JP6916752B2 - 構造物安全率算出方法及び装置 - Google Patents

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本開示は、構造物安全率算出方法及び装置に関するものである。
従来、鉄道の構造物である河川橋りょうでは、出水により橋脚が被災することがある。このような場合、被災した橋脚の残存支持力が明らかでないので、営業列車の運行再開に当たっては、安全性確認のために多くの試験を行っている(例えば、非特許文献1参照。)。
小湊、阿部、篠田、「洪水により被災した鉄道橋梁橋脚の応急復旧事例」、土木学会論文集A1(構造・地震工学)、Vol.72、No.2、pp.332−337、2016
しかしながら、前記従来の技術では、実列車を使用した走行試験による動的な荷重の載荷や、実列車によるブレーキ試験などを行っている。そのため、運転士による運転が必要であったり、被災した橋脚の直上での制動が必要であったりするので、時間的な面や安全性の面において、鉄道事業者にとって大きな障害となっている。
ここでは、前記従来の技術の問題点を解決して、構造物の荷重−変位曲線を仮定し、実測により把握した観測情報に基づいて荷重−変位曲線を更新し、更新された荷重−変位曲線に基づいて、性能が劣化した構造物の残存性能の安全率及び信頼区間を算出することによって、残存性能を確認するための各種試験の実行又は省略の可否を判断することができ、性能が劣化した構造物に適した応急復旧対策を選択することができ、性能を回復させるまでの期間の短縮及び工費の削減を図ることができる構造物安全率算出方法及び装置を提供することを目的とする。
そのために、基礎構造物である構造物安全率算出方法においては、構造物について設定されたパラメータを用い、前記構造物の荷重−変位曲線を仮定する工程と、性能が劣化した前記構造物の測量によって得られた第1の観測情報と、性能が劣化した前記構造物に予荷重を付与して得られた第2の観測情報とに基づいて、前記荷重−変位曲線を更新する工程と、更新された前記荷重−変位曲線に基づいて、性能が劣化した前記構造物の残存性能の安全率を算出し、算出した安全率が所定値を上回る信頼区間を算出する工程と、を含む。
他の構造物安全率算出方法においては、さらに、前記構造物は、鉄道用橋りょうの橋脚基礎であり、出水によって被災することにより性能が劣化する。
更に他の構造物安全率算出方法においては、さらに、前記性能は前記橋脚基礎の支持力であり、前記荷重−変位曲線は、ワイブル曲線である。
更に他の構造物安全率算出方法においては、さらに、前記第1の観測情報は、被災直後の橋脚基礎の残留変位及び橋脚死荷重であり、前記第2の観測情報は、前記予荷重を付与した際の橋脚基礎の残留変位及び前記予荷重を橋脚死荷重に加算した値である。
構造物安全率算出装置においては、基礎構造物である構造物について設定されたパラメータを用い、前記構造物の荷重−変位曲線を仮定する荷重−変位曲線仮定部と、性能が劣化した前記構造物の測量によって得られた第1の観測情報と、性能が劣化した前記構造物に予荷重を付与して得られた第2の観測情報とに基づいて、前記荷重−変位曲線を更新する荷重−変位曲線更新部と、更新された前記荷重−変位曲線に基づいて、性能が劣化した前記構造物の残存性能の安全率を算出し、算出した安全率が所定値を上回る信頼区間を算出する安全率算出部と、を備える。
本開示によれば、構造物の荷重−変位曲線を仮定し、実測によって把握した観測情報に基づいて荷重−変位曲線を更新し、更新された荷重−変位曲線に基づいて、性能が劣化した構造物の残存性能の安全率及び信頼区間を算出する。これにより、残存性能を確認するための各種試験の実行又は省略の可否を判断することができ、性能が劣化した構造物に適した応急復旧対策を選択することができ、性能を回復させるまでの期間の短縮及び工費の削減を図ることができる。
本実施の形態における構造物の荷重−変位曲線を示す概念図である。 本実施の形態における構造物安全率算出装置の機能構成を示すブロック図である。 本実施の形態における平板載荷試験の結果からフィッティングしたワイブル曲線のパラメータを示す第1の図である。 本実施の形態における平板載荷試験の結果からフィッティングしたワイブル曲線のパラメータを示す第2の図である。 本実施の形態におけるワイブル曲線の分布を示す図であるである。 本実施の形態における構造物の荷重−変位曲線上の観測情報(1)及び(2)を示す図である。 本実施の形態における更新されたワイブル曲線の分布を示す図である。 本実施の形態における更新前後の極限支持力分布の変化を示す図である。 本実施の形態におけるワイブル曲線を更新する動作を示すフローチャートである。 本実施の形態における実際の被災橋脚へのプレロード工の結果を示す図である。 本実施の形態における実際の被災橋脚のワイブル曲線の分布を示す図である。 本実施の形態における実際の被災橋脚へのプレロード工の沈下量と安全率の信頼区間との関係を示す図である。
