JP6120349B2 - 傾斜機能膜およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電気特性が位置に応じて変化する傾斜機能膜およびその製造方法に関する。
ディスプレイ装置に採用される有機薄膜発光素子は、陽極から注入された正孔と、陰極から注入された電子とが、正孔輸送層または電子輸送層を介して発光層に到達して再結合する。これにより、発光層を構成する有機化合物の励起状態が実現され、この励起状態が基底状態に戻る際に有機化合物の蛍光と同じ波長の光が放出される。
しかるに、例えば陽極としてITO(酸化錫インジウム)が用いられ、正孔輸送層にTPD(トリフェニルジアミン)が用いられた場合、前者のフェルミ準位が4.6[eV]であり、後者のHOMO(最高被占軌道)準位は5.5[eV]であるため、正孔キャリアにとって両者の間には0.9[eV]の電位障壁が存在することになる。
そこで、ITOよりも仕事関数が高い金属酸化物薄膜が陽極として用いられることにより、ITOが陽極として用いられた場合よりも当該電位差を低減させ、素子の発光開始電圧の低減および発光効率の向上を図るための技術が提案されている(特許文献1および非特許文献1および2参照)。
特許第2824411号公報
S. Tokito, et.al. J.Phys., vol.29 (1996) 2750-2753 C. W. Tang, et.al. J. Appl. Phys., vol.65 (1989) 3610-3616
しかし、金属酸化物としてバナジウム酸化物(VOx)が採用された場合、その体積抵抗率は105[Ωcm]と大きく、キャリアとしての正孔の発光層に対する注入効率の観点からは好ましくない。
また、金属酸化物として体積抵抗率が低いルテニウム酸化物(RuOx)またはモリブデン酸化物(MoOx)が用いられた場合、これらの酸化物は光透過率が低いので、ITO膜および当該酸化物膜が積層された2層構造の電極が形成される。この場合、両者は結晶構造が異なるため、その接合界面の存在も正孔の発光層に対する注入効率の観点からは好ましくない。
そこで、本発明は、有機薄膜発光素子の陽極に用いられた場合に、発光層に対する正孔の注入効率の向上を図ることができる傾斜機能膜およびその製造方法を提供することを解決課題とする。
前記課題を解決するための本発明の傾斜機能膜は、錫添加酸化インジウム(ITO)を主成分とし、下地層と、当該下地層に重なる複数の層と、により構成されている傾斜機能膜であって、前記下地層が、バナジウム(V)の原子数比V/(In+Sn+V)が0である一方でスズ(Sn)の原子数比Sn/(In+Sn+V)が正値である第1の値であるエピタキシャル成長した層であり、前記複数の層が、バナジウム(V)の原子数比V/(In+Sn+V)が一定の正値である第2の値であり、前記下地層から遠くなる方向についてスズ(Sn)の原子数比Sn/(In+Sn+V)が前記第1の値よりも小さい正値から徐々に減少する、前記下地層に連続してエピタキシャル成長した第1層群と、スズ(Sn)の原子数比Sn/(In+Sn+V)が0であり、前記下地層から遠くなる方向についてバナジウム(V)の原子数比V/(In+Sn+V)が前記第2の値から徐々に増加する、前記第1層群に連続してエピタキシャル成長した第2層群と、を備えていることを特徴とする。
本発明の傾斜機能膜によれば、膜厚方向についてその片側表面に向かってITOに対するVの添加量が徐々に増加するので、当該表面付近においてITO由来の仕事関数の高さと、ドープされたV由来の導電性の高さとが確保される。また、傾斜機能膜がその膜厚方向に対してエピタキシャル成長することにより構成されているので、構造の異なる膜が積層された場合のような接合界面は存在しない。
よって、傾斜機能膜のVの添加量が多い表面側が正孔輸送層に接するように、この傾斜機能膜が有機薄膜発光素子の陽極として用いられた場合、陽極から正孔輸送層を介した発光層に対する正孔キャリアの注入効率の向上を図ることができる。
