以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.印刷装置、印刷材収容体、ホルダー
図1は、本実施形態の印刷装置の構成例を示す斜視図である。この印刷装置は、印刷装置本体と印刷材収容体100(狭義にはインクカートリッジ又はカートリッジ)を含む。また不図示の操作部や表示部などを備えることができる。図1の印刷装置はインクジェットプリンターの例である。
印刷装置本体は、ホルダー510(収容体装着部)やヘッド512や制御部520を備える。ホルダー510とヘッド512によりキャリッジ514が構成される。
なお図1のように、ヘッド512を移動させるキャリッジ514上のホルダー510に印刷材収容体100が収容される印刷装置のタイプは、「オンキャリッジタイプ」と呼ばれるが、本実施形態の印刷装置はこれに限定されない。例えばキャリッジ514と異なる位置に不動のホルダー510を配置し、ホルダー510に装着された印刷材収容体100からのインクをフレキシブルチューブを介してヘッド512に供給するような「オフキャリッジタイプ」であってもよい。
また図1では、ホルダー510に対して例えばブラック、イエロー、マゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアンの6種類の印刷材収容体100が装着されている。但し装着される印刷材収容体100の種類や数はこれに限定されるものではない。
ヘッド512は、印刷媒体530(紙又はラベル等)に対して相対的に移動可能に構成されており、印刷材(狭義にはインク)を印刷媒体530に吐出するインク吐出機構を備える。制御部520は印刷装置の各部を制御するものであり、印刷装置の主制御用の回路基板などにより実現される。
図1の印刷装置は主走査送り機構と副走査送り機構を備える。主走査送り機構は、キャリッジモーター524と駆動ベルト526により実現される。具体的には、キャリッジモーター524の動力を駆動ベルト526を介してキャリッジ514に伝達することで、キャリッジ514を主走査方向に往復移動させる。副走査送り機構は、搬送モーター528とプラテン529により実現される。具体的には搬送モーター528の動力をプラテン529に伝達することで、主走査方向に直交する副走査方向に印刷媒体530を搬送する。これらの主走査送り機構、副走査送り機構は、制御部520からの制御信号に基づいて動作する。
なお図1等では、印刷装置の使用状態において、印刷媒体530が搬送される副走査方向(前後方向)に沿った軸をX軸とし、キャリッジ514を往復移動させる主走査方向(左右方向)に沿った軸をY軸としている。また重力方向(上下方向)に沿った軸をZ軸としている。
次に図2〜図7を用いて、本実施形態の印刷材収容体100、ホルダー510、接点機構560等の第1の例について説明する。
図2は、第1の例の印刷材収容体100を示す斜視図である。印刷材収容体100は、略直方体の外観形状を有している。印刷材収容体100の外殻は、先端面(第1の面)Sfと、後端面(第2の面)Srと、天井面(第3の面)Stと、底面(第4の面)Sbと、2つの側面(第5及び第6の面)Sc、Sdを備えている。なお図2のDISは印刷材収容体100の装着方向を表しており、この装着方向DISは図1のZ軸の負方向(−Z方向)である。
印刷材収容体100の内部には、印刷材が収容される印刷材収容室102(インク収容室、インク収容袋)が設けられている。印刷材収容体100の先端面Sfには規制部110や突起部140が設けられている。先端面Sfの傾斜面には回路基板200が取り付けられると共に規制部130が設けられている。印刷材収容体100の底面Sbには印刷材供給口150が設けられている。印刷材収容体100の後端面Srには規制部120が設けられている。印刷材収容体100はこれらの規制部110、120、130等によってホルダー510に係止される。
図3は、第1の例のホルダー510を示す斜視図である。図3はホルダー510に1つの印刷材収容体100(カートリッジ)が装着された状態(設計された装着位置に正しく装着された状態)を示している。この装着状態は、印刷材収容体100側の端子群(回路基板の端子群)の各端子が、ホルダー510のコネクター端子群(接点機構のコネクター端子群)の各コネクター端子に接触するように、印刷材収容体100が位置する状態である。
ホルダー510には、印刷材収容体100の収容室540が形成されており、この収容室540は、仕切り壁542によって、各印刷材収容体100を受け入れ可能な複数のスロット(装着空間)に分割されている。そして各スロットには、印刷材供給管550、接点機構560、レバー590が設けられている。各スロットの上面側(+Z方向)は開口しており、この開口を介して印刷材収容体100がホルダー510の各スロットに着脱される。
図4は、第1の例の接点機構560を示す斜視図である。図4はホルダー510から取り出した状態の接点機構560を図示している。
接点機構560は、端子台562と、端子台562に保持されたコネクター端子群570を有する。コネクター端子群570のコネクター端子571〜579は、電気伝導性を有する弾性部材であり、外力を受けて端子台562の端子台側面564から突出した部分が変位する。接点機構560(コネクター端子571〜579)は、印刷材収容体100がホルダー510に装着された状態で、印刷材収容体100の回路基板200を押し返す方向に付勢力を発生させる。即ち、端子台側面564から突出しているコネクター端子571〜579が、印刷材収容体100によって端子台側面564の方に押し込まれることで、その反力によって付勢力を発生させる。これにより、後述するように、印刷材収容体100の装着時において印刷材収容体100の回路基板200の端子に対するコネクター端子の接触圧力が300N/mm2となる押圧力(付勢力)を発生させることが可能になる。
図5〜図7は、第1の例での、ホルダー510への印刷材収容体100(カートリッジ)の装着動作を説明する図である。図5〜図7にはホルダー510や印刷材収容体100の断面図が示されている。
図5〜図7に示すように、印刷材収容体100には規制部110、120が設けられている。これらの規制部110、120等により印刷材収容体100はホルダー510に係止される。
また印刷材収容体100には印刷材供給口150が設けられており、印刷材収容体100がホルダー510に装着された状態では、この印刷材供給口150が、ホルダー510の印刷材供給管550に接続される。これにより印刷材収容体100の印刷材(インク等)が図1のヘッド512に供給されるようになる。
印刷材供給口150の先端は開口しており、印刷材供給口150の内側には発泡体樹脂152や印刷材流路154が設けられている。印刷材流路154は図2の印刷材収容室102と連通している。印刷材収容体100の工場出荷時には、印刷材供給口150の開口は、キャップ又はフィルムなどの封止材により封止される。
印刷材供給管550の先端部には、印刷材を濾過する多孔体フィルター552が設けられる。また、印刷材供給管550の周囲には弾性部材554が設けられ、この弾性部材554により、装着状態において印刷材収容体100の印刷材供給口150の周囲が密閉され、印刷材の漏出が防止される。
次に図5〜図7を用いて、第1の例におけるホルダー510に対する印刷材収容体100の装着動作について説明する。
