JP6102458B2 - 親水性層を有する基材の製造方法 - Google Patents

親水性層を有する基材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、親水性層を有する基材の製造方法に関する。
タンパク質や細胞といった生体由来物質の吸着を抑制するため、MPCポリマーやポリエチレングリコールといった親水性ポリマーを表面に修飾する技術の開発が進められている(例えば、特許文献1および2)。しかし、これらポリマーとガラスやプラスチック等からなる基材とを化学的に直接結合させることはできない。そのため、例えば基材としてプラスチックを用いた場合、リンカーとしてシランカップリング剤を加水分解したポリシロキサンを用いる方法が特許文献3および4に記載されている。
しかし上記方法のみでは基材の性質によって、表面の品質にバラつきが生じ均一な表面を作製することは難しい。そこで前処理としてフッ素系ガスを用いたプラズマ照射処理によりフッ素を付加させた表面に、シランカップリング剤を加水分解して得られるポリシロキサンを反応させる手法が確立されている。これはフッ素とケイ素の電気陰性度の差による親和性の高さにより、付加量を均一化かつ増加させる手法である。しかしこの方法は、プラズマ処理表面の劣化が早く保存安定性に欠けるという課題があった。その理由として、経時変化によって表面分子が基材内部に取り込まれるためだということが非特許文献1に示唆されている。
そのためプラズマ照射後の経時劣化を抑制する技術の開発が必須となっている。例えばアルゴンなどによるプラズマ処理を施した後に酸素プラズマ処理を行うと、単独で酸素プラズマ処理を行った場合と比較して耐久性を有する親水性表面が得られることが特許文献5に記載されている。しかし、フッ素系ガスを用いた前処理法に関しては未だ不明で技術開発および検証が必要である。また四フッ化炭素(CF)をはじめとするフッ素系ガスは地球温暖化ガスであることが指摘されており、使用量の削減が必須となっている。したがって、フッ素を表面に効率良く付加する方法の確立が望まれている。
特許3443891号 特許5070565号 特許5001015号 特開2013−011479号 特開2012−102205号
スリーボンド・テクニカルニュース 26号 1989年
本発明は、基材のプラスチック表面をプラズマ処理した後プライマー層を形成し、プライマー層を介して親水性層を導入する方法において、プラズマ処理に使用するフッ素系ガスの使用量を低減しつつ、保存安定性の高い高品質の親水性層を形成することを目的とする。
本発明者は、基材のプラスチック表面を、希ガスを含むプラズマに暴露し、さらにフッ化炭素ガスを含むプラズマに曝露し、該表面上にポリシロキサンを含むプライマー層を形成し、該プライマー層と親水性ポリマーとを共有結合を介して連結させることにより、プラズマ処理に使用するフッ素系ガスの使用量を低減しつつ、保存安定性の高い高品質の親水性層を形成できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)表面に親水性層を有する基材の製造方法であって、
プラスチック表面を有する基材を準備する基材準備工程と、
基材のプラスチック表面を、希ガスを含むプラズマに曝露するプラズマ処理工程1と、
基材のプラスチック表面を、フッ化炭素ガスを含むプラズマに曝露するプラズマ処理工程2と、
プラズマに曝露した基材の表面上において、ケイ素化合物を加水分解し、生成したシラノール化合物を重合させ、ポリシロキサンを含むプライマー層を形成する、プライマー層形成工程と、
プライマー層と親水性ポリマーとを、ポリシロキサンの側鎖上の官能基と親水性ポリマーの官能基との反応により、共有結合を介して連結させる、親水性層形成工程と、
を含む、前記方法。
(2)希ガスがアルゴンガスである、(1)記載の方法。
(3)フッ化炭素ガスが四フッ化炭素ガスである、(1)または(2)記載の方法。
(4)プラズマ処理工程2の後の基材表面のフッ素/炭素比(F/C)が0.35以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)プラスチックがポリスチレンである、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
本発明により、プラズマ処理に使用するフッ素系ガスの使用量を低減しつつ、生体関連物質の非特異的吸着を十分に抑制できる高品質かつ耐久性の高い親水性層を有する基材を供給できる。
図1は、実施例1、比較例1および比較例2のプラズマ処理後のディッシュを、XPSを用いて表面分析した結果を示すグラフである。 図2は、細胞接着の様子を光学顕微鏡によって観察した場合の評価分類を示す写真である。
(基材)
