以下に、図面を参照して、本発明を適用した磁気センサ装置を搭載する磁気パターン検出装置を説明する。
(全体構成)
図1は本発明を適用した磁気センサ装置を搭載する磁気パターン検出装置の要部構成を模式的に示す説明図である。図1に示すように、磁気パターン検出装置1は、銀行券、有価証券等のシート状の媒体2を媒体搬送経路3に沿って搬送する媒体搬送機構4と、媒体搬送経路3に設けられた磁気読み取り位置Aで媒体2の磁気パターンを検出する磁気センサユニット5を有している。なお、以下の説明では、便宜上、図の上下に従って各部材の上下を説明する。
(磁気センサユニット)
図2(a)は磁気センサユニット5における第1着磁用マグネット、第2着磁用マグネットおよび磁気センサ装置のレイアウトを示す斜視図であり、図2(b)は磁気センサユニット5の断面構成図である。なお、図2では、カバー板、第1着磁用マグネットおよび第2着磁用マグネットの配置を説明するために、磁気センサ装置の構成を省略して模式的に示している。
媒体搬送機構4は、第1方向X1と、その逆向きの第2方向X2の2方向(媒体搬送方
向X)に媒体2を搬送する。磁気センサユニット5は、磁気読み取り位置Aを第1方向X1から通過する媒体2に着磁を行う第1着磁用マグネット6と、磁気読み取り位置Aを第1方向X1とは逆の第2方向X2から通過する媒体2に着磁を行う第2着磁用マグネット7と、第1着磁用マグネット6あるいは第2着磁用マグネット7によって着磁された状態で磁気読み取り位置Aを通過する媒体2の磁気パターンを読み取る磁気センサ装置8を備えている。
また、磁気センサユニット5は、磁気センサ装置8を搭載しているケース10と、このケース10の上端部分に取り付けられた矩形のカバー板11を備えている。第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7はカバー板11の裏面側に保持されている。カバー板11は、第1、第2着磁用マグネット6、7が磁気読み取り位置Aを通過する媒体2によって磨耗しないように、これら第1、第2着磁用マグネット6、7の上面を覆っている。
ケース10は金属などの導電性材料から形成されている。図2(b)に示すように、ケース10の上端面101の媒体搬送方向Xの中央部分には、カバー板11を取り付けるための矩形の凹部102が形成されている。凹部102の媒体搬送方向Xの両側には外側に向かって下方に傾斜する傾斜面103が設けられている。
凹部102は、一定深さであり、且つ、媒体搬送方向Xと直交するY方向に一定幅で延びている。凹部102における媒体搬送方向Xの中央部分には磁気センサ装置8が構成されている。磁気センサ装置8の上端面はセンサ面8aとなっている。センサ面8aは、ケース10の上端面101と同一平面上に位置している。図1、図2(a)に示すように、磁気センサ装置8は、媒体搬送方向Xと直交するY方向に所定のピッチで配列された複数の磁気センサ素子13を備えている。
図2(a)、(b)に示すように、カバー板11は、表面側カバー板14と、表面側カバー板14の裏面に積層固定された裏面側カバー板15とからなる複合板である。表面側カバー板14の表面には、媒体2を搬送するための媒体搬送面11aが形成されている。表面側カバー板14および裏面側カバー板15は、いずれもステンレス鋼製であり、これら表面側カバー板14と裏面側カバー板15は拡散接合されている。すなわち、表面側カバー板14と裏面側カバー板15は、密着させられた状態で加圧、加熱されて一体化されており、カバー板11は全体として剛性の高いものとなっている。
表面側カバー板14は、矩形の輪郭形状をした一定厚さの薄板状の金属板であり、その媒体搬送方向Xの中央部分には、矩形の開口部141が形成されている。開口部141は、例えば、エッチングにより形成されている。本例では、表面側カバー板14の厚さ寸法は0.3mm以下、好ましくは0.1mm程度となっている。
裏面側カバー板15は、表面側カバー板14よりも厚い一定厚さの金属板であり、表面側カバー板14と同一の輪郭形状をしている。裏面側カバー板15には、開口部141と重なる位置に、開口部141と同一形状の開口部151が形成されている。開口部151は、例えば、エッチングにより形成されている。図2(b)に示すように、開口部141と開口部151が重なることにより、カバー板11の開口部111が構成されている。裏面側カバー板15は、第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7の厚さ寸法と同一の厚さ寸法に形成されている。本例では、裏面側カバー板15の厚さ寸法は0.3〜0.5mm程度となっている。
図2(a)に示すように、第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7は、媒体搬送方向Xと直交するY方向に所定のピッチで各1列に配列された複数のマグネット
片16によって構成されている。第1着磁用マグネット6を構成する各マグネット片16と、第2着磁用マグネット7を構成する各マグネット片16は、媒体搬送方向Xから見たときに重なる位置に装着されている。これらの各マグネット片16は、フェライトやネオジウム磁石等の永久磁石であり、同一の磁力を備えている。
図2(b)に示すように、裏面側カバー板15は、開口部151に対して第1方向X1の上流側となる位置に形成された第1装着孔152と、開口部151に対して第2方向X2の上流側となる位置に形成された第2装着孔153を備えている。第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7を構成する各マグネット片16は、第1装着孔152および第2装着孔153に嵌め込まれて、表面側カバー板14に当接した状態で裏面側カバー板15に保持されている。
