図1を参照して、電動パワーステアリング装置(以下、「EPS1」)の構成について説明する。
EPS1は、EPS本体10、アシスト装置20、制御装置30、補助電源装置40、およびトルクセンサ50を有する。EPS1においては、主電源4となるバッテリおよび車速センサ5が制御装置30に電気的に接続されている。EPS1は、主電源4および補助電源装置40から制御装置30を介してアシスト装置20に電力が供給される構成を有する。EPS1は、アシスト装置20により操舵部品2の操作をアシストする。なお、操舵部品2としては、ステアリングホイールが用いられている。
EPS本体10は、コラムシャフト11、インターミディエイトシャフト12、ピニオンシャフト13、ラックシャフト14、ラックアンドピニオン機構15、および2個のタイロッド16を有する。EPS本体10は、操舵部品2の回転にともないコラムシャフト11、インターミディエイトシャフト12、およびピニオンシャフト13が一体に回転する構成を有する。EPS本体10は、ピニオンシャフト13の回転によりラックシャフト14を往復動させることにより車輪3の転舵角を変化させる。
ラックアンドピニオン機構15は、ピニオンシャフト13のピニオンギヤ13Aおよびラックシャフト14のラックギヤ14Aが互いに噛み合わせられた構成を有する。ラックアンドピニオン機構15は、ピニオンギヤ13Aおよびラックギヤ14Aの噛み合いによりピニオンシャフト13の回転をラックシャフト14の往復動に変換する。
アシスト装置20は、3相ブラシレスモータとしての電動モータ21およびウォームギヤとしての減速機構22を有する。アシスト装置20は、減速機構22を介して電動モータ21の回転をコラムシャフト11に伝達することによりコラムシャフト11を回転させる力(以下、「アシストトルクTA」)をコラムシャフト11に付与する。このようにEPS1は、コラムアシスト型の構成を有する。
トルクセンサ50は、車載通信ネットワークを通じてトルク信号を制御装置30に送信する。
車速センサ5は、車載通信ネットワークを通じて車速信号を制御装置30に送信する。
制御装置30は、トルクセンサ50のトルク信号に基づいてコラムシャフト11の中間部分に接続されたトーションバー11Aのねじれ、すなわち操舵部品2の操作にともないコラムシャフト11に付与されたトルク(以下、「操舵トルクτ」)の大きさおよび方向を算出する。制御装置30は、車速センサ5の車速信号に基づいて車両の走行速度(以下、「車速V」)を算出する。制御装置30は、電動モータ21の動作を制御することにより操舵をアシストするアシスト制御と、補助電源装置40の動作を制御することにより主電源4の電力および補助電源装置40の電力を制御する電源制御とを実行する。
図2を参照して、制御装置30および補助電源装置40の構成について説明する。
制御装置30は、マイクロコンピュータ(以下、「マイコン31」)、モータ駆動回路34、電流センサ35、および電圧センサ36を有する。制御装置30は、モータ駆動回路34に印加される電圧(以下、「モータ駆動電圧VMD」)を制御する。
電流センサ35は、電動モータ21に供給される実電流(以下、「モータ電流IM」)の大きさに応じて電圧信号の出力レベルが変化する。電流センサ35は、電圧信号をマイコン31のモータ制御部33に出力する。
電圧センサ36は、補助電源装置40とモータ駆動回路34との間の電圧、すなわちモータ駆動電圧VMDの大きさに応じて電圧信号の出力レベルが変化する。電圧センサ36は、電圧信号をマイコン31の電源管理部32に出力する。
マイコン31は、電源管理部32およびモータ制御部33を有する。マイコン31は、電源管理部32において補助電源装置40の充放電の動作を制御する。マイコン31は、モータ制御部33においてモータ駆動回路34の動作を制御する。
電源管理部32は、補助電源装置40のリレー41、昇圧回路43、および充放電回路44の動作を制御する。電源管理部32は、リレー41の動作を制御するためのリレー信号SRをリレー41に出力する。電源管理部32は、昇圧回路43の動作を制御するための昇圧信号SB1,SB2を昇圧回路43に出力する。電源管理部32は、充放電回路44の動作を制御するための充放電信号SCD1,SCD2を充放電回路44に出力する。
モータ制御部33は、アシスト制御を実行するためのモータ制御信号SMを生成する。詳細には、モータ制御部33は、操舵トルクτおよび車速Vに基づいて目標アシストトルクを演算する。モータ制御部33は、モータ電流IMが目標アシストトルクに対応する電流指令値に一致するように電流フィードバック制御を実行することによりモータ制御信号SMを生成する。そしてモータ制御部33は、モータ制御信号SMをモータ駆動回路34に出力する。なお、目標アシストトルクは、操舵トルクτの絶対値が大きくなるにつれて、または車速Vの絶対値が小さくなるにつれて大きくなる。
モータ駆動回路34は、電動モータ21の各相に対して2個のスイッチング素子(MOSFET)が直列に接続された周知の構成を有する。モータ駆動回路34においては、モータ制御部33のモータ制御信号SMに基づいてモータ駆動回路34の各相の2個のスイッチング素子が交互にオン状態およびオフ状態が切り替えられる。モータ駆動回路34は、各スイッチング素子のオン状態およびオフ状態の切り替えによりモータ駆動電圧VMDをPWM駆動として電動モータ21に印加する。
