本発明においては、患者が外反母趾と内反小趾の両方の疾患を有する場合でも、外反母趾用の貼付け部材の厚みと内反小趾用の貼付け部材の厚みをそれぞれ算出することができる製靴型の製造方法と該製靴型を用いた靴の製造方法を提供するという目的を以下のようにして実現した。
本実施例の製靴型の製造方法及び靴の製造方法を図1等を使用してより具体的に説明すると、まず、製造する靴の使用者の足の足長と甲回りを測定する(図1のS1、足サイズ測定工程)。
まず、足長K1については、図2に示すように、踵の後端部から降ろした垂線の位置(後端点)から足の先端から降ろした垂線の位置までの長さを測定する。足の先端としては、第2趾の先端とする。つまり、踵の後端と足の第2趾の先端との間の前後方向直線部(中心線)aKに沿った長さを測定することにより足長K1を測定する。
また、甲回りについては、土踏まずの上の位置で最も甲の高い部分の足の周囲の長さを測定する。
なお、具体的には、以下のように、足の後端点から所定の長さの位置で前後方向直線部に対して所定の角度にメジャー部を配置して甲回りを測定するのが好ましい。すなわち、図2に示すように、平面視における足の踵の後端点から足長に対して51.0〜61.0%(好適には、56.0%)の割合の位置PKで、前後方向直線部aのつま先側の方向と甲回りを測定するためのメジャー部の足の配置位置に対する内側の方向とがなす角度γ1が、男性用の場合は75.5〜85.5度(好適には、80.5度)となるようにメジャー部を配置して甲回りを測定する。つまり、図2において、足長K1に対する長さK2の割合が51.0〜61.0%(好適には、56.0%)であり、甲回りを表す曲線(ループ状の曲線)CKを平面視した際には、該曲線CK(平面視においては直線)が踵の後端点からK2の位置PKを通り、前後方向直線部aKのつま先側と該曲線CKとがなす角度(足の配置位置の内側の角度)γ1が、75.5〜85.5度(好適には、80.5度)となっている。そして、メジャー部をこの曲線CKに沿うように、メジャー部を足の下に直線状に伸ばした状態で配置し、足の後端点から足長に対して51.0〜61.0%(好適には、56.0%)の割合の位置PKを通り、前後方向直線部aKのつま先側の方向と甲回りを測定するためのメジャー部(巻き尺)の足の配置位置に対する内側の方向とがなす角度γ1が75.5〜85.5度(好適には、80.5度)となるようにメジャー部を配置して、その後、メジャー部を足に巻き付けて甲回りを測定する。なお、足の内側から側面視した場合には、甲回りを表わす曲線は水平面のつま先側となす角度γ2が71.0〜81.0度(好適には、76.0度)となるようにし、甲回りを測定するメジャーについても、足の内側から側面視した場合には、水平面のつま先側に対してメジャー部が71.0〜81.0度(好適には、76.0度)となるようにする。
なお、女性の場合には、角度γ1を74.5〜84.5度(好適には、79.5度)とし、他は同様とする。
なお、足長と甲回りを測定するには、上記特許文献2〜4の足サイズ測定具を使用するのが好ましい。
特許文献2、3に記載されている足サイズ測定具Aは、図3に示すように構成され、略長方形状のシート状部材5に、足型表示部10と、足長測定部20と、足囲測定部30と、甲回り測定部40等を有している。
また、特許文献4に記載されている足サイズ測定具1は、図4、図5に示すように構成され、測定具本体部1Aを有し、この測定具本体部1Aは、本体領域部5と、踵当て部70とを有していて、本体領域部5の表側の面には、図4に示すように、足型表示部10と、足長測定部20と、足囲測定部40と、甲回り測定部50と、記入欄68とを有し、本体領域部5の裏側の面には、図5に示すように、足型表示部110と、足長測定部120と、足囲測定部140と、甲回り測定部150と、記入欄168とを有している。特に、足の後端点から所定の長さの位置で前後方向直線部に対して所定の角度にメジャー部を配置して足囲を測定する場合や、足の後端点から所定の長さの位置で前後方向直線部に対して所定の角度にメジャー部を配置して甲回りを測定する場合には、特許文献4に示す足サイズ測定具を使用するのが好ましい。
