JP6116445B2 - 品質異常の原因推定支援システム - Google Patents
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Description
このような品質不良または品質異常が発生した場合、再発を防止するために、製造データセット(たとえば、圧延中の温度、通材速度、冷却水量等の項目について製造中に測定した値であって数百項目からなる製造データ項目)から、品質異常の原因を調査して突き止める対策を実施する必要がある。
(1)通常と異なる値を示す製造データ項目(特異性)
(2)その項目の値の違いが品質試験成績に及ぼす相関関係(共通性)
の観点での判断が必要となる。
これらのいずれの判断も、調査の際に用いる製造データセットに依存する。たとえば、直近1年分の製造データセットを用いた場合と、直近1ヶ月分の製造データセットを用いた場合とでは、その間に製造方法を変更したなどの変化があった場合、判断が異なってくる(原因が異なってくる)可能性がある。また、製造データ項目は数値情報および文字情報を合わせて数百項目にのぼり、(1)で評価しなければならない項目は多い。さらに、常に同じ一つの原因で品質不良が発生するわけではなく、(2)において明確な相関関係(製造条件が関与する品質異常の傾向)が見られない場合も多く、判断が困難となっている。
そこで、判断に用いるべき製造データセットの抽出支援も含む、製造データに基づく、品質異常の原因推定作業を支援するためのシステムが望まれていた。このようなシステムに関係する一般的な技術が、以下の文献に開示されている。
例えば、特許文献1に開示された製造条件計算方法は、製造データと製品の品質との関係を明らかにし、目標とする品質を実現するための適切な製造条件を求めることができる。しかしながら、同じ製造条件の元で製造された製品の製造データを用いて、主成分分析を利用して品質と製造条件との関係を導出している。品質と製造条件との関係を評価するにあたり、数値データ以外が扱えず、また、対象とするデータセットも、同じ製造条件の元で製造された製品との記述のみで、その選択方法などは示されておらず、品質異常の原因を推定する作業を十分に支援できるとはいえない。
本発明に係る品質異常の原因推定支援システムは、品質検査工程を含む複数の工程から構成される製造ラインにおいて製造された製造物の品質異常の原因を推定する作業をオペレータが行うに際し、前記推定作業を支援する支援システムであって、前記支援システムは、オペレータが確認可能な表示器を有し、前記表示器には、品質評価の指標と製造工程における第1の条件との相関関係が表示され、表示された相関関係に基づいて表示器上でオペレータが指定した範囲の品質評価の指標と、前記第1の条件とは異なる第2の条件との相関関係が自動的に表示され、前記第1の条件及び第2の条件は、製造工程における温度で表される数値情報、圧力で表される数値情報、水量で表される数値情報、又は複数の装置で構成された工程において1の装置を特定する文字情報であり、前記第1の条件が前記数値情報又は文字情報のうちのいずれか一つであり、第2条件が前記第1の条件とは異なるいずれか一つであり、前記第1の条件又は第2の条件が前記数値情報である場合、前記数値情報及び/又は該数値情報に関連する他の数値情報の時系列変化が表示可能なように構成されていることを特徴とする。
さらに好ましくは、前記表示器には、当該表示器上においてオペレータが品質評価指標の範囲を指定しなくなるまで、品質評価の指標と異なる条件との相関関係が繰り返し表示されるように構成することができる。
好ましくは、前記第1の条件及び第2の条件は、製造工程における温度で表される数値情報、圧力で表される数値情報、水量で表される数値情報、又は複数の装置で構成された工程において1の装置を特定する文字情報であり、前記第1の条件又は第2の条件が前記数値情報である場合、前記表示器に、前記数値情報及び/又は該数値情報に関連する他の数値情報とに基づいた前記品質異常に関する多変量での評価を表示可能なように構成されていることを特徴とする。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態による支援システム10Aおよびその支援システム10Aが設けられた熱間圧延ライン1を示す模式図である。
以下において、この支援システム10Aについて詳しく説明するが、まず、この支援システム10Aの適用対象となる加熱炉2とそれに続く熱間圧延ライン1の構成について説明する。
図1には、加熱炉2および冷却帯7を含む熱間圧延ライン1の一部が模式的に示されている。
熱間圧延ライン1は、圧延材Wを加熱する加熱炉2と、加熱された圧延材Wを圧延する複数の粗圧延機3及び仕上圧延機4と、圧延作業が完了した鋼板を冷却する冷却帯7と、冷却された鋼板をコイル状に巻き取るコイラ5を備えている。さらに、熱間圧延ライン1において製造された鋼板の品質を測定するために、複数の測定器9が設けられている。
<支援システム>
本実施形態に係る支援システム10Aの詳細について説明する。
