JP6119717B2 - ばね用鋼およびばね - Google Patents

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本発明は、例えば自動車用の足回り部品である懸架ばね、トーションバーおよびスタビライザーなどの高強度ばねや、建設機械用および鉄道車両用のばねの素材として好適なばね用鋼、さらに、このばね用鋼を用いたばねの製造方法に関する。
近年、地球環境の観点から、二酸化炭素排出量の削減が要望されており、自動車、建設機械や鉄道車両の軽量化の要望がますます高くなっている。特に、これらで使用されるばねの軽量化に対する要望が強く、焼入れ−焼戻し後の強度が1800MPa程度以上となる、高強度化した素材を用いた高応力設計が適用されている。
汎用的なばね用鋼は、JIS G4801などに規定される、焼入れ−焼戻し後の強度が1600〜1800MPa程度のものであり、熱間圧延で所定の線材に製造後、熱間成形ばねの場合はばね状に加熱成形してから焼入れ−焼戻し処理を行い、冷間成形ばねの場合は、引き抜き加工後、焼入れ−焼戻し処理を行い、ばね状に成形される。
例えば、熱間成形ばねの場合は、焼入れ−焼戻し後、ショットピーニングによりばねの表面に圧縮残留応力を付与して、ばねの耐疲労特性の改善を図っている。
上述したばねにおいては、これまで一般的に使用されている素材として、JIS G4801に記載のSUP7がある。SUP7は熱間にてばね状に成形したのちに、耐疲労特性の向上を目的にショットピーニングによって表面に圧縮残留応力が付与される。しかしながら、SUP7では、熱間圧延で所定の線材に製造する際、また、ばね状に成形するための加熱の際に、表層のCが減少し、脱炭が生じることから、ばね製造後の表面の硬度が低下しやすく、ショットピーニングによる圧縮残留応力の付与が十分ではなくなり、その結果、ばねとしての特性(特に、疲労特性)に悪影響を与える問題が生じる。
上記のとおり、ばね鋼は、少なくとも1回以上の加熱を経て成形されるため、表層のCが減少し脱炭が生じる。この脱炭について、JIS G 0558には、「全脱炭層深さ」、「フェライト脱炭層深さ」、「特定残炭率脱炭層深さ」、「実用脱炭層深さ」の4種類の脱炭層深さが規定されている。ばね鋼の脱炭では、「フェライト脱炭層深さ」と「実用脱炭層深さ」の2種類の脱炭層深さが問題となる。フェライト脱炭層深さは、C量がほぼゼロとなり、加熱後急冷してもフェライトに変態してフェライト組織となる層の表面からの深さのことであり、実用脱炭層深さとは、C量はゼロにならないものの母材のC量に比べてC量が低下し、加熱後急冷した場合に母材に比べて硬さが低下するが、実用上差し支えない硬さが得られる位置までの距離(深さ)のことである。ばね鋼では、鋼材の表層にフェライト脱炭層が生成し、フェライト脱炭層の内層側に実用脱炭層が生じるか、あるいは、成分系によっては、フェライト脱炭層は生成しないが、実用脱炭層が生じる。本発明における「脱炭」とは、実用脱炭層を示している。上述したように、このような脱炭が鋼材表面近傍に生じると、ショットピーニングによる圧縮残留応力の付与を十分に行うことができず、その結果、ばねとしての特性、特に疲労特性に悪影響を与えるという問題が生じる。
そこで、上記問題を克服するため、いくつかの提案がなされている。
特許文献1には、C、Si、Mn、P、S、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Nb、Ti、Al、NおよびBの添加量を制御し、As、SnおよびSbの合計の添加量、ならびにCuとNiの添加量を制御することにより低脱炭および優れた耐遅れ破壊特性を実現した、高強度ばね鋼が開示されている。特許文献1には、As、SnおよびSbの合計の添加量と脱炭深さの関係が記載されているが、As、SnおよびSbの合計の添加量を適正化してもフェライト脱炭を抑制するには至っておらず、このことから、フェライト脱炭の内層側に生成する脱炭も抑制することができるとは限らない。
