JP6118486B2 - 包装餅及び包装餅の製造方法 - Google Patents

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本発明は、切り餅や丸餅などの餅片を個包装袋に収容した個包装餅を複数収容した包装餅、及びこの包装餅の製造方法に関するものである。
従来の包装餅は、餅片を、ガスバリア性の低い個包装袋に収容して、若しくはそのまま、脱酸素剤と共にガスバリア性の高い外包装袋に封入し、酸素との接触を遮断した状態とすることで長期間の保存を可能としていた。
しかしながら、従来の包装餅は、一旦外包装袋を開封してしまうと、餅片は直ちに空気に曝され、この空気中の酸素と接触してしまうことで、わずか数日でカビが発生してしまう。よって、開封後は、外包装袋に表示されている賞味期限にかかわらず早めに食してしまわなければならないため、消費者は、食べたい分だけを食べ、残りも早めに食べなければならず、非常に実用的なものではなかった。
本願出願人は、上述のような従来の包装餅が持つ問題について鑑み、鋭意検討の末に、外包装袋を開封しても、餅片が空気に曝されず、カビが発生することなく賞味期限まで保管できる画期的な包装餅を提案し、特許を取得している(特許第5571038号)。
この特許第5571038号の包装餅(以下、従来品と称す)について簡単に説明すると、餅片を個包装袋に収容した個包装餅を複数個、外包装袋に封入して成るもので、個包装餅は、酸素透過率が小さい高ガスバリア性の合成樹脂フィルムからなる個包装袋内に、餅片と脱酸素剤を収容すると共に、不活性ガスを主成分とする酸化防止用ガスとヘリウムガスとを充填して、この酸化防止用ガスとヘリウムガスとこの個包装袋内の残留酸素とにより個包装袋が膨出形状となるようにして密閉し、ヘリウム検知器を備えた検査装置内に搬送し、この検査装置内で外部から押圧し、この押圧によりヘリウム検知器が個包装袋内に充填したヘリウムガスを検知しないことで個包装袋に漏れ孔が生じていないことを確認し、この個包装袋に漏れ孔が生じていないことを確認してから市場に提供されるまでに、個包装袋内に残留させた酸素がこの個包装袋内に収容した脱酸素剤により吸収され、且つ個包装袋内に充填したヘリウムガスが個包装袋を透過し個包装袋外に流出して、個包装袋内のガス量が減少して、個包装袋が萎んで膨出形状が緩和し体裁の良い形状となると共に、個包装袋に賞味期限を表示した構成としたものである。
即ち、個包装餅を上記のように構成することで、外包装袋を開封して個包装餅を空気に曝しても、個包装袋内に殆ど酸素が侵入せず、また、侵入した僅かな酸素は脱酸素剤によって吸収されるため、個包装袋内は酸素濃度が低い状態(ほぼ無酸素状態)を保持して嫌気下とすることで、好気性のカビの生育を抑制し、個包装餅の状態で賞味期限までカビを生やすことなく保管することができ、また、市場に提供された状態では、個包装袋の膨出形状が緩和され、体裁の良い形状となっているので、消費者は何ら違和感を抱くことなく購入することができるのである。
しかしながら、従来品は、年間、数千万個〜数億個(個包装餅レベルで)生産される中で、非常に低い発生率(数ppm〜数十ppmオーダー)ではあるが、外包装袋に封入されている状態で、即ち、外包装袋が未開封の状態で、個包装餅の餅片にカビが発生していたり、また、個包装袋内に収容した脱酸素剤に生じた錆に起因するシミが餅片に付着する不具合が生じていた。
近年、消費者の食の安全性に対する意識が高くなってきており、大量生産しているとはいえ、年間数ppmオーダーの極めて低い発生率であっても、上記のような不具合が数件発生したり改善が見られないと商品回収等の問題を生じかねず、メーカーにとって信頼を損ね得る非常に大きな問題となり、このようなたとえ極めてわずかな不具合の発生であっても、これを防止することが喫緊の課題となっている。
上記不具合の餅片に発生したカビを分析すると、多くはMucor(ケカビ)、Fusarium(フザリウム属菌)、Arthrinium(アースリニウム属菌)等、微量の酸素の存在で生育できるカビであることが確認され、本出願人は、この分析結果も踏まえ、不具合の原因について鋭意検討した結果、個包装袋を透過し侵入してきた僅かな酸素が原因であるという結論に至った。