以下、本実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本実施の形態における構造物の荷重−変位曲線を示す概念図である。
「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、鉄道の構造物が被災した場合、運転再開には、当該構造物の性能低下の程度を把握するため、実列車を使用した走行試験による動的な荷重の載荷や、実列車によるブレーキ試験などの多くの試験を実施している。被災した構造物の性能低下の程度を把握する方法があれば、このような試験をより簡素化したり省略したりする可否を判断することができると考えられるが、そのような方法は現在までに確立されていない。
本実施の形態においては、性能が劣化した構造物の残存性能を把握することができる構造物安全率算出方法を提供し、これにより、残存性能を確認するための各種試験の実行又は省略の可否を判断することができ、被災した構造物に適した応急復旧対策を選択することができ、構造物の性能を回復させるまでの期間の短縮及び工費の削減を図ることができるようにする。なお、本実施の形態において、性能が劣化した構造物は、鉄道用のものであってもよいし、道路用のものであってもよいし、いかなる用途のものであってもよく、また、橋りょうであってもよいし、基礎構造物であればいかなる種類の構造物であってもよいが、ここでは、説明の都合上、鉄道用の河川橋りょうの橋脚基礎であって、出水によって被災したことにより性能が劣化した橋脚基礎であるものとする。
一般的に、橋脚基礎のような基礎に作用する荷重(主に、死荷重、列車荷重、制動荷重等)とそれによる基礎の変位量との関係(以下、「荷重−変位関係」という。)は非線形となることが知られている(例えば、非特許文献2参照。)。
地盤工学会、「地盤の平板載荷試験方法」、JGS1521−2012
橋脚基礎の場合、その非線形な荷重−変位関係を表す荷重−変位曲線は、例えば、図1において実線で示される曲線となるものと想定される。また、前記橋脚基礎が出水によって被災した場合には、荷重−変位曲線は、図1において破線で示される曲線のようになるものと想定される。そうであるとすると、橋脚基礎に作用する死荷重b1は既知であり、被災による橋脚基礎の変位である沈下量δ1は測量によって取得できるから、被災直後の荷重−変位曲線上の点a1を把握することができる。さらに、橋脚に列車荷重よりも小さな荷重であるプレロード(予荷重)を加えて橋脚基礎に荷重b2を作用させ、そのときの沈下量δ2を取得すると、被災直後の荷重−変位曲線上の点a2を把握することができる。ここで、荷重−変位曲線の骨格の詳細が明らかであれば、把握した点a1及び点a2を通る荷重−変位曲線の全体を把握することができ、把握した点a1及び点a2に基づいて外挿することによって、列車の走行試験を行った場合に対応する点a3や、ブレーキ試験を行った場合に対応する点a4を把握することができるので、列車の走行試験やブレーキ試験を行った場合における橋脚基礎の変位を予測することが可能となる。
しかし、前記荷重−変位曲線の骨格の詳細は、必ずしも明らかでない。そこで、ここでは、被災した橋脚基礎おける荷重−変位関係の非線形性を理論式を用いて仮定し、被災した橋脚の支持性能(支持力)の確率分布を算出する方法及び装置を提案する。
図2は本実施の形態における構造物安全率算出装置の機能構成を示すブロック図である。
