JP6115586B2 - 自動車用カバーの整流構造 - Google Patents

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Description

この発明は、車両の進行方向に沿う車体の床面または側面または上面に繊維質を含むカバー部材が設けられたような自動車用カバーの整流構造に関する。
一般に自動車用カバーの整流構造としては、車体の床面を下方から覆うアンダカバーが知られている。
上述のアンダカバーによる整流構造としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
すなわち、フロアパネルの下面側を覆う略平面状のアンダカバーを設け、このアンダカバーの後端に走行風の剥離部を形成したものである。
この特許文献1に開示された従来構造において、アンダカバーの後部に雪や泥等の侵入を防止する目的で、後部縦壁を形成すると共に、該アンダカバーを、繊維質を含む素材、例えば、不織布や繊維強化プラスチックで構成する場合、斯る素材では鋭利な剥離部を形成することができないので、走行風を適切に剥離することができないという問題点がある。
また、特許文献2には、ポリアミド樹脂製のアンダカバーにおいて、前高後低状に緩傾斜する案内面と、この案内面の後部に設けられて前低後高状に緩傾斜する傾斜面部とから成る突出部を形成し、この傾斜面部に走行風剥離用の開口部(剥離部)を形成したものが開示されている。
しかしながら、この特許文献2に開示された従来構造においては、傾斜面部の傾斜角度が緩やかなため、上記開口部の前縁がアンダカバー後端に対して車両前方へ大きく離間し、適切な位置に剥離点を形成することが困難で、剥離点で剥離された走行風の再付着や、走行風が車両後方のリヤサスペンション装置に当って、乱流が発生するという問題点があった。
特許第4556559号公報 特許第4808066号公報
そこで、この発明は、鋭利な断面形状を形成することが困難な素材を用いて、容易にカバー部材の整流面後端に開口部を打抜き形成して、剥離部を形成することができ、カバー部材の適切な位置に走行風の剥離部を形成することができる自動車用カバーの整流構造の提供を目的とする。
この発明による自動車用カバーの整流構造は、車体の床面または側面または上面に繊維質を含むカバー部材が設けられた自動車用カバーの整流構造であって、上記カバー部材には走行風を整流する整流面と、該整流面の後端から車両上方または車幅方向内方に延びる後部縦壁とが設けられ、上記整流面の後端部に、該整流面から上記後部縦壁側に一段窪んだ棚部が形成され、上記整流面から上記棚部にかけて形成された開口部により走行風の剥離部が形成されたものである。
上述の繊維質を含むカバー部材の素材としては、不織布や繊維強化プラスチックを用いてもよい。
上記構成によれば、上述の開口部が整流面から棚部にかけて形成されるので、鋭利な断面形状を形成することが困難な繊維質を含む素材を用いて、容易にカバー部材の整流面後端に開口部を打抜き形成して、剥離部を形成することができ、カバー部材の適切な位置に走行風の剥離部を形成することができる。
この発明の一実施態様においては、上記剥離部は、上記開口部前端の剥離点と、該剥離点より車両前側においてその後端が上記整流面から突出するよう傾斜した前側ガイド面とを備えたものである。
上記構成によれば、上述の前側ガイド面により走行風の剥離領域の拡大を図ることができる。
この発明の一実施態様においては、上記カバー部材は車体の床面を下方から覆うアンダカバーであり、上記開口部は車幅方向に一直線状に並んで複数形成されており、複数の開口部間には柱状部が形成され、該柱状部の中央は厚肉で傾斜構造に形成されると共に、該柱状部の端部は断面クランク形状に形成されたものである。
上記構成によれば、柱状部の端部が断面クランク形状に形成されるので、繊維質を含む素材であっても成形性を確保することができるものである。
また、上記柱状部の中央が厚肉かつ傾斜構造であるため、アンダカバーの強度、特に、耐雪強度(車両後進時に地面に詰まった雪とアンダカバーとが干渉した際にカバー形状を保つ強度)の向上を図ることができ、さらに、傾斜構造によりアンダカバーを雪に乗上げるように逸らして、該アンダカバーを上方へ変位させて開口部から雪が侵入することを抑制するガイド機能を確保することができる。