このように構成された支援システム10Aのコンピュータ12においてプログラムが実行されて、品質異常の相関関係(共通性、規則性)が見つかる製造データセットを抽出する作業を支援する。より具体的には、品質評価(試験成績)の良かった製品の製造データおよび悪かった製品の製造データを対象に、品質評価と製造データとの間に見られる相関関係を抽出して、オペレータMに支援モニタ11を介して提示する。このような支援システム10Aによると、品質の悪かった原因を発見することを支援することができ、的確な対策を迅速に実施することができるようになる。
このコンピュータ12は、内部に演算装置を備えると共にプログラムを記憶する記憶装置(メモリ等)を備えていて、コンピュータ12に対する指示および/または外部からの信号を取り込むための入力装置および/または演算結果を表示する出力装置(ここでは支援モニタ11を備えている。
以下において、支援システム10Aのコンピュータ12において実行されるプログラムにより、品質異常の原因を推定する作業を支援する手順について説明する。この手順は、フローチャートを図示していないが、コンピュータ12により実行されるプログラムのフローチャートに対応する。
まず、測定器9において品質異常の圧延鋼板を検出すると、支援モニタ11に図2の画面が自動的に表示される。なお、ここでは、品質項目を強度とした例を示すために、品質評価の指標は強度の数値となる。また、良品指標をしきい値A以下と定められている。このようにしておくと、測定器9でしきい値Aよりも高い強度が検出された圧延鋼板について、製造IDおよび鋼種等とともに、支援モニタ11に品質異常が発生した情報が図2に示すように自動的に表示させることができる。この図2に示す画面は、自動的ではなく、オペレータMがコンピュータ12の入力装置(キーボードやマウス)を用いて画面を呼び出すこともできる。
全ての選択が終わると、オペレータMは画面上に表示された選択ボタンをクリック等する。これを検出したコンピュータ12は、次の処理に移行する。
<<第2のステップ>>品質異常の範囲の選択処理
上述のように選択されると、選択された内容に従って、解析対象製品の品質良好範囲(以下単に品良と記載する場合がある)および品質不良範囲(以下単に品悪と記載する場合がある)をオペレータMが指定する。このとき、図3に示すように、品質項目A(強度)の評価の分布(ヒストグラム)が表示される。これは、オペレータMにより選択された内容に従って、コンピュータ12が製造実績データベース13から過去の製造実績を読み出して分布が分かるように表示している。
選択された製品IDおよび品質項目、類似キー等の製造実績データを製造実績データベース13から抽出して、熱間圧延工程における製造条件と上述のように選択した品良範囲および品悪範囲との情報を支援モニタ11に表示する。この製造条件の抽出には、たとえば、確率をベースとした決定木学習等の手法が用いられる。なお、この決定木学習は、公知であるので、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
また、このように相関関係が繰り返し表示される場合において、品質異常(品悪)との強い相関関係が認められない製造条件であった場合には、オペレータMが品質評価の指標の範囲を再指定することができる。すなわち、図4(A)のように範囲を指定することができないとオペレータMが判断した場合には、1つ前の製造条件と品質項目の指標との相関関係を示す画面に戻って、オペレータMにより品質評価の指標の範囲を再指定させて、決定木学習の手法を用いて別の製造条件を抽出する。
<支援システムの作動態様>
以上述べた支援システム10Aを用いて、品質異常の原因を推定する手法について、以下述べる。
品質異常が発生すると(すなわち、測定器9でしきい値Aよりも高い強度が検出されると)、製造IDおよび鋼種等とともに支援モニタ11に品質異常が発生した情報が図2の上段に示すように表示される。
このようにオペレータMが操作すると、図5(A)に示す図が支援モニタ11の画面に表示される。なお、この図5(A)は図4(A)と同じである。
図5(D)において、オペレータMは、原因はAA時間であると判断する。このため、オペレータMはさらにデータを選択しないで、コンピュータ12により示されたAA時間が今回の解析対象の圧延鋼板の品質不良の原因であるか否かを最終的に判断する。そして、AA時間に関連する製造設備等が調整される。
[第2実施形態]
図4及び図6〜図8を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態による支援システム10Bは、第3のステップにおいて数値情報が抽出された場合の動作に特徴がある。第3のステップにおいて図6に示す数値情報(数値項目)が抽出された場合を例として、支援システム10Bの動作を説明する。
図6に示す支援モニタ11の表示画面内で時系列選択ボタン20が選択(押下)されると、コンピュータ12は、支援モニタ11に表示する画面を図6に示す表示から図7に示す表示に切り換える。図7は、第1実施形態で既に説明した決定木学習法によって抽出された製造条件であって、A1水量に関連する製造条件であるA2水量、A3水量、A4水量、B1水量、B2水量など製造条件の具体的な項目名が表示された画面を示す図である。