図5に示すように印刷材収容体100を装着する際には、ホルダー510の上面から印刷材収容体100を挿入し、印刷材収容体100の規制部120をホルダー510の規制部610に挿入する。
次に、印刷材収容体100の規制部120を回転支点として、図5に示す+Y方向(Y軸の正方向)から見て時計回りに、印刷材収容体100を回転する。
すると図6に示すように、印刷材収容体100の規制部110は、レバー590の背面の案内壁部によって、Y軸及びX軸方向の動きが制限されながら、−Z方向(Z軸の負方向)に進む。そして図6に示す状態から印刷材収容体100を更に押し込むように回転させると、レバー590は、規制部110によって押されて、+Y方向から見て反時計回りに点PTRを中心軸に回転する。これより、レバー590は、ホルダー510の弾性部材620に当接して、+Y方向から見て時計回りにレバー590を押し戻す方向への付勢力を、弾性部材620から受ける。つまり、レバー590の回転領域は、弾性部材620によって制限される。この弾性部材620による付勢状態は、印刷材収容体100の規制部110がレバー590の背面の案内壁部を乗り越えるまで維持される。
そして、規制部110がレバー590の案内壁部を乗り越えると、図7に示すように、ホルダー510側の規制部594が印刷材収容体100の規制部110を点PTAの位置で係止する状態になる。そして印刷材収容体100の+Z方向側及び+X方向側への動きが規制される。
そして、印刷材収容体100の印刷材供給口150がホルダー510の印刷材供給管550と接続し、印刷材収容体100の規制部120、110が、それぞれ、ホルダー510側の規制部610、594と係合することで、印刷材収容体100のホルダー510への装着が完了する。また、設計された装着位置に正しく印刷材収容体100が装着されることで、接点機構560のコネクター端子群(コネクター端子571〜579)と、印刷材収容体100の回路基板200の端子群とが電気的に接続され、印刷装置本体と印刷材収容体100との間での信号の伝達が可能になる。なおレバー590の操作部592は、ユーザーがホルダー510から印刷材収容体100を取り外す際に使用される。
そして図7に示すように、印刷材収容体100の装着状態においては、回路基板200の端子群は、接点機構560によって付勢力による押圧力FPを受け、これによって回路基板200の各端子と接点機構560の各コネクター端子との間に接触圧力が発生することになる。
次に図8〜図11(E)を用いて、本実施形態の印刷材収容体100、ホルダー510、接点機構560等の第2の例について説明する。
図8は、第2の例のホルダー510を示す斜視図である。図8はホルダー510に1つの印刷材収容体100が装着された状態を示している。
ホルダー510には、印刷材収容体100の収容室が形成されており、この収容室は、仕切り壁によって、各印刷材収容体100を受け入れ可能な複数のスロットに分割されている。そして、各スロットには、印刷材供給管550、接点機構560が設けられている。各スロットには、図8の+Z方向からZ軸に沿って印刷材収容体100が挿入されて装着される。
図9は、第2の例の印刷材収容体100を示す斜視図である。印刷材収容体100の内部には印刷材収容室102が設けられている。印刷材収容体100の先端面Sfには回路基板200が取り付けられている。印刷材収容体100の底面Sbには印刷材供給口150が設けられている。
図10は、第2の例の接点機構560を示す斜視図である。接点機構560は、端子台562と、端子台562に保持されたコネクター端子群570を有する。コネクター端子群570のコネクター端子571〜577は、電気伝導性を有する弾性部材であり、外力を受けて端子台562の端子台側面564から突出した部分が変位する。接点機構560は、印刷材収容体100がホルダー510に装着された状態で、印刷材収容体100の回路基板200を押し返す方向に付勢力を発生させる。これにより、後述するように、印刷材収容体100の装着時において印刷材収容体100の回路基板200の端子に対するコネクター端子の接触圧力が300N/mm2となる押圧力(付勢力)を発生させることが可能になる。
図11(A)〜図11(E)は、第2の例での、ホルダー510への印刷材収容体100の装着動作を説明する図である。図11(A)〜図11(E)には、+Y方向から見た接点機構560と回路基板200が示されている。装着時には、−Z方向である装着方向DISに沿って回路基板200が移動する。
図11(B)に示すように、まず、回路基板200の下端LE(−Z方向の端)が、接点機構560のコネクター端子571、572に接触する。そして、回路基板200が−Z方向に更に移動することで、コネクター端子571、572が−X方向に押される。コネクター端子572、572は弾性を有しており、コネクター端子571、572は+X方向に付勢されている。従って、コネクター端子572、572が回路基板200の第1の面SF1と接した状態で、回路基板200は−Z方向に移動するようになる。
次に図11(C)に示すように、回路基板200の下端LEは、コネクター端子573〜577に接触する。これらのコネクター端子573〜577も弾性を有しており、コネクター端子573〜577は+X方向に付勢されている。従って、コネクター端子573〜577が回路基板200の第1の面SF1と接した状態で、回路基板200は−Z方向に移動するようになる。
なお回路基板200の第2の面SF2には、後述するように記憶装置203が実装されている。また、各コネクター端子571〜577は、印刷装置本体側の主回路基板800の各端子と電気的に接続されている。
図11(D)は、図11(C)から更に回路基板が−Z方向に移動した状態を示している。そして最後に、図11(E)に示すように、印刷材収容体100の装着が完了する。この装着状態では、印刷材収容体100の端子211、212は接点機構560のコネクター端子571、572に接触し、端子213〜217はコネクター端子573〜577に接触して、電気的に接続される。これにより印刷装置本体と印刷材収容体100との間での信号の伝達が可能になる。
そして図11(E)に示すように、印刷材収容体100の装着状態においては、回路基板200の端子群は、接点機構560によって付勢力による押圧力FPを受け、これによって回路基板200の端子群の各端子と接点機構560のコネクター端子群の各コネクター端子との間に接触圧力が発生することになる。
2.回路基板の構成
図12、図13に本実施形態の回路基板200の構成例を示す。図12は回路基板200を第1の面SF1側(表面側)ら見た図であり、図13は回路基板200を第2の面SF2側(裏面側)から見た図である。
回路基板200の第1の面SF1は、印刷材収容体100に回路基板200が取り付けられている状態(図2、図9(A)、図9(B))において、外側に露出している面である。第2の面SF2は第1の面SF1の裏面である。また図12における方向DISは、ホルダー510への印刷材収容体100の装着方向を示している。この装着方向DISは、図3、図8等に示す印刷材収容体100の装着方向である−Z方向と一致する。
また回路基板200には、回路基板200を印刷材収容体100に取り付けるための固定用穴HL(ボス穴)が設けられている。更に回路基板200には、固定用溝NT1、NT2、NT3(ボス溝)も設けられている。