この発明の一実施態様においては、上記カバー部材はその主要部が不織布または織布または所定方向に揃えられた繊維の層で構成されたものである。
上記構成によれば、コーナ部の成形性が悪い素材(不織布等)を有効活用し、素材の特質である軽量で、吸音性に優れ、かつ割れに強い点を活かしつつ、走行風の整流性を確保することができる。
この発明によれば、鋭利な断面形状を形成することが困難な素材を用いて、容易にカバー部材の整流面後端に開口部を打抜き形成して、剥離部を形成することができ、カバー部材の適切な位置に走行風の剥離部を形成することができる効果がある。
本発明の自動車用カバーの整流構造を備えた車両の底面図 左右のアンダカバーの底面図 左右のアンダカバーをその底面側から見た状態で示す斜視図 図1のA−A線矢視断面図 図1のB−B線矢視断面図 図1のC−C線矢視断面図 図1のD−D線矢視断面図 図1のE−E線矢視断面図 図1のG−G線に沿う要部の矢視断面図 図9の要部拡大図 図1のH−H線に沿う要部の矢視断面図 図1のI−I線に沿う要部の矢視断面図 左側のアンダカバーにおける後部の構造を示す斜視図 図13のJ−J線矢視断面図
鋭利な断面形状を形成することが困難な素材を用いて、容易にカバー部材の整流面後端に開口部を打抜き形成して、剥離部を形成することができ、カバー部材の適切な位置に走行風の剥離部を形成するという目的を、車体の床面または側面または上面に繊維質を含むカバー部材が設けられた自動車用カバーの整流構造において、上記カバー部材には走行風を整流する整流面と、該整流面の後端から車両上方または車幅方向内方に延びる後部縦壁とが設けられ、上記整流面の後端部に、該整流面から上記後部縦壁側に一段窪んだ棚部が形成され、上記整流面から上記棚部にかけて形成された開口部により走行風の剥離部が形成されるという構成にて実現した。
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は自動車用カバーの整流構造を示し、図1は当該整流構造を備えた車両の底面図、図2は左右のアンダカバーの底面図、図3は左右のアンダカバーをその底面側から見た状態で示す斜視図、図4は図1のA−A線矢視断面図、図5は図1のB−B線矢視断面図、図6は図1のC−C線矢視断面図、図7は図1のD−D線矢視断面図、図8は図1のE−E線矢視断面図、図9は図1のG−G線に沿う要部の矢視断面図である。
自動車用カバーの整流構造の詳細な説明に先立って、まず、図4〜図9を参照して車体構造について説明する。
図4〜図9に示すように、車室の床面を形成するフロアパネル1を設け、このフロアパネル1の車幅方向中央には車室側へ突出して車両の前後方向に延びるトンネル部2を取付けている。
図4,図5に示すように、該トンネル部2の下部左右には前後方向に延びるトンネルメンバ3(下部トンネルメンバ)が一体形成されており、このトンネル部2をフロアパネル1に取付けた時、フロアパネル1とトンネルメンバ3との間には、車両の前後方向に延びる閉断面4が形成される。
また、図4に示すように、上述のトンネル部2の上部にはトンネルメンバ5(上部トンネルメンバ)が設けられており、トンネル部2の上側コーナ部とトンネルメンバ5との間には、車両の前後方向に延びる閉断面6が形成されている。
さらに、図4,図6,図7,図8に示すように、上述のフロアパネル1の車幅方向左右両端部には、サイドシル7が設けられている。このサイドシル7はサイドシルアウタ8とサイドシルインナ9とを接合固定して車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面10を有する車体強度部材であって、サイドシルアウタ8の下部にはサイドシルカバー11を設けると共に、該サイドシルカバー11の車幅方向外側下部にはモール部材12が取付けられている。
図4に示すように、トンネル部2とサイドシル7(詳しくは、サイドシルインナ9)との車幅方向中間部におけるフロアパネル1上面には、車両前後方向に延びるフロアフレームアッパ13が接合固定されており、このフロアフレームアッパ13とフロアパネル1との間には閉断面14が形成されている。
上述のフロアフレームアッパ13と上下方向に対向するように、フロアパネル1の下面には、車両の前後方向に延びるフロアフレームロア15が接合固定されており、このフロアフレーム15とフロアパネル1との間には閉断面16が形成されている。
なお、図5において、17はボディアウタパネル、18はセンタピラーインナであり、これら両者によりセンタピラー19が形成されている。
