JP6116921B2 - 荷電粒子線装置 - Google Patents

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Description

本発明は、荷電粒子線の検出方法、及び荷電粒子線装置に係り、特に、試料電位を測定するのに好適な試料電位情報検出方法、及び試料電位を検出する荷電粒子線装置に関するものである。
昨今の半導体デバイスの進歩に伴って、半導体の測定・検査技術は益々、その重要性を増している。CD−SEM(Critical Dimension−Scanning Electron Microscope)に代表される走査型電子顕微鏡は、電子ビームを試料上に走査し、試料から放出される2次電子等の電子を検出することによって、半導体デバイスに形成されたパターンの測定を行うための装置である。このような装置において、高精度な測定、検査を行うためには、装置の条件を適正に設定する必要があるが、昨今のデバイスの中には、電子ビームの照射、或いは半導体プロセスの影響によって帯電が生じる試料がある。特にレジスト、絶縁膜、Low−k材等の絶縁試料は、帯電が生じ易い試料として知られている。
試料が帯電していると、電子の軌道が曲げられ、非点や画像のぼけの原因となる。このような帯電した試料に対して、適正に焦点を合わせるために、帯電量を測定し、その情報に基づいて装置状態を制御する技術が、特許文献1〜4に説明されている。特許文献1乃至3には、試料に印加する電圧を調整することによって、試料に付着する帯電の影響を相殺する走査電子顕微鏡が説明されている。また、特許文献4には試料に印加する電圧を電子ビームの加速電圧より大きくすることによって、電子ビームが試料に到達しないで反射される状態とし、当該反射された電子ビームに基づいて得られる電子に基づいて、試料電位を検出する手法が開示されている。
特開平4−229541号公報 特開平10−125271号公報 特開2001−236915号公報(対応米国特許USP6,521,891) 特開2008−153085号公報(対応米国特許USP8,263,934)
特許文献1〜3に記載の技術は、試料に荷電粒子線が到達する状態で試料電位を測定するものであり、特許文献4に記載の技術は試料に荷電粒子線が到達しない状態で試料上の電位を測定するものである。いずれの方法も、帯電を抑制しつつ帯電量の測定を行い、測定結果に基づいて装置条件を調整する技術に関するものである。
しかしながら、近年のデバイスにおいては、大電流の荷電粒子線を試料に照射して意図的に帯電状態を生じさせ、電位コントラストを形成させないと観察が不可能な試料も存在する。このような試料では積極的に帯電を生じさせる必要があるため、帯電状況下での帯電量を測定する技術が必須となる。
また帯電は、試料全体に及ぶような広範囲の帯電を示すグローバル帯電と、荷電粒子線照射領域に限定した局所的な帯電量に対応したローカル帯電に大別できる。グローバル帯電とローカル帯電の両方の情報を得ることでより精度の高い装置制御が可能となるが、特許文献1〜4に記載の技術では、激しい帯電が生じている試料において、グローバル帯電およびローカル帯電を同時に測定することは困難である。
更に、従来の帯電測定法にはない、高精度な帯電測定法が求められている。以下に、試料帯電をより高精度に測定することを目的とする荷電粒子線装置について説明する。また、広範囲の帯電と局所帯電を併せて測定することを他の目的とする荷電粒子線装置について説明する。
上記目的を達成するための一態様として、試料側から電子源側に向かう荷電粒子を偏向する偏向器を備え、当該偏向器によって偏向される荷電粒子の移動量、或いは当該荷電粒子に基づいて形成される画像内の表示物の移動量に基づいて試料電位、或いは荷電粒子線装置の調整パラメータを求める荷電粒子線装置を提案する。
また、上記他の目的を達成するための他の態様として、荷電粒子線を試料に向けて照射した際に試料から発生する2次電子を偏向させて、そのときの2次電子の移動量及び移動方向、或いは当該2次電子に基づいて形成される画像内の表示物の移動量及び移動方向を求めることで、試料電位に関する情報を求める荷電粒子線装置を提案する。
上記一態様によれば、高精度な帯電測定や装置調整を行うことが可能となる。また、上記他の態様によれば、広範囲の帯電と局所的な帯電の双方を併せて測定することが可能となる。
