JP6107171B2 - プラズマ光源及び極端紫外光発生方法 - Google Patents

プラズマ光源及び極端紫外光発生方法 Download PDF

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Description

本発明は、極端紫外光を発生するプラズマ光源及び極端紫外光の発生方法に関する。
プロセスルールを決定する一要因であるフォトリソグラフィは、半導体回路の微細化を進める上で極めて重要な技術である。現在、ArFエキシマレーザー(波長193nm)と液浸技術を組み合わせることで45nm程度のプロセスルールが得られているが、更なる微細化に対応するためには更に波長の短い光が必要である。このような状況の中、上記レーザー光よりも短い光を生成する次世代のフォトリソグラフィ用光源として、極端紫外(EUV)光源(軟X線源とも称される)が最も有力視されている。
極端紫外光を発生する光源の1つに、高エネルギー密度プラズマを利用したものがある。この光源では高温プラズマを生成し、その輻射光として極端紫外光を得ている。高温プラズマの生成には、パルスレーザーの照射を用いるレーザー生成プラズマ(LPP:Laser Produced Plasma)方式と、パルス放電を用いる放電プラズマ(DPP:Discharge Produced Plasma)方式とがある。なお、上記の何れの方式においても、発生する極端紫外光はパルス光である。
特許文献1及び特許文献2は、上述の極端紫外光源として、DPP方式によるプラズマ光源を開示している。
特開2010−147231号公報 特開2004−226244号公報
フォトリソグラフィでは露光時間の制御が極めて重要である。そのため、十分な強度及び輝度の光を確保するだけでなく、これらを安定に得る必要がある。つまり、上述のプラズマ光源においては毎回の放電を確実に行い、パルス状のプラズマを連続的に発生させることが肝要である。また、極端紫外光を得るにはプラズマの高温化が必須であるが、DPP方式によるプラズマ光源ではプラズマの高温化による電極の劣化や損傷、それに伴う不要物の発生が避けられない。従って、供給エネルギーのうち、不要な光の発生に費やされるエネルギーを抑制し、効率良く所望の波長の極端紫外光を発生させる必要がある。
上記の事情を鑑み、本発明は、強度の大きい極端紫外光を長時間安定に得ることが可能なプラズマ光源の提供を目的とする。
本発明の第1の態様はプラズマ光源であって、対称面を挟んで互いに対向配置され、極端紫外光を放射するプラズマを発生すると共に前記プラズマを閉じ込める一対の同軸状電極と、前記プラズマのプラズマ媒体を含むプラズマ媒体領域と、各前記同軸状電極に対して放電電圧を印加する電圧印加装置と、レーザー装置とを備え、各前記同軸状電極は、単一の軸線上に延びる棒状の中心電極と、前記中心電極の外周を囲むように設けられた外部電極と、前記中心電極及び前記外部電極の間を絶縁する絶縁体とを有し、前記プラズマ媒体領域の第1の領域は、前記中心電極の側面、前記外部電極における前記中心電極との対向面、前記絶縁体における前記中心電極と前記外部電極との間の表面のうちの少なくとも1つに形成され、前記プラズマ媒体領域の第2の領域は、前記中心電極の前記側面、前記外部電極における前記対向面、前記中心電極に対して前記外部電極と同距離以上に位置するプラズマ媒体保持部材のうちの少なくとも1つに形成され、且つ、前記第1の領域よりも前記対称面の近くに位置し、前記レーザー装置は、前記レーザー光としての第1のレーザー光を前記第1の領域に照射してアブレーションを行うと共に前記放電電圧によるプラズマシートを発生させた後、前記プラズマシートの進行に合わせて前記第2の領域に第2のレーザー光を照射してアブレーションを行うことを要旨とする。
前記第2の領域は前記中心電極の前記側面に形成され、前記中心電極の先端部と前記第1の領域との間に位置してもよい。