補助電源装置40は、主電源4とは個別に形成されている。補助電源装置40は、主電源4と直列に接続されている。補助電源装置40は、リレー41、電流センサ42、昇圧回路43、充放電回路44、および補助電源としてのキャパシタ45を有する。補助電源装置40は、キャパシタ45により制御装置30を介して電動モータ21へ放電する。
リレー41は、主電源4と昇圧回路43との間に配置されている。リレー41は、主電源4によりモータ駆動回路34に電力が供給されるオン状態と、主電源4によりモータ駆動回路34に電力が供給されないオフ状態とを切り替える。
電流センサ42は、リレー41と昇圧回路43との間に配置されている。電流センサ42は、主電源4の出力電流(以下、「バッテリ電流IB」)の大きさに応じて電圧信号の出力レベルが変化する。電流センサ42は、電圧信号を電源管理部32に出力する。
昇圧回路43は、主電源4の電圧(バッテリ電圧)に基づく出力電圧、すなわち主電源4と補助電源装置40との接続点P1における出力電圧(以下、「出力電圧V1」)を昇圧してキャパシタ45の出力端子である接続点P2に印加することによりキャパシタ45を充電可能にしている。
昇圧回路43は、一対のスイッチング素子43A,43Bおよび昇圧コイル43Cを有する。昇圧回路43は、昇圧コイル43Cの一端が直列に接続された一対のスイッチング素子43A,43Bの接続点P3に接続される構成を有する。昇圧回路43は、昇圧コイル43Cの他端において出力電圧V1が印加される。
一対のスイッチング素子43A,43Bは、MOSFETが用いられている。上段側のスイッチング素子43Aは、一端においてキャパシタ45の出力端子(接続点P2)に接続されている。スイッチング素子43Aは、他端において下段側のスイッチング素子43Bに接続されている。下段側のスイッチング素子43Bは、一端において接地されている。各スイッチング素子43A,43Bは、電源管理部32の昇圧信号SB1,SB2に基づいてオン状態およびオフ状態を切り替える。
充放電回路44は、昇圧回路43と直列に接続されている。充放電回路44は、一対のスイッチング素子44A,44Bが直列に接続された構成を有する。充放電回路44は、各スイッチング素子44A,44Bの接続点P4においてモータ駆動回路34と接続されている。
一対のスイッチング素子44A,44Bは、MOSFETが用いられている。上段側のスイッチング素子44Aは、一端においてキャパシタ45の出力端子(接続点P2)に接続されている。スイッチング素子44Aは、他端において下段側のスイッチング素子44Bに接続されている。下段側のスイッチング素子44Bは、一端において電流センサ42およびリレー41を介して主電源4に電気的に接続されている。
各スイッチング素子44A,44Bは、電源管理部32の充放電信号SCD1,SCD2に基づいて導通状態であるオン状態および非導通状態であるオフ状態を周期的に切り替える。スイッチング素子44Aは、オン状態のとき、キャパシタ45からモータ駆動回路34(電動モータ21)への放電が可能な状態となる。スイッチング素子44Aは、オフ状態のとき、キャパシタ45からモータ駆動回路34(電動モータ21)への放電が不能な状態となる。スイッチング素子44Bは、オン状態のとき、主電源4からスイッチング素子44Bを介してモータ駆動回路34(電動モータ21)への給電が可能な状態となる。スイッチング素子44Bは、オフ状態のとき、主電源4からスイッチング素子44Bを介してモータ駆動回路34(電動モータ21)への給電が不能な状態となる。
キャパシタ45は、昇圧回路43および充放電回路44の間において、昇圧回路43および充放電回路44と並列に接続されている。キャパシタ45は、一端において接続点P2に接続されている。キャパシタ45は、他端において電流センサ42およびスイッチング素子44Bの間の接続点P5に接続されている。キャパシタ45としては、電気二重層コンデンサが用いられている。
リレー41の動作について説明する。
リレー41は、電源管理部32のリレー信号SRに基づいてオン状態およびオフ状態が切り替えられる。リレー41は、車両のイグニッションスイッチ(図示略)がオン操作されたとき、オフ状態からオン状態に切り替えられる。リレー41は、イグニッションスイッチがオフ操作されたとき、オン状態からオフ状態に切り替えられる。
昇圧回路43の動作について説明する。
昇圧回路43は、下段側のスイッチング素子43Bがオン状態からオフ状態に切り替えられることにより生じる昇圧電圧V3をキャパシタ45の出力端子(接続点P2)に印加する。具体的には、昇圧回路43においては、スイッチング素子43Bがオン状態により導通して昇圧コイル43Cの一端を接地する。そして、昇圧回路43は、スイッチング素子43Bがオフ状態からオン状態に切り替えられたことにより昇圧コイル43Cに生じる誘起電圧を出力電圧V1に重畳して出力する。なお、上段側のスイッチング素子43Aは、キャパシタ45側から昇圧回路43側への電流の回り込み(逆流)を防止する機能を有する。
充放電回路44の動作について説明する。
充放電回路44は、各スイッチング素子44A,44Bのオン状態およびオフ状態の組合せに基づいて、主電源4からモータ駆動回路34に電力を供給する第1電源形態、および主電源4およびキャパシタ45からモータ駆動回路34に電力を供給する第2電源形態を切り替える。なお、各スイッチング素子44A,44Bは、電源管理部32により同時にオン状態にならないように動作が制御される。
