以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る自動水栓装置AF1の構造を模式的に示す断面図である。自動水栓装置AF1は、公共施設のトイレに備えられる水栓装置であって、使用者が手を洗う際に使用するものである。図1に示したように、自動水栓装置AF1は、スパウト(吐水部)10と、ボウル20と、制御装置50と、センサ60とを備えている。
スパウト10は、下方に向けて水を吐出するための部材であって、後述のボウル20の上面22から上方に向けて立ち上がるように配置されている。スパウト10の内部には水の流路が形成されており、その下流側端部には、水の出口である吐水口11が形成されている。また、当該流路の上流側端部はスパウト10の下端において開口しており、給水管40が下方から接続されている。給水管40は、図示しない水道管からスパウト10に向けて水を供給するための配管であって、ボウル20を貫いてスパウト10の下端に接続されている。給水管40からスパウト10に供給された水は、スパウト10の内部の流路を通って吐水口11に到達した後、吐水口11から下方のボウル20に向けて吐出される。
給水管40には、開閉弁41と定流量弁42とが配置されている。開閉弁41は、ソレノイドによって動作する電磁弁であって、水道管からスパウト10までの流路の開閉を切り換えるものである。換言すれば、吐水口11からの吐水と止水とを切り換えるものである。
定流量弁42は、給水管40を流れる水の流量を一定に保つための弁である。水道管の水圧が上昇した場合であっても、給水管40を流れる水の流量は増加することなく、定流量弁42によって所定流量に保たれる。定流量弁42は、給水管40のうち開閉弁41よりも下流側の部分に配置されている。
ボウル20は、吐水口11から吐出された水を受けて、当該水を排水管SWに排出するものである。ボウル20は、水平な上面22を有する陶器である。上面22には、水を受ける面として凹状のボウル面21が形成されている。ボウル面21の底部には排出口23が形成されており、排出口23には、下水管に繋がる配管である排水管SWの上端が接続されている。ボウル面21が受けた水は、ボウル面21に沿って排出口23に導かれ。その後、排水管SWに排出される。
排出口23には、例えば貯水栓のような、排水管SWに向けた水の排出を一時的に規制する機構が備えられていない。このため、ボウル20は、吐水口11から受けた水を貯留することなく、直ちに排水管SWに排出する構成となっている。
また、排出口23及び排水管SWの流路抵抗、すなわち、ボウル20から下水管までの流路における流路抵抗は比較的小さくなっており、当該流路を流れる水の最大流量は、吐水口11から吐出される水の流量よりも大きくなっている。換言すれば、給水管40を流れる水の流量が、排水管SWに排出され得る水の最大流量を超えないように、給水管40を流れる水の流量の上限が定流量弁42によって調整されている。このため、吐水口11からの吐水を長時間継続した場合であっても、水がボウル20に溜まってしまうことはなく、ボウル20における水位が上昇してしまうこともない。
制御装置50は、後に説明するセンサ60からの検知信号に基づいて、開閉弁41の動作を制御するものである。制御装置50と開閉弁41とは信号線SL1によって接続されている。開閉弁41の開閉を切り換えるための制御信号が、信号線SL1を通じて制御装置50から開閉弁41へと送信される。尚、開閉弁41の動作状態を制御装置50に向けてフィードバックするための信号線を更に備えてもよい。
センサ60は、適切なタイミングにおいて吐水及び止水を行うことができるよう、使用者Mの手Hの動きを検知するためのものである。センサ60は、所謂電波センサであって、所定方向に向けてマイクロ波(電波)MWを放射してその反射波を受信し、当該反射波に基づいて被検知体(マイクロ波MWを反射した物体)の動きに関する検知信号を出力するものである。
センサ60は、ボウル20を挟んで吐水口11とは反対側となる位置に配置されている。すなわち、ボウル20の裏側(使用者Mから見て奥側)であって使用者Mからは見えない位置に配置されている。具体的には、ボウル20の裏側の空間において、排出口23よりも僅かに高い位置に配置されている。