即ち、従来品の外包装袋は、ガスバリア性の低いものを採用しているため、外包装袋内に酸素が透過し、個包装餅の周囲には酸素が存在する状態にあり、この個包装餅の周囲に存在する酸素が個包装袋を透過し個包装袋内に侵入することは十分に考えられ、また、個包装袋内に侵入した酸素は、直ぐに脱酸素剤に吸収される場合もあるが、個包装袋内に侵入しても直ぐに脱酸素剤に吸収されず、個包装袋内を拡散してから脱酸素剤に吸収される場合も考えられ、このようなケースにおいて、この侵入した僅かな酸素によって、餅片に付着した微量の酸素の存在で生育できるMucor、Fusarium、Arthrinium等のカビが生育したものと考える。
この微量の酸素の存在で生育できるMucor、Fusarium、Arthrinium等のカビの発生を抑制する方法として、従来、特公平3−20226号が提案されている。
この特公平3−20226号は、食品を脱酸素剤と共にガスバリア性の高い容器Aに密封し、更にこれを脱酸素剤と共にガスバリア性の高い容器Bに密封する、二つの脱酸素剤を用いて二重包装で保存するものである。
特許第5571038号公報 特公平3−20226号公報
しかしながら、この特公平3−20226号は、単に数日〜数十日程度の賞味期限の短い食品(実施例では練りあん)に対してカビの発生を抑制するものに過ぎず、1年以上もの長期にわたり保存可能な大量生産品で、カビが極めて発生し易い餅について提案されたものではない。
本発明は、この二つの脱酸素剤を用いて二重包装により食品を保存することでカビの発生を抑制するという特公平3−20226号の発想に基づき、量産され、長期保存が求められている包装餅において、個包装袋内への酸素の侵入を従来品に比して著しく抑制することで、大量に生産される個包装餅の内の極僅かな個包装餅で生じる密封状態の外包装袋内でのカビ発生の問題をほぼ完ぺきに抑制すると共に、この個包装袋内に収容した脱酸素剤の酸素吸収作用を抑えて、脱酸素剤の錆の発生を抑制することで、この脱酸素剤の錆が起因となるシミの付着を生じさせず、従来品の問題をほぼ完ぺきに解決し、品質の信頼性を一層向上させると共に、より長期保存(1年以上)を可能として、個包装餅毎に個包装袋に賞味期限を表示して、外包装袋が開封されない未開封状態においては勿論のこと、外包装袋を開封しても、賞味期限まで美味しく餅片を食することができることを一層完ぺきに保証できる極めて画期的な包装餅を提案することを目的とする。
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
長期保存ができる期限を示す賞味期限情報6が表示された酸素透過率10cc/m・day・atm以下の個包装袋4に餅片3と脱酸素剤5とが封入されてなる複数の個包装餅1が、若しくは前記長期保存ができる期限を示す賞味期限情報6が表示された酸素透過率10cc/m・day・atm以下で且つ酸素吸収作用を有する酸素吸収性個包装袋4に餅片3が封入されてなる複数の個包装餅1が、酸素透過率50cc/m・day・atm以下の外包装袋2に脱酸素剤7と共に封入されてなる構成とされ、若しくは酸素透過率が50cc/m・day・atm以下で且つ酸素吸収作用を有する酸素吸収性外包装袋2に封入されてなる構成とされ、前記外包装袋2内の酸素濃度が0.0001%以下となっているとともに、前記個包装袋4内の餅片3が、酸素濃度0.0001%以下で且つMucor、Fusarium、Arthriniumが生育できない環境下で保存されて、市場に提供されたときには、前記外包装袋2を開封して前記個包装餅1を空気中に曝しても、前記個包装袋4に表示された前記賞味期限情報6の日付まで前記Mucor、前記Fusarium、前記Arthriniumによるカビの発生が抑制されるように構成されていることを特徴とする包装餅に係るものである。
また、前記個包装餅1は、前記外包装袋2に封入される前に、前記餅片3と共にリークチェック用ガス封入されて前記個包装袋4膨出形状にされ、この個包装袋4が膨出形状にされた状態で押圧することにより個包装袋4内に封入した前記リークチェック用ガスが漏洩するか否かを漏れ検査装置8により確認することで、前記個包装袋4に漏れ孔が生じていないこと確認された後、前記個包装袋4が膨出形状の状態のまま、前記外包装袋2に封入されたものであることを特徴とする請求項1記載の包装餅に係るものである。
また、前記個包装餅1は、前記個包装袋4に前記餅片3と前記リークチェック用ガスとが封入された際の個包装袋4内の残留酸素量が、この個包装袋4内の全ガス容量に対して9vol%以下となるようにされ、前記餅片3と前記リークチェック用ガスが封入された後24時間以内に前記個包装袋4内の酸素濃度が0.0001%以下となるように構成されていることを特徴とする請求項2記載の包装餅に係るものである。
