JP6110662B2 - ダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシート - Google Patents

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本発明は、半導体ウェハ等の被切断物を素子小片に切断分離する際に、当該被切断物が貼付されるダイシングシートおよび当該ダイシングシートに用いられる基材フィルムに関するものである。
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウェハおよび各種パッケージ類(以下、これらをまとめて「被切断物」と記載することがある。)は、大径の状態で製造され、これらは素子小片(以下、「チップ」と記載する。)に切断分離(ダイシング)される。
このダイシング工程に付される被切断物は、ダイシング工程およびそれ以降の工程における被切断物およびチップの取扱性の確保を目的として、基材フィルムおよびその上に設けられた粘着剤層を備えるダイシングシートが、切断のための切削工具が近接する側と反対側の被切断物表面にあらかじめ貼り付けられている。このようなダイシングシートは、通常、基材フィルムとしてポリオレフィン系フィルムまたはポリ塩化ビニル系フィルム等が使用されている。
ダイシング工程の具体的な手法として一般的なフルカットダイシングでは、回転する丸刃によって被切断物の切断が行われる。フルカットダイシングにおいては、ダイシングシートが貼り付けられた被切断物が全面にわたって確実に切断されるように、被切断物を超えて粘着剤層も切断され、さらに基材フィルムの一部も切断される場合がある。
このとき、粘着剤層および基材フィルムを構成する材料からなるダイシング屑がダイシングシートから発生し、得られるチップがそのダイシング屑によって汚染される場合がある。そのようなダイシング屑の形態の一つに、ダイシングライン上、またはダイシングにより分離されたチップの断面付近に付着する、糸状のダイシング屑がある。
上記のような糸状のダイシング屑がチップに多量に付着したままチップの封止を行うと、チップに付着する糸状のダイシング屑が封止の熱で分解し、この熱分解物がパッケージを破壊したり、得られるデバイスにて動作不良の原因となったりする。この糸状のダイシング屑は洗浄により除去することが困難であるため、糸状のダイシング屑の発生によってダイシング工程の歩留まりは著しく低下する。
また、複数のチップが硬化した樹脂で封止されているパッケージを被切断物としてダイシングする場合には、半導体ウェハをダイシングする場合と比べ、より厚い刃幅のダイシングブレードが使用されるとともに、ダイシングの切り込み深さもより深くなる。このため、ダイシング時に切断除去される基材フィルム量が半導体ウェハの場合よりも増えるため、糸状のダイシング屑の発生量も増加する傾向にある。それゆえ、ダイシングシートを用いてダイシングを行い、半導体パッケージを製造する場合には、糸状のダイシング屑の発生を防止することがさらに求められている。
ダイシング工程後に切断された被切断物は、その後、洗浄、エキスパンド工程、ピックアップ工程と各工程が施される。それゆえ、ダイシングシートには、さらにエキスパンド工程での拡張性に優れることも求められている。
このようなダイシング屑の発生を抑制することを目的として、特許文献1には、ダイシングシートの基材フィルムとして、電子線またはγ(ガンマ)線が1〜80Mrad照射されたポリオレフィン系フィルムを用いる発明が開示されている。当該発明では、電子線またはγ線の照射により基材フィルムを構成する樹脂が架橋し、ダイシング屑の発生が抑制されると考えられる。
特許文献1においては、電子線またはγ線が照射されるポリオレフィン系フィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アイオノマー共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリブテン等の樹脂が例示されている。
特許文献2においては、基材フィルムの片面に粘着剤を塗布してなる半導体ダイシング加工用テープにおいて、前記基材フィルムが少なくとも2層からなり、前記基材フィルムの粘着層に接する層の樹脂の融点が130〜240℃であって、少なくとも1層が前記粘着層に接する層の下面に接した、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、スチレン・ブタジエン共重合体の水素添加物が20〜400質量部よりなる樹脂組成物層であることを特徴とする半導体ダイシング用粘接着テープが例示されている。
特許文献3においては、エキスパンド工程での拡張性を付与したフィルムとして、ランダムプロピレンとオレフィン系エラストマーとを含む基材層上に、粘着剤層が積層されたダイシングフィルムが開示されている。
特開平5−211234号公報 特開2005−174963号公報 特開2011−216595号公報
しかしながら、特許文献1に記載のフィルムは、上記のような樹脂を一度フィルム状に成形した後に電子線またはγ線の照射が行われるため、製造工程が一つ増えることととなり、製造コストが一般の基材フィルムに比べ高くなる傾向にある。特許文献2の基材フィルムでは、糸状のダイシング屑の発生を十分に防止すること出来なかった。特許文献3に記載のダイシングフィルムでは、エキスパンド性は優れるものの、糸状のダイシング屑の発生を十分に防止すること出来なかった。
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、電子線やγ線などの物理的なエネルギーを与えることなく、被切断物のダイシング時に発生するダイシング屑、特に糸状のダイシング屑の発生を抑制し、エキスパンド工程において十分な拡張性(エキスパンド性)を有するダイシングシート用基材フィルムおよびかかるダイシングシート用基材フィルムを備えるダイシングシートを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1に本発明は、樹脂層(A)を備えるダイシングシート用基材フィルムであって、当該樹脂層(A)は、ノルボルネン系化合物に由来する構造単位を含む熱可塑性樹脂であるノルボルネン系樹脂(a1)と、スチレン系エラストマー(a2)とを含有し、前記樹脂層(A)に含有される全樹脂成分に対して、前記ノルボルネン系樹脂(a1)の含有量は10質量%以上40質量%以下であり、前記スチレン系エラストマー(a2)の含有量は60質量%以上90質量%以下であることを特徴とするダイシングシート用基材フィルムを提供する(発明1)。
