JP6118686B2 - 免震装置及び荷重伝達プレート - Google Patents
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Description
この免震装置の場合、球面滑り支承や厚肉積層ゴムをコンクリート基礎へ固定するには、それらの間に、フランジと呼称される金属製の平板を介在させている。この金属製の平板は、球面滑り支承や厚肉積層ゴムの下面全域に面接触する大きさに形成され、球面滑り支承や厚肉積層ゴムに作用する荷重を、コンクリート基礎に伝達する。従来では、この金属製の平板に圧延鋼板が使用されている。
そして、球面滑り支承や厚肉積層ゴムから受ける荷重をなるべく広域に分散させるには、金属製の平板に、十分な厚さと剛性を確保することが必要になる。
特に、球面滑り支承を利用する免震装置の場合、球面スライダとこの球面スライダと滑り接触するスライダ受け部との接触面積が非常に小さいので、球面滑り支承とコンクリート基礎との間に介装される前記金属製の平板や、コンクリート基礎に局所的に過大な荷重が加わる。
ここで、本件発明者等は、種々の実験や検証を行なった結果、滑り接触部分の動摩擦係数μを設定可能な4〜6%程度にし、球面スライダの支持力を60MPa程度まで高めた場合、100回以上の繰り返し耐久性があることが確認できた。つまり、球面スライダの支持力を60MPa程度まで高めても、なんら支障が出ないことが確認できた。
このため、球面スライダの支持力を設計値で60MPa程度まで高めることが可能であるのに対し、一般的なコンクリート基礎を使用する場合その強度はFc36以下であって、球面スライダの設計支持力と一般的なコンクリート基礎の強度との間には大きな開きがある。この結果、球面すべり支承に加わる荷重をコンクリート基礎に広く分散させるためには、前記金属製の平板の厚肉化が必須となる。例えば、球面滑り支承から60MPa程度の荷重を、強度がFc36以下の一般的なコンクリート基礎に分散させるには、板厚150mm以上の金属製の平板が必要になる。
即ち、請求項1の発明は、基礎部と被支持体との間に介装されて被支持部を免振支持する免振装置であって、前記基礎部と被支持体との少なくともいずれか一方がコンクリート構造体によって構成され、上側スライダ受け部と下側スライダ受け部の間に球面スライダが滑り接触可能に配置される球面滑り支承と、前記球面滑り支承と前記コンクリート構造体との間に介装されて両者の間で荷重伝達を行なう荷重伝達プレートとを備え、前記荷重伝達プレートが、前記コンクリート構造体に面接触する平面状のコンクリート構造体接触面及び前記球面滑り支承と接触する球面滑り支承接触面を備えるように鋳造によって一体形成され、かつ、前記荷重伝達プレートの前記球面滑り支承接触面側が複数のリブの間に窪みを有する網状に形成されていることを特徴とする。
また、荷重伝達プレートの球面滑り支承接触面側を網状に形成しているため、例えば球面滑り支承接触面が窪みのない平坦面に形成されていて平坦面全域が球面滑り支承と接触する場合と比較すると、反り等を除くために荷重伝達プレートに切削加工を施す場合に、その加工面積が小さくなる。そのため、機械加工量の低減による製造コストの低減を図ることができる。
また、荷重伝達プレートにおける球面滑り支承に対する接触面積が小さいため、少ない機械加工でも、接触面の全域を高精度に仕上げて、球面滑り支承の全域に対して、均等な接触性を確保することができる。このため、球面滑り支承からの荷重を荷重伝達プレートの広域に分散させることが容易になり、結果的にコンクリート構造体に作用する応力度を低減させることが可能になる。
また、この免震装置において、隣接する窪み間を仕切るリブは、窪みの周囲を囲う筒構造となり、かつ、隣接する筒構造相互が互いに繋がりあって互いを補強する支柱として機能する。したがって、高い剛性及び強度を確保することができる。そのため、高い剛性の確保と軽量化を両立させることができる。
これにより、窪みの形状が揃うとともに、それぞれの窪みの配列が規則的になることで、荷重伝達プレート内部における応力の分散性能を安定させることができる。その結果、球面滑り支承からの荷重をコンクリート構造体の広域に分散させて伝達することができ、コンクリート構造体に作用する単位面積当たりの負荷を軽減することが可能になる。
これにより、球面滑り支承からの荷重によって荷重伝達プレート内に生じる応力を、リブのテーパ構造や、リブと窪みの底部との繋ぎ目に丸みをつけることによって、無理なく広域に分散させることができ、この結果、コンクリート構造体に作用する面圧を軽減することが可能になる。