各マグネット片16は、表面側カバー板14の側の部位とその反対側の部位とが異なる磁極となるように装着されており、表面側カバー板14に当接している面が媒体搬送面11aを搬送される媒体2に対する着磁面として機能する。ここで、各マグネット片16は表面側カバー板14に当接しているので、媒体搬送面11aと各マグネット片16とのギャップは、表面側カバー板14の板厚によって規定されている。
第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7を保持したカバー板11をケース10の凹部102に取り付けると、カバー板11の開口部111の内側に磁気センサ装置8のカバー板11の側の部位が挿入されて、カバー板11の媒体搬送面11aと磁気センサ装置8のセンサ面8aが同一平面上となるように位置決めされる。また、磁気センサ装置8の第1方向X1の上流側に第1着磁用マグネット6が配置されると共に、磁気センサ装置8の第2方向X2の上流側に第2着磁用マグネット7が配置されて、第1着磁用マグネット6と第2着磁用マグネット7の中間に磁気センサ装置8が位置決めされる。
磁気センサ装置8が保持している複数の磁気センサ素子13のそれぞれは、第1着磁用マグネット6のマグネット片16および第2着磁用マグネット7のマグネット片16の中間に配置されて、2つのマグネット片16とその中間に配置された磁気センサ素子13が媒体搬送方向Xに一列に並ぶように位置決めされる。
(磁気センサ装置)
磁気センサ装置8は着磁された媒体2にバイアス磁界を印加した状態として磁束を検出するものである。磁気パターン検出装置1は、磁気センサ装置8からの検出波形をリファレンス波形と照合することによって、媒体2の真偽判定や種類を判別する。
図3(a)〜(c)は磁気センサ装置8の正面図、側面図および上面図である。正面図は媒体搬送方向Xから見たものであり、側面図は媒体搬送方向Xと直交するY方向から見たものである。図4は磁気センサ装置の断面図である。また、図5(a)〜(d)は磁気センサ素子を保持しているフレームの正面図、側面図、上面図および下面図である。
図3に示すように、磁気センサ装置8は、フレーム20と、このフレーム20にセンサ面13aを上方に向けた状態で保持されている複数の磁気センサ素子13を備えている。磁気センサ素子13のセンサ面13aは磁気センサ装置8のセンサ面8aを構成している。
フレーム20は、全体として細長い直方体形状をしている。図4、図5(c)に示すように、フレーム20には、フレーム20の上端面21から下端面22に貫通する複数の装着孔23が、媒体搬送方向Xと直交するY方向に所定のピッチで形成されている。各装着孔23の軸線Lは互いに平行となっている。フレーム20の上端面21の外周側には、こ
の上端面21を囲んで上方に突出する枠状のフランジ部24が設けられている。一方、フレーム20の下端面22の四隅には、下方に突出する突部25が設けられており、各突部25の下端面は各装着孔23の軸線Lと直交する研削基準面26となっている。また、図5(d)に示すように、フレーム20の下端面22における媒体搬送方向Xの一方側に位置する部分には、下方に突出する複数の係合突起27が一定間隔で設けられている。フレーム20の上端面21に露出している各装着孔23の上端開口23aは全体として矩形をしている。図4、図5(d)に示すように、各装着孔23の下端開口23bの内側には、各装着孔23を部分的に封鎖する部分封鎖部28が設けられている。
図6(a)〜(c)は、磁気センサ素子13の正面図、側面図および上面図であり、図7(a)は磁気センサ素子13のコア体、励磁コイルおよび検出コイルの説明図、図7(b)はコア体の断面図(図7(a)のZ−Z断面図)である。また、図8はセンサコアの説明図である。磁気センサ素子13は、図6、図7に示すように、非磁性体からなる第1、第2保護板30、31と、これら第1、第2保護板30、31の間に挟まれたセンサコア32からなる三層構造のコア体33を備えている。センサコア32はフェライト、アモルファス、パーマロイ、珪素鋼板等の磁性体から形成されている。また、磁気センサ素子13は、バイアス磁界を発生させるための励磁コイル34と、媒体2の磁気パターンを検出するための検出コイル35を備えている。
本例では、センサコア32として薄板状のアモルファス金属箔を用いており、ロールによる圧延によって形成したアモルファス金属箔を熱硬化性樹脂等からなる接着層(不図示)によって第1、第2保護板30、31に貼着している。なお、アモルファス金属箔は、蒸着等の他の方法によって形成することもできる。アモルファス金属箔としては、コバルト系、あるいは鉄系のアモルファス合金などを用いることができる。また、第1、第2保護板30、31としては、アルミナ基板等のセラミックス基板や、ガラス基板、あるいは、剛性のある樹脂基板などを用いることができる。
図8に示すように、センサコア32は、励磁コイル34が巻き回される胴部321と、胴部321の上端部の中央部分から媒体2が位置する上方に突出した上側中央突部322と、胴部321の下端部の中央部分から下方に突出した下側中央突部323を備えている。また、センサコア32は、胴部321の上端部における上側中央突部322の両側から上方に突出した上側第1突部324および上側第2突部325と、胴部321の下端部における下側中央突部323の両側から下方に突出した下側第1突部326および下側第2突部327を備えている。
