以下、本発明の実施形態に係るプラズマ光源について添付図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係るプラズマ光源を示す概略構成図(断面図)である。図2は当該プラズマ光源の電気系統を示す図である。図3は、図1のIII−III断面を示す図である。これらの図に示すように、本実施形態のプラズマ光源は、一対の同軸状電極10、10と、各同軸状電極10に対して個別に設けられるリザーバ20と、電圧印加装置30と、レーザー装置40とを備える。なお、図1において右側の同軸状電極10は左側の同軸状電極10と同一の構成であるため、詳細な図示を省略する。
一対の同軸状電極10、10は、図示しない真空槽内において対称面1に対して互いに対称な位置に設置されている。即ち、このプラズマ光源は、対向型プラズマフォーカス方式を採用している。同軸状電極10、10は、対称面1を挟み一定の間隔を隔てて設置され、先端側(面状放電2bが放出される側)が互いに対向している。同軸状電極10、10は、レーザー装置40からのレーザー光42を受け、プラズマの媒体(以下プラズマ媒体)6を放出するとともに、プラズマ媒体6を電離する初期放電2a(図9参照)を発生する。更に、同軸状電極10、10は、この初期放電2aを面状放電2bに成長させて、両者の間にプラズマ3を発生させ、これを閉じ込める。同軸状電極10、10の間に閉じ込められたプラズマ3は同軸状電極10、10からの電気エネルギーを受けて加熱され、極端紫外光を含むプラズマ光8を放射する。なお、面状放電とは、2次元的に広がる面状の放電電流のことであり、電流シート又はプラズマシートとも呼ばれている。
本実施形態のプラズマ媒体6は、リザーバ20から媒体保持部(以下、保持部)18(後述)に供給可能な低融点金属(低融点合金)であり、その組成は、必要な紫外光の波長に応じて選択される。例えば、13.5nmの紫外光が必要な場合はLi(リチウム)やSn(スズ)を含み、3〜4nmの紫外光が必要な場合はBi(ビスマス)を含む。
各同軸状電極10は、中心電極12と、中心電極12の外周を囲むように設けられる複数の外部電極13と、絶縁体14とを備える。図1および図3に示すように、中心電極12は、各同軸状電極10に共通する単一の軸線Z−Zを中心軸(以下、この軸を中心軸Zと称する)として、この中心軸Z上に延びる棒状の導電体である。なお、説明の便宜上、中心軸Zに対して直交し且つ互いに直交する軸をX軸、Y軸とする(図3参照)。X軸は、互いに隣接する2つの外部電極13の間の中央を通る軸であり、本実施形態においては、照射点Pを含むレーザー光42の光路と一致する。
中心電極12は、対称面1に面する先端部12aと、中心軸Zの周りに形成された側面12bとを有し、直径は例えば5mmである。なお、側面12bにはプラズマ媒体6の保持部18(後述)が設けられている。中心電極12は高温のプラズマに対して耐熱性を有する材料を用いて形成される。このような材料は、例えばW(タングステン)やMo(モリブデン)等の高融点金属である。
先端部12aは、対称面1に対向する半球状の曲面を有する。ただし、対称面1に対向する面の形状は曲面に限られず、単なる平面でもよい。また、中心軸Zに沿って窪んだ凹部(図示せず)を設けてもよい。
図1に示すように、外部電極13は、中心電極12の中心軸Zと平行に延びる棒状の導電体であり、直径は例えば3mmである。また、図3に示すように、外部電極13は、中心電極12の周方向に沿って角度θ毎に配置されている。換言すると、各外部電極13は中心電極12と平行に配置され、中心電極12の周囲を囲んでいる。図3に示す例では、6本の外部電極13が中心電極12の周りで60°毎に配置されている。
外部電極13は中心電極12の周りで等角度間隔に設置されることが望ましい。例えば、加工や組み立ての観点或いは面状放電2b(後述)の形成の容易性から、各外部電極13は中心電極12に対して回転対称な位置に設置されることが望ましい。しかしながら、本発明はこのような配列に限定されない。また、外部電極13の本数も図3に示す6本に限られることなく、中心電極12及び外部電極13の大きさや形状、両者の間隔などに応じて適宜設定される。