図において、10は、本実施の形態における構造物安全率算出装置であって、構造物安全率算出方法を実行して性能が劣化した構造物の残存性能の安全率及び信頼区間を算出し、残存性能を確認するための各種試験の実行又は省略の可否判断、性能が劣化した構造物に適した応急復旧対策の選択等を行うために使用される一種のコンピュータシステムである。なお、前記構造物安全率算出装置10は、CPU、MPU等の演算装置、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶装置、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置、CRT、液晶ディスプレイ等の表示装置、通信インターフェイス等を備えるコンピュータ内に構築されたコンピュータシステムである。そして、前記コンピュータは、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、サーバ、タブレットコンピュータ等であるが、記憶装置にインストールされたアプリケーションソフトウェア等のプログラムに従って動作するコンピュータであればいかなる種類のものであってもよく、また、単独のコンピュータであってもよいし、複数台のコンピュータをネットワークで通信可能に接続したコンピュータ群であってもよい。
前記構造物安全率算出装置10は、機能の観点から、データ入力部11と、構造物状態把握部12と、静的載荷試験結果把握部13と、荷重−変位曲線仮定部としての荷重−変位曲線算出部14と、荷重−変位曲線更新部としての構造物残存支持力算出部15と、安全率算出部としての支持力安全率算出部16と、安全残留変位量算出部としての橋脚再使用可否判断基準変位算出部17とを備える。
また、前記構造物安全率算出装置10は、ネットワーク21を介して、実測データ収集部22と通信可能に接続されている。なお、前記ネットワーク21は、例えば、インターネット、イントラネット、LAN、WAN等であるが、データ通信可能な有線又は無線の通信回線又は通信回線網であれば、いかなる種類のものであってもよい。前記実測データ収集部22は、被災直後の構造物の残留変位のように測量によって得られた実測データ、静的載荷試験等の実験データ、事前に行われた測量によって得られた実測データ等を収集して蓄積する一種のデータベースであり、性能が劣化した構造物の測量によって得られた第1の観測情報を収集する第1の観測情報収集部22aと、性能が劣化した構造物にプレロードを付与して得られた第2の観測情報を収集する第2の観測情報収集部22bとを有する。なお、前記実測データ収集部22は、必ずしも構造物安全率算出装置10と別個に構成され、ネットワーク21を介して構造物安全率算出装置10に接続されたものである必要はなく、構造物安全率算出装置10と一体的に構成されたものであってもよい。
前記データ入力部11は、各種データを取得して入力する。例えば、現在の日時等のデータや、外部データとして、実測データ収集部22に収集されたデータを選択的に取得して入力する。具体的には、荷重−変位曲線の各種パラメータ、構造物の試験結果、構造物の実測値等が入力される。
前記構造物状態把握部12は、データ入力部11によって入力されたデータに基づき、被災直後の構造物の変位量、該構造物に作用する荷重等を把握する。例えば、性能が劣化した構造物の測量によって得られた第1の観測情報として、実測された被災直後の橋脚基礎の残留変位量と橋脚に作用する死荷重との関係を把握する。
前記静的載荷試験結果把握部13は、被災した構造物に対して行われた静的載荷試験の結果を把握する。例えば、性能が劣化した構造物にプレロードを付与して得られた第2の観測情報として、被災した橋脚に列車荷重よりも小さな荷重であるプレロードを加えたときの橋脚基礎の沈下量と橋脚に作用する荷重との関係を把握する。
前記荷重−変位曲線算出部14は、被災した構造物の荷重−変位関係の非線形性を表現する曲線としての荷重−変位曲線を計算する。例えば、該荷重−変位曲線として、パラメータが3つのワイブル(Weibull)曲線を採用し、実構造物を対象とした直接基礎の平板載荷試験の結果(例えば、非特許文献3〜5参照。)を用いたフィッティング結果に基づいてパラメータの値を設定する。
海野、西村、青木、「直接基礎の地盤係数(1)」、構造物設計資料、1979.12 海野、西村、青木、「直接基礎の地盤係数(2)」、構造物設計資料、1980.12 海野、西村、青木、真田、「直接基礎の地盤係数(3)」、構造物設計資料、1984.12
前記構造物残存支持力算出部15は、荷重−変位曲線を使用し、構造物状態把握部12及び静的載荷試験結果把握部13が把握した値に基づいて外挿することによって、前記荷重−変位曲線を更新し、被災した構造物に残存する支持力を算出する。例えば、構造物状態把握部12が把握した被災直後の橋脚基礎の残留変位量と橋脚に作用する死荷重との関係、静的載荷試験結果把握部13が把握したプレロードを加えたときの橋脚基礎の沈下量と橋脚に作用する荷重との関係等に基づいて、荷重−変位曲線であるワイブル曲線を更新する。また、橋脚基礎の沈下量が任意の値となったときの支持力の確率分布を算出することによって、被災橋脚の残存する支持力を得ることができる。
