JP3634348B2 - 熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物に関し、より詳細には、誘電正接及び耐熱性に優れ、引張強度や伸びなどの機械的物性にも優れた、絶縁フィルム用に好適な熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック絶縁体は、従来より用いられてきた紙、クロスあるいはその含浸物、マイカに代わり、モーター、トランス類の絶縁、コンデンサの誘電体などとして使用されている。モーター、発電機、トランスなどの電気絶縁材料として使用されているプラスチックとしては、ポリプロピレン(PP)が最も一般的であり、使用量も多い。モーターにおいて使用される部位は、対地絶縁、層間絶縁、導体絶縁などである。
【0003】
近年、プラスチック絶縁体は、絶縁抵抗が高く、周波数特性に優れ、柔軟性にも優れるという特徴を有しているため、通信用、電子機器用、電気機器用、電力用、中・低圧進相用などのフィルムコンデンサとして期待されている。フィルムコンデンサとしては、航空機、船舶、及び車両などの無線通信機;ラジオ、テレビ、オーディオなどの民生用直流電気機器;エアコン、洗濯機、扇風機などの小型モーターの駆動用;蛍光灯、水銀灯の電力率改善用などに用いられ、そのプラスチック材料としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやPPフィルムなどが検討されてきている。
【0004】
しかし、これら従来のプラスチック材料は、種々の問題点を有している。すなわち、PPフィルムは、電気特性や柔軟性は良好であるものの、誘電正接の温度変化が激しく、電気特性の温度依存性があることや、耐熱性が充分ではないという問題点がある。PETフィルムは、耐熱性に優れるが、誘電正接が大きく、特に高周波回路での使用が困難であるという問題点を有している。
一方、熱可塑性ノルボルネン樹脂を材料としたフィルムは、誘電正接などの電気特性が良好で、耐熱性に優れるため、通信用、電子機器用、電気機器用の絶縁フィルムとして有用であることが報告されている(特開平2−102256号公報、特開平5−148413号公報)。しかしながら、熱可塑性ノルボルネン系樹脂フィルムは、フィルムコンデンサとして用いるには、引張強度や伸びなどが不足しており、柔軟性が充分ではなかった。
【0005】
フィルムコンデンサは、通常、表面にアルミニウムまたは亜鉛を蒸着したフィルム、あるいはアルミ箔とフィルムを多層に重ねたものから構成されている。フィルムが誘電体に、金属が電極となる。近年、フィルムコンデンサは、長尺品が多くなってきており、そのため、半連続方式または連続方式により金属蒸着を行う方法が採用されている。例えば、図1に示すようなフィルム用半連続蒸着装置を用いる場合は、巻出しロール1から巻き出されたフィルム6は、冷却ロール3の箇所で、金属蒸着源4からの蒸発金属粒子5が蒸着され、巻取りロール2に巻き取られる。コンデンサ用両面蒸着装置(図示せず)を用いる場合には、フィルムは、さらに多くのロール群を通過することになる。このような蒸着装置を用いると、フィルムに強い機械的負荷がかかるので、フィルムには充分な引張強度と柔軟性(伸び)を備えていることが求められる。しかしながら、従来の熱可塑性ノルボルネン系樹脂フィルムは、引張強度や伸びが不充分であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、誘電正接や耐熱性に優れ、かつ、引張強度や伸びなどの機械的特性にも充分に優れた熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、良好な諸物性を有するフィルムコンデンサ用の材料等として好適な熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決すべく鋭意検討の結果、熱可塑性ノルボルネン系樹脂に、分子量が大きくかつ不飽和度の小さい熱可塑性エラストマーを配合することにより、誘電正接等の電気特性や耐熱性に優れ、引張強度や伸びにも優れる熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物が得られることを見いだし、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、ノルボルネン構造を有する多環炭化水素及びそのアルキル、アルケニル、アルキリデンまたは芳香族の置換誘導体から選ばれるノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物からなり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.5以下である熱可塑性ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、ヨウ素価が10g/100g以下で重量平均分子量(Mw)が200,000〜400,000である熱可塑性エラストマー10〜60重量部とを含有してなる熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂
本発明で使用される熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、特開平3−14882号公報や特開平3−122137号公報などに開示されている公知の樹脂である。具体的には、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物が挙げられる。ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物は、誘電正接や耐熱性が高値にバランスされる。