本発明において、基材の形状は特に限定されない。例えば、板状体、マルチウェルプレートやマイクロプレート(複数の凹部が形成された板状体)、粒子、スライド、プレート、フィルム、チューブ、キャピラリー、マイクロ流路などの形態の基材を用いることができる。基材の材料としては、プラスチック、ガラス、石英、シリコン、金属等が挙げられる。
基材は、プラスチック表面を有する。プラスチック表面は、プラスチックを含む表面をさし、好ましくはプラスチックからなる表面をさす。基材は、少なくとも一部の表面がプラスチック表面であり、好ましくはプラズマ処理される表面がプラスチック表面である。基材がマルチウェルプレートなどの板状または略板状の場合、好ましくは少なくともプラズマ処理される側の表面がプラスチック表面であり、該表面がプラスチックからなることがより好ましい。最も好ましくは基材全体がプラスチックからなるものを準備する。
プラスチックの具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン系共重合体、ABS樹脂などのスチレン系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46などのポリアミド樹脂;メチルペンテン樹脂;フェノール樹脂;メラミン樹脂;エポキシ樹脂;フッ素樹脂などが挙げられる。これらは、単独でもよいし、二種以上混合して用いてもよい。ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンおよびポリエチレンは、後述のプラズマ処理後にプライマー層および親水性層を形成しやすいため特に好ましい。
基材は、表面が疎水性であることが好ましい。具体的には、基材表面の水接触角が60°以上、より好ましくは70°以上、さらに好ましくは80°以上であるとよい。なお、本発明において水接触角とは、23℃において測定される水接触角をさす。
(プラズマ処理)
本発明の方法は、基材のプラスチック表面を、希ガスを含むプラズマに曝露し(プラズマ処理工程1)、さらにフッ化炭素ガスを含むプラズマに曝露するものである(プラズマ処理工程2)。プラズマ処理を施すことにより、プラスチックの種類に限定されることなく、より安定的にプライマー層および親水性層を形成することが可能になる。また、フッ化炭素ガスを含むプラズマに曝露する前に、希ガスを含むプラズマに曝露することにより、フッ化炭素ガスの使用量を低減することができる。さらに、二段階のプラズマ処理工程により、プラズマ処理表面の劣化を抑制でき保存安定性の高いプラズマ処理表面が得られ、ひいては耐久性の高い親水性層を形成することができる。
プラズマ処理工程1は、希ガスを含むプラズマに曝露するものである限り特に制限されない。用いる希ガスとしては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、アルゴンガスおよびヘリウムガスから選択される希ガスを含むプラズマに暴露する。
希ガスとともに、その他不活性ガスが混合していてもよい。不活性ガスとしては、窒素(N)および酸素(O)等が挙げられる。
フッ化炭素ガスの使用量を低減する観点から、プラズマ処理工程1は、希ガスを含むがフッ化炭素ガスを実質的に含まないプラズマに暴露する工程を少なくとも含むことが好ましい。
プラズマ発生時の希ガスの濃度は、25体積%以上とすることが好ましい。希ガスの濃度を一定以上とすることにより、表面架橋層が安定的に形成される。
プラズマ処理工程1におけるプラズマ発生時の圧力は、好ましくは1Pa以下であり、好ましくは0.2Pa以上、より好ましくは0.4Pa以上である。0.2Pa未満では圧力制御が難しい場合があり、圧力が高すぎると、照射時間を短くしなければならず照射後のバラつきが大きくなる場合がある。
プラズマ処理工程2は、フッ化炭素ガスを含むプラズマに曝露するものである限り特に制限されない。フッ化炭素としては、フッ化エチレン(C)、および六フッ化プロピレン(CFCFCF)等の不飽和フッ化炭素(不飽和結合を有するフッ化炭素)、四フッ化炭素(CF)、六フッ化炭素(C)、八フッ化シクロブタン(C)、トリフルオロメタン(CHF)および八フッ化プロパン(C)等の飽和フッ化炭素が挙げられる。フッ化炭素として、一塩化三フッ化エチレン(CClF)、三塩化一フッ化炭素(CClF)、一臭化三フッ化炭素(CBrF)、六フッ化アセトン((CFCO)、六フッ化アルコール((CFCHOH)等のフッ素以外のハロゲン元素を含有するものを使用してもよいが、フッ素と炭素のみからなるフッ化炭素が好ましい。これらのフッ化炭素ガスは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
また、フッ化炭素ガスとしてフッ素/炭素比(F/C)が2以上のものを用いるのが好ましい。フッ素/炭素比(F/C)が2以上であると安定してフッ素を付加でき、コーティング品質をより安定させることができる。