センサ60は、放射されたマイクロ波MWがボウル20を透過して、上方且つ僅かに使用者側にある吐水口11に向かうように配置されている。センサ60から放射されるマイクロ波MWは指向性の電波となっており、そのほとんどが吐水口11に向かって放射される。放射されたマイクロ波MWは、ボウル面21のうち一部の狭い領域(電波透過領域RP)のみを通過して、吐水口11に向かう。
図1に示したように、電波透過領域RPはボウル面21のうち下方側の部分であるが、その下端の位置は、排出口23よりも高い位置となっている。既に説明したように、吐水口11から吐水が行われている状態であっても、吐出された水がボウル20に溜まることはなく、ボウル20における水位が上昇することもない。このため、排出口23よりも高い位置にある電波透過領域RPが水没してしまうことはない。その結果、センサ60と吐水口11との間にはマイクロ波MWの進行を妨げる水膜が形成されないため、手Hの動きをセンサ60によって常に正確に検知することが可能となっている。センサ60から出力される検知信号は、信号線SL2を通じて制御装置50へと送信される。
図2を参照しながら、センサ60及び制御装置50の構成について更に説明する。図2は、自動水栓装置AF1のうち、センサ60及び制御装置50の構成を説明するための図である。
センサ60は、送信部61と、受信部62と、ミキサ回路65とを有している。送信部61は、発振回路63で生成された所定周波数(送信周波数SF)の信号SGを、吐水口11に向けてマイクロ波MWとして放射するためのアンテナである。受信部62は、送信部61から放射された後、被検知体により反射されて戻ってきた反射波を受信するためのアンテナである。受信部62は、反射波を受信すると、これを当該反射波の振動数及び強度に応じた信号である信号RGに変換する。
被検知体が静止している場合には、反射波及び信号RGの周波数は送信周波数SFと等しい。一方、被検知体が動いている場合には、反射波及び信号RGの周波数はドップラー効果によって変化する。具体的には、被検知体の速度が大きいほど、反射波及び信号RGの周波数から送信周波数SFを差し引いた値の絶対値は大きくなる。
また、送信部61から被検知体までの距離が小さいほど、マイクロ波MWはその減衰が小さい状態で反射波として戻ってくるため、反射波の強度は大きくなる。このため、信号RGの強度も大きくなる。尚、信号RGは電位の振動であるから、ここでいう信号RGの強度とは、上記振動の中心における電位の大きさといってもよい。
発振回路63と送信部61との間には、結合回路64が配置されている。発振回路63で生成された信号SGは、結合回路によってその一部が取り出されて、信号RGと共にミキサ回路65に入力される。
ミキサ回路65は、信号SGと信号RGの入力を受けて、これらに基づいて検知信号DGを出力する回路である。ミキサ回路65から出力される検知信号DGの周波数の値は、信号RGの周波数から送信周波数SF(信号SGの周波数)を差し引いた値の絶対値に等しい。また、検知信号DGの強度は、信号RGの強度に等しい。すなわち、電位の振動である検知信号DGと信号RGとは、それぞれの振動の中心における電位の大きさが互いに等しい。検知信号DGは、信号線SL2を通じて制御装置50へと出力される。
制御装置50は、複数の増幅回路51と、複数のバンドパスフィルタ52と、演算装置53とを有している。センサ60から制御装置50に入力された検知信号DGは、増幅回路51によって増幅された後にバンドパスフィルタ52に入力され、バンドパスフィルタ52によって周波数帯域毎に分類されて演算装置53に入力される。
その結果、検知信号DGは周波数成分毎に分けられて、そのそれぞれが演算装置53に入力される。このような構成は、送信部61から放射されたマイクロ波MWが何によって反射されたのかを識別し、自動水栓装置AF1の状態を検知することを目的とするものである。
例えば、使用者Mの手Hの動きは比較的遅い。このため、マイクロ波MWが手Hによって反射された場合、手Hの動きに関する情報は、検知信号DGには低い周波数の成分として含まれている。また、マイクロ波MWが手Hによって反射された場合、手Hは比較的大きな物体であるから、検知信号DGの強度は大きくなる。
そこで、制御装置50では、検知信号DGを低い増幅率で増幅し(単一の増幅回路51のみを通過させ)、通過帯域の周波数が低いバンドパスフィルタ52を通過させたものを、手Hの動きに関する情報として演算装置53に入力している。