走査電子顕微鏡の構成を説明する図。 2次電子の検出、或いは2次電子が走査電子顕微鏡内の構造物に衝突することによって生ずる2次電子の検出に基づいて形成される白点画像、及び黒点画像を表す図。 2次電子の偏向により黒点が移動する様子を表す図。 黒点の移動距離の算出方法を説明する図。 グローバル帯電量とローカル帯電量の測定方法を説明する図(実施例1)。 グローバル帯電の生じない入射エネルギーを決定する方法、及びローカル帯電の生じない入射エネルギーを決定する方法を説明する図(実施例2)。
昨今、ULSI素子の微細化や高集積化が急速に進められ、加工寸法が数10nmのデバイス加工が行われている。また高速化のために低誘電率膜やメタルゲート膜の採用、対エッチング耐性を高めるための3層レジストなど、多種類の新材料を用いた多層化が進行している。そのために、ULSI加工時の寸法精度(CD)管理に対する要請が厳しくなっている。
レジストや絶縁膜、Low−k材等の絶縁体は半導体加工工程で多く用いられているが、この絶縁体表面は、電子線照射により帯電する。帯電すると試料表面から脱出しようとする2次電子の量を変えたり、また1次電子線の軌道を曲げたりするため、走査電子顕微鏡の画像を歪ませることになる。その結果として、真の加工寸法や形状を測定することが困難になっている。例えばArFレジストでは、エッチング工程でラインエッジラフネス(LER)が発生したのか、また試料の帯電による寸法の誤測定なのかの判定ができなくなる。また高アスペクトのコンタクトホール観察では、コンタクトホールの形状が歪んで観測されたり、ホールの上部径と下部径の識別が困難となったりする問題が発生する。
帯電は電子の移動・拡散による空間的変化に加え、ホール・電子再結合などによる減衰などによる時間的変化も含まれる。また試料表面に入射する電子のエネルギーによって、正に帯電したり、負に帯電したりする。そのために、帯電を制御することが重要になっている。帯電によって電子の軌道が曲げられる結果、非点や画像のボケが発生したりする。電子を所定位置に集束させて、自動的にフォーカスを合わせる(オートフォーカス)機能も帯電によって、当初のフォーカス位置からずれるなどの問題が生じ、フォーカスを合わせるのに時間が掛かることになり、帯電電位の大きさや分布を知ることが重要になっている。
帯電の抑制も重要な技術であるが、その一方で、近年のデバイスにおいては、大電流の荷電粒子線を試料に照射して意図的に帯電状態を生じさせることによってコントラストを形成させないと、観察が不可能な試料も存在する。このような試料では積極的に帯電を生じさせる必要があるため、帯電の激しい状況での帯電量を測定する技術が必須となる。
帯電には、広範囲の帯電量を平均化したものに対応するグローバル帯電と、荷電粒子線照射領域に限定した局所的な帯電量に対応したローカル帯電に大別でき、グローバル帯電とローカル帯電の両方の情報を得ることでより精度の高い装置制御が可能となる。
以下に説明する実施例では、荷電粒子線の照射によって誘起される試料の電位がどのようなものであっても、画像形成に寄与する広範囲および局所領域の帯電を測定できる方法、及び装置について説明する。
図1は、走査電子顕微鏡の構成を説明する図である。なお、以下の説明では電子ビームを試料上にて走査する走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を例にとって説明するが、これに限られることはなく、例えばFIB(Focused Ion beam)装置(集束イオンビーム装置)等の他の荷電粒子線装置にも適用することも可能である。また、図1は走査電子顕微鏡の一例を説明しているに過ぎず、図1とは異なる構成からなる走査電子顕微鏡においても、発明の趣旨を変えない範囲において、以下に詳述するような実施例の適用が可能である。
図1に説明する走査電子顕微鏡では、電界放出陰極11と、引出電極12との間に引出電圧が印加され、1次電子ビームが引き出される。
このようにして引き出された一次電子ビーム1は、加速電極13によって加速され、コンデンサレンズ14による集束と、上走査偏向器21、及び下走査偏向器22による走査偏向を受ける。加速電極13とコンデンサレンズ14の間には、一次電子ビーム1の強度、及び開き角を制御する対物絞り15が配置される。上走査偏向器21、及び下走査偏向器22の偏向強度は、対物レンズ17のレンズ中心を支点としてホルダー24にセットされた試料23上を2次元走査するように調整されている。