【0009】
ノルボルネン系モノマーは、上記公報や特開平2−227424号公報、特開平2−276842号公報などに開示されている公知のモノマーであって、例えば、ノルボルネン構造を有する多環炭化水素;そのアルキル、アルケニル、アルキリデン、芳香族等の置換誘導体;などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン構造を有する多環炭化水素及びそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、芳香族等の置換誘導体は、耐薬品性や耐湿性等に特に優れ好適である。具体的には、以下のようなノルボルネン系モノマーを挙げることができる。
【0010】
ノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン等;ジシクロペンタジエン、その上記と同様の置換誘導体等、例えば、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、その上記と同様の置換誘導体等、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8,ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8,ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8,ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物、その上記と同様の置換誘導体等、例えば、1,4−ジメタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレン等;シクロペンタジエンの多量体、その上記と同様の置換誘導体等、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等;などが挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂中のノルボルネン系モノマー結合量の割合は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上であるものが誘電正接、耐熱性、及び伸びの特性が高度にバランスされ好適である。
【0012】
ノルボルネン系モノマーの重合方法及び水素添加方法は、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。また、得られる重合体や重合体水素添加物を特開平3−95235号公報などに開示されている公知の方法により、α,β−不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体、スチレン系炭化水素、オレフィン系不飽和結合及び加水分解可能な基を持つ有機ケイ素化合物、不飽和エポキシ単量体等を用いて変性させてもよい。
【0013】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択することができるが、80℃デカリン中で測定した極限粘度〔η〕が0.01〜20dl/g、好ましくは0.1〜10dl/g、より好ましくは0.2〜5dl/g、最も好ましくは0.3〜1dl/gの範囲である。熱可塑性ノルボルネン系樹脂の極限粘度〔η〕が過度に小さいと機械的強度が充分でなく、場合によっては成形体としての形状を保たなくなり、逆に、過度に大きいと成形加工性が充分でなく、いずれも好ましくない。
【0014】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の分子量分布は、トルエンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、2.5以下であるときに、加工性が高度に高められ好適である。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、耐熱性が求められる用途分野では、通常30〜300℃、好ましくは50〜250℃、より好ましくは100〜200℃の範囲が好適である。
これらの熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
熱可塑性エラストマー
本発明で使用される熱可塑性エラストマーは、高い分子量を有し、かつ、不飽和度の低いものを用いる。
熱可塑性エラストマーの分子量としては、トルエンを溶媒とするゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、200,000〜400,000の範囲である。熱可塑性エラストマーが過度に小さいと引張強度や伸びの加工特性が充分でなく、逆に、過度に大きいと耐熱性が充分でなく、いずれも好ましくない。
熱可塑性エラストマーのヨウ素価は、10g/100g以下の値である。熱可塑性エラストマーのヨウ素価が過度に高いと、誘電正接等の電気特性が低下し、好ましくない。
【0016】
熱可塑性エラストマーの具体例としては、上記条件を満たすものであれば格別な制限はないが、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーであるときに、ノルボルネン系重合体との相溶性に特に優れ好適である。
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などの水素化芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体;スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマーなどの芳香族ビニルグラフトオレフィン系ゴムなどが挙げられ、水素化芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体が好ましい。