センサコア32における上側中央突部322、上側第1突部324、上側第2突部325の長さLaは同一となっている。一方、下方に突出する各突部については、下側中央突部323の長さLb1に対し、その両側に形成された下側第1突部326、下側第2突部327の長さLb2の方が長く形成されている。
図7(a)に示すように、コア体33は、第1、第2保護板30、31によって規定される外形をしており、励磁コイル34が巻き回される胴部331と、胴部331の上端部の中央部分から上方に突出した上側中央突部332と、胴部331の下端部の中央部分から下方に突出した下側中央突部333を備えている。また、コア体33は、胴部331の上端部における上側中央突部332の両側から上方に突出した上側第1突部334および上側第2突部335と、胴部331の下端部における下側中央突部333の両側から下方に突出した下側第1突部336および下側第2突部337を備えている。
コア体33は、上方に突出する上側中央突部332、上側第1突部334、上側第2突部335の上端部と、下方に突出する下側第1突部336、下側第2突部337の下端部
を除き、コア体33の外周縁とセンサコア32の外周縁との間が熱硬化性樹脂からなる封止部33aとなっている。すなわち、センサコア32は、第1、第2保護板30、31の外周縁よりもわずかに内側の領域に配置されており、上方を向いた3本の突部の先端面である先端面332a、334a、335aと、下方を向いた両側の2本の突部の先端面である先端面336a、337aを除き、コア体33の外部にセンサコア32が露出しない構造となっている。先端面332a、334a、335aおよび先端面336a、337aには、センサコア32の露出部分32aが形成されている。
図8に示すように、センサコア32は、幅方向の中心を通る中心線Hを基準として左右対称な形状をしている。センサコア32を正面から見ると、上側中央突部322、上側第1突部324、上側第2突部325は上方に向けて互いに平行に、且つ、直線状に延びており、隣接する突部の間にはギャップG1、G2が形成されている。これら3本の突部のうち、両端に配置された上側第1突部324および上側第2突部325は同一形状である。上側第1突部324は、胴部321との接続部分から先端面324aまで同一の幅寸法になっている。また、上側第2突部325も同様に、胴部321との接続部分から先端面325aまで同一の幅寸法になっている。
上側中央突部322には、隣接する突部である上側第1突部324、上側第2突部325のそれぞれと対峙している幅方向の両側面322b、322cに段差部51が設けられている。段差部51は、上側中央突部322の先端部分の側端部を切り欠いた形状をしている。段差部51に対して先端側に延びている上側中央突部322の先端部分は、段差部51に対して胴部321の側にある根元部分52よりも幅(胴部321からの突出方向と直交する方向の寸法)が細いくびれ部53となっている。
上側中央突部322の側面322b、322cは、根元部分52の幅方向の両側面となっている下部側面部分52a、52bと、下部側面部分52a、52bの上端から上側中央突部322の幅方向内側へ上向きに湾曲しながら延びる段差面部分51a、51bと、段差面部分51a、51bの上端から先端面322aの両端位置まで上向きに直線状に延びている側面先端部分53a、53bを備えている。側面先端部分53a、53bはくびれ部53の幅方向の両側面であり、下部側面部分52a、52bに対して、上側中央突部322の幅方向の内側に後退した位置に設けられている。くびれ部53は、段差面部分51a、51bとの接続部から先端面322aまで同一の幅寸法となっている。段差面部分51a、51bは1/4円弧状をしており、突部先端側を向いている。下部側面部分52a、52bの各上端と段差面部分51a、51bの各端部との接続部分は、出隅状の角部54となっている。上側中央突部322の根元部分52は、胴部321との接続部から角部54まで同一の幅寸法となっている。
センサコア32の上部において、上側第1突部324と上側中央突部322との間に形成されたギャップG1、および、上側第2突部325と上側中央突部322との間に形成されたギャップG2の幅は、段差部51が設けられた位置を境にして変化している。すなわち、くびれ部53の部位(段差部51に対して先端側の位置)におけるギャップG1、G2の幅W1は、根元部分52(段差部に対して胴部321側の位置)におけるギャップG1、G2の幅W2よりも広くなっている。ギャップG1、G2は、段差面部分51a、51bの部分において、その幅がW1からW2に変化している。
センサコア32の下側中央突部323、下側第1突部326、下側第2突部327は下方に向けて互いに平行に、且つ、直線状に延びており、隣接する突部の間にはギャップG3、G4が形成されている。中央に配置された下側中央突部323は、幅方向の中央を中心線Hが通るように配置されており、胴部321との接続部分から先端面323aまで同一の幅寸法になっている。下側中央突部323の幅寸法は上側中央突部322の根元部分
52の幅寸法と一致している。
下側第1突部326および下側第2突部327には、隣接する突部である下側中央突部323の側を向いた側面326bおよび側面327bの各先端に段差部55が形成されている。段差部55は、側面326b、側面327bを階段状に切り欠いた形状をしている。下側第1突部326および下側第2突部327は、段差部55よりも先端側に延びている先端部56と、段差部55に対して胴部321の側にある根元部分57を備えており、先端部56の方が根元部分57よりも幅が細く形成されている。