第1電源形態は、上段側のスイッチング素子44Aがオフ状態かつ下段側のスイッチング素子43Bがオン状態となる。第1電源形態においては、主電源4のバッテリ電流IBがキャパシタ45に供給されかつ下段側のスイッチング素子44Bを介してモータ駆動回路34に供給される。第1電源形態においては、上段側のスイッチング素子44Aがオフ状態のため、キャパシタ45からモータ駆動回路34に放電されない。
第2電源形態は、上段側のスイッチング素子44Aがオン状態かつ下段側のスイッチング素子44Bがオフ状態となる。第2電源形態は、主電源4およびキャパシタ45が互いに直列に接続された状態となる。第2電源形態においては、主電源4によるモータ駆動回路34への給電に加え、キャパシタ45がモータ駆動回路34に放電される。
また、第2電源形態においては、スイッチング素子44Aの1周期におけるオン状態の比率であるDUTY比およびスイッチング素子44Bの1周期におけるオン状態の比率であるDUTY比のそれぞれが0%および100%以外の値も採用される。各スイッチング素子44A,44BのDUTY比が変更されることによりモータ駆動電圧VMDが変更される。具体的には、スイッチング素子44AのDUTY比が大きくなるにつれてモータ駆動電圧VMDが大きくなる。スイッチング素子44AのDUTY比が100%のとき、モータ駆動電圧VMDが最大値となる。スイッチング素子44AのDUTY比が50%のとき、モータ駆動電圧VMDが最大値の半分の値となる。また、スイッチング素子44BのDUTY比は、スイッチング素子44AのDUTY比が大きくなるにつれて小さくなる。
図3および図4を参照して、制御装置30により実行される電源制御について説明する。なお、図3および図4を参照する以下の説明において、符号が付されたEPS1に関する各構成要素は、図1または図2に記載された各構成要素を示す。
電源制御は、電源切替制御、放電速度制御、閾値変更制御、および電圧可変制御を有する。電源制御は、電源切替制御において、充放電回路44を第1電源形態および第2電源形態に切り替える。電源制御は、放電速度制御において、キャパシタ45が単位時間に放電する放電量(以下、「放電速度」)を制御する。電源制御は、閾値変更制御において、主電源4からキャパシタ45への充電およびキャパシタ45からモータ駆動回路34(電動モータ21)への放電の切り替えの基準値となる充放電閾値KEを変更する。電源制御は、電圧可変制御において、キャパシタ45の放電量を制御することによりモータ駆動電圧VMDを可変に制御する。
図3を参照して、電源切替制御の詳細について説明する。
なお、「電源電力PS」は、EPS1のアシスト制御により主電源4が補助電源装置40に供給する実電力を示す。電源電力PSは、バッテリ電流IBに基づいて算出される。
EPS1のアシスト制御により主電源4に要求される電力(以下、「EPS要求電力」)は、充放電閾値KE以上となる期間(以下、「放電期間」)と充放電閾値KE未満の期間に区分される。充放電閾値KE未満の期間かつキャパシタ45が満充電ではない期間(以下、「充電期間」)においてキャパシタ45が主電源4により充電される。
EPS要求電力は、放電期間として、第1放電期間TD1、第2放電期間TD2、および第3放電期間TD3を有する。第1放電期間TD1は時刻t11から時刻t12までの期間を示す。第2放電期間TD2は時刻t13から時刻t14までの期間を示す。第3放電期間TD3は時刻t15から時刻t16までの期間を示す。
EPS要求電力は、充電期間として、第1充電期間TC1、第2充電期間TC2、および第3充電期間TC3を有する。第1充電期間TC1は時刻t12から時刻t13までの期間を示す。第2充電期間TC2は時刻t14から時刻t15までの期間を示す。第3充電期間TC3は時刻t16から時刻t17までの期間を示す。
電源電力PSは、第1充電期間TC1、第2充電期間TC2、および第3充電期間TC3において、充放電閾値KE未満となる。電源電力PSは、第1放電期間TD1、第2放電期間TD2、および第3放電期間TD3において、充放電閾値KE以上となる。電源電力PSは、例えば時刻t11,t13,t15から充放電回路44が第1電源形態から第2電源形態に切り替えられるまでの期間において充放電閾値KEよりも大きくなる。なお、電源電力PSが充放電閾値KE以上となる場合として車両の車庫入れ時または駐車時において運転者が操舵部品2の据え切り操舵を実行することが挙げられる。
電源切替制御は、電源電力PSおよび充放電閾値KEに基づいて充放電回路44の第1電源形態および第2電源形態の切り替えを制御する。詳細には、制御装置30は、電源電力PSが充放電閾値KE未満のとき、充放電回路44を第1電源形態に設定する。また制御装置30は、電源電力PSが充放電閾値KE以上のとき、充放電回路44を第2電源形態に設定する。したがって、電源電力PSが充放電閾値KE以上のときにおいて、電源切替制御により電源電力PS(バッテリ電流IB)が充放電閾値KEにおいてピークカットされる。このため、主電源4の負荷が小さくなる。
図4を参照して、放電速度制御の詳細について説明する。
図4は、スイッチング素子44AのDUTY比を0%から100%に変更する形態、およびスイッチング素子44BのDUTY比を100%から0%に変更する形態を示している。
放電速度制御は、第1電源形態から第2電源形態に変更されたときのキャパシタ45からモータ駆動回路34への放電においてキャパシタ45の放電を指示する指示信号であるスイッチング素子44AのDUTY比に遅れを入れる。