特許文献2には、C、Si、Mn、Sb、AsおよびSnの添加量を最適化することにより脱炭を抑制した、ばね鋼が開示されている。特許文献2には、As、SnおよびSbの添加量ならびにAs、SnおよびSbの合計の添加量と脱炭深さの関係が掲載されているが、As、SnおよびSbの合計の添加量を適正化してもフェライト脱炭を抑制するには至っておらず、このことから、フェライト脱炭の内層に生成する脱炭も抑制することができるとは限らない。
特許文献3には、C、Si、Mn、CrおよびSbの添加量を最適化することにより脱炭を抑制した、ばね鋼が開示されている。しかしながら、Sbを必要以上に添加すると、素材加熱時にSbが液状化しオーステナイト粒界に侵食するため、焼入れ−焼戻し後のばねの靭性が低下する。
特許文献4には、C、Si、Mn、Cr、Nb、Al、N、Ti、Bの添加量を最適化、また、選択元素としてSbを添加することにより焼入れ性と耐孔食性を改善した、ばね鋼が開示されている。しかしながら、Sbを必要以上に添加すると、素材加熱時にSbが液状化しオーステナイト粒界に侵食するため、焼入れ−焼戻し後のばねの靭性が低下する。
また、特許文献1から特許文献4に開示されている範囲でSbを添加すると、素材加熱時にSbが液状化しオーステナイト粒界に侵食するため、焼入れ−焼戻し後のばねの靭性が低下する問題があり、脱炭及び靭性に優れたばね用鋼ならびにばねが求められていた。
特開2003-105496号公報 特開昭61-183442号公報 特開平13-19650号公報 特開2004-169142号公報
上述の通り、二酸化炭素排出量の削減の観点から、自動車、建設機械および鉄道車両などに供する、ばねの更なる高強度化が課題となっていた。しかしながら、熱間圧延で所定の素材を製造する際、また、ばね状に成形するための加熱の際に、表層のCが減少し、脱炭(フェライト脱炭かつ/あるいは実用脱炭)が生じることから、ばね製造後の表面の硬度が低下しやすく、ショットピーニングによる圧縮残留応力の付与が十分に行われない結果、ばねとしての特性、特に耐疲労特性に悪影響を与えることが問題となっていた。
本発明は、このような課題を解決すべくなされたものであり、従来の高強度ばね鋼に対して、C、Si、MnおよびCrに加えて、Sbの添加量を適正化することによって、耐脱炭性に優れ、かつ靭性に優れた高強度ばね用鋼ならびに高強度ばねを提供しようとするものである。
発明者らは、脱炭を抑制するためには、脱炭抑制元素と脱炭促進元素の添加比率を調整することが重要であるとの着想を得た。そして、前記課題を解決するため、C、Si、MnおよびCrに加えて、Sbの添加量と、下記(1)式で表されるA値とに着目した。すなわち、C、Si、MnおよびCrの添加量の最適化によりばね鋼として必要な諸特性を確保でき、また、A値により、脱炭の促進や抑制を支配している元素の添加比率を特定することで脱炭を抑制することができ、また、靭性の低下を図れるのではないかと考えた。

A=[Si]×[Sb] ・・・(1)
但し、[ ]は該括弧内成分の含有量(質量%)
そこで、発明者らは、前記課題を解決するため、C、Si、MnおよびCrに加えて、Sbの添加量を変化させ、かつ上記(1)式で表されるA値が異なる高強度ばね用鋼を作製し、その耐脱炭性や靭性について鋭意調査した。その結果、C、Si、Mn、CrおよびSbの添加量の最適化、並びにA値を適正範囲に制御することによって、耐脱炭性が向上し、さらには、靭性低下を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
1.C:0.50質量%以上0.60質量%以下、
Si:1.15質量%以上1.65質量%以下、
Mn:0.55質量%以上1.00質量%以下、
Cr:0.55質量%以上1.00質量%以下、
P:0.025質量%以下、
S:0.025質量%以下、
O:0.0015質量%以下および
Sb:0.015質量%以上0.050質量%以下
を下記(1)式で算出されるA値が0.020以上0.080以下の条件下に含有し、残部が不可避的不純物およびFeの成分組成を有するばね用鋼。

A= [Si]×[Sb] ・・・(1)
但し、[ ]は該括弧内成分の含有量(質量%)
2.前記成分組成は、さらに、