図9に示すように、フロアパネル1の後部には、キックアップ部20を介してリヤフロア21(フロアパネルの一部)を連設しており、上述のキックアップ部20の背面とリヤフロア21の前部下面との間には、車幅方向に延びるクロスメンバ22(いわゆるNo.3クロスメンバ)を取付け、キックアップ部20およびリヤフロア21と、クロスメンバ22との間には、車幅方向に延びる閉断面23を形成している。
図9に示すように、上述のクロスメンバ22から車両後方に離間した位置のリヤフロア21の上下には、リヤクロスメンバアッパ24とリヤクロスメンバロア25とを上下対向位置に取付けている。
図10は図9の要部拡大図で、リヤクロスメンバアッパ24とリヤフロア21との間には、車幅方向に延びる閉断面26を形成し、同様に、リヤクロスメンバロア25とリヤフロア21との間にも、車幅方向に延びる閉断面27を形成している。
図9に示すように、クロスメンバ22(No.3クロスメンバ)とリヤクロスメンバロア25(No.4クロスメンバ)との間におけるリヤフロア21の下方部には、燃料タンク28を配設している。この燃料タンク28は、図7,図8,図9に示すように、左右一対のタンク固定バンド29,29で支持されるもので、図9に示すように、タンク固定バンド29の前端部は、ボルト、ナット等の取付け部材30によりクロスメンバ22に固定されており、タンク固定バンド29の後端部は、ボルト、ナット等の取付け部材31によりリヤクロスメンバロア25に固定されている。
図7に示すように、燃料タンク28の左右両サイドには、フロアフレームサイドパネル32と、フロアフレームアンダパネル33と、サイドシルインナ9と、リヤフロア21の側端部と、ガセット34とで囲繞された閉断面35が形成されている。
一方、図1に示すように、リヤフロア21の左右両サイド下部に接合固定されたリヤサイドフレーム36には、サブフレーム37が取付けられている。このサブフレーム37は、フロントクロスメンバ38と、リヤクロスメンバ39と、左右一対のサイドメンバ40,40とを底面視で略井桁状に組合せたものである。
図11は図1のH−H線に沿う要部の矢視断面図で、図11,図1に示すように、後輪41のナックル42とリヤクロスメンバ39との間にロアアーム43を設け、ナックル42とフロントクロスメンバ38との間にトーコントロールリンク44を設け、ナックル42とその前方の車体との間にトレーリングアーム45を設けると共に、図11に示すように、ナックル42と、リヤホイールハウスのダンパ取付け部との間にダンパ46を設けることで、リヤサスペンション装置を構成している。
図8,図11に示すように、フロアフレームサイドパネル32とサイドシルインナ9との間には、トレーリングアーム取付けブラケット47を接合固定しており、トレーリングアーム45の前端支持部を該トレーリングアーム取付けブラケット47に支持させている。
ところで、ダッシュロアパネルの前方に設けられた図示しないエンジンには排気系部品が接続されている。図1に示すように、エンジンの排気系部品としては、触媒浄化手段としてのキャタリスト48,49が介設された排気管50と、この排気管50の下流端に連通接続された消音器としてのサイレンサ51と、該サイレンサ51の左右両サイドに接続されたテールパイプ52,52とを備えており、図4,図5,図6に示すように、上述の排気管50はトンネル部2の車外側つまり下側を通って後方に延びると共に、図7,図8に示すように、燃料タンク28の下方を通ってさらに後方に延びている。
図4に示すように、キャタリスト48,49の上方部にはインシュレータ53が離間して配設されると共に、図7,図8に示すように、排気管50と燃料タンク28下部との間には、別のインシュレータ54が配設されている。
図1に示すように、エンジンルームの下方部には、エンジンを搭載すると共に、前輪55を懸架するフロントサスペンションを取付けるためのサブフレーム56が設けられている。このサブフレーム56は図示しないフロントクロスメンバと、リヤクロスメンバ57と、左右のサイドメンバ58,58とを備えている。
図1に示すように、エンジンルームの下方部はアンダカバー59で覆われると共に、前輪55用のスプラッシュシールド(いわゆる泥除け部材)60の下端部と、アンダカバー59の側端部と、フロントバンパ61のサイド部とで囲繞された底面視略三角形状の領域は、フロントサイドアンダカバー62で覆われている。
