JP6109003B2 - 黒鉛構造体、黒鉛ヒータ、黒鉛構造体の製造方法および黒鉛ヒータの製造方法 - Google Patents
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Description
このため、黒鉛は溶接することができず、複雑形状の構造部材は、切削加工によるか、接合により得られている。切削加工で構造部材を得る場合には、一体的な構造部材が得られるので、高強度の構造部材が得られる代わりに材料歩留まりが悪いといった問題がある。
さらに、黒鉛ヒータとして使用される場合、接合部で放電が起こり、亀裂や破損が生じることが記載されている。
これを解消するために、特許文献1に記載の黒鉛ヒータでは、可撓性膨張黒鉛シートを介して部材をボルトで固定することにより、部材間の隙間を無くし、部材間の放電、接合部に発生する熱を抑えることが記載されている。
さらに、可撓性膨張黒鉛シートを常に圧縮するように締め付けなければならず、ボルトには常に張力をかけていなければならない。
このため、破壊強度は、ボルトにかかっている張力の分を減じて考慮しなければならず、強い強度が得られる接合方法ではないという問題がある。
このため、部材間に空隙がある場合より電気抵抗を下げる効果はあるものの、膨張黒鉛シートの厚み分の抵抗によって発熱しやすくなるといった問題がある。
さらに、ボルトによって凹部を有する部材を締め込むように接合されているため、ボルトと、凹部壁面との間には空隙を有し、電気抵抗を高める原因の1つとなっている。
本発明では、一旦、第1黒鉛部材の小径部の最大直径寸法を、第2黒鉛部材の凹部に挿入可能だが凹部の内径よりも大きく形成し、互いに表面の凹凸を摩擦しながら挿入するように構成する。
第1黒鉛部材と第2黒鉛部材は共に材質が黒鉛であるので、第1黒鉛部材と第2黒鉛部材とが干渉する凹凸部分は摩耗によって削られながら挿入され、第1黒鉛部材の小径部の外径と、第2黒鉛部材の凹部の内径が等しくすることができる。
第1黒鉛部材と第2黒鉛部材は共に材質が黒鉛であるので、摩擦によって削られ黒鉛粒子が生じるが、削られた黒鉛粒子は第1の溝に保持される。また、第1の溝には塗布された周面炭素系接着部が保持されており、生じた黒鉛粒子は周面炭素系接着部と混ざって骨材として機能する。
このため、周面炭素系接着部の寸法収縮の影響を受けにくく強固な黒鉛構造体を提供することができる。また、第1黒鉛部材の小径部と、第2黒鉛部材の凹部が、周面炭素系接着部を介することなく直接接触するので第1黒鉛部材と第2黒鉛部材との間の接触抵抗を小さくすることができ、電気抵抗を低くできる。
このため、第1黒鉛部材の小径部と、第2黒鉛部材の凹部が周面炭素系接着部を介することなく直接接触するので第1黒鉛部材と第2黒鉛部材との間の接触抵抗を小さくすることができ、電気抵抗が低く、高強度の接合を実現する黒鉛ヒータを提供することができる。
このため、第1黒鉛部材の小径部を第2黒鉛部材の凹部に挿入する際に、小径部の外周面または凹部の内周面を削りながら挿入されるので、第1黒鉛部材の小径部と第2黒鉛部材の凹部は、互いに直接接触することができる。
また、第1黒鉛部材の小径部は外周面に螺旋状の第1の溝を有しているので、挿入する際に削られて生じた黒鉛粒子は、第1の溝に保持された周面炭素系接着材と混ざり、骨材として機能する。周面炭素系接着材は、内部に含まれる樹脂が硬化、炭素化を経て周面炭素系接着部が形成される。
このため、炭素系接着材の寸法収縮の影響を受けにくく強固な黒鉛構造体の製造方法を提供することができる。また、第1黒鉛部材の小径部と、第2黒鉛部材の凹部が、周面炭素系接着部を介することなく直接接触するので第1黒鉛部材と第2黒鉛部材との間の接触抵抗を小さくすることができ、電気抵抗を低くできる。
すなわち、第2黒鉛部材の凹部の内径は、小径部の最大外径より小さい。
このため、第1黒鉛部材の小径部を第2黒鉛部材の凹部に挿入する際に、小径部の外周面または凹部の内周面を削りながら挿入されるので、第1黒鉛部材の小径部と第2黒鉛部材の凹部は、互いに直接接触することができる。
これにより、第1黒鉛部材と第2黒鉛部材との間の接触抵抗を小さくすることができ、電気抵抗が低く、高強度の接合を実現する黒鉛ヒータの製造方法を提供することができる。
≪黒鉛構造体≫
以下、本発明に係る第1実施形態の黒鉛構造体について、図面を用いて説明する。
