JP6102731B2 - 積層コアの焼鈍方法 - Google Patents
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また、前記棒状のヒーターは、前記積層コアの高さ寸法よりも長い寸法の発光部を有し、前記積層コアを加熱する工程では、前記発光部の上端が前記積層コアの上面よりも上側かつ前記発光部の下端が前記積層コアの下面よりも下側の状態で前記積層コアを加熱することを特徴とする。
また、前記積層コアを加熱する工程では、前記空間に挿入した前記棒状のヒーターに加えて前記積層コアの外側に配置された棒状のヒーターにより前記積層コアを加熱することを特徴とする。
また、前記積層コアを挟み込む工程では、軸方向に沿って複数、重ね合わせた積層コアを上下から挟み込み、前記積層コアを加熱する工程では、前記重ね合わせた積層コアの高さ寸法よりも長い寸法に形成された前記棒状のヒーターを挿入することを特徴とする。
まず、積層コアを製造する工程について簡単に説明する。なお、本実施形態では、積層コアとして回動機の固定子の積層コアを用いる。
積層コア10を焼鈍することで、電磁鋼鈑を打ち抜くときに発生した歪みを除去することができる。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、積層コア10の偏温が大きくなってしまうのは、棒状のヒーターの長さが積層コア10の高さよりも長いために、積層コア10の上部および下部が高さ方向における中央部よりも加熱されているためであることを見出した。具体的には、棒状のヒーターを用いて積層コア10を空間13から加熱する場合、棒状のヒーターの発光部の上端が積層コア10の上面よりも上側に位置し、棒状のヒーターの発光部の下端が積層コア10の下面よりも下側に位置した状態で加熱する。したがって、積層コア10のうち上部および下部はヒーターの発光部による空間13からの加熱に加えて高さ方向からも加熱される。すなわち、積層コア10の上部や下部は中央部に比べてより加熱されることから、積層コア10の上部や下部が中央部の温度よりも高く、積層コア10の偏温が大きくなる要因であることを突き止めた。
本発明者らは、貫通孔を有する、第1の遮蔽部材および第2の遮蔽部材を積層コア10の上下から挟み込み、積層コア10の内部に形成される空間13に、積層コア10の高さ寸法よりも長い寸法の棒状のヒーターを挿入して、積層コア10を空間13から加熱すれば、上述した問題が解決されることを見出した。以下、具体的に、本実施形態に係る積層コアの焼鈍における加熱方法について説明する。
本実施形態では、積層コア10を上下から挟み込む遮蔽部材のうち、積層コア10の上面を上側から覆う遮蔽部材を第1の遮蔽部材21とし、積層コア10の下面を下側から覆う遮蔽部材を第2の遮蔽部材23とする。
第1の遮蔽部材21および第2の遮蔽部材23は、略一定板厚に形成された板状であって、棒状のヒーターからの輻射熱を遮蔽できる材質、例えば酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ほう化窒素、等のセラミックス、ステンレス鋼、インコネル、等の耐熱鋼などを用いることができる。
第2の遮蔽部材23は積層コア10の下面の全てを下側から覆うことができるように、外形が積層コア10の外形寸法よりも大きな円形に形成されている。また、第2の遮蔽部材23は、中央に貫通孔24(後述する図4を参照)が形成されている。
本実施形態では、第1の遮蔽部材21と第2の遮蔽部材23とは同一の構成である。また、本実施形態では、第1の遮蔽部材21および第2の遮蔽部材23を円形としているが、積層コア10を上側または下側から覆うことができる形状であれば円形に限られず、例えば矩形状であってもよい。また、ステータと同一あるいは同様の形状でステータ全面を覆う形状に加工してもよい。