次に、自動車用カバーの整流構造について詳述する。
車体の床下における前輪55と後輪41との間、この実施例では、トンネル部2の下面側左右における前輪55と後輪41との間にはカバー部材(床下整流部)としてのアンダカバー70,70が設けられている(図1参照)。
図2,図3は何れもアンダカバー70の底面図であって、図2の上側のアンダカバー70Lは車両左側のアンダカバーであり、図2の下側のアンダカバー70Rは車両右側のアンダカバーである。これら左右の各アンダカバー70L,70Rは左右略対称に形成されている。
図1に示すように、上述のアンダカバー70,70は車体の床面(フロアパネル1参照)を下方から覆うもので、この実施例では、該アンダカバー70は前側部材71と後側部材72との2部材から構成されており、これら前側部材71と後側部材72とを車両前後方向に沿って一体化している。
また、この実施例では、上述のアンダカバー70はその主要部が不織布で構成されている。具体的には、不織布にバインダとしての樹脂を含浸させたもの、また、ラバーシートや樹脂シートと積層したものを、押し固めて構成しており、このように、アンダカバー70の主要部を、繊維質を含む不織布で構成することにより、コーナ部の成形性が悪い素材(不織布)を有効活用し、素材の特質である軽量で、吸音性に優れ、かつ割れに強い点を活かしつつ、走行風の整流性を確保するように構成したものである。
図2,図3に示すように、アンダカバー70はその前側部材71および後側部材72に車両前後方向に延びる略平坦な床面73,74を有しており、前側部材71の床面73の前部には、床下走行風Xの車幅方向外側への流出を防ぐ目的で車両前後方向に延びる第1縦壁75が設けられている。
図4に示すように、上述の第1縦壁75は、車幅方向断面が凹形状の第1縦壁部76における車幅方向内側の側壁で形成されたものである。また、この第1縦壁75は、図3に示すように、前側部材71の車両前後方向の長さの約半分にわたって形成されると共に、第1縦壁75の上下寸法は、その前後方向中間部から後端にかけて漸減するように形成されている。
上述の第1縦壁75に対して車両後方に離間し、かつ車幅方向外側に位置する第1剥離部77が、後側部材72の前部に設けられている(図2,図3参照)。
この第1剥離部77は、図11に示すように、後方かつ下方に傾斜する傾斜面78と、図2,図3に示すように、この傾斜面78の直下流において開口形成された開口部としてのスリット79とから形成されており、該スリット79は車幅方向に一直線状に並んで複数設けられている。
これにより、流速が遅い床下走行風X(図2参照)が、流速が速く圧力の低い車体側面流Y(図2参照)に引込まれ、車体側面流Yを乱したり、リヤサスペンション装置に当って空力抵抗が増加しないように、縦壁や剥離部を設けるものにおいて、上述の第1縦壁75と第1剥離部77とを車両前後方向に離間させて、最小限の剥離部で床下走行風Xを剥離し、後述する補機(キャニスタ83参照)や車体構造のレイアウト性の向上と空力抵抗の低下とを両立させるように構成したものである。
図5に示すように、上述の第1縦壁75と第1剥離部77との間には、車体の床面を下方から覆うアンダカバー70の下方膨出部80が設けられており、この下方膨出部80の下面は略平坦に形成されている。
上述の下方膨出部80は、図4で示した第1縦壁75の上端から横方向に延びる前部床面81に対して下方へ膨出しており、前側部材71の床面73と面一状に形成されている。
図6,図7,図8,図9に示すように、後側部材72にも上述の下方膨出部80と上下方向において面一状となる下方膨出部82が設けられており、この下方膨出部82は後側部材72の床面74と面一状に形成されている。
図5に示すように、アンダカバー70に下方膨出部80を設け、その下面を略平坦に形成することで、アンダカバー70により床下走行風Xの整流性を高め、特に、下方膨出部80の下面を略平坦に成すことで、床下走行風Xの流れを阻害しないように構成している。
また、図2,図5に示すように、アンダカバー70の下方膨出部80の上部には、補機の一例としてキャニスタ83(蒸発燃料吸着装置)を配置しており、このキャニスタ83をアンダカバー70で保護するように構成している。
ここで、上述の補機としては、キャニスタ83に代えて、排ガス浄化装置(いわゆるSCR)、及び蓄電ユニット、車両コントロールユニット、非接触充電ユニット等の電装品などの他の補機であってもよい。