なお、外部電極13は、中心電極12と同じく、高融点金属等の導電材料を用いて形成される。また、対称面1に対向する外部電極13の端面は曲面、平面の何れでもよい。
絶縁体14は例えばセラミックを用いて形成され、中心電極12と外部電極13の各基部を支持して両者の間隔を規定すると共にその間を電気的に絶縁する。絶縁体14は例えば円盤状に形成され、中心電極12及び外部電極13を支持する孔や溝等の構造を有する。
図4は、本実施形態に係る第1の突部としての突部15及び起伏面16を示す図である。この図に示すように、各外部電極13は、中心電極12と対向する側面13aに突部15と起伏面16とを有する。図4に示すように、突部15は、例えば中心軸Zに直交する一平面上に位置する。また、突部15は、外部電極13の側面13aから中心電極12に向けて突出する頂部G(図3参照)を含むように形成されている。頂部Gは、例えば中心電極12に最も近い部分、或いは、レーザー光42の照射点Pに最も近い部分である。また、突部15は後述の突部16a(16b)よりも高い。換言すれば、突部15の頂部Gは、後述の突部16a(16b)よりも中心電極12に近い。突部15の形状は、これらの条件を満たす限り特に制限は無い。すなわち、突部15は、図4に示すように外部電極13の周方向に沿った環状に形成されてもよいし、或いは、頂部Gを中心電極12に向けた少なくとも1つの円錐又は角錐として形成されてもよい。
突部15は、後述の突部16a(16b)を含めた外部電極13のその他の部分よりも中心電極12に向かって突出している。従って、電界集中により、突部15の電界強度はその周囲よりも大きい。電界強度の増大は、面状放電2b(図9参照)の初期放電2a(図9参照)の誘発を促進する。従って、本実施形態では突部15を含めた放電経路が優先的に形成される。つまり、突部15は、中心電極12の周方向及び軸方向において、中心電極12と外部電極13との間に発生する初期放電2aの最初の位置を規定している。
起伏面16は少なくとも中心電極12に対向する位置に形成され、突部15から外部電極13の先端まで分布している。なお、図3及び図4に示す例では、起伏面16は外部電極13の全周に亘って形成されている。起伏面16は第2の突部としての突部16aを多数含み、これら突部16aが点在することにより起伏面16の細かな凹凸を形成する。突部15と同様に、突部16aにも電界が集中する。しかも、突部16aはその周囲よりも中心電極12に近いため、面状放電2bの放電電流は突部16aを経由して流れる。さらに突部16aは密集しているため、異なる突部16aを経由する放電電流の経路が複数確立され、これらの経路の何れか持続する。従って、面状放電2bが移動している間は、複数の突部16aの何れかから面状放電2bに定常的に電子が供給される。つまり、面状放電2bを安定に移動させることができる。
起伏面16は微小な金属粒子の焼結体(多孔質体)によって形成され、その材質は例えば外部電極13と同じ高融点金属である。このような金属焼結体は素材である金属粒子の形状が残っているため、表面に多数の突部16aが形成される。隣接した突部16aの間隔は、各突部16aで十分な電界集中が発生し且つ面状放電2bが突部16aの間を移動できる程度の値に設定される。このような値は、面状放電2bに投入される電気エネルギーや突部16aの形状によって変動するものの、精々100μm程度である。
なお、外部電極13全体を金属焼結体で形成してもよい。また、突部16aは起伏面16となる母材の研磨、切削及びブラスト等の機械加工、エッチング等の化学的処理の何れかによって形成されてもよい。
