以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、以下に参照する図面において、上記図27〜図30に示したものと同一のもの又は対応するものには同一の符号を付けてその詳細な説明は省略する。また、繁雑さを避けるために、必要に応じて上記図27〜図30をも参照して説明する。
図1は、この発明の第1〜第4実施例に係る磁歪式トルクセンサ144(144A、144B、及び144C)が搭載(適用)されるピニオン駆動型の電動パワーステアリング装置10の模式的構成図である。
図2は、図1例の電動パワーステアリング装置10の正面一部断面図である。
図1において、電動パワーステアリング装置10は、操向ハンドル12に連結されたステアリング軸14を備えている。ステアリング軸14は、操向ハンドル12に一体結合されたメインステアリングシャフト16と、ラック&ピニオン機構18のピニオンギヤ20が設けられたピニオン軸22(図2も参照)とが、自在継ぎ手24によって連結された構成にされている。
ピニオン軸22は、ギヤハウジング29(29a、29b)に設けられた軸受26a、26bによって、その下部、中間部を支持されており、ピニオンギヤ20はピニオン軸22の下端部に設けられている。ピニオンギヤ20は、車幅方向に往復動し得るラック軸28のラックギヤ30に噛合し、ラック軸28の両端には、タイロッド32を介して転舵輪としての左右の前輪34が連結されている。
図2に示すように、ラック軸28のラックギヤ30の裏面側は、ラックガイド47上を摺動する。このラックガイド47の裏面側は、ラックハウジング31に螺合されたラックガイドねじ48に一端が着座したラックガイドスプリング49(圧縮スプリング)の他端を通じて押圧力が付与されている。
この構成により、操向ハンドル12の操舵時に通常のラック&ピニオン式の転舵操作が可能であり、前輪34を転舵させて車両の向きを変えることができる。ここで、ラック軸28、ラックギヤ30、タイロッド32は転舵機構33を構成する。
転舵機構33と、ステアリング軸14(自在継ぎ手24によって連結されたメインステアリングシャフト16と、ラック&ピニオン機構18のピニオンギヤ20が設けられたピニオン軸22)と、操向ハンドル12とによりステアリング系が構成される。
また、電動パワーステアリング装置10は、操向ハンドル12による操舵力を軽減するための補助操舵力をピニオン軸22に供給する電動機(モータ)36を備えており、この電動機36の出力軸37に設けられたウォームギヤ38(図1には現れていないが、図27参照)が、図1に示すように、ピニオン軸22の中間部の軸受26bの上側に設けられたウォームホィールギヤ40に噛合している。ウォームギヤ38とウォームホィールギヤ40により減速機構42が構成される。減速機構42は、電動機36の回転・駆動力をピニオン軸22の回転・駆動力に滑らかに且つ倍力変換する。
また、ピニオン軸22の中間部の軸受26bの上部には、磁歪に起因する磁気特性、すなわち逆磁歪効果による磁気特性の変化に基づいてピニオン軸22(ステアリング軸14)のトルクを検出する磁歪式トルクセンサ144が配置されている。
図3は、同様に、この発明の第1〜第4実施例に係る磁歪式トルクセンサ144(144A、144B、及び144C)が搭載(適用)されるコラム駆動型の電動パワーステアリング装置10Aの模式的構成図である。
このコラム駆動型の電動パワーステアリング装置10Aでは、メインステアリングシャフト16と自在継ぎ手24間にコラム軸11(鋼材による回転軸であり、後述するように、軸材23ともいう。)が設けられている。
コラム軸11はその下部、中間部、上部を軸受27a、27b、27cによって支持されている。
この電動パワーステアリング装置10Aは、操向ハンドル12による操舵力を軽減するための補助操舵力をコラム軸11に供給する電動機36を備えており、この電動機36の出力軸37に設けられたウォームギヤ38が、コラム軸11の軸受27bと軸受27aとの間に設けられたウォームホィールギヤ40に噛合している。ウォームギヤ38とウォームホィールギヤ40により減速機構42が構成される。減速機構42は、電動機36の回転・駆動力をコラム軸11の回転・駆動力に滑らかに且つ倍力変換する。
この場合において、コラム軸11の中間部の軸受27bと上部の軸受27aとの間には、磁歪に起因する磁気特性の変化に基づいてコラム軸11(メインステアリングシャフト16)のトルクを検出する磁歪式トルクセンサ144(144A、144B)が配置されている。
以下、図1及び図3に示した電動パワーステアリング装置10、10Aに搭載(適用)される磁歪式トルクセンサの第1実施例(磁歪式トルクセンサ144)、第2実施例(磁歪式トルクセンサ144A)、及び第3実施例(磁歪式トルクセンサ144B)について、図1に示したピニオン駆動型の電動パワーステアリング装置10への搭載を例として説明する。