ここで、本発明における「ダイシングシート」には、ダイシング・ダイボンディングシートも含まれるものとし、また、リングフレームを貼付するための別の基材および粘着剤層を有するものも含まれるものとする。さらに、本発明における「シート」には、「テープ」の概念も含まれるものとする。
また、本発明における「ノルボルネン系樹脂」とは、ノルボルネン系化合物に由来する構造単位を含む熱可塑性樹脂であり、「ノルボルネン系化合物」とは、本発明において、ノルボルネン、ノルボルネンに係るビシクロ環を含む環状構造を有する化合物(例えばジシクロペンタジエン)、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる一種または二種以上の化合物を意味する。
本発明における「スチレン系エラストマー(a2)」とは、スチレンまたはその誘導体(本明細書において「スチレン系化合物」ともいう。)に由来する構造単位を含む共重合体であって、常温を含む温度域ではゴム状の弾性を有するとともに、熱可塑性を有する材料を意味する。
上記発明によれば、樹脂層(A)がノルボルネン系樹脂(a1)とスチレン系エラストマー(a2)とを含有することで、ダイシング中に糸状の屑が生じることが抑制される。したがって、電子線やγ線などの物理的なエネルギーを付与することなく、被切断物のダイシング時に発生するダイシング屑を効果的に低減することができる。また、エキスパンド工程において十分な拡張性を有する基材フィルムを得ることができる。
上記発明(発明1)において、前記スチレン系エラストマー(a2)が、スチレン−共役ジエン共重合体からなることが好ましい(発明2)。
上記発明(発明2)において、前記スチレン系エラストマー(a2)が、スチレン−ブタジエン共重合体およびスチレン−イソプレン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい(発明3)。
上記発明(発明1から3)において、前記スチレン系エラストマー(a2)は、スチレン含有率が5質量%以上50質量%以下であることが好ましい(発明4)。
上記発明(発明1から4)において、前記ノルボルネン系樹脂(a1)の密度は0.98g/cm以上であることが好ましい(発明5)。
上記発明(発明1から5)において、前記ノルボルネン系樹脂(a1)は流動化温度が225℃以下であることが好ましい(発明6)。
ここで、本発明における「流動化温度」とは、高化式フローテスター(例えば、島津製作所社製、型番:CFT−100Dが製品例として挙げられる。)によって得られた値とする。具体的には、荷重49.05Nとし、穴形状がφ2.0mm、長さが5.0mmのダイを使用し、試料の温度を昇温速度10℃/分で上昇させながら、昇温とともに変動するストローク変位速度(mm/分)を測定して、ストローク変位速度の温度依存性チャートを得る。試料が熱可塑性樹脂である場合には、ストローク変位速度は、試料温度が軟化点に到達したことを契機として上昇して所定のピークに到達後、いったん降下する。ストローク変位速度はこの降下により最下点に到達した後、試料全体の流動化が進行することにより急激に上昇する。本発明では、軟化点を超えて試料温度を上昇させた場合において、ストローク変位速度が一旦ピークに到達した後に現れるストローク変位速度の最低値を与える温度を流動化温度と定義する。
上記発明(発明1から6)において、前記樹脂層(A)の一方の面側に配置された、少なくとも一層からなる樹脂層(B)を備えることが好ましい(発明7)。
上記発明(発明7)において、前記樹脂層(B)は、ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい(発明8)。
第2に、本発明は、上記発明(1から8)のいずれかに係るダイシング用基材フィルムと、当該フィルムの前記樹脂層(A)上に配置された粘着剤層とを備えたことを特徴とするダイシングシートを提供する(発明9)。
本発明に係るダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシートによれば、電子線やγ線などの物理的なエネルギーを付与することなく、被切断物のダイシング時に発生するダイシング屑を効果的に低減することができ、さらに、エキスパンド工程において十分な拡張性を有する。当該ダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシートにおいては、電子線やγ線の処理を必要としないため、生産が容易である。
本発明の一実施形態に係るダイシングシートの断面図である。 本発明の別の一実施形態に係るダイシングシートの断面図である。
以下、本発明の一実施形態に係るダイシングシートの構成要素やその製造方法等について説明する。
1.基材フィルム
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るダイシングシート1は、基本構成として、基材フィルム2およびこの基材フィルム2上に配置された粘着剤層3を備える。この基材フィルム2は樹脂層(A)を備え、後述するように別の一形態(図2)では樹脂層(B)をさらに備える。
(1)樹脂層(A)
基材フィルム2は、樹脂層(A)を備える限り、単層であっても複数層であってもよい。基材フィルム2が単層の樹脂層からなる場合には、樹脂層(A)が単層のまま基材フィルム2となる。基材フィルム2が複数の樹脂層からなる場合には、樹脂層(A)の位置は特に限定されないが、基材フィルム2の主面の少なくとも一方が上記の樹脂層(A)の面となっていることが好ましい。この場合には、基材フィルム2上に粘着剤層3を形成してダイシングシート1を形成するにあたり、樹脂層(A)上に粘着剤層3が形成されることが好ましい。樹脂層(A)上に粘着剤層3が形成されることで、被切断物のダイシング時に発生するダイシング屑を効果的に低減することができる。