本発明の第2の態様は、対称面を挟んで互いに対向配置され、極端紫外光を放射するプラズマを発生すると共に前記プラズマを閉じ込める一対の同軸状電極を用いた極端紫外光の発生方法にであって、各前記同軸状電極に対して放電電圧を印加し、プラズマ媒体を含むプラズマ媒体領域の第1の領域に第1のレーザー光を照射して前記第1の領域における前記プラズマ媒体のアブレーションを行うと共に前記放電電圧によるプラズマシートを発生させ、前記第1の領域よりも前記対称面に近い前記プラズマ媒体領域の第2の領域に、前記プラズマシートの進行に合わせて、第2のレーザー光を照射して前記プラズマ媒体のアブレーションを行うことを要旨とする。
本発明によれば、強度の大きい極端紫外光を長時間安定に得ることが可能なプラズマ光源を提供することができる。
本発明に係る極端紫外光の発生方法を説明するための図である。 本発明に係る極端紫外光の発生方法を説明するための図である。 本発明の一実施形態に係るプラズマ光源の概略構成図である。 図3に示す同軸状電極の要部を示す図である。 図4のV−V断面を示す図である。 本発明の一実施形態に係るプラズマ光源の動作を時系列に示した図である。 本発明の一実施形態に係る同軸状電極の変形例を示す概略構成図であり、(A)は中心電極の軸線Z−Zを含む断面図、(B)は(A)におけるB−B断面図である。
まず、本発明の原理について説明する。図1及び図2は本発明に係る極端紫外光の発生方法を説明するための図である。本発明ではDPP方式のプラズマ光源が用いられる。つまり、極端紫外光は、プラズマ光源内にガス状のプラズマ媒体を供給し、放電により当該プラズマ媒体を逐次的に電離することで得られる。換言すれば、プラズマ媒体を含んだプラズマを放電エネルギーによって加熱することで、所望の極端紫外光の放出確率が高いプラズマ媒体の価数分布を得る。
図1に示すように、本発明のプラズマ光源は一対の同軸状電極100、100を備える。一対の同軸状電極100は、対称面101を挟んで対称な位置関係で真空中に設置されている。各同軸状電極100は単一の軸線Z−Zを中心軸とした棒状の中心電極112と、中心電極112を囲むように軸線Z−Zの周りに配置された外部電極114とを有する。各同軸状電極100の中心電極112と外部電極114との間には電圧印加装置(図示せず)によって予め高電圧(放電電圧)が印加されている。
中心電極112の側面にはプラズマ媒体領域127a、127bが形成されている。プラズマ媒体領域127a、127bは、極端紫外光の発生成分であるプラズマ媒体を液体又は固体の状態で保持する。プラズマ媒体領域127a、127bは軸線Z−Zに沿って形成され、プラズマ媒体領域(第2の領域)127bは、プラズマ媒体領域(第1の領域)127aよりも一対の同軸状電極100、100の中心(即ち、対称面101)に近い場所に位置している。
本発明では、空間へのプラズマ媒体の供給手段として、レーザー光(第1レーザー光)164を用いる。即ち、レーザー光164をプラズマ媒体領域127aに照射し、当該領域のアブレーションを行う。このアブレーションにより、ガス状のプラズマ媒体Pm1がプラズマ媒体領域127aから中心電極112‐外部電極114間の空間に放出される。
上述したように、各同軸状電極100の中心電極112と外部電極114との間には予め高電圧(放電電圧)が印加されている。従って、レーザー光164によって、アブレーションと同時に、中心電極112と外部電極114との間で面状放電102が発生する。面状放電102は軸線Z−Zに対してほぼ垂直な方向に2次元的に広がっており、軸線Z−Zから見て略環状に形成される。なお、面状放電は、電流シート又はプラズマシートとも呼ばれる。
面状放電102は、ガス状のプラズマ媒体Pm1を逐次的に電離しながら、自己磁場によって電極から排出される方向(図1の対称面101に向かう方向)に移動する。面状放電102が同軸状電極100の先端に達した後も、対称面101に向かう力は維持される。その結果、面状放電102の電流の起点又は終点が中心電極112の先端部に集中する。また、もう一方の同軸状電極100でも同様面状放電が発生し、同様の現象が生じる。従って、プラズマ媒体Pm1は、それぞれの同軸状電極100から発生した面状放電102の間に挟まれ、単一のプラズマPが形成される。プラズマPが形成された後も、ピンチ効果による高密度化及び高温化は進行する。その結果、プラズマPからは極端紫外光が放出される。