[第1実施例]
この発明の第1実施例に係る磁歪式トルクセンサ144について説明する。
図4は、第1実施例に係る磁歪式トルクセンサ144の一部の斜視構成を示している。
図1及び図2に示すように、第1実施例に係る磁歪式トルクセンサ144は、ピニオンギヤ20とラックギヤ30とを備えるラック&ピニオン機構18のピニオン軸(軸材)22に設けられた軸材(鋼材による回転軸)23の外周全周に設けられ、単一の捻り方向(捻り方向が単方向)の磁気異方性(以下、異方性ともいう。)maが付与された円筒状の磁歪膜(NiFeめっき膜)(磁歪部)mfと、この磁歪膜mfに直流磁界(静磁界による磁束φ)を発生させる第1及び第2磁束発生部(界磁部又は磁束発生部ともいう。ここでは、永久磁石)101、102と、第1及び第2磁束発生部101、102の磁束(磁界)φを磁歪膜mfに出力し(印加し)、多くの磁束φを安定的に流すための第1及び第2ヨーク111、112と、を有する。
第1及び第2ヨーク111、112は、それぞれ磁性体の薄板(軟鉄)が積層された詳細を後述する円弧状部を有する形状である、磁性材料薄板の積層体構造とされ、この積層体構造により渦電流の発生を抑制できる構成になっている。第1及び第2ヨーク111、112は、同形状であり、各円弧状部は、軸材23の径より大径であって、軸材23の円周よりも大径の同心円上に乗る形状に形成されている。
磁束発生部101と第1ヨーク(単に、ヨークともいう。)111により界磁部(第1界磁部)211が形成され、磁束発生部102と第2ヨーク(単に、ヨークともいう。)112により界磁部(第2界磁部)212が形成されている。
この場合、図5に示すように、第1及び第2ヨーク111、112を介して磁歪膜mfに流れる磁束φの方向が逆方向になるように、第1及び第2磁束発生部101、102の磁極NSの向きが互いに逆向きに決められている。
磁歪式トルクセンサ144は、軸材23に作用される捩りトルク(電動パワーステアリング装置10、10Aの場合、操舵トルク)に応じて変化する磁歪膜mfの透磁率(比透磁率)の変化を検出する。
図6A、図6Bは、それぞれ、図4及び図5に示した第1実施例に係る磁歪式トルクセンサ144の第1界磁部211及び第2界磁部212の模式的横断面説明図である。
第1ヨーク111を例としてヨークの形状等について説明する。第1ヨーク111は、磁束発生部101から軸材23の周方向に沿って両方向に第1及び第2ヨーク111a、111bとして、軸材23の軸心Oに対して対向する位置(中心角で180°の位置)まで円弧状に延び、さらに、軸心Oに向かって僅かに延び、さらに、第1及び第2ヨーク111a、111bからそれぞれ、軸材23の周方向に沿って外側及び内側の両方向に円弧状に延びて、第1ヨーク111aから離れる方向(外側方向)に第1分岐ヨーク301が形成されると共に、第1ヨーク111aに近づく方向(内側方向)に第2分岐ヨーク302が形成される一方、第2ヨーク111bから離れる方向(外側方向)に第3分岐ヨーク303が形成されると共に、第2ヨーク111bに近づく方向(内側方向)に第4分岐ヨーク304が形成され、第1分岐ヨーク301と第4分岐ヨーク304は、軸材23の軸心Oに対して対称(相互に逆側)に配される開放端を有し、各前記開放端は、軸材23の軸心O(周面)に向かって凸形状を呈する第1ティース401及び第4ティース404とされ、第2分岐ヨーク302と第3分岐ヨーク303は、軸材23の軸心Oに対して対称(相互に逆側)に配される開放端を有し、各前記開放端は、軸材23の軸心O(周面)に向かって凸形状を呈する第2ティース402及び第3ティース403とされる。
このような第1ヨーク111の構成下に、磁束発生部101のN極から第1ヨーク111a、第1分岐ヨーク301、及び第1ティース401を通じて磁束φを図6A中、軸材23の上側の周面(表面)に出力し、磁歪膜mfの片側の周方向を通らせた磁束φを、第3ティース403に入力させ、第3分岐ヨーク303、及び第2ヨーク111bに磁束φを通すことで磁束発生部101のS極までの第1磁路を形成する一方、磁束発生部101から第1ヨーク111a、第2分岐ヨーク302、及び第2ティース402を通じて磁束φを出力し、磁歪膜mfの軸心Oに対向する他の片側の周方向を通らせた磁束φを、第4ティース404に入力させ、第4分岐ヨーク304、及び第2ヨーク111bに磁束φを通すことで磁束発生部101のS極までの第2磁路を形成し、合成された前記第1磁路及び前記第2磁路中に第1磁束検出部121(例えば、ホール素子)を設けた構成としている。
上述したように、磁歪式トルクセンサ144は、軸材23に作用される捩りトルクに応じて変化する磁歪膜mfの透磁率μの変化を検出する。
磁歪膜mfの透磁率μの変化は磁束φを変化させるので、この際の磁束φの変化を第1ヨーク111aと第2ヨーク111bに挟まれた第1磁束検出部121にて検出すると共に、ヨーク112aとヨーク112bに挟まれた第2磁束検出部122(この場合も、例えば、ホール素子)にて検出する。