前記傾斜機能膜において、添加金属Mの原子数比M/(In+M)がa/2と表わされている場合、インジウム複合酸化物In2-aa3+a/2-yにより定義される酸素欠陥量yが3.0×10-3〜7.5×10-1であることが好ましい。
当該構成の傾斜機能膜によれば、酸素欠陥量が制御されることにより、結晶性の向上による傾斜機能膜の仕事関数の向上、および、キャリア電子密度の向上による傾斜機能膜の導電性の向上が図られる。Sn、V、Ru、Mo、Sm若しくはZnまたはこれらの合金が添加金属Mに相当する。
前記課題を解決するための本発明の傾斜機能膜の製造方法は、錫添加酸化インジウム(ITO)を主成分とし、下地層と、当該下地層に重なる複数の層と、により構成されている傾斜機能膜を製造する方法であって、スズ(Sn)の原子数比Sn/(In+Sn+V)が正値である第1の値であるように、InおよびSnが含有されている下地原料溶液のミストを生成して基板に付着させ、雰囲気温度の制御によって前記下地原料溶液の溶媒を蒸発させるとともに溶質を酸化させるというプロセスを繰り返すことで前記下地層をエピタキシャル成長させて形成し、In、SnおよびVが含有されている第1の原料溶液のミストを生成して前記下地層に付着させ、雰囲気温度の制御によって前記第1の原料溶液の溶媒を蒸発させるとともに溶質を酸化させるというプロセスを繰り返す過程において、前記第1の原料溶液のミストにおけるバナジウム(V)の原子数比V/(In+Sn+V)が一定の正値である第2の値であり、スズ(Sn)の原子数比Sn/(In+Sn+V)を前記第1の値よりも小さい正値から徐々に減少させることで、前記下地層に連続する第1層群をエピタキシャル成長させて形成し、InおよびVが含有されている第2の原料溶液のミストを生成して前記第1層群に付着させ、雰囲気温度の制御によって前記第2の原料溶液の溶媒を蒸発させるとともに溶質を酸化させるというプロセスを繰り返す過程において、前記第2の原料溶液のミストにおけるバナジウム(V)の原子数比V/(In+Sn+V)を前記第2の値から徐々に増加させることで、前記第1層群に連続する第2層群をエピタキシャル成長させて形成することを特徴とする。
前記プロセスを繰り返した後、前記傾斜機能膜を熱処理することにより、添加金属Mの原子数比M/(In+M)がa/2と表わされている場合、インジウム複合酸化物In2-aa3+a/2-yにより定義される前記傾斜機能膜の酸素欠陥量yを3.0×10-3〜7.5×10-1に制御することが好ましい。
本発明の一実施形態としての傾斜機能膜の構成説明図。 傾斜機能膜の機能説明図。 本発明の傾斜機能膜の成長の様子を示す概念的説明図。 実施例の傾斜機能膜の厚さ方向位置と組成との関係説明図。 実施例の傾斜機能膜の厚さ方向位置と体積抵抗率との関係説明図。 実施例の傾斜機能膜の厚さ方向位置と仕事関数との関係説明図。 実施例の傾斜機能膜および機能膜の体積抵抗率および仕事関数に関する説明図。 傾斜機能膜が陽極として用いられた有機薄膜発光素子の構成説明図。 有機薄膜発光素子のエネルギーバンド構造に関する説明図。
(傾斜機能膜の構成)
図1には、本発明の一実施形態としてのITOを主成分とする傾斜機能膜におけるバナジウム(V)の添加態様が示されている。膜厚方向(z方向)について添加物であるバナジウム(V)の原子数比f(z)=V/(In+Sn+V)の変化態様が曲線で示されている。また、付加的に当該変化態様が明度の変化態様により示されている。この変化態様は、膜厚tを用いて関係式(01)により近似される。
f(z)=0 (if z=0〜αt, 0<α<1), f(z)=β1(t-αt)n (if z=αt〜t, 0<β1, 1.5<n) ..(01)。
膜厚方向について片側表面に近いほど、原子数比f(z)が徐々に増加するように傾斜機能膜が構成されていれば、その変化態様は関係式(02)または(03)等、関係式(01)とは異なるさまざまな関係式により定義される。すなわち、少なくとも膜表面近傍において(df/dz)>0であればよい。膜表面近傍において(d2f/dz2)>0であってもよい。