詳細には、図4(a)に示されるように、制御装置30は、第1電源形態から第2電源形態に変更したとき(時刻t21)、充放電信号SCD1に基づいてスイッチング素子44AのDUTY比を0%の状態から所定の増加幅により徐々に増加させる。そして、時刻t22においてスイッチング素子44AのDUTY比が100%となる。すなわち、スイッチング素子44AのDUTY比が0%から100%に直接変更されたと仮定した構成(以下、「比較構成」)と比較して、スイッチング素子44AのDUTY比が0%から100%に変更されるまでの期間が長い。このため、放電速度制御による放電速度は、比較構成の放電速度よりも低い。
図4(b)に示されるように、制御装置30は、時刻t21から充放電信号SCD2に基づいてスイッチング素子44BのDUTY比を100%の状態から所定の減少幅により徐々に減少させる。そして、時刻t22においてスイッチング素子44BのDUTY比が0%となる。なお、スイッチング素子44AのDUTY比の増加幅の絶対値と、スイッチング素子44BのDUTY比の減少幅の絶対値とは互いに等しい。
図4(c)に示されるように、放電速度制御によりキャパシタ45が徐々に放電するため、モータ駆動電圧VMDが徐々に増大する。これにより、図4(d)に示されるように、アシストトルクTAが徐々に増大する。したがって、比較構成と比較して、モータ駆動電圧VMDが急激に増大することが抑制される。このため、アシストトルクTAが急激に変化することが抑制される。
次に、スイッチング素子44AのDUTY比の増加幅の算出について説明する。
スイッチング素子44AのDUTY比の増加幅は、PID制御となる電力フィードバック制御に基づいて決定される。具体的には、スイッチング素子44AのDUTY比の増加幅は、電源電力PSと充放電閾値KEとの偏差e(t)とモータ駆動電圧VMDの変化量となる制御量c(t)との間の伝達関数G(s)の時定数に基づいて決定される。偏差e(t)と制御量c(t)との関係式は、以下の式(1)となる。
ここで、「kp」は比例ゲインを示し、「kp/τi」は積分ゲインを示し、「kpτd」は微分ゲインを示す。また、「τi」は積分時間を示し、「τd」は微分時間を示す。
上記式(1)をラプラス変換することにより以下の式(2)となる。
ここで、「c(s)」は制御量を示し、「E(s)」は偏差を示し、「kp/τis」は積分ゲインを示し、「kpτds」は微分ゲインを示す。また、「τis」は積分時間を示し、「τds」は微分時間を示す。
このため、伝達関数G(s)は以下の式(3)となる。
このように伝達関数G(s)の時定数は、積分ゲインおよび微分ゲインにより決定される。そして、充放電回路44が第1電源形態から第2電源形態に切り替えられたとき、モータ駆動電圧VMDの増大速度(応答速度)は、時定数が大きくなるにつれて小さくなる。積分ゲインおよび微分ゲインは、充放電回路44が第1電源形態から第2電源形態に切り替えられたとき、アシストトルクTAが急激に変化しない値となる。また、積分ゲインおよび微分ゲインは、試験またはシミュレーションを通じて予め設定される。
閾値変更制御の詳細について説明する。
なお、「第1基準値KE1」は、EPS要求電力の最大値からキャパシタ45が補うことが可能な電力の最大値を減算した値を示す。本実施形態の第1基準値KE1は、EPS要求電力の最大値の半分の値である。第1基準値KE1は、キャパシタ45の最大容量に応じて予め設定される。
「第2基準値KE2」は、第1基準値KE1よりも小さい。第2基準値KE2は、閾値調整係数KCにより設定される。閾値調整係数KCは、車両に搭載されるEPS1に要求される操舵トルク等のEPS1の仕様毎に設定される。
閾値変更制御は、充放電閾値KEを第1基準値KE1および第2基準値KE2の間において可変に制御する。詳細には、閾値変更制御は、電源電力PSが第1基準値KE1以上となると予測されたとき、充放電閾値KEを第1基準値KE1から第2基準値KE2に変更する。閾値変更制御は、電源電力PSが第2基準値KE2以上となるとき、第2基準値KE2から第1基準値KE1に向けて充放電閾値KEを徐々に増加させる。なお、電源電力PSが第1基準値KE1以上となるとの予測としては、運転者が据え切り操舵を実行することが挙げられる。
次に、第2基準値KE2から第1基準値KE1への充放電閾値KEの増加方法について説明する。なお、「閾値戻り時間KT」は、充放電閾値KEの増加の開始時刻から第2基準値KE2が第1基準値KE1に到達するまでの時間を示す。
制御装置30は、第2基準値KE2から第1基準値KE1への充放電閾値KEの増加を閾値調整係数KCおよび閾値戻り時間KTに基づいて設定する。詳細には、制御装置30は、閾値調整係数KCおよび閾値戻り時間KTに基づいて充放電閾値KEの増加速度を算出する。具体的には、制御装置30は、閾値戻り時間KT内において閾値調整係数KCを所定値ずつ減算する。そして制御装置30は、閾値戻り時間KTに達したときに閾値調整係数KCが「0」となるように所定値を設定する。
閾値戻り時間KTは、上記式(3)により示される伝達関数G(s)の時定数に基づいて設定される。閾値戻り時間KTは、制御装置30の電源管理部32内のカウンタ(図示略)により計測される。詳細には、閾値戻り時間KTの計測の開始の時刻において、カウンタによるカウントを開始する。そして、カウンタのカウント数CNが閾値戻り時間KTに相当するカウント閾値CXに達するとき、閾値戻り時間KTとなると判定する。そして、カウント数CNをリセットする。