前記支持力安全率算出部16は、構造物残存支持力算出部15が算出した被災した構造物に残存する支持力の安全率及びその信頼区間を算出する。例えば、被災橋脚にプレロードを加えたときの橋脚基礎の沈下量に対する支持力の安全率を算出し、該安全率が所定値を上回る信頼区間を算出する。
そして、前記支持力安全率算出部16が算出した残存する支持力の安全率及びその信頼区間の値は、構造物安全率算出装置10の表示装置に表示したり、構造物安全率算出装置10に接続された図示されないプリンタ等によって印刷したりすることによって、出力される。これにより、被災した構造物について、各種試験の実行又は省略の可否を判断することができる。また、被災した構造物に適した応急復旧対策を選択することができる。したがって、運転再開までの期間の短縮及び工費の削減を図ることができる。
前記橋脚再使用可否判断基準変位算出部17は、荷重−変位曲線を使用し、構造物状態把握部12が把握した第1の観測情報に基づいて、構造物の所定の残存性能、例えば、列車の走行試験やブレーキ試験を行った際に構造物の安全を確保するために必要最小限の残存性能、を確保するために要する予荷重を付与した際の橋脚基礎の残留変位の値を算出する。例えば、把握された被災直後の荷重−変位曲線上の点a1に基づき、列車の走行試験を行った場合に許容される沈下量に対応する点a3や、ブレーキ試験を行った場合に許容される沈下量に対応する点a4を設定し、前記点a1と前記点a3や点a4とを通過する荷重−変位曲線を得るために要する点a2を設定するのに必要な荷重b2及び沈下量δ2の値を算出する。
そして、前記橋脚再使用可否判断基準変位算出部17が算出した残留変位の値は、構造物安全率算出装置10の表示装置に表示したり、構造物安全率算出装置10に接続された図示されないプリンタ等によって印刷したりすることによって、出力される。これにより、取得された第2の観測情報の価値を容易に判断することができる。
次に、前記構成の構造物安全率算出装置10の動作について説明する。まず、被災した構造物の荷重−変位関係の非線形性を表現する荷重−変位曲線について説明する。
図3は本実施の形態における平板載荷試験の結果からフィッティングしたワイブル曲線のパラメータを示す第1の図、図3Aは本実施の形態における平板載荷試験の結果からフィッティングしたワイブル曲線のパラメータを示す第2の図、図4は本実施の形態におけるワイブル曲線の分布を示す図である。
橋脚基礎のような基礎の荷重−変位曲線については、種々のモデルが存在し、例えば、主に、パラメータが2つとなるバイリニアモデルや双曲線モデル、また、パラメータが3つとなるR−Oモデルやワイブル曲線を用いたモデルがある。パラメータが2つの場合と比較して、パラメータが3つの場合には、微小変位区間、中間区間、及び、終局限界に近い区間の3点でフィッティングできるなど、より高い精度で荷重−変位関係の非線形性を表現することができる。よって、ここでは、パラメータが3つの曲線であるワイブル曲線を荷重−変位曲線として採用する例について説明する。
ワイブル曲線は、次の式(1)で表すことができる。
Figure 0006916752
Figure 0006916752
ワイブル曲線における3つの変数は式(1)におけるPou、Sou及びmであるが、前述の実構造物を対象とした直接基礎の平板載荷試験の結果(例えば、非特許文献3〜5参照。)を用いた図3に示されるようなフィッティング結果から、例えば、m及びSou/Bを、それぞれ、次の式(2)及び(3)の範囲で設定することができる。また、極限支持力Pouについては、対象構造物によって正の値で確率分布が安定的となる値を設定することができる。
0.75≦m≦1.25 ・・・ 式(2)
0.02≦Sou/B≦0.40 ・・・ 式(3)
なお、図3における永井Bl及び矢剣Blは、それぞれ、非特許文献3及び4に記載されている試験の対象構造物である東北新幹線の橋脚であり、神流川模型は、非特許文献5に記載されている試験の対象構造物である神流川の河川敷内に作成した模型である。
このように設定された変数の範囲で描画されたワイブル曲線は、図4に示されるようになる。なお、図4において、横軸はSo /Bを示し、縦軸はPo /Dを示している。