偏向を受けた一次電子ビーム1は、対物レンズ17の通路に設けられた加速円筒18でさらに後段加速電圧の加速をうける。後段加速された一次電子ビーム1は、対物レンズ17のレンズ作用で絞られる。筒状円筒20は、接地されており、加速円筒18との間に、一次電子ビーム1を加速させる電界を形成する。
試料から放出された2次電子や後方散乱電子等の電子は、試料に印加される負電圧(リターディング電圧)と、加速円筒18との間に形成される電界によって、一次電子ビーム1の照射方向とは逆の方向に加速される。2次電子2(a)は上反射板27(a)、2次電子2(b)は下反射板27(b)に衝突して3次電子に変換され、これらの3次電子を、それぞれ上検出器28(a)または下検出器28(b)に導き、SEM像を形成する。上反射板27(a)および下反射板27(b)は、対物レンズと17とコンデンサレンズ14の間に配置される。
上反射板27(a)および下反射板27(b)には、1次電子線が通過するための穴が空いているが、下反射板27(b)の穴は、2次電子の検出量、及び検出領域を制限する役割も果たす(2次電子絞り)。
上検出器28(a)では、下反射板27(b)の2次電子絞りを通過した2次電子のみが検出され、SEM像が形成される。下検出器28(b)の場合は、下反射板27(b)に衝突した2次電子によって発生した3次電子が検出され、SEM像が形成される。
対物レンズ17と下反射板27(b)の間には、2次電子を偏向するための2次電子偏向器33が配置されている。この2次電子偏向器は1次電子を曲げずに2次電子のみを偏向するように、ウィーンフィルタの機能を持つ。ウィーンフィルタは、直交する4方向への偏向作用を有する電極、及び磁極により形成される。
上検出器28(a)または下検出器28(b)にて検出された電子は、上走査偏向器21、及び下走査偏向器22に供給される走査信号と同期して図示しない画像表示装置上に表示される。また、得られた画像は制御装置50内に設けられた図示しないフレームメモリに記憶される。制御装置50は得られた画像に基づいて後述するような演算式に基づく試料電位の測定を実行する。なお、試料電位ではなく、試料電位の変動によってビームコンディション(走査信号やリターディング電圧等)を調整する場合には、調整パラメータが演算結果となるような演算式を用いて演算を行うようにしても良い。制御装置50にはこれらの演算を実行するプロセッサが内蔵される。また、演算式ではなく、電位等と移動量との関係を示すテーブルを用意しておき、電位や調整パラメータを導出するようにしても良い。なお、図1に示す走査電子顕微鏡の各構成要素に供給、印加する電流或いは電圧は、走査電子顕微鏡本体とは別に設けた制御装置を用いて、制御するようにすることが可能である。
(実施例1)
本実施例では、荷電粒子源から放出される荷電粒子線を偏向させずに、試料から放出される2次電子のみを偏向させるウィーンフィルタを備えた2次電子偏向器を、荷電粒子源と荷電粒子線を集束する対物レンズの間に搭載する。その2次電子偏向器に電圧および電流を印加することで偏向された2次電子を、荷電粒子源と2次電子偏向器との間に配置された2次電子絞りを通過もしくは衝突した2次電子による画像を取得し、その2次電子像に基づいて、試料の電位を求める方法、及び装置について説明する。
このような装置構成によれば、非帯電試料における2次電子の偏向量および偏向方向との比較によって、荷電粒子線を照射した帯電状態におけるグローバル帯電(第1の帯電情報)およびローカル帯電(第2の帯電情報)を同時に、かつ容易に測定することが可能である。また、帯電を生じさせない荷電粒子線の入射エネルギー条件を容易に決定することも可能となる。
以下に、電子線を用いて、試料の電位を測定する方法、及びそれを実現するための装置について説明する。
上走査偏向器21、及び下走査偏向器22の走査偏向量を大きくすることで、低倍のSEM像を形成することができる。低倍にすることで、上検出器28(a)では、図2(a)に示すような白点画像が得られる。白点34は、下反射板27(b)の穴(2次電子絞り)を通過した2次電子により形成されている。
一方、下検出器28(b)では、下反射板27(b)を通過した2次電子が検出されないことから、図2(b)に示すような黒点画像が得られる。白点34または黒点35の直径は、下反射板27(b)の穴径に対応している。
白点34または黒点35が観察された状態で、2次電子偏向器33の電極に電圧を印加する。印加電圧の大きさは、白点34または黒点35がSEM画面からはみ出さない程度であれば、任意で良い。2次電子偏向器33の磁極であるコイルに、ウィーン条件を満たす電流を同時に印加することで、1次電子1はそのまま直進し、2次電子2(a)および2(b)のみが偏向される。