図1(A)および図(B)に示すように、第1実施形態の黒鉛構造体10Aは、第1黒鉛部材20と、第2黒鉛部材30を有する。
第1黒鉛部材20は、黒鉛材料を略円柱形状に形成したものであり、第1黒鉛部材先端面(端面)21に、同軸配置された小径部22が一体的に形成されている。小径部22は、第1黒鉛部材20の外径よりも小径の円柱形状を呈しており、外周面221に凹凸23が設けられている。
なお、第2黒鉛部材30は、ここでは略円柱形状の場合を図示して説明するが、後述するように板状の場合も可能である。
凹凸23は、例えば、周方向に沿って円形や楕円形状に設けた溝を、長手方向に沿って複数個平行に設けることができる。あるいは、溝を外周面221に沿って螺旋形状に設けることができる。
螺旋形状の第1の溝231は、複数本の螺旋を平行に設けたり、複数本の螺旋を交差させて設けることができる。また、螺旋の回転方向は特に限定されず、進行方向に対し右回り、左回りいずれでも利用することができる。
また、螺旋状の第1の溝231は、条数は特に限定されない。1条であっても、2条あるいはそれ以上の条数であっても良い。第1の溝231が螺旋状であるので、第1黒鉛部材20の小径部22を第2黒鉛部材30の凹部32に挿入する際に、隣り合う二つの第1の溝231が形成する突起部分が常に凹部32の入口側の端部に接触する。
このため、挿入する際に必要な力に変動が少なく、突起部分に大きな欠けを生じにくくすることができる。
また、小径部22の外周面には、周面炭素系接着材241が塗布された周面炭素系接着部24が設けられている。
第1の溝231は、小径部22の外周面221の全面に形成されていることが好ましい。第1の溝231が小径部22の全面に形成されていると、第1の溝231に保持された周面炭素系接着材241がいずれの箇所でも第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30を接合することができるので、高強度の接合をした黒鉛構造体10Aを提供することができる。
これは次のように形成される。
すなわち、一般に黒鉛材料は切削加工によって形状加工される。このため、加工する刃の摩耗、材料の変形などにより厳密に小径部22の最大直径寸法D1及び凹部32の内径寸法D2を揃えて加工することは困難である。
図6には、小径部22の最大直径寸法D1と凹部32の内径寸法D2の差と曲げ強度との関係が示されている。ここで、横軸の100μmとは、小径部22と凹部32との重なり量、すなわち、小径部22の最大直径寸法D1が凹部32の内径寸法D2よりも100μm大きいことを示す。同様に、10μmは、小径部22の最大直径寸法D1が凹部32の内径寸法D2よりも10μm大きい。また、−100μmとは、小径部22の最大直径寸法D1が凹部32の内径寸法D2がよりも100μm小さいことを示す。
その結果、小径部22の最大直径寸法D1と凹部32の内径寸法D2の差が10μmのときに、曲げ強度のワイブル係数が最大となり、強度的に最も有利になることがわかった。
削られた黒鉛粒子BPは、第1の溝231に保持され、小径部22の最大直径寸法D1と、凹部32の内径寸法D2が等しくなる。削られた黒鉛粒子BPは、骨材として周面炭素系接着部24に含まれる。
寸法収縮すると、第1黒鉛部材20及び第2黒鉛部材30が互いに動きやすくなり、硬化途中の周面炭素系接着材241に亀裂が生じやすくなる。しかし、第1黒鉛部材20の小径部22の最大直径寸法D1と、第2黒鉛部材30の凹部32の内径寸法D2が等しくなっているので摩擦を生じ互いに動きにくい。
さらに、第1黒鉛部材20の小径部22と、第2黒鉛部材30の凹部32とが接触する部分には、周面炭素系接着材241が層を形成しにくいので、周面炭素系接着材241の寸法収縮の影響を受けにくく強固な黒鉛構造体10Aを提供することができる。
ここで、第1黒鉛部材先端面21は、小径部22の周囲の端面である。また、第2黒鉛部材先端面31は、凹部32の周囲の端面である。
なお、端面炭素系接着材251は、第1黒鉛部材先端面21に塗布しても良いし、第2黒鉛部材先端面31に塗布しても良い。また、両方に塗布することも可能である。
また、小径部22の最大直径寸法D1と凹部32の内径寸法D2が同じになるので、端面炭素系接着部25および周面炭素系接着部24がなくても、摩擦力によって第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30とが強固に固定されている。