また、手Hに当たって飛び散った水(以下では「散乱水」とも称する)の動きは比較的速い。このため、マイクロ波MWが散乱水によって反射された場合、散乱水の動きに関する情報は、検知信号DGには高い周波数の成分として含まれている。また、マイクロ波MWが散乱水によって反射された場合、散乱水は小さい物体であるから、検知信号DGの強度は小さくなる。
そこで、制御装置50では、検知信号DGを高い増幅率で増幅し(直列に配置された複数の増幅回路51を通過させ)、通過帯域の周波数が高いバンドパスフィルタ52を通過させたものを、散乱水の動きに関する情報として演算装置53に入力している。
検知信号DGには、これらの他に、吐水口11から吐出された水が、手Hに当たることなくボウル面21に到達している場合における水流(以下、「整流」とも称する)の表面の動きに関する情報も含まれている。当該情報についても、検知信号DGを増幅回路51で増幅し、対応するバンドパスフィルタ52を通過させることによって抽出し、演算装置53に入力している。
演算装置53は、それぞれのバンドパスフィルタ52から出力される信号によって、送信部61から放射されたマイクロ波MWが何によって反射されたのかを識別し、手H、散乱水、整流のそれぞれの動き(状態)を把握することが可能となっている。後に説明するように、制御装置50(演算装置53)は、これらに基づいて自動水栓装置AF1の状態を検知し、開閉弁41を適切に動作させるための制御信号を出力する。
続いて、自動水栓装置AF1の具体的な動作について、図3乃至図7を参照しながら説明する。図3は、制御装置50で行われる処理の流れを示すフローチャートである。図4乃至図7は、いずれも自動水栓装置AF1の動作を説明するための図であって、各時点における自動水栓装置AF1の状態を示している。
図4乃至図7の(A)には、自動水栓装置AF1の状態、及び吐水口11から吐出された水(以下、「水WT」と表記する)の状態を図示している。また、図4乃至図7の(B)には、演算装置53に入力される検知信号DGの時間変化を4つのグラフで示している。このうち、グラフG1は、検知信号DGのうち散乱水の動きに関する情報として抽出された成分(以下、「散乱水成分」とも称する)の時間変化を示している。グラフG2は、検知信号DGのうち手Hの動きに関する情報として抽出された成分(以下、「手成分」とも称する)の時間変化を示している。グラフG3は、検知信号DGのうち整流の動きに関する情報として抽出された成分(以下、「整流成分」とも称する)の時間変化を示している。
また、グラフG4は、検知信号DGの強度の時間変化を示している。すなわち、ミキサ回路65から出力される検知信号DGを電位の振動と見た場合において、当該振動の中心における電位(以下、「基準電位」とも称する)の時間変化を示している。
使用者Mが自動水栓装置AF1の近くに存在しないときには、自動水栓装置AF1は待機状態となっている(図3のステップS01)。このとき、吐水口11からの吐水は行われていない。制御装置50は、検知信号DGのうち特に手成分に基づいて、吐水口11の下方空間おける使用者Mの手Hの有無を監視しながら、吐水を開始すべきかどうかの判定(吐水判定)を繰り返し行っている。
図4は、このような待機状態における自動水栓装置AF1の状態を示している。センサ60からは、常にマイクロ波MWが吐水口11に向けて放射されている。図4に示した状態においては、使用者Mが自動水栓装置AF1に向かって接近しているところではあるが、センサ60と吐水口11との間には何ら物体(手H等)が存在していない。このため、反射波としてセンサ60に戻るマイクロ波MWは僅かとなっている。また、当該反射波の周波数は送信周波数SFと略一致している。その結果、ミキサ回路65から出力される検知信号DGの周波数はほぼ0となっている。
従って、図4の(B)に示したように、散乱水成分(グラフG1)、手成分(グラフG2)、及び整流成分(グラフG3)は、いずれも大きさが0で一定の電位となっている。また、基準電位(グラフG4)は、低い電位で且つ一定となっている。
図5の(A)は、手洗いを開始しようとする使用者Mが、吐水口11の下方に手Hを差し出した状態を示している。手Hは、減速しながら吐水口11の下方空間に侵入し、その一部がマイクロ波MWに当たった状態で停止する。手Hに当たったマイクロ波MWは反射されて、反射波となってセンサ60に戻る。
この時点では、まだ吐水口11からの吐水は開始されていない。このため、図5の(B)に示したように、散乱水成分(グラフG1)及び整流成分(グラフG3)は、いずれも大きさが0で一定の電位のままである。