ところで、面状放電102の電流値Idの変化(図2参照)は、電圧印加装置の時定数に依存している。この時定数は、面状放電102が同軸状電極100の先端付近に達した時点で電流値Idが最大となるように設定されている。逆に言えば、電流値Idは、面状放電102が発生した初期には比較的小さい。一般的に、放電によって生成されるプラズマ媒体のイオンの数は、当該プラズマ媒体の密度と単位面積当たりの放電電流値との積に比例している。これを考慮すると、アブレーションが発生した時点のプラズマ媒体Pm1の粒子数は豊富であるものの、これを電離するための電流値Idは不足している可能性がある。また、放出したプラズマ媒体Pm1は拡散し、面状放電102は対称面101に移動する。従って、プラズマP内に残留したプラズマ媒体Pm1の量は、アブレーション直後に放出されたプラズマ媒体Pm1の量に強く依存してしまう。
そこで本発明では、レーザー光164とは別のレーザー光(第2レーザー光)165を導入する。このレーザー光165を、レーザー光164によって発生した面状放電102の進行に合わせて、プラズマ媒体領域127bに照射し、当該領域のアブレーションを行う。即ち、面状放電102がプラズマ媒体領域127bに到達した時あるいはその直前にレーザー光165を照射し、アブレーションを行う。このアブレーションにより、ガス状のプラズマ媒体Pm2がプラズマ媒体領域127bから中心電極112‐外部電極114間の空間に放出される。放出されたプラズマ媒体Pm2は、電流値Idが増加した面状放電102に取り込まれる。そのため、電離されるプラズマ媒体の量が増加する。換言すれば、レーザー光165は面状放電102内で電離されるプラズマ媒体を補充する。従って、プラズマP内にはプラズマ媒体Pm1に加えて、プラズマ媒体Pm2が残留することになり、より大きな強度の極端紫外光を得ることが可能になる。
なお、プラズマ媒体領域127bは、プラズマ媒体領域127aと中心電極112の先端部112aとの間に位置することが望ましい。即ち、中心電極112の表面において、プラズマPを形成するための電流集中が発生する領域以外の領域に位置することが望ましい。このような位置にプラズマ媒体領域127bを形成することで、プラズマ媒体領域127bが極度に高温のプラズマPに晒されることを防止できる。つまり、プラズマ媒体Pm2の無用な蒸発を防止でき、且つ、プラズマPの熱による損傷を防止できる。また、面状放電102の移動経路上にガス状のプラズマ媒体Pm2が放出されるため、当該ガス状のプラズマ媒体Pm2を面状放電102に確実に取り込ませることができる。
次に、本発明の実施形態に係るプラズマ光源の構成について説明する。図3に示すように、本実施形態のプラズマ光源は、一対の同軸状電極10、10、チャンバー20及び電圧印加装置30を備える。
一対の同軸状電極10は、対称面1を挟んで対称な位置関係でチャンバー20内に設置されている。換言すれば、各同軸状電極10は対称面1を中心として、一定の間隔を隔てて互いに対向するよう配置される。チャンバー20は、排気管22を介して真空ポンプ(図示せず)に接続されており、所定の真空度に維持されている。なお、チャンバー20は接地されている。
各同軸状電極10は、中心電極12と、複数の外部電極14と、絶縁体16とを備える。中心電極12と外部電極14の間には極端紫外光を放射するプラズマ媒体が導入される。プラズマ媒体は、必要とされる紫外線の波長に応じて選択される。例えば13.5nmの紫外光が必要な場合はLi、Xe、Sn等の少なくとも1つを含むガスであり、6.7nmの紫外光が必要な場合はその紫外光を発するGd、Tb、Bi等の少なくとも1つを含むガスである。
図3〜図5に示すように、中心電極12は、各同軸状電極10に共通する単一の軸線Z−Zを中心軸(以下、この軸を中心軸Zと称する)として、この中心軸Z上に延びる棒状の導電体である。中心電極12は、高温プラズマに対して損傷され難い金属を用いて形成される。このような金属は、例えばタングステンやモリブデン等の高融点金属が挙げられる。
本実施形態において、対称面1に対向する中心電極12の端面は半球状の曲面になっている。ただし、この形状は必須ではなく、端面に図1に示すような凹部を設けてもよく、或いは単なる平面でもよい。