これにより、端面炭素系接着部25の強度低下を起こしにくく、高強度の接合を実現することができる。
同じ炭素系接着材を用いて、周面炭素系接着部24と端面炭素系接着部25を形成すると、硬化の挙動が同じであるので同じ条件で硬化、炭素化することができ、強度の劣化を小さくすることができる。
中でも、第1黒鉛部材20および第2黒鉛部材30に用いる黒鉛材料には、等方性黒鉛を用いることが好ましい。等方性黒鉛は、組織が細かく特に高強度であるので、高強度の接合と組み合わせることによってさらに高強度の黒鉛構造体10Aを提供することができる。
図7および図8には、前述した黒鉛構造体10Aを用いた黒鉛ヒータの一例が示されている。
図7に示すように、黒鉛ヒータ50Aは、発熱体51とコネクタ52とを組み合わせて構成されている。
例えば、発熱体51が前述した第1黒鉛部材20に該当し、コネクタ52が板状ではあるが前述した第2黒鉛部材30に該当するものである。
従って、発熱体51とコネクタ52との接合部53は、前述した第1黒鉛部材20の小径部22と第2黒鉛部材30の凹部32との接合が適用される。
なお、発熱体51同士の接合部54においては、一方の発熱体51を第1黒鉛部材20と見なし、他方の発熱体51を第2黒鉛部材30と見なすことにより、同様に考えることができる。
例えば、発熱体55は板状だが前述した第2黒鉛部材30に該当し、コネクタ56が前述した第1黒鉛部材20に該当するものである。
従って、発熱体55とコネクタ56との接合部57は、前述した第1黒鉛部材20の小径部22と第2黒鉛部材30の凹部32との接合が適用される。
これに対し、第1黒鉛部材20および第2黒鉛部材30を構成する黒鉛材料は、ピッチが液相のまま炭素化した液相炭素化した物質である。液相炭素化は炭素原子が自由に再配列しながら炭素化していく炭素化のプロセスであるので、結晶化度が高く、低抵抗の黒鉛材料が得られやすい。
これにより、周面炭素系接着部24が発熱しにくく、黒鉛ヒータ50A、50Bとして好適に利用することができる。
なお、黒鉛ヒータ50A、50Bの黒鉛材料は特に限定されない。押出黒鉛、等方性黒鉛などを利用することができる。中でも等方性黒鉛は、固有抵抗の異方性が小さいので、ヒータ設計時に電流の流れる方向の考慮が不要であるので黒鉛ヒータ50A、50Bとして好適に利用できる。
次に、黒鉛構造体の製造方法について説明する。
図1(A)および図1(B)に示すように、黒鉛構造体10Aは、凹部32を有する第2黒鉛部材30に、小径部22を有する第1黒鉛部材20が接続されて形成される。
まず、図1(B)に示すように、第1黒鉛部材20よりも小径、かつ、外周面221に凹凸23が設けられた小径部22を、第1黒鉛部材20の第1黒鉛部材先端面21に同軸配置する。また、第2黒鉛部材30の第2黒鉛部材先端面31に、小径部22が挿入可能な凹部32を設ける。
小径部22は、外周面221を周回する複数列の第1の溝231を有し、凹部32は、小径部22の最大直径寸法D1より小さく、小径部22の平均直径より大きい内径寸法D2を有する。
その後、挿入工程において、小径部22を凹部32に挿入する。その際、両者の摩擦力により小径部22の外周面221および凹部32の内周面321のうちの少なくとも一方を削りながら挿入する(図2(B)参照)。
そして、熱処理工程において、第1黒鉛部材20および第2黒鉛部材30を加熱することにより、周面炭素系接着材241を炭素化させることにより硬化させて周面炭素系接着部24を形成する(図3参照)。
小径部22の最大直径寸法D1と比較して第1の溝231の深さが圧倒的に小さい場合、近似的に中心軸で分割される小径部22の外周面221が形成する輪郭の内側部分と同一面積と同一高さの長方形の幅(径方向の長さ)とすることができる。
螺旋状の溝の場合、回転方向は特に限定されず、進行方向に対し右回り、左回りいずれでも利用することができる。また、螺旋状の溝の場合、条数は特に限定されない。1条であっても、2条あるいはそれ以上の条数であっても良い。
中でも螺旋状の溝の場合には、第1黒鉛部材20を第2黒鉛部材30に挿入する際に、常に隣り合う二つの第1の溝231が形成する突起部分が凹部32の入口側の端部に接触している。
このため、挿入する際に必要な力に変動が少なく突起部分に大きな欠けを生じにくくすることができる。