さらに、図7,図8に示すように、後側部材72の下方膨出部82においては、燃料タンク28の下部を当該下方膨出部82側へ拡張形成している。この実施例では、燃料タンク28の左側下部のみを下方へ拡張形成したが、右側下部のみを下方へ拡張形成してもよく、左右両側下部をそれぞれ下方へ拡張形成してもよい。
図2,図3,図7,図8に示すように、上述の第1剥離部77の車幅方向内側端よりも車幅方向外側で、かつ車両後方に離間した位置には、後側部材72と一体に車両の前後方向に延びる第2縦壁84が設けられている。
図8に示すように、この第2縦壁84は後側部材72の下方膨出部82よりもさらに下方に突出して、車両の前後方向に延びるビード形状のものである。
上述の第2縦壁84は、図2,図3に示すように、第1剥離部77と車両後方に離間しており、後側部材72の成形性を確保すると共に、第1剥離部77の車幅方向内側端を通って車幅方向外側に逃げようとする床下走行風X(図2参照)を、該第2縦壁84でガイドして車幅方向外側に逃げないようにするものである。つまり、最小限の第2縦壁84で、第1剥離部77後方において車幅方向外側に逃げようとする床下走行風Xを効果的に整流すると共に、該第2縦壁84で後側部材72の補強をも兼ねるように構成している。
図2,図3に示すように、上述の第1剥離部77の車幅方向内側端よりも車幅方向外側で、かつ車両後方に離間した位置には、後側部材72と一体に第2剥離部85が設けられている。
この第2剥離部85は、図1のH−H線矢視断面図を図11に示すように、後方かつ下方へ傾斜する傾斜面86と、当該傾斜面86の後端エッジ87とから形成したものである。
この実施例では、第2剥離部85は、第2縦壁84の前寄りの位置で、かつ第2縦壁84よりも車幅方向外側に形成されている。
これにより、第2剥離部85の車幅方向内側における下方膨出部82でのレイアウト性の向上を図りつつ、図11に矢印で示す床下走行風Xを第1剥離部77と第2剥離部85とで2段階に後方かつ下方へ案内して、第2剥離部85のさらに後方に位置するリヤサスペンション装置等に走行風Xが当たるのを防止し、後輪41の図示しないブレーキ装置へ走行風Xが当たるのを許容すべく構成している。
ここで、上述の第2剥離部85は、その後方に後輪41およびトレーリングアーム45が近接するため、車両後進時に地面上に積もった雪と干渉する可能性が低い。このため、後端を切った形状の走行風剥離用の後端エッジ87と成している。
図2,図3に示すように、上述の第1縦壁75よりも車幅方向内側には、前側部材71の前後方向の略全長にわたって車両前後方向に延びる第3縦壁88が設けられている。
図4に示すように、上述の第1縦壁75と対応する位置の第3縦壁88は、車幅方向断面が凹形状の第3縦壁部89における車幅方向内側の側壁で形成されたものであり、図3,図5に示すように、前側部材71の床面73と対応する位置の第3縦壁88は、下方膨出部80の車幅方向内側端から上方に立上がる立上り壁で形成されたものである。
図2,図3に示すように、上述の第3縦壁88よりも車幅方向外側で、かつ第1剥離部77および第2剥離部85よりも後方に離間して第3剥離部90が設けられている。同図に示すように、この実施例では、第3剥離部90は第2剥離部85に対して車幅方向内側の後側部材72に設けられている。
図12は図1のI−I線に沿う要部の矢視断面図、図13は左側のアンダカバーにおける後部の構造を示す斜視図、図14は図13のJ−J線矢視断面図である。
図2,図3,図12,図13,図14に示すように、上述の第3剥離部90は、走行風を整流する整流面としての床面74に対して、その後端が突出するように下方かつ後方に傾斜する傾斜面91(前側ガイド面)と、この傾斜面91の直下流に開口形成された開口部としてのスリット92とから形成されており、該スリット92は車幅方向に一直線状に並んで複数設けられている。
このように、第3縦壁88よりも車幅方向外側で、かつ第1剥離部77より後方に離間して第3剥離部90を設けることで、第3縦壁88により中央床下風Z(この実施例では、図2に示すトンネル風)の側方への流出を遅らせ、かつ第3剥離部90により当該中央床下風Zを効率的に剥離するように構成したものである。また、第1縦壁75よりも内側の床下風(中央床下風Z)の車幅方向外側への移動を第3縦壁88にて抑制することができ、かつ、第1剥離部77よりも後方に第3剥離部90を設けることで、略平坦な下面(床面74参照)の拡大を図るように構成したものである。