f(z)=β2/{(1+α)t-z} (z=0〜t, 0<β2) ..(02)。
f(z)=β3exp(z-(1+α)t) (z=0〜t, 0<β3) ..(03)。
傾斜機能膜は、その膜厚方向に擬エピタキシャル成長することにより構成されている。例えば後述するスプレー法で製造された傾斜機能膜は、多結晶膜であり、横が70〜100[nm]であり、縦が膜厚と同程度のサイズ(例えば240[nm])を有する立方晶の結晶群により構成されている。
錫(Sn)の原子数比Sn/(In+Sn+V)は、傾斜機能膜の主成分であるITOの体積抵抗率(〜10-4[Ωcm])を低い値に維持する、すなわち、導電性を高く維持する観点から0〜0.2の範囲に調節されており、0.05〜0.1の範囲が好ましい。
また、錫(Sn)の添加はキャリア電子密度を高める反面、仕事関数を低減させる効果も有するので、膜厚方向について片側表面に近付くにつれて前記の原子数比Sn/(In+Sn+V)を小さくする、あるいは0まで調節させることが好ましい。
(傾斜機能膜の特性)
図2には、傾斜機能膜の体積抵抗率および仕事関数のそれぞれの膜厚方向についての変化態様が示されている。実線は、アニール処理(後述する熱処理)が施されていない第1実施形態の傾斜機能膜の体積抵抗率および仕事関数を示している。第1実施形態の傾斜機能膜においては、膜表面近傍に、インジウム複合酸化物In2-aa3+a/2-yにより定義される酸素欠陥量yが1.0×10-3となる領域を有し、3.0×10-3〜7.5×10-1の範囲から外れている。破線は、アニール処理が施された第2実施形態の傾斜機能膜の体積抵抗率および仕事関数を示している。第2実施形態の傾斜機能膜においては、酸素欠陥量が5.0×10-3≦y≦1.5×10-1(3.0×10-3〜7.5×10-1の範囲に含まれる値)に制御されている。
酸素欠陥量yは、西田ら(www.jaist.ac.jp/NanoNet/H20%20rep%20pdf/H20-JA014%20knishida.pdf)により提案されている、非ラザフォード共鳴散乱法(NRERS)およびレーザーラマン分光法が組み合わせられた酸素欠陥同定方法にしたがって推定された。
図1および図2から、バナジウムの添加量が膜厚方向について0から徐々に増加するにつれて、仕事関数が上昇していることがわかる。また、膜表面付近の体積抵抗率も上昇するものの、10-2〜10-3[Ωcm]程度とバナジウム酸化物(VOx)のそれと比較して格段に低く抑制されていることもわかる。
また、第1実施形態の傾斜機能膜と比較して、第2実施形態の傾斜機能膜の仕事関数が大きく上昇し、かつ、体積抵抗率の上昇が低く抑制されている。これは、酸素欠陥量が制御されることにより、結晶性の向上による傾斜機能膜の仕事関数の向上、および、キャリア電子密度の向上による傾斜機能膜の導電性の向上が図られているためであると推察される。
(傾斜機能膜の製造方法)
本発明の傾斜機能膜の製造方法について説明する。In、SnおよびVが含有されている原料溶液のミストを生成して基板またはITOの下地層に付着させ、雰囲気温度の制御によって原料溶液の溶媒を蒸発させるとともに溶質を酸化させるというプロセスを繰り返す過程において、ミストにおけるInに対するVの原子量比率を徐々に増加させることにより傾斜機能膜が製造される。
具体的には、まず、第1、第2および第3原料溶液のそれぞれが調整される。「第1原料溶液」はInCl3・nH2Oを溶質とし、H2Oまたはアルコールを溶媒とする。「第2原料溶液」はSnCl2・nH2OまたはSnCl4・nH2Oを溶質とし、H2Oまたはアルコールを溶媒とする。「第3原料溶液」はVOCl3・nH2OまたはVCl3・nH2Oを溶質とし、H2Oまたはアルコールを溶媒とする。
ここで溶媒であるアルコールには、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールなどの一級アルコールおよび、イソプロパノール、tert−ブチルアルコールなどの側鎖を有する二級および三級アルコールおよび、エチレングリコール、グリセリンなどの二価および三価および多価アルコールが含まれる。