複数列の第1の溝231は、どのような方法でも製造することができ特に限定されない。例えば、旋盤で旋削することにより形成することができる。旋削で形成する場合、旋削チップを固定し複数回に分けて加工することにより、複数の環状の溝を形成することができ、旋削チップを動かしながら加工することにより、螺旋状の溝を形成することができる。
複数列の第1の溝231は、小径部22の外周面221の全面に形成されていることが好ましい。複数列の第1の溝231が小径部22の全面に形成されていると、第1の溝231に保持された周面炭素系接着部24がいずれの箇所でも第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30を接合することができるので、高強度の接合をした黒鉛構造体10Aを提供することができる。
これは以下の理由による。
黒鉛材料は切削加工によって形状加工される。このため、加工する刃の摩耗、材料の変形などにより厳密に小径部22の最大直径寸法D1及び凹部32の内径寸法D2を揃えて加工することは困難である。
第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30は共に材質が黒鉛であるので、摩擦によって削られ黒鉛粒子BPが生じるが、第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30とが干渉する部分は摩耗しながら挿入される(図2(B)参照)。
このとき削られた黒鉛粒子BPは、第1の溝231に保持され、第1黒鉛部材20の小径部22の最大直径寸法D1と、第2黒鉛部材30の凹部32の内径寸法D2が等しくなり、互いに直接接触することができる。
寸法収縮すると、第1黒鉛部材20及び第2黒鉛部材30が互いに動きやすくなり、硬化途中の周面炭素系接着材241に亀裂が生じやすくなるが、第1黒鉛部材20の小径部22の最大直径寸法D1と、第2黒鉛部材30の凹部32の内径寸法D2が等しくなっているので摩擦で互いに動きにくい。
その上、第1黒鉛部材20の小径部22と、第2黒鉛部材30の凹部32とが接触する部分には周面炭素系接着材241が層を形成しにくいので、周面炭素系接着材241の寸法収縮の影響を受けにくく強固な黒鉛構造体10Aを提供することができる。
これらの炭素系接着材は、液状で塗布され硬化を経て炭素化される。このため、周面炭素系接着材241は、第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30とを接続することができる。また、硬化前の周面炭素系接着材241は液状であるので、第1黒鉛部材20及び第2黒鉛部材30の気孔内部に浸透し、第1黒鉛部材20及び第2黒鉛部材30の直接接合する部位の接合を補強することができる。
黒鉛構造体10Aでは、第1黒鉛部材20の小径部22の最大直径寸法D1は、第2黒鉛部材30の凹部32の内径寸法D2より大きい。このため、挿入する際には互いに表面を摩擦しながら挿入することとなる。
第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30は共に材質が黒鉛であるので、摩擦によって削られ黒鉛粒子BPが生じるが、生じた黒鉛粒子BPは小径部22の外周面221を周回する複数列の第1の溝231に捕らえられ、底に滞留する。
このため、周面炭素系接着材241の寸法収縮を小さくする作用を小さくすることができる。
端面炭素系接着材塗布工程において、第1黒鉛部材先端面21または第2黒鉛部材先端面31に、端面炭素系接着材251を塗布することが好ましい。端面炭素系接着材塗布工程は、熱処理工程の前に行う。
第1黒鉛部材先端面21と、第2黒鉛部材先端面31とが、端面炭素系接着材251が硬化及び炭素化した端面炭素系接着部25を介して接着されるので、より高強度の接合を実現する黒鉛構造体10Aの製造方法を提供することができる。
このため、挿入工程においては、小径部22の外周面221または凹部32の内周面321を削りながら凹部32に小径部22を挿入するので、端面炭素系接着部25および周面炭素系接着部24がなくても摩擦力によって第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30とが強固に固定される。
これにより、端面炭素系接着部25の強度低下を起こしにくく、高強度の接合を実現する黒鉛構造体10Aを得ることができる。