一方、手成分(グラフG2)は振動する波形の信号となっている。手Hが次第に減速するため、初期においては手成分の振動の周波数は大きく、時間の経過とともに周波数は小さくなっていく。また、手Hが次第に送信部61に近づくため、ミキサ回路65から出力される検知信号DGの強度は次第に大きくなる。その結果、初期においては手成分の振幅は小さく、時間の経過とともに振幅は大きくなっていく。更に、基準電位も時間の経過とともに高くなっていく。
手成分(グラフG2)が上記のように変化したことをもって、制御装置50はステップS01の吐水判定を終了し、吐水を開始するように制御する(図3のステップS02)。尚、吐水判定は、手成分の変化ではなく基準電位の変化に基づいて行ってもよい。具体的には、図5の(B)のグラフG4に示したように基準電位が上昇して所定の閾値を超えた時点で、吐水を開始することとしてもよい。
制御装置50は、使用者Mの手Hが接近する動きを上記のように検知すると、制御信号を送信して開閉弁41を開く。図6の(A)は、このような制御によって吐水が開始された状態を示している。図6の(A)に示したように、吐水口11から吐出された水WTは、少なくともその一部が手Hに当たって散乱しながら下方に向かい、ボウル面21に受け止められる。その後、ボウル面21に沿って排出口23に導かれ、直ちに排水管SWに排出される。
このとき、電波透過領域RPは水没した状態とはならないため、マイクロ波MWは継続して吐水口11に向けて放射されている。マイクロ波MWは散乱水及び手Hによって反射され、それぞれの反射波がセンサ60に戻る。
散乱水及び手Hは、いずれもマイクロ波MWを反射しながら動いている。このため、図6の(B)に示したように、散乱水成分(グラフG1)、及び、手成分(グラフG2)は、振動する波形の信号となっている。一方、図6の(A)の状態においては、手Hに当たらずにボウル面21に直接到達する水WTがほとんど存在せず、整流は形成されていない。その結果、整流成分(グラフG3)は振動しておらず、大きさが0で一定の電位となっている。
ステップS02で吐水が開始された以降においては、制御装置50は、図6の(B)に示した検知信号DGに基づいて、吐水を停止すべきかどうかの判定(止水判定)を繰り返し行う(図3のステップS03)。散乱水成分及び手成分が振動する波形の信号となっており、整流成分が0となっている間は、使用者Mが手洗いを行っていると推定される。このため、制御装置50はそのような間は止水を行わず、吐水を継続するように制御する。
手洗いが終了すると、使用者Mは吐水口11の下方から手Hを引き抜く。図7の(A)は、手Hが引き抜かれた直後の時点における状態を示している。このとき、吐水口11からの吐水は継続して行われているが、吐出された水は手Hに当たらずにボウル面21に直接到達している。このため、吐出された水は整流となっている。
図7の(A)の状態においても、ボウル面21に到達した水はボウル面21に沿って排出口23に導かれ、直ちに排水管SWに排出される。電波透過領域RPは水没した状態とはならないため、マイクロ波MWは継続して吐水口11に向けて放射されている。マイクロ波MWは、整流(の側面)及び手Hによって反射され、それぞれの反射波がセンサ60に戻る。
図7の(B)では、手Hが引き抜かれる過程において、マイクロ波MWが手Hによって反射されなくなった時刻を時刻t1として示している。グラフG1に示したように、時刻t1よりも前の時点から、散乱水成分は大きさが0で一定の電位となっている。これは、吐水口11から吐出された水WTが、手Hに当たらなくなったことを示している。また、それと同時に吐出された水WTは整流となるため、整流成分(グラフG3)は振動する波形の信号となっている。
手成分(グラフG2)は、時刻t1以前では、手Hが次第に送信部61から遠ざかるため、ミキサ回路65から出力される検知信号DGの強度は次第に小さくなる。その結果、時刻t1に近づくに従って振幅は小さくなっていく。更に、基準電位(グラフG4)も時間の経過とともに低くなっていく。
時刻t1以降においては、センサ60と吐水口11との間には整流のみが存在している。このため、整流成分(グラフG3)のみが振動する波形の信号となっており、散乱水成分(グラフG1)、手成分(グラフG2)は、いずれも大きさが0で一定の電位となっている。また、基準電位(グラフG4)は、低い電位で且つ一定となっている。