Al:0.50質量%以下、
Cu:1.0質量%以下、
Ni:1.0質量%以下、
W:0.5質量%以下、
Nb:0.1質量%以下、
Ti:0.1質量%以下、
V:0.5質量%以下、
Sn:0.05質量%以下、
Mo:1.0質量%以下および
B:0.005質量%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する前記1に記載のばね鋼。
3.前記1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を、熱間圧延して棒鋼あるいは線材とし、次いで熱間成形または冷間成形によりばね形状とするばねの製造方法。
本発明によれば、従来の高強度ばね用鋼に比べて遥かに優れた耐脱炭性ならびに靭性を有する高強度ばね用鋼を、安定して製造することが可能となる。
先ず、本発明の高強度ばね鋼の成分組成について説明する。
C:0.50質量%以上0.60質量%以下
Cは、必要な強度を確保するために必須の元素であり、0.50質量%未満では所定の強度確保が難しく、また所定強度を確保するためには、合金元素の多量添加が必要となって、合金コストの上昇を招くことから、0.50質量%以上とする。また、含有するC量が少ないと、脱炭を生成し易くなる。一方、0.60質量%以上の添加は靭性の低下を招く。以上のことから、C量は0.50質量%以上0.60質量%未満とする。
Si:1.15質量%以上1.65質量%以下
Siは、脱酸剤として、また、固溶強化や焼戻し軟化抵抗を向上させることにより鋼の強度を高め、鋼の耐へたり性を向上する元素であり、1.15質量%未満では所定の強度確保が難しく、また所定強度を確保するためには、合金元素の多量添加が必要となって、合金コストの上昇を招くことから、1.15質量%以上とする。しかし、Siは脱炭を促進する元素である。このため、Siが1.65質量%を超えて添加されると脱炭が促進し、後述する含有量でSbを添加しても脱炭を抑制できない。よって、Siの上限は1.65質量%とする。以上のことから、Si量は1.15質量%以上1.65質量%以下とする。好ましくは、1.16〜1.64質量%である。
Mn:0.55質量%以上1.00質量%以下
Mnは、鋼の焼入れ性を向上させて強度を高めるのに有効であるため、0.55質量%以上で添加する。しかし、1.00質量%を超える添加は、鋼を過度に高強度化するため、母材靭性の低下を招く。よって、Mnの上限は、1.00質量%とする。以上のことから、Mn量は、0.55質量%以上1.00質量%以下とする。好ましくは、0.56〜1.00質量%である。
P:0.025質量%以下
S:0.025質量%以下
PおよびSは、粒界に偏析して鋼の母材靭性の低下を招く。以上のことから、これらの元素はできるかぎり低減するのが好ましい。よって、PおよびSはいずれも0.025質量%以下とする。なお、下限は特に限定しないが、0.0002質量%未満とするには高いコストを要することから、工業的には0.0002質量%まで低減することが好ましい。
Cr:0.55質量%以上1.00質量%以下
Crは、鋼の焼入れ性を向上させ強度を増加させる元素である。そのため、0.55質量%以上は添加する。一方で、1.00質量%超の添加は、鋼を過度に高強度化するため、母材靭性の低下を招く。以上のことから、Cr量は0.55質量%以上1.00質量%以下とする。好ましくは、0.56〜1.00質量%である。
O:0.0015質量%以下
Oは、SiやAlと結合し、硬質な酸化物系非金属介在物を形成して、ばね特性の低下を招くため、可能な限り低い方が良いが、本発明では、0.0015質量%までは許容される。なお、下限は特に限定しないが、0.0002質量%未満とするには高いコストを要することから、工業的には0.0002質量%まで低減することが好ましい。
Sb:0.015質量%以上0.050質量%以下