したがって、例えば球面滑り支承における球面スライダの面圧が60MPaという高荷重の場合でも、窪みの横断面寸法、リブの板厚、及びリブと底部との繋ぎ目の丸みの寸法、窪みの底部の板厚寸法等を適宜に選定することで、荷重伝達プレートからコンクリート構造体に伝達される応力度が24MPa以下となるように、荷重伝達プレートにおける応力分散性能を調整することが可能になる。その結果、コンクリート構造体として、設計基準強度が36N/mm2となる一般的なコンクリートであるFc36、あるいは設計基準強度がそれ以下となるコンクリートを使用することができ、コンクリート構造体を容易かつ安価に構築することができる。
これにより、例えば、球面滑り支承から荷重伝達プレートの球面滑り支承接触面の中心部に作用する荷重を、放射状接触面により効率良く荷重伝達プレートの径方向に分散させることができ、また、放射状接触面に伝達する応力を、環状接触面により周方向に分散させることができる。したがって、荷重伝達プレートが高い応力分散性能を発揮して、コンクリート構造体への負担を軽減することができる。
この場合も、請求項2に記載の免震装置の場合と同様に、窪みの形状が揃うとともに、それぞれの窪みの配列が規則的になることで、荷重伝達プレート内部における応力の分散性能を安定させることができる。その結果、球面滑り支承から作用する荷重をコンクリート構造体の広域に分散させて伝達することができ、コンクリート構造体に作用する単位面積当たりの負荷を軽減することが可能になる。
これにより、荷重伝達プレートの下面に突出している連結用軸部材の下端面にアンカープレートをねじ止めし、コンクリート構造体の打設時に、前記連結用軸部材の荷重伝達プレートの下面に突出している部位とアンカープレートを、コンクリート構造体に埋設させることで、荷重伝達プレートのコンクリート構造体への固定を簡単に実現することができる。即ち、当該免震装置のコンクリート構造体への固定が容易になる。
また、球面滑り支承の荷重伝達プレートへの固定は、上側スライダ受け部または下側スライダ受け部を、連結用軸部材の上端面の雌ネジにボルトを介してねじ止めすることで完了する。即ち、荷重伝達プレートへの球面滑り支承の固定も容易にすることができる。
これにより、当該荷重伝達プレートでは、前述の請求項1〜6に記載した免震装置と同様な効果を奏する。
また、荷重伝達プレートの球面滑り支承接触面側を網状に形成しているため、例えば球面滑り支承接触面が窪みのない平坦面に形成されていて平坦面全域が球面滑り支承と接触する場合と比較すると、機械加工量の低減による製造コストの低減を図ることができる。
また、荷重伝達プレートにおける球面滑り支承に対する接触面積が小さいため、少ない機械加工でも、接触面の全域を高精度に仕上げて、球面滑り支承の全域に対して、均等な接触性を確保することができる。このため、球面滑り支承からの荷重を荷重伝達プレートの広域に分散させることが容易になる。
また、この免震装置において、隣接する窪み間を仕切るリブは、窪みの周囲を囲う筒構造となり、かつ、隣接する筒構造相互が互いに繋がりあって互いを補強する支柱として機能する。したがって、高い剛性及び強度を確保することができる。そのため、高い剛性の確保と軽量化を両立させることができる。
まず、本発明に係る免震装置の第1実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
図1は、本発明に係る第1実施形態における免震装置の概略構成を示す縦断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、第1実施形態の免震装置において、球面滑り支承に滑りが生じている状態の縦断面図である。
図4は、図1におけるB−B線に沿う矢視図で、第1実施形態における荷重伝達プレートの平面図である。図5は、図4のC−C断面図である。図6は、図4に示した第1実施形態の荷重伝達プレートの平面図の拡大図である。
本実施形態の下側荷重伝達プレート4Aの上面42は、複数の窪み43が形成されることによって、球面滑り支承6との接触面46が網状に形成されている。
また、本実施形態の下側荷重伝達プレート4Aの場合、図5に示すように、リブ47と窪み43の底部43aとの繋ぎ目には、応力集中を防止するための丸みrをつけている。
したがって、窪み43の形状が揃うと共に、それぞれの窪み43の配列が規則的になる。その結果、当該下側荷重伝達プレート4A内部における応力の分散性能を安定させることができる。その結果、球面滑り支承6から作用する荷重のコンクリート基礎3の広域に分散させて伝達することができ、コンクリート基礎3に作用する単位面積当たりの負荷を軽減することが可能になる。
したがって、球面滑り支承6から荷重によって下側荷重伝達プレート4A内に発生する応力は、リブ47のテーパ構造や、リブ47と底部との繋ぎ目に形成した丸みrによって、無理なく広域に分散させて、コンクリート基礎3に作用する面圧を軽減することが可能になる。