また、複数の個包装餅1外包装袋2に封入されて成る包装餅の製造方法であって、長期保存ができる期限を示す賞味期限情報6が表示された酸素透過率10cc/m・day・atm以下の個包装袋4に餅片3と脱酸素剤5と共にリークチェック用ガスを封入して、若しくは長期保存ができる期限を示す賞味期限情報6が表示された酸素透過率10cc/m・day・atm以下で且つ酸素吸収作用を有する酸素吸収性個包装袋4に餅片3と共にリークチェック用ガスを封入して、前記個包装袋4を膨出状態とした個包装餅1を作成し、この個包装袋4が膨出状態のままの前記個包装餅1を、押圧により前記個包装袋4内に封入した前記リークチェック用ガスが漏洩するか否かを漏れ検査装置8により確認することで該個包装袋4に漏れ孔が生じていないことを確認し、この個包装袋4に漏れ孔が生じていないことを確認した前記個包装餅1を複数個、前記個包装袋4が膨出状態のまま、酸素透過率50cc/m・day・atm以下の外包装袋2に脱酸素剤7と共に封入する、若しくは酸素透過率50cc/m・day・atm以下で且つ酸素吸収作用を有する外包装袋2に封入して、前記外包装袋2内の酸素濃度を0.0001%以下とするとともに、前記個包装袋4内の酸素濃度を0.0001%以下にし、且つこの個包装袋4内をMucor、Fusarium、Arthriniumが生育できない環境にして、市場に提供されたときには、前記外包装袋2を開封して前記個包装餅1を空気中に曝しても、前記個包装袋4に表示された前記賞味期限情報6の日付まで前記Mucor、前記Fusarium、前記Arthriniumによるカビの発生が抑制されることを特徴とする包装餅の製造方法に係るものである。
また、前記リークチェック用ガスは、酸素分子よりも小さい原子状態若しくは分子状態で存在し、前記個包装袋4に封入した状態において、放置状態でこの個包装袋4から透過流出し、更に前記外包装袋2も透過して、この外包装袋2の外部に流出し得るものであることを特徴とする請求項4記載の包装餅の製造方法に係るものである。
本発明は上述のように構成したから、個包装餅を封入した外包装袋内に殆ど酸素が存在しないので、個包装袋を透過する酸素が殆ど無く、よって、個包装袋内は無酸素状態に近い状態が保持されることとなり、これによりMucor、Fusarium、Arthrinium等などの微量な酸素で生育可能なカビの発生を抑制することができ、包装餅の未開封状態におけるカビ発生の問題をほぼ完ぺきに解決することができる。
更に、個包装袋内に殆ど酸素が侵入しないことで、個包装袋内の残留酸素を脱酸素剤によって吸収する場合において、この個包装袋内に収容した脱酸素剤の酸素吸収作用が殆ど生じず、よって、脱酸素剤に錆が生じる可能性も可及的に低減され、餅片に脱酸素剤に生じた錆に起因するシミが付着する問題も解決することができ、品質の信頼性が向上する。
しかも、個包装餅(餅片)が極めて低い酸素濃度環境下で保管されるため、従来品よりも品質の劣化速度が抑制され、1年以上(例えば1年半〜2年)の長期保存が可能となって賞味期限の延長化が図れる。
以上により、本発明は、個包装餅毎に個包装袋に賞味期限を表示して、外包装袋が開封されない未開封状態においては勿論のこと、外包装袋を開封しても、賞味期限まで美味しく餅片を食することができることを一層完ぺきに保証できる従来にない極めて画期的な包装餅となる。
また、請求項2記載の発明においては、個包装餅の個包装袋内にリークチェック用ガスを封入してこの個包装袋を膨出形状とすることで、押圧により個包装袋内に封入したリークチェック用ガスが漏洩するか否かを漏れ検査装置により容易に確認することができるようになり、これにより、大量の個包装餅の一つ一つに対して個包装袋に漏れ孔が生じていないことを確認することを実現し、外包装袋に封入する個包装餅は、漏れ孔が無く、外部から容易に酸素が侵入しない不具合の無い個包装餅とすることができる画期的な包装餅となる。
また、請求項3記載の発明においては、個包装袋内の残留酸素量を、この個包装袋内の全ガス容量に対して9vol%以下とすることで、大きな脱酸素剤を用いることなく素早く個包装袋内の酸素を吸収して、この個包装袋をほぼ無酸素状態にすることができ、万が一、個包装袋内にカビが存在していたとしても、これらが生育する前に死滅させることができる画期的な包装餅となる。