下側第1突部326の側面326bは、胴部321の下端から下向きに直線状に延びる上部側面部分57aと、上部側面部分57aの下端から下側第1突部326の幅方向内側へ水平に延びている段差面部分55aと、段差面部分55aの端部から下向きに直線状に延びる側面先端部分56aを備えている。また、下側第2突部327の側面327bも同様に、胴部321の下端から下向きに直線状に延びる上部側面部分57bと、上部側面部分57bの下端から下側第2突部327の幅方向内側へ水平に延びている段差面部分55bと、段差面部分55bの端部から下向きに直線状に延びる側面先端部分56bを備えている。側面先端部分56a、56bは、上部側面部分57a、57bに対し、下側第1突部326、下側第2突部327の幅方向の内側に後退した位置に設けられており、段差面部分55a、55bは突部先端側を向いている。上部側面部分57a、57bの各下端と段差面部分55a、55bの各端部との接続部分は、出隅状の角部58となっている。
下側第1突部326および下側第2突部327の根元部分57は、胴部321との接続部分から段差面部分55a、55bの位置まで同一の幅寸法になっている。根元部分57は、上側第1突部324および上側第2突部325と同一の幅寸法に形成されている。また、下側第1突部326および下側第2突部327の先端部56は、段差面部分55a、55bの位置から先端面326a、327aまで同一の幅寸法になっている。
センサコア32の下部において、下側第1突部326と下側中央突部323との間に形成されたギャップG3、および、下側第2突部327と下側中央突部323との間に形成されたギャップG4の幅は、段差部55が設けられた位置を境にして変化している。すなわち、先端部56の部位(段差部55に対して先端側の位置)におけるギャップG3、G4の幅W3は、根元部分57(段差部55に対して胴部321側の位置)におけるギャップG3、G4の幅W4よりも広くなっている。なお、本例では、図8に示すように、下側中央突部323の長さが短く、先端部56に正対する位置まで下側中央突部323が延びていないため、先端部56から下側中央突部323の先端までの距離を先端部56の部位におけるギャップの幅W3としている。
媒体2の側に突出する上側中央突部332、上側第1突部334、上側第2突部335の各先端面332a、334a、335aは研削加工あるいは切断加工によって形成された加工面となっており、センサコア32における上側中央突部322、上側第1突部324、上側第2突部325の各先端面322a、324a、325aが各加工面に露出して、センサコア32の露出部分32aを形成している。また、媒体2とは逆の側に突出する下側第1突部336、下側第2突部337の各先端面336a、337aも同様に、研削加工あるいは切断加工によって形成された加工面であり、センサコア32における下側第1突部326、下側第2突部327の各先端面326a、327aが各加工面に露出している。先端面322a、324a、325aおよび先端面326a、327aは、センサコア基材であるアモルファス金属膜を第1、第2保護板30、31と共に切断加工あるいは研削加工することによって形成された切断加工面あるいは研削加工面である。
上側中央突部332、上側第1突部334、上側第2突部335の先端面332a、3
34a、335aは同一平面上に位置しており、先端面332a、334a、335aは磁気センサ素子13のセンサ面13aを構成している。上側中央突部332、上側第1突部334、上側第2突部335は、先端面332a、334a、335a(センサ面13a)と媒体2との距離が予め設定した寸法となる長さに加工されている。
また、下側第1突部336、下側第2突部337は、センサコア32が露出する長さに切断あるいは研削されており、下側第1突部336、下側第2突部337の先端面336a、337aは、この面に形成された露出部分32aを介してセンサコア32の接地を行うための磁気センサ素子13の接地面13bとなっている。なお、下側中央突部323は両隣の突部よりも短く形成されており、下側中央突部333の先端面333aにはセンサコア32が露出していない。
このような構成のコア体33を製造するには、第1、第2保護板30、31の一方に対して接着層を介して接合された磁性体層を形成した後、磁性体層を間に挟むようにして第1、第2保護板30、31の他方を接着層によって接合する。この際、多数のコア体33を効率良く製造するため、以下のような製造方法を用いることができる。すなわち、第1、第2保護板30、31として大型の基板を用い、一方の基板の表面に熱硬化性樹脂からなる接着シートを載置した後、その表面にアモルファス金属箔を重ねる。そして、この状態で熱を加えると共に加圧して接着シートを硬化させ、基板とアモルファス金属箔とを熱圧着する。続いて、センサコア32として残すべき領域にエッチングマスクを形成し、エッチングマスクの開口部を介してアモルファス金属箔をエッチングした後、エッチングマスクを除去することにより、センサコア32の形状に磁性体層をパターニングする。そして、もう一方の基板を貼り合わせ、単品サイズのコア形状に切断する。
図6に示すように、磁気センサ素子13の励磁コイル34は、コア体33の胴部331における上側中央突部332および下側中央突部333の両側であって、上側第1突部334および上側第2突部335の内側、且つ、下側第1突部336および下側第2突部337の内側の部位に、第1コイルボビン36を介してコイル線が巻き回されることによって構成されている。一方、検出コイル35は、上側第1突部332の先端部分に第2コイルボビン37を介してコイル線が巻き回されることによって構成されている。図7に示すように、検出コイル35は、センサコア32のくびれ部53の部分に巻き回されている。
