分の代表的なひずみ波形を算出する。
次のステップS107において、ひずみ判定部9は、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値以上か否かの判定を行う。ここで、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値以上の場合(ステップS107がYES)は、ステップS108に進む。一方、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形の最大値が、ひずみ計測部3が計測したひずみ計測値未満の場合(ステップS107がNO)は、ステップS112に進む。
ステップS112において、モデル修正部10は、数理モデルデータベース23の数理モデルの修正を行う。そして、前述のステップS105に戻る。
ステップS108において、累積損傷係数算出部11は、ひずみ算出部8で算出したひずみ波形に基づいて、対応する対象部分の地震発生時の累積損傷係数を算出する。例えば、対象部分の数理モデルに対して入力した地震発生時の物理量に対する累積損傷係数を以下の数式8のように算出する。そして、ステップS109に進む。
さらに、累積損傷係数と累積損傷係数データベースに記録された過去の累積損傷係数とを足し合わせることで、対応する対象部分の累積損傷係数を更新する。例えば、以下の数式9のように算出する。
なお、更新された累積損傷係数Dが、対象部分の損傷の有無の判定に用いられる総累積損傷係数Dとなる。このようにすれば、過去の地震動による疲労損傷を含めて評価することができる。
次のステップS109において、損傷判定部12は、総累積損傷係数(特定値)が1以上(閾値以上)か否かを判定する。ここで、総累積損傷係数が1以上である場合(ステップS109がYES)は、ステップS110に進む。一方、総累積損傷係数が1未満である場合(ステップS109がNO)は、ステップS113に進む。なお、総累積損傷係数が1以上の場合は対象部分が損傷しているものとし、総累積損傷係数が1未満の場合は対象部分が損傷していないものとする。
ステップS110において、リスト作成部13は、損傷していると判定された対象部分を損傷リストに記録する。この損傷リストは、リスト保存部14に保存される。そして、ステップS111に進む。
ステップS113において、リスト作成部13は、損傷していない判定された対象部分を非損傷リストに記録する。この非損傷リストは、リスト保存部14に保存される。そして、ステップS111に進む。
次のステップS111において、メイン制御部5は、耐震動性評価の判定対象としてセットされた全ての対象部分のうち、未だ判定されていない対象部分が残っているか否かを判定する。ここで、未だ判定されていない対象部分が残っている場合(ステップS111がYES)は、前述のステップS104に戻る。一方、未だ判定されていない対象部分が残っていない場合(ステップS111がNO)は、処理を終了する。
第4実施形態では、数理モデルのような詳細なモデルを用いて、対象部分に生じたひずみを算出することができる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の耐震動性評価システムおよび耐震動性評価方法について図12から図14を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
第5実施形態の耐震動性評価システム1Cのシステム構成を図12に示すブロック図を参照して説明する。
図12に示すように、第5実施形態の耐震動性評価システム1Cでは、特定モデルとして、ばね質点系の1自由度モデルを用いて、対象部分に入力された入力エネルギーの累積値である累積エネルギーを算出し、この算出に基づいて、耐震動性の評価を行うようにする。
第5実施形態の耐震動性評価システム1Cは、加速度検出部2と入力エネルギー計測部24と評価用コンピュータ4Cとを備える。
入力エネルギー計測部24は、それぞれの対象部分に設けられ、地震発生時に対象部分に実際に入力された入力エネルギーを計測する。
第5実施形態の評価用コンピュータ4Cは、メイン制御部5と対象部分選定部6と入力エネルギー算出部25と入力エネルギー判定部26とモデル修正部10と累積エネルギー算出部27と損傷判定部12とリスト作成部13とリスト保存部14と評価部15と評価結果出力部16と1自由度モデルデータベース17と入力エネルギー履歴データベース28と損傷エネルギーデータベース29とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
なお、第5実施形態では、入力エネルギー算出部25と累積エネルギー算出部27とにより、特定算出部20Cが構成される。この特定算出部20Cは、加速度検出部2で実際に記録された加速度を特定モデルとしての1自由度モデルに入力し、この1自由度モデルに対応する対象部分の損傷に関する特定値としての累積エネルギーを算出する。
入力エネルギー履歴データベース28は、それぞれの対象部分に過去に入力された入力エネルギーの累積値を記録している。
損傷エネルギーデータベース29は、対象部分が損傷してしまう損傷エネルギーの値を、それぞれの対象部分に対応付けて記憶している。なお、損傷エネルギーは、入力エネルギーの累積値の限界を規定する値である。所定の対象部分の入力エネルギーの累積値が損傷エネルギー以上になると、その対象部分が損傷したと判定される。つまり、損傷エネルギーデータベース29は、対象部分に入力される入力エネルギーと対象部分が損傷する損傷エネルギーとの関係を示す情報を蓄積している。