電磁鋼鈑を積層させた状態で固定した積層コア10を加熱炉に搬送した後、軸方向を上下方向に配置した状態の積層コア10を上側から第1の遮蔽部材21で覆うと共に、下側から第2の遮蔽部材23で覆う。このとき、第1の遮蔽部材21は積層コア10の上面が露出しないように覆い、第2の遮蔽部材23は積層コア10の下面が露出しないように覆うものとする。したがって、積層コア10は、第1の遮蔽部材21および第2の遮蔽部材23によって上下から挟み込まれる(挟み込み工程)。この状態では、第1の遮蔽部材21の貫通孔22および第2の遮蔽部材23の貫通孔24は、積層コア10の空間13に連通される。
まず、実施例は、上述した実施形態の第1の遮蔽部材21と第2の遮蔽部材23とにより積層コア10を上下から挟み込んで、加熱炉内で棒状のヒーター25を積層コア10の空間13に複数配置すると共に、外側に複数配置して所定の温度まで加熱した後、均熱することなく100℃まで40分間かけて冷却した。なお、実施例のうち、実施例1は所定の温度として750℃まで加熱する加熱方法を実施例1とし、850℃まで加熱する加熱方法を実施例2とする。
図6に示すように、積層コア10の空間に配置された棒状のヒーター25と積層コア10との最短距離L1を26mmとし、積層コア10の外側に配置された棒状のヒーター25と積層コア10との最短距離L2を45mmとした。
比較例は第1の遮蔽部材21と第2の遮蔽部材23とを用いずに、実施例と同じ条件により所定の温度として750℃まで加熱した後、実施例と同じ条件で冷却した。
図7は、積層コア10の温度を測定する測定点を示す図である。
測定点Aは、積層コア10の上部かつティース部12の先端である。
測定点Bは、積層コア10の下部かつティース部12の先端である。
測定点Cは、積層コア10の上部かつコアバック部11の外周である。
測定点Dは、積層コア10の下部かつコアバック部11の外周である。
測定点Eは、積層コア10の上部かつティース部12の先端である。
測定点Fは、積層コア10の中央部かつティース部12の先端である。
測定点Gは、積層コア10の下部かつティース部12の先端である。
なお、図6に示すように、測定点A(測定点Bも同様)は空間13内のヒーター25間に位置し、測定点E(測定点F、Gも同様)は空間13内のヒーター25と最短距離に位置している。
図8は、実施例の各測定点の温度変化を示すグラフである。表1は、実施例の各測定点の温度を示す表である。なお、ここでは、実施例のうち、所定の温度として850℃まで加熱する実施例2により加熱したときの積層コア10の温度変化を示している。
一方、最も昇温が遅いのは測定点Dであり、測定点Dでは280秒で644℃、327秒で724℃であった。
したがって、測定点Eが750℃に到達したときの積層コア10の温度の偏差は106℃(750℃−644℃)であり、測定点Eが850℃に到達したときの積層コア10の温度の偏差は126℃(850℃−724℃)であった。
したがって、測定点Eが750℃に到達したときのティース部12における温度の偏差は55℃(750℃−695℃)であり、測定点Eが850℃に到達したときのティース部12における温度の偏差は68℃(850℃−782℃)であった。
図9は、比較例の各測定点の温度変化を示すグラフである。表2は、比較例の各測定点の温度を示す表である。
一方、最も昇温が遅いのは測定点Dであり、測定点Dでは168秒で466℃であった。
したがって、測定点Eが750℃に到達したときの積層コア10の温度の偏差は284℃(750℃−466℃)であった。
したがって、測定点Eが750℃に到達したときのティース部12における温度の偏差は277℃(750℃−473℃)であった。
次に、上述した実施例1、実施例2および比較例によって加熱して焼鈍が完了した積層コア10の形状劣化を比較した。