図7の(B)のように、振動する波形の信号が整流成分(グラフG3)のみという状態になると、ステップS03において止水判定を行っていた制御装置50は、使用者Mの手洗い動作が完了したと判断し、吐水口11からの吐水を停止する制御を行う。
吐水が停止された後においても、マイクロ波MWは継続して吐水口11に向けて放射される。センサ60と吐水口11との間には何ら物体が存在せず、以降は図4の(A)に示した待機状態に戻る。
以上に説明したように、本実施形態に係る自動水栓装置AF1においては、電波透過領域RPの位置が水没しない位置となるように、センサ60が配置されている。センサ60がこのように配置されているため、使用者Mの手Hとセンサ60との間に介在する水WTがマイクロ波MWの進行を遮ってしまうことが無い。吐水が行われている際は、ボウル面21よりも上方において常にマイクロ波MWが放射された状態となっているため、制御装置50により手Hの動きを常に正確に検知することが可能となっている。その結果、手Hが吐水口11の下方の空間から引き抜かれたにも拘わらず、吐水がいつまでも継続されてしまうようなことが防止されている。
既に説明したように、自動水栓装置AF1は、吐水口11からの吐水を長時間継続した場合であっても、吐出された水WTがボウル20に溜まることのない構成となっている。従って、通常の使用状態においては、ボウル20における水位が上昇してしまうことはない。
しかし、例えば排出口23に異物が詰まってしまう等により、排水管SWへの水の排出に異常が生じた場合には、ボウル20における水位が上昇し、電波透過領域RPが水没してしまうようなことも起こり得る。
図8は、排出口23に異物Obが詰まってしまった状態を説明するための図である。図8の(A)は、排出口23に異物Obが詰まっている状態のまま、使用者Mが手Hを差し出して、吐水が開始された後の状態を示している。吐出された水WTは、排出口23に流入することができないため、ボウル20に溜まってしまう。その結果、ボウル20における水位は上昇し、図8の(A)に示したように電波透過領域RPが水没してしまう。
マイクロ波は、陶器であるボウル20を透過することができるが、水WTを透過することはできない。このため、図8の(A)のように電波透過領域RPが水没してしまうと、センサ60から放射されたマイクロ波MWは、ボウル20と貯留された水WTとの境界面において全て反射され、その反射波がセンサ60に戻る。従って、マイクロ波MWはボウル面21よりも上方には到達しない。図8の(B)は、このように電波透過領域RPが水没した状態における、散乱水成分(グラフG1)、手成分(グラフG2)、整流成分(グラフG3)、基準電位(グラフG4)の時間変化を示している。
マイクロ波MWは、ボウル面21よりも上方には到達しないのであるから、散乱水、手H、整流のいずれにも当たることがない。また、送信部61から放射されたマイクロ波MWは、ボウル20と貯留された水WTとの境界面(当該境界面は静止している)において全て反射される。このため、ミキサ回路65から出力される検知信号DGの周波数の値は0となる。その結果、散乱水成分(グラフG1)、手成分(グラフG2)、及び整流成分(グラフG3)は、いずれも大きさが0で一定の電位となっている。
その後、手洗いが終了すると、使用者Mは吐水口11の下方から手Hを引き抜く。このとき、吐水口11から吐出された水は整流となる。しかし、マイクロ波MWは貯留された水WTに妨げられるため、整流には到達しない。その結果、演算装置53には、図7の(B)のグラフG3に示したような波形の検知信号DGが入力されない。
図7の(B)を参照しながら説明したように、制御装置50は、振動する波形の信号が整流成分(グラフG3)のみという状態になったことをもって、使用者Mの手洗い動作が完了したと判断する。このため、図8に示した状態においては、制御装置50はステップS03の止水判定を正確に行うことができず(使用者Mの手洗い動作が完了したことを正確に検知することができず)、いつまでも無駄な吐水が継続されてしまう可能性がある。
そこで、自動水栓装置AF1の制御装置50は、ステップS03において止水判定を行うことに加えて、これと並行して強制止水判定を行っている(ステップS04)。強制止水判定とは、上記のように排水管SWへの水WTの排出に異常が生じた際に、吐水を強制的に停止すべきかどうかを判定する処理である。制御装置50は、電波透過領域RPが水没していることを検知すると、強制的にステップS05に移行して吐水を停止させる。すなわち、振動する波形の信号が整流成分(グラフG3)のみという状態になること等を待つことなく(使用者Mの手洗い動作が完了したことを検知又は判定することなく)、強制的に吐水を停止させる。