図4に示すように、中心電極12の側面には、プラズマ媒体領域の第1の領域及び第2の領域として、金属層(薄膜)27a、27bがそれぞれ形成されている。金属層(薄膜)27a、27bは軸線Z−Zに沿って形成され、金属層27bは、金属層27aよりも一対の同軸状電極10、10の中心(即ち、対称面1)に近い場所に位置している。
金属層27aには、上述の第1レーザー光としてのレーザー光64が照射され、金属層27bには上述の第2レーザー光としてのレーザー光65が照射される(図3参照)。金属層27a、27bは、極端紫外光を発するプラズマ媒体としてのLiやGd等の金属を含み、図4に示すようにレーザー光64(65)が照射される箇所のみ、或いは、中心軸Zの周方向に亘って全体的に形成される。図4に示す例では、中心軸Zを挟む2箇所に金属層27a、27bがそれぞれ形成されている。なお、プラズマ媒体領域は多孔質金属に液体のプラズマ媒体を浸潤させる構成でもよい。この場合、多孔質金属は中心電極12の主要な構成金属(例えばタングステンやモリブデン)と同一のものでもよい。
図5に示すように、外部電極14は、中心電極12の中心軸Zと平行に延びる棒状の導電体であり、中心電極12と一定の間隔を隔てながら、中心電極12の周方向に沿って角度θ毎に複数配置されている。換言すると、各外部電極14は中心電極12と平行に配置され、中心電極12の周囲を囲んでいる。図5に示す例では、6本の外部電極14が中心電極12の周りで60°毎に配置されている。
各外部電極14はその軸方向に垂直な面において、中心電極12との距離が最短となる点Gを1点だけ含む断面を有する。このような形状の断面は、例えば、図5に示す円である。断面は、この円形に限られず、少なくとも中心電極12に対向する面が、中心電極12に向かって突出する曲面を有していればよい。また、何れの場合も、点Gが中心電極12の周りで角度θ毎に配置される。
各外部電極14は中心電極12の周方向に沿って等間隔に配列することが望ましい。例えば、加工や組み立ての観点から、各外部電極14は中心電極12に対して回転対称な位置に設置することが望ましい。しかしながら、本発明はこのような配列は厳密なものではない。また、外部電極14の本数も6本に限定されず、中心電極12及び外部電極14の大きさや形状、両者の間隔などに応じて適宜設定される。
なお、外部電極14は、中心電極12と同じく、高温プラズマによる損傷に耐え得るタングステンやモリブデン等の高融点金属等を用いて形成される。また、対称面1に対向する外部電極14の端面は曲面、平面の何れでもよい。
このように、中心電極12の周りに複数の外部電極14を配置することで、図6(A)に示す面状放電2に至る初期放電(例えば沿面放電)を、各外部電極14と中心電極12との間で発生させることができる。即ち、各点Gを放電経路に含む初期放電を優先的に発生させることで、当該初期放電を中心電極12の全周に亘って発生させることが可能になり、環状の面状放電2の形成が容易になる。
絶縁体16は例えばセラミックを用いて形成され、中心電極12と外部電極14の各基部を支持して両者の間隔を規定すると共にその間を電気的に絶縁する。絶縁体16は例えば円盤状に形成され、中心電極12及び外部電極14が貫通する貫通孔を有する。
次に、本実施形態のプラズマ光源における電気系統について説明する。図1に示すように、プラズマ光源は各同軸状電極10に接続する電圧印加装置30を備える。電圧印加装置30は、各同軸状電極10に同極性の放電電圧を印加する。
具体的には、第1実施形態の電圧印加装置30は、2台の高圧電源32、34を備える。高圧電源(以下、単に電源と称する)32の出力側は、一方(例えば図1の左側)の同軸状電極10の中心電極12に接続し、この中心電極12に対応する外部電極14よりも高い正の放電電圧を印加する。高圧電源(以下、単に電源と称する)34の出力側は、他方(例えば図1の右側)の同軸状電極10の中心電極12に接続し、この中心電極12に対応する外部電極14よりも高い正の放電電圧を印加する。従って、例えば、何れの外部電極14も接地されている場合は、これらに対応する中心電極12の電位は正になる。