また、請求項4記載の発明においては、個包装餅の個包装袋内にリークチェック用ガスを封入してこの個包装袋を膨出形状とすることで、押圧により個包装袋内に封入したリークチェック用ガスが漏洩するか否かを漏れ検査装置により容易に確認することができ、これにより、大量の個包装餅の一つ一つに対して個包装袋に漏れ孔が生じていないことを確認することが容易に実現でき、外包装袋に封入する個包装餅を、漏れ孔が無く、外部から容易に酸素が侵入しない不具合の無い個包装餅とすることができる極めて実用性に優れた画期的な包装餅の製造方法となる。
また、請求項5記載の発明においては、漏れ孔の有無の確認検査を一層容易に実施することができ、しかも、市場に提供された状態では、リークチェック用ガスが外包装袋外に流出するから、個包装袋の膨出形状が緩和され、また、外包装袋が膨出形状となることなく、体裁の良い形状となるので、消費者は何ら違和感を抱くことなく購入することができる画期的な包装餅の製造方法となる。
本実施例を示す斜視図である。 本実施例における個包装餅を外包装袋内に封入した直後の包装餅の状態を示す正面図である。 図2における外包装袋内の個包装餅の状態を示す斜視図である。 本実施例における市場に提供された状態の包装餅を示す正面図である。 図4における外包装袋内の個包装餅の状態を示す斜視図である。 本実施例の漏れ検査装置を示す説明概略図である。
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
個包装餅1は、封入時に個包装袋4内に残留していた残留酸素が、数時間〜数日で餅片3と共に個包装袋4内に収容した脱酸素剤5、若しくはこの個包装袋4自体の酸素吸収作用により無くなり、この個包装袋4内の酸素濃度が0.0001%以下のほぼ無酸素状態となり、更に、この個包装餅1は、酸素透過率が50cc/m・day・atm以下の外包装袋2に脱酸素剤7と共に封入される、若しくは酸素透過率が50cc/m・day・atm以下で、且つ酸素吸収作用を有する外包装袋2に封入されることで、封入後、前記脱酸素剤7若しくはこの外包装袋2自体の酸素吸収作用により外包装袋2内の残留酸素が無くなった酸素濃度が0.0001%以下のほぼ無酸素状態の環境下で保存されることとなるので、個包装袋4を透過し、この個包装袋4内に侵入してくる酸素がないので、個包装袋4内の酸素濃度が0.0001%以下のほぼ無酸素状態が保持される。
この個包装袋4内がほぼ無酸素状態で保持されることで、カビが生育できないだけでなく、この個包装袋4内に存在するカビを死滅させることができ、これによりMucor、Fusarium、Arthrinium等などの微量な酸素で生育可能なカビの発生を抑制することができ、包装餅の未開封状態におけるカビ発生の問題をほぼ完ぺきに解決することができる。
更に、個包装袋4内に殆ど酸素が侵入しないことで、個包装袋4内の残留酸素を脱酸素剤5によって吸収する場合において、この個包装袋4内に収容した脱酸素剤5の酸素吸収作用も殆ど無く、よって、脱酸素剤5に錆が生じる可能性も可及的に低減され、餅片3に脱酸素剤5に生じた錆に起因するシミが付着する問題も解決することができる。
しかも、個包装餅1(餅片3)が極めて低酸素環境下で保管されるため、従来よりも品質の劣化速度が抑制され、1年以上の長期保存が可能となる。
即ち、本発明は、従来、致し方ないとあきらめていた、数千万〜数億個という大量生産される中の僅かな数(数ppmオーダー)の不具合の発生をほぼ完ぺきに抑制することで、個包装餅毎に個包装袋に賞味期限を表示して、外包装袋が開封されない未開封状態においては勿論のこと、外包装袋を開封しても、賞味期限まで美味しく餅片を食することができることを一層完ぺきに保証できる従来にない極めて画期的な包装餅となる。
また、請求項2,4記載の発明においては、個包装餅1の個包装袋4内にリークチェック用ガスを封入してこの個包装袋4を膨出形状とすることで、押圧により個包装袋4内に封入したリークチェック用ガスが漏洩するか否かを漏れ検査装置8により容易に確認することができるようになり、これにより、大量の個包装餅1の一つ一つに対して個包装袋4に漏れ孔が生じていないことを確認することを実現し、外包装袋2に封入する個包装餅1は、漏れ孔が無く、外部から容易に酸素が侵入しない不具合の無い個包装餅1となる。