また、加熱器により成膜雰囲気が制御される。例えば、基板が載せられている加熱器としてのホットプレートが用いられて当該基板が加熱されることにより、成膜雰囲気温度が制御される。そのほか、原料溶液の今回層における溶媒を気化または蒸発させることができることを条件として、成膜雰囲気温度がさまざまな方法によって制御されてもよい。例えば、基板が収容されるチャンバ内に配置された加熱器によって成膜雰囲気温度が制御されてもよい。
第1、第2および第3原料溶液のそれぞれが収容されている第1、第2および第3容器のそれぞれから、噴霧器に対して供給される各原料溶液の混合比が制御される。例えば、各容器と噴霧器とを接続する各経路に流量調節バルブが設けられ、各流量調節バルブの開度が制御装置により制御される。Snの原子数比Sn/(In+Sn)が、0〜0.2に制御される。Vの原子数比V/(In+V)が、初期段階では0、その後、プロセス回数の変化に応じて徐々に増加するように制御される。
さらに、噴霧器により、混合原料溶液のミストが生成される。例えば、噴霧器としてプランジャポンプが用いられる。プランジャポンプによる噴霧方式は加圧式または一流体式なので、二流体式とは異なり、キャリアガスを用いずに原料溶液のミスト生成が可能である。噴霧器による各原料溶液の噴霧量は、100回当たりの噴霧量が15〜20[ml]になるように調節されている。噴霧器の動作はコンピュータにより構成されている制御装置により制御されてもよい。なお、二流体方式の噴霧器等、プランジャポンプとは異なる噴霧器が用いられて原料溶液のミストが生成されてもよい。
雰囲気温度が制御されることにより、原料溶液の今回層における溶媒を気化または蒸発させるとともに、溶質を酸化させることにより、ITOを主成分とする傾斜機能膜が徐々に擬エピタキシャル成長する。
初期段階では、図3(a)に示されているように基板の表面に島状に分散した傾斜機能膜のシーズ(斜線部分参照)が形成される。その後の原料溶液の供給により、当該複数のシーズが基板表面に対して平行な方向にも成長することによって、図3(b)に示されているように基板の表面全体を覆う傾斜機能膜が形成される。その後、層の堆積に伴い、図3(c)に示されているように機能傾斜膜は基板の表面に対して垂直な方向に擬エピタキシャル成長することによってその厚みを徐々に増していく。
その後、還元ガス(N2、Ar、He、Ne、CO、H2、N2−H2、CO−CO2など)雰囲気または減圧下において傾斜機能膜がアニール処理される。傾斜機能膜は、例えば300〜600[℃]の温度で、0.5〜6時間にわたりアニール処理される。これにより、インジウム複合酸化物In2-aa3+a/2-yにより定義される傾斜機能膜の酸素欠陥量yが3.0×10-3〜7.5×10-1に制御される。600[℃]の温度でのアニール処理では、N2−H2還元ガスのH2濃度は0.1〜0.3%が好ましく、処理は1〜3時間が適している。このアニール処理は省略されてもよい。
なお、複数の原料溶液が単一の噴霧器に供給されることにより混合原料溶液が噴霧されるのではなく、複数の原料溶液のそれぞれが別個の噴霧器のそれぞれから噴霧され、各噴霧器の噴霧量またはミスト生成量の比率が時系列的に制御されることにより、膜厚方向について原子数比f(z)が勾配を有するように制御されている傾斜機能膜が製造されてもよい。
3種類の原料溶液ではなく、InCl3・nHOおよびSnCl2・nH2OまたはSnCl4・nH2Oを溶質とし、H2Oまたは前記アルコールを溶媒とする混合原料溶液と、VOCl3・nH2OまたはVCl3・nHOを溶質とし、H2Oまたは前記アルコールを溶媒とする原料溶液とが調製された上で、混合原料溶液および原料溶液の混合比率または各原料溶液のミスト生成量の比率が時系列的に制御されることにより、膜厚方向について原子数比f(z)が勾配を有するように制御されている傾斜機能膜が製造されてもよい。