なお、各中心電極12を経由した電流(即ち、全ての放電電流)をオシロスコープで観察するため、高圧電源32、34の各コモン側(リターン側)には、ロゴスキーコイル等を用いて誘導結合された線路を設けてもよい。
上述の通り、各中心電極12の周囲には複数の外部電極14が設けられている。理想的な面状放電2を得るには、全ての外部電極14と中心電極12との間で、放電が発生する必要がある。しかも、これらの放電が中心電極12の周りで等間隔に分布していることが望ましい。このため本実施形態の各外部電極14は、中心電極12に対向する面を曲面にして、優先的に放電する箇所を規定している。しかしながら、放電箇所を固定し、後述するレーザー光64を各中心電極12の金属層27aに同時に照射したとしても、各外部電極14と中心電極12との間の放電を厳密に同時に発生させることは困難であり、実際には各放電の発生タイミングに多少のずれが生じる。各高圧電源32、34から供給される放電エネルギーは最初に発生した放電に対して優先的に費やされる傾向があり、この場合は複数の放電を略同時に発生させることが困難になる。
そこで、本実施形態のプラズマ光源は、電圧印加装置30からの放電電圧を放電エネルギーとして外部電極14毎に蓄積するエネルギー蓄積回路50を備えている。エネルギー蓄積回路50は、例えば図1に示すように中心電極12と各外部電極14との間を個別に接続する複数のコンデンサCで構成される。各コンデンサCは、高圧電源32、34の各出力側及び各コモン側に接続される。
このように、放電エネルギーを蓄積するコンデンサCを外部電極14毎に設けることで、全ての外部電極14において放電を発生させることができる。即ち、最初に発生した放電によって多くの放電エネルギーが消費されることを防止でき、中心電極12の全周に亘って発生する理想的な面状放電2を得ることができる。
さらに、本実施形態のプラズマ光源は、電圧印加装置30に放電電流が帰還することを阻止する放電電流阻止回路52を備えてもよい。放電電流阻止回路52は、例えば図1に示すように各外部電極14と電圧印加装置30(具体的には高圧電源32、34の各コモン側)との間を接続するインダクタLで構成される。インダクタLは、放電電流に対して十分に高いインピーダンスを有するため、中心電極12及び外部電極14を経由した放電電流を、その発生源であるエネルギー蓄積回路50に戻すことができる。つまり、各コンデンサCに蓄積された放電エネルギーが、当該コンデンサCに直結した外部電極14以外の外部電極14に供給されることを防止できるため、中心電極12の周方向における放電の発生分布に偏りが生じることを防止できる。
上述したように、本実施形態のプラズマ光源は、各同軸状電極10の中心電極12の表面に対して、プラズマ3の媒体を放出させると共にプラズマ3の初期放電(即ち、面状放電2)を発生させるためのレーザー光(第1のレーザー光)64を照射し、且つ、初期放電後に更にプラズマ3の媒体を放出させるためのレーザー光(第2のレーザー光)65を照射するレーザー装置60を備える。レーザー装置60は、例えば、レーザー光64を発生するレーザー光源61と、レーザー光65を発生するレーザー光源62と、レーザー光源61とレーザー光源62の光出力タイミングをずらすためのディレイ装置63とを備える。レーザー光源61とレーザー光源62は、例えばYAGレーザーであり、アブレーションを行うために基本波の二倍波を、短パルスのレーザー光64、65としてそれぞれ出力する。なお、レーザー光64と、レーザー光65のパルス幅は同一でもよく、異なっていてもよい。
ディレイ装置63は、レーザー光64の出力に対してレーザー光65の出力を遅延させる。この遅延時間は、レーザー光64によって発生した面状放電2の進行に合わせて適宜設定される。即ち、遅延時間は、面状放電2が金属層27bに到達した時又はその直前にレーザー光65が金属層27bに照射される時間に設定される。なお、ディレイ装置63は電気的な制御でもよく、光ファイバを用いた光学的な制御でもよい。