Sbは、素材を加熱した際に表層に濃化して、加熱時に表層のC量が低下することを抑制する作用を有する。この作用を発現させるために、Sbは0.015質量%以上にて添加する。しかし、Sbは0.050質量%を超えて添加すると、素材加熱時に液体金属となり、旧オーステナイト粒界に侵食し、焼入れ−焼戻し後のばねの靭性を低下させる。以上のことから、Sbは0.015質量%以上0.050質量%以下とする。好ましくは、0.016〜0.050質量%である。
A値(下記(1)式):0.020以上0.080以下
下記(1)式で算出されるA値は、靭性とばねの引張強さに影響を与える指数である。発明者らは、SiおよびSbの含有量が靭性に及ぼす影響を調査した結果、SiおよびSbの含有量がともに上述した範囲の上限値近傍にある場合、靭性が劣化することを知見した。すなわち、SiおよびSbの含有量がともに高くなり、下記(1)式で算出されるA値が0.080を超えるようになると、Si含有量が1.65質量%以下かつSb含有量が0.050質量%以下であっても、靭性が劣化することがわかった。よって、下記式(1)で算出されるA値は0.080以下である必要がある。一方、SiおよびSbはともに強度を高めるのに有効な元素であり、SiおよびSbの含有量がともに上述した範囲の下限値近傍にある場合、鋼の引張強さが確保できないことがわかった。すなわち、SiおよびSbの含有量がともに低くなり、下記(1)式で算出されるA値が0.020に満たなくなると、Si含有量が1.15質量%以上かつSb含有量が0.015質量%以上であっても、引張強さが低くなる。よって、下記式(1)で算出されるA値は0.020以上である必要がある。以上のことから、A値は0.020以上0.080以下とする。

A= [Si]×[Sb] ・・・(1)
但し、[ ]は該括弧内成分の含有量(質量%)
さらに、上記した基本成分に加えて、以下に示す各成分を適宜添加することが可能である。
Al: 0.50質量%以下、Cu:1.0質量%以下、Ni:1.0質量%以下、W:0.5質量%以下、Nb:0.1質量%以下、Ti:0.1質量%以下、V:0.5質量%以下、Mo:1.0質量%以下およびB:0.005質量%以下のうちの1種または2種以上
CuおよびNiは、焼入れ性や焼戻し後の強度を高める元素であり、選択して添加することができる。このような効果を得るためには、CuおよびNiは0.005質量%以上で添加することが好ましい。しかし、CuおよびNiは1.0質量%を超えて添加すると、却って合金コストが上昇するため、CuおよびNiは1.0質量%を上限として添加するのが好ましい。
また、Alは脱酸剤として添加することができ、さらに、焼入れ時のオーステナイト粒成長を抑制することによって、強度の維持に有効な元素であるため、好ましくは0.01質量%以上で添加する。しかしながら、0.50質量%を超えて添加しても、その効果は飽和してコスト上昇を招く不利が生じる。また、冷間でばね形状への成形を行う場合には、Al含有量が高いと成形性が低下する。よって、Alは0.50質量%を上限として添加することが好ましい。
W、Nb、TiおよびVは、いずれも焼入れ性や焼戻し後の鋼の強度を高める元素であり、必要とする強度に応じて選択して添加することができる。このような効果を得るためには、W、NbおよびTiは、それぞれ0.001質量%以上、Vは0.002質量%以上添加することが好ましい。
しかし、Vは0.5質量%、Nbは0.1質量%およびTiは0.1質量%を超えて添加すると、鋼中に炭化物が多量に生成し、高強度化して靭性の低下を招く。Nb、TiおよびVは、それぞれ上記の値を上限として添加するのが好ましい。また、Wは0.5質量%を超えて添加すると、高強度化して靭性が低下し、合金コストの上昇を招く。よって、Wは、0.5質量%を上限として添加するのが好ましい。
Moは、焼入れ性や焼戻し後の強度を高める元素であり、選択して添加することができる。このような効果を得るためには、0.01質量%以上で添加することが好ましい。しかし、1.00質量%を超えて添加すると、却って合金コストが上昇するため、1.00質量%を上限として添加するのが好ましい。