図8において1点鎖線で示すように、励磁コイル34によって形成されるバイアス磁界は、センサコア32の胴部321および各突部322〜327によって構成される開磁路S1〜S4を通る磁束によって構成されている。すなわち、センサコア32の上部は、上側中央突部322、上側第1突部324、および胴部321からなるU字型の磁性体部分を通る開磁路S1と、上側中央突部322、上側第2突部325、および胴部321からなるU字型の磁性体部分を通る開磁路S2を構成している。また、センサコア32の下部は、下側中央突部323、下側第1突部326、および胴部321からなるU字型の磁性体部分を通る開磁路S3と、下側中央突部323、下側第2突部327、および胴部321からなるU字型の磁性体部分を通る開磁路S4を構成している。
ここで、開磁路S1、S2を構成している上側中央突部322の側面322b、322cには段差部51が設けられており、段差部51を境にして、隣接する突部間のギャップG1、G2の幅が寸法W1から寸法W2に拡大している。そして、段差部51が形成された側面322b、322cの部分には出隅形状の角部54が形成されている。このため、開磁路S1、S2においては、段差部51を形成しない場合と比較して、角部54および角部54よりも胴部321側の部分から漏れる磁束が多くなり、角部54および角部54よりも胴部321側の部分から上側第1突部324あるいは上側第2突部325の側にショートカットされる経路S1a、S2aを多くの磁束が通るようになると共に、上側中央
突部322の先端を通って上側第1突部324あるいは上側第2突部325の先端に飛ぶ経路S1b、S2bを通る磁束の比率が少なくなっている。
また、開磁路S3、S4を構成している下側第1突部326および下側第2突部327の側面326b、327bには段差部55が設けられており、段差部55を境にして、隣接する突部間のギャップG3、G4の幅が寸法W3から寸法W4に拡大している。そして、段差部51が形成された側面326b、327bの部分には出隅形状の角部58が形成されている。このため、開磁路S3、S4においても、段差部55を形成しない場合と比較して、角部58および角部58よりも胴部321側の部分から漏れる磁束が多くなり、角部58および角部58よりも胴部321側の部分から下側中央突部323の側にショートカットされる経路S3a、S4aを多くの磁束が通るようになると共に、下側第1突部326の先端および下側第2突部327の先端を通って下側中央突部323の先端に飛ぶ経路S3b、S4bを通る磁束の比率が少なくなっている。
ここで、図6に示すように、第1コイルボビン36における第2保護板31の側に位置している部位には、下方に延びる4本の端子ピン38が取り付けられている。各端子ピン38は第1コイルボビン36の上端から突出しており、その先端には励磁コイル34あるいは検出コイル35のコイル線が係止されている。また、4本の端子ピン38の中央の位置には、端子ピン38よりも寸法の短い係止ピン39が取り付けられている。係止ピン39の上端には励磁コイル34のコイル線が係止されている。
図4に示すように、各磁気センサ素子13は、センサ面13aを上に向けた状態で各装着孔23に上方から挿入されている。各磁気センサ素子13は、コア体33の厚さ方向が媒体搬送方向Xを向いた姿勢になっている。各磁気センサ素子13が装着孔23に挿入された状態では、コア体33の下側中央突部333、下側第1突部336、下側第2突部337の間に部分封鎖部28が挿入されて、装着孔23の下端開口23bから下側中央突部333、下側第1突部336、下側第2突部337および4本の端子ピン38が突出している。また、装着孔23の上端開口23aからは上側中央突部332、上側第1突部334、上側第2突部335が突出している。
図3、図4に示すように、フレーム20のフランジ部24の内側には、2枚の矩形の耐磨耗板19が挿入されている。これら2枚の耐磨耗板19は、媒体搬送方向Xに所定の隙間がある状態で、フレーム20の上端面21に載置されている。各耐磨耗板19はセラミックス等からなる一定厚さの部材であり、媒体搬送方向Xと直交する方向に一定幅で延びている。各耐磨耗板19の上端面19aはフランジ部24の上端面よりも上方に突出している。2枚の耐磨耗板19の間の隙間には磁気センサ素子13のコア体33の上側中央突部332、上側第1突部334、上側第2突部335の上端部分が挿入されている。上側中央突部332、上側第1突部334、上側第2突部335の各先端面332a、334a、335a(センサ面13a)は、各耐磨耗板19の上端面19aと同一平面上に位置している。各装着孔23には樹脂29が充填されており、この樹脂29によって、2枚の耐磨耗板19および各磁気センサ素子13がフレーム20に固定されている。
図3(a)、(b)に示すように、フレーム20の下端部分には、磁気センサ素子13のセンサコア32を接地するための導電部材41が取り付けられている。図9(a)は導電部材41の平面図であり、図9(b)はフレーム20に取り付けられた状態の導電部材41を媒体搬送方向Xから見た正面図であり、図9(c)は導電部材41をフレーム20の下端面22に取り付けた磁気センサ装置8を媒体搬送方向Xから見た状態を模式的に示す説明図であり、図9(d)は導電部材41をフレーム20の下端面22に取り付けた状態を模式的に示す説明図である。