また図12、図13では第1の方向DR1に直交する方向を第2の方向DR2としている。また第1の方向DR1の反対方向を第3の方向DR3とし、第2の方向DR2の反対方向を第4の方向DR4としている。ここで第2の方向DR2は、装着方向DISと一致し、第1の方向DR1は、装着方向DISに直交する方向である。
また略矩形状の回路基板200は、第1〜第4の辺SD1〜SD4を有する。第1の辺SD1に対向する辺が第2の辺SD2であり、第3の辺SD3に対向する辺が第4の辺SD4である。第1、第2の辺SD1、SD2と第3、第4の辺SD3、SD4とは、少なくともその延長線同士において交差(直交)する。なお、第1〜第4の辺SD1〜SD4の交差位置に対応するコーナー部には、切り欠き部が設けられたり、曲線状になっている。
印刷材収容体100に取り付けられる本実施形態の回路基板200は、記憶装置203と、回路素子210と、端子群(TA1、TA2)を含む。端子群は図2や図9(A)に示される回路基板200に設けられる端子である。
図13に示す記憶装置203は、印刷材情報を記憶する。この印刷材情報は、印刷材収容体100に収容された印刷材に関する情報であり、例えばインク量情報(インク消費量情報又はインク残量情報等)、インク色情報などである。また記憶装置203は、印刷材収容体100に関する情報である印刷材収容体情報を更に記憶することができる。印刷材収容体情報は、例えば印刷材収容体100のID情報又は製造情報などである。この記憶装置203は、例えば不揮発性メモリー(EEPROM等)により実現される。
図13に示す回路素子210は各種検出用の素子であり、例えば抵抗素子(RD)である。なお回路素子210は抵抗素子以外の受動素子(キャパシター等)や能動素子(半導体素子等)であってもよい。
端子群(TA1、TA2)は、回路基板200に設けられる複数の端子を含む。具体的には、端子群は、記憶装置203に接続される複数の記憶装置用端子(RST、SCK、VDD、VSS、SDA)を有する。また端子群は、回路素子210に接続される少なくとも1つの検出端子(DT1、DT2)を有する。この端子群は印刷材収容体100が印刷装置本体(ホルダー)に装着されたときに印刷装置本体側のコネクター端子(図4の571〜579、図10の571〜577)に接続されるものである。
そして図12に示すように、回路基板200の第1の面SF1に端子群(TA1、TA2)が配置される。この第1の面SF1は、印刷装置本体側のコネクター端子の接続側面である。一方、図13に示すように、回路基板200の第1の面SF1の裏面である第2の面SF2に、記憶装置203及び回路素子210が配置(実装)される。
具体的には回路基板200の第1の面SF1に設けられる端子群は、第1の端子群TA1と第2の端子群TA2を有する。
第1の端子群TA1は、回路基板200の第1の辺SD1の第2の方向DR2側において、第1の方向DR1に沿ってM個の端子が並ぶ端子群である。一方、第2の端子群TA2は、第1の端子群TA1の第2の方向DR2側において、第1の方向DR1に沿ってN個の端子が並ぶ端子群である。ここで、M、NはM<Nとなる2以上の整数であり、第1の端子群TA1の端子数Mの方が第2の端子群TA2の端子数Nよりも少なくなっている。
具体的には、第1、第2の端子群TA1、TA2の各端子は、略矩形状に形成され、装着方向DISと垂直(略垂直)な列を2列形成するように配置されている。例えば、これらの2つの列のうち、装着方向DISの手前側の第1のラインA1に沿った列(図12において上側に位置する列)を上側列(第1列)とし、装着方向DISの奥側(装着方向の先端側)の第2のラインA2に沿った列(図12において下側に位置する列)を下側列(第2列)とする。この場合に、第1の端子群TA1は、ラインA1に沿った上側列の端子群であり、第2の端子群TA2は、ラインA2に沿った下側列の端子群である。これらのラインA1、A2は、複数の端子の接触部CPによって形成されるラインであると考えることも可能である。この接触部CPは、印刷材収容体100が印刷装置本体に装着されたときに、装置側回路基板と回路基板200を接続するためにホルダー内部に設けられたコネクター端子が各端子と接触する部分である。
即ち、各端子は、その中央部に、印刷装置本体側の複数のコネクター端子のうちの対応するコネクター端子と接触する接触部CPを含んでいる。ラインA1に沿った第1の端子群TA1の各端子の各接触部CPと、ラインA2に沿った第2の端子群TA2の各端子の各接触部CPは、互い違いに配置され、いわゆる千鳥状の配置を構成している。つまり、第1の端子群TA1の各端子と、第2の端子群TA2の各端子は、互いの端子中心が装着方向DISに並ばないように、互い違いに配置され、千鳥状の配置を構成している。
次に、端子群TA1、TA2の各端子について更に詳細に説明する。図12において、上側のラインA1に沿って配置された端子群TA1の端子CO1、RST、SCK、CO2と、下側のラインA2に沿って配置された端子群TA2の端子DT1、VDD、VSS、SDA、DT2は、それぞれ以下の機能(用途)を有する。
<端子群TA1>
(1)第1の短絡検出端子CO1
(2)リセット端子RST
(3)クロック端子SCK
(4)第2の短絡検出端子CO2
<端子群TA2>
(5)第1の装着検出端子DT1
(6)電源端子(第1の電源端子)VDD
(7)接地端子(第2の電源端子)VSS
(8)データ端子SDA
(9)第2の装着検出端子DT2
第1、第2の装着検出端子DT1、DT2は、印刷材収容体100がホルダー510に正しく装着されているか否かを検出する際に使用される。具体的には、図13に示すように、回路基板200の第2の面SF2には、その一端が回路素子210の一端に接続される第1の接続線LD1と、その一端が回路素子210の他端に接続される第2の接続線LD2が配線される。この第1の接続線LD1の他端は、回路基板200の第1のスルーホールTC1を介して、図12に示すように第1の面SF1の第1の検出端子DT1に接続される。一方、第2の接続線LD2の他端は、回路基板200の第2のスルーホールTC2を介して、図12に示すように第1の面SF1の第2の検出端子DT2に接続される。
第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2は、端子間の短絡検出のために使用される。具合的には、第1、第2の装着検出端子DT1、DT2の少なくともいずれか一方と第1、第2の短絡検出端子CO1もしくはCO2との間の短絡を検出する際に使用される。これらの第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2は、接続線LCを介して接続される。即ち、回路基板200の第1の面SF1上で、第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2は接続線LCにより短絡されている。なお、端子CO1、CO2は、カートリッジアウトの検出端子としても使用できる。他の5つの端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、記憶装置203用の端子であり、「メモリー端子」とも呼ぶ。