試料電位を測定するための観察対象としては、白点34または黒点35のどちらを選択しても良い。以下では、黒点35を例にとって説明する。
2次電子偏向器33によって2次電子2(b)を偏向させた結果として、図3に示すように黒点35は初期位置36から、偏向位置37に移動する。黒点35の移動量をR、移動方向の角度をφとすると、ある電圧を2次電子偏向器33に印加したときの黒点35の移動ベクトルを定義することができ、この移動ベクトルにより、試料電位を決定する。
黒点35の移動量Rは、2次電子2(b)が2次電子偏向器33を通過するときの速度に依存している。速度が速いと移動量Rは小さくなり、速度が遅いと移動量Rは大きくなる。
2次電子(b)の速度は、試料電位に依存しており、試料電位が正に大きくなると速度は小さくなり、負に大きくなると速度は大きくなる。すなわち、2次電子2(b)の速度は、試料が正に帯電すると小さくなり、負に帯電すると大きくなる。
黒点の移動量Rは試料表面の電位に対応していることになるが、2次電子の軌道は、荷電粒子線照射領域に比べて広範囲に広がっているために、2次電子の速度は広範囲の電位分布の影響を受ける。すなわち、黒点35の移動量Rは、グローバル帯電量を反映していることになる。
移動量Rを画素単位から距離単位に換算するには、2次電子絞り(下反射板27(b))の穴径DSE[mm]が黒点35の直径に対応していることから、図4に示すように、黒点35のラインプロファイルをとり、その画素単位での半値幅(38)DBP[pixel]が穴径DSE[mm]に対応するものとして、画素単位から距離単位に換算すればよい。1画素あたりの距離Pは、
P=DSE/DBP[mm/pixel]で求まる。
また、黒点35の移動方向φは、2次電子2(b)が2次電子偏向器33を通過するときの回転量に依存している。2次電子2(b)は、対物レンズ17の磁界レンズ効果や加速円筒18による静電レンズ効果によって回転する。回転量はレンズ作用を受けるときの2次電子の速度に依存するため、回転量は試料電位に依存することになる。
2次電子の回転量は、2次電子が放出される領域の電位に依存し、微細パターンなどの構造物によって局所的に電位が変化すると、回転量も変化する。したがって、黒点35の移動方向φは、局所的なローカル帯電量を反映したものとなる。
以上のように、白点34または黒点35の移動ベクトルを求めることで、グローバル帯電およびローカル帯電の情報を同時に、しかも容易に検出することが可能である。
以上のように、本手法では2次電子による低倍像を用いて試料電位検出を行うため、帯電の影響による1次電子の歪みの影響をほとんど受けない。したがって、帯電が激しい場合においても、安定して試料電位を測定することが可能である。
任意の帯電試料でグローバル帯電量およびローカル帯電量を定量的に決定するには、非帯電試料と、ベタ膜ウェハなどの帯電の計測が容易な絶縁物試料を用いて、両者の白点または黒点の移動ベクトルの関係を求める。
非帯電試料での移動量および試料電位をRNCおよびVNC、帯電試料での移動量および試料電位をRCおよびVCとすると、(RC−RNC)/(VC−VNC)にて帯電試料の電位増加1Vあたりに増加する移動量ΔRを求めることができる。
また、非帯電試料での移動角度をφNC、帯電試料での移動角度をφCとすると、(φC−φNC)/(VC−VNC)にて帯電試料の電位増加1Vあたりに増加する回転量Δφが求まる。
以上から、任意の帯電試料で白点または黒点の移動ベクトルを求めることで、図5(a)および(b)に示すように、任意の帯電試料のΔRおよびΔφに対応する、グローバル帯電およびローカル帯電の値を定量的に求めることができる。
いちどΔRおよびΔφと帯電量のテーブルを求めておけば、任意の帯電試料においても、白点または黒点の移動ベクトルを測定するだけでグローバル帯電量とローカル帯電量を容易に決定することができる。
(実施例2)
さらに本手法を用いれば、任意の帯電試料において帯電の生じない1次電子線の入射エネルギーを決定することができる。したがって、帯電を発生させない装置状態に容易に設定することが可能である。
非帯電試料および帯電試料において、黒点または白点の移動ベクトルの入射エネルギー依存性を求めておく。図6(a)は、黒点または白点の移動量を1次電子線の入射エネルギーに対してプロットしたもので、図6(b)は、移動方向を入射エネルギーに対してプロットしたものである。