図5は、起伏面16の変形例である。変形例に係る起伏面16は、第2の突部としての突部16bを有している。突部16bは、突部15から外部電極13の先端に向けて延伸し且つ中心電極12に向けて突出する少なくとも1つの突起であり、その周囲は側面13aと同様の滑らかな曲面である。突部16bは、例えば突部15から外部電極13の先端まで形成されている。図5に示すように、中心軸Zに直交する平面において突部16bは、例えば先端を中心電極12に向けた略三角形の断面を有する。
突部16aと同じく、突部16bにも電界が集中する。しかも、突部16bはその周囲よりも中心電極12近いため、面状放電2bの放電電流は突部16bを経由して流れる。さらに、突部16bは突部15から外部電極13の先端まで続いている。従って、面状放電2bが移動している間は、突部16bから面状放電2bに定常的に電子が供給される。つまり、面状放電2bを安定に移動させることができる。なお、突部16bを構成する突起が複数設けられる場合、当該突起は平行に形成される。この場合、面状放電2bへの電子の供給路が増え、供給可能量が増加する。従って、面状放電2bへの電子の供給が予期せず遮断されることを抑制できる。
図6は、保持部18とその周囲を示す断面図である。保持部18は、プラズマ媒体6が中心電極12と外部電極13との間の空間に放出されるようにプラズマ媒体6を保持する。例えば、図6に示すように、保持部18は、中心電極12の側面12bに設けられ、外部電極13に向けて露出している。保持部18は側面12bの全周に亘った帯状或いは照射点Pを含む点状に形成される。
保持部18は多孔質体からなり、溶融したプラズマ媒体6を蓄積し且つ外部に滲出させることができる。多孔質体は、例えば、中心電極12と同じ材質で形成されている。なお、プラズマ媒体6で保持部18を構成してもよい。この場合、保持部18は多孔質体である必要はなく、プラズマ媒体6は溶融した状態で或いは固体の状態で留まることになる。例えば、プラズマ媒体6が固体の状態の場合、中心電極12の側面12bに設置(埋設)され、後述のリザーバ20は省略される。また、この場合は、プラズマ媒体6としてリチウム(Li)等の低融点金属だけでなく、6.7nmの紫外光を発するガドリニウム(Gd)やテルビウム(Tb)を使用することも可能である。
リザーバ20は各同軸状電極10に対して個別に設けられる。図1に示すように、リザーバ20は中心電極12の基部を支持すると共に、内部に形成した空間20aにプラズマ媒体6を貯留する。この空間20aは、中心電極12の流路12cを介して保持部18に連通している。また、リザーバ20はヒータ22を搭載している。ヒータ22は、例えば熱媒体(油)循環式のヒータや電熱式のヒータで構成され、空間20a内のプラズマ媒体6を溶融すると共に、中心電極12の温度をプラズマ媒体6が溶融する温度に維持する。従って、プラズマ媒体6が流路12cを介して保持部18に流出したときも、保持部18はプラズマ媒体6を溶融した状態で保持することができる。
なお、保持部18は同軸状電極10の外側に設置されていてもよい。この場合の「外側」とは、例えば、各外部電極13の中心が中心電極12の周りを囲む領域の外側の空間を意味する。保持部18は、例えばプラズマ媒体6を保持する容器(図示せず)として或いはプラズマ媒体6自体で構成され、隣接する2本の外部電極13の間から、外部電極13と中心電極12の間にプラズマ媒体6を供給する。同軸状電極10へのプラズマ媒体6の供給箇所は、中心電極12に対して対称に分布していることが望ましい。従って、保持部18は同軸状電極10の周りに複数設けられ、中心電極12の周りに点対称な或いは回転対称な位置に位置することが望ましい。ただし、保持部18の設置箇所はこれらに限定されない。また、何れの場合も、レーザー光42の照射点Pを含むプラズマ媒体6の表面は、外部電極13と中心電極12の間の空間或いは中心電極12に向いている。さらに、各突部15の位置は、中心電極12(中心軸Z)に直交し且照射点Pを含む平面を基準にして設定される。保持部18が同軸状電極10の外側に設置される場合、リザーバ20は保持部18に接続するものの、中心電極12に連結しなくてもよい。