周面炭素系接着材241と、端面炭素系接着材251とが同一であると、硬化の挙動が同じであるので同じ条件で硬化、炭素化することができ、強度の劣化を小さくすることができる。
中でも、第1黒鉛部材20および第2黒鉛部材30に用いる黒鉛材料には、等方性黒鉛を用いることが好ましい。等方性黒鉛は、組織が細かく特に高強度であるので、高強度の接合と組み合わせることによってさらに高強度の黒鉛構造体10Aを提供することができる。
黒鉛ヒータの製造方法には、上述した黒鉛構造体の製造方法を適用することができる。上述した黒鉛構造体の製造方法で得られる黒鉛構造体10Aは、第1黒鉛部材20の小径部22の最大直径寸法D1と第2黒鉛部材30の凹部32の内径寸法D2が等しくなるので、第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30が直接接することができる。
第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30を接合する周面炭素系接着部24に用いる周面炭素系接着材241は、硬化を経て炭素化している固相炭素化した物質である。
しかしながら、周面炭素系接着部24は固相炭素化によって得られているので、結晶化度が高めにくく、低い抵抗が得られにくい。このため、第1黒鉛部材20の小径部22の最大直径寸法D1と第2黒鉛部材30の凹部32の内径寸法D2が等しくなって、第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30が直接接するので、周面炭素系接着部24が発熱しにくく黒鉛ヒータ50A、50Bとして好適に利用することができる。
また、黒鉛ヒータ50A、50Bの黒鉛材料は特に限定されない。押出黒鉛、等方性黒鉛などを利用することができる。中でも等方性黒鉛は、固有抵抗の異方性が小さいので、ヒータ設計時に電流の流れる方向の考慮が不要であるので黒鉛ヒータ50A、50Bとして好適に利用できる。
黒鉛構造体10Aは、略円柱形状の第1黒鉛部材20と、第1黒鉛部材20に同軸配置された小径部22と、第1黒鉛部材20に対して同軸連結された略円柱形状の第2黒鉛部材30と、を有する。小径部22は、第1黒鉛部材20よりも小径で、かつ、外周面221に凹凸23が設けられている。
また、第2黒鉛部材30は、小径部22が挿入可能な凹部32が第2黒鉛部材先端面31に設けられている。
そして、小径部22の外周面221および凹部32の内周面321間には、周面炭素系接着部24が介装されるとともに、凹部32の内径寸法D2は、小径部22の最大直径寸法D1と等しい。
また、小径部22の外周面221と凹部32の内周面321とが、削れた黒鉛の粉と周面炭素系接着部24により密着して接着される。
これにより、第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30とを、電気抵抗が低く、高強度で接合することができる。
また、第1の溝231に保持された周面炭素系接着材241がいずれの箇所でも第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30を接合することができるので、高強度の接合を行うことができる。
これにより、挿入する際に必要な力に変動が少なく突起部分に大きな欠けを生じにくくすることができる。
すなわち、第1黒鉛部材20の小径部22を第2黒鉛部材30の凹部32に挿入する際には、互いに表面を摩擦しながら挿入するので、摩擦によって削られ黒鉛粒子BPが生じる。生じた黒鉛粒子BPは小径部22の第1の溝231に捕らえられ、底に滞留する。
また、第1の溝231には塗布された周面炭素系接着材241が保持されており、生じた黒鉛粒子BPは周面炭素系接着材241と混ざり、骨材として機能する。
このため、接着力を強化することができる。
これにより、第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30とを、強力に接合できる。
コプナ樹脂は脱水縮合反応によって炭素原子と直接結びつくことができるので高強度の黒鉛構造体10Aを得ることができる。
黒鉛ヒータ50A、50Bは、前述した黒鉛構造体10Aを用いて形成される。