図7に示すように、軸材23に磁歪膜mfが施され、以下に説明するように異方性maが付与されている。すなわち、軸材23に磁歪膜mfを形成した後、軸材23に所定の捩りトルクを加えた状態で熱処理を行い、自然に冷却した後に、捩りトルクを取り除く。これにより、磁歪膜mfに磁気異方性maが設けられる。特開2006−64445号公報に開示された従来技術では上下の磁歪部に左右異なる異方性を付与するために、この工程を左右二回に渡って行っていたが、この工程が単方向の一回でよくなり生産性が向上する。
このときの熱処理は高周波加熱によって所定時間加熱する。また、好ましくは、磁歪膜mfは主成分がFeNi(鉄ニッケル)からなり、所定の捩りトルクは50Nm以上且つ100Nm以下である。
図8は、異方性maが付与される前と、異方性maが付与された後の軸材23の入力トルクTs[Nm]と磁歪膜mfの比透磁率μsの関係を示している。異方性maが付与されることにより、右方向の入力トルクTsに対して磁歪膜mfの透磁率μが増大する。
図9Aはホール素子である第1及び第2磁束検出部121、122の使用回路例、図9Bは、第1及び第2磁束検出部121、122の入出力特性124を示す。
第1及び第2磁束検出部121、122に印加電圧Vcにより制御電流Icが通電されているときに、磁束密度B[T]の磁束φが第1及び第2磁束検出部121、122を貫通すると、ホール電圧である出力電圧VHが、公知のように、VH=k×Ic×Bとして得られる。ここで、kは積感度である。制御電流Icが一定であれば、入出力特性124に示すように、出力電圧VHは、磁束密度Bに比例する。
なお、直方体の形状で描いている第1及び第2磁束検出部121、122に対する印加電圧Vcのプラス側(制御電流Icの流し込み側)の面には、ホール素子等の第1及び第2磁束検出部121、122の極性を明確にするための二等辺三角形を記入している。二等辺三角形の底面側に対応する第1及び第2磁束検出部121、122の磁束検出面(便宜上、正側の面という。)から二等辺三角形の頂点側に対応する第1及び第2磁束検出部121、122の磁束検出面(便宜上、負側の面という。)を貫いて磁束φが通った場合には、基準電位を0[V]として考えた場合、出力電圧VHは正方向に増加し、逆方向に、言い換えれば、負側から正側に(二等辺三角形の頂点側から底面側に)磁束φが通った場合には、出力電圧VHが負方向に増加するものとする。
図4、図5、図6A、及び図6Bに示したように、第1及び第2ヨーク111、112を介して磁歪膜mfに流れる磁束φの方向が互いに逆方向になるように第1及び第2磁束発生部101、102の磁極NSの向きが決められている。
このため、図10Aに示すように、捩りトルクT[Nm]に対して磁歪膜mfの透磁率μが変化すると、捩りトルクT[Nm]が加えられたときの第1及び第2ヨーク111、112の磁束密度B1、B2は、図10Bに示すように変化する。たとえば捩りトルクTが正方向(時計方向)に加わると、透磁率μが図10Aのように増大するため、第1及び第2ヨーク111、112の磁路中の磁束密度B1及びB2の大きさ(絶対値)が増大する。磁束密度B1と磁束密度B2では磁束φの極性が異なるので、磁束密度B1は正の方向に増大し、磁束密度B2は負の方向に増大する。
従って、第1及び第2ヨーク111、112の磁路中に極性が同方向に設けられた第1及び第2磁束検出部121、122は、第1磁束検出部121には正側より磁束φが流入し、第2磁束検出部122には負側より磁束φが流入するので、図10Cに示すような出力電圧VH1、VH2をそれぞれ出力する。このとき、第1及び第2磁束検出部121、122には一定の制御電流Icが通電されている。
ここで、図10Dに示すように、第1及び第2磁束検出部121、122の出力電圧VH1、VH2を回路(後述する。)にてオフセットさせ、入力トルク(入力捩りトルク)T[Nm]がゼロ値のときの出力電圧VH(VH1、VH2)の電圧を2.5[V]になるように設定した出力電圧VT1、VT2に変換する。出力電圧VT1と出力電圧VT2の差電圧よりトルク電圧である操舵トルク信号VT3{VT3=G(VT1−VT2)+2.5;Gは、ゲインであり定数}が得られる。
この操舵トルク信号VT3に基づいて電動パワーステアリング装置10(10A)を制御する。
また、出力電圧VT1と出力電圧VT2の和電圧より故障検出信号VTFをVTF=(VT1+VT2)/2として求め、故障検出に用いる。すなわち、磁歪式トルクセンサ144が正常であれば、故障検出信号VTFの値は一定値2.5[V]であるため、故障検出信号VTFの電圧が閾値範囲(2.5±Δ[V])を超えた場合には故障と判定することができる。