電圧可変制御の詳細について説明する。
電圧可変制御は、電源電力PSが充放電閾値KE以上のとき、電源電力PSと充放電閾値KEとの差に基づく電力フィードバック制御によりキャパシタ45の放電量を制御する。詳細には、制御装置30は、電源電力PSと充放電閾値KEとの差が大きくなるにつれてキャパシタ45の放電量が多くなるように充放電回路44のスイッチング素子44AのDUTY比を大きくする。これにより、電源電力PSと充放電閾値KEとの差が大きくなるにつれてモータ駆動電圧VMDの増大幅が大きくなる。また制御装置30は、電源電力PSが充放電閾値KE以上において、電源電力PSと充放電閾値KEと差の積分値が大きくなるにつれてスイッチング素子44AのDUTY比を大きくする。これにより、電源電力PSと充放電閾値KEとの差の積分値が大きくなるにつれてモータ駆動電圧VMDが高くなる。このため、電源電力PSは、キャパシタ45の放電により充放電閾値KEに一致するように変化する。
電源電力PSが充放電閾値KEよりも僅かに大きい場合において、電圧可変制御によりキャパシタ45の放電量が僅かとなるため、キャパシタ45の放電時にキャパシタ45の蓄電量の低減が抑制される。このため、電源電力PSが充放電閾値KE以上のときにキャパシタ45の蓄電量の全てを放電すると仮定した構成(以下、「仮想構成」)と比較して、キャパシタ45の容量が「0」となる期間が短くなる。したがって、仮想構成と比較して、電源電力PSが充放電閾値KE以上のときにキャパシタ45の容量が不足する可能性が低くなる。
図5を参照して、EPS1の作用について説明する。図5を参照する以下の説明において、符号が付されたEPS1に関する各構成要素は、図1または図2に記載された各構成要素を示す。
なお、「比較EPS」は、EPS1の電源制御から閾値変更制御を省略した構成を示す。「比較電源電力」は、比較EPSのアシスト制御により主電源4が比較EPSの補助電源装置に供給する実電力を示す。「比較スイッチング素子CA」は、比較EPSにおいてEPS1のスイッチング素子44Aに相当するスイッチング素子を示す。「比較スイッチング素子CB」は、比較EPSにおいてEPS1のスイッチング素子44Bに相当するスイッチング素子を示す。
図5(a)のEPS要求電力の推移は、EPS1および比較EPSに共通のものとして取り扱う。図5は、スイッチング素子44A(比較スイッチング素子CA)のDUTY比を0%から100%に変更する形態、およびスイッチング素子44B(比較スイッチング素子CB)のDUTY比を100%から0%に変更する形態を示している。
図5(a)に示されるように、比較EPSは、EPS要求電力が充放電閾値KE(第1基準値KE1)以上となるとき(時刻t33)、図5(b)の一点鎖線により示されるように、比較電源電力が充放電閾値KE(第1基準値KE1)以上となる。このため、比較EPSは、電源切替制御において充放電回路44を第1電源形態から第2電源形態に変更する。また、比較EPSは、時刻t33において、放電速度制御および電圧可変制御を実行する。このため、図5(c)および(d)の一点鎖線により示されるように、時刻t33から時間の経過とともに比較スイッチング素子CAのDUTY比が所定の増加幅にて徐々に増加し、比較スイッチング素子CBのDUTY比が所定の減少幅にて徐々に減少する。これにより、図5(e)の一点鎖線により示されるように、モータ駆動電圧VMDは、時刻t33から時間の経過とともに徐々に増大する。
ところで、比較EPSにおいては、モータ駆動電圧VMDを徐々に増大させるため、時刻t33から時刻t34にわたり比較EPSのキャパシタの放電量による比較電源電力の増加量は、比較電源電力と第1基準値KE1との差により規定される電力量よりも少ない。このため、図5(b)の一点鎖線により示されるように、比較電源電力は、時刻t33から比較スイッチング素子CAのDUTY比が100%となる時刻t34までの期間にわたり、第1基準値KE1よりも大きくなる。すなわち、比較EPSにおいては、時刻t33から時刻t34までの期間において主電源4のピークカットが十分にできていない。
また、運転者が据え切り操舵を実行するときには、電源電力PS(比較電源電力)が急激に増大する。そして、電源電力PS(比較電源電力)は第1基準値KE1を大きく上回ることが多い。このため、時刻t32において放電速度制御によりモータ駆動電圧VMDを徐々に増大させる場合、電源電力PS(比較電源電力)が第1基準値KE1以上となる量が顕著に多くなる。
この点を踏まえ、運転者が据え切り操舵を実行することにより電源電力PSが急激に増大すると予測されるとき、電源電力PSが第1基準値KE1以上となる前に充放電回路44を第1電源形態から第2電源形態に変更することが好ましい。
そこで、本実施形態のEPS1は、据え切り操舵が実行されるとき、すなわち電源電力PSが第1基準値KE1以上となると予測されるとき(時刻t31)、閾値変更制御により充放電閾値KEを第1基準値KE1から第2基準値KE2に変更する。そして、EPS1は、電源電力PSが第2基準値KE2以上となるとき(時刻t32)、充放電回路44を第1電源形態から第2電源形態に変更する。これにより、これにより、図5(c)および図5(d)の実線により示されるように、時刻t32から時間の経過とともにスイッチング素子44AのDUTY比が所定の増加幅にて徐々に増加し、スイッチング素子44BのDUTY比が所定の減少幅にて徐々に減少する。これにより、図5(e)の実線により示されるように、モータ駆動電圧VMDは、時刻t32から時間の経過とともに徐々に増大する。