入力エネルギー算出部25は、1自由度モデルデータベース17に蓄積された判定対象の対象部分の1自由度モデルに、加速度検出部2で実際に記録された加速度を入力して対象部分に生じた入力エネルギーを算出する。例えば、判定対象の対象部分の1自由度モデルのパラメータである固有周期および減衰比が入力エネルギー算出部25に入力される。そして、地震による加速度波形とから算出したエネルギースペクトルに基づいて、対象部分に対する入力エネルギーを算出する。
入力エネルギー判定部26は、入力エネルギー算出部25で算出した入力エネルギーの最大値が、入力エネルギー計測部24が計測した入力エネルギー計測値以上か否かの判定を行う。つまり、入力エネルギー算出部25で算出した入力エネルギーが、入力エネルギー計測部24で計測された実際の入力エネルギーと異なっているか否かの判定を行う。
モデル修正部10は、入力エネルギー計測部24で計測された値に基づいて、対象部分の1自由度モデルを修正する。例えば、入力エネルギー算出部25で算出した入力エネルギーの最大値が、入力エネルギー計測部24が計測した入力エネルギー計測値未満である場合に、1自由度モデルデータベース17の1自由度モデルの修正を行う。
累積エネルギー算出部27は、入力エネルギー算出部25で算出した入力エネルギーと、入力エネルギー履歴データベース28に記録された過去の入力エネルギーの累積値とを足し合わせることで、対応する対象部分の累積エネルギーを算出する。このようにすれば、過去の入力エネルギーと地震発生時の入力エネルギーとを含めた特定値に基づいて、対象部分の損傷の有無の判定を行うことができる。
損傷判定部12は、累積エネルギー算出部27で算出された累積エネルギーと、損傷エネルギーデータベース29に蓄積された情報とに基づいて、対象部分が損傷しているか否かを判定する。
次に、第5実施形態の耐震動性評価システム1Cが実行するデータベース構築処理について図13のフローチャートを用いて説明する。なお、図12に示すブロック図を適宜参照する。
図13に示すように、まず、ステップS121において、評価用コンピュータ4Cのメイン制御部5は、プラントを構成する複数の対象部分のそれぞれに対応する1自由度モデルの構築を予め行う。なお、1自由度モデルは、従来公知の方法で構築することができる。
次のステップS122において、メイン制御部5は、複数の対象部分のそれぞれに対応する1自由度モデルを1自由度モデルデータベース17に登録する。1自由度モデルデータベース17には、複数の対象部分に対応する1自由度モデルが蓄積される。
次のステップS123において、メイン制御部5は、それぞれの対象部分に過去に入力された入力エネルギーの累積値を取得する。なお、過去の入力エネルギーは、対象部分の管理状況または使用履歴などに基づいて取得しても良いし、評価用コンピュータ4Cで算出された入力エネルギーが蓄積されたものであっても良い。
次のステップS124において、メイン制御部5は、対象部分に過去に入力された入力エネルギーの累積値を入力エネルギー履歴データベース28に蓄積する。
次のステップS125において、メイン制御部5は、それぞれの対象部分を予め解析し、その損傷エネルギーを算出する。
次のステップS126において、メイン制御部5は、対象部分の解析に基づいて算出した損傷エネルギーを、その対象部分に対応付けて損傷エネルギーデータベース29に登録する。損傷エネルギーデータベース29には、複数の対象部分に対応する損傷エネルギーに関する情報が蓄積される。そして、処理を終了する。
なお、第5実施形態の耐震動性評価システム1Cが実行するプラント評価処理については前述の第1実施形態のフローチャート(図3参照)と同様である。
次に、第5実施形態の耐震動性評価システム1Cが実行するプラント評価処理について図14のフローチャートを用いて説明する。なお、図12に示すブロック図を適宜参照する。この処理は、一定時間毎に繰り返される処理である。この処理が繰り返されることで、耐震動性評価システム1Cで耐震性評価方法が実行される。なお、耐震動性評価システム1Cが他のメイン処理を実行中に、この処理を割り込ませて実行しても良い。
図14に示すように、まず、ステップS131において、メイン制御部5は、地震発生時に加速度検出部2が検出した加速度波形を取得する。
次のステップS132において、メイン制御部5は、対象部分のそれぞれに対応する入力エネルギー計測部24が計測した入力エネルギー計測値を取得する。
次のステップS133において、対象部分選定部6は、耐震動性評価の判定対象としてセットされた全ての対象部分のうち、未だ判定されていない1つの対象部分を判定対象として選定する。
次のステップS134において、入力エネルギー算出部25は、1自由度モデルデータベース17を参照し、判定対象の対象部分に対応する1自由度モデルを特定する。この1自由度モデルに対して、地震発生時に加速度検出部2が検出した加速度波形を入力する。
次のステップS135において、入力エネルギー算出部25は、1自由度モデルに基づいて、対応する対象部分に入力された入力エネルギーを算出する。
次のステップS136において、入力エネルギー判定部26は、入力エネルギー算出部25で算出した入力エネルギーの値が、入力エネルギー計測部24が計測した入力エネルギー計測値以上か否かの判定を行う。ここで、入力エネルギー算出部25で算出した入力エネルギーの値が、入力エネルギー計測部24が計測した入力エネルギー計測値以上の場合(ステップS136がYES)は、ステップS137に進む。一方、入力エネルギー算出部25で算出した入力エネルギーの値が、入力エネルギー計測部24が計測した入力エネルギー計測値未満の場合(ステップS136がNO)は、ステップS141に進む。