【0017】
スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜40重量%の範囲である。水素化スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量がこの範囲であるときに、熱可塑性ノルボルネン系樹脂との相溶性に優れ、引張強度と伸びが高度にバランスされ好ましい。
これらの熱可塑性エラストマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。熱可塑性エラストマーの配合量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、熱可塑性ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、10〜60重量部、好ましくは15〜40重量部の範囲である。熱可塑性エラストマーの配合量がこの範囲にある時に、誘電正接、耐熱性、引張強度、及び伸びの特性が高度にバランスされ好適である。
【0018】
任意成分
本発明のノルボルネン系樹脂組成物は、上記成分に、必要に応じて、その他の熱可塑性樹脂、滑剤、酸化安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、塩酸吸着剤、帯電防止剤、及びノルボルネン系樹脂組成物で一般に用いられるその他の配合剤を添加することができる。
(1)その他の熱可塑性樹脂
その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド;エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートなどが挙げられる。
これらのその他の熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0019】
(2)滑剤
滑剤としては、例えば無機微粒子を用いることができる。ここで、無機微粒子とは、周期表の1族、2族、4族、6族、7族、8〜10族、11族、12族、13族、14族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩及びそれらの含水化合物、それらを中心とする複合化合物、天然鉱物粒子を示す。
【0020】
具体的には、フッ化チリウム、硼砂(硼酸ナトリウム含水塩)などの1族元素化合物;炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、酸化マグネシウム(マグネシウア)、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、チタン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウム含水塩(タルク)、炭酸カルシム、燐酸カルシウム、亜燐酸カルシウム、硫酸カルシム(石膏)、酢酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、フッ化カルシム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ランタン、チタン酸ビスマス、チタン酸鉛、炭酸バリウム、燐酸バリウム、硫酸バリウム、亜燐酸バリウムなどの2族元素化合物;二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタン、窒化チタン、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、一酸化ジルコニウムなどの4族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、硫化モリブデンなどの6族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガンなどの7族元素化合物、塩化コバルト、酢酸コバルトなどの8〜10族元素化合物;ヨウ化第一銅などの11族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛などの12族元素化合物、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)などの13族元素化合物、酸化珪素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラスなどの14族元素化合物、カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱などの天然鉱物の粒子が挙げられる。ここで用いる無機微粒子の平均粒径は、特に制限はないが、好ましくは0.01〜3μmの範囲である。
これらの滑剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。滑剤の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、熱可塑性ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜3重量部の範囲であである。
【0021】