これにより、第1黒鉛部材20の小径部22を第2黒鉛部材30の凹部32に押し込むと、小径部22の外周面221の凹凸23が擦れて削れるので、第1黒鉛部材20の小径部22と第2黒鉛部材30の凹部32とが直接接触する。
また、小径部22の外周面221と凹部32の内周面321とが、削れた黒鉛の粉と周面炭素系接着部24により密着して接着される。
これにより、第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30とを、電気抵抗が低く、高強度で接合することができる。
黒鉛構造体の製造方法は、第1黒鉛部材20の第1黒鉛部材先端面21に、第1黒鉛部材20よりも小径、かつ、外周面221に凹凸23が設けられた小径部22を同軸配置する。また、第2黒鉛部材30の第2黒鉛部材先端面31に、小径部22が挿入可能、かつ、小径部22の最大直径寸法D1よりも小さな内径寸法D2を有する凹部32を設ける。
その後、挿入工程において、小径部22の外周面221および凹部32の内周面321のうちの少なくとも一方を削りながら小径部22を凹部32に挿入させる。
次いで、熱処理工程において、第1黒鉛部材20および第2黒鉛部材30を加熱することにより、周面炭素系接着材241を炭素化させることにより硬化させて、周面炭素系接着部24を形成する。
これにより、第1黒鉛部材20の小径部22と第2黒鉛部材30の凹部32の内周面321とが直接接触する。また、小径部22の外周面221と凹部32の内周面321とが、削れた黒鉛の粉と周面炭素系接着部24により密着して接着される。
これにより、第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30とを、電気抵抗が低く、高強度で接合することができる。
このため、第1黒鉛部材20の小径部22を第2黒鉛部材30の凹部32に挿入する際に、常に隣り合う二つの第1の溝231が形成する突起部分が、凹部32の入口側の端部に接触している。
これにより、挿入する際に必要な力に変動が少なく突起部分に大きな欠けを生じにくくすることができる。
このため、第1黒鉛部材先端面21と第2黒鉛部材先端面31とを、端面炭素系接着部25を介して接合するので、第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30とを、強力に接合することができる。
コプナ樹脂は脱水縮合反応によって炭素原子と直接結びつくことができるので高強度の黒鉛構造体10Aを得ることができる。
黒鉛ヒータの製造方法は、前述したいずれかに記載の黒鉛構造体の製造方法を用いたので、第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30とを、電気抵抗が低く、高強度で接合することができる。
次に、第2実施形態の黒鉛構造体について説明する。
なお、前述した第1実施形態の黒鉛構造体10Aと共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
図9(A)および図9(B)に示すように、第2実施形態の黒鉛構造体10Bでは、小径部22Bが第1黒鉛部材20Bと別体で設けられている。第1黒鉛部材20Bの第1黒鉛部材先端面21には、第2黒鉛部材30の凹部32と同様の第1黒鉛部材凹部26が設けられている。従って、第1黒鉛部材凹部26の内径寸法は、小径部22の最大直径寸法よりも小さい。
第1黒鉛部材凹部26の内周面261には、凹部32の凹凸33と同様の凹凸27が設けられている。
なお、小径部22Bと第2黒鉛部材30との関係は、第1実施形態の黒鉛構造体10Aと同様である。
その後は、第1実施形態における黒鉛構造体の製造方法と同様の製造方法によって、黒鉛構造体10Bを製造する。
次に、第3実施形態の黒鉛構造体について説明する。
なお、前述した第1実施形態の黒鉛構造体10Aおよび第2実施形態の黒鉛構造体10Bと共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
図10(A)、図10(B)、図11(A)および図11(B)に示すように、第3実施形態の黒鉛構造体10Cでは、凹部32の内周面321に、凹凸33として複数列の螺旋状の第2の溝331を設けた。複数列の第2の溝331は、二重螺旋形状に設けられている。