次に、本実施形態のプラズマ光源における電気系統について説明する。図2に示すように、プラズマ光源は各同軸状電極10に接続する電圧印加装置30を備える。電圧印加装置30は、各同軸状電極10に同極性又は逆極性の放電電圧を印加する。
電圧印加装置30は、高圧電源32を備える。高圧電源32の出力側は同軸状電極10の中心電極12に接続し、高圧電源32のコモン側はこの中心電極12に対応する外部電極13に接続している。高圧電源32は、中心電極12‐外部電極13間に放電電圧(例えば5kV)を印加する。なお、放電電圧の極性は外部電極13に対して正または負の何れでもよい。また、図2に示すように、高圧電源32のコモン側は接地されていてもよい。
上述の通り、各中心電極12の周囲には複数の外部電極13が設けられている。理想的な放電を得るには、全ての外部電極13と中心電極12との間で、放電が発生する必要がある。しかも、これらの放電が、中心電極12の周りで空間的に等間隔に分布していることが望ましい。しかしながら、高圧電源32から供給される放電エネルギーは最初に発生した放電に対して優先的に費やされる傾向があり、この場合は複数の放電を異なる場所で略同時に発生させることが困難になる。
そこで、本実施形態の電圧印加装置30は、放電電圧の放電エネルギーを外部電極13毎に蓄積するエネルギー蓄積回路34を備えている。エネルギー蓄積回路34は、例えば図2に示すように中心電極12と各外部電極13との間を個別に接続する複数のコンデンサCで構成される。各コンデンサCは、放電のピーク時に10kA程度の放電電流を流すことが可能な静電容量を持ち、高圧電源32の各出力側及び各コモン側に接続される。
このように、放電エネルギーを蓄積するコンデンサCを外部電極13毎に設けることで、全ての外部電極13において放電を発生させることができる。即ち、放電エネルギーが、最初に発生した放電に過剰に消費されることを防止でき、中心電極12の全周に亘る面状放電2bを発生させることができる。
さらに、本実施形態の電圧印加装置30は、放電電流が帰還することを阻止する放電電流阻止回路36を備えてもよい。放電電流阻止回路36は、例えば図2に示すように各外部電極13と電圧印加装置30(具体的には高圧電源32のコモン側)との間を接続するインダクタLで構成される。インダクタLは、放電電流に対して十分に高いインピーダンスを有するため、中心電極12及び外部電極13を経由した放電電流を、その発生源であるエネルギー蓄積回路34に戻すことができる。つまり、各コンデンサCに蓄積された放電エネルギーが、当該コンデンサCに直結した外部電極13以外の外部電極13に供給されることを防止するため、中心電極12の周方向における放電の発生分布に偏りが生じることを防止できる。
上述の通り、本実施形態のプラズマ光源はレーザー装置40を備える。レーザー装置40は、各同軸状電極10の中心電極12にレーザー光42を照射することで、プラズマ3の媒体を放出させると共に、電圧印加装置30と協働してプラズマ3の初期放電(初期プラズマ)2aを発生させる。レーザー装置40は例えばYAGレーザーであり、アブレーションを行うために基本波やその二倍波を短パルスのレーザー光42として出力する。レーザー光42は、ハーフミラー等の光学素子によって分岐し、各中心電極12の保持部18に照射される。例えばレーザー光42は、互いに隣接する2本の外部電極13の中間を中心軸Zに向けて進行し、保持部18の照射点Pに照射される。レーザー光42が照射された保持部18からは、レーザー光42のアブレーションによって、プラズマ媒体6が中性ガスやイオンとなって多量に放出される。
一方、レーザー光42の照射時には、既に電圧印加装置30による放電電圧が、各同軸状電極10の中心電極12と外部電極13の間に印加されている。従って、アブレーションが発生すると、中心電極12と各外部電極13間の初期放電2aが誘発される。