フッ化炭素ガスを含むプラズマには、不活性ガスが混合していてもよい。不活性ガスとしては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)等の希ガス、窒素(N)および酸素(O)等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。フッ化炭素ガスと不活性ガスの混合割合は使用するガスの種類によって適宜決定される。プラズマ発生時のフッ化炭素ガスの濃度は、10体積%以上とすることが好ましい。フッ化炭素ガスの濃度を一定以上とすることにより、プライマー層の結合密度が向上し、親水性ポリマーの付加量を増大させることができる。
あるいは、プラズマ処理工程2では、プラズマ処理工程1で用いた希ガスを含むプラズマに、少しずつフッ化炭素ガスを注入することで、連続的に処理してもよい。通常、プラズマ処理を行うガス種を変える際には排気を行った上で再び真空状態にする必要があるが、連続処理においてはその必要がないため。製造時間を短縮化することができる。
プラズマ処理工程2におけるプラズマ発生時の圧力は、好ましくは1Pa以下であり、好ましくは0.2Pa以上、より好ましくは0.4Pa以上である。0.2Pa未満では圧力制御が難しい場合があり、1Pa以下とすることにより、フッ素の付加量が極端に増えるのを抑制できる。圧力が高すぎると、必要なフッ素付加量を達成するために照射時間を短くしなければならず照射後のバラつきが大きくなる場合がある。
プラズマ処理工程1および2における、プラズマ発生時の総流量は、特に制限されないが、通常5〜50ml/分、好ましくは10〜30ml/分である。流量を上記範囲とすることにより、プラズマを発生させた際の圧力のブレを抑制することができる。
プラズマ処理工程1および2において、基材をプラズマに照射する時間は、それぞれ、好ましくは20秒以下、より好ましくは10秒以下、さらに好ましくは5秒以下で、かつ好ましくは2秒以上である。照射時間が短すぎるとプラズマ処理の効果が得られにくい場合がある。照射時間を20秒以下とすることにより、フッ素付加量が必要以上に増えるのを抑制できる。
プラズマ発生部に与えられる電力は、好ましくは100W以上、より好ましくは200W以上、さらに好ましくは300W以上で、かつ好ましくは500W以下である。電力を一定以上とすることにより、プラズマが安定するためバラつきを抑制することができる。
上記のようなプラズマ照射条件とすることにより、基材表面の凹凸が大きくなりプライマー層との結合密度が向上し、親水性ポリマーの付加量を増大させることができる。
プラズマ処理において好ましく用いられるプラズマ放電装置は、プラズマ発生方法として、内部電極方式による直流グロー放電ならびに低周波放電、内部電極方式、外部電極方式およびコイル型方式による高周波放電、導波管型方式によるマイクロ波放電および電子サイクロトロン共鳴放電(ECR放電)等があるが、これに限らずプラズマを発生し、かつこれにより表面に反応を起す方法であれば、他の方法も使用することができる。
プラズマ処理後の基材の表面近傍にはフッ素が導入される。このフッ素は、少なくともX線光電子分光法(XPS)等の表面分析装置で検出可能な深さに導入されている。プラズマに暴露した基材表面において、フッ素/炭素比(F/C)は、0.35以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.25以下であることがさらに好ましい。また、フッ素/炭素比(F/C)は、0.1以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。基材表面のフッ素/炭素比(F/C)は、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定することができる。ここでXPSは、アルバック・ファイ社製のX線分光分析装置「ESCA5600」を用い、光電子取り込み角度を45°に設定して測定される。具体的には、ESCA5600(アルバック・ファイ(株))により、C1s、F1sスペクトルを取得し、各元素由来の成分をMultiPak(付属ソフトウェア)により面積計算を行い、その成分比を百分率で算出する。そしてC1sに対するF1sの割合をフッ素/炭素比(F/C)として算出する。フッ素を所定量含むことにより、後に基材に形成されるプライマー層の結合量を増加させ、結果、該プライマー層を介して固定化される親水性ポリマーの付加量を増加させるという効果が得られる。
本発明者らが鋭意検討して得た知見であるが、形成される親水性層の状態は、プラスチック表面の状態に左右されることが分かっている。しかしながら、品質が常に一定のプラスチック表面を有する基材を用意することは難しい。これに対し、プラズマ処理することにより得られた基材を用いることにより、そのプラズマ照射したプラスチック表面に、後述のとおりプライマー層を介して親水性ポリマーを高密度で導入することができ、高品質の親水性層を形成することができる。それにより、生体関連物質の非特異的吸着が抑制された生化学試験用器具を製造することができる。したがって、プラズマに暴露することにより得られた基材は、生化学試験用器具を製造するための材料として有利に使用することができる。