具体的には、リセット端子RST、クロック端子SCK、電源端子VDD、データ端子SDA、接地端子VSSは、記憶装置203に電気的に接続される。記憶装置203は、アドレス端子を持たず、クロック端子SCKから入力されるクロック信号のパルス数と、データ端子SDAから入力されるコマンドデータとに基づいてアクセスするメモリーセルが決定され、クロック信号に同期して、データ端子SDAよりデータを受信し、若しくは、データ端子SDAからデータを送信する。クロック端子SCKは、印刷装置本体側からクロック信号を供給するために用いられる。
端子群TA1の第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2の各接触部は、端子群TA1の両端部、即ち、端子群TA1の最も外側にそれぞれ配置されている。また、端子群TA2の第1、第2の装着検出端子DT1、DT2の各接触部は、端子群TA2の両端部、即ち、端子群TA2の最も外側に配置されている。記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAの接触部は、9つの端子の全体が配置されている領域内の略中央に集合して配置されている。また、第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2及び第1、第2の装着検出端子DT1、DT2の接触部は、記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAの集合の四隅に配置されている。
3.空走距離
さて、図5〜図7や図11(A)〜図11(E)から明らかなように、印刷材収容体100の装着時には、印刷装置本体側のコネクター端子の先端が、回路基板200の保護膜(レジスト)上を擦れながら移動する。そして、このコネクター端子の先端の擦れにより、保護膜が破壊され、保護膜の削り粉(削りカス)等の異物が発生すると、この異物により接触不良が発生するおそれがある。即ち、回路基板200の端子とコネクター端子の間に、この異物が挟み込まれることなどにより、回路基板200の端子とコネクター端子との電気的な導電性が悪化して、電気的な接触不良が生じるおそれがある。
例えば図14では、印刷材収容体100の装着時に、印刷装置本体側のコネクター端子が、E1に示すように回路基板200上を移動する。例えば装着方向DISを第2の方向DR2とし、その反対方向を第4の方向DR4とする。この場合に、コネクター端子の先端は、E1に示すように第4の方向DR4に沿って移動してオーバーシュートした後、第2の方向DR2に沿って戻って来て、接触位置にて停止(ロック)する。
このようなコネクター端子の移動により、E2に示すように、コネクター端子の先端により回路基板200上の保護膜220の上面が削られて、保護膜220の一部が破壊されて異物が発生し、接触不良が発生するおそれがある。なお図14のE3は、図5〜図7に示す印刷材収容体100での印刷材収容体100の装着完了時におけるコネクター端子のDR2側の端の接触位置であり、E4は、装着時(装着途中)におけるコネクター端子の最大押し込み時の位置である。
図14のE2に示すようにコネクター端子が保護膜220を擦りながら移動する距離が長くなると、その分だけ発生する異物の量が増えてしまい、接触不良が発生する確率が高くなる。特に図5〜図7のような回転方式の装着手法に比べて、図11(A)〜図11(E)のように−Z方向に真っ直ぐに印刷材収容体100を移動させて装着する手法では、図14のE2に示す距離が長くなり、保護膜220の削り粉等の異物の発生量が多くなり、接触不良が発生しやすくなる。
そこで本実施形態では図15に示すように、回路基板200の端子230の周辺において保護膜220を開口させ、コネクター端子を空走させる距離Lを設けている。即ち、距離Lを、所定距離である例えば0.8mm以上に設定する。例えば、印刷材収容体100の装着時における接触領域をRCTとした場合に、距離Lは、保護膜境界BDRから接触領域RCTまでの距離である。具体的には接触領域RCTの接触領域境界BDC1までの距離である。別の言い方をすれば、距離Lは、コネクター端子が下方に保護膜が存在しない状態で空走する空走距離である。このようにコネクター端子を距離Lだけ空走させることで、いわゆるワイピングによるセルフクリーニングが行われることで、コネクター端子の先端に付着する削れカス等の異物が振り落とされて、接触不良の発生を低減できる。
以上のように、印刷材収容体100に取り付けられる本実施形態の回路基板200は、印刷材収容体100が印刷装置本体に装着されたときに印刷装置本体側のコネクター端子群に接続される端子群(TA1、TA2)と、回路基板200の保護膜220を有する。
そして図15に示すように、保護膜220の非開口領域と開口領域との境界である保護膜境界BDRから、印刷材収容体100の装着時におけるコネクター端子群のコネクター端子と端子群の端子230の接触領域RCTまでの、印刷材収容体100の装着方向DISでの距離をLとする。
この場合に本実施形態では、L≧0.8mm(所定距離)となる位置に保護膜境界BDRが位置するようにしている。即ち、L≧0.8mmを満たす位置に保護膜境界BDRが位置するように保護膜220の開口領域を形成する。
ここで接触領域RCTは、印刷材収容体100の装着時におけるコネクター端子と回路基板200の端子230の接触位置の位置公差(接触位置のバラツキ)により規定される領域である。そして距離Lは、接触位置の位置公差による第1の接触領域境界BDC1と第2の接触領域境界BDC2のうち、保護膜境界BDR側の第1の接触領域境界BDC1と、保護膜境界BDRとの間の距離である。
例えばコネクター端子の接触位置は、印刷装置のメカ・バラツキ、ガタによるバラツキ、或いは回路基板200等の製造プロセスによるバラツキ(端子の寸法バラツキ)等を要因として、位置公差を有する。図15の接触領域RCTは、このような位置公差により規定される領域である。即ち、接触領域RCTは、接触位置の正確な位置(端子中央の位置)に対するバラツキの設計上の許容限度を表す領域である。
例えばコネクター端子の接触位置は、装着方向DISにおいては、接触領域境界BDC1とBDC2の間でばらつくことが、設計上、予定されている。例えば図15において、最も辺SD2側に接触位置がばらついた場合の境界が、接触領域境界BDC1であり、最も辺SD1側に接触位置がばらついた場合の境界が、接触領域境界BDC2である。
そして、端子230の装着方向DISでの寸法は、このように接触位置が境界BDC1とBDC2の間でばらついた場合にも、コネクター端子が端子230に適正に接触するような寸法に設定される。具体的には、端子230の辺SD2側の端辺は、接触領域境界BDC1よりも辺SD2側に位置し、端子230の辺SD1側の端辺は、接触領域境界BDC2よりも辺SD1側に位置することになる。
そして本実施形態では、このように設計上予定されている接触領域RCTに対して、コネクター端子の空走距離がL≧0.8mmになるように、端子230に対する保護膜220の開口が形成される。
このようにすれば、例えばコネクター端子の接触位置が、ワーストケースで接触領域境界BDC1の位置になったとしても、コネクター端子の空走距離Lとして、L≧0.8mmが確保されるようになる。そして、この空走距離Lの区間では、コネクター端子の下方には、保護膜220が開口されているため、保護膜220が存在しないようになる。従って、図4のE2に示す区間において保護膜220を削ることで発生した削りカス等の異物が、この空走距離Lの区間において下方に振るい落とされることになる。そして、空走距離をL≧0.8mmとすることで、異物が十分に振るい落とされて、コネクター端子と端子230との接触の際に、コネクター端子と端子230の間に挟み込まれる異物の量を極小に抑えることが可能になる。これにより、空走距離をL<0.8mmとした場合に比べて、異物による接触不良の発生を最小限に抑えることが可能になる。