導電部材41は金属製の1枚の薄板をエッチングして形成された板バネである。なお、導電性の樹脂等からなる導電部材41を用いることもできる。図4に示すように、導電部材41は、フレーム20の下端側から磁気センサ素子13のコア体33の下端部分に掛け渡されて各センサコア32に押し当てられている複数の掛け渡し部411と、フレーム20の下端面22に固定されている取り付け部412と、取り付け部412の媒体搬送方向Xと直交するY方向の両端部分に設けられており、フレーム20の下端面22から離れる方向に折れ曲がっている接触部413を備えている。
取り付け部412は、図9(a)、(d)に示すように、媒体搬送方向Xと直交する方向Yに延びて各掛け渡し部411のフレーム20の側の端部分を連続させている一定幅部分412aと、この一定幅部分412aの途中に複数設けられている一定幅部分412aよりも幅広の幅広部分412bを備えている。幅広部分412bのそれぞれには、フレーム20の係合突起27に係合可能な係合孔412cが形成されている。導電部材41は、図9(d)に示すように、係合突起27に係合孔412cを係合させ、係合突起27を熱により溶かして潰し、係合孔412cを塞ぐことによりフレーム20の下端面部分22aに取り付けられている。
導電部材41は、取り付け部412がフレーム20の下端面に固定されて、各掛け渡し部411がフレーム20とコア体33の下端部分との間に掛け渡されたとき、各掛け渡し部411の先端部分411aが下方に向かって弾性変形させられた状態になる。この結果、各掛け渡し部411の先端部分411aは、当該掛け渡し部411の弾性復帰力により、コア体33における下側第1突部336、下側第2突部337の先端部分に露出しているセンサコア32の露出部分32aに押し当てられた状態となる。これにより、複数の磁気センサ素子13のセンサコア32と導電部材41との電気的な接続状態が形成される。
ここで、磁気センサ装置8は、図2に示すように、第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7を搭載しているケース10に保持されて、磁気センサユニット5を構成する。図10(a)は磁気センサ装置8がケース10に保持された状態の説明図であり、図10(b)は、磁気センサ装置8がケース10に保持された状態の断面図である。図10(b)に示すように、ケース10は磁気センサ装置8を挿入することが可能な溝104を備えており、溝104に磁気センサ装置8が上方から挿入されると、フレーム20の下端面に固定されている導電部材41の接触部413が溝104の内周面104aに当接する。ケース10は磁気パターン検出装置1のフレームなどを介して接地されているため、ケース10および導電部材41を介して磁気センサ素子13のセンサコア32が接地されることになる。
(磁気センサ装置の製造方法)
次に、図3、図11を参照して、磁気センサ装置8の製造方法を説明する。図11(a)は磁気センサ装置の上端面を研削する前の磁気センサ装置8の正面図であり、図11(b)はその側面図である。
磁気センサ装置8を製造する際には、まず、フレーム20の各装着孔23に各磁気センサ素子13を挿入する。これにより、各磁気センサ素子13は各装着孔23の内周面部分23cに当接して、装着孔23の軸線L方向と直交する方向、すなわち、媒体搬送方向Xおよび媒体搬送方向Xと直交するY方向の位置決めがなされる。この結果、磁気センサ素子13相互の位置が正確に規定される。
次に、装着孔23に挿入された複数の磁気センサ素子13を一つの治具(不図示)によって下側から支持し、フレーム20の下端に設けられている研削基準面26を基準として、各磁気センサ素子13を各装着孔23の軸線Lの方向で位置決めする。これにより、コ
ア体33における上側中央突部332、上側第1突部334、上側第2突部335の上端部分が、各装着孔23の上端開口23a、すなわち、フレーム20の上端面21から、耐磨耗板19の厚さ寸法以上に上方に突出した状態とする。
その後、フレーム20のフランジ部24の内側に2枚の矩形の耐磨耗板19を媒体搬送方向Xに所定の隙間を開けた状態で挿入し、フレーム20の上端面21に載置する。そして、2枚の耐磨耗板19の隙間を介して各装着孔23内に樹脂29を充填し、これにより、各磁気センサ素子13と各耐磨耗板19をフレーム20に固定する。ここで、樹脂29は、図11(b)に示すように、フレーム20のフランジ部24よりも上方に突出するまで充填される。
続いて、フレーム20の研削基準面26を基準として、コア体33の上側中央突部332の先端面332a、上側第1突部334の先端面334a、上側第2突部335の先端面335a、2枚の耐磨耗板19の上端面19aおよび2枚の耐磨耗板19の間に突出している樹脂29を予め設定した基準面Bまで平面研削する。この平面研削によって、これらコア体33の上側中央突部332の先端面332a(センサ面13a)、上側第1突部334の先端面334a、上側第2突部335の先端面335a、2枚の耐磨耗板19の上端面19aおよび樹脂29の上面が同一平面上に位置するようになる。
次に、フレーム20の下端面22に導電部材41を取り付けて、導電部材41の掛け渡し部411をセンサコア32の露出部分32aに当接させる。コア体33は、予め、下側第1突部336、下側第2突部337の先端にセンサコア32の露出部分32aが形成されるように、下側中央突部333、下側第1突部336、下側第2突部337の先端部分が切断加工あるいは研削加工されている。
その後、磁気センサ装置8をケース10の溝104の内側に挿入し、導電部材41の接触部413と溝104の内周面104aとを接触させる。しかる後に、ケース10を設置させることにより、磁気センサ素子13のセンサコア32を接地する。