図11に磁気特性変化検出部として機能するトルク検出回路150の回路構成を示す。検出回路150は、例えば+12[V]の電圧Vbを第1及び第2磁束検出部121、122の印加電圧Vcに降圧すると共に定電圧化する電源回路としてのレギュレータ162と、第1及び第2磁束検出部121、122の出力電圧VH1、VH2をそれぞれ出力電圧VT1、VT2に変換する増幅回路164、166と、出力電圧VT1、VT2を操舵トルク信号VT3に変換する差動増幅回路168とから構成される。なお、前記印加電圧Vcは、電源電圧Vccとして増幅回路164、166、及び差動増幅回路168に印加される。
レギュレータ162により電源回路が形成され、増幅回路164と差動増幅回路168とにより集積回路としての増幅回路165が形成される。
ここで、増幅回路164、166のリファレンス電圧Vref1、Vref2は、出力電圧VT1、VT2のオフセット値を調整し、差動増幅回路168のリファレンス電圧Vref3は、操舵トルク信号VT3のオフセット値を調整する。
図12は、磁束発生部101の磁力を、第1ヨーク111を介して、図8の特性181を有する磁歪膜mfに作用させたときの入力トルク(操舵トルク)Ts[Nm]に対する第1ヨーク111の磁束密度B[mT]の変化を示す特性のうち、磁歪式トルクセンサ144としての実使用範囲(±15[Nm])の特性191を示している。
例えば、磁歪膜mfでは右トルクの入力トルクTs[Nm]が増大するに従い磁束密度B[mT]が増大する。
図13A、図13B、図13Cは、この際の、第1ヨーク111の磁束密度変化の模式図を示している。
図12の特性191上の点aでは透磁率μが小さいため、図13Aに示すように、第1ヨーク111の磁束密度B[mT]が小さく(195[mT])、点cでは透磁率μが大きいため、図13Cに示すように、第1ヨーク111の磁束密度B[mT]が大きく(205[mT])なっている。入力トルクTs[Nm]が0値の点bでは、図13Bに示すように、その中間(200[mT])の磁束密度B[mT]になっている。
つまり、界磁部211に流れる磁束φの磁束密度B[mT]が、軸材23に印加される入力トルクTs[Nm]に応じて変化する磁歪膜mfの透磁率μの変化に基づき変化することになる。図13A〜図13Cを参照して説明すれば、界磁部211の磁束発生部101のN極から発生する磁束φ自体が、透磁率μが増加乃至減少する磁歪膜mfにより増加乃至減少され、増加乃至減少された磁束φが、界磁部211の磁束発生部101のS極まで戻る、その磁路中に第1磁束検出部121が設けられる。
図14に示すように、樹脂モールド173、174によって、上下二つの組立体(検出部アセンブリ)171、172が形成されている。
組立体171は、第1磁束発生部101と第1ヨーク111と磁束検出部121とレギュレータ162と増幅回路165とが樹脂モールド173によって一体的に実装され、組立体172は、第2磁束発生部102と第2ヨーク112と磁束検出部122と増幅回路166とが樹脂モールド174によって一体的に実装された構成とされている。
レギュレータ162には、ECU110からコネクタ170(図2参照)を介して電圧Vbの電源が供給され、レギュレータ162によって安定化された電源電圧Vccの電源が第1及び第2磁束検出部121、122、増幅回路164、166及び差動増幅回路168に供給される。
増幅回路164、166及び差動増幅回路168は、出力電圧VH1、VH2を増幅して、出力電圧VT1、VT2及び操舵トルク信号VT3を出力する。
よって、磁気特性変化検出部として機能する検出回路150は、軸材23に加えられたトルクによって変化する磁歪膜mfの磁気特性の変化、ここでは比透磁率μsの変化を、第1及び第2磁束検出部121、122の両検出出力電圧VH1、VH2に基づき操舵トルク信号VT3として検出する。
検出乃至出力された出力電圧VT1、VT2及びトルク信号VT3は、コネクタ(不図示)を介してECU110に伝達される。
図1に示す電動パワーステアリング装置10の動作について説明すると、前記操舵トルク信号VT3、車速センサ13からの車速信号Vs及び電動機36の回転数センサからのモータ回転信号に基づいて、ECU110にて電動機36に動力を発生させるための目標モータ電流を演算する。
ECU110は、この目標電流を電動機36に通電するための駆動電圧(PWM信号)に変換して発生すると共に、実際に電動機36に通電された実モータ電流を電流センサにて検出し、前記目標モータ電流と実モータ電流が一致するようにPI(比例積分)制御を行って電動機36に動力を発生させる。
このモータの動力を、図2に示すように、ピニオン軸22に設けた減速機構42(ウォームギヤ38とウォームホィールギヤ40)を介して、ステアリング軸14(メインステアリングシャフト16)に伝達させて運転者の操舵負荷を軽減している。