以上のように、足の足長と甲回りとを測定したら、測定により得られた足長の測定値と甲回りの測定値に対応した木型(製靴型)1100を選択する(図1のS2)。つまり、足サイズ測定工程において得られた足長の測定値と甲回りの測定値とに応じた製靴型を選択する。なお、前提として、木型は、足長と甲回りと足囲の寸法に応じてその規格が用意されているので、測定値に近い寸法のものを選択する。つまり、足長については、測定値に一致する寸法がない場合には、測定値よりも大きく、かつ、測定値に最も近い寸法を選択し、測定値に一致する寸法がある場合には、その寸法を選択する。また、甲回りについては、測定値に一致する寸法がない場合には、測定値よりも小さく、かつ、測定値に最も近い寸法を選択し、測定値に一致する寸法がある場合には、その寸法を選択する。つまり、甲回りについては、足を甲回りの位置で締めて固定するようにするため、上記のように寸法を選択する。なお、木型1100は、補正木型1105を製造する際の元(基本としてもよい)になるものであるので、原木型、元木型、基本木型、原製靴型、元製靴型、基本製靴型としてもよい。
つまり、足長については、所定長さごと(例えば、5mmごと)の寸法のものが用意され、甲回りと足囲については、所定長さごと(例えば、4mmごと)の寸法のものが用意され、甲回りと足囲とは、甲回りの長さに所定の長さを加算した値が足囲となるように設定されている。例えば、足囲の長さ=甲回りの長さ+n(nは正数の長さ)となるように設定され、nの値としては、例えば、2mmとなっている。なお、2mmでなくても、他の長さでもよい。
例えば、足長については、5mmピッチで250mmの次が255mmの寸法に設定され、また、甲回りについては、4mmピッチで246mmの次が250mmの寸法に設定され、足囲の長さ=甲回りの長さ+2mmに設定されているとした場合に、測定した足長が253mm、甲回りが249mmであるとすると、足長が255mmで甲回りが246mmの木型を選択する。なお、甲回りが246mmであるので、その木型の足囲は、248mm(246mm+2mm)となっている。
なお、上記の例で、甲回りの測定値が250mmの場合には、甲回りが250mmの木型を選択する。なお、甲回りが250mmであるので、その木型の足囲は、252mm(250mm+2mm)となっている。
また、甲回りについては、測定値に一致する寸法がない場合には、測定値よりも小さく、かつ、測定値に最も近い寸法を選択するとしたが、測定値に最も近い寸法を選択してもよい。すなわち、上記の例で、甲回りが249mmの場合には、甲回りが246mmの場合よりも250mmの方が近いので、甲回りが250mmの木型を選択する。
なお、木型を予め準備した複数種類の中から選択するとしたが、選択した寸法の木型を作成するようにしてもよい。
次に、貼付け部材2000、2100の厚みを算出するために、足の外反母趾角及び内反小趾角と木型の外反母趾角及び内反小趾角を測定する(図1のS3、角度測定工程)。
すなわち、足の平面画像を得るとともに、木型の平面画像を得る。足の平面画像を得るには、図6に示すように、足1000を上方から(つまり、図6の矢印の方向から)撮影して平面画像を取得する。つまり、カメラの光軸は、足の載置面Gに対して鉛直方向として、足1000を真上から撮った画像を得る。足の平面画像の例としては、図7に示す画像1000Gのようになる。
同様に、木型(つまり、原木型)の平面画像についても、図8に示すように、製靴型(製靴用型、靴型としてもよい)としての木型1100を上方から(つまり、図8の矢印の方向から)撮影して平面画像を取得する。この場合も、カメラの光軸は、木型の載置面Gに対して鉛直方向として、木型1100を真上から撮った画像を得る。木型の平面画像の例としては、図9に示す木型の画像1100Gのようになる。
次に、足の平面画像と木型の平面画像を同一縮尺で重ね合わせた合成画像を作成する。例えば、足の平面画像の上に木型の平面画像を重ねるとともに、木型の平面画像を半透明化させることにより、図10に示すような合成画像を得て、木型の輪郭と足の輪郭の両方を視認することができるようにする。なお、木型の平面画像の上に足の平面画像を重ねるとともに、足の平面画像を半透明化させることにより合成画像を得るようにしてもよい。
なお、合成画像を得る際には、外反母趾及び内反小趾の木型の表面からの突出高さを正確に得るために、足の平面画像と木型の平面画像の縮尺を同じとする。