このため、図5(b)の実線により示されるように、電源電力PSは、時刻t31から時刻t34までの期間において、比較電源電力よりも小さくなる。これにより、電源電力PSは、第1基準値KE1よりも大きくなることが抑制される。
ところで、充放電閾値KEが第2基準値KE2において一定値であると仮定した場合、次のような問題が生じる。すなわち、電源電力PSが第2基準値KE2よりも大きくなったとき、キャパシタ45は、電力フィードバック制御により電源電力PSが第2基準値KE2に収束するようにモータ駆動回路34に放電される。このため、電源電力PSが必要以上にピークカットされる。
また、キャパシタ45は、電源制御が実行される期間にわたり電源電力PSが第2基準値KE2以上となるときにモータ駆動回路34に放電する。したがって、キャパシタ45がモータ駆動回路34に放電する頻度が高くなり、かつキャパシタ45からモータ駆動回路34への放電量が多くなる。このため、キャパシタ45がモータ駆動回路34に必要以上に放電するため、主電源4からキャパシタ45への充電によりキャパシタ45が満充電になるまでの時間が長くなる。このため、EPS要求電力が第1基準値KE1を大きく上回るときにキャパシタ45が満充電ではない場合が生じる。したがって、EPS要求電力に対するキャパシタ45の放電量が不足してしまうおそれがある。
これに対して、本実施形態のEPS1は、閾値変更制御において電源電力PSが第2基準値KE2以上となるとき、充放電閾値KEを第2基準値KE2から第1基準値KE1に向けて徐々に増加させる。これにより、キャパシタ45は、電力フィードバック制御により電源電力PSが充放電閾値KEとして第2基準値KE2よりも大きい値および第1基準値KE1に収束するようにモータ駆動回路34に放電される。このため、電源電力PSが必要以上にピークカットされることが抑制される。
また、充放電閾値KEが第2基準値KE2から徐々に増加するため、キャパシタ45は、そのときどきの充放電閾値KEとの比較に基づいてモータ駆動回路34に放電される。したがって、キャパシタ45がモータ駆動回路34に放電する頻度が低くなり、かつキャパシタ45からモータ駆動回路34への放電量が少なくなる。このため、キャパシタ45がモータ駆動回路34に必要以上に放電することが抑制されるため、主電源4からキャパシタ45への充電によりキャパシタ45が満充電になるまでの時間が短くなる。このため、EPS要求電力が第1基準値KE1を大きく上回るときにキャパシタ45が満充電ではない場合が生じることが抑制される。したがって、EPS要求電力に対するキャパシタ45の放電量が不足してしまうことが抑制される。
図6を参照して、電源制御の処理手順について説明する。電源制御は、所定時間毎に繰り返し実行される。
制御装置30は、以下の判定により充放電閾値KEを変更するか否かを判定する。
(A)充放電回路44が第1電源形態か否か(ステップS11)。
(B)据え切り操舵か否か(ステップS12)。
ステップS12の据え切り操舵は、車速Vの絶対値が低速閾値VX以下かつ操舵トルクτの絶対値がトルク閾値τX以上か否かに基づいて判定される。制御装置30は、ステップS12において、車速Vの絶対値が低速閾値VX以下かつ操舵トルクτの絶対値がトルク閾値τX以上のとき、据え切り操舵と判定する。制御装置30は、ステップS12において、車速Vの絶対値が低速閾値VX未満または操舵トルクτの絶対値がトルク閾値τX未満のとき、据え切り操舵ではないと判定する。なお、低速閾値VXおよびトルク閾値τXは、試験等により予め設定される。
制御装置30は、ステップS11が肯定判定かつステップS12が肯定判定のとき、充放電閾値KEを変更する。制御装置30は、ステップS11およびステップS12のいずれかが否定判定のとき、充放電閾値KEを変更しない。
制御装置30は、充放電閾値KEを変更するとき、以下のステップS21〜ステップS28の処理を実行する。
制御装置30は、ステップS21において充放電閾値KEを第1基準値KE1から第2基準値KE2に変更する。そして、制御装置30は、ステップS22において電源電力PSが充放電閾値KE以上か否かを判定する。なお、ステップS21からステップS22に移行したとき、ステップS22の判定に用いられる充放電閾値KEは第2基準値KE2に設定される。
制御装置30は、ステップS22において肯定判定のとき、ステップS23において充放電回路44を第1電源形態から第2電源形態に変更する。そして、制御装置30は、ステップS24において放電速度制御および電圧可変制御を実行する。このとき、カウンタによるカウントが開始される。なお、カウンタがカウントする周期は、電源制御の制御周期とは異なる。
制御装置30は、ステップS25において閾値調整係数KCから所定値を減算する。これにより、充放電閾値KEは、第2基準値KE2から所定値分だけ増加する。