(磁気パターン検出装置の磁気パターン検出動作)
次に、図1および図12を参照して、磁気パターン検出装置1の磁気パターン検出動作を説明する。図12(a)は磁気センサ素子13の励磁波形であり、図12(b)は磁気センサ素子13からの検出波形である。図1に示すように、磁気パターン検出装置1において、媒体2が媒体搬送経路3を第1方向X1或いは第2方向X2に搬送されると、媒体2は磁気読み取り位置Aに至る前に第1着磁用マグネット6或いは第2着磁用マグネット7により着磁される。そして、着磁された媒体2は磁気センサ装置8による磁気読み取り位置Aを通過する。
磁気センサ装置8では、図12(a)に示すように、励磁コイル34に交番電流が定電流で印加されており、コア体33の周りには、図8において1点鎖線で示すバイアス磁界が形成されている。媒体2が磁気読み取り位置Aを搬送されると、検出コイル35からは、図12(b)に示す検出波形の信号が出力される。検出波形は、バイアス磁界および時間に対する微分的な信号となる。
ここで、磁気センサ素子13からの検出波形の形状、ピーク値およびボトム値は、磁気パターンの形成に用いられている磁気インキの種類、磁気パターンの位置、および、形成されている磁気パターンの濃淡によって変化する。従って、かかる検出波形を、予め記憶保持しているリファレンス波形と照合することにより、媒体2の真偽判定および媒体2の種類の判別を行うことができる。
(作用効果)
本例のセンサコア形状によれば、励磁コイル34によるバイアス磁界は、上述したように、段差部51、55を設けておらず、根元から先端まで同一の幅をしている従来のセンサコア形状を採用した場合と比較して、センサコア32の胴部321に近い部分でショートカットされる磁束が多くなっている。この結果、胴部321に近い部分の磁束密度が高く、胴部321から離れた部分における磁束密度が低くなっている。
このように、胴部321から離れた部分における磁束密度が低い本例のセンサコア形状は、胴部321から離れたセンサコア32の先端部分の磁気回路への寄与が少ない形状である。ここで、センサコア32は、フレーム20の研削基準面26を基準にして設定された基準面Bにセンサ面13aを一致させてセンサ面13aと媒体2との距離を正確に設定するため、上側中央突部332、上側第1突部334、上側第2突部335の各先端を基準面Bと同一平面上になるように切断あるいは研削している。このとき、加工バラツキ等によって加工寸法が変動し、その結果、各突部の長さLaが変動する。しかしながら、加工バラツキによって寸法Laが変動したとしても、磁束密度の低い領域に位置しているくびれ部53の範囲で寸法が変動する程度である。従って、磁気回路に及ぼす影響は小さい。
また、センサコア32に接地用の露出部分32aを形成するため、下側第1突部336、下側第2突部337の先端が切断あるいは研削され、このとき、加工寸法にバラツキが生じる。しかしながら、この場合においても、加工バラツキによる下側第1突部336および下側第2突部337の切断位置の変動は、段差部55を形成したことによって幅が細くなった先端部56の範囲で変動する程度であり、磁束密度の低い領域での変動にすぎない程度である。従って、下側第1突部326および下側第2突部327の加工バラツキが磁気回路に及ぼす影響は小さい。
このように、本例では、センサコア32およびこれを内蔵するコア体33の加工バラツキによる磁気回路への影響が小さくなっており、加工バラツキに起因するセンサ感度や電流効率などのバラツキが少ない構成となっている。本例の磁気センサ素子13は、このようなセンサコア形状を採用したことにより、高感度化を図ることができる構成でありながら、センサコア32およびこれを内蔵するコア体33の加工バラツキに起因する磁気センサ素子13の特性バラツキが低減されている。
また、本例では、センサコア32の接地側の端部において、下側中央突部323の長さLb1を短くし、センサコア32の露出部分32aが形成される下側第1突部326、下側第2突部327の長さLb2を長くしている。このようにすると、接地面13bを形成するための加工を行ったとしても、下側中央突部323の長さLb1は変化しないため、磁気回路に対するセンサコア32の加工バラツキの影響をより少なくすることができる。
更に、本例では、センサコア32の媒体2側の端部において、3本の突部のうち、中央の突部である上側中央突部322の幅方向の両側面に段差部51が形成され、上側第1突部324および上側第2突部325は、上側中央突部322を挟んで対称に形成されている。上側中央突部322は、開磁路S1、S2の両方を構成しているため、両方の磁路を通る磁束に影響を与えており、磁気回路への影響が大きい部位となっている。従って、この部分に段差部51を形成してその幅を細くすることによって先端に回る磁束を効果的に少なくすることができ、より多くの磁束を胴部321に近い部分に集中させることができる。よって、磁気回路に対する上側中央突部322の先端の加工バラツキの影響をより少なくすることができる。加えて、センサコア32の幅方向(図8の左右方向)における磁束分布が対称になっており、この対称性を崩すことなく磁束を胴部321の側に集中させることができる。よって、磁気センサ素子13の特性バラツキをより小さくすることがで
きる。
また、本例では、励磁コイル34の近傍に磁束を集中させたことにより、センサコア32の媒体2側の先端に構成した検出コイル35にセンシングに関係のない無駄な磁界を入れないようにすることができる。よって、更に高感度化を図ることができる。そして、励磁コイル34の近傍で磁束をショートカットさせることによって磁気抵抗の少ない磁気回路を構成できるため、電流効率を向上させることができる。よって、磁気センサ装置8の小型化および省電力化を図ることが可能である。