Snは、素材を加熱した際に表層に濃化して、加熱時に表層のC量が低下することを抑制する作用を有する。この作用を発現させるために、Snは0.005質量%以上にて添加する。しかし、Snは0.050質量%を超えて添加すると、素材加熱時に液体金属となり、旧オーステナイト粒界に侵食し、焼入れ−焼戻し後のばねの靭性を低下させる。よって、Sbは0.050質量%を上限として添加するのが好ましい。
Bは、焼入れ性の増大により焼戻し後の鋼の強度を高める元素であり、必要に応じて含有することができる。上記効果を得るためには、0.0002質量%以上で添加するのが好ましい。しかし、0.005質量%を超えて添加すると、冷間での加工性が劣化する。よって、Bは0.0002〜0.005質量%の範囲で添加することが好ましい。
次に、本発明のばね用鋼の製造方法および、ばね用鋼を用いてばねを製造する方法について説明する。
以上の成分組成を有する鋼素材は、転炉にて溶製されたものでも真空溶解にて溶製されたものでも使用できる。そして、鋼塊、スラブ、ブルームまたはビレットなどの鋼素材は、加熱されて熱間圧延に供され、好ましくは棒鋼あるいは線材に加工されてばね用鋼とされる。上記成分組成のばね用鋼は、熱間圧延時の加熱段階における脱炭が抑制される。なお、熱間圧延後の棒鋼あるいは線材には必要に応じてショットピーニング等による脱スケール処理を施して、これをばね用鋼としてもよい。
このようにして製造されたばね用鋼を用いてばねを製造する方法としては、熱間成形または冷間成形による方法が好ましい。熱間成形にてばねの形状に成形する場合は、上記のようにして製造されたばね用鋼に、線巻き、ホットセッチング等の熱間成形が施されてばね形状とされ、その後、焼入れ・焼戻し処理が施される。上記した成分組成のばね用鋼を素材として熱間成形を行う場合、熱間成形時においても脱炭が抑制できる。
冷間成形にてばねの形状に成形する場合は、上記のようにして製造されたばね用鋼に、焼入れ・焼戻し処理が施され、その後、線巻き、ホットセッチング等が施される。上記した成分組成のばね用鋼を素材として冷間成形を行う場合、焼入れ・焼戻し処理時においても脱炭が抑制できる。
なお、焼入れ・焼戻し処理としては、オーステナイト域に加熱後、焼入れを施し、200〜500℃に加熱して焼戻しを施すことが好ましい。また、焼入れ・焼戻し処理の後にショットピーニング等の周知の処理工程を追加してもよい。
かくして得られた高強度ばね鋼は、安価に製造できるにも関わらず、優れた耐脱炭性ならびに優れた靭性を有し、例えば自動車の足回り部品である懸架ばね、建設機械や鉄道車両などで使用される懸架ばねへの適用が可能である。
表1に示す成分組成を有する鋼を真空溶解炉で溶製し、これらの鋼から製造した鋼塊を、1050℃に加熱後、熱間圧延を行い、直径40mmの棒鋼にした。加熱時の雰囲気は、Mガス雰囲気で実施したが、他の雰囲気(例えば、大気、LNG、都市ガス、COG+BFGのような混合ガス、COG、重油、窒素、アルゴンなど)を用いて加熱しても良い。熱間圧延後の棒鋼からサンプル(直径40mm、長さ10mm)を採取し、後述する方法で耐脱炭性ならびに靭性を調査した。
[耐脱炭性]
耐脱炭性は、熱間圧延後の棒鋼から長手方向(圧延方向)に10mmの長さに切断して得られたサンプルに対して加熱、冷却(焼入れ)、焼戻し処理を行い、これらの処理後のサンプルに対して表層からの深さ方向への硬度変化を測定することで評価した。評価方法は次のとおりである。上記サンプルを大気雰囲気下で1000℃×30分加熱し、その後、60℃の油で冷却した。焼戻し処理としては、大気雰囲気下で400℃×60分加熱してから水冷した。その後、得られた試験片に対して、切断面(長手方向に対して垂直な(直径40mm)の断面:以下、C断面)の硬度測定を行えるように、樹脂に埋め込み、C断面の鏡面研磨後にこのC断面の硬度測定を行った。硬度測定は、JIS G 0558「鋼の脱炭層深さ測定方法」に記載の硬さ試験による測定方法に従い測定した。すなわち、条件は次のとおりである。株式会社アカシ製 微小硬さ試験機(HM-115、ビッカース硬さ)で荷重0.98Nおよび25μmピッチで測定を実施した。得られた結果に対して、ビッカース硬さがHV400未満の領域を全脱炭層深さと定義した。
[引張強さ]