(3)酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2、4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル アクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン[すなわち、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕]、トリエチレングリコール ビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)、トコフェロールなどのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0022】
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用されているものであれば格別な制限はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜C15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(イソデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジメチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0023】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル 3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル 3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル 3,3′−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル 3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の配合量は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0024】
(4)紫外線防止剤
紫外線吸収剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル ベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベゾエート系紫外線吸収剤;などが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂100重量に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0025】
(5)結晶核剤
結晶核剤としては、例えば、安息香酸の塩、ジベンジリデンソルビトール類、燐酸エステルの塩、あるいはポリビニルシクロヘキサン、ポリ−3−メチルブテン、結晶性ポリスチレン類、トリメチルビニルシランなどの融点の高いポリマー類が好ましく、また、タルク、カオリン、マイカ等の無機化合物も好ましく使用できる。
これらの結晶核剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。その使用量は、通常0.0001〜1重量%の範囲である。
【0026】
(6)塩酸吸収剤
塩酸吸収剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩;エポキシ化ステアリン酸オクチル、エポキシ化大豆油等のエポキシ系化合物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルナイト等の無機化合物などが挙げられる。
これらの塩酸吸収剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。塩酸吸収剤の配合量は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0027】
(7)帯電防止剤
帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム塩及び/またはアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などやステアリン酸のグリセリンエステル等の脂肪酸エステルヒドロキシアミン系化合物等を例示することができる。
これらの帯電防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。帯電防止剤の配合量は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、通常0〜5重量部の範囲である。
【0028】
(8)その他の配合剤
その他の配合剤としては、例えば、顔料、染料、ブロッキング防止剤、天然油、合成油、ワックスなどの滑剤、難燃剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレートなどの多価アルコール脂肪酸エステルなどを挙げることができる。これらのその配合剤は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
【0029】
ノルボルネン系樹脂組成物
本発明の熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂と熱可塑性エラストマー、必要に応じて上記各種成分を常法に従って混合することにより得ることができる。具体的には、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、二軸混練機などを用いて、樹脂温を溶融状態として混練する方法などを挙げることができる。
本発明の熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物は、射出成形、プレス成形、押出成形、回転成形等の通常の成形法により各種成形体とすることができる。