図12に床下風(この位置の床下風は図2で示した床下走行風Xと中央床下風Zとの双方)の流れを示すように、スリット92が存在する場合には、同図に実線矢印で示すように、床下風はスリット92で効果的に剥離される一方、スリット92が存在しない場合には、同図に仮想線矢印で示すように、当該部位におけるアンダカバー70(主要部が不織布で形成されたアンダカバー)の下面後端の曲率半径が大きくなるため、床下風は剥離しにくく上方へずれた軌跡となる。
図13に示すように、開口部としての複数のスリット92,92間には、柱状部93が形成される一方、図12,図14に示すように、上述の傾斜面91後端からスリット92を介して上方に延びる後部縦壁94が一体形成されている。
この後部縦壁94は、整流面である床面74の後端から車両上方に延びるように設けられている。詳しくは、該後部縦壁94は、床面74に上述の前側ガイド面としての傾斜面91を介してその後端から車両上方に延びるように設けられている。
上述の整流面である床面74の後端部、詳しくは傾斜面91の後端部に、該傾斜面91から上述の後部縦壁94側に一段窪んだ略水平状の棚部94Sが形成されており、傾斜面91から当該棚部94Sにかけて形成された開口部としてのスリット92により走行風を剥離する上述の第3剥離部90(剥離部)が形成されたものである。
開口部としてのスリット92が整流面である床面74後部の傾斜面91から棚部94Sにかけて形成されることで、鋭利な断面形状を形成することが困難な繊維質を含む素材(具体的には、不織布を主要部とする素材)を用いて、容易にアンダカバー70の床面74後端にスリット92を打抜き形成して、剥離部である第3剥離部90を形成することができ、アンダカバー70の適切な位置に走行風の剥離部90を形成するように構成したものである。
詳しくは、上述の略水平状の棚部94Sを形成することで、傾斜面91(前側ガイド面)および棚部94Sが、プレス加工に用いる金型の開口部打抜き方向と略直交し、プレス金型を用いて上記スリット92を打抜き形成する場合、繊維質を含む素材であっても概ね鋭利な形状に打抜き形成することができる。
このため、後部縦壁94の下部直前に開口部としてのスリット92を適切な形状(走行風を剥離し得る形状)に打抜き形成することができるので、アンダカバー70の適切な位置に走行風の剥離部90を形成することができるものである。
要するに、カバー部材(アンダカバー70)の後部に後部縦壁94を設ける必要がある構造において、可及的車両前後方向の後端部で走行風を剥離すべく、剥離部90を形成する時、カバー部材の素材によりその加工曲率が小さくできない場合、上記棚部94Sを形成し、この棚部94Sを含んで開口部(スリット92)を形成する孔構造とすることにより、後部縦壁94に近接する部位に剥離点Pを設けることができるものである。
図14に示すように、上述の第3剥離部90は、スリット92前端の走行風の剥離点Pと、この剥離点Pより車両前側において、その後端が整流面である床面74から車両下方に突出するよう傾斜した傾斜面91(前面ガイド面)とを備えている。これにより、前面ガイド面である上記傾斜面91により走行風の剥離領域の拡大を図るように形成している。
図13,図14に示すように、複数のスリット92,92間の柱状部93は、その中央93aが厚肉で、かつ前低後高状に傾斜する傾斜構造に形成されると共に、該柱状部93の左右両端部93bは断面クランク形状に形成されている。
このように、柱状部93の端部93bを断面クランク形状に形成することで、繊維質を含む素材(不織布を主要部とする素材)であっても、成形性を確保し、また、柱状部93の中央93aを厚肉かつ傾斜構造と成したことで、アンダカバー70の強度、特に、耐雪強度の向上を図り、さらに、傾斜構造によりアンダカバー70を雪に乗り上げるように逸らして、該アンダカバー70を上方へ変位させて開口部としてのスリット92から雪が侵入することを抑制するガイド機能を確保すべく構成したものである。
図13に示すように、上述の後部縦壁94に対して車幅方向内側にオフセットした位置には、上方に隆起した取付け部95が一体形成されている。この取付け部95は、図3,図10にも示すように、下方および後方が開放された隆起形状の取付け部であって、図10に示すように、タンク固定バンド29に予め一体化されたブラケット96に取付け部材としてのファスナ97を用いて固定されている。