制御装置30は、ステップS26においてカウント数CNがカウント閾値CX以上か否かを判定する。制御装置30は、ステップS26において肯定判定のとき、すなわち閾値戻り時間KTが経過したと判断されたとき、ステップS27においてカウント数CNをリセットする。制御装置30は、ステップS26において否定判定のとき、すなわち閾値戻り時間KTの経過前と判断されたとき、ステップS22に移行する。ステップS26からステップS22に移行したとき、ステップS22の判定に用いられる充放電閾値KEは、ステップS25により算出された値となる。
制御装置30は、ステップS28において閾値調整係数KCが「0」以下か否かを判定する。制御装置30は、ステップS28において肯定判定のとき、充放電閾値KEが第2基準値KE2から第1基準値KE1に変更されたと判断する。そして制御装置30は、一旦処理を終了する。制御装置30は、ステップS28において否定判定のとき、充放電閾値KEが第2基準値KE2よりも大きく第1基準値KE1未満の値であると判断する。そして制御装置30は、ステップS22に移行する。ステップS28からステップS22に移行したとき、ステップS22の判定に用いられる充放電閾値KEは、ステップS25により算出された値となる。
制御装置30は、充放電閾値KEを変更しないときかつ充放電回路44が第1電源形態のとき、すなわちステップS11において肯定判定かつステップS12において否定判定のとき、以下のステップS31〜ステップS33の処理を実行する。
制御装置30は、ステップS31において電源電力PSが充放電閾値KE(第1基準値KE1)以上か否かを判定する。制御装置30は、ステップS31において肯定判定のとき、ステップS32において充放電回路44を第1電源形態から第2電源形態に変更する。そして、制御装置30は、ステップS33において放電速度制御および電圧可変制御を実行する。制御装置30は、ステップS31において否定判定のとき、一旦処理を終了する。
制御装置30は、充放電閾値KEを変更しないときかつ充放電回路44が第2電源形態のとき、すなわちステップS11およびステップS12において否定判定のとき、以下のステップS41およびステップS42の処理を実行する。
制御装置30は、ステップS41において電源電力PSが充放電閾値KE(第1基準値KE1)未満か否かを判定する。制御装置30は、ステップS41において肯定判定のとき、ステップS42において充放電回路44を第2電源形態から第1電源形態に変更する。制御装置30は、ステップS41において否定判定のとき、一旦処理を終了する。
本実施形態のEPS1は以下の効果を奏する。
(1)EPS1は、閾値変更制御において電源電力PSが第1基準値KE1以上となると予測されるとき、充放電閾値KEを第1基準値KE1から第2基準値KE2に変更する。この構成によれば、電源切替制御において電源電力PSが第2基準値KE2以上となるときに充放電回路44が第1電源形態から第2電源形態に変更される。すなわち、電源電力PSが第1基準値KE1以上のときに充放電回路44を第1電源形態から第2電源形態に変更したと仮定した構成と比較して、充放電回路44を第1電源形態から第2電形態に変更するタイミングが早い。このため、電源電力PSが第1基準値KE1以上となる前に充放電回路44が第1電源形態から第2電源形態に変更される。これにより、電源電力PSが第2基準値KE2以上となるときにキャパシタ45による電力がモータ駆動回路34に供給されるため、電源電力PSが第1基準値KE1以上となる前に電源電力PSの増大が抑制される。
加えて、EPS1は、閾値変更制御において電源電力PSが第2基準値KE2以上となるとき、充放電閾値KEを第1基準値KE1から第2基準値KE2に向けて変更する。この構成によれば、充放電閾値KEが第2基準値KE2において一定であると仮定した構成と比較して、電圧可変制御によりキャパシタ45から電動モータ21に供給される電力が少なくなる。このため、キャパシタ45から必要以上に電力を電動モータ21に供給することが抑制される。したがって、EPS1においては、キャパシタ45が電動モータ21に適切に放電することができる。
(2)EPS1は、閾値変更制御において電源電力PSが第2基準値KE以上となるとき、充放電閾値KEを第2基準値KE2から第1基準値KE1に向けて徐々に増加させる。この構成によれば、充放電閾値KEが第2基準値KE2から第1基準値KE1に直接的に変更されると仮定した構成と比較して、充放電閾値KEの変化速度が小さい。これにより、キャパシタ45から電動モータ21に供給する電力が急激に変化することが抑制される。このため、電動モータ21の消費電力が急激に変化することが抑制される。したがって、電動モータ21により発生するアシストトルクTAが急激に変化することが抑制される。
(3)EPS1は、キャパシタ45がモータ駆動回路34(電動モータ21)に放電するとき、制御装置30が電圧可変制御において電源電力PSと充放電閾値KEとの差に基づいてモータ駆動電圧VMDを可変に制御する。この構成によれば、キャパシタ45が電動モータ21に放電する放電量を適切に制御することができる。このため、キャパシタ45が電動モータ21に放電するときにキャパシタ45が全容量を放電すると仮定した構成と比較して、電源電力PSと充放電閾値KEとの差が小さいとき、キャパシタ45が電動モータ21に放電する放電量を減らすことができる。したがって、キャパシタ45の容量不足に起因してキャパシタ45が電動モータ21に対して適切に放電することが困難となることが抑制される。