レーザー光64が金属層27aに照射されると、アブレーションによってその一部がプラズマ媒体である中性ガス又はイオンとなって、中心電極12と外部電極14との間の空間に放出される。同様に、レーザー光65が金属層27bに照射されると、アブレーションによってその一部がプラズマ媒体である中性ガス又はイオンとなって、中心電極12と外部電極14との間の空間に放出される。
一方、レーザー光64の照射時には、各同軸状電極10の中心電極12と外部電極14に電圧印加装置30による放電電圧が既に印加されている。従って、上述のアブレーションが発生すると、中心電極12と各外部電極14間の初期放電が誘発される。さらに、この初期放電によって面状放電2(図6(B)参照)が形成される。
なお、初期放電の発生箇所は、レーザー光64の照射領域及びその近傍に制限される可能性がある。従って、レーザー光64は中心軸Zの周方向に沿って間隔を置いて、複数且つ同時に照射することが好ましく、その数は少なくとも2箇所である(図1参照)。
これは、誘発された放電の領域が、中心電極12の軸を基点に180度以上の開き角があった実験結果に基づいている。この結果を考慮すると、照射箇所の数が少ないほど中心電極12に対して回転対称な位置にレーザー光64を照射することが望ましい。なお、複数のレーザー光の同時照射は、ビームスプリッタ及びミラー等の光学素子を用いて光路長を合わせた複数の光路を形成することで容易に達成できる。
一方、レーザー光65による照射は、既に発生した面状放電2にプラズマ媒体を補給するためのものであるため、照射箇所は少なくとも1箇所あれば十分である。ただし、面状放電2へのプラズマ媒体の補給箇所は空間的に偏りがないほうが望ましい可能性もあり、そのような場合は、レーザー光64と同じく、中心電極12に対して回転対称な複数の位置にレーザー光65を照射することが望ましい。
次に、上記の構成のプラズマ光源の動作について説明する。図6は、図3に示すプラズマ光源の動作を時系列に示した図である。この図6において、(A)はレーザー光64の照射時、(B)は面状放電2の発生時、(C)は面状放電2の移動およびレーザー光65の照射時、(D)はプラズマ3の発生時、(E)はプラズマ3の初期閉じ込め時、(F)は高温・高密度化されたプラズマ3、の各状態を示している。
上述の通り、本実施形態のプラズマ光源では、チャンバー(図示せず)内に対称面1を中心に一対の同軸状電極10が対向配置される。チャンバー内は、プラズマの発生に適した温度及び圧力に保持される。また、放電前の各同軸状電極10には、電圧印加装置30により同極性の放電電圧が印加される。図6では、各同軸状電極10内の電極間の相対的な極性を(+)、(−)で示している。
図6(A)に示すように、放電電圧が印加された状態で各中心電極12の金属層27aにレーザー光64が同時に照射され、金属層27aのアブレーションが行われる。このアブレーションによって、金属層27aからはプラズマ3の媒体6(以下プラズマ媒体6)としてのLiを含む中性ガス又はイオンが放出される。また、照射直後、各同軸状電極10の中心電極12及び外部電極14の間で放電が発生する。上述したように、複数の外部電極14を設け、それぞれに対して中心電極12との間で放電が生じる。従って、図6(B)に示すように、中心電極12の全周に亘って放電が分布する面状放電2が得られる。面状放電2内ではプラズマ媒体の逐次的な電離が始まるが、初期の段階では面状放電2の電流値は小さく(図2参照)、電離されるプラズマ媒体6の量はまだ少数である。
図6(C)に示すように、面状放電2は、自己磁場によって電極から排出される方向(同図の対称面1に向かう方向)に移動する。この間に、電圧印加装置30から電流供給によって面状放電2の電流値は急速に上昇する(図2参照)。この電流値の上昇により、面状放電2内でのプラズマ媒体の電離確率も上昇する。そこで、プラズマ媒体6を補給するため、面状放電2が金属層27bに到達した時、又はその直前にレーザー光65を金属層27bに照射し、金属層27bのアブレーションを行う。このアブレーションによって、金属層27bからはプラズマ媒体6が再び放出され、面状放電2の中に取り込まれる。面状放電2は、その中に新たに取り込まれたプラズマ媒体6を電離する。従って、電離されるプラズマ媒体6の量が増加することになる。