この樹脂層(A)はノルボルネン系化合物を単量体の少なくとも一種とする熱可塑性樹脂であるノルボルネン系樹脂(a1)とスチレン系エラストマー(a2)とを含有する。
樹脂層(A)がノルボルネン系樹脂(a1)を含有することで、得られるダイシングシートはダイシング屑の発生が抑制されること。ダイシング屑を安定的に抑制するという観点から、樹脂層(A)中のノルボルネン系樹脂(a1)の含有量は10質量%以上とすることが好ましく、15質量%以上とすることがより好ましく、20質量%以上とすることが特に好ましい。一方、樹脂層(A)の加工性の低下、基材フィルム2のエキスパンド性の低下などを抑制する観点から、樹脂層(A)中のノルボルネン系樹脂(a1)の含有量を40質量%以下とすることが好ましく、35質量%以下とすることがより好ましい。
本実施形態に係る基材フィルム2が備える樹脂層(A)がスチレン系エラストマー(a2)を含有することで、ダイシング屑の発生が抑制される効果がさらに向上し、かつ、優れたエキスパンド性を付与することができる。樹脂層(A)中のスチレン系エラストマー(a2)の含有量は60質量%以上とすることが好ましく、65質量%以上とすることがより好ましい。一方、樹脂層(A)中に過度にスチレン系エラストマー(a2)を含有させると、樹脂層(A)が過度に軟化し、基材フィルム2にブロッキングが生じやすくなるなど取り扱い性が低下する。したがって、樹脂層(A)中のスチレン系エラストマー(a2)の含有量を90質量%以下とすることが好ましく、85質量%以下とすることがより好ましい。
続いて、樹脂層(A)を構成する成分について詳しく説明する。
(1−1)ノルボルネン系樹脂(a1)
ノルボルネン系樹脂(a1)はノルボルネン系化合物を単量体の少なくとも一種とする熱可塑性樹脂である。
前述のように、ノルボルネン系化合物とはノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン)、ノルボルネンに係るビシクロ環を含む環状構造を有する化合物(例えばジシクロペンタジエン)、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる一種または二種以上の化合物である。具体例として、例えば、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、テトラシクロドデセンなどが挙げられる。
ノルボルネン系樹脂(a1)は、主鎖または側鎖にビシクロ[2.2.1]ヘプタン環構造を有することが好ましい。
ノルボルネン系樹脂(a1)は、その主鎖に環状構造を有するもの(ビシクロ環部分が上記の主鎖の一部を構成する構造)であればさらに好ましい。そのような構造を備える樹脂(a1)として、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環メタセシス重合体水素化ポリマー(具体的には日本ゼオン社製ZEONEX(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、ノルボルネンとエチレンとのコポリマー(具体的にはポリプラスチックス社製TOPAS(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、ジシクロペンタジエンとテトラシクロペンタドデセンとの開環重合に基づくコポリマー(具体的には日本ゼオン社製ZEONOR(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、エチレンとテトラシクロドデセンとのコポリマー(具体的には三井化学社製アペル(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、ジシクロペンタジエンおよびメタクリル酸エステルを原料とする極性基を含む環状オレフィン樹脂(具体的にはJSR社製アートン(登録商標)シリーズとして入手可能である。)などが挙げられる。
ノルボルネン系樹脂(a1)は、芳香環を有する構造単位を含まないことが好ましい。ここで、上記の「芳香環」とは、ベンゼン環のみならず、ナフタレンのような縮合環や、ピリジンのような複素環も含む。
ここで、ノルボルネン系樹脂(a1)は架橋構造を有していてもよい。架橋構造をもたらす架橋剤の種類は任意である。架橋構造は、ノルボルネン系樹脂(a1)を構成する高分子の一種類同士の間で架橋されたものでもよいし、異なる種類の高分子間で架橋されたものでもよい。
ノルボルネン系樹脂(a1)は、JIS K7210:1999に準拠した、温度230℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレートの値が、0.1g/10min以上であることが加工性等の観点から好ましい。高い生産性(加工性)を確保しつつダイシング屑の発生の抑制を安定的に実現する観点から、ノルボルネン系樹脂(a1)のメルトフローレートは0.5/10min以上50.0g/10min以下とすることが好ましく、1.0g/10min以上25.0g/10min以下であればさらに好ましい。
ノルボルネン系樹脂(a1)の23℃における引張弾性率は1.5GPa超であることが好ましい。引張弾性率をこの範囲とすることで、ダイシング屑発生の抑制に適した樹脂層(A)に得られるようになる。ノルボルネン系樹脂(a1)の23℃における引張弾性率は2.0GPa以上であることが好ましい。ノルボルネン系樹脂(a1)の23℃における引張弾性率の上限はダイシング屑の発生を抑制する観点からは特に限定されない。