【0030】
誘電体フィルム
本発明の熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物を用いて誘電体フィルムを製造する場合、その方法については特に制限はなく、例えば、これらの材料を加熱溶融後、予備成形体とし、これを加熱延伸して、さらに必要に応じて熱固定するなどの方法を用いることができる。
上記加熱溶融から熱固定までの操作は、まず、前記ノルボルネン系樹脂組成物を成形素材とし、これを通常は押出成形して、延伸用予備成形体(フィルム、シートまたはチューブ)とする。この成形においては、上記成形素材の加熱溶融したものを押出成形機にて所定形状に成形するのが一般的であるが、成形素材を加熱溶融させずに、軟化した状態で成形してもよい。ここで用いる押出成形機は、一軸押出成形機、二軸押出成形機のいずれでもよく、また、ベント付き、ベントなしのいずれでもよい。押出機には適当なフィルターを使用すれば、夾雑物や異物を除去することができる。フィルターの形状は、平板状、円筒状など適当に選定して使用することができる。押出条件は、特に制限はなく、種々の状況に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは温度を(成形素材の融点)〜(分解温度より50℃高い温度)の範囲で選定し、剪断応力を5×106dyne/cm2以下とする。用いるダイは、Tダイ、円環ダイなどを挙げることができる。
【0031】
押出成形後、得られた延伸用予備成形体を冷却固化する。この際の冷媒は、気体、液体、金属ロールなど各種のものを使用することができる。金属ロールなどを用いる場合、エアナイフ、エアチャンバー、タッチロール、静電印荷などの方法によると、厚みムラや波うち防止に効果的である。冷却固化の温度は、通常は0℃〜(延伸用予備成形体のガラス転移温度より30℃高い温度)の範囲、好ましくは(ガラス転移温度より70℃低い温度)〜(ガラス転移温度)の範囲である。冷却速度は、200℃/秒〜3℃/秒の範囲で適宜選択する。
本発明で得られる誘電体フィルムは、冷却、固化した予備成形体を一軸または二軸に延伸することが好ましい。二軸延伸の場合は、縦方向及び横方向に同時に延伸してもよいが、任意の順序で逐次延伸してもよい。延伸は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。延伸倍率は、面積比で1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上である。
【0032】
延伸方法としては、テンターによる方法、ロール間で延伸する方法、気体圧力を利用したバブリングによる方法、圧延による方法など種々のものが使用でき、これらを適当に選定あるいは組み合わせて適用すればよい。延伸温度は、一般には予備成形体のガラス転移温度と融点の間で設定すればよい。延伸速度は、通常は1×10〜1×105%/分、好ましくは1×103〜1×108%/分である。このような条件で延伸して得られた延伸フィルムに、さらに高温時の寸法安定性、耐熱性、フィルム面内の強度バランスが要求される場合などには、熱固定を行うことが好ましい。熱固定は、常法により行うことができるが、通常、延伸フィルムを緊張状態、弛緩状態または制限収縮状態の下で、該フィルムの(ガラス転移温度)〜(融点)、好ましくは(融点より100℃低い温度)〜(融点直前の温度)の範囲にて、0.5〜120秒間程度保持することによって行う。熱固定は、上記範囲内で条件を変えて二回以上行うことも可能である。この熱固定は、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0033】
誘電体フィルムの厚さは、特に限定されず、例えば、フィルムコンデンサの種類、大きさ、性能などの規格によって適宜選択されればよい。例えば、巻回型のフィルムコンデンサの場合には、その厚みは、通常0.1〜50μm、好ましくは0.3〜30μm、より好ましくは0.5〜10μmの範囲である。誘電体フィルムの厚さをこの範囲にした時に、コンデンサの大きさや強度が適度にバランスされ、好適である。
誘電体フィルムの誘電率は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常0.1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは2〜10の範囲である。誘電率がこの範囲にあるときに、コンデンサ容量と誘電損失が高度にバランスされ好適である。誘電体フィルムの誘電正接は、小さく、通常0.01以下、好ましくは0.001、より好ましくは0.0005以下である。誘電正接が過度に大きいと、誘電損失が大きく好ましくない。
【0034】
誘電体フィルムの引張強度と伸びは、高度にバランスされており、引張強度が通常6kgf/mm2以上、好ましくは7kgf/mm2以上であり、かつ、伸びが8%以上、好ましくは10%以上である。
誘電体フィルムの耐熱性は、充分に高く、軟化温度は、通常50〜300℃、好ましくは70〜250℃、より好ましくは100〜200℃の範囲である。
誘電体フィルムの吸水性は、充分に低く、通常0.1%以下、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.01%以下である。過度に吸水率が高いと誘電正接が悪化し、誘電損失が大きくなり好ましくない。
【0035】
フィルムコンデンサ
本発明においては、上記誘電体フィルムに電極層を積層してフィルムコンデンサとすることができる。フィルムコンデンサの種類などによっては、両面に電極層を積層することも、片面にのみ積層することもある。フィルムの全面に積層する場合も、部分的に積層する場合もある。一般的な巻回型フィルムコンデンサを製造する場合には、フィルムの片面の全面に電極層を積層する。