形状劣化の比較として実施例1、実施例2、比較例の積層コア10のそれぞれについて、測定項目として焼鈍終了後の最大外径、最小外径、最大内径、最小内径、最大高さ、最小高さを測定した。図10(a)の積層コア10の平面図に示すように、最大外径(Dmax)および最小外径(Dmin)は、積層コア10の外径のうちの最大値および最小値である。図10(b)の積層コア10の平面図に示すように、最大内径(dmax)および最小内径(dmin)は、積層コア10の内径のうちの最大値および最小値である。図10(c)の積層コア10の側面図に示すように、最大高さ(Hmax)および最小高さ(Hmin)は、積層コア10の下面からの高さのうち最大値および最小値である。
ここでは、外径、内径、高さそれぞれについて、(最大値−最小値)/最大値 を算出し、劣化率を算出した。以下の表にその比較結果を示す。
次に、上述した実施例1、実施例2および比較例によって加熱して焼鈍が完了した積層コア10の鉄損を比較した。
ここでは、実施例1、実施例2、比較例の積層コア10のそれぞれについて、焼鈍する前の鉄損を100として焼鈍が完了した後の積層コア10の鉄損を比率で比較した。したがって、100よりも小さい方が鉄損を低減できたことを示している。
図11は、縦軸が鉄損W10/800であり、具体的には800[Hz]の交流で、最大1.0Tで磁化したときの1kg当たりのエネルギー損失である。磁性測定の方法としては、2つのティース部12の先端を損失の小さいヨークで磁気的に結合し、閉磁路を形成して磁気測定を行った。測定に際しては、励磁磁束波形が正弦波になるように励磁力をフィードバック制御した。磁気測定方法はJIS−C2550に記載された方法を用いた。
なお、本実施形態では、複数、積層コア10を軸方向に重ね合わせ、重ね合わせた積層コア10を第1の遮蔽部材21と第2の遮蔽部材23とにより上下から挟み込み、重ね合わせた積層コア10の内部に形成される空間13に、積層コア10の高さ寸法よりも長い寸法の棒状のヒーター25を挿入して、積層コア10を加熱してもよい。この場合には、更に生産効率を向上させることができる。なお、この場合には、発光部26の上端26aが最上部に位置する積層コア10の上面よりも上側かつ発光部26の下端26bが最下部に位置する積層コア10の下面よりも下側の状態で積層コア10を加熱するものとする。
また、ヒーター25の配置についても、内側に6本、外側に8本に限定されるものではなく、内側のみ、外側のみ、内側のみまたは外側のみに複数本、内側のみまたは外側のみに発熱量の大きな1本のヒーターを配置してもよい。
Claims (4)
- 電磁鋼鈑を積層させた積層コアの焼鈍方法であって、
前記積層コアの上面を上側から覆う大きさに形成され前記積層コアの内部に形成された空間と連通する貫通孔を有する第1の遮蔽部材と、前記積層コアの下面を下側から覆う大きさに形成され前記空間と連通する貫通孔を有する第2の遮蔽部材と、により前記積層コアを上下から挟み込む工程と、
前記空間に前記積層コアの高さ寸法よりも長い寸法に形成された棒状のヒーターを挿入して前記積層コアを加熱する工程と、を有することを特徴とする積層コアの焼鈍方法。 - 前記棒状のヒーターは、前記積層コアの高さ寸法よりも長い寸法の発光部を有し、
前記積層コアを加熱する工程では、前記発光部の上端が前記積層コアの上面よりも上側かつ前記発光部の下端が前記積層コアの下面よりも下側の状態で前記積層コアを加熱することを特徴とする請求項1に記載の積層コアの焼鈍方法。 - 前記積層コアを加熱する工程では、前記空間に挿入した前記棒状のヒーターに加えて前記積層コアの外側に配置された棒状のヒーターにより前記積層コアを加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の積層コアの焼鈍方法。
- 前記積層コアを挟み込む工程では、軸方向に沿って複数、重ね合わせた積層コアを上下から挟み込み、
前記積層コアを加熱する工程では、前記重ね合わせた積層コアの高さ寸法よりも長い寸法に形成された前記棒状のヒーターを挿入することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の積層コアの焼鈍方法。
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