ノルボルネン系樹脂(a1)の流動化温度は225℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがより好ましい。前述のように、流動化温度とは、加熱された樹脂試料が軟化点を経過したことにより分子の変形自由度が増して分子間相互作用が上昇した状態を超えてさらに試料が加熱された場合における、試料全体の流動化が発生する最低の温度である。流動化温度が225℃以下であることにより、樹脂層(A)中においてノルボルネン系樹脂(a1)が層中で適度に分散し、ダイシング屑の発生を効果的に抑制することができる。ノルボルネン系樹脂(a1)の流動化温度が過度に低い場合には、基材フィルムの表面にベタツキが発生してくるため、フィルム成形時や半導体加工プロセス状においてフィルム同士のブロッキングや吸着テーブルへの密着が生じてしまうことが懸念される。したがって、流動化温度の下限は100℃以上とすることが好ましい。
ノルボルネン系樹脂(a1)の密度は、ダイシング屑の発生を抑制しやすくなる観点から、0.98g/cm以上であることが好ましく、1.00g/cm以上であることがより好ましい。
ノルボルネン系樹脂(a1)は、結晶性を有するものであってもよく、非結晶性であってもよいが、ダイシング屑の発生を抑制しやすくなる観点から、非結晶性であることが好ましい。また、ノルボルネン系樹脂(a1)は、一種類の樹脂から構成されていてもよいし、複数種類の樹脂の混合物であってもよい。
(1−2)スチレン系エラストマー
本実施形態に係る基材フィルム2が備える樹脂層(A)は、スチレン系エラストマー(a2)を含有する。本明細書において「スチレン系エラストマー(a2)」とは、スチレンまたはその誘導体(スチレン系化合物)に由来する構造単位を含む共重合体であって、常温を含む温度域ではゴム状の弾性を有するとともに、熱可塑性を有する材料を意味する。樹脂層(A)はスチレン系エラストマー(a2)を含有することにより、切削片の発生が抑制され、エキスパンド性も向上する。
スチレン系エラストマー(a2)としてスチレン−共役ジエン共重合体およびスチレン−オレフィン共重合体などが例示される。これらの中でも、ダイシング屑発生を抑制しつつ、エキスパンド性を向上させる観点から、スチレン系エラストマー(a2)はスチレン−共役ジエン共重合体を含有することが好ましく、スチレン−共役ジエン共重合体からなることがより好ましい。
スチレン−共役ジエン共重合体の具体例として、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−イソプレン−スチレン共重合体等の未水添スチレン−共役ジエン共重合体;スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の水添加物)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物)等の水添スチレン−共役ジエン共重合体などを挙げることができる。また、工業的には、タフプレン(旭化成社製)、クレイトン(クレイトンポリマージャパン社製)、住友TPE−SB(住友化学社製)、エポフレンド(ダイセル化学工業社製)、ラバロン(三菱化学社製)、セプトン(クラレ社製)、タフテック(旭化成社製)などの商品名が挙げられる。
スチレン系エラストマー(a2)は、水素添加物でも未水添物であってもよい。水素添加物である場合には、ノルボルネン系樹脂(a1)への相溶性が向上し、樹脂層(A)の全光線透過率が向上する。したがって、本実施形態に係るダイシングシートが備える粘着剤層は紫外線硬化型粘着剤を含む場合には、スチレン系エラストマー(a2)は水素添加物であることが好ましい。かかる水素添加物として、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS、スチレン−イソプレン共重合体の水素添加物)などの水添スチレン−共役ジエン共重合体が例示される。スチレン系エラストマー(a2)はかかる水添スチレン−共役ジエン共重合体であることが特に好ましい。
スチレン系エラストマー(a2)は、このエラストマーを形成するために用いた全単量体のうち、スチレン系化合物からなる単量体の質量比率(本明細書において「スチレン含有率」ともいう。)が5質量%以上50質量%以下である。スチレン含有率が過度に低い場合には、スチレンに由来する構造単位を含むエラストマーとしての性質が現れにくくなり、ダイシング屑の発生を抑制する効果が得られにくくなる。かかる効果を安定的に得る観点から、スチレン含有率は5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、スチレン含有率が過度に高い場合には、基材フィルム2のエキスパンド性が低下する傾向が見られるようになる。したがって、スチレン含有率は50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、34質量%以下であることが特に好ましい。
スチレン系エラストマー(a2)は、ノルボルネンに係るビシクロ環を有する構造単位を含まないことが好ましい。
スチレン系エラストマー(a2)は、一種類の樹脂から構成されていてもよいし、複数種類の樹脂の混合物であってもよい。
スチレン系エラストマー(a2)の物理的特性は特に限定されない。好ましい特性として、常温における物性としてゴム的挙動を示すことが挙げられる。
(1−3)樹脂層(A)における他の成分
樹脂層(A)は上記のノルボルネン系樹脂(a1)およびスチレン系エラストマー(a2)に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有してもよい。そのような他の成分として、イソプレンゴムやニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、またはその共重合体などの熱可塑性エラストマー樹脂(ただし、スチレン系エラストマー(a2)を除く。)、オレフィン系熱可塑性樹脂、顔料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤などが例示される。
(2)樹脂層(B)
基材フィルム2が複層からなる場合には、基材フィルム2は上記の樹脂層(A)の他に、樹脂層(B)をさらに備える。この場合、樹脂層(A)の位置は特に限定されないが、基材フィルム2の主面の少なくとも一方が樹脂層(A)の面となっていることが好ましい。具体的には、図2に示されるように、基材フィルム2は、樹脂層(A)の一方の面側に配置された、少なくとも一層からなる樹脂層(B)を備え、ダイシングシート1は、その基材フィルム2の樹脂層(A)上に直接粘着剤層3が配置されるように、基材フィルム2と粘着剤層3とが積層されてなることが好ましい。