この場合に本実施形態では、距離Lは、端子230に対するコネクター端子の接触圧力が300N/mm2以上である場合に、L≧0.8mmとすることができる。ここで「N」は「ニュートン」を表す。
例えば図16は、接触圧力と必要ワイピング量の関係を示す実測値のグラフである。必要ワイピング量は、接触不良が発生せずにコネクター端子と端子の間の電気導電性を維持するのに必要なワイピング量であり、空走距離Lに対応するものである。具体的には、必要ワイピング量(必要ワイピング距離)は、コネクター端子と端子の間の接触抵抗値が、許容値となる所定接触抵抗値以下となるようなワイピング量(ワイピング距離)である。
そして図16に示すように、接触圧力が300N/mm2以上になると、必要ワイピング量は飽和する。例えば図16において接触圧力が200N/mm2程度であると、2mm程度のワイピング量が必要になってしまい、200N/mm2よりも小さくなると、必要ワイピング量は急増してしまう。
これに対して接触圧力が300N/mm2以上であれば、必要ワイピング量は0.8mm以下の値で飽和する。従って、必要ワイピング量に相当する距離Lが0.8mm以上であれば、削りカス等の異物が除去可能であることが理解される。
図17(A)、図17(B)にコネクター端子の先端の形状の例を示す。図17(A)は曲率半径が大きい場合(R0.7)の例であり、図17(B)は曲率半径が小さい場合(R0.3)の例である。図17(B)のように曲率半径が小さく、先端がより鋭い形状になっていれば、1端子あたりの荷重(押圧力)が小さくても、大きな接触圧力を得ることができる。先端の形状が鋭くなるほど、接触面積が小さくなり、同じ荷重(押圧力)であっても、接触圧力が高くなるからである。
図18は、1端子あたりの荷重と必要ワイピング量の関係を示す実測値のグラフである。図18のF1は、曲率半径が大きい場合(図17(A))の特性であり、F2は、曲率半径が小さい場合(図17(B))の特性である。
図19は、この1端子あたりの荷重を接触圧力に換算したグラフである。図19のG1は、曲率半径が大きい場合(図17(A))の特性であり、図18のF1の特性を接触圧力に換算した特性である。一方、図19のG2は、曲率半径が小さい場合(図17(B))の特性であり、図18のF2の特性を接触圧力に換算した特性である。例えば、1端子あたりの荷重から接触圧力への換算は、曲率半径等から接触面積を計算し、1端子あたりの荷重を接触面積で除算することで実現できる。
図19のG1、G2に示すように、曲率半径が大きい場合であっても、小さい場合であっても、接触圧力が300N/mm2以上であれば、必要ワイピング量は0.8mm以下の値で飽和する。従って、曲率半径の大小に依らずに、接触圧力を300N/mm2以上とすれば、空走距離をL≧0.8mmとすることで、距離Lの区間のコネクター端子の空走により異物が振るい落とされて、接触不良(接点不良)の発生を抑制できることが理解される。
即ち、接触圧力が300N/mm2以上でコネクター端子が回路基板200の端子に接触すれば、距離Lの区間の空走においてコネクター端子の先端に異物が残存したとしても、この残存した異物が当該接触圧力で押し潰されることなどで、コネクター端子と回路基板200の端子との間の電気的な接触を確保でき、接触不良の発生を防止できるようになる。この場合、距離Lが短すぎると、接触圧力を300N/mm2以上としても、必要ワイピング量を確保することが難しくなり、接触不良が発生する確率が高くなるが、本実施形態では、距離L≧0.8mm(或いはL≧0.5mm)とすることで、このような接触不良の発生確率を十分に低減することに成功している。
そして、この場合の接触圧力は、図7や図11(E)で説明した押圧力FPにより実現される。即ち本実施形態の印刷装置のホルダー510に設けられる接点機構560は、印刷材収容体100の装着時において回路基板200の端子に対するコネクター端子の接触圧力が300N/mm2以上となる押圧力FP(付勢力)を発生させる。そして図15に示すように回路基板200上でのコネクター端子の空走距離として、L≧0.8mmを確保すれば、図16から明らかなように必要ワイピング量を確保することができ、コネクター端子と端子との接触不良の発生を抑制できる。
即ち、これまでは、保護膜220の削りカス等の異物を振り落とす空走距離については想定されていなかった。このため、図15の距離Lは0.8mmよりも短くなっており、接触領域境界BDC1の直ぐ近くに保護膜境界BDRが位置するように、保護膜220の開口が形成されていた。また、図16のように必要ワイピング量が飽和するという知見もなかった。
この点、本実施形態では、図16のように接触圧力を300N/mm2以上とすることで必要ワイピング量が飽和するという知見を見い出して、空走距離をL≧0.8mmに設定し、接触不良の発生確率を大幅に低減することに成功している。
なお、同じ大きさの押圧力FPであっても、コネクター端子の先端形状を鋭くすることで、接触圧力を増加させることができる。従って、図17(B)に示すようにコネクター端子の先端の曲率半径を小さくして形状を鋭くすることで、300N/mm2以上の接触圧力を発生させるのに必要な押圧力FPの大きさを、小さくできる。これにより、押圧力FPの発生機構に対する機械設計の要求仕様を低くできるという利点がある。
4.端子幅、開口幅
次に、端子幅や保護膜の開口幅の設定に関する本実施形態の手法について説明する。例えば図20において、回路基板200の端子230の第1の方向DR1での幅W1を小さくできれば、端子230に対する金メッキ量を少なくすることができ、低コスト化等を実現できる。
しかしながら、コネクター端子の位置は、図20の第1の方向DR1においても位置公差を有し、バラツキが発生する。従って、これまでは、コネクター端子と回路基板200の端子の電気的な接触を確保するために、コネクター端子の位置公差の範囲よりも、端子幅を大きくする設計をしていた。ところが、端子幅を大きくすると、金メッキ量等が増加したり、回路基板200の面積が大きくなるなどの事態を招き、コスト増加等の問題が生じる。また、コネクター端子の位置公差の範囲に対する要求仕様が厳しくなり、設計の制約となっていた。
そこで本実施形態では、端子幅や保護膜の開口幅の設定について、以下に説明する手法を採用している。
例えば図20、図21において、幅W1は、回路基板200の端子群の端子230の、印刷材収容体100の装着方向DISに直交する第1の方向DR1での幅である。また幅W2は、印刷材収容体100の装着時における、コネクター端子240の存在領域REXの第1の方向DR1での幅である。また幅W3は、端子230の位置で開口する保護膜220の開口領域の第1の方向DR1での幅である。
この場合に本実施形態では、W3>W2≧W1の関係が成り立つようにしている。即ち、W3>W2≧W1の関係が成り立つように、回路基板200の端子幅W1や保護膜220の開口幅W3を設定している。