さらにECU110は、上述したように、出力電圧VT1及び出力電圧VT2を用いて故障検出を行っている。すなわち、出力電圧VT1と出力電圧VT2の和(VT1+VT2)の値が所定範囲(図22例では、+2.5V±ΔVの範囲)に有るか否かを監視し、所定範囲を外れた際には故障と判定している。
以上のように上述した第1実施例に係る磁歪式トルクセンサ144は、軸材23に、捻り方向が単方向の磁気異方性maを有する磁歪膜mfが設けている。また、第1界磁部211は、磁歪膜mfに対し軸材23の円周に沿う一方向に磁束φを発生させている(図6A参照)。第1磁束検出部121は、磁歪膜mfに前記一方向に流れる磁束φを検出する。一方、第2界磁部212は、磁歪膜mfに対し軸材23の円周に沿う反対方向に磁束φを発生させている(図6B参照)。第2磁束検出部122は、磁歪膜mfに前記反対方向に流れる磁束φを検出する。磁気特性変化検出部としての検出回路150は、軸材23に加えられたトルクによって変化する磁歪膜mfの磁気特性の変化、ここでは比透磁率μsの変化を、第1及び第2磁束検出部121、122の両検出出力電圧VH1、VH2に基づき操舵トルク信号VT3として検出する。
この実施形態によれば、磁歪膜mfの異方性maが、単方向でよくなるので生産性が向上すると共に、特開2006−64445号公報のように、4つの検出コイルを用いることなくトルクを検出することができるので、磁歪式トルクセンサ144を小型・軽量にすることができる。
ここで、第1界磁部211は、前記一方向に磁束φを発生させる第1永久磁石としての磁束発生部101と、該磁束発生部101に磁気的に結合される第1ヨーク111(111a、111b)と、により構成され、第2界磁部212は、前記一方向の反対方向の磁束φを発生させる第2永久磁石としての磁束発生部102と、該磁束発生部102に磁気的に結合される第2ヨーク112(112a、112b)とにより構成されるようにしたので、界磁巻線や界磁電源が不要となりセンサを小さく構成できると共に、組立性が向上する。また第1及び第2ヨーク111、112を有するので第1及び第2磁束発生部101、102で発生した磁束φを磁歪膜mfに漏れなく通すことができ、出力感度を向上させることができる。
磁歪式トルクセンサ144においては、図6A、図6Bに示すように、磁歪膜mfへ磁束φを通すための第1〜第4ティース401〜404が複数(4個)設けてある。これにより、第1及び第2ヨーク111、112と軸材23の軸心O(回転中心)がずれた場合であっても、磁束φが平均化されるため出力電圧VT1、VT2及び操舵トルク信号VT3の変化を抑制することができる。より具体的に説明すると、磁歪膜mfと第1〜第4ティース401〜404のギヤップ(空隙)の一方が狭まった場合、他方が広くなるので第1及び第2ヨーク111、112の磁束密度Bは平均化され変化しない。結果として、検出精度(検出感度)を高くでき、外部からの電磁ノイズに対するロバスト性(タフネス性)を向上させることができる。
[第2実施例]
次に、この発明の第2実施例に係る磁歪式トルクセンサ144Aについて説明する。
図15は、第2実施例に係る磁歪式トルクセンサ144Aの一部の斜視構成を示している。
図16は、図15に示した第2実施例に係る磁歪式トルクセンサ144Aの第1界磁部211Aの模式的横断面説明図である。
この第2実施例に係る磁歪式トルクセンサ144Aは、ヨーク111a(112a)に流れる磁束φの磁路を等しく分岐し、それぞれの磁束φの流れの中にホール素子等の磁束検出部121a、121b(122a、122b)を同方向(同極性)に設けた構成としている。磁束発生部101とヨーク111aにより第1界磁部211Aが形成され、磁束発生部102とヨーク112aにより第2界磁部212Aが形成される。これにより、磁束検出部121a、121bには正方向(磁束φの増加に伴い出力電圧VHの大きさが正方向に増加する方向)から磁束φが流入し、磁束検出部122a、122bには負方向(磁束φの増加に伴い出力電圧VHの大きさが負方向に増加する方向)から磁束φが流入する。
なお、磁路は、2つ以上さらに多数分岐し、各分岐路に磁束検出部を設ける構成にすることもできる。なお、磁歪膜mfは、図15に示すように、2つの磁歪膜mf1、mf2を設け、双方に同方向の異方性ma1、ma2を設ける構成としているが、一つの磁歪膜mfに捩り方向が単一の磁気異方性maを設け、この一つの磁歪膜mfに対して第1界磁部211A及び第2界磁部212Aを形成してもよい。
図17は、第2実施例に係る磁歪式トルクセンサ144Aに適用されるトルク検出回路150Aを示す。
トルク検出回路150Aは、ヨーク111aに設けられた磁束検出部121a、121b(第1及び第2磁束検出部。入力トルクに対する出力電圧VH1、VH2の特性が等しい。)の図18A、図18Bに示す出力電圧V1、V2を、加算回路167Aを介して加算して図19に示す出力電圧VT1を得ると共に、ヨーク112aに設けられた磁束検出部122a、122b(第3及び第4磁束検出部。入力トルクに対する出力電圧VH3、VH4の特性が等しい。)の図18C、図18Dに示す出力電圧V3、V4を、加算回路167Bを介して加算して図19に示す出力電圧VT2を得る。