基材フィルム2が、樹脂層(A)と樹脂層(B)が積層されてなる複層であれば、基材フィルム2のエキスパンド性をさらに向上させることができる。
樹脂層(B)を構成する樹脂として、例えば、オレフィン化合物に由来する構造単位を含む重合体に基づく樹脂であるオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリウレタン;ポリ塩化ビニル;ポリアミドが挙げられる。
これらの樹脂のうち、樹脂層(B)を構成する樹脂としては、オレフィン系樹脂が好ましい。樹脂層(B)を構成する樹脂がオレフィン系樹脂である場合には、上述したノルボルネン系樹脂(a1)およびスチレン系エラストマー(a2)を含有する樹脂層(A)に対する樹脂層(B)の密着性が高く、樹脂層(A)と樹脂層(B)との間で層間剥離が生じる可能性をより安定的に低減させることができる。
上記のオレフィン系樹脂の例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。オレフィン系樹脂は、1種単独であってもよいし、2種以上の重合体が混合されてなるものであってもよい。
ここで、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。「エチレン−(メタ)アクリル酸共重体」は、エチレン−アクリル酸共重合体であってもよいし、エチレン−メタクリル酸共重合体であってもよく、またエチレン−アクリル酸−メタクリル酸共重合体であってもよい。
これらの共重合体の中でも、靭性に優れる樹脂層(B)が得られやすく、かつノルボルネン系樹脂(a1)およびスチレン系エラストマー(a2)含有する樹脂層(A)に対する樹脂層(B)の密着性が高くエキスパンド性にも優れることから、樹脂層(B)を構成する樹脂に係る重合体として、ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−(メタ)アクリル酸共重体の少なくとも一種を含むことが好ましい。
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体において、エチレン、アクリル酸および/またはメタクリル酸に由来する構造単位以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の化合物に由来する構造単位を含有してもよい。そのような他の化合物として、プロピレン等のα−オレフィン;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが例示される。エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を形成するために用いた全単量体のうち、このような他の化合物からなる単量体の質量比率は、10質量%未満の割合であることが好ましい。
樹脂層(B)に係る重合体は、樹脂層(B)を構成する樹脂全体に対して、上記ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−(メタ)アクリル酸共重体の少なくとも一種を70質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上以含有することがさらに好ましい。
樹脂層(B)は、引張弾性率が50MPa以上500MPa以下であり、かつ破断伸度が100%以上であるものであることが好ましい。引張弾性率および破断伸度が上記の範囲であれば、樹脂層(B)は、柔軟性および拡張性に優れるため、樹脂層(A)と樹脂層(B)が積層されてなる基材フィルム2に優れたエキスパンド性能を付与することができる。
樹脂層(B)の引張弾性率が500MPaを超えると、樹脂層(B)の柔軟性が低くなって、樹脂層(B)が破断しやすいため、基材フィルム2のエキスパンド性が低下することが懸念される。一方、樹脂層(B)の引張弾性率が50MPa未満であると、ハンドリング性が低下するおそれがある。樹脂層(B)のより好ましい引張弾性率は55MPa以上400MPa以下であり、さらに好ましい引張弾性率は60MPa以上300MPa以下であり、特に好ましい引張弾性率は65MPa以上200MPa以下である。
また、樹脂層(B)の破断伸度が100%未満であると、ダイシングシート1をエキスパンドしたときに樹脂層(B)にて破断が生じやすくなって、基材フィルム2のエキスパンド性が低下することが懸念される。樹脂層(B)のより好ましい破断伸度は200%以上であり、特に好ましい破断伸度は、300%以上である。なお、樹脂層(B)の破断伸度の上限は特に限定されないが、一般的には1000%以下であり、800%以下程度であってもよい。
樹脂層(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の樹脂以外の成分を含有してもよい。そのような成分として、顔料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤が例示される。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。また、フィラーとして、メラミン樹脂のような有機系材料、ヒュームドシリカのような無機系材料およびニッケル粒子のような金属系材料が例示される。
本実施形態に係るダイシングシート1では樹脂層(B)は一層の樹脂層から構成されているが、樹脂層(B)が複数の樹脂層からなる構造を有していてもよい。また、樹脂層(A)と樹脂層(B)との間に接着剤層のような介在層が存在していてもよい。
(3)基材フィルムのその他の構成
図1に示されるように、基材フィルム2が、樹脂層(A)単独である場合には、樹脂層(A)(すなわち、基材フィルム2)の厚さは、通常、10μm以上500μmであり、好ましくは40μm以上300μm以下であり、好ましくは60μm以上200μm以下である。