また、この請求項4記載の発明は、個包装餅1を外包装袋2に封入する際、漏れ孔確認検査時の膨出形状を利用し、個包装餅1を膨出形状の状態のまま(例えば個包装袋4がパンパンに膨れた状態のまま)封入するので、所定数の個包装餅1を収容すると、外包装袋2内はほとんど隙間が無い状態で個包装餅1で埋め尽くされ、外包装袋2内に存在していた空気の大半は追い出され、空気が少ない状態で密閉されることとなり、この少ない空気中の酸素成分は、この外包装袋2内に個包装餅1と共に収容した脱酸素剤5に吸収され、若しくは酸素吸収作用を有するこの外包装袋2自体に吸収されて、僅かな時間(例えば数時間から数日)でこの外包装袋2を、酸素濃度が0.0001%以下のほぼ無酸素状態とすることができ、また、外包装袋2内の酸素が少ないことで、脱酸素剤7の効力にも余裕ができ、その分長期的に酸素吸収効果を発揮することができ、これにより、より長期保存を可能とする。
このように、請求項4記載の発明においては、個包装餅1は、ほぼ無酸素状態の環境下で保存されることとなり、個包装袋4内に酸素が侵入してくる虞が無く、個包装餅1は、個包装袋4内がほぼ無酸素の状態を保持することができる。
この個包装餅1の個包装袋4内に酸素をほぼ存在させないことによって、たとえ個包装袋4内にMucor、Fusarium、Arthrinium等などの微量な酸素で生育可能なカビが存在していたとしても、個包装袋4内を無酸素状態に保持することで、これらを生育させないどころか、死滅させることができ、確実にカビが発生しない状態にすることができ、包装餅の未開封状態におけるカビ発生の問題をほぼ完ぺきに解決することができる。
更に、個包装袋4内に殆ど酸素が侵入しないことで、個包装袋4内の残留酸素を脱酸素剤5によって吸収する場合において、この個包装袋4内に収容した脱酸素剤5の酸素吸収作用も殆ど無く、よって、脱酸素剤5に錆が生じる可能性も可及的に低減され、餅片3に脱酸素剤5に生じた錆に起因するシミが付着する問題も解決することができる。
しかも、個包装餅1(餅片3)が極めて低酸素環境下で保管されるため、従来よりも品質の劣化速度が抑制され、1年以上の長期保存が可能となり、個包装餅毎に個包装袋に賞味期限を表示して、外包装袋が開封されない未開封状態においては勿論のこと、外包装袋を開封しても、賞味期限まで美味しく餅片を食することができることを一層完ぺきに保証できる従来にない極めて画期的な包装餅の製造方法となる。
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
本実施例は、複数の個包装餅1を外包装袋2に封入して成る包装餅に係るものであり、個包装餅1は、餅片3を酸素透過率が10cc/m・day・atm以下の個包装袋4に脱酸素剤5と共に封入して、この個包装袋4内の餅片3が、酸素濃度が0.0001%以下の環境下で保存されるように構成すると共に、個包装袋4に餅片3の賞味期限情報6を表示した構成とし、この個包装餅1を複数個、酸素透過率が50cc/m・day・atm以下の外包装袋2に脱酸素剤7と共に封入して、この外包装袋2内の個包装餅1が、酸素濃度が0.0001%以下の環境下で保存されるように構成したものである。
以下、本実施例に係る構成各部について詳細に説明する。
本実施例の餅片3とは、具体的には、切り餅や丸餅などの小片餅を意味する。
また、この個包装袋4に収容する脱酸素剤5及び外包装袋2に収容する脱酸素剤7は、夫々、鉄または酸化鉄若しくはゼオライト(沸石)を反応主剤とした脱酸素剤を採用し、また、個包装袋4に収容する脱酸素剤5においては、個包装袋4の表面側の内面に貼設状態に設けた構成としている。
また、この餅片3と脱酸素剤5とを収容する個包装袋4は、一層目に直鎖状低密度ポリエチレン、二層目にポリエチレン、三層目にナイロンを用いた三重構造にして、酸素透過率を2cc/m・day・atm程度とした合成樹脂製フィルムから成るもので、本実施例においては、個包装袋4は、ピロー包装袋に形成した構成としている。
また、外包装袋2は、酸素透過率を15cc/m・day・atm程度とした合成樹脂製フィルムから成り、従来品と同様、表面に賞味期限情報12を表示した構成とし、個包装袋4よりも酸素透過率を弛めて、コスト低減を図っている。
尚、本実施例では、個包装袋4内の酸素を吸収するために脱酸素剤5を餅片3と共に収容し、また、外包装袋2内の酸素を吸収するために脱酸素剤7を複数の個包装餅1と共に収容した構成としたが、脱酸素剤5,7を用いる代わりに、酸素吸収作用を有する個包装袋4や外包装袋2を採用した構成としても良い。