図10,図13に示すように、上述の取付け部95よりも車両前方側における床面74には、該取付け部95の隆起高さよりもその隆起高さが低い円錐台形状の取付け部98が床面74から上方に隆起形成されている。この取付け部98は、図10に示すように、下方が開放された隆起形状の取付け部であって、該取付け部98は、図10に示すように、タンク固定バンド29に予め一体化されたブラケット99に取付け部材としてのファスナ100を用いて固定されている。
図10,図13に示すように、前後の取付け部98,95の間におけるアンダカバー70には、上方に窪んで前高後低状に傾斜する凹部101が形成されており、この凹部101の下面には床下風Zを剥離する弾性部材製のフィン102が、ファスナなどの取付け部材(取付け部材それ自体については図示省略しているが、図13にその取付け孔)を用いて固定されている。
図10に床下風(この位置の床下風は、主に図2で示した中央床下風Z)の流れを示すように、フィン102が存在する場合には、同図に実線矢印で示すように、床下風はフィン102後端の剥離点で効果的に剥離される一方、フィン102が存在しない場合には、同図に仮想線矢印で示すように、床下風は上方へずれた軌跡となる。
ところで、図1のC−C線矢視断面図である図6に示すように、アンダカバー70の左右の取付け部103(図2参照)は、ファスナまたはボルト、ナットなどの取付け部材104を用いて、車体側、この実施例ではサイドシルインナ9に固定されている。
また、図1のD−D線矢視断面図である図7に示すように、アンダカバー70の左右の取付け部105(図2参照)は、ファスナまたはボルト、ナットなどの取付け部材106を用いて、車体側、この実施例ではフロアフレームアンダパネル33とガセット34とが上下にオーバラップする重合位置に固定されている。
さらに、図2,図3に示すように、アンダカバー70の前側部材71には、図4で示したフロアフレームロア15に取付けられるよう上方に突出した円錐台形状の取付け部107,108が一体形成されている。
上述の取付け部107,108は下方が開放されたテーパコーン状の取付け部であって、これら各取付け部107,108の下端上流側つまり前側には、上流から下流にかけて下方に傾斜するガイド面107a,108aが、取付け部107,108の開口周面に沿って円弧状に一体形成されており、このガイド面107a,108aで床下走行風Xを下方かつ後方に案内することで、該床下走行風Xが取付け部107,108内に流入して渦が発生することを防止すべく構成している。
なお、図1において、109,110,111はトンネルクロスメンバ、図9,図10において、112はスタビライザである。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印LOは車両下方を示す。
このように、上記実施例の自動車用カバーの整流構造は、車体の床面(フロアパネル1参照)に繊維質を含むカバー部材(アンダカバー70参照)が設けられた自動車用カバーの整流構造であって、上記カバー部材(アンダカバー70)には走行風を整流する整流面(床面74参照)と、該整流面(床面74)の後端から車両上方に延びる後部縦壁94とが設けられ、上記整流面(床面74)の後端部に、該整流面(床面74)から上記後部縦壁94側に一段窪んだ棚部94Sが形成され、上記整流面(床面74)から上記棚部94Sにかけて形成された開口部(スリット92参照)により走行風の剥離部90が形成されたものである(図1,図4,図14参照)。
この構成によれば、上述の開口部(スリット92)が整流面(床面74、詳しくは傾斜面91参照)から棚部94Sにかけて形成されるので、鋭利な断面形状を形成することが困難な繊維質を含む素材を用いて、容易にカバー部材(アンダカバー70)の整流面(床面74)後端に開口部(スリット92)を打抜き形成して、剥離部90を形成することができ、カバー部材(アンダカバー70)の適切な位置に走行風の剥離部90を形成することができる。
この発明の一実施形態においては、上記剥離部90は、上記開口部(スリット92)前端の剥離点Pと、該剥離点Pより車両前側においてその後端が上記整流面(床面74参照)から突出するよう傾斜した前側ガイド面(傾斜面91参照)とを備えたものである(図14参照)。
この構成によれば、上述の前側ガイド面(傾斜面91参照)により走行風の剥離領域の拡大を図ることができる。