図6(a)の40は、非帯電試料における移動量の入射エネルギー依存性を示しており、それに対して図6(a)の41は帯電試料における移動量の入射エネルギー依存性を示したものである。ここで示した例では、図6(a)の42に示す入射エネルギーにおいて両者が一致している。これは、その入射エネルギーでは、帯電試料においても非帯電試料と同じグローバル帯電量であることを示している。言い換えれば、42に示す入射エネルギーでは広範囲のグローバル帯電が生じていないことを意味している。
一方、図6(b)の43および44は、非帯電試料および帯電試料における移動方向の入射エネルギー依存性を示したものである。ここでは、図6(b)の45に示す入射エネルギーにおいて両者が一致しており、45に示す入射エネルギーでは局所的なローカル帯電が生じていないことを意味している。
図6(a)42と図6(b)45に示すように、グローバル帯電とローカル帯電が生じない入射エネルギーは、必ずしも一致はしない。これは、グローバル帯電は絶縁体試料の種類に大きく依存するが、ローカル帯電は同じ絶縁体試料であっても、照射領域のパターンに大きく影響を受けるためである。
このように本発明の手法によれば、帯電の生じない入射エネルギーを容易に決定することができ、さらにはグローバル帯電とローカル帯電が生じない入射エネルギーを分けて測定可能である。
グローバル帯電およびローカル帯電のどちらがSEM像のコントラストに大きく寄与しているかは試料によって異なるので、試料によってどちらの帯電を抑制するかをユーザが選択し、それに対応した入射エネルギーに設定すれば良い。
(実施例3)
本実施例では、試料に印加される負電圧を、加速電極13に印加される電圧より大きくすることによって、1次電子線1(電子ビーム)が試料にコンタクトしない状態とした上で、試料電位を測定する例を説明する。制御装置50は、加速電極13と電界放射陰極11との間に印加する電圧Voより、ホルダー24、或いは試料23に印加する電圧Vrを大きく設定する。この状態で、2次電子偏向器33によって試料側から電子源(電界放射陰極11)側に向かう電子を偏向し、その偏向に基づいて試料電位を計測する。本実施例の場合、電子ビームは試料に照射されておらず、2次電子は発生していない。一方、電子ビームは試料上に形成された電界によって試料に到達することなく反射されている。本実施例ではこの電子をミラー電子と定義する。即ち、本実施例では2次電子偏向器33はミラー電子偏向器となる。
本実施例では、電子ビームが試料に照射されていないため、実施例1のようにグローバル帯電とローカル帯電の双方を計測するという効果は期待できない。一方でローカル帯電のないグローバル帯電を高精度に評価することが可能となる。特に、ミラー電子を偏向し帯電によって生じる画像上の変位を拡大しているため、高精度な試料電位測定が可能となる。実施例1の場合、微小な変位を偏向によって拡大することによって、高精度なグローバル帯電とローカル帯電の測定を行うことが可能となる。
なお、上述の実施例では反射板(二次荷電粒子発生部材)の開口の画像上での移動量(表示物の移動量)を測定する例を説明したが、これに限られることはなく、例えば2次電子やミラー電子の軌道上に位置する他の電子顕微鏡内の構造物(例えばエネルギーフィルタ用のメッシュ電極や、反射板とは異なる他の電子ビーム開口)の像から、これらの構造物の移動量を求めるようにしても良い。
また、上述の実施例では反射板に一旦2次電子や反射電子を衝突させ、反射板から放出される2次電子を検出する例について説明したが、これに限られることはなく、2次電子や反射電子を直接的に検出する検出器を、これら電子の軌道上に配置するようにしても良い。また、複数の検出素子が配列された検出器を用意することによって、画像内の構造物の移動量ではなく、2次電子やミラー電子の軌道自体の移動量を求めるようにしても良い。
1 1次電子線
2(a) 2次電子
2(b) 2次電子
11 電界放射陰極
12 引出電極
13 加速電極
14 コンデンサレンズ
15 対物絞り
17 対物レンズ
18 加速円筒
20 筒状円筒
21 上走査偏向器
22 下走査偏向器
23 試料
24 ホルダー
27(a) 上反射板
27(b) 下反射板
28(a) 上検出器
28(b) 下検出器
34 白点
35 黒点
36 黒点の初期位置
37 2次電子偏向後の黒点位置