このように設定された変数の範囲で描画されたワイブル曲線は、図4に示されるようになる。なお、図4において、横軸はSo /Bを示し、縦軸はPo /Dを示している。
なお、図3Aに示されるようなより精密なフィッティング結果に基づき、m及びSou/Bを、それぞれ、次の式(4)及び(5)のように設定することもできる。
m:平均μ=1.0、標準偏差σ=0.25の正規分布 ・・・ 式(4)
Sou/B:Sou/B=a×m-4(aは0.02〜0.10の一様分布、または、0.02〜0.10が主たる分布となるような正規分布等の確率分布)・・・ 式(5)
本実施の形態においては、このようなワイブル曲線を、被災後の橋脚の状況及び簡易な試験によって、第1の観測情報及び第2の観測情報としての観測情報(1)及び観測情報(2)を確認して更新し、被災橋脚の極限支持力の確率分布を表現する。
観測情報(1):被災直後の測量で得られた残留変位及び橋脚死荷重。
観測情報(2):静的な載荷試験を実施した際の橋脚死荷重+載荷荷重、及び、その際の残留変位。
次に、ワイブル曲線を更新する動作について説明する。
図5は本実施の形態における構造物の荷重−変位曲線上の観測情報(1)及び(2)を示す図、図6は本実施の形態における更新されたワイブル曲線の分布を示す図、図7は本実施の形態における更新前後の極限支持力分布の変化を示す図、図8は本実施の形態におけるワイブル曲線を更新する動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS1で、オペレータは、被災した橋脚基礎の特定を行う。具体的には、橋脚基礎が出水によって被災し、残留変位を有した状態になると、オペレータが、構造物安全率算出装置10の入力装置を操作して被災した橋脚基礎の特定を行う。すると、データ入力部11は、実測データ収集部22にアクセスして、特定された被災した橋脚基礎に関するワイブル曲線のパラメータ等のデータを取得して入力する。そして、荷重−変位曲線算出部14は、入力されたデータに基づき、図4に示されるようなワイブル曲線を、被災した橋脚基礎に関して算出する。
続いて、ステップS2で、構造物状態把握部12は、被災直後の基礎の残留変位量及び死荷重の把握を行う。具体的には、データ入力部11が実測データ収集部22にアクセスして、オペレータ等によって実測された被災直後の橋脚基礎の残留変位量、橋脚に作用する死荷重等のデータを取得して入力すると、これらのデータに基づいて、構造物状態把握部12は、被災直後の基礎の残留変位量及び死荷重を把握する。これにより、前記観測情報(1)を得ることができる。また、図5に示される荷重−変位曲線上の1点を把握して確認することができる。該1点は、図1に示される荷重−変位曲線上の点a1に対応する。
続いて、ステップS3で、静的載荷試験結果把握部13は、静的載荷試験による荷重及び基礎の残留変位量の把握を行う。具体的には、データ入力部11が実測データ収集部22にアクセスして、オペレータ等によって行われた静的載荷試験の試験結果等のデータを取得して入力すると、これらのデータに基づいて、静的載荷試験結果把握部13は、静的載荷試験によって被災橋脚に載荷された静的な荷重と死荷重との合計値、及び、前記静的な荷重が載荷されたときの橋脚基礎の残留変位量の増分、すなわち、沈下量の増分を把握する。なお、前記静的な荷重は、被災橋脚の応急復旧工事の過程で残留沈下の解消等のために実施するプレロード工によって橋脚に載荷される静的な荷重、すなわち、予荷重である。これにより、前記観測情報(2)を得ることができる。また、図5に示される荷重−変位曲線上の別の1点を把握して確認することができる。該別の1点は、図1に示される荷重−変位曲線上の点a2に対応する。
続いて、ステップS4で、構造物残存支持力算出部15は、ステップS2及びS3の結果を用いた被災橋脚の残存支持力分布の外挿を行う。具体的には、図1示される荷重−変位曲線について説明したように把握した2点に基づいて外挿することによって、荷重−変位曲線上の他の点を予測することができる。被災した橋脚基礎に関する荷重−変位曲線であるワイブル曲線は、ステップS2によって得られた観測情報(1)及びステップS3によって得られた観測情報(2)から、図5においてハッチングで示される領域を通る曲線にはならないと考えられる。また、静的な荷重を載荷した場合の沈下量の増分が図5に示されるδ2とδ3との差分よりも小さくなること、すなわち、図5に示される「ステップS2及びS3の荷重と変位からわかる傾き」よりも大きくなること、も考えにくい。以上のことを考慮して、構造物残存支持力算出部15はワイブル曲線を更新する。更新されたワイブル曲線は、図6に示されるようなものになる。