上述した直径40mmの棒鋼を大気雰囲気下で950℃×30分加熱し、その後、60℃の油で冷却した。焼戻し処理としては、大気雰囲気下で400℃×60分加熱してから水冷した。その後、得られた試験片に対して、表面から1/4D(Dは棒鋼の直径)の位置を中心としてASTM E8に記載の平行部の直径が6mmの引張試験片を採取し、評点間距離24mm、および引張速度5mm/分で試験を実施した。本発明では、引張強さが1750MPa以上あれば良好と判断した。
[靭性]
上述した直径40mmの棒鋼を大気雰囲気下で950℃×30分加熱し、その後、60℃の油で冷却した。焼戻し処理としては、大気雰囲気下で400℃×60分加熱してから水冷した。その後、得られた試験片に対して、表面から1/4D(Dは棒鋼の直径)の位置を中心としてJIS Z 2242に記載のUノッチ試験片を採取し、試験温度20℃で試験を実施した。靭性の評価は、試験温度20℃での衝撃特性が25J/cm2以上であれば良好と判断した。
Figure 0006119717
表1に、脱炭深さ、引張強さおよび靭性の各評価結果を示した。本発明に従う成分組成、さらにA値ならびにB値を満たす、A−2〜A−18の鋼は、脱炭の発生がなく、また、引張強さや靭性も良好であることが分かる。これに対して、成分組成ならびにA値が本発明の範囲外であるA−19〜A−30の鋼は、脱炭が発生しているか、引張強さが1750MPa未満であるか、あるいは、靭性が25J/cm2未満であることが分かる。
表2に示す成分組成を有する鋼を真空溶解炉で溶製し、これらの鋼から製造した鋼塊を、1000℃に加熱後、熱間圧延を行い、直径13.5mmの線材にした。加熱時の雰囲気は、Mガス雰囲気で実施したが、他の雰囲気(例えば、大気、LNG、都市ガス、COG+BFGのような混合ガス、COG、重油、窒素、アルゴンなど)を用いて加熱しても良い。熱間圧延後の線材からサンプル(直径13.5mm、長さ10mm)を採取し、前述した方法で耐脱炭性および機械的特性を調査した。
Figure 0006119717
表2に、脱炭深さ、引張強さおよび靭性の各評価結果を示した。本発明に従う成分組成、さらにA値ならびにB値を満たす、B−1、B−3、B−5〜B−7、および、B−9〜B−18の鋼は、脱炭の発生がなく、また、引張強さや靭性も良好であることが分かる。これに対して、成分組成或いはA値が本発明の範囲外であるB−2、B−4、B−8の鋼は、脱炭が発生しているか、引張強さが1750MPa未満であるか、あるいは、靭性が25J/cm2未満であることが分かる。

Claims (3)

  1. C:0.50質量%以上0.60質量%以下、
    Si:1.15質量%以上1.65質量%以下、
    Mn:0.55質量%以上1.00質量%以下、
    Cr:0.55質量%以上1.00質量%以下、
    P:0.025質量%以下、
    S:0.025質量%以下、
    O:0.0015質量%以下および
    Sb:0.015質量%以上0.050質量%以下
    を下記(1)式で算出されるA値が0.020以上0.080以下の条件下に含有し、残部が不可避的不純物およびFeの成分組成を有するばね用鋼。

    A=[Si]×[Sb] ・・・(1)
    但し、[ ]は該括弧内成分の含有量(質量%)
  2. 前記成分組成は、さらに、
    Al:0.50質量%以下、
    Cu:1.0質量%以下、
    Ni:1.0質量%以下、
    W:0.5質量%以下、
    Nb:0.1質量%以下、
    Ti:0.1質量%以下、
    V:0.5質量%以下、
    Sn:0.05質量%以下、
    Mo:1.0質量%以下および
    B:0.005質量%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する請求項1に記載のばね用鋼。
  3. 請求項1または2に記載の成分組成である鋼素材を、熱間圧延して棒鋼あるいは線材とし、次いで熱間成形または冷間成形によりばね形状とするばねの製造方法。
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