以上述べたように、本実施形態の支援システム10Bは、第3のステップにおいて熱間圧延工程における製造条件として数値情報(数値項目)が抽出された場合、表示器である表示モニタ11に、数値情報(例えば、上述のA1水量)の時系列変化を表示可能なように構成されており、また、数値情報(例えば、上述のA1水量)に関連する他の数値情報(例えば、上述のA4水量)の時系列変化も表示可能なように構成されている。さらに、支援システム10Bは、上述の時系列変化の表示に加えて、品質異常に関する評価(例えば、上述の試験合格率)を、表示モニタ11に表示可能なように構成されている。
[第3実施形態]
図4及び図9〜図11を参照し、本発明の第3実施形態について説明する。
第3のステップにおいて図9に示す数値情報(数値項目)が抽出された場合を例として、支援システム10Cの動作を説明する。
オペレータMは、上述の主成分分析によってA1水量とA4水量の間に関連性や合理性を見いだすことができなかった場合、支援モニタ11の表示を図10の画面に戻して項目の選択をやり直して、異なる項目に基づく主成分分析の結果を図11に示すように支援モニタ11に表示させる。なお、図10の画面で選択する項目の数は、2つに限らず3つ以上の項目を選択してもよい。このように、試験合格率の低下、例えば圧延鋼板の品質不良の原因が冷却帯7にあることを突き止めたオペレータMは、冷却帯7の該当する冷却ノズルの水量を適切に調整することができる。
本実施形態における多変量解析として、例えば主成分分析、因子分析、クラスタ分析などが知られているが、解析の手法はこれらに限らず適宜ふさわしい解析手法を用いることができる。
例えば、オペレータMに各種情報を提示する表示器として、視覚に訴える支援モニタ11を例示したが、オペレータMに対し音声で情報を伝える機器を採用しても構わない。
2 加熱炉
3 粗圧延機
4 仕上圧延機
5 コイラ
7 冷却帯
8 制御器
9 測定器
10A 支援システム
11 支援モニタ(表示器)
12 上位コンピュータ(コンピュータ)
13 製造実績データベース
20 時系列選択ボタン
21,31 決定ボタン
30 多変量解析項目選択ボタン
M オペレータ
Claims (6)
- 品質検査工程を含む複数の工程から構成される製造ラインにおいて製造された製造物の品質異常の原因を推定する作業をオペレータが行うに際し、前記推定作業を支援する支援システムであって、
前記支援システムは、オペレータが確認可能な表示器を有し、
前記表示器には、品質評価の指標と製造工程における第1の条件との相関関係が表示され、
表示された相関関係に基づいて表示器上でオペレータが指定した範囲の品質評価の指標と、前記第1の条件とは異なる第2の条件との相関関係が自動的に表示され、
前記第1の条件及び第2の条件は、製造工程における温度で表される数値情報、圧力で表される数値情報、水量で表される数値情報、又は複数の装置で構成された工程において1の装置を特定する文字情報であり、前記第1の条件が前記数値情報又は文字情報のうちのいずれか一つであり、第2条件が前記第1の条件とは異なるいずれか一つであり、
前記第1の条件又は第2の条件が前記数値情報である場合、前記数値情報及び/又は該数値情報に関連する他の数値情報の時系列変化が表示可能なように構成されていることを特徴とする品質異常の原因推定支援システム。 - 前記製造工程における複数の条件に対して決定木学習を適用することで、前記第2の条件が選定されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の品質異常の原因推定支援システム。
- 前記表示器には、当該表示器上においてオペレータが品質評価指標の範囲を指定しなくなるまで、品質評価の指標と異なる条件との相関関係が繰り返し表示されるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の品質異常の原因推定支援システム。
- 前記表示器には、前記相関関係が繰り返し表示される場合において、品質異常との強い相関関係が認められない条件であった場合には、オペレータが品質評価の指標の範囲を再指定することができる態様で表示されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の品質異常の原因推定支援システム。
- 前記時系列変化の表示に加えて、前記品質異常に関する評価を、前記表示器に表示可能なように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の品質異常の原因推定支援システム。
- 前記第1の条件及び第2の条件は、製造工程における温度で表される数値情報、圧力で表される数値情報、水量で表される数値情報、又は複数の装置で構成された工程において1の装置を特定する文字情報であり、
前記第1の条件又は第2の条件が前記数値情報である場合、前記表示器に、前記数値情報及び/又は該数値情報に関連する他の数値情報とに基づいた前記品質異常に関する多変量での評価を表示可能なように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の品質異常の原因推定支援システム。
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