(プライマー層)
プライマー層は、少なくともポリシロキサンを含む層により形成することができる。ここで、ポリシロキサンとはシロキサン結合(Si−O−Si)の繰り返し単位からなるポリマーであり、シラノール化合物の縮合重合によって得ることができる。シラノール化合物の縮合はシラノール化合物の分子間で起こる反応である。基体表面のプラスチック分子が反応性の官能基を有してない場合には、シラノール化合物と基体表面のプラスチック分子との間では反応は起こらない。すなわち、シラノール化合物および形成されたポリシロキサンは基体表面のプラスチック分子とは化学的に反応せずに、単に物理的に吸着しているだけである。このようなシラノール化合物のプラスチック表面への物理吸着力は、モノマーでは極めて弱いが、ある程度縮合が進み、ポリマー(ポリシロキサン)となれば強くなる。シラノール化合物を適度に縮合することによって、プラスチック表面にポリシロキサンを含むプライマー層が形成される。
ポリシロキサンを含むプライマー層は、例えば、特開2013−11479号公報に記載される方法により形成することができる。具体的には、プラズマ処理後のプラスチック表面においてシラノール化合物を重合させる工程により形成可能である。該工程は、好ましくは、ケイ素化合物を加水分解してシラノール化合物を生成する工程と、生成したシラノール化合物と塩基とがアルコール中に溶解された溶液を基体の表面上に接触させる工程とを含む。ケイ素化合物としては、シランカップリング剤として市販されている化合物を好適に使用することができ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。加水分解の条件は特に限定されないが、例えば次の方法が可能である。まず、ケイ素化合物に希塩酸を添加する。希塩酸のpHは2.0〜3.0に調整するのが望ましい。ケイ素化合物に対する水分子のモル比は2〜4とする。
次いでシラノール化合物を基体表面に適用し、縮合重合によりポリシロキサンを形成する。シラノール化合物は、塩基とともにアルコールに溶解する。シラノール化合物の終濃度は0.1〜10%(v/v)の範囲で調整することが望ましい。塩基はトリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどを用いることができるが、これらに限定されない。塩基の終濃度は0.1〜10%(v/v)の範囲で調整することが望ましい。アルコールはエタノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール等を用いることができるが、これらに限定されない。このシラノール化合物溶液を基体のプラスチック表面に接触させ、10分〜24時間放置する。反応温度は4〜80℃の範囲で設定できるが、特に室温(20〜25℃)が好ましい。以上の操作によって、プラスチック表面にポリシロキサンを含むプライマー層が物理吸着によって形成される。
形成されたポリシロキサンは、側鎖上に親水性ポリマーの官能基、例えばポリアルキレングリコールのヒドロキシル基と反応して共有結合を形成することができる官能基、あるいは、そのような官能基に変換可能な官能基を有することが好ましい。そのような官能基としては、例えば、(1H−イミダゾール−1−イル)カルボニル基、スクシンイミジルオキシカルボニル基、グリシジル基、エポキシ基、アルデヒド基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アジド基、シアノ基、活性エステル基(1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニルオキシカルボニル基、パラニトロフェニルオキシカルボニル基等)、ハロゲン化カルボニル基、イソシアネート基、マレイミド基等が挙げられ、なかでもグリシジル基又はエポキシ基が好ましい。
(親水性層)
プライマー層上に配置される親水性層は、親水性ポリマーを含む。親水性ポリマーは、炭素成分を含み、ポリマーの主鎖もしくは側鎖に親水性の官能基を含むポリマーのことを指す。親水性ポリマーは、水溶性や水膨潤性を有する、炭素酸素結合を含む水溶性ポリマーであることが好ましい。親水性ポリマーは、恒常的に水溶性や水膨潤性を有するものであってもよいし、光、温度、pHなどの所定の刺激により水溶性や水膨潤性を示すものであってもよい。
親水性ポリマーの具体例としては、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド等のヒドロゲルポリマー、これらと他のモノマーとの共重合体や、グラフト重合体などが挙げられる。中でもポリアルキレングリコールは様々な分子量のものが市販されており、かつ生体適合性に優れているので好適に用いることができる。
ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマーなどが挙げられ、本発明においては親水性ポリマーとして、ポリエチレングリコールが特に好適に用いられる。ポリエチレングリコールの分子量は特に限定されず、基材の用途に応じて適宜設定することができる。ポリエチレングリコールの数平均分子量は好ましくは176以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは350以上である。ポリエチレングリコールの数平均分子量の上限は特に限定されないが、数平均分子量が大きくなるほど粘度が増すため取扱いが難しいこと、および、ポリエチレングリコールの高密度での配置が難しいことから、ポリエチレングリコールの数平均分子量は好ましくは25000以下、より好ましくは10000以下、さらに好ましは1000以下である。
PEGの一端のヒドロキシル基と、前記ポリシロキサンの側鎖上の官能基または該官能基から誘導された官能基との反応により形成された共有結合を介して、PEGがプライマー層に結合される。PEGの他端のヒドロキシル基は、誘導体化されておらずヒドロキシル基で封鎖された状態であってもよいし、他の物質と共有結合を形成することが可能な官能基が直接的または間接的(リンカーを解して)に導入された状態であってもよい。
PEGの他端に導入される官能基しては、代表的には、(1H−イミダゾール−1−イル)カルボニル基、スクシンイミジルオキシカルボニル基、エポキシ基、アルデヒド基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、アジド基、シアノ基、活性エステル基(1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニルオキシカルボニル基、パラニトロフェニルオキシカルボニル基等)、ハロゲン化カルボニル基(塩化カルボニル基、フッ化カルボニル基、臭化カルボニル基、ヨウ化カルボニル基)等が挙げられる。これらの官能基は、PEGの末端のヒドロキシル基の水素を置換する置換基として、PEGに直接的に連結されていてもよいし、PEGの末端に結合したリンカー構造に結合した官能基として、PEGに間接的に連結されていてもよい。リンカー構造としては、炭素の数が0〜3個、窒素、酸素および硫黄から選択される同一または異なるヘテロ原子の数が0〜3個である二価の基が挙げられる。親水性層には他の親水性化合物が更に含まれていてもよい。
(親水性層の形成方法)
本発明の基材は、プライマー層を形成する工程と、プライマー層のポリシロキサンに親水性ポリマーを連結させる工程とを少なくとも含む方法により製造することができる。
親水性層は、プライマー層のポリシロキサンの側鎖上の官能基(シラノール化合物の官能基に対応する官能基、あるいは、該官能基から誘導された官能基)と親水性ポリマーの官能基を反応させることにより形成することができる。反応条件は、ポリシロキサンの側鎖上の官能基と親水性ポリマーの種類に基づいて、適宜選択される。
例えば、ポリアルキレングリコールのヒドロキシル基とポリシロキサンの側鎖上の官能基を反応させる場合、酸化触媒、好ましくは触媒量の濃硫酸を含むポリアルキレングリコールをプライマー層と接触させる。ここで、数平均分子量が1000を超えるポリアルキレングリコールはあらかじめ加熱融解しておく。必要に応じて、ポリアルキレングリコールをtert−ブチルアルコールなどで希釈して用いてもよい。このポリアルキレングリコール溶液をプラスチック表面に接触させ、加熱する。加熱温度は60〜100℃の範囲で設定できるが、プラスチックの耐熱性を加味すると80℃前後(75℃〜85℃)が好ましい。加熱時間は10分〜24時間の範囲で設定できるが、加熱温度が80℃前後の場合は10分〜60分間が好ましい。
親水性層における親水性ポリマーの密度および親水性は、親水性層の表面における水の接触角を指標として簡便に評価することができる。例えば、親水性層表面の水接触角が典型的には48°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは30°以下であれば、親水性ポリマー材料が十分な密度で存在し、親水性を有していると考えられる。
(基材の用途)
本発明で得られた表面に親水性層を有する基材は、生体分子または生体関連物質の非特異的吸着が抑制されていることから、生化学試験用器具に好適に使用される。生化学試験用器具としては、タンパク質、ペプチド、糖類、核酸(DNA、RNA)、脂質、補酵素、細胞、ウイルス、細菌などの生体分子または生体関連物質を扱う試験用の器具や、細胞培養用の器具などが挙げられる。具体的には、生体分子または生体関連物質の相互作用を検出するための器具、例えば、免疫アッセイ用固相担体、マイクロアレイ用担体、DNAチップ用担体などが挙げられる。また、マルチウェルプレート、マイクロプレート、ピペット、シリンジ、細胞培養バッグ等にも使用することができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