更に具体的に説明すると、本実施例の個包装餅1は、外包装袋2に封入する前に、餅片3と脱酸素剤5と共にリークチェック用ガスを封入して個包装袋4を膨出形状にし、この膨出形状にした状態で押圧することにより個包装袋4内に封入したリークチェック用ガスが漏洩するか否かを漏れ検査装置8により確認することで、個包装袋4に漏れ孔が生じていないことを確認した後、この個包装袋4が膨出形状の状態のまま、外包装袋2に封入したものである。
即ち、本実施例では、個包装袋4を、ピロー包装袋の形態に形成したものを採用しているが、このピロー包装袋は、開口部をシールする際に、背貼り部によって生じる段差の影響で、非常に低い確率ではあるが、シール不良による漏れ孔が生じてしまうことがある。そのため、このピロー包装袋である個包装袋4を密閉した後で、この個包装袋4に漏れ孔が生じているかどうかを確認するための漏れ孔確認検査を個包装餅1一個一個に対して行わなければならず、上記漏れ孔確認検査は、このような背景により行われるものである。
この漏れ孔確認検査について詳述すると、本実施例では、個包装餅1を押圧し易いようにこの個包装餅1の個包装袋4を膨出形状にしているが、この個包装袋4を膨出形状にするために、餅片3を封入する際に、一緒に酸化防止用ガスとリークチェック用ガスとを充填封入して、この個包装袋4を膨出形状にしている。
尚、封入する酸化防止用ガスに関しては、餅片3に影響を与えない不活性ガスが好ましく、本実施例では窒素ガスを用いており、また、リークチェック用ガスに関しては、酸素分子よりも小さい原子状態若しくは分子状態で存在し、個包装袋4に封入した状態において、放置状態でこの個包装袋4から透過流出し、更に外包装袋2も透過して、この外包装袋2の外部に流出し得るガス、具体的には、ヘリウムガスや水素ガスを用いる(本実施例ではヘリウムガスを用いる)。
また、酸化防止用ガスとリークチェック用ガスの充填量に関しては、個包装袋4に餅片3と脱酸素剤5とを収容した状態で、個包装袋4内の残留酸素量が、この個包装袋4内の全ガス容量に対して9vol%以下となるような充填量とし、ガス封入後、24時間以内(具体的には、12時間以内)に残留酸素が脱酸素剤5に吸収されて個包装袋4内の酸素濃度が0.0001%以下となるように構成している。
この個包装袋4が膨出形状となった個包装餅1を漏れ検査装置8内に搬送し、この漏れ検査装置8内で個包装袋4を外部から押圧し、この漏れ検査装置8に設けられているリークチェック用ガス検知器9(ヘリウム検知器)がリークチェック用ガスを検知するか否かでこの個包装袋4に漏れ孔が生じているか否かを確認している。
即ち、個包装袋4に漏れ孔が生じていた場合は、個包装袋4を押圧した際に個包装袋4内のリークチェック用ガスがこの漏れ孔を通じて外部に流出し漏れ検査装置8内に拡散するので、この漏れ検査装置8内に拡散したリークチェック用ガスをリークチェック用ガス検知器9が検知することで、この個包装袋4に漏れ孔が生じていると判断することができ、また、個包装袋4に漏れ孔が生じていない場合は、個包装袋4を押圧しても個包装袋4内のリークチェック用ガスが個包装袋4外に流出しないので、漏れ検査装置8内にはリークチェック用ガスが存在せず、よって、リークチェック用ガス検知器9はリークチェック用ガスを検知しないので、この個包装袋4に漏れ孔4が生じていないと判断できる。
また、本実施例に用いている漏れ検査装置8について詳述すると、漏れ検査装置8は、上下に配設したベルト搬送機構10と、リークチェック用ガス検知器9(ヘリウム検知器)とから成り、この上下に配設したベルト搬送機構10が上下方向から膨出した個包装袋4を押圧しながら搬送することで、もし、個包装袋4に漏れ孔が生じていた場合は、この搬送途中に設けたガス吸引部11から押圧した際に流出したリークチェック用ガスがリークチェック用ガス検知器9に吸引され、リークチェック用ガス検知器9で吸引したガスがリークチェック用ガスであることを認知してリークチェック用ガスを検知したことを出力するように構成したものである。
このように、本実施例の漏れ孔確認検査は、製造過程で搬送しながら漏れ孔の有無を判定する漏れ孔検査を行うことができるので、非常にスピーディー且つ正確に漏れ孔の有無の確認検査を行うことができ、これによって、製造した全ての個包装餅1に対して一個一個検査を行う全数検査が実現可能となる。
また、このように漏れ孔が無いことが確認された本実施例の個包装餅1は、個包装袋4に確実に漏れ孔が無いので、外包装袋2を開封して空気に曝されても、個包装袋4内に外部から酸素が容易に侵入することがなく、個包装袋4のガスバリア作用と、この個包装袋4内に収容した脱酸素剤5の酸素吸収作用によって、個包装袋4内は、酸素濃度が0.0001%以下のほぼ無酸素状態が保持されることとなる。