ここで保護膜220の開口領域の幅W3は、図20、図21に示す第1の保護膜境界BDR1と第2の保護膜境界BDR2との距離である。第1の保護膜境界BDR1は、保護膜220の開口領域の一方側(第3の方向DR3側)の非開口領域との境界である。第2の保護膜境界BDR2は、保護膜220の開口領域の他方側(第1の方向DR1側)の非開口領域との境界である。
またコネクター端子の存在領域REXは、印刷材収容体100の装着時におけるコネクター端子の存在位置の位置公差(存在位置のバラツキ)により規定される領域である。
そして存在領域REXの幅W2は、図21に示すようにコネクター端子240が位置公差により第1の位置PS1に位置している場合のコネクター端子240の第1の端面ST1と、コネクター端子240が位置公差により第2の位置PS2に位置している場合のコネクター端子240の第2の端面ST2との間の距離である。
ここで、コネクター端子240の第1の端面ST1は、第1の保護膜境界BDR1側の端面(第3の方向DR3側の端面)である。また第2の端面ST2は、第2の保護膜境界BDR2側の端面(第1の方向DR1側の端面)である。
更に端子230の幅W1は、コネクター端子240が第1の位置PS1や第2の位置PS2に位置しているときに、コネクター端子240が端子230に接触する幅に設定されている。即ち、存在領域REXは第1の位置PS1、第2の位置PS2で規定され、この存在領域REXにコネクター端子240が存在する際には、コネクター端子240と端子230は接触する状態となっている。
また図21において第1の位置PS1と第2の位置PS2との第1の方向DR1での距離をWPとした場合に、本実施形態では、例えばW3>WP≧W1の関係が成り立つ。
また、第1の保護膜境界BDR1から端子230の第1の保護膜境界BDR1側の第1の端面ST3までの第1の方向DR1での距離及び第2の保護膜境界BDR2から端子230の第2の保護膜境界BDR2側の第2の端面ST4までの第1の方向DR1での距離をLHとする。なお、これらの距離が異なる場合には、大きい方の距離をLHとすればよい。またコネクター端子240の第1の方向DR1での幅をLTMとする。この場合に本実施形態では、例えばWP≦W1+2×(LH−LTM/2)の関係が成り立つ。
例えばコネクター端子240の存在位置は、印刷装置のメカ・バラツキ、ガタによるバラツキ、或いは回路基板200等の製造プロセスによるバラツキ等を要因として、位置公差を有する。図20の存在領域REXは、このような位置公差により規定される領域である。即ち、コネクター端子240の位置公差によるバラツキを考慮した場合における、コネクター端子240の占める領域が、存在領域REXになる。つまりコネクター端子240の第1の方向DR1での端子幅LTM(板厚)を含めた領域が、存在領域REXになる。
例えば図21においてコネクター端子240の第1の方向DR1での存在位置が、位置公差により第1の位置PS1〜第2の位置PS2の範囲でばらついたとする。第1の位置PS1は、第3の方向DR3側に最もばらついた場合のコネクター端子240の存在位置(代表位置)であり、第2の位置PS2は、第1の方向DR1側に最もばらついた場合のコネクター端子240の存在位置(代表位置)である。
この場合に、第1の方向DR1での存在領域REXの範囲は、第1の位置PS1に位置している場合のコネクター端子240の第1の端面ST1と、コネクター端子240が第2の位置PS2に位置している場合のコネクター端子240の第2の端面ST2との間の範囲である。従って、第1の方向DR1での存在領域REXの幅W2は、第1の位置PS1に位置する場合におけるコネクター端子240の第1の端面ST1と、第2の位置PS2に位置する場合におけるコネクター端子240の第2の端面ST2との間の距離になる。
そして、端子230の第1の方向DR1での幅をW1とし、保護膜220の開口領域の第1の方向DR1での幅をW3とした場合に、本実施形態では図21に示すように、W3>W2≧W1の関係式が成り立っている。更に具体的には、第1の位置PS1と第2の位置PS2との第1の方向DR1での距離をWPとした場合に、W3>WP≧W1の関係式が成り立っている。この場合に、幅W1、W2、WPは、コネクター端子240が端子230に接触することを前提とする幅になっている。即ち、コネクター端子240が第1の位置PS1に位置しているときには、図21のH1に示す部分でコネクター端子240と端子230は接触し、コネクター端子240が第2の位置PS2に位置しているときには、H2に示す部分でコネクター端子240と端子230は接触する。即ち、端子230の幅W1は、コネクター端子240が第1の位置PS1や第2の位置PS2に位置する際に、コネクター端子240が端子230に接触するような大きさの幅に設定されている。なお、図21のH1、H2はコネクター端子240の先端形状のバラツキを示しており、このような形状のバラツキがあった場合にもコネクター端子240と端子230は接触する。
次に、W1、W2、W3、WP等の具体的な数値例について説明する。例えば本実施形態ではW1=1.05mmとすることができる。また、第1の保護膜境界BDR1から端子230のBDR1側の第1の端面ST3までの距離及び第2の保護膜境界BDR2から端子230のBDR2側の第2の端面ST4までの距離を、LHとすると、LH=0.2mmとすることができる。また、コネクター端子240の第1の方向DR1での幅(板厚)をLTMとすると、LTM=0.25mmとすることができる。
そして、コネクター端子240の存在位置が、位置公差により第1の位置PS1となった場合及び第2の位置PS2となった場合に、コネクター端子240が端子230に接触するためには、WP≦W1+2×(LH−LTM/2)=1.05+2×(0.2−0.25/2)=1.2mmの関係式を満たせばよいことになる。
一例として、設計公差は、メカ・バラツキ=±0.195mm、回路基板200のプロセス・バラツキ=±0.27mm、ガタ・バラツキ=±0.05mmとなる。このため、全体としての第1の方向DR1でのバラツキ(位置公差)は±0.515mmとなり、WP=0.515×2=1.03mmとなる。従って、WP=1.03mm≦W1+2×(LH−LTM/2)=1.2mmを満たすことになる。即ち、幅WPや幅W2を端子230の幅W1よりも大きくしながら、コネクター端子240が端子230に接触することを保証できるようになる。
即ち、これまでは、コネクター端子240の存在位置が位置公差によりばらつくため、コネクター端子240と回路基板200の端子230の電気的な接続を確実にするために、W2<W1(WP<W1)となるように端子230の幅W1を設定していた。即ち、コネクター端子240の位置公差による存在領域REXの幅W2よりも、端子230の幅W1の方が大きくなるように設計して、幅W1の内側に存在領域REXがあるようにすることで、コネクター端子240と端子230の電気的な接続を確保していた。
しかしながら、後述するように、端子230に対するコネクター端子240の接触圧力が所定圧力以上であれば、W2<W1の関係が成立しなくても、コネクター端子240と端子230の電気的な接続を確保できることが判明した。
そこで本実施形態では図20、図21に示すように、W3>W2≧W1(W3>WP≧W1)の関係式が成り立つように、端子230の幅W1等を設定している。