電極層は、特に限定されないが、一般的に、アルミニウム、亜鉛、金、白金、銅などの導電性金属からなる層であって、金属箔として、または蒸着金属被膜として積層される。本発明においては、金属箔と蒸着金属被膜のいずれでも、また両者を併用しても構わない。電極層を薄くすることができ、その結果、体積に対して容量を大きくすることができ、誘電体との密着性に優れ、また、厚さのバラつきが小さい点で、通常は、蒸着金属被膜が好ましい。
【0036】
電極層として蒸着金属被膜を用いる場合、被膜の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが採用される。蒸着金属被膜は、一層のものに限らず、例えば、耐湿性を持たせるためにアルミニウム層にさらに半導体の酸化アルミニウム層を形成して電極層とする方法(例えば、特開平2−250306号公報)など、必要に応じて多層にしてもよい。蒸着金属被膜の厚さは、特に限定されないが、好ましくは100〜2,000オングストローム、より好ましくは200〜1,000オングストロームの範囲とする。蒸着金属被膜の厚さがこの範囲であるときに、コンデンサーの容量や強度がバランスされ好適である。電極層として金属箔を用いる場合も、金属箔の厚さは、特に限定されないが、通常は、0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜15μmの範囲である。
【0037】
フィルムコンデンサの構造としては、例えば、電極層と誘電体フィルムが交互に積層された積層型(特開昭63−181411号公報、特開平3−18113号公報など)や、テープ状の誘電体フィルムと電極層を巻き込んた巻回型(誘電体フィルム上に電極が連続して積層されていない特開昭60−262414号公報などに開示されたものや、誘電体フィルム上に電極が連続して積層されている特開平3−286514号公報などに開示されたものなど)などが挙げられる。それぞれの構造に応じて、製造方法も異なる。本発明のフィルムコンデンサは、構造及び製造方法により限定されない。
【0038】
構造が単純で、製造も比較的容易な、誘電体フィルム上に電極が連続して積層されている巻回型フィルムコンデンサの場合、一般的には片面に電極を積層した誘電体フィルムを電極同士が接触しないように2枚重ねて巻き込んで製造する。通常、巻き込んだ後、ほぐれないように固定する。固定方法は特に限定されず、例えば、樹脂で封止したり絶縁ケースなどに封入することにより、固定と構造の保護とを同時に行えばよい。リード線の接続方法も限定されず、溶接、超音波圧接、熱圧接、粘着テープによる固定などが例示される。巻き込む前から電極にリード線を接続しておいてもよい。絶縁ケースに封入する場合など、必要に応じて、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で開口部を封止して酸化劣化など防止してもよい。
【0039】
フィルム上に金属薄膜層を形成する場合、あらかじめフィルム表面にコロナ処理、プラズマ処理などの接着性向上のための処理を施しておくこともできる。次に、このようにして形成されたコンデンサ素子に、必要に応じて、端面導電化処理、リード線取付け、外被形成などを行ってコンデンサとする。また、本発明のコンデンサに、油、電解液などを含浸させて、いわゆる液浸コンデンサとしてもよい。
このようにして得られたフィルムコンデンサは、静電容量の温度依存性が小さく、耐熱性に優れ、使用温度範囲が広い上、容積効率にも優れ、温度補償型コンデンサとして、好適に用いられる。
【0040】
【実施例】
以下に、参考例、実施例、及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ない、物性等の測定法は、以下のとおりである。
(1)極限粘度〔η〕
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の極限粘度〔η〕は、85℃デカリン中で測定した。
(2)分子量及び分子量分布
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)及び熱可塑性エラストマーの重量平均分子量(Mw)は、特に記載しない限り、トルエンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した。
(3)水素添加率
主鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素添加率は、1H−NMRにより測定した。
(4)ヨウ素価
ヨウ素価は、JIS K0070Bに準じて測定した。
(5)結合スチレン量
結合スチレン量は、JIS K6383に準じて測定した。
(6)フィルムの物性
フィルム物性は、JIS C2330〔誘電率、誘電正接(1kHz)、引張強度、及び伸び〕、JIS K7196(軟化温度)、JIS K7209(吸水率)に準じて25℃で測定した。
(7)フィルムコンデンサの物性
フィルムコンデンサ物性は、JIS C5102〔補償温度、誘電正接(10kHz)、及び誘電損失(85℃)〕に準じて測定した。
【0041】
[参考例1]
窒素置換下に、エチルテトラシクロドデセン(以下、ETCDと略す)20重量部に、シクロヘキサン200重量部、1−ヘキセン2重量部、トリエチルアルミニウムの15重量%トルエン溶液15重量部、及びトリエチルアミン5重量部を加え、20℃に保ち、攪拌しながら、ETCD80重量部及び四塩化チタンの20重量%トルエン溶液9重量部を60分間にわたり連続的に加えた。その後、1時間反応させ、エチルアルコール5重量部及び水2重量部を加えて反応を停止させた。