電波透過領域RPが水没していることを制御装置50が検知(判断)するための具体的な方法としては、様々な方法を採用することができる。例えば、散乱水成分(グラフG1)と手成分(グラフG2)の両方が振動する波形となっている図6の状態から、散乱水成分(グラフG1)、手成分(グラフG2)、及び整流成分(グラフG3)が全て一定である図8の状態に変化したことが検知された時点で、電波透過領域RPが水没していると判断することができる。
また、図8の(B)のグラフG4に示したように、電波透過領域RPが水没している状態においては、センサ60に比較的近い位置でマイクロ波MWが反射されている。その結果、基準電位が非常に高くなっている。そこで、基準電位が所定の閾値ULを超えたことが検知された時点で、電波透過領域RPが水没していると判断することもできる。
以上のような方法により、電波透過領域RPが水没していると判断した場合には、制御装置50は強制的にステップS05に移行して吐水を停止させる。制御装置50がこのような強制止水を行うことにより、排水管SWへの水WTの排出に異常が生じた場合であっても、吐水が無駄に継続されてしまうようなことや、その結果として水WTがボウル20から溢れてしまうようなことが確実に防止される。
図9の(A)は、使用者Mが洗顔を行っている状態を示している。洗顔は、両手に水を溜めた後、当該水を水塊となして一気にボウル面21に落下させる動作を含んでいる。このため、排水管SWへの水WTの排出に異常が生じていない場合であっても、落下した水塊によって電波透過領域RPが一時的に覆われてしまい、マイクロ波MWがボウル面21よりも上方に届かなくなってしまう場合がある。すなわち、電波透過領域RPが水没した状態と同じになってしまう場合がある。
図9の(B)は、このときにおける散乱水成分(グラフG1)、手成分(グラフG2)、整流成分(グラフG3)、基準電位(グラフG4)の時間変化を示している。時刻t2より前の時点においては、ボウル面21に落下した水塊が電波透過領域RPの全体を覆っている。
時刻t2以降においては、ボウル面21に落下した水塊はボウル面21に沿って流れて、排出口23に流入する。このため、マイクロ波MWは再び電波透過領域RPを透過するようになる。尚、図9の(B)は、時刻t2までの間に使用者Mの手Hが引き抜かれており、時刻t3以降においては整流のみが検知されている場合の例を示している。手Hが引き抜かれるタイミングによっては、異なる波形となることは言うまでもない。
落下した水塊によって電波透過領域RPが一時的に覆われているとき(時刻t2よりも前)においては、図9の(B)に示した各グラフは、それぞれ図8の(B)に示した各グラフと同一となっている。しかし、この場合には、排水管SWへの水WTの排出に異常が生じているわけではないため、電波透過領域RPが覆われたとしても吐水を停止させる必要はない。
また、図9の(A)に示した状態では、洗願を行っている使用者Mは継続して吐水が行われることを期待するはずである。従って、電波透過領域RPの水没が検知されたことに伴って吐水を強制的に停止してしまうと、使用者Mに違和感や使い勝手の悪さを感じさせてしまうこととなり、適切ではない。
そこで、自動水栓装置AF1では、電波透過領域RPが水没したことが検知されても、その時点で直ちには吐水を停止しない。電波透過領域RPが水没したことが検知されてから、そのような状態が所定時間継続した場合にのみ、ステップS04からステップS05に移行して吐水を強制的に停止することとしている。
制御装置50がこのような制御を行うことにより、自動水栓装置AF1が使用されている途中において不適切なタイミングで吐水が停止されてしまい、使用者Mに対して違和感や使い勝手の悪さを感じさせてしまうことが防止される。
本発明の第二実施形態に係る自動水栓装置AF2について、図10を参照しながら説明する。自動水栓装置AF2は、ボウル20がオーバーフロー口24及びオーバーフロー管25を備えている点において、自動水栓装置AF1と異なっている。また、制御装置50により行われる強制止水判定の内容についても、自動水栓装置AF1と異なっている。その他については自動水栓装置AF1と同一であるため、自動水栓装置AF1と共通する事項については説明を省略する。