また、3種類の原料溶液ではなく、InCl3・nH2OおよびSnCl2・nH2OまたはSnCl4・nH2OおよびVOCl3・nH2OまたはVCl3・nH2Oを溶質とし、H2Oまたは前記アルコールを溶媒とする各金属原料の混合比率を調節した複数の混合原料溶液が調製された上で、複数の混合原料溶液が単一の噴霧器に順次供給されることにより噴霧され、または複数の原料溶液のそれぞれが別個の噴霧器のそれぞれから噴霧され、各混合原料溶液の噴霧量またはミスト生成量の比率が時系列的に制御されることにより、膜厚方向について原子数比f(z)が勾配を有するように制御されている傾斜機能膜が製造されてもよい。
大面積の傾斜機能膜の製造等の要請に応じて、噴霧器と基板とが相対的に変位するように、噴霧器および当該基板の載置台のうち一方または両方が駆動制御されてもよい。
傾斜機能膜の製造方法としては、真空蒸着法、CVD法およびスパッタリング法など、スプレーCVD法とは別の方法が採用されてもよい。
真空蒸着法によれば、複数の蒸着源(例えば、ITOおよびVOx)が用意され、各蒸着源からの蒸着レートの比率が調節されることにより、膜厚方向について原子数比f(z)が勾配を有するように制御されている傾斜機能膜が製造されうる。そのほか、各蒸着源から飛散する原料の比率が空間的に変化するように複数の蒸着源が配置された上で、当該複数の蒸着源と基板とが相対的に変位するように制御されることにより、傾斜機能膜が製造されてもよい。ただし、大面積の傾斜機能膜の製造および製造スペースのコンパクト化という観点からは好ましくない。
CVD法によれば、複数種類の原料ガスの導入速度が制御されることにより、気相状態の原料の混合比を変化させることにより、膜厚方向について原子数比f(z)が勾配を有するように制御されている傾斜機能膜が製造されうる。そのほか、各原料ガスの比率が空間的に変化するように各原料ガス供給源が配置された上で、当該複数の原料ガス供給源と基板とが相対的に変位するように制御されることにより、傾斜機能膜が製造されてもよい。
スパッタリング法によれば、原子数比V/(In+V)が異なる複数種類のターゲットが用意され、使用されるターゲットが切り替えられることにより、膜厚方向について原子数比f(z)が勾配を有するように制御されている傾斜機能膜が製造されうる。ただし、原子数比f(z)は、ターゲットの切り替えに応じて、膜厚方向に連続的ではなく階段的(不連続的)に変化する。スパッタリング法および蒸着法が組み合わせられることにより、膜厚方向について原子数比f(z)が勾配を有するように制御されている傾斜機能膜が製造されてもよい。
(実施例)
(実施例1)
In源としてのInCl3・nH2O(n=2)と、Sn源としてのSnCl2・nH2O(n=1)と、V源としてのVOCl3・nH2O(n=0)とを溶質とし、エタノールを溶媒とし、In、SnおよびVの組成比が異なる7種類の混合原料溶液が調製された。各混合原料溶液の組成比が表1にまとめて示されている。総金属イオン濃度は0.2[mol/l]に調節された。
第1の混合原料溶液のミストを生成して基板または当該基板の上に形成された、第1の混合原料溶液由来のITOの下地層に付着させ、雰囲気温度の制御によって当該第1の混合原料溶液の溶媒を蒸発させるとともに溶質を酸化させるというプロセスが繰り返されることにより厚さ228[nm]の第1層が形成された。
同様に、第iの混合原料溶液(i=2〜7)のミストを生成して第i−1層または第i−1層の上に形成された、第iの混合原料溶液由来のITOの下地層に付着させ、雰囲気温度の制御によって当該第iの混合原料溶液の溶媒を蒸発させるとともに溶質を酸化させるというプロセスが繰り返されることにより厚さ2[nm]の第i層が形成された。雰囲気温度は270〜470[℃]の温度範囲に含まれるように制御された。これにより、基板上に第1〜第7層が順に積層された構造の厚さ240[nm]の傾斜機能膜が製造された。