反応溶液を40℃に加熱して触媒を加水分解した後、硫酸カルシウム3重量部及びシクロヘキサン60重量部を加え、過剰の水を除去した。析出した金属を含む沈殿物を濾過して除去し、ETCD開環重合体を含む透明なポリマー溶液371重量部を得た。
この操作を繰り返して得たポリマー溶液750重量部に、Ni−ケイソウ土触媒(日揮化学製N113)15重量部を添加し、耐圧反応容器に入れ、水素を導入して圧力50kg/cm2、温度200℃で3時間水素添加反応を行った。反応終了後、シクロヘキサン700重量部を加えて希釈し、濾過により触媒を除去し開環重合体水素添加物含有ポリマー溶液1350重量部を得た。
上記で得られたETCD開環重合体水素添加物のシクロヘキサン溶液800重量部を、活性アルミナ(水澤化学製ネオビートD)4.5重量部を充填した内径10cm、長さ100cmのカラムに、滞留時間100秒になるように通過させて、24時間循環させた。この溶液550重量部をイソプロパノール1500重量部中へ攪拌しながら注ぎ、ETCD開環重合体水素添加物を凝固させた。凝固させたETCD開環重合体水素添加物を濾過して回収し、イソプロパノール300重量部で2回洗浄した後、回転式減圧乾燥機中で5torr、120℃で48時間乾燥し、ETCD開環重合体水素添加物78重量部を得た。
このETCD開環重合体水素添加物は、85℃のデカリン中で測定した極限粘度〔η〕が0.4dl/g、トルエンを溶媒としたGPCによるポリスチレン換算で測定したMw/Mnの比が2.1、水素添加率は99.8%以上、DSCにより測定したTgは140℃であった。
【0042】
[参考例2]
参考例1のETCDの代わりに、ETCDとジシクロペンタジエン(以下、DCPと略す)との80/20(重量比)混合物を用いる以外は、参考例1と同様の操作を行い、開環重合体水素添加物を得た。
このETCD/DCP開環重合体水素添加物は、85℃のデカリン中で測定した極限粘度〔η〕が0.4dl/g、トルエンを溶媒としたGPCによるポリスチレン換算で測定したMw/Mnの比が2.1、水素添加率は99.8%以上、DSCにより測定したTgは130℃であった。
【0043】
[実施例1]
参考例1で得られたETCD開環重合体水素添加物と、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体〔クラレ社製、セプトン4055;結合スチレン量30重量%、Mw280,000、ヨウ素価4g/100g〕を重量比100/5にて二軸混練器(東芝機械製、TEM35B)を用い、240℃で溶融混合し、樹脂組成物Aを得た。
この樹脂組成物Aを、Tダイを先端に取りつけた押出機で、260℃で溶融させてシート状に押し出し、冷却して厚さ20μmの予備成形体を得た。この予備成形体を140℃で縦方向に2倍、横方向に2倍延伸し、厚さ5μmのフィルムを得た。このフィルムの物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0044】
[実施例2]
参考例1で得られたETCD開環重合体水素添加物と、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体〔クラレ社製、セプトン4055;結合スチレン量30重量%、Mw280,000、ヨウ素価4g/100g〕を重量比100/30にて二軸混練器(東芝機械製、TEM35B)を用い、240℃で溶融混合し、樹脂組成物Bを得た。
この樹脂組成物Bを、Tダイを先端に取りつけた押出機で、260℃で溶融させてシート状に押し出し、冷却して厚さ20μmの予備成形体を得た。この予備成形体を140℃で縦方向に2倍、横方向に2倍延伸し、厚さ5μmのフィルムを得た。このフィルムの物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0045】
[実施例3]
参考例1で得られたETCD開環重合体水素添加物と、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体〔クラレ社製、セプトン4055;結合スチレン量30重量%、Mw280,000、ヨウ素価4g/100g]を重量比100/50にて二軸混練器(東芝機械製、TEM35B)を用い、240℃で溶融混合し、樹脂組成物Cを得た。
この樹脂組成物Cを、Tダイを先端に取りつけた押出機で、260℃で溶融させてシート状に押し出し、冷却して厚さ20μmの予備成形体を得た。この予備成形体を140℃で縦方向に2倍、横方向に2倍延伸し、厚さ5μmのフィルムを得た。このフィルムの物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0046】
[実施例4]
参考例1で得られたETCD開環重合体水素添加物と、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体〔クラレ社製、セプトン2005;結合スチレン量20重量%、Mw270,000、ヨウ素価6g/100g〕を重量比100/20にて二軸混練器(東芝機械製、TEM35B)を用い、240℃で溶融混合し、樹脂組成物Eを得た。
この樹脂組成物Eを、Tダイを先端に取りつけた押出機で、260℃で溶融させてシート状に押し出し、冷却して厚さ20μmの予備成形体を得た。この予備成形体を140℃で縦方向に2倍、横方向に2倍延伸し、厚さ5μmのフィルムを得た。このフィルムの物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0047】
[対照例1]