また、足の平面画像と木型の平面画像の相対的な位置関係としては、木型により製造された靴を履いた際の足の位置に相当する位置とし、具体的には、足の画像1000Gの輪郭Uと木型の画像1100Gの輪郭Wがなるべく一致する位置(一致度が高い位置)とし、例えば、以下の具体的条件の少なくとも1つを満たすようにする。つまり、「足の画像1000Gの輪郭Uにおける外側の輪郭UOと、木型の画像1100Gの輪郭Wにおける外側の輪郭WOとを一致させる(なお、一致しない場合には、輪郭UOと輪郭WOとが平行(略平行としてもよい)となるようにする)(第1条件)。」、「輪郭Uの踵側の端部と輪郭Wの踵側の端部とを一致させる(第2条件)。」、「『母趾(親指)と小趾(小指)が木型の輪郭Wから突出しない(つまり、母趾の輪郭と小趾の輪郭が輪郭Wの内側又は輪郭Wの線上にある)。』又は『母趾の内側の一部と小趾の外側の一部が木型の輪郭Wよりも外側にあるとともに、母趾1001の付け根位置の内側の端部1001Pと小趾1005の付け根位置の外側の端部1005Qとが輪郭Wよりも外側には位置しない(端部1001Pと端部1005Qとが、輪郭Wの内側又は輪郭Wの線上にある)。』(第3条件)」の少なくともいずれかを満たすようにする。
ここで、母趾1001の付け根位置においては、図10、図28に示すように、平面視において、内側の端部1001Pと外側の端部1001Qがあり、端部1001Pの特定の方法としては、母趾の付け根の外側の端部1001Qは、母趾と第二指との境界位置であるので、比較的特定しやすく、端部1001Qから母趾の方向を示す直線1001Jaに対する垂線1001Jbを描き、該垂線1001Jbと足の輪郭Uとの交点を端部1001Pとして特定すればよい。なお、母趾1001の付け根位置とは、端部1001Pと端部1001Qを結ぶ直線状の位置といえ、垂線1001Jbが母趾1001の付け根位置を示しているといえる。
また、小趾1005の付け根位置においては、図10に示すように、平面視において、内側の端部1005Pと外側の端部1005Qがあり、端部1005Qの特定の方法としては、小趾の付け根の内側の端部1005Pは、小趾と第四指との境界位置であるので、比較的特定しやすく、端部1005Pから小趾の方向を示す直線1005Jaに対する垂線1005Jbを描き、該垂線1005Jbと足の輪郭Uとの交点を端部1005Qとして特定すればよい。なお、小趾1005の付け根位置とは、端部1005Pと端部1005Qを結ぶ直線状の位置といえ、垂線1005Jbが小趾1005の付け根位置を示しているといえる。
なお、付け根位置の内側の端部、外側の端部と表現する場合の内側と外側については、足の左右方向(足長の方向に対する直角の方向)において、母趾側を内側とし、小趾側を外側とする。
なお、輪郭Uと輪郭Wの一致度としては、例えば、図10に示すように、合成画像に対して、足長方向と直角の方向に複数の直線(例えば、直線J1、J2)をつま先からかかとに向けて間隔を介して描き、各直線における輪郭Uと輪郭W間の長さを測定し、測定した長さの和が小さい場合に一致度が高いとして、測定した長さの和が最小となる位置関係としてもよい。直線J1、J2は、複数の直線における例であり、実際には、多くの直線(例えば、20〜30本の直線)を間隔(例えば、同一間隔)を介して描く。測定する長さは、輪郭Uと直線との交点(輪郭Uとの交点)と輪郭Wと直線との交点(輪郭Wとの交点)間の長さで、1つの直線上に輪郭Uとの交点や輪郭Wとの交点が複数(具体的には、2つ)ある場合には、一方の交点においては、他方の複数の交点における近い方の交点との長さとする。つまり、図10の直線J1においては、直線J1と輪郭Wとの交点W1については、交点W1は、直線J1と輪郭Uとの交点U1、U2のうち交点U1の方が近いので、交点W1と交点U1間の長さを測定する。また、直線J1と輪郭Wの交点W2については、交点W2は、交点U1、U2のうち交点U2の方が近いので、交点W2と交点U2間の長さを測定する。このように、測定長さの最小和により一致度を算出する方法を「測定長さの最小和による一致度判定方法」とする。
なお、このようにして、測定長さの最小和による一致度判定方法に従い輪郭Uと輪郭Wの一致度を算出する際には、足の輪郭Uにおけるつま先側の輪郭においては、母趾の先端1001Tから小趾の先端1005Tまでの範囲については、靴内には足のつま先よりも先端側に空間が確保されることから、木型の輪郭Wとの一致度は特に重視しなくてもよく、測定対象から外すようにする。例えば、図10における直線J2については、内側の交点W2、U2間の長さのみを測定すればよい。また、足の輪郭におけるかかと側の外側の部分UKは、足首が撮影されているので、測定対象から外す。