なお、第1の溝231および第2の溝331を螺旋形状の溝とする場合には、第1の溝231と第2の溝331とが螺合しないように、螺旋の形状(ピッチや角度)や、螺旋の向き等を異なるものとする。ここでは、第2の溝331は、二重螺旋形状となっているので、第1の溝231は、その一方の螺旋とも螺合しないようにする。
これにより、周面炭素系接着部24は、第1の溝231および第2の溝331の内部にあって、凹部32と小径部22とを接続することができる。
また、硬化前の周面炭素系接着材241は液状であるので、第1黒鉛部材20及び第2黒鉛部材30Cの気孔内部に浸透し、第1黒鉛部材20及び第2黒鉛部材30Cの直接接合する部位の接合を補強することができる。
第2の溝331の深さは特に限定されないが、5〜500μmであることが好ましい。第2の溝331の深さが5μm以上であると、第1黒鉛部材20及び第2黒鉛部材30Cの気孔内部に吸収されても十分な強度を維持できるだけの周面炭素系接着材241を第2の溝331に保持することができる。
第2の溝331は、凹部32の内周面の全面に形成されていることが好ましい。複数列の第2の溝331が凹部32の全面に形成されていると、第2の溝331に保持された周面炭素系接着部24がいずれの箇所でも第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30Cを接合することができるので、高強度の接合をした黒鉛構造体10Cを提供することができる。
このため小径部22を凹部32に挿入する際には、互いに表面を摩擦しながら挿入することとなる。第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30Cは共に材質が黒鉛であるので、摩擦によって削られ黒鉛粒子BPが生じるが、生じた黒鉛粒子BPは凹部32の内周面321を周回する複数列の第2の溝331に捕らえられ、底に滞留する。
第2の溝331は、二重螺旋形状をしているので、第1黒鉛部材20を第2黒鉛部材30Cに挿入する際に、常に隣り合う二つの第2の溝331が形成する突起部分が、小径部22の先端面に接触している。
このため、挿入する際に必要な力に変動が少なく突起部分に大きな欠けを生じにくくすることができる。
また、第2の溝331に保持された周面炭素系接着材241がいずれの箇所でも第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30Cを接合することができるので、高強度の接合を行うことができる。
これにより、挿入する際に必要な力に変動が少なく突起部分に大きな欠けを生じにくくすることができる。
このため、凹部32の内周面321には、第2の溝331が複数設けられているので、十分な強度を維持できるだけの周面炭素系接着材241を第2の溝331に保持することができる。
また、第2の溝331に保持された周面炭素系接着材241が、いずれの箇所でも第1黒鉛部材20と第2黒鉛部材30Cを接合するので、高強度の接合を行うことができる。
このため、第1黒鉛部材20を第2黒鉛部材30Cに挿入する際に、常に隣り合う二つの第2の溝331が形成する突起部分が、小径部22の入口側の端部に接触する。
これにより、挿入する際に必要な力に変動が少なく突起部分に大きな欠けを生じにくくすることができる。
次に、第4実施形態の黒鉛構造体について説明する。
なお、前述した第1実施形態の黒鉛構造体10Aないし第3実施形態の黒鉛構造体10Cと共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
図12(A)および図12(B)に示すように、第4実施形態の黒鉛構造体10Dでは、第1黒鉛部材20Dおよび第2黒鉛部材30Dが、円管状の中空部材となっている。小径部22Dも中空部材となっている。また、凹部32の底面322にも開口が設けられている。
従って、黒鉛構造体10Dの中心部には、中空部28が長手方向に連続して設けられており、全体が円管状となっている。
さらに、黒鉛構造体10Dは、管状部材としての使用も可能となる。
20、20B、20D 第1黒鉛部材
21 第1黒鉛部材先端面(端面)
22、22B、22D 小径部
221 外周面
23 凹凸
231 第1の溝
24 周面炭素系接着部
241 周面炭素系接着材
25 端面炭素系接着部
251 端面炭素系接着材
30、30D 第2黒鉛部材
31 第2黒鉛部材先端面(端面)
32 凹部
321 内周面
33 凹凸
331 第2の溝
50A、50B 黒鉛ヒータ
D1 最大直径寸法