なお、中心電極12と外部電極13の各形状、両者の間隔等に応じて、レーザー光42を中心軸Zの周方向に沿って間隔を置いて複数且つ同時に照射してもよい。本実施形態では、例えば、レーザー光42の照射点Pが中心軸Zを挟んだ2箇所に設定されている。これにより、初期放電2aを環状に形成することが容易になる。
これは、外部電極が中心電極を中心とした同一円上に配列した同軸状電極において、初期放電2aの発生領域が、中心電極12の中心軸Zを基点に180度以上の開き角があった実験結果に基づいている。この実験結果の一例を図7(a)〜図7(c)に示す。図7(a)〜図7(c)は4個のCCDを有する高速度カメラで測定したものであり、5kVの放電電圧が印加された中心電極‐外部電極間の放電分布の経時変化を示す画像である。図7(a)は最初の放電の発生から100ns後の状態、図7(b)は最初の放電の発生から300ns後の状態、図7(c)は最初の放電の発生から500ns後の状態を示している。図中白い個所はプラズマが生成し発光していることを示す。各画像における蓄積時間(露光時間)は100nsである。なお、最初の放電を誘発するために、中心電極と外部電極の間の絶縁体の一箇所に対してレーザーアブレーションを行っている。しかしながら、このような放電の発生及びその経時変化は、図1に示す保持部18に対するレーザーアブレーションでも同様に得られる。
図7(a)〜図7(c)に示す時間変化から判るように、レーザー光の照射点は1点のみであるにも関わらず、アブレーションに誘発された放電が発生し、当該放電がレーザー光の照射点から時計回り及び反時計回りにそれぞれ概ね90度に亘って拡大していることが確認できる。その結果、少なくとも写真中央と右側の計4本の外部電極のそれぞれと、中心電極との間で十分な放電が発生していることが確認できる。つまり、放電は、当該放電を誘発する現象(図7(a)〜図7(c)においてはレーザーアブレーション)が発生した箇所に最も近接した外部電極と中心電極との間だけでなく、その遠方に位置する外部電極と中心電極との間にも発生する。即ち、放電エネルギーを付与した複数の外部電極を中心電極の周りに配置することで、中心電極の周方向において放電を局在させることなく、全体に拡大させることができる。
図8は、中心電極を挟んだ絶縁体の二箇所に対してレーザーアブレーションを行った後の放電の経時変化を示し、図7(b)に対応している。この図に示すように、初期放電は環状に分布する放電(後述の面状放電2b)に成長する。なお、この結果を考慮すると、照射箇所の数が少ないほど中心電極12に対して回転対称な位置にレーザー光42を照射することが望ましい。なお、複数のレーザー光の同時照射は、ハーフミラー等の光学素子を用いて光路長を合わせた複数の光路を形成することで容易に達成できる。
次に本実施形態のプラズマ光源の動作について説明する。図9は、初期放電2aの発生及びその直後の状態を説明するための図である。上述の通り、本実施形態のプラズマ光源では、真空槽(図示せず)内に一対の同軸状電極10、10が設けられる。一対の同軸状電極10、10は、対称面1を挟んで互いに対向配置される。一方、真空槽(図示せず)内は、プラズマ3の発生に適した温度及び圧力に保持される。また、放電前の各同軸状電極10には、例えば電圧印加装置30により同極性の放電電圧が印加され、中心電極12は外部電極13よりも高電位に設定される。
各同軸状電極10に放電電圧が印加された状態で、レーザー光42が各同軸状電極10の保持部18に同時に照射される。各同軸状電極10ではこの照射によって、プラズマ媒体6が中性ガス又はイオンとなって多量に放出される。プラズマ媒体6の粒子密度が、外部電極13と中心電極12との間で増加すると、初期放電2aが発生する。しかも、突部15の電界強度はその周囲よりも大きいため、初期放電2aは突部15と中心電極12との間で優先的に発生する。