その後、図6(D)に示すように、面状放電2は同軸状電極10の先端に達する。同軸状電極10の先端に達した後も、対称面1に向かう方向の力は維持される。また、面状放電2が中心電極12に達したことで、その放電電流の出発点であった中心電極12の円周側面12bが途切れ、放電電流の出発点は強制的に先端部12aに移行する。換言すれば、放電電流は先端部12aから集中的に流れ出す。この電流集中によるピンチ効果によって先端部12a周辺の電流密度は急激に上昇し、各面状放電2内及びその間に挟まれていたプラズマ媒体6は高密度、高温になる。
さらに、この現象は対称面1を挟んだ各同軸状電極10で進行するため、プラズマ媒体6は、一方の同軸状電極10から他方の同軸状電極10に向かって押し出される。その結果、プラズマ媒体6は、軸線Z−Z(中心軸Z)沿う両方向からの圧力を受けて各同軸状電極10が対向する中間位置(即ち、中心電極12の対称面1)に移動し、プラズマ媒体6を主成分とする単一のプラズマ3が形成される。
図6(E)に示すように、プラズマ3が形成された後も、各面状放電2は互いが接する又は交差するまで移動し、プラズマ3を全体的に包囲すると共に、プラズマ3を各中心電極12の中間付近に保持する。
上述の通り、面状放電2が発生している間は各中心電極12の先端部12aに各面状放電2の電流が集中する。従って、先端部12a周辺には、プラズマ3に対して軸線Z−Zに向かうピンチ効果が働き、プラズマ3は高密度化及び高温化が進行し、Liを含むイオンの電離が進行する。従って、図6(F)に示すように、プラズマ3からは極端紫外光を含むプラズマ光8が放射される。この状態において、プラズマ3の発光エネルギーに相当するエネルギーを電圧印加装置30から供給し続ければ、高いエネルギー変換効率でプラズマ光8を長時間に亘って発生させることができる。
図6に示すように、プラズマ3の発生時における各同軸状電極10周囲の電場及び磁場は、対称面1に対して対称に分布する。従って、プラズマ3も対称面1に対して対称に分布し、各同軸状電極10の一方への偏りが抑制される。また、各同軸状電極10の中心電極12は、対応する外部電極14よりも常に高電位に設定されている。つまり、電子の供給源は常に中心電極12の周囲にある複数の外部電極14全てが担う。そのため、面状放電2及びプラズマ3の発生中は、これらに流れる電子の放出面積を十分に且つ定常的に確保することができ、面状放電2の安定的な維持、先端部12aへの円滑な移行、先端部12aでの十分な収束が可能になる。さらに、先端部12a、12a間のプラズマ3の収束も容易になる。つまり、極端紫外光への投入エネルギーの変換効率が高まるので、プラズマ3を効率良く高温・高密度化することができ、極端紫外光を長時間(例えばμsecオーダーで)安定に得ることができる。
しかも本実施形態では、プラズマ媒体6が面状放電2の発生初期に供給されるだけでなく、面状放電2が成長している間にも供給される。つまり、面状放電2の電流値が増加した段階でプラズマ媒体6が補充されるため、極端紫外光に寄与するプラズマ媒体6の量を増加させ、極端紫外光の強度を向上させることができる。
(変形例)
金属層(薄膜)27aは、外部電極14における中心電極12との対向面や中心電極12と外部電極14との間の絶縁体16の表面上に設けてもよい。或いはこの表面をLi等のプラズマ媒体となる物質を含有した材料で形成してもよい。それ以外の同軸状電極の構造は、上述のものと同一である。この場合、レーザー光64の照射位置はこの表面上になる。なお、照射位置は中心電極12に対して回転対称な少なくとも2箇所にすることが望ましい。この場合も、レーザー光64の照射によって絶縁体16の表面上に沿面放電が発生し、その後は上述と同様の面状放電2が得られる。また、金属層27aと同様に、金属層(薄膜)27bも、外部電極14における中心電極12との対向面や中心電極12と外部電極14との間の絶縁体16の表面上、或いは、プラズマ媒体保持部材(図示せず)に設けてもよい。ここで、プラズマ媒体保持部材は例えば金属製の棒状体であり、プラズマ媒体保持部材は所定の手段によってチャンバー20内に固定されている。また、プラズマ媒体保持部材は、面状放電2と干渉しないように中心電極12に対して外部電極14と同距離以上に位置し、金属層27bは、例えば中心電極12を臨む先端部に形成される。プラズマ媒体保持部材の電位は任意であるが、上述の干渉を避けるため、例えば、外部電極14と同電位に設定される。