<試験例1>
直径3.5cmの細胞培養用ディッシュ(BD Phalcon社)にプラズマ処理を施した。以下その詳細を記載する。
EXAM(神港精機社)を用いて、まず上記ディッシュにアルゴンプラズマ照射をRFパワー300W 圧力1Pa、10秒の条件で施した。続いてアルゴンを脱気した後にCFプラズマ照射を同一の条件で施した。これを実施例1とする。
これに対しCFプラズマ照射のみを施した物を比較例1、アルゴンプラズマ照射の代わりに酸素プラズマを先に施した後にCFプラズマ照射を行った物を比較例2とした。
実施例1、比較例1、および比較例2の表面フッ素付加量の違いを見るためにXPSを用いた表面分析を行った。以下その詳細を記載する。
ディッシュ底面を超音波カッターにより切断しK−Alpha(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)によってF1s、C1s、O1sのそれぞれの元素のスペクトル測定を10回繰り返し行った。なおフッ素はX線によるダメージを受けやすいため各種サンプルの一番初めに測定を行った。
結果を図1に示す。黄緑線が実施例1、赤線が比較例1、青線が比較例2である。これより実施例1は比較例1および2と比較してフッ素付加量が増加していることが判明した。
<試験例2>
実施例1、比較例1および比較例2のディッシュを用いて特許文献4に記載した方法に従いポリエチレングリコール400による表面コーティングを施した。具体的には、触媒量の濃硫酸を含んだPEG400を添加し、そのまま80℃で45分間加熱した。その後、ディッシュを純水で洗浄し、窒素ブローで乾燥させた。この操作によってプライマー層上にPEGを含む親水性層が形成された。
これとは別に前処理を施していないディッシュに同様に表面コーティングを施したサンプルを用意した。これを比較例3とした。
上記コーティングディッシュを70%エタノールによって滅菌した後にリン酸緩衝液によって2度洗浄して使用に供した。
CCL細胞をディッシュ1枚当たり1×10個播種し、体積比10%のウシ胎児血清を含むDMEM培地(シグマ社)を用いて37℃インキュベーター内で24時間培養した。その後、細胞接着の様子を光学顕微鏡(オリンパス社)によって観察した。観察結果を、図2の写真のように細胞接着の様子で分類した。結果を以下の表1にまとめる。
Figure 0006102458
以上から、フッ化炭素プラズマによる前処理によって細胞接着抑制が向上することが分かった。
<試験例3>
試験例2でポリエチレングリコールによる表面コーティングを施した実施例1および比較例1〜3のディッシュを、ポリエチレン製の袋に入れた後に40℃にて2週間、加温したサンプルを作製した。
その後、試験例2に記載の方法に従い滅菌、洗浄を行った後に同様に細胞を播種し接着の様子を試験例2の方法に倣って行った。結果を以下の表2にまとめる。
Figure 0006102458
以上から、希ガスであるアルゴンガスを含むプラズマ処理、およびフッ化炭素ガスを含むプラズマ処理によって、親水性層の耐久性が向上することが分かった。

Claims (5)

  1. 表面に親水性層を有する基材の製造方法であって、
    プラスチック表面を有する基材を準備する基材準備工程と、
    基材のプラスチック表面を、希ガスを含むプラズマに曝露するプラズマ処理工程1と、
    基材のプラスチック表面を、フッ化炭素ガスを含むプラズマに曝露するプラズマ処理工程2と、
    プラズマに曝露した基材の表面上において、ケイ素化合物を加水分解し、生成したシラノール化合物を重合させ、ポリシロキサンを含むプライマー層を形成する、プライマー層形成工程と、
    プライマー層と親水性ポリマーとを、ポリシロキサンの側鎖上の官能基と親水性ポリマーの官能基との反応により、共有結合を介して連結させる、親水性層形成工程と、
    を含む、前記方法。
  2. 希ガスがアルゴンガスである、請求項1記載の方法。
  3. フッ化炭素ガスが四フッ化炭素ガスである、請求項1または2記載の方法。
  4. プラズマ処理工程2の後の基材表面のフッ素/炭素比(F/C)が0.35以下である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. プラスチックがポリスチレンである、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
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