さらに出力電圧VT1と出力電圧VT2の差電圧を差動増幅回路168により得、図19に示すトルク電圧である操舵トルク信号VT3{VT3=G(VT1−VT2)+2.5;Gは、ゲインであり定数}を算出する。
出力電圧V1〜V4、VT1、VT2及び操舵トルク信号VT3は、ECU110に入力される。
この第2実施例に係る磁歪式トルクセンサ144Aを用いて、ECU110は、上述したように、前記操舵トルク信号VT3、車速センサ13からの車速信号Vs及び電動機36の回転数センサからのモータ回転信号に基づいて、ECU110にて電動機36に動力を発生させるための目標電流を演算する。この目標電流を電動機36に通電するための駆動電圧(PWM信号)に変換して発生すると共に、実際に電動機36に通電された実電流を電流センサにて検出し、前記目標電流と実電流が一致するようにPI(比例積分)制御を行って電動機36に動力を発生させる。
このモータの動力を、図2に示すように、ピニオン軸22に設けた減速機構42(ウォームギヤ38とウォームホィールギヤ40)を介して、ステアリング軸14(メインステアリングシャフト16)に伝達させて運転者の操舵負荷を軽減している。
さらにECU110は、上述したように、出力電圧VT1及び出力電圧VT2を用いて故障検出を行っている。すなわち、出力電圧VT1と出力電圧VT2の和の平均(VT1+VT2)/2の値が所定範囲(図19例では、+2.5V±ΔVの範囲)に有るか否かを監視し、所定範囲を外れた際には故障と判定している。
この場合、さらに、出力電圧V1〜V4の信号値をECU110にて常時監視し、少なくとも一つの信号値が残りの信号値と異なる場合には、この異なる信号値を故障と判断し、故障検出信号VTFを発生して図示しない警告ランプ(ワーニングランプ)を点灯すると共に、残りの信号にて電動パワーステアリング装置10の制御(EPS制御)を続行する。
例えば、出力電圧V1の信号値を故障と判定した際には、出力電圧V3と出力電圧V4により得られる出力電圧VT2を用いてEPS制御を行う。このとき、アシスト率は故障検出前より低下させ、故障状態であることを運転者に知らせる。出力電圧V1の信号値を故障と判定した際には、出力電圧V2、若しくは出力電圧V3、若しくは出力電圧V4を用いてEPS制御を続行してもよい。この際には出力電圧VT1、VT2を、ECU110の図示しないCPUは、取り込む必要はない。
[第2実施例の第1変形例]
図20は、第2実施例に係る磁歪式トルクセンサ144A(図15参照)に適用される第1変形例のトルク検出回路150Bを示す。
トルク検出回路150Bは、ヨーク111aに設けられた磁束検出部121aとヨーク112aに設けられた磁束検出部122a(入力トルクに対する出力電圧VH1、VH3の特性が逆特性。)の図18A、図18Cに示す出力電圧V1、V3を差動増幅回路169Aを介して図19に示す出力電圧VT1を得ると共に、ヨーク111aに設けられた磁束検出部121bとヨーク112aに設けられた磁束検出部122b(入力トルクに対する出力電圧VH2、VH4の特性が逆特性。)の図18B、図18Dに示す出力電圧V2、V4を、差動増幅回路169Bを介して図19に示す出力電圧VT2を得る。
さらに出力電圧VT1と出力電圧VT2の差電圧を差動増幅回路168により得、図19に示すトルク電圧である操舵トルク信号VT3{VT3=G(VT1−VT2)+2.5;Gは、ゲインであり定数}を算出する。
この第1変形例のトルク検出回路150Bでは、出力電圧V1と出力電圧V3の差により出力電圧VT1を得ると共に、出力電圧V2と出力電圧V4の差により出力電圧VT2を得ているので、出力電圧V1と出力電圧V3の温度特性が補正されると共に、出力電圧V2と出力電圧V4の温度特性が補正されるので、故障検出信号VTF{VTF=(VT1+VT2)/2}の温度特性が向上し、故障検出精度が向上する。
各信号を用いた作用は第2実施例と同様であるので省略する。
[第2実施例の第2変形例]
図21は、第2実施例に係る磁歪式トルクセンサ144A(図15参照)に適用される第2変形例のトルク検出回路150Cを示す。
トルク検出回路150Cは、出力電圧V1〜V4を直接ECU110に入力する。このトルク検出回路150Cでは、図17に示したトルク検出回路150A中、加算回路167A、167B及び差動増幅回路168を省略しECU110内で出力電圧VT1、VT2及び操舵トルク信号VT3を求める処理を行う。
各信号を用いた作用は第2実施例と同様であるので簡単に説明すると、通常は、操舵トルク信号VT3をVT3=G(V1−V3)+2.5で算出し、上述したように、EPS制御を実施する。