(4)EPS1は、制御装置30がキャパシタ45の放電を指示する充放電回路44の各スイッチング素子44A,44BのDUTY比に遅れを入れる。この構成によれば、キャパシタ45から電動モータ21への放電が開始されるとき、モータ駆動電圧VMDの増大速度が遅くなる。このため、モータ駆動電圧VMDの増大にともない電動モータ21の消費電力が急激に増大することが抑制される。したがって、電動モータ21により発生するアシストトルクTAが急激に変化することが抑制される。
本電動パワーステアリング装置は、上記実施形態とは別の実施形態を含む。以下、本電動パワーステアリング装置のその他の実施形態としての上記実施形態の変形例を示す。なお、以下の各変形例は、互いに組み合わせることもできる。
・実施形態の制御装置30は、図6の電源制御のステップS12において据え切り操舵か否かに基づいて充放電閾値KEを変更するか否かを判定している。ただし、充放電閾値KEを変更するか否かの判定は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例の制御装置30は、図6のステップS12の内容に代えて、スラローム走行か否かの判定とすることもできる。要するに、充放電閾値KEの変更は、電源電力PSが充放電閾値KE以上となると予測されるか否かに基づいて判定される。
・実施形態の制御装置30は、図6の電源制御のステップS22において否定判定のとき、すなわち電源電力PSが充放電閾値KE(第2基準値KE2)未満のとき、再びステップS22に移行する。ただし、電源制御の処理手順は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例の制御装置30は、図6の電源制御のステップS22において否定判定のとき、ステップS22に移行することに代えて、充放電閾値KEを第1基準値KE1に変更し、一旦処理を終了する。
・実施形態の制御装置30が実行する電源制御において、ステップS28における閾値調整係数KCが「0」以下か否かの判定をステップS24およびステップS25の間に移動させることもできる。
・実施形態の制御装置30が実行する電源制御において、ステップS25における閾値調整係数KCから所定値を減算する処理をステップS26よりも後に移動させることもできる。
・実施形態の制御装置30が実行する電源制御において、ステップS26におけるカウント数CNがカウント閾値CX以上か否かの判定、およびステップS28における閾値調整係数KCが「0」以下か否かの判定のいずれかを省略することもできる。
・実施形態の制御装置30は、電圧可変制御の電力フィードバック制御に基づいてモータ駆動電圧VMDの変化を制御する。ただし、電圧可変制御は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例の制御装置30は、充放電回路44が第1電源形態から第2電源形態に変更されるとき、キャパシタ45の充電された容量を放電することによりモータ駆動電圧VMDを変化させる。変形例の制御装置30は、伝達関数を1/(sT+1)として設定する。なお、Tは時定数を示している。
この構成によれば、変形例の制御装置30の伝達関数の時定数によりスイッチング素子44AのDUTY比の増加幅およびスイッチング素子44Bの減少幅が設定される。すなわち、各スイッチング素子44A,44BのDUTY比に遅れが入れられる。このため、モータ駆動電圧VMDの急激な増大が抑制されるため、アシストトルクTAの急激な変化が抑制される。
・実施形態の制御装置30において、電源制御から電圧可変制御を省略することもできる。
・実施形態の補助電源装置40は、キャパシタ45を有する。ただし、補助電源装置40の構成は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例の補助電源装置40は、キャパシタ45に代えて、リチウムイオン電池等の二次電池を有する。
・実施形態のキャパシタ45は、電気二重層コンデンサが用いられている。ただし、キャパシタ45の種類は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例のキャパシタ45は、電気二重層コンデンサに代えて、リチウムイオンキャパシタが用いられる。
・実施形態の充放電回路44は、スイッチング素子44A,44BとしてMOSFETが用いられている。ただし、スイッチング素子44A,44Bの種類は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例の充放電回路44は、スイッチング素子44A,44BとしてIGBTが用いられる。要するに、スイッチング素子44A,44BはDUTY比を変更することが可能な構成であれば、MOSFET以外の構成であってもよい。
・実施形態のEPS1において、複数個の補助電源装置40を有してもよい。
・実施形態の補助電源装置40において、複数個のキャパシタ45を有してもよい。
・実施形態の電動モータ21は、3相ブラシレスモータの構成を有する。ただし、電動モータ21の構成は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例の電動モータ21はブラシ付きモータの構成を有する。
・実施形態のEPS1は、コラムアシスト型の構成を有する。ただし、EPS1の構成は実施形態に例示された内容に限られない。例えば、変形例のEPS1は、ピニオンアシスト型、デュアルピニオンアシスト型、ラック同軸型、またはラックパラレル型の構成を有する。