そして、傾斜機能膜が還元熱処理されることにより、実施例1の傾斜機能膜が得られた。還元熱処理雰囲気としてはN2−0.2%H2混合ガス雰囲気が採用され、当該混合ガスの流量は300[ml/min]に制御された。雰囲気温度は室温(〜20[℃])から600[℃]までの昇温速度が10[℃/min]に制御され、120[min]にわたり600[℃]に維持された後、600[℃]から室温までの降温速度が30[℃/min]に制御された。
(実施例2)
第1層の厚さが216[nm]に調節され、第i層の厚さが4[nm]に調節されたほかは、実施例1と同様の製造条件下で実施例2の傾斜機能膜が製造された。
(実施例3)
第1層の厚さが180[nm]に調節され、第i層の厚さが10[nm]に調節されたほかは、実施例1と同様の製造条件下で実施例3の傾斜機能膜が製造された。
図4には、実施例1〜3のそれぞれの傾斜機能膜の厚さ方向位置z(基板を基準としている。)と、傾斜機能膜を構成するSnおよびVのそれぞれの原子数比との関係が示されている。図4から、実施例1〜3のそれぞれの傾斜機能膜において、所定位置(第1層の厚さに相当する。図1のz=αt参照。)を基準として基板から離れるほど、Snの原子数比Sn/(In+Sn+V)が断続的に減少して最終的に0となり、Vの原子数比V/(In+Sn+V)が0から断続的に増加していることがわかる。これは、第1〜第7層の原料である第1〜第7の混合原料溶液における原子数比の相違によっている(表1参照)。
図5には、実施例1〜3のそれぞれの傾斜機能膜の厚さ方向位置zと体積抵抗率との関係が示されている。図5から、実施例1〜3のそれぞれの傾斜機能膜において、所定位置を基準として基板から離れるほど体積抵抗率が上昇していることがわかる。
図6には、実施例1〜3のそれぞれの傾斜機能膜の厚さ方向位置zと仕事関数との関係が示されている。図6から、実施例1〜3のそれぞれの傾斜機能膜において、所定位置を基準として基板から離れるほど仕事関数が上昇していることがわかる。
(比較例)
(比較例1)
実施例1〜3の傾斜機能膜を製造する際に用いられた第4の混合原料溶液のミストを用いて前記プロセスが繰り返されることにより厚さ240[nm]のITVO膜が比較例1の機能膜として製造された。
(比較例2)
実施例1〜3の傾斜機能膜を製造する際に用いられた第5の混合原料溶液を用いて前記プロセスが繰り返されることにより厚さ240[nm]のIVO膜が比較例2の機能膜として製造された。
(比較例3)
実施例1〜3の傾斜機能膜を製造する際に用いられた第1の混合原料溶液を用いて前記プロセスが繰り返されることにより厚さ240[nm]のITO膜が比較例3の機能膜として製造された。
(比較例4)
InCl3・nH2O(n=2)を溶質とし、エタノールを溶媒とし、総金属イオン濃度は0.2[mol/l]に調節された原料溶液を用いて、前記プロセスが繰り返されることにより厚さ240[nm]のIn23膜が比較例4の機能膜として製造された。
(測定結果)
表2および図7には実施例1〜3のそれぞれの傾斜機能膜の体積抵抗率および基板から最も離れている第7層における仕事関数の関係と、比較例1〜4のそれぞれの機能膜の体積抵抗率および仕事関数の関係が示されている。
表2および図7から、特に実施例1および2のそれぞれの傾斜機能膜は、体積抵抗率が比較例3の機能膜(ITO膜)と同程度である一方、仕事関数が比較例1の機能膜(ITVO膜)および比較例2の機能膜(IVO)膜のそれと同程度であって比較例3の機能膜よりも高いことがわかる。
(傾斜機能膜の応用例)
図8には、本発明の傾斜機能膜の応用例の1つである有機薄膜発光素子が示されている。発光素子は、基板1と、陽極2と、正孔輸送層3と、発光層4と、陰極5とが順に積層されることにより構成されている。傾斜機能膜2は、本発明の傾斜機能膜が採用され、Vが多く添加されている表面側が正孔輸送層3に向けられている。正孔輸送層3は例えばTPDにより構成されている。発光層4はAlq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)により構成されている。陰極5はAl−Mg合金により構成されている。