ボウル面21のうち上方側の部分であって、且つ使用者Mから見て奥側となる部分には、オーバーフロー口24が形成されている。オーバーフロー口24は、ボウル20から水が溢れることを防止するためのものである。排出口23に異物Obが詰まった状態のまま吐水が行われ、ボウル20における水位が上昇した際には、ボウル20に貯留された水はオーバーフロー口24に流入する。このため、ボウル面21の縁から水が溢れてしまうことが防止される。
オーバーフロー管25は、オーバーフロー口24に流入した水を排水管SWに導くための管である。本実施形態では、オーバーフロー管25は、ボウル20の裏面に沿うように配置されている。オーバーフロー管25の一端はオーバーフロー口24に対して裏側から接続されており、オーバーフロー管25の他端は、排出口23よりも下方において、排水管SWに対して分岐接続されている。
センサ60は、オーバーフロー管25の更に裏側(使用者Mから見て奥側)に配置されており、送信部61から放射されたマイクロ波MWが、オーバーフロー管25の内部を透過して吐水口11に向かうように配置されている。
図10の(A)は、このような自動水栓装置AF2において、排出口23に異物Obが詰まっている状態のまま使用者Mが手Hを差し出して、吐水が開始された後の状態を示している。吐出された水WTは、排出口23に流入することができないため、ボウル20に溜まってしまう。その結果、ボウル20における水位は上昇しており、図10の(A)に示したように電波透過領域RPは水没している。
図10の(B)は、このように電波透過領域RPが水没した状態における、散乱水成分(グラフG1)、手成分(グラフG2)、整流成分(グラフG3)、基準電位(グラフG4)の時間変化を示している。
図8に示した場合と同様に、マイクロ波MWは、ボウル面21よりも上方には到達しないのであるから、散乱水、手H、整流のいずれにも当たることがない。このため、手成分(グラフG2)及び整流成分(グラフG3)は、いずれも大きさが0で一定の電位となっている。
一方、散乱水成分(グラフG1)については一定とならず、振動する波形の信号となっている。これは、送信部61から放射されたマイクロ波MWがオーバーフロー管25の内部を透過する際に、オーバーフロー管25の内部を流れる水によって反射されたことによるものである。このような反射波を受信部62が受信した際にミキサ回路65から出力される検知信号DGは、その周波数が、散乱水による反射波を受信した際の周波数とほぼ等しい。このため、実際にはマイクロ波MWは散乱水に到達していないにもかかわらず、散乱水成分(グラフG1)は振動する波形の信号となる。
排水管SWへの水WTの排出が正常に行われている状態においては、散乱水成分(グラフG1)のみが振動する波形の信号となり、手成分(グラフG2)及び整流成分(グラフG3)がいずれも一定となることは起こり得ない。従って、本実施形態では、散乱水成分、手成分、整流成分が上記のようになったことが検出された時点で、制御装置50は、電波透過領域RPが水没していると判断することとしている。
自動水栓装置AF1の場合と同様に、制御装置50は、上記のような方法で電波透過領域RPが水没していることを検知すると、ステップS04からステップS05に移行して吐水を強制的に停止する。ただし、電波透過領域RPが水没していることが検知された時点で直ちに吐水を停止するのではない。電波透過領域RPが水没したことが検知されてから、そのような状態が所定時間継続した場合にのみ、ステップS04からステップS05に移行して吐水を強制的に停止する。
尚、以上の説明においては、電波透過領域RPが水没していることを検知信号DGに基づいて判断し、これに基づいて吐水を強制的に停止する例を説明した。本発明の実施形態としてはこのような態様に限られず、種々の制御方法を採用することができる。例えば、吐水が開始されてからの経過時間が所定の上限時間に達すると、排水管SWへの水の排出に異常が生じたと推定し、その時点で吐水を強制的に停止することとしてもよい。このような方法であっても、ボウル20における水位の上昇が抑制されるため、水が溢れてしまうことや、いつまでも無駄な吐水が継続されてしまうこと等が防止される。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。