更新前後のデータにおける極限支持力Pouの分布を比較すると、図7に示されるように、更新前には一様分布であったものが、更新後にはその更新内容によって分布が変化することが分かる。極限支持力Pouの分布に限らず、変位量が10%B(基礎底面幅Bの10%)となった時点等の任意の変位量における支持力の値の確率分布を算出することによって、被災橋脚の残存支持力を外挿することができる。
最後に、ステップS5で、支持力安全率算出部16は、残存支持力分布の安全率及び信頼区間を算出する。算出された残存支持力分布の安全率及びその信頼区間の値は、構造物安全率算出装置10の表示装置に表示したり、構造物安全率算出装置10に接続された図示されないプリンタ等によって印刷したりすることによって、出力される。これにより、オペレータ等は、被災した構造物について、各種試験の実行又は省略の可否を判断することができる。また、被災した構造物に適した応急復旧対策を選択することができる。
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 オペレータは、被災した橋脚基礎の特定を行う。
ステップS2 構造物状態把握部12は、被災直後の基礎の残留変位量及び死荷重の把握を行う。
ステップS3 静的載荷試験結果把握部13は、静的載荷試験による荷重及び基礎の残留変位量の把握を行う。
ステップS4 構造物残存支持力算出部15は、ステップS2及びS3の結果を用いた被災橋脚の残存支持力分布の外挿を行う。
ステップS5 支持力安全率算出部16は、残存支持力分布の安全率及び信頼区間を算出する。
次に、実際の被災橋脚への適用例について説明する。
図9は本実施の形態における実際の被災橋脚へのプレロード工の結果を示す図、図10は本実施の形態における実際の被災橋脚のワイブル曲線の分布を示す図、図11は本実施の形態における実際の被災橋脚へのプレロード工の沈下量と安全率の信頼区間との関係を示す図である。
ここでは、平成24年7月の九州北部豪雨で実際に被災した久大本線の隈上川橋りょうのP2橋脚を例にとって、本実施の形態における構造物安全率算出方法の適用例を説明する。
当該P2橋脚は、デックガーダを支持した直接基礎橋脚であり、出水により300〔mm〕沈下した。橋脚の桁荷重等も含めた死荷重は559〔kN〕となっている。被災後に実施したプレロード工による沈下量の推移は、図9に示されるようになっている(例えば、非特許文献6参照。)。なお、図9において、横軸は変位量を示し、縦軸は荷重を示している。
西岡、篠田、角、山手、「洗掘により沈下した直接基礎橋脚に対する鉛直載荷試験および列車走行試験」、地盤工学研究発表会、2013
当該P2橋脚について得られた観測情報(1)及び(2)は、次のようになった。
観測情報(1):橋脚死荷重559〔kN〕に対し、残存沈下量300〔mm〕。
観測情報(2):橋脚死荷重+載荷荷重1069〔kN〕に対し、実際に計測された変位量1〔mm〕。
なお、当該P2橋脚について得られた観測情報(1)及び(2)に基づいてワイブル曲線を描画すると、図10に示されるようになる。図10において、横軸はSo /Bを示し、縦軸はPo /Dを示している。
具体的には、橋脚の死荷重と実際に載荷したプレロード荷重とを用い、プレロード工による想定変位量を、例えば、0〔mm〕から15〔mm〕まで変化させてワイブル曲線分布を算出する。算出されたワイブル曲線分布によって、それぞれの想定変位量における変位量10%B(図10において、縦方向の破線で示される。)の支持力安全率(ここでは、Po /Dの値)が2を上回る信頼区間を算出することができる。そして、それをグラフ化すると、図11を得ることができる。なお、図11において、横軸はプレロード工における沈下量を示し、縦軸は支持力安全率2の信頼区間を示している。
ここで、支持力安全率2は、直接基礎の設計における使用状態において確保すべきとされる安全率であるが、この信頼区間と実被災橋脚におけるプレロード工の沈下量とを比較することによって、所定の支持力安全率に対する信頼性を把握することができる。例えば、前記隈上川橋りょうのP2橋脚におけるプレロード時の沈下量(1〔mm〕)では、支持力安全率2の信頼区間が約96%となっているので、徐行運転とモニタリングとを併用して行われる応急的な運転再開に対しては、十分な支持力が確保されているものと想定される。列車走行試験等の実施については、この安全率と信頼区間との関係から各橋脚毎に、個別に判断が実施される。