D2 内径寸法
Claims (18)
- 略円柱形状の第1黒鉛部材と、
前記第1黒鉛部材に同軸配置され、前記第1黒鉛部材よりも小径、かつ、外周面に凹凸である第1の溝が設けられた小径部と、
前記小径部が押し込まれるように挿入可能であって、略円柱形状の空間を囲む凹部が端面に設けられ、前記第1黒鉛部材に対して前記凹部が同軸連結された第2黒鉛部材と、
前記小径部の外周面および前記凹部の内周面間に介装された周面炭素系接着部とを備え、
前記小径部の最大直径寸法と前記凹部の内径寸法とが等しい黒鉛構造体。 - 請求項1に記載の黒鉛構造体であって、
前記第1黒鉛部材および前記小径部が一体的に形成されている黒鉛構造体。 - 請求項1または請求項2に記載の黒鉛構造体であって、
前記凹部の内周面に凹凸が設けられている黒鉛構造体。 - 請求項1に記載の黒鉛構造体であって、
前記第1の溝が螺旋状に設けられている黒鉛構造体。 - 請求項1または請求項4に記載の黒鉛構造体であって、
前記凹部の内周面に第2の溝が複数列設けられている黒鉛構造体。 - 請求項5に記載の黒鉛構造体であって、
前記各第2の溝が螺旋状に設けられている黒鉛構造体。 - 請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の黒鉛構造体であって、
前記周面炭素系接着部は、前記小径部の外周面および前記凹部の内周面のうちの少なくとも一方が削られた骨材が含まれている黒鉛構造体。 - 請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1項に記載の黒鉛構造体であって、
互いに対向する前記第1黒鉛部材の端面および前記第2黒鉛部材の端面が端面炭素系接着部を介して接合されている黒鉛構造体。 - 請求項8に記載の黒鉛構造体であって、
前記周面炭素系接着部および前記端面炭素系接着部が同一材質である黒鉛構造体。 - 請求項8に記載の黒鉛構造体であって、
前記周面炭素系接着部および前記端面炭素系接着部のうちの少なくとも一方がコプナ樹脂の炭化物である黒鉛構造体。 - 請求項1ないし請求項10のうちのいずれか1項に記載の黒鉛構造体を用いた黒鉛ヒータ。
- 略円柱形状の第1黒鉛部材および略円柱形状の空間を囲む凹部を端面に有する第2黒鉛部材とを、前記第1黒鉛部材に対して凹部を同軸配置させる黒鉛構造体の製造方法であって、
前記第1黒鉛部材よりも小径、かつ、外周面に凹凸である第1の溝が設けられた小径部を前記第1黒鉛部材の端面に同軸配置するとともに、
前記第2黒鉛部材の端面の凹部は前記小径部が挿入可能、かつ、前記小径部の最大直径寸法よりも小さな内径寸法を有し、
前記小径部の外周面および前記凹部の内周面のうちの少なくとも一方に周面炭素系接着材を塗布する周面炭素系接着材塗布工程を行った後、
前記小径部の外周面および前記凹部の内周面のうちの少なくとも一方を削りながら前記小径部を前記凹部に押し込む挿入工程を行い、
次いで、前記第1黒鉛部材および前記第2黒鉛部材を加熱することにより、前記周面炭素系接着材を炭素化させることにより硬化させて周面炭素系接着部を形成する熱処理工程を行う黒鉛構造体の製造方法。 - 請求項12に記載の黒鉛構造体の製造方法であって、
あらかじめ前記小径部の外周面に第1の溝を螺旋状に設けておく黒鉛構造体の製造方法。 - 請求項12に記載の黒鉛構造体の製造方法であって、
あらかじめ前記凹部の内周面に複数列の第2の溝を設けておく黒鉛構造体の製造方法。 - 請求項14に記載の黒鉛構造体の製造方法であって、
前記各第2の溝を螺旋状に形成しておく黒鉛構造体の製造方法。 - 請求項12ないし請求項15のうちのいずれか1項に記載の黒鉛構造体の製造方法であって、
互いに対向する前記第1黒鉛部材の端面および前記第2黒鉛部材の端面のうちの少なくとも一方に端面炭素系接着材を塗布する端面炭素系接着材塗布工程を前記熱処理工程の以前に行う黒鉛構造体の製造方法。 - 請求項12ないし請求項16のうちのいずれか1項に記載の黒鉛構造体の製造方法であって、
前記周面炭素系接着材および前記端面炭素系接着材のうちの少なくとも一方がコプナ樹脂である黒鉛構造体の製造方法。 - 請求項12ないし請求項17のうちのいずれか1項に記載の黒鉛構造体の製造方法を用いた黒鉛ヒータの製造方法。
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