そのため、例えば球面滑り支承6における球面スライダ63の面圧が60MPaという高荷重の場合でも、窪み43の横断面寸法、リブ47の板厚、及び仕切り壁と底部との繋ぎ目の丸みrの寸法、前記窪み43の底部の板厚寸法等を適宜に選定することで、当該下側荷重伝達プレート4Aからコンクリート基礎3に伝達される応力度が24MPa以下となるように、当該下側荷重伝達プレート4Aにおける応力分散性能を調整することが可能になる。その結果、コンクリート基礎3として、設計基準強度が36N/mm2となる一般的なコンクリートであるFc36、あるいは設計基準強度がそれ以下となるコンクリートを使用することができ、コンクリート基礎3の構築を容易にすることができる。
これにより、当該下側荷重伝達プレート4Aの下面に突出している連結用軸部材7の下端面72にアンカープレート8をねじ止めし、コンクリート基礎3の打設時に、連結用軸部材7の当該下側荷重伝達プレート4Aの下面に突出している部位と前記アンカープレート8とを、コンクリート基礎3に埋設状態にすることで、当該下側荷重伝達プレート4Aのコンクリート基礎3への固定を簡単に実現することができる。即ち、当該下側荷重伝達プレート4Aのコンクリート基礎3への固定が容易にできる。
コンクリート基礎3の呼び強度をFc(単位:N/mm2=MPa)とする。
下側荷重伝達プレート4Aに確保する支圧強度Fa=2Fcとする。
球面スライダ63の面圧をA(単位:N/mm2=MPa)とする。
図1に示すように、円盤状の球面スライダ63の直径をD1(単位:mm)とする。
球面スライダ63の面圧Aは、図1に示すように、球面スライダ63の外形D1から角度θ1で示す拡大範囲に分散させる。
図5に示した窪み43の周囲のリブ47の配列ピッチ(即ち、窪み43の配列ピッチ)をpとする。
リブ47の板厚は、図5に示すように、板厚が最小となる頂部の板厚をt1、中間部の板厚をt2、板厚が最大となる最下部の板厚をt3とする。
また、リブ47の頂部から板厚がt2となる中間部までの距離はl1とする。
また、リブ47の根本の丸みrの曲率半径をR1とする。
窪み43の底部43aで、図5及び図6に示すように丸みrの内側の距離をL1とすると、このL1は、次の(1)式で表すことができる。
L1=p−t3 ……(1)
また、窪み43の底部43aの板厚をt4とすると、板厚をt4は、次の(2)式で表せる。
t4=h−l1−R1 ……(2)
また、リブ47に作用する応力は、丸みrの終端から45度の角度で分散すると仮定し、図5に示すように、底部43aにおいて応力が作用しない領域の一辺の長さをL2とすると、このL2は、次の(3)式で表すことができる。
L2=L1−2t4 ……(3)
したがって、底部43aにおいて応力が作用しない領域の面積をS1とすると、S1は、次の(4)式で表すことができる。
S1=(L2)2 ……(4)
また、下側荷重伝達プレート4Aのコンクリート基礎3への接触面積と、該接触面積の内の荷重伝達に有効な面積との比を受圧面積比K1とすると、K1は、次の(5)式で表すことができる。
K1=1−S1/p2 ……(5)
したがって、コンクリート基礎3の支圧応力度σ1は、次の(6)式で表すことができる。
σ1=A×(D1)2/(D1+2・h)2/K1 ……(6)
(6)式のσ1は、コンクリート基礎3の長期の接地圧≦長期の許容応力度を満足させる値にする。ここに、コンクリート基礎3の長期の許容応力度を(2/3)Fcとすると、(6)式から、次の(7)式が導かれる。
A×(D1)2/(D1+2・h)2/K1≦(2/3)Fc ……(7)
K2=1−(p−t1)2/p2 ……(8)
そして、A/K2の値を、長期の許容応力度(2/3)Fc以下にする。
受圧面積比K2=0.2944となる。
また、Fa=325MPa(SM490相当)、A=630MPaとすると、リブ47の上部における応力度は、A/K2=60/0.29944=203.8で、2/3)Faを満足させることができる。
また、コンクリート基礎3の支持応力度は、Fc=36MPa、D1=500mm、リブ47におけるT2,T3などを、K1=1.0になるように選定すると、下側荷重伝達プレート4Aの必要高さhは、次の(9)式で表すことができる。
h=√([A/{(2/3)Fc}]×D1−D1)/2 ……(9)
(9)式に、A=60、Fc=36、D1=500を代入すると、
h=145.3となり、下側荷重伝達プレート4Aの高さを150mm以下に抑えることも可能になる。
次に、本発明に係る荷重伝達プレートの第2実施形態について、図7を参照して説明する。
図7に示す第2実施形態の下側荷重伝達プレート4ABは、第1実施形態に示した下側荷重伝達プレート4Aの一部の構成を改良したものである。第2実施形態の下側荷重伝達プレート4ABは、鋳造製であること、四隅に連結用軸部材7が装着される、などの基本的な構成は、第1実施形態の場合と同様である。