このように、本実施の形態において、構造物安全率算出方法は、構造物について設定されたパラメータを用い、構造物の荷重−変位曲線を仮定する工程と、性能が劣化した構造物の測量によって得られた第1の観測情報と、性能が劣化した構造物にプレロードを付与して得られた第2の観測情報とに基づいて、荷重−変位曲線を更新する工程と、更新された荷重−変位曲線に基づいて、性能が劣化した構造物の残存性能の安全率及び信頼区間を算出する工程と、を含んでいる。したがって、算出された構造物の残存性能の安全率及び信頼区間に基づいて、残存性能を確認するための各種試験の実行又は省略の可否を判断することができるとともに、性能が劣化した構造物に適した応急復旧対策を選択することができるので、性能を回復させるまでの期間の短縮及び工費の削減を図ることができる。
また、構造物は、鉄道用橋りょうの橋脚基礎であり、出水によって被災することにより性能が劣化する。したがって、鉄道の運転再開に必要とされる実列車を使用した走行試験や、実列車によるブレーキ試験などの多くの試験をより簡素化したり、省略したりする可否を判断することができる。
さらに、性能は橋脚基礎の支持力であり、荷重−変位曲線は、前記式(1)で表されるワイブル曲線である。したがって、橋脚基礎の支持力を適確に把握することができる。
さらに、第1の観測情報は、被災直後の橋脚基礎の残留変位及び橋脚死荷重であり、第2の観測情報は、プレロードを付与した際の橋脚基礎の残留変位及びプレロードを橋脚死荷重に加算した値である。これにより、ワイブル曲線を適確に更新して、被災橋脚の極限支持力の確率分布を表現することができる。
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。
本開示は、構造物安全率算出方法及び装置に適用することができる。
10 構造物安全率算出装置
14 荷重−変位曲線算出部
15 構造物残存支持力算出部
16 支持力安全率算出部

Claims (5)

  1. 基礎構造物である構造物について設定されたパラメータを用い、前記構造物の荷重−変位曲線を仮定する工程と、
    性能が劣化した前記構造物の測量によって得られた第1の観測情報と、性能が劣化した前記構造物に予荷重を付与して得られた第2の観測情報とに基づいて、前記荷重−変位曲線を更新する工程と、
    更新された前記荷重−変位曲線に基づいて、性能が劣化した前記構造物の残存性能の安全率を算出し、算出した安全率が所定値を上回る信頼区間を算出する工程と、
    を含むことを特徴とする構造物安全率算出方法。
  2. 前記構造物は、鉄道用橋りょうの橋脚基礎であり、出水によって被災することにより性能が劣化する請求項1に記載の構造物安全率算出方法。
  3. 前記性能は前記橋脚基礎の支持力であり、前記荷重−変位曲線は、式(1)で表されるワイブル曲線である請求項2に記載の構造物安全率算出方法。
    Figure 0006916752
    Po は直接基礎に作用する鉛直荷重であり、Pouは極限支持力であり、So は直接基礎の変位であり、Souは直接基礎の変位量の特性値であり、Dは死荷重であり、Bは基礎底面幅であり、mは変位指数である。
  4. 前記第1の観測情報は、被災直後の橋脚基礎の残留変位及び橋脚死荷重であり、前記第2の観測情報は、前記予荷重を付与した際の橋脚基礎の残留変位及び前記予荷重を橋脚死荷重に加算した値である請求項3に記載の構造物安全率算出方法。
  5. 基礎構造物である構造物について設定されたパラメータを用い、前記構造物の荷重−変位曲線を仮定する荷重−変位曲線仮定部と、
    性能が劣化した前記構造物の測量によって得られた第1の観測情報と、性能が劣化した前記構造物に予荷重を付与して得られた第2の観測情報とに基づいて、前記荷重−変位曲線を更新する荷重−変位曲線更新部と、
    更新された前記荷重−変位曲線に基づいて、性能が劣化した前記構造物の残存性能の安全率を算出し、算出した安全率が所定値を上回る信頼区間を算出する安全率算出部と、
    を備えることを特徴とする構造物安全率算出装置。
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