また、図7(A)及び図7(B)に示すように、各同軸状電極10は、外部電極として、複数の外部電極14の代わりに中心電極12の中心軸Zを中心とする円筒電極15を備えてもよい。円筒電極15の側面15aにはレーザー光64、65通過用の貫通孔(図示せず)が適宜形成されている。この場合、複数の外部電極14を設けた形態に比べて初期放電の発生箇所の制御は困難になるが、エネルギー蓄積回路50、放電電流阻止回路52は各同軸状電極10につき一台で済むため、電圧印加装置30の構成が簡便になる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。例えば、上記の実施形態では、何れの同軸状電極10においても、中心電極12と外部電極14との間に印加される放電電圧の相対的な極性は同一であるが、この極性の関係を互いに逆となるように設定してもよい。この場合でも、強度を高めた極端紫外光が得られる。
1…対称面、2…面状放電、3…プラズマ、6…プラズマ媒体、8…プラズマ光、10、100…同軸状電極、12、112…中心電極、14、114…外部電極、16…絶縁体、27a、27b、127a、127b…金属層(プラズマ媒体領域)、20…チャンバー、30…電圧印加装置、32、34…高圧電源、50…エネルギー蓄積回路、52…放電電流阻止回路、60…レーザー装置、64、164…レーザー光(第1レーザー光)、65、165…レーザー光(第2レーザー光)

Claims (3)

  1. 対称面を挟んで互いに対向配置され、極端紫外光を放射するプラズマを発生すると共に前記プラズマを閉じ込める一対の同軸状電極と、前記プラズマのプラズマ媒体を含むプラズマ媒体領域と、各前記同軸状電極に対して放電電圧を印加する電圧印加装置と、レーザー装置とを備え、
    各前記同軸状電極は、単一の軸線上に延びる棒状の中心電極と、前記中心電極の外周を囲むように設けられた外部電極と、前記中心電極及び前記外部電極の間を絶縁する絶縁体とを有し、
    前記プラズマ媒体領域の第1の領域は、前記中心電極の側面、前記外部電極における前記中心電極との対向面、前記絶縁体における前記中心電極と前記外部電極との間の表面のうちの少なくとも1つに形成され、
    前記プラズマ媒体領域の第2の領域は、前記中心電極の前記側面、前記外部電極における前記対向面、前記中心電極に対して前記外部電極と同距離以上に位置するプラズマ媒体保持部材のうちの少なくとも1つに形成され、且つ、前記第1の領域よりも前記対称面の近くに位置し、
    前記レーザー装置は、第1のレーザー光を前記第1の領域に照射してアブレーションを行うと共に前記放電電圧によるプラズマシートを発生させた後、前記プラズマシートの進行に合わせて前記第2の領域に第2のレーザー光を照射してアブレーションを行うことを特徴とする記載のプラズマ光源。
  2. 前記第2の領域は前記中心電極の前記側面に形成され、前記中心電極の先端部と前記第1の領域との間に位置することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ光源。
  3. 対称面を挟んで互いに対向配置され、極端紫外光を放射するプラズマを発生すると共に前記プラズマを閉じ込める一対の同軸状電極を用いた極端紫外光の発生方法において、
    各前記同軸状電極に対して放電電圧を印加し、
    プラズマ媒体を含むプラズマ媒体領域の第1の領域に第1のレーザー光を照射して前記第1の領域における前記プラズマ媒体のアブレーションを行うと共に前記放電電圧によるプラズマシートを発生させ、
    前記第1の領域よりも前記対称面に近い前記プラズマ媒体領域の第2の領域に、前記プラズマシートの進行に合わせて、第2のレーザー光を照射して前記プラズマ媒体のアブレーションを行うことを特徴とする極端紫外光発生方法。
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