改良点は、球面滑り支承6を支える網状の接触面46を形成するために上面42に形成される複数の窪み43の形状と配列である。
次に、本発明に係る荷重伝達プレートの第3実施形態について、図8を参照して説明する。
図8に示す第3実施形態の下側荷重伝達プレート4ACは、第1実施形態に示した下側荷重伝達プレート4Aの一部の構成を改良したものである。第3実施形態の下側荷重伝達プレート4ACは、鋳造製であること、四隅に連結用軸部材7が装着される、などの基本的な構成は、第1実施形態の場合と同様である。
改良点は、球面滑り支承6を支える網状の接触面46を形成するために上面42に形成される複数の窪み43の形状と配列である。
前記実施形態では、免震装置の上下にそれぞれコンクリート構造体を配置した例を示しているが、これに限られることなく、上側あるいは下側にのみコンクリート構造体が配置されたものでも、本発明は適用可能である。このとき、免震装置のコンクリート構造体側に上記説明した荷重伝達プレートが配置されることは言うまでもない。
3 コンクリート基礎(コンクリート構造体)
3a 上面(荷重受け面)
4A 下側荷重伝達プレート
4B 上側荷重伝達プレート
5 構造物(コンクリート構造体)
6 球面滑り支承
7 連結用軸部材
41 下面(コンクリート構造体接触面)
42 上面(球面滑り支承接触面)
43 窪み
43a 底部
46 接触面
46a 環状接触面
46b 放射状接触面
47 仕切り壁
61 下部球面支承(下側スライダ受け部)
62 上部球面支承(上側スライダ受け部)
71 上端面
72 下端面
73 雌ネジ
Claims (7)
- 基礎部と被支持体との間に介装されて被支持部を免振支持する免振装置であって、
前記基礎部と被支持体との少なくともいずれか一方がコンクリート構造体によって構成され、
上側スライダ受け部と下側スライダ受け部の間に球面スライダが滑り接触可能に配置される球面滑り支承と、
前記球面滑り支承と前記コンクリート構造体との間に介装されて両者の間で荷重伝達を行なう荷重伝達プレートとを備え、
前記荷重伝達プレートが、前記コンクリート構造体に面接触する平面状のコンクリート構造体接触面及び前記球面滑り支承と接触する球面滑り支承接触面を備えるように鋳造によって一体形成され、
かつ、前記荷重伝達プレートの前記球面滑り支承接触面側が複数のリブの間に窪みを有する網状に形成されていることを特徴とする免震装置。 - 前記複数の窪みがいずれも角柱状でかつ縦横に所定の間隔で整列配置されて、前記球面滑り支承接触面側が格子形の網状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
- 前記リブが前記窪みの底部に向かって徐々に板厚が増加するテーパ構造とされ、
前記リブと前記窪みの底部との繋ぎ目が断面円弧状に丸みをつけられていることを特徴とする請求項1または2に記載の免震装置。 - 前記窪みが横断面形状を扇形に形成されるとともに、前記窪みが前記球面滑り支承接触面の中心から多重の同心円状に配列されて、前記球面滑り支承接触面側が、該球面滑り支承接触面の中心から同心円状に並ぶ複数の環状接触面と、前記中心から放射状に延びて前記複数の環状接触面と連絡する複数の放射状接触面とを有する蜘蛛の巣形の網状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
- 前記窪みが横断面形状を正六角形状に形成されるとともに、これらの正六角形の窪みが正六角形状の一辺が対向するように所定の間隔で配列されて、前記球面滑り支承接触面側が蜂の巣形の網状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
- 一端の位置を前記球面滑り支承接触面の位置に揃えられるとともに、他端側が前記コンクリート構造体接触面から所定の長さだけ突出するように前記荷重伝達プレートをその板厚方向に貫通して装備される連結用軸部材を備え、
前記連結用軸部材の一端面には、該連結用軸部材と前記球面滑り支承と連結するボルトを螺合させる雌ネジが形成され、前記連結用軸部材の他端面には、前記コンクリート構造体内に埋設されるアンカープレートをねじ止めするための雌ネジが形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の免震装置。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の免震装置に用いられることを特徴とする荷重伝達プレート。
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