初期放電2aは、自己磁場によって対称面1に向けて進行しながら、アブレーションによって放出されたプラズマ媒体6を電離し、中心電極12の全周に亘って分布する面状放電2bに成長する。面状放電2bも自己磁場によって対称面1に移動する。このときの面状放電2bは、中心軸Zから見て略環状に分布する。起伏面16は突部15から連なって形成されているため、面状放電2bへの電子の供給源は突部15から起伏面16の突部16a(突部16b)に切り替わる。突部16a(突部16b)は突部15から外部電極13の先端まで分布しており、突部16a(突部16b)には電界集中が生じている。従って、面状放電2bが移動している間は、突部16a(突部16b)から面状放電2bに定常的に電子が供給される。つまり、面状放電2bは、突部15から同軸状電極10の先端まで安定に移動する。換言すれば、面状放電2bは部分的に消滅することなく移動する。
面状放電2bが同軸状電極10の先端に達すると、面状放電2bの電子の到着点は中心電極12の円周側面から先端部12aに移行する。換言すれば、放電電流は先端部12aから集中的に流れ出す。この電流集中によって先端部12a周辺の電流密度は急激に上昇し、一対の面状放電2bの間に挟まれていた先端部12a周辺のプラズマ媒体6は高温、高密度になる。
さらに、この現象は対称面1を挟んだ各同軸状電極10で進行するため、プラズマ媒体6は、一方の同軸状電極10から他方の同軸状電極10に向かって押し出される。その結果、プラズマ媒体6は、中心軸Zに沿う両方向からの電磁的圧力を受けて各同軸状電極10が対向する中間位置(即ち、中心電極12の対称面1)に移動し、プラズマ媒体6を成分とする単一のプラズマ3が形成される。
面状放電2bが発生している間は、各中心電極12の先端部12aに各面状放電2bの放電電流が集中する。従って、先端部12a周辺には、プラズマ3に対して電磁的圧力がかかり、プラズマ3の高温化及び高密度化が進行する。即ち、プラズマ媒体6の電離が進行する。その結果、プラズマ3からは極端紫外光を含むプラズマ光8が放射される。この状態において、電圧印加装置30は、プラズマ3に電気エネルギーを供給し続ける。このエネルギー供給により、プラズマ光8を長時間に亘って発生させることができる。
従って、本実施形態によれば、初期放電2aを安定に発生させ、面状放電2bを安定に移動させることができる。その結果、極端紫外光を放射する程度に高温且つ高密度のプラズマ3を安定に生成することができる。
なお、図10に示すように、突部15及び起伏面16は中心電極12の側面12bに設けられてもよい。例えば、突部15は各外部電極13に対向するように個別に形成され、保持部18は隣接する突部15の間に設けられる。また、各突部15は、対応する外部電極13に向けて突出している。保持部18が同軸状電極10の外側に設置される場合、突部15は環状に形成してもよい。起伏面16は突部15から中心電極12の先端まで分布し、起伏面16には図4に示す突部16a或いは図5に示す突部16bが形成される。なお、この場合も突部15は、突部16a(16b)よりも高い。換言すれば、突部15の頂部Gは、後述の突部16a(16b)よりも外部電極13に近い。
また、図11に示すように、中心電極12の直径は対称面1に向かうに連れて小さくなっていてもよい。例えば、中心電極12は、先端部12aを頂角にもつ略円錐状に形成されてもよい。この場合、中心軸Zに直交する面において中心電極12に最も近接している外部電極13の部位は、中心軸Zとの距離が対称面1に向かうに連れて短くなるように形成されてもよい。例えば、外部電極13が棒状に形成されている場合、外部電極13は、対称面1に近づくに連れて中心軸Zに近づくように、中心軸Zに対して傾斜する。なお、図11に示す例では、中心電極12と外部電極13との間隔は一定である。しかしながら、この間隔は対称面1に近づくほど小さくてもよい。
本発明は上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。