また、本実施例の包装餅は、この個包装餅1を外包装袋2に封入する際、漏れ孔確認検査時の膨出形状を利用し、個包装餅1を膨出形状の状態のまま(例えば個包装袋4がパンパンに膨れた状態のまま)封入し、所定数の個包装餅1を収容すると、外包装袋2内はほとんど隙間が無い状態で個包装餅1で埋め尽くされ、外包装袋2内に存在していた空気の大半は追い出され、空気が少ない状態で密閉される構成とし、この少ない空気中の酸素成分を、この外包装袋2内に個包装餅1と共に収容した脱酸素剤5で吸収し、僅かな時間(例えば数時間から数日)でこの外包装袋2を、酸素濃度が0.0001%以下のほぼ無酸素状態とした構成としている。
即ち、本実施例は、膨出形状の個包装餅1を外包装袋2に封入するという極めて簡易な方法で、容易に外包装袋2内の残留酸素量を減らし、これにより、能力の高い脱酸素剤7を用いることなく、短時間でこの外包装袋2内をほぼ無酸素状態にすることができ、更に、脱酸素剤7の酸素吸収量を抑えることで、この脱酸素剤7が長期的に酸素吸収作用を発揮できるようしている(脱酸素剤7の延命化)。
上述のように構成した本実施例の作用・効果について以下に説明する。
本実施例に係る包装餅は、個包装餅1は、餅片3を封入した際に個包装袋4内に残留していた残留酸素が、数時間〜数日で餅片3と共に個包装袋4内に収容した脱酸素剤5の酸素吸収作用により無くなり、この個包装袋4内の酸素濃度が0.0001%以下のほぼ無酸素状態となり、更に、この個包装餅1は、酸素透過率が15cc/m・day・atm以下の外包装袋2に脱酸素剤7と共に封入されることで、封入後、この脱酸素剤7の酸素吸収作用により外包装袋2内の残留酸素が無くなった酸素濃度が0.0001%以下のほぼ無酸素状態の環境下で保存されることとなるので、個包装袋4を透過し、この個包装袋4内に侵入してくる酸素がないので、個包装袋4内の酸素濃度が0.0001%以下のほぼ無酸素状態が保持され、この個包装袋4内がほぼ無酸素状態で保持されることで、カビが生育できないだけでなく、この個包装袋4内に存在するカビを死滅させることができ、これによりMucor、Fusarium、Arthrinium等などの微量な酸素で生育可能なカビの発生を抑制することができ、包装餅の未開封状態におけるカビ発生の問題をほぼ完ぺきに解決することができる。
更に、個包装袋4内に殆ど酸素が侵入しないことで、個包装袋4内の残留酸素を脱酸素剤5によって吸収する場合において、この個包装袋4内に収容した脱酸素剤5の酸素吸収作用も殆ど無く、よって、脱酸素剤5に錆が生じる可能性も可及的に低減され、餅片3に脱酸素剤5に生じた錆に起因するシミが付着する問題も解決することができる。
しかも、個包装餅1(餅片3)が極めて低酸素環境下で保管されるため、従来よりも品質の劣化速度が抑制され、従来本のほぼ倍の賞味期限となる2年以上の長期保存が可能となる。
即ち、本発明は、従来、致し方ないとあきらめていた、数千万〜数億個という大量生産される中の僅かな数(数ppmオーダー)の不具合の発生をほぼ完ぺきに抑制することで、個包装餅1毎に個包装袋4に賞味期限情報6を表示して、外包装袋2が開封されない未開封状態においては勿論のこと、外包装袋2を開封しても、賞味期限まで美味しく餅片3を食することができることを一層完ぺきに保証できる従来にない極めて画期的な包装餅となる。
また更に、本実施例の包装餅は、個包装餅1を外包装袋2に封入した時点では、個包装餅1が膨出形状を呈し、個包装餅1も外包装袋2もパンパンに膨らんだ体裁の悪い状態であるが、市場に提供されるまでの数時間から数日の間に、個包装袋4は、残留酸素が脱酸素剤5に吸収されると共に、封入したリークチェック用ガス(ヘリウムガス)が個包装袋4を透過流出することで膨出形状が緩和し体裁の良い形状となり、また、外包装袋2も残留酸素が脱酸素剤7に吸収され、また、個包装餅1の個包装袋4の膨出形状が緩和されること、更には、個包装袋4から流出したリークチェック用ガスが、この外包装袋2にとどまらず外包装袋2の外部に透過流出することで、体裁の良い形状となり、これによって、市場に提供される状態では、消費者は何ら違和感を抱くことなく購入することができる
尚、本実施例の包装餅は、6か月間、約100万個(個包装餅1換算)の試験販売において、カビやシミによるクレームが全くないことが確認されている。