また、図2に示されるように、基材フィルム2が、樹脂層(A)および樹脂層(B)を備える複層である場合は、基材フィルム2の厚さは、通常、20μm以上600μmであり、好ましくは40μm以上300μm以下であり、より好ましくは60μm以上200μm以下である。基材フィルム2の総厚のうち、粘着剤層3に接する側の樹脂層である樹脂層(A)の厚さは、通常、10μm以上300μmであり、好ましくは20μm以上120μm以下であり、より好ましくは30μm以上100μm以下である。樹脂層(A)が上記の厚さであれば、ダイシング屑が生じることを防止することができる。一方、樹脂層(B)の厚さは、通常、10μm以上300μmであり、40μm以上120μm以下であることが好ましく、特に50μm以上100μm以下であることが好ましい。
本実施形態における基材フィルム2の引張弾性率(23℃における引張弾性率)は、50MPa以上1000MPa以下、80MPa以上1000MPa以下であることが好ましい。引張弾性率が50MPa未満であると、基材フィルム2のハンドリング性が悪くなるおそれがある。一方、基材フィルム2の引張弾性率が1000MPaを超えると、エキスパンド工程で基材フィルム2が破断したり、エキスパンド工程時に加わる荷重が大きくなるため、リングフレームからダイシングシート1自体が剥がれたりするなどの問題が発生するおそれがある。
(4)基材フィルムの製造方法
基材フィルム2の製造方法は特に限定されない。Tダイ法、丸ダイ法等の溶融押出法;カレンダー法;乾式法、湿式法等の溶液法などが例示され、いずれの方法でもよい。樹脂層(A)に含まれるノルボルネン系樹脂(a1)およびスチレン系エラストマー(a2)がいずれも熱可塑性樹脂であることを考慮し、溶融押出法またはカレンダー法を採用することが好ましい。これらのうち、溶融押出法により製造する場合には、樹脂層(A)を構成する成分を混練し、得られた混練物から直接、または一旦ペレットを製造したのち、公知の押出機を用いて製膜すればよい。
基材フィルム2が、樹脂層(B)を有する場合も、製造方法は特に限定されず、任意である。樹脂層(B)の組成および目的に合わせて適切な方法を採用すればよい。例えば、樹脂層(A)および樹脂層(B)を共押出し成形に積層してもよいし、個別に製造された樹脂層を接着剤等により貼付して積層してもよい。
2.ダイシングシート
ダイシングシートは、基材フィルム上に配置された粘着剤層を備える。より具体的には、ダイシングシート1は、基材フィルム2における樹脂層(A)上に粘着剤層3が配置されていることが好ましい。樹脂層(A)上に粘着剤層3が形成されることで、被切断物のダイシング時に発生するダイシング屑を効果的に低減することができる。
(1)粘着剤層
粘着剤層3を構成する粘着剤としては、特に限定されず、ダイシングシートとして通常用いられるものを使用することができ、例えば、ゴム系、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等の粘着剤が用いられ、エネルギー線硬化型粘着剤(紫外線硬化型粘着剤を含む)や加熱硬化型粘着剤を用いることもできる。また、本実施形態におけるダイシングシート1がダイシング・ダイボンディングシートとして使用される場合には、ウェハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えた粘接着剤、熱可塑性接着剤、Bステージ接着剤等が用いられる。
粘着剤層3の厚さは、通常は3〜100μm、好ましくは5〜80μm程度である。
(2)剥離シート
粘着剤層3には、剥離シートが積層されていてもよい。粘着剤層3を保護するための剥離シートは任意である。
剥離シートとして、特に限定されず、例えば、基材上に剥離剤により剥離処理された剥離層を有するものを用いることができる。剥離シート用の基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、または、これらの架橋フィルムを用いてもよい。さらに、これらのフィルムの複数が積層された積層フィルムであってもよい。
剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
なお、剥離シートの厚さについては特に限定されず、通常20〜150μm程度である。
3.ダイシングシートの製造方法
上記の基材フィルム2および粘着剤層3、ならびに必要に応じて用いられる剥離シート等の積層体からなるダイシングシート1の製造方法は特に限定されない。
ダイシングシート1の製造方法についていくつかの例を挙げれば、次のようになる。
(i)剥離シート上に粘着剤層3を形成し、その粘着剤層3上に基材フィルム2を圧着して積層する。このとき、粘着剤層3の形成方法は任意である。
粘着剤層3の形成方法の一例を挙げれば次のようになる。粘着剤層3を構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製する。ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって、基材フィルム2における樹脂層(A)により構成される一方の主面に塗布する。基材フィルム2上の塗布剤からなる層を乾燥させることにより、粘着剤層3が形成される。
(ii)基材フィルム2上に粘着剤層3を形成し、必要に応じさらに剥離シートを積層する。このときの粘着剤層3の形成方法は上記のとおり任意である。
上記(i)、(ii)の方法以外の例として、別途シート状に形成した粘着剤層3を基材フィルム2に貼付してもよい。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(基材フィルムの作製)
ノルボルネン系樹脂(a1)としてのシクロオレフィン・コポリマー(ポリプラスチックス社製,製品名:TOPAS(登録商標)7010,23℃における密度:1.02g/cm,流動化温度(後述する試験例に基づき得られた結果、以下同じ。):136℃)30質量部と、スチレン系エラストマー(a2)としてのスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(SEBS,旭化成社製,製品名:タフテック(登録商標)H1041,スチレン含有率:30質量%)70質量部とを、二軸混練機(東洋精機製作所社製、ラボプラストミル)にて溶融混練し、樹脂層(A)用の押出用原材料を得た。