38 下反射板(2次電子絞り)の穴径に対応する画素数
40 非帯電試料での黒点(白点)移動量の入射エネルギー依存性
41 帯電試料での黒点(白点)移動量の入射エネルギー依存性
42 グローバル帯電の生じない入射エネルギー
43 非帯電試料での黒点(白点)移動方向の入射エネルギー依存性
44 帯電試料での黒点(白点)移動方向の入射エネルギー依存性
45 ローカル帯電の生じない入射エネルギー
50 制御装置

Claims (10)

  1. 荷電粒子源から放出される荷電粒子線の照射によって試料から放出された荷電粒子、或いは当該試料から放出された荷電粒子が二次荷電粒子発生部材に衝突したときに放出される荷電粒子を検出する検出器を備えた荷電粒子線装置において、
    前記荷電粒子源から放出される荷電粒子線が試料に向かって照射されている状態で、前記試料側から前記荷電粒子源側に向かう荷電粒子を偏向する偏向器と、当該偏向器によって偏向される荷電粒子の移動量、或いは当該荷電粒子に基づいて形成される画像内の表示物の移動量に基づいて、グローバル帯電を反映した電位を求める制御装置を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
  2. 請求項1において、
    前記偏向器は、電界による偏向作用と磁界による偏向作用とを有することを特徴とする荷電粒子線装置。
  3. 請求項1において、
    前記二次荷電粒子発生部材は、前記荷電粒子源と前記偏向器との間に配置され、前記試料側から前記荷電粒子源側に向かう荷電粒子の一部或いは全部が通過する開口を有することを特徴とする荷電粒子線装置。
  4. 請求項1において、
    前記試料側から前記荷電粒子源側に向かう荷電粒子の移動量、或いは前記画像内の表示物の移動量は、当該荷電粒子を検出する検出器への到達位置、或いは前記二次荷電粒子発生部材への到達位置に関する情報であることを特徴とする荷電粒子線装置。
  5. 請求項1において、
    前記偏向器は、前記荷電粒子線の軌道は変化を抑制しつつ、前記試料側から前記荷電粒子源側に向かう荷電粒子を選択的に偏向させるものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
  6. 請求項1において、
    前記制御装置は、
    前記試料側から前記荷電粒子源側に向かう荷電粒子の移動方向、或いは前記画像内の表示物の移動方向に応じて、試料電位を求めることを特徴とする荷電粒子線装置。
  7. 請求項1において、
    前記制御装置は、
    前記試料側から前記荷電粒子源側に向かう荷電粒子の移動情報、或いは前記画像内の表示物の移動情報と、試料電位との関係に基づいて、前記試料の電位を求めることを特徴とする荷電粒子線装置。
  8. 荷電粒子源から放出される荷電粒子線の照射によって試料から放出された荷電粒子、或いは試料から放出された荷電粒子が二次荷電粒子発生部材に衝突したときに放出される荷電粒子を検出する検出器を備えた荷電粒子線装置において、
    前記試料側から前記荷電粒子源側に向かう荷電粒子を偏向する偏向器と、当該偏向器によって偏向される荷電粒子の移動方向、或いは当該荷電粒子に基づいて形成される画像内の表示物の移動方向に基づいて、ローカル帯電を反映した電位を求めることを特徴とする荷電粒子線装置。
  9. 請求項8において、
    前記制御装置は、前記偏向器によって偏向される荷電粒子の移動量、或いは当該荷電粒子に基づいて形成される画像内の表示物の移動量に基づいて、試料電位を求めることを特徴とする荷電粒子線装置。
  10. 荷電粒子源から放出される荷電粒子線の照射によって試料から放出された荷電粒子、或いは試料から放出された荷電粒子が二次荷電粒子発生部材に衝突したときに放出される荷電粒子を検出する検出器を備えた荷電粒子線装置において、
    前記試料側から前記荷電粒子源側に向かう荷電粒子を偏向する偏向器と、当該偏向器によって偏向される荷電粒子の移動量、或いは当該荷電粒子に基づいて形成される画像内の表示物の移動量に基づいて、グローバル帯電を反映した電位を求め、当該偏向器によって偏向される荷電粒子の移動方向、或いは当該荷電粒子に基づいて形成される画像内の表示物の移動方向に基づいて、ローカル帯電を反映した電位を求めることを特徴とする荷電粒子線装置。
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