また、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
1 個包装餅
2 外包装袋
3 餅片
4 個包装袋
5 脱酸素剤
6 賞味期限情報
7 脱酸素剤
8 漏れ検査装置

Claims (5)

  1. 長期保存ができる期限を示す賞味期限情報が表示された酸素透過率10cc/m・day・atm以下の個包装袋に餅片と脱酸素剤とが封入されてなる複数の個包装餅が、若しくは前記長期保存ができる期限を示す賞味期限情報が表示された酸素透過率10cc/m・day・atm以下で且つ酸素吸収作用を有する酸素吸収性個包装袋に餅片が封入されてなる複数の個包装餅が、酸素透過率50cc/m・day・atm以下の外包装袋に脱酸素剤と共に封入されてなる構成とされ、若しくは酸素透過率が50cc/m・day・atm以下で且つ酸素吸収作用を有する酸素吸収性外包装袋に封入されてなる構成とされ、前記外包装袋内の酸素濃度が0.0001%以下となっているとともに、前記個包装袋内の餅片が、酸素濃度0.0001%以下で且つMucor、Fusarium、Arthriniumが生育できない環境下で保存されて、市場に提供されたときには、前記外包装袋を開封して前記個包装餅を空気中に曝しても、前記個包装袋に表示された前記賞味期限情報の日付まで前記Mucor、前記Fusarium、前記Arthriniumによるカビの発生が抑制されるように構成されていることを特徴とする包装餅。
  2. 前記個包装餅は、前記外包装袋に封入される前に、前記餅片と共にリークチェック用ガス封入されて前記個包装袋膨出形状にされ、この個包装袋が膨出形状にされた状態で押圧することにより個包装袋内に封入した前記リークチェック用ガスが漏洩するか否かを漏れ検査装置により確認することで、前記個包装袋に漏れ孔が生じていないこと確認された後、前記個包装袋が膨出形状の状態のまま、前記外包装袋に封入されたものであることを特徴とする請求項1記載の包装餅。
  3. 前記個包装餅は、前記個包装袋に前記餅片と前記リークチェック用ガスとが封入された際の個包装袋内の残留酸素量が、この個包装袋内の全ガス容量に対して9vol%以下となるようにされ、前記餅片と前記リークチェック用ガスが封入された後24時間以内に前記個包装袋内の酸素濃度が0.0001%以下となるように構成されていることを特徴とする請求項2記載の包装餅。
  4. 複数の個包装餅外包装袋に封入されて成る包装餅の製造方法であって、長期保存ができる期限を示す賞味期限情報が表示された酸素透過率10cc/m・day・atm以下の個包装袋に餅片と脱酸素剤と共にリークチェック用ガスを封入して、若しくは長期保存ができる期限を示す賞味期限情報が表示された酸素透過率10cc/m・day・atm以下で且つ酸素吸収作用を有する酸素吸収性個包装袋に餅片と共にリークチェック用ガスを封入して、前記個包装袋を膨出状態とした個包装餅を作成し、この個包装袋が膨出状態のままの前記個包装餅を、押圧により前記個包装袋内に封入した前記リークチェック用ガスが漏洩するか否かを漏れ検査装置により確認することで該個包装袋に漏れ孔が生じていないことを確認し、この個包装袋に漏れ孔が生じていないことを確認した前記個包装餅を複数個、前記個包装袋が膨出状態のまま、酸素透過率50cc/m・day・atm以下の外包装袋に脱酸素剤と共に封入する、若しくは酸素透過率50cc/m・day・atm以下で且つ酸素吸収作用を有する外包装袋に封入して、前記外包装袋内の酸素濃度を0.0001%以下とするとともに、前記個包装袋内の酸素濃度を0.0001%以下にし、且つこの個包装袋内をMucor、Fusarium、Arthriniumが生育できない環境にして、市場に提供されたときには、前記外包装袋を開封して前記個包装餅を空気中に曝しても、前記個包装袋に表示された前記賞味期限情報の日付まで前記Mucor、前記Fusarium、前記Arthriniumによるカビの発生が抑制されることを特徴とする包装餅の製造方法。
  5. 前記リークチェック用ガスは、酸素分子よりも小さい原子状態若しくは分子状態で存在し、前記個包装袋に封入した状態において、放置状態でこの個包装袋から透過流出し、更に前記外包装袋も透過して、この外包装袋の外部に流出し得るものであることを特徴とする請求項4記載の包装餅の製造方法。
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