参考例1で得られたETCD開環重合体水素添加物と、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体〔クラレ社製、セプトン4033;結合スチレン量30重量%、Mw100,000、ヨウ素価5g/100g〕を重量比100/20にて二軸混練器(東芝機械製、TEM35B)を用い、240℃で溶融混合し、樹脂組成物Dを得た。
この樹脂組成物Dを、Tダイを先端に取りつけた押出機で、260℃で溶融させてシート状に押し出し、冷却して厚さ20μmの予備成形体を得た。この予備成形体を140℃で縦方向に2倍、横方向に2倍延伸し、厚さ5μmのフィルムを得た。このフィルムの物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0048】
[実施例5]
参考例2で得られたETCD/DCP開環重合体水素添加物と、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体〔クラレ社製、セプトン4055;結合スチレン量30重量%、Mw280,000、ヨウ素価4g/100g〕を重量比100/20にて二軸混練器(東芝機械製、TEM35B)を用い、240℃で溶融混合し、樹脂組成物Gを得た。
この樹脂組成物Gを、Tダイを先端に取りつけた押出機で、260℃で溶融させてシート状に押し出し、冷却して厚さ20μmの予備成形体を得た。この予備成形体を140℃で縦方向に2倍、横方向に2倍延伸し、厚さ5μmのフィルムを得た。このフィルムの物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0049】
[比較例1]
参考例1で得られたETCD開環重合体水素添加物と、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体〔クラレ社製、セプトン2002;結合スチレン量30重量%、Mw24,000、ヨウ素価6g/100g〕を重量比100/20にて二軸混練器(東芝機械製、TEM35B)を用い、240℃で溶融混合し、樹脂組成物Fを得た。
この樹脂組成物Fを、Tダイを先端に取りつけた押出機で、260℃で溶融させてシート状に押し出し、冷却して厚さ20μmの予備成形体を得た。この予備成形体を140℃で縦方向に2倍、横方向に2倍延伸し、厚さ5μmのフィルムを得た。このフィルムの物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0050】
[比較例2]
参考例1で得られたETCD開環重合体水素添加物を、Tダイを先端に取りつけた押出機で、260℃で溶融させてシート状に押し出し、冷却して厚さ20μmの予備成形体を得た。この予備成形体を140℃で縦方向に2倍、横方向に2倍延伸し、厚さ5μmのフィルムを得た。このフィルムの物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
[実施例6]
実施例2で得たフィルムを高周波誘導加熱型真空加熱蒸着器(日本真空社製)にて400オングストロームのアルミニウム層を処理速度300m/secで形成し、その後、この金属蒸着フィルムを巻き取り、170℃で圧縮、亜鉛溶射、リード線付け、エポキシ樹脂による外装によりコンデンサを作成した。
このコンデンサの物性を測定し、その結果を表2に示した。
【0053】
[比較例3]
ポリプロピレンフィルムを高周波誘導加熱型真空加熱蒸着器(日本真空社製)にて400オングストロームのアルミニウム層を処理速度300m/secで形成し、その後、この金属蒸着フィルムを巻き取り、170℃で圧縮、亜鉛溶射、リード線付け、エポキシ樹脂による外装によりコンデンサを作成した。このコンデンサの物性を測定し、その結果を表2に示した。
【0054】
[比較例4]
ポリエチレンテレフタレートフィルムを高周波誘導加熱型真空加熱蒸着器(日本真空社製)にて400オングストロームのアルミニウム層を処理速度300m/secで形成し、その後、この金属蒸着フィルムを巻き取り、170℃で圧縮、亜鉛溶射、リード線付け、エポキシ樹脂による外装によりコンデンサを作成した。このコンデンサの物性を測定し、その結果を表2に示した。
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、誘電正接及び耐熱性に優れ、引張強度や伸びなどの機械的物性にも優れた熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物が提供される。本発明の樹脂組成物は、例えば、フィルムコンデンサの用途などに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、フィルム用半連続蒸着装置の一例の断面略図である。
【符号の説明】
1:巻出しロール
2:巻取りロール
3:冷却ロール
4:金属蒸着源
5:蒸発金属粒子
6:フィルム
Claims (1)
- ノルボルネン構造を有する多環炭化水素及びそのアルキル、アルケニル、アルキリデンまたは芳香族の置換誘導体から選ばれるノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物からなり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.5以下である熱可塑性ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、ヨウ素価が10g/100g以下で重量平均分子量(Mw)が200,000〜400,000である熱可塑性エラストマー10〜60重量部とを含有してなる熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物。
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