(他の実施形態)
(1)上記実施形態は、センサコア32の媒体2の側に延びる突部(上側中央突部322)と、媒体2とは逆の側に延びる突部(下側第1突部326、下側第2突部327)の両方に段差部51、55を設けて、センサコア32の両端において磁束を胴部321の側に集中させるものであったが、図13(a)に示すように、媒体2の側に延びる突部(上側中央突部322)にのみ段差部51を形成してもよい。あるいは、図13(b)に示すように、媒体2とは逆の側に延びる突部(下側第1突部326、下側第2突部327)にのみ段差部55を形成してもよい。図13(b)に示す形態は、本発明の参考例である。
(2)上記実施形態では、センサコア32における媒体2の側に延びる突部のうち、中央に配置された突部(上側中央突部322)の幅方向の両側面322b、322cに段差部51を形成しているが、図13(c)に示すように、側面322b、322cと対峙している上側第1突部324の側面324bあるいは上側第2突部325の側面325bに段差部51を形成しても良い。このような構成においても、上側中央突部322と上側第1突部324との間に形成されたギャップG1、および、上側第2突部325と上側中央突部322との間に形成されたギャップG2の幅が先端側で広く、根元側で狭くなるため、胴部321に近い部分で磁束をショートカットさせることができる。
ここで、図13(d)に示すように、ギャップG1、G2を挟んで対向している2つの側面(すなわち、側面322bおよび側面324b、あるいは、側面322cおよび側面325b)の両方に段差部51を形成することがより好ましい。このようにすると、一方の側面のみに段差部51を形成した場合と比較して、ギャップG1、G2における先端側の幅W1と根元側の幅W2との寸法差がより大きい。よって、胴部321に近い部分でショートカットされる磁束の比率を更に多くすることができる。また、センサコア32における媒体2とは逆の側に延びる突部においても同様に、段差部55を形成する位置を適宜変更することができる。
(3)上記実施形態のセンサコア32は、媒体2の側およびその逆の側に各3本の突部が設けられた構成であったが、本発明は、突部の本数が2本以下あるいは4本以上のセンサコアにも適用可能である。図14に、突部の本数が異なるセンサコア形状を示す。図14(a)のセンサコア60Aは、胴部61と、胴部61から上下方向に各1本ずつ突出する突部62、63を備えており、突部62、63の幅方向の両側面に段差部64が形成されている。この場合、段差部64からセンサコア外部に漏れた磁束がセンサコア60Aへ戻るための経路S5aが、突部62、63の先端からセンサコア外部に漏れた磁束がセンサコア60Aへ戻るための経路S5bよりも短い。従って、段差部64においてショートカットされる経路S5aを通る磁束の比率を多くすることができる。
また、図14(b)のセンサコア60Bは、胴部61から上方向に2本の突部65を突出させ、下方向に2本の突部66を突出させて、突部65、66における対向する各側面に段差部64が形成されている。この形状は、2本の突部65、66間のギャップG5、G6の幅が段差部64に対して先端側では広く、根元側では狭い。その結果、段差部64
においてショートカットされる経路S6aを通る磁束の比率が多く、突部先端から隣接する突部先端に向かう経路S6bを通る磁束の比率が少ない。2本以上の突部を設けたセンサコアにおいては、隣接する突部に対して図14(b)の構成を適用することにより、突部の先端を通る磁束の比率を少なくすることができる。
図14(a)(b)のコア形状はいずれも、胴部および突部によって構成される開磁路を構成しており、段差部64においてショートカットされる経路を通る磁束の比率が多い。従って、胴部61から離れた位置における磁束密度が小さく、突部の先端形状の磁気回路への影響が小さくなっている。よって、突部の先端部分の加工バラツキに起因するセンサ特性のバラツキを低減させることができる。
(4)上記実施形態のセンサコア32は、薄板状の金属箔からなるセンサコアであったが、本発明は、厚みのあるブロック状のセンサコアにも適用できる。図15にこの種のセンサコア形状を示す。図15(a)のセンサコア60C(コア体)は、センサコア32と同一の平面形状で、且つ、所定の厚みを持つ磁性体である。上向きに延びる中央の突部67は厚みのある角柱状となっており、突部67の幅方向の側面67a、67bに段差部68が形成されている。また、下向きに延びる両側の突部69、70の側面69a、70aに段差部71が形成されている。突部67の先端面はセンサ面となっており、突部69、70の先端面は接地面となっている。このようにすると、上記実施形態と同様に、突部のサ先端における磁束密度を小さくすることができる。
図15(b)は、厚みのあるセンサコア形状の他の例である。このセンサコア60Dは、上向きに延びる突部67の前面67cおよび後面67dに、磁性体をその厚み方向に切り欠いた形状の段差部72が形成されている。また、下向きに延びる突部69、70の前面69b、70bおよび後面69c、70cにも、磁性体を厚み方向に切り欠いた形状の段差部73が形成されている。このような形状では、上記実施形態と同様に、段差部72、73が形成された各突部の先端に回る磁束を少なくして磁束密度を小さくすることができる。よって、突部先端の加工バラツキに起因するセンサ特性のバラツキを低減させることができる。