このようにすれば、コネクター端子240の存在位置の設計公差に対する要求を軽減できると共に、端子230の幅W1を小さくできることで、端子230の金メッキ量等を減らして、低コスト化等を図れるようになる。
例えば、従来のW2<W1とする設計手法であると、端子230の幅W1=1.05mm、LTM=0.25mmとした場合に、WP≦W1−LTM=1.05−0.25=0.8mmとなってしまう。従って、コネクター端子240の存在位置の許容バラツキ(位置公差)として、WP≦0.8mmが要求されるようになり、設計に対する制約が大きくなってしまう。
これに対して本実施形態の手法によれば、WP≦W1+2×(LH−LTM/2)=1.05+2×(0.2−0.25/2)=1.2mmを満たせばよいため、存在位置の許容バラツキが、0.8mmから1.2mmに拡大して、設計に対する制約を軽減できるようになる。即ち、端子幅W1が同じであるのにもかかわらず、設計公差の幅WPを従来よりも大きな範囲でとれることになり、印刷材収容体100と印刷装置本体との位置的バラツキの許容範囲が増えることにより、設計上のメリットを得ることができる。或いは、設計公差の幅WPが小さくなるように設計することで、端子230の幅W1を更に小さくできるため、端子230の金メッキ量等を減らして、低コスト化を図れるようになる。
また本実施形態では、W3>W2の関係が成り立つため、例えば印刷材収容体100の装着時にコネクター端子240の端面ST1やST2が保護膜220に接触等することで不具合が発生するような事態も、防止できるようになる。
また本実施形態では、端子230に対するコネクター端子240の接触圧力が300N/mm2以上である場合に、W3>W2≧W1(W3>WP≧W1)とすることができる。
例えば図22は、図23におけるDR1方向位置と接触抵抗値の関係を示す実測値のグラフである。接触抵抗値は、コネクター端子240と端子230の間の接触抵抗値である。また図22のグラフの右横に示す0mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.5mm、1mm、1.6mmは、コネクター端子240の押し込み量である。即ち、図22では、コネクター端子240の押し込み量を変えて、DR1方向位置と接触抵抗値の関係を示している。
例えば図23に示すように、DR1方向位置が0mmである状態は、コネクター端子240の右側端面の位置と端子230の左側端面の位置が一致している状態である。またDR1方向位置が1.25mmである状態は、コネクター端子240の左側端面の位置と端子230の右側端面の位置が一致している状態である。
図22から明らかなように、DR1方向位置が0mmよりも小さくなったり、1.25mmよりも大きくなると、接触抵抗値が急増してしまう。このため、コネクター端子240の位置公差による幅WPは、図23の場合には1.25mm以下である必要がある。但し、押し込み量が0.3mm以下であると接触抵抗値は不安定になる。
そして図22の押し込み量を接触圧力に換算したグラフが図24である。ここでは、コネクター端子240の曲率半径をR=0.4とし、接触幅を0.18mmとして、押し込み量から接触圧力への換算を行っている。
図24に示す接触圧力と接触抵抗値の関係から、接触圧力が300N/mm2であれば、接触抵抗値は飽和し、コネクター端子240と端子230の電気的接続を確保できることが理解される。即ち、端子230に対するコネクター端子240の接触圧力が300N/mm2以上であれば、W3>W2≧W1(W3>WP≧W1)の関係が成り立つように設定した場合にも、コネクター端子240と端子230の電気的接続を確保することが可能になる。
即ち、前述したように、従来は、W2<W1の関係が成り立つようにすることで、コネクター端子240と端子230の電気的接続を確保していた。しかしながら、この手法によると、設計公差の許容範囲が小さくなってしまい、設計の制約が大きくなってしまうという課題があった。
この点、本実施形態では、図24のように接触圧力を300N/mm2以上とすることで接触抵抗値が飽和するという知見を見い出して、W3>W2≧W1の関係となるようにしている。このように、本実施形態の手法は、端子幅よりも設計公差の幅が大きくなったとしても、接触圧力を300N/mm2以上に設定すれば、コネクター端子240と端子230の電気的接続を確保できるという知見に基づくものである。
5.印刷装置
次に印刷装置の電気的な構成の詳細について説明する。図25に、本実施形態の印刷装置における印刷材収容体と装置側回路基板の接続構成例を示す。
制御部300は装置側回路基板450に設けられる。この制御部300は、第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4(広義には第1〜第nの印刷材収容体。nは2以上の整数)の複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAに接続され、記憶装置203に対してデータの読み出し又は書き込みの制御を行う。
なお、印刷材収容体100−1〜100−4は、それぞれ回路基板200−1〜200−4を有し、記憶装置203や各端子は、実際には回路基板200−1〜200−4に設けられている。但し、以下では説明の簡素化のために、適宜、回路基板200−1〜200−4を印刷材収容体100−1〜100−4と記載して説明を行う。
第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4のうちの第2の印刷材収容体100−2〜第3の印刷材収容体100−3(広義には第i〜第jの印刷材収容体。i、jは1<i<n−1、i<j<nとなる整数)の各々の複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、バスMBSにより制御部300と共通接続される。第1の印刷材収容体100−1の複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、バスMBSと分離されて制御部300と接続される。第4の印刷材収容体100−4(第nの印刷材収容体)の複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、バスMBSと分離されて制御部300と接続される。
装置側回路基板450は印刷装置本体用の回路基板であって、制御部300が実装され、本体側の第1〜第4の端子群TG1〜TG4(広義には本体側の第1〜第nの端子群)と、バスMBSのバス配線とを有する。本体側の第1〜第4の端子群TG1〜TG4は、第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4(第1〜第4の回路基板200−1〜200−4)が接続される。本体側の第1〜第4の端子群TG1〜TG4は、第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4が有する記憶装置203−1〜203−4にアクセスするための複数の記憶装置用端子CRST、CSCK、CVDD、CVSS、CSDAをそれぞれ有する。また、第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4の装着を検出するための装着検出端子CDT1、CDT2をそれぞれ有する。