樹脂層(A)用の押出用原材料を、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,ラボプラストミル)によって共押出成形し、厚さ100μmの樹脂層(A)からなる単層構造の基材フィルムを得た。
(粘着剤の調製)
一方、n−ブチルアクリレート95質量部およびアクリル酸5質量部を共重合してなる共重合体(Mw:500,000)100質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(Mw:8000)120質量部、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社、コロネートL)5質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)4質量部とを混合し、エネルギー線硬化型粘着剤組成物を得た。
得られたエネルギー線硬化型粘着剤組成物を、シリコーン処理された剥離シート(リンテック社、SP−PET38111(S))の剥離処理面に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥させて粘着剤層を形成し、これを上記基材フィルムの樹脂層(A)側の面に貼り付けることで、粘着剤層を基材フィルム上に転写し、ダイシングシートとした。
〔実施例2〜8、比較例1〜4〕
樹脂層(A)および樹脂層(B)の材料を表1に記載のものに変更したことを除き、実施例1と同様にして、ダイシングシートを製造した。
〔実施例9〕
(基材フィルムの作製)
ノルボルネン系樹脂(a1)としてのシクロオレフィン・コポリマー(ポリプラスチックス社製,製品名:TOPAS(登録商標)7010,23℃における密度:1.02g/cm,流動化温度:136℃)30質量部と、スチレン系エラストマー(a2)としてのスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(SEBS,旭化成社製,製品名:タフテック(登録商標)H1041,スチレン含有率:30質量%)70質量部とを、二軸混練機(東洋精機製作所社製,製品名:ラボプラストミル)にて溶融混練し、樹脂層(A)用の押出用原材料を得た。
エチレン−メタクリル酸共重合体((住友化学社製,製品名:アクリフト(登録商標)W201)を二軸混練機(東洋精機製作所社製,製品名:ラボプラストミル)にて溶融混練し、樹脂層(B)用の押出用原材料を得た。
樹脂層(A)用の押出用原材料と、樹脂層(B)用の押出用原材料とを、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,製品名:ラボプラストミル)によって共押出成形し、厚さ40μmの樹脂層(A)と、厚さ60μmの樹脂層(B)とからなる2層構造の基材フィルムを得た。得られた2層構造の基材フィルムを用いて、以下、実施例1と同様にしてダイシングシートを製造した。
〔実施例10〕
実施例9において、樹脂層(B)を形成するための樹脂の種類を他のランダムポリプロピレン(日本ポリプロ社製,製品名:ノバテックPP FX4E)に変更する以外は、実施例9と同様にしてダイシングシートを製造した。
各例で用いた材料を以下に示す。
<樹脂層(A)>
・シクロオレフィン・コポリマー(ポリプラスチックス社製,製品名:TOPAS(登録商標)7010,23℃における密度:1.02g/cm,流動化温度:136℃)
・シクロオレフィン・コポリマー(ポリプラスチックス社製,製品名:TOPAS(登録商標)8007,23℃における密度:1.02g/cm,流動化温度:142℃)
・シクロオレフィン・コポリマー(ポリプラスチックス社製,製品名:TOPAS(登録商標)5013,23℃における密度:1.02g/cm,流動化温度:175℃)
・シクロオレフィン・コポリマー(三井化学社製,製品名:アペル(登録商標)APL6509T,23℃における密度:1.02g/cm,流動化温度:130℃)
・スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物)(SEBS,旭化成社製,製品名:タフテック(登録商標)H1041,スチレン含有率:30質量%)
・スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物)(SEBS,旭化成社製,製品名:タフテック(登録商標)H1221,スチレン含有率:12質量%)
・スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(スチレン−イソプレン共重合体の水素添加物)(SEPS、クレイトンポリマージャパン社製,製品名:クレイトン(登録商標)G1730,スチレン含有率:21質量%)
・低密度ポリエチレン(住友化学社製,製品名:スミカセン(登録商標)L705)
・ポリプロピレン(プライムポリマー社製,製品名:プライムポリプロ(登録商標)F707W)
・エチレン−メタクリル酸共重合体(三井−デュポンポリケミカル社製,製品名:ニュクレル(登録商標)N0903HC,MAA由来酸含有量:9質量%)
<樹脂層(B)>
・エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(住友化学社製,製品名:アクリフト(登録商標)W201)
・ランダムポリプロピレン(日本ポリプロ社製,製品名:ノバテックPP FX4E)
以上の実施例および比較例の組成を表1にまとめて示す。表1中の数値は、各成分の質量部を意味する。
Figure 0006110662
〔試験例1〕(流動化温度の測定)
実施例および比較例において使用したノルボルネン系樹脂(a1)の流動化温度を測定するべく、高化式フローテスター(島津製作所社製、型番:CFT−100Dが製品例として挙げられる。)を用いて、荷重49.05Nとし、穴形状がφ2.0mm、長さが5.0mmのダイを使用し、測定試料とするノルボルネン系樹脂(a1)の温度を昇温速度10℃/分で上昇させながら、昇温とともに変動するストローク変位速度(mm/分)を測定して、各ノルボルネン系樹脂(a1)のストローク変位速度の温度依存性チャートを得た。この温度依存性チャートから、軟化点を超えて得られるピークを経過した後最もストローク変位速度が小さくなる温度を流動化温度とした。流動化温度の結果は前述のとおりである。