出力電圧V1〜V4を監視し、いずれか1つが故障したことを検出した場合には、故障していない残りの3つの出力電圧から選択した信号でEPS制御を実行する。たとえば、出力電圧V1の故障を検出した場合には、VT3´=G(V2−V4)+2.5で制御する。
出力電圧V1〜V4を監視し、いずれか2つが故障したことを検出した場合には、故障していない残りの2つの出力電圧でEPS制御を実行する。
[第3実施例]
次に、この発明の第3実施例に係る磁歪式トルクセンサ144Bについて説明する。
図22は、第3実施例に係る磁歪式トルクセンサ144Bの一部の斜視構成を示している。
図23は、図22に示した第3実施例に係る磁歪式トルクセンサ144Bの模式的縦断面説明図である。
この磁歪式トルクセンサ144Bでは、円筒状の磁歪膜mfに捻り方向が単方向の異方性maを付与し、この磁歪膜mfを円周方向で囲むように、内周面側がN極、外周面側がS極に着磁されたリング状の永久磁石である磁束発生部201を設けている。
さらに、磁歪膜mfに、それぞれ円筒部を備える第1ヨーク511aと第2ヨーク511b及び第3ヨーク511cを設け(外嵌し)、これら第1〜第3ヨーク511a〜511cを介して磁歪膜mfに流れる磁束φの方向が上下方向(磁歪膜mfの軸材23の軸方向)に互いに逆方向になるように第1〜第3ヨーク511a〜511cを配置している。
第2ヨーク511bは、磁束発生部201の円筒外周を覆う円筒状に形成され、円筒外周の一部の上下方向にチャネル状(コの字状)に屈曲した磁路としてのアーム部511ba、511bbが設けられている。
第1及び第3ヨーク511a、511cは、第2ヨーク511bに対して上下に対称に設けられ、円筒部とフランジ部とから構成され、上側フランジ部の外周の一部に下方向にチャネル状(コの字状)に屈曲した前記アーム部511baを構成するアーム部511aaが設けられる一方、下側フランジ部の外周の一部に上方向にチャネル状(コの字状)に屈曲した前記アーム部511bbに対向配置されたアーム部511caが設けられている。
この場合、界磁部213は、磁束発生部201と第1〜第3ヨーク511a〜511cにより構成される。ここで、理解の便宜のために、図4に示す第1実施例に係る磁歪式トルクセンサ144と対比して説明すると、界磁部213は、第1界磁部211及び第2界磁部212に対応し、磁束発生部201は、磁束発生部101、102に対応し、第1及び第2ヨーク511a、511bは、第1ヨーク111に対応し、第2及び第3ヨーク511b、511cは、第2ヨーク112に対応していることが分かる。
図22、図23において、第1ヨーク511aのアーム部511aaと第2ヨーク511bのアーム部511baの間、及び第2ヨーク511bのアーム部511bbと第3ヨーク511cのアーム部511caとの間の磁路中に同方向に第1及び第2磁束検出部121、122が設けられている。
図22、図23に示すように、磁束発生部201のN極の内周全周から発生した磁束φは、一方では、磁歪膜mfの全周を上方向に流れ第1ヨーク511aの円筒部の全周を経てフランジ部に入りさらにアーム部511aaを通じて第1磁束検出部121に正側から流入する。同時に、磁束発生部201のN極の内周全周から発生した磁束φは、他方では、磁歪膜mfの全周を下方向に流れ第3ヨーク511cの円筒部の全周を経てフランジ部に入りさらにアーム部511caを通じて第2磁束検出部122に負側から流入する。
そして軸材23に作用される捩りトルクTに応じて変化する磁歪膜mfの透磁率μの変化を検出する。磁歪膜mfの透磁率μの変化は磁束φの密度、すなわち磁束密度Bを変化させるので、この際の磁束φの変化を第1ヨーク511a(のアーム部511aa)と第2ヨーク511b(のアーム部511ba)に挟まれた第1磁束検出部121及び第2ヨーク511b(のアーム部511bb)と第3ヨーク511c(のアーム部511ca)に挟まれた第2磁束検出部122にて検出する。
すなわち、第1磁束検出部121と第2磁束検出部122の捩りトルクTに対する電圧出力VH1、VH2は、図10Cに示したのと同様に逆の極性である。
よって、得られた2つの電圧出力VH1とVH2により、図11のトルク検出回路150を用いて電圧出力VT1、VT2及びトルク信号VT3(図10D及び図19参照)を求め電動パワーステアリング装置10(10A)の駆動制御及び故障診断を行うことができる。
この第3実施例によれば、磁束φが磁歪膜mfの全体(円筒の外周面全体)に渡って流れるので、捩りトルクTの変化による磁束φの変化量を大きくすることができ、感度を高くすることができる。さらに軸材23と第1及び第3ヨーク511a、511c並びに磁束発生部201の中心ずれによる出力変化を抑制することができる。
[第4実施例]
次に、この発明の第4実施例に係る磁歪式トルクセンサ144Cについて説明する。