本体側の第1の端子群TG1は、装置側回路基板450の第1の端辺側に配置され、本体側の第4の端子群TG4(第nの端子群)は、装置側回路基板450の第1の端辺に対向する第2の端辺側に配置される。第1〜第4の端子群TG1〜TG4のうちの第2〜第3の端子群TG2〜TG3(広義には第i〜第jの端子群)は、バスMBSのバス配線により制御部300に共通接続される。また、第1の端子群TG1は、バスMBSのバス配線と分離されて制御部300と接続される。また、第4の端子群TG4は、バスMBSのバス配線と分離されて制御部300と接続される。
このように図25の構成の印刷装置では、装置側回路基板450の第1の端辺側に配置される第1の端子群TG1及び第1の端辺に対向する第2の端辺側に配置される第4の端子群TG4は、バスMBSと分離されて制御部300にそれぞれ接続される。
インクジェット方式の印刷装置などでは、印刷ヘッドからインクが吐出される際にインクの一部が霧状(ミスト)になって空気中に放出される。このインクミストは、装置側回路基板450の端辺側から回り込むから、端辺から離れた印刷材収容体100−2、100−3よりも端辺側にある印刷材収容体100−1、100−4の方がインクミストの付着による端子間の短絡が発生する可能性が大きい。
図25の構成によれば、端辺側にある印刷材収容体100−1、100−4に短絡が発生した場合であっても、他の印刷材収容体100−2、100−3と分離されているから、制御部300と他の印刷材収容体の記憶装置203−2、203−3との間の通信に悪影響を与えることを抑止できる。また、装着検出の際に記憶装置203−2、203−3に高電圧が印加されることなどを抑止できる。その結果、印刷材収容体100−1〜100−4の装着検出を確実で安全に行うことなどが可能になる。
図26に、本実施形態の印刷装置の基本構成例を示す。この印刷装置は、印刷装置本体と印刷材収容体100を有する。印刷装置本体は、制御部300が設けられる装置側回路基板450と、主制御部400と、表示部430により構成される。なお図26では1個の印刷材収容体100について例示しているが、本実施形態の印刷装置は複数の印刷材収容体100を含むことができる。
装置側回路基板450は、9個の端子を有する端子群及び端子群の各端子と制御部300とを電気的に接続する複数の配線を含む。具体的には、端子群はリセット端子CRST、クロック端子CSCK、電源端子CVDD、接地端子CVSS、データ端子CSDA、装着検出端子CDT1、CDT2、短絡検出端子CCO1、CCO2を含む。
制御部300は、通信処理部350を含み、主制御部400と共に記憶装置203に対してデータの読み出し又は書き込みの制御を行う。例えば、主制御部400が記憶装置203に対するデータの書き込み又は読み出しの制御を行う場合に、通信処理部350は、書き込みデータ又は読み出しデータの通信の中継などを行う。また制御部300は、装着検出部330、CO検出部340、短絡検出部310、電圧印加部320、高電圧制御部360を含み、装着検出、CO検出、短絡検出、高電圧の遮断などの処理を行う。
主制御部400は、CPU410と、メモリー420とを含み、印刷処理の制御を行う。また、制御部300との間でバスBUSを介して必要な通信を行う。なお、図11に示す構成例では、制御部が主制御部400と制御部300とに分かれているが、1つの制御部として構成してもよい。
表示部430は、ユーザーに印刷装置の動作状態やインクカートリッジの装着状態などの各種の通知を行うためのものである。
低電圧電源441は、低電圧電源電圧(第1の電源電圧)VDDを生成する。電圧VDDは、ロジック回路に用いられる通常の電源電圧(定格3.3V)である。高電圧電源442は、高電圧電源電圧(第2の電源電圧)VHVを生成する。電圧VHVは、印刷ヘッドを駆動してインクを吐出させるために用いられる高い電圧(例えば定格42V)であり、装着検出端子DT1に印加される装着検出用電圧VHOを生成するためにも用いられる。これらの電圧VDD、VHVは、制御部300に供給され、また、必要に応じて他の回路にも供給される。具体的には、例えば高電圧電源電圧VHVは、高電圧電源442から制御部300の電圧印加部320に供給され、電圧印加部320から出力される装着検出用電圧VHOが印刷材収容体100の装着検出端子DT1及び装着検出部330に供給される。装着検出用電圧VHOは、記憶装置203に供給される高電位側電源電圧(例えば3.3V)よりも高い電圧である。
印刷材収容体100の回路基板200に設けられた9つの端子のうち、端子RST、SCK、VDD、SDA、VSSは、記憶装置203に電気的に接続される。
一方、装着検出端子DT1、DT2は、印刷材収容体100がホルダー510に正しく装着されているか否かを検出する際に使用される。装着検出端子DT1とDT2との間には、装着検出用の抵抗素子RD(広義には回路素子)が設けられる。装着検出部330は、電圧印加部320から出力される装着検出用電圧VHOと、装着検出用抵抗素子RDを流れる電流とに基づいて、印刷材収容体100の装着を検出する。具体的には、電圧印加部320から出力される装着検出用電圧VHOが装着検出端子DT1に印加されることで、装着検出用抵抗素子RDに電圧が印加されて電流が流れ、この電流を装着検出部330が検出することで、装着を検出する。
短絡検出端子CO1、CO2は、印刷材収容体100(具体的には回路基板200)の内部で、配線により電気的に接続されている。CO検出部340は、CO1とCO2との間の電気的導通を検出することで、CO1及びCO2がホルダー510の対応する端子にそれぞれ電気的に接触しているか否か、即ち、印刷材収容体100が正しく装着されているか否かを検出することができる。もっとも、本実施形態の印刷装置では、装着検出端子DT1、DT2及び装着検出部330が設けられており、これらを用いることで印刷材収容体100の装着を検出することができるから、CO検出部340を省略することができる。
なお、以下の説明において、装着検出部330による装着検出を「装着検出」と呼び、CO検出部340による装着検出を「カートリッジアウト検出」、又は「CO検出」と呼ぶ。
短絡検出部310は、短絡検出端子CO1及びCO2に直接に、又はダイオードD1、D2(広義には所与の回路素子)を介して接続される。そして例えば、短絡検出端子CO1、CO2の少なくとも一方と、装着検出端子DT1、DT2の少なくとも一方との間の短絡により、短絡検出端子CO1、CO2に本来印加されることのない高い電圧が印加されたこと(異常電圧の印加)を、検出ノードNDの電圧と参照電圧との比較に基づいて検出する。即ち、検出ノードNDの電圧が参照電圧より高くなる場合に、短絡(異常電圧)を検出する。短絡検出部310は、短絡を検出すると、高電圧制御部360に対して短絡検出信号VSHTを出力し、高電圧制御部360は、短絡検出信号VSHTに基づいて、電圧印加部320に対して制御信号VCNTを出力する。電圧印加部320は、高電圧制御部360からの制御信号VCNTに基づいて、装着検出用電圧VHOの供給を停止する。
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は全て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また回路基板、印刷材収容体及び印刷装置の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。