〔試験例2〕(ダイシング屑観察)
実施例および比較例で製造したダイシングシートの粘着剤層を切断されていないBGA型パッケージモジュールに貼付した後、ダイシング装置(DISCO社製DFD−651)にセットし、以下の条件でダイシングを行った。
・ワーク(被着体):シリコンウエハ
・ワークサイズ:6インチ径,厚さ350μm
・ダイシングブレード:ディスコ社製 27HEEE
・ブレード回転数:50,000rpm
・ダイシングスピード:10mm/秒
・切り込み深さ:基材フィルムを粘着剤層の界面より20μmの深さまで切り込み
・ダイシングサイズ:10mm×10mm
その後、基材フィルム側から紫外線を照射(160mJ/cm)して、切断されたチップを剥離した。縦および横のダイシングラインのうち、それぞれの中央付近における縦の1ラインおよび横の1ラインに発生した長さ100μm以上の糸状屑の個数を、デジタル顕微鏡(キーエンス社製VHX−100,倍率:100倍)を用いてカウントした。計測結果を次の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
A:糸状屑の個数が0〜15個
B:16個以上
〔試験例3〕(エキスパンド性試験)
実施例および比較例で製造したダイシングシートの粘着剤層に6インチシリコンウェハを貼付した後、当該ダイシングシートをフラットフレームに装着し、20μm厚のダイヤモンドブレードにより、ウェハを10mm角のチップにフルカットした。次に、エキスパンディング冶具(NECマシナリー社製ダイボンダーCSP−100VX)を用いて、ダイシングシートを速度300mm/分で5mmと600mm/分で10mmの2条件で引き落とした。このときのダイシングシートの破断の有無について確認を行った。その結果を次の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
A:2条件ともに破断が確認されない場合
B:どちらか1条件で破断が確認された場合
C:両条件共に破断が確認された場合
Figure 0006110662
表2から明らかなように、実施例で製造したダイシングシートは、ダイシング工程の際にダイシング屑の発生が少なく、エキスパンド工程の際のエキスパンド性にも優れていた。一方、ノルボルネン系樹脂(a1)およびスチレン系エラストマー(a2)を含有しない比較例1〜3のダイシングシートは、ダイシング工程の際にダイシング屑が発生し、エキスパンド性も劣っていた。また、比較例3は、ノルボルネン系樹脂(a1)の含有量が多すぎるため、ダイシング屑の発生は少なかったが、エキスパンド性が劣っていた。
本発明に係るダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシートは、半導体ウェハや各種パッケージ類等のダイシングに好適に用いられる。
1…ダイシングシート
2…基材フィルム(樹脂層(A)/樹脂層(B))
3…粘着剤層

Claims (10)

  1. 樹脂層(A)を備えるダイシングシート用基材フィルムであって、
    当該樹脂層(A)は、ノルボルネン系化合物に由来する構造単位を含む熱可塑性樹脂であるノルボルネン系樹脂(a1)と、スチレン系エラストマー(a2)とを含有し、
    前記樹脂層(A)に含有される全樹脂成分に対して、前記ノルボルネン系樹脂(a1)の含有量は10質量%以上40質量%以下であり、前記スチレン系エラストマー(a2)の含有量は60質量%以上90質量%以下であることを特徴とするダイシングシート用基材フィルム。
  2. 前記スチレン系エラストマー(a2)が、水添スチレン−共役ジエン共重合体からなる、請求項1に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  3. 前記スチレン系エラストマー(a2)が、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物およびスチレン−イソプレン共重合体の水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項2に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  4. 前記スチレン系エラストマー(a2)は、スチレン含有率が5質量%以上50質量%以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  5. 前記ノルボルネン系樹脂(a1)の密度は0.98g/cm以上であり、かつ流動化温度が225℃以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  6. 前記ノルボルネン系樹脂(a1)は非結晶性である、請求項1から5のいずれか一項に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  7. 前記樹脂層(A)の一方の面側に配置された、少なくとも一層からなる樹脂層(B)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  8. 前記樹脂層(B)は、ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の少なくとも一方を含む、請求項7に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載されるダイシング用基材フィルムと、当該フィルムの前記樹脂層(A)上に配置された粘着剤層とを備えたことを特徴とするダイシングシート。
  10. 回転する丸刃によって被切断物の切断が行われるダイシング工程に用いられる請求項9に記載のダイシングシート。
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