図9には、図8の発光素子のエネルギーバンド構造が示されている。図9に示されているように、陽極2を構成する傾斜機能膜の表面における仕事関数が高くなっており、障壁となる電位差が低減または解消されているので、正孔(○)が陽極2から正孔輸送層3に効率的に注入される。その結果、陽極2から発光層4に対する正孔の注入効率および発光層4の発光効率の向上が図られる。
1‥基板、2‥陽極(傾斜機能膜)、3‥正孔輸送層、4‥発光層、5‥陰極。

Claims (4)

  1. 錫添加酸化インジウム(ITO)を主成分とし、下地層と、当該下地層に重なる複数の層と、により構成されている傾斜機能膜であって、
    前記下地層が、バナジウム(V)の原子数比V/(In+Sn+V)が0である一方でスズ(Sn)の原子数比Sn/(In+Sn+V)が正値である第1の値であるエピタキシャル成長した層であり、
    前記複数の層が、
    バナジウム(V)の原子数比V/(In+Sn+V)が一定の正値である第2の値であり、前記下地層から遠くなる方向についてスズ(Sn)の原子数比Sn/(In+Sn+V)が前記第1の値よりも小さい正値から徐々に減少する、前記下地層に連続してエピタキシャル成長した第1層群と、
    スズ(Sn)の原子数比Sn/(In+Sn+V)が0であり、前記下地層から遠くなる方向についてバナジウム(V)の原子数比V/(In+Sn+V)が前記第2の値から徐々に増加する、前記第1層群に連続してエピタキシャル成長した第2層群と、を備えていることを特徴とする傾斜機能膜。
  2. 請求項1記載の傾斜機能膜において、
    添加金属Mの原子数比M/(In+M)がa/2と表わされている場合、インジウム複合酸化物In2-aa3+a/2-yにより定義される酸素欠陥量yが3.0×10-3〜7.5×10-1であることを特徴とする傾斜機能膜。
  3. 錫添加酸化インジウム(ITO)を主成分とし、下地層と、当該下地層に重なる複数の層と、により構成されている傾斜機能膜を製造する方法であって、
    スズ(Sn)の原子数比Sn/(In+Sn+V)が正値である第1の値であるように、InおよびSnが含有されている下地原料溶液のミストを生成して基板に付着させ、雰囲気温度の制御によって前記下地原料溶液の溶媒を蒸発させるとともに溶質を酸化させるというプロセスを繰り返すことで前記下地層をエピタキシャル成長させて形成し、
    In、SnおよびVが含有されている第1の原料溶液のミストを生成して前記下地層に付着させ、雰囲気温度の制御によって前記第1の原料溶液の溶媒を蒸発させるとともに溶質を酸化させるというプロセスを繰り返す過程において、前記第1の原料溶液のミストにおけるバナジウム(V)の原子数比V/(In+Sn+V)が一定の正値である第2の値であり、スズ(Sn)の原子数比Sn/(In+Sn+V)を前記第1の値よりも小さい正値から徐々に減少させることで、前記下地層に連続する第1層群をエピタキシャル成長させて形成し、
    InおよびVが含有されている第2の原料溶液のミストを生成して前記第1層群に付着させ、雰囲気温度の制御によって前記第2の原料溶液の溶媒を蒸発させるとともに溶質を酸化させるというプロセスを繰り返す過程において、前記第2の原料溶液のミストにおけるバナジウム(V)の原子数比V/(In+Sn+V)を前記第2の値から徐々に増加させることで、前記第1層群に連続する第2層群をエピタキシャル成長させて形成することを特徴とする方法。
  4. 請求項3記載の傾斜機能膜の製造方法において、
    前記プロセスを繰り返した後、前記傾斜機能膜を熱処理することにより、添加金属Mの原子数比M/(In+M)がa/2と表わされている場合、インジウム複合酸化物In2-aa3+a/2-yにより定義される前記傾斜機能膜の酸素欠陥量yを3.0×10-3〜7.5×10-1に制御することを特徴とする方法。
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