図24は、第4実施例に係る磁歪式トルクセンサ144Cの一部の斜視構成を示している。
この磁歪式トルクセンサ144Cでは、円筒状の磁歪膜mfに単方向の異方性maを付与し、この磁歪膜mfの下端側円周を囲むように、内面側がN極、外面側がS極に着磁されたリング状の磁束発生部201を設けている。
この場合、界磁部214は、磁束発生部201と第1及び第2ヨーク511a、511bにより構成される。
さらに、磁歪膜mfに流れる磁束φの方向(上方向)と、第1ヨーク511aを構成するアーム部511eを介し、第1及び第2磁束検出部121、122を通じて第2ヨーク511bを構成するアーム部511fに流れる磁束φの方向(下方向)が上下方向に逆方向になるようにしている。
そのため、第1及び第2ヨーク511a、511bのアーム部511e、511f間の磁路中に逆極性で第1及び第2磁束検出部121、122が設けられている。この場合、第1磁束検出部121には正側から磁束φが流入し、第2磁束検出部122には負側から磁束φが流入する。
この状態において、軸材23に作用される捩りトルクTに応じて変化する磁歪膜mfの透磁率μの変化を検出する。磁歪膜mfの透磁率μの変化は磁束φを変化させるので、この際の磁束φの変化を第1及び第2ヨーク511a、511bにそれぞれ挟まれた第1及び第2磁束検出部121、122にて検出する。
すなわち、第1磁束検出部121と第2磁束検出部122の捩りトルクTに対する電圧出力VH1、VH2は図10Cと同様に互いに逆の極性である。
よって、得られた2つの電圧出力VH1、VH2により、図11のトルク検出回路150を用いて電圧出力VT1、VT2及びトルク信号VT3(図10D及び図19参照)を求め電動パワーステアリング装置10(10A)の駆動制御及び故障診断を行うことができる。
この第4実施例によれば、磁束φが磁歪膜mfの全体に渡って流れるので、捩りトルクTの変化による磁束φの変化量を大きくすることができ、感度を高くすることができる。さらに軸材23の軸と第1及び第2ヨーク511a、511bの中心ずれによる出力変化を抑制することができる。さらにヨークの数を第3実施例に比較して3つから2つに減らすことができ、磁歪膜mfの軸方向の長さも短くすることができるので磁歪式トルクセンサ144Cを小型に構成することができる。
[バイアス磁界の印加について]
上述した第1〜第4実施例に係る磁歪式トルクセンサ144(144A〜144C)では、磁歪膜mfにバイアス磁界Hbiasをかけ透磁率μが安定な領域で磁歪式トルクセンサ144(144A〜144C)を使用している。
この場合、図25のB−Hカーブに示すように、磁歪膜mfの保持力Hc以上の、磁歪膜mfの磁束密度Bを飽和させるのに十分なバイアス磁界Hbiasを磁歪膜mfにかければよい。なお、図25では、残留磁束密度Br及び飽和磁束密度Bsも記入している。
磁歪膜mfにバイアス磁界Hbiasをかける場合には、軸材23自体を磁化させておく、軸材23に永久磁石を配置する、又は軸材23にコイルを巻き付けて前記コイルに直流電源を接続する等、種々の構成を採り得ることができる。
磁歪膜mfにバイアス磁界Hbiasをかけておくことにより、出力電圧V1〜V4及び操舵トルク信号VT3の各電圧が安定化する。
上記した第1〜第4実施例に係る磁歪式トルクセンサ144(144A〜144C)では、界磁部211〜214を構成する磁束発生部101、102、201としての永久磁石によりバイアス磁界Hbiasをかけている。
外部磁界等の影響で、B−Hカーブの傾きが大きい図25中の原点から立ち上がる領域で、磁界の強さHが変化すると、磁束密度Bが安定しなくなり、結果として第1及び第2磁束検出部121、122で検出される検出値としての出力電圧VT1〜VT4が安定しない。よって、B−Hカーブの傾斜が少ない保持力Hc以上の領域を使用する。このため、磁歪膜mfに保持力Hc以上のバイアス磁界Hbiasを予めかけておく。
図26は、図25のB−Hカーブにおいて磁界の強さH[A/m]がゼロ値から増大していく際の初透磁率曲線の傾き(微分値)により、磁界の強さHに対する透磁率μの変化を求めたものである。図25、図26に示すバイアス磁界Hbias以上のバイアス磁界を磁歪膜mfにかけることにより、外部磁界等の影響で磁界の強さHが変化したとしても、透磁率μ[H/m]が大きく変化することが無い、透磁率μ[H/m]の安定した領域で磁歪式トルクセンサ144、144A、144B、144Cを使用することができる。
なお、この発明は、上述した実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、例えば、磁束発生部101、102、201から第1及び第2磁束検出部121、122に向かって磁歪膜mfに磁束φを通す方向は、軸材23に設けた円筒状の磁歪膜mfの円周方向又は軸方向の任意方向に選択する等、種々の構成を採り得ることはもちろんである。