この発明の一実施形態においては、上記カバー部材は車体の床面を下方から覆うアンダカバー70であり、上記開口部(スリット92)は車幅方向に一直線状に並んで複数形成されており、複数の開口部(スリット92,92)間には柱状部93が形成され、該柱状部93の中央93aは厚肉で傾斜構造に形成されると共に、該柱状部93の端部93bは断面クランク形状に形成されたものである(図13,図14参照)。
この構成によれば、柱状部93の端部93bが断面クランク形状に形成されるので、繊維質を含む素材であっても成形性を確保することができる。
また、上記柱状部93の中央93aが厚肉かつ傾斜構造であるため、アンダカバー70の強度、特に、耐雪強度(車両後進時に地面に詰まった雪とアンダカバー70とが干渉した際にカバー形状を保つ強度)の向上を図ることができ、さらに、傾斜構造によりアンダカバー70を雪に乗上げるように逸らして、該アンダカバー70を上方へ変位させて開口部(スリット92)から雪が侵入することを抑制するガイド機能を確保することができる。
この発明の一実施形態においては、上記カバー部材(アンダカバー70参照)はその主要部が不織布または織布または所定の方向に揃えられた繊維の層で構成されたものである。
この構成によれば、コーナ部の成形性が悪い素材(不織布等)を有効活用し、素材の特質である軽量で、吸音性に優れ、かつ割れに強い点を活かしつつ、走行風の整流性を確保することができる。
なお、不織布は他の繊維素材よりも生産性が良い点で好ましく、織布は耐久性が高い点で好ましく、所定の方向に繊維を揃えるものは、所定の方向に対する引っ張り強度や制振性等の特性を制御できる点で好ましい。
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の車体の床面は、フロアパネル1に対応し、
以下同様に、
カバー部材は、アンダカバー70に対応し、
整流面は、床面74に対応し、
開口部は、スリット92に対応し、
剥離部は、第3剥離部90に対応し、
繊維質を含むカバー部材は、不織布を主要部とするアンダカバー70に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記構成に代えて、上記カバー部材が車体の側面に設けられ、当該カバー部材の整流面後端から車幅方向内方に延びる後部縦壁を避けてもよい。また、繊維質を含むカバー部材の素材としては、不織布を主要部とするものに代えて、CFRPやGFRPのような繊維強化プラスチックであってもよい。
以上説明したように、本発明は、車体の床面または側面に繊維質を含むカバー部材が設けられた自動車用カバーの整流構造について有用である。
1…フロアパネル(床面)
70…アンダカバー(カバー部材)
74…床面(整流面)
90…剥離部
91…傾斜面(前側ガイド面)
92…スリット(開口部)
93…柱状部
93a…中央
93b…端部
94…後部縦壁
94S…棚部
P…剥離点

Claims (4)

  1. 車体の床面または側面または上面に繊維質を含むカバー部材が設けられた自動車用カバーの整流構造であって、
    上記カバー部材には走行風を整流する整流面と、該整流面の後端から車両上方または車幅方向内方に延びる後部縦壁とが設けられ、
    上記整流面の後端部に、該整流面から上記後部縦壁側に一段窪んだ棚部が形成され、
    上記整流面から上記棚部にかけて形成された開口部により走行風の剥離部が形成されたことを特徴とする
    自動車用カバーの整流構造。
  2. 上記剥離部は、上記開口部前端の剥離点と、該剥離点より車両前側においてその後端が上記整流面から突出するよう傾斜した前側ガイド面とを備えた
    請求項1記載の自動車用カバーの整流構造。
  3. 上記カバー部材は車体の床面を下方から覆うアンダカバーであり、
    上記開口部は車幅方向に一直線状に並んで複数形成されており、
    複数の開口部間には柱状部が形成され、
    該柱状部の中央は厚肉で傾斜構造に形成されると共に、該柱状部の端部は断面クランク形状に形成された
    請求項1または2に記載の自動車用カバーの整流構造。
  4. 上記カバー部材はその主要部が不織布または織布または所定の方向に揃えられた繊維の層で構成された請求項1〜3の何れか一項に記載の自動車用カバーの整流構造。
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