ステップS141において、モデル修正部10は、1自由度モデルデータベース17の1自由度モデルの修正を行う。ここで、入力エネルギー算出部25で算出した入力エネルギーの値が、入力エネルギー計測部24が計測した入力エネルギー計測値以上になるように、1自由度モデルを修正する。そして、前述のステップS134に戻る。
ステップS137において、累積エネルギー算出部27は、入力エネルギー算出部25で算出した入力エネルギーの値と入力エネルギー履歴データベース28に記録された過去の入力エネルギーの累積値とを足し合わせることで、対応する対象部分の累積エネルギーを算出する。
なお、更新された累積エネルギーの値が、対象部分の損傷の有無の判定に用いられるこのようにすれば、過去の地震動による疲労損傷を含めて評価することができる。そして、ステップS138に進む。
次のステップS138において、損傷判定部12は、損傷エネルギーデータベース29を参照し、判定対象の対象部分の損傷エネルギーの値を取得する。そして、累積エネルギー算出部27で算出された累積エネルギーの値(特定値)が、損傷エネルギーの値以上(閾値以上)か否かを判定する。ここで、累積エネルギー算出部27で算出された累積エネルギーの値が、損傷エネルギーの値以上である場合(ステップS138がYES)は、ステップS139に進む。一方、累積エネルギー算出部27で算出された累積エネルギーの値が、損傷エネルギーの値未満である場合(ステップS138がNO)は、ステップS142に進む。なお、累積エネルギーの値が損傷エネルギーの値以上である場合は対象部分が損傷しているものとし、累積エネルギーの値が損傷エネルギーの値未満である場合は対象部分が損傷していないものとする。
ステップS139において、リスト作成部13は、損傷していると判定された対象部分を損傷リストに記録する。この損傷リストは、リスト保存部14に保存される。そして、ステップS140に進む。
ステップS142において、リスト作成部13は、損傷していない判定された対象部分を非損傷リストに記録する。この非損傷リストは、リスト保存部14に保存される。そして、ステップS140に進む。
次のステップS140において、メイン制御部5は、耐震動性評価の判定対象としてセットされた全ての対象部分のうち、未だ判定されていない対象部分が残っているか否かを判定する。ここで、未だ判定されていない対象部分が残っている場合(ステップS140がYES)は、前述のステップS133に戻る。一方、未だ判定されていない対象部分が残っていない場合(ステップS140がNO)は、処理を終了する。
第5実施形態では、対象部分に入力される入力エネルギーに基づいて、対象部分が損傷しているか否かを判定する。
本実施形態に係る耐震動性評価システムを第1実施形態から第5実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。
なお、本実施形態において、基準値(閾値)を用いた任意の値(特定値)の判定は、「任意の値が基準値以上か否か」の判定でも良いし、「任意の値が基準値を超えているか否か」の判定でも良い。或いは、「任意の値が基準値以下か否か」の判定でも良いし、「任意の値が基準値未満か否か」の判定でも良い。また、基準値が固定されるものでなく、変化するものであっても良い。従って、基準値の代わりに所定範囲の値を用い、任意の値が所定範囲に収まるか否かの判定を行っても良い。また、予め装置に生じる誤差を解析し、基準値を中心として誤差範囲を含めた所定範囲を判定に用いても良い。
なお、本実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
本実施形態のシステムは、CPU、ROM、RAM、HDDなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、本実施形態の耐震動性評価方法は、プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
本実施形態のシステムは、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスまたはキーボードなどの入力装置と、通信インターフェースとを備える。このシステムは、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
なお、本実施形態のシステムで実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
また、このシステムで実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、このシステムは、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
なお、本実施形態では、地震に対する耐震動性の評価を行うようにしているが、地震以外の振動に基づく耐震動性の評価を行うようにしても良い。例えば、施設に飛翔体が衝突することにより発生する振動に基づく耐震動性の評価を行うようにしても良い。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、プラントを構成する複数の対象部分のそれぞれに対応させて予め構築された特定モデルを蓄積するモデルデータベースを備えることにより、簡易的なモデルを用いた耐震動性評価の精度を高めることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。