また、上記の具体的条件における第3条件を満たすことを前提として、上記の「測定長さの最小和による一致度判定方法」により一致度をを算出することにより足と木型の相対位置を決定してもよい。
以上のようにして、合成画像を作成したら、合成画像における外反母趾の領域から足の外反母趾角と木型の外反母趾角を測定し、また、合成画像における内反小趾の領域から足の内反小趾角と木型の内反小趾角を測定する。
まず、足の外反母趾角と木型の外反母趾角を測定について説明する。図11に示すように、合成画像の外反母趾の領域においては、足の輪郭Uが木型の輪郭Wよりも外側に突出し、足の輪郭Uと木型の輪郭Wとは交点Aと交点Bとで交わっている。なお、交点Aと交点Bの位置は、突出点f(後述)を交点Aと交点B間を結ぶ直線よりも上側として平面視した際に、左側に位置する交点が交点Aであり、右側に位置する交点が交点Bとなる。交点Aと交点Bにおける一方が第1交点となり、他方が第2交点となる。
図11において、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、「外反母趾又は内反小趾である足疾患(具体的には、外反母趾である足疾患)による突出部の平面視における輪郭」となるとともに、交点Aと交点Bは、木型Wの輪郭よりも突出した足疾患の突出部の輪郭の基端となり、外反母趾による突出部は、外反母趾により突出した部分であり、該突出部の表面は足の表面に沿ってある面積を有していて(つまり、突出部の外周はループ状を呈する)、具体的には、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲を有する足の表面に沿ったある面積を有する領域であり、外反母趾による突出部の平面視における領域は、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲と木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲により囲まれた領域である。また、木型の表面領域において外反母趾による突出部に対応した領域(該突出部の表面領域が位置する領域)が「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域」であり、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲を有する木型の表面に沿ったある面積を有する領域が「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域」となる。つまり、該突出部対応領域の平面視における領域は、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲と交点Aと交点Bとを結ぶ直線により囲まれた領域であり、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、突出部対応領域の平面視における輪郭を示す。
ここで、足の輪郭Uにおいて、木型に対して最も突出した位置である突出点f(足疾患による突出部の頂点)を特定し、交点Aと突出点fを結ぶ直線(第1直線)P1と、交点Bと突出点fを結ぶ直線(第2直線)P2を描く。ここで、突出点fの特定の仕方としては、例えば、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲において、交点Aと交点Bとを結ぶ直線Rまでの距離(直線Rに対して垂線を描き、該垂線と輪郭Uの交点から垂線と直線Rの交点までの長さ)が最も長い点を突出点fとする。直線P1と直線P2の交点を交点c’とすると、交点c’は突出点fと一致する。なお、直線P1と直線P2の一方が、「突出部の平面視における輪郭において突出部の頂点を介した両側の輪郭のうち一方の輪郭の傾きに対応した第1直線」に当たり、直線P1と直線P2の他方が、「突出部の平面視における輪郭において突出部の頂点を介した両側の輪郭のうち他方の輪郭の傾きに対応した第2直線」に当たる。
これにより、交点c’と交点Aと交点Bを頂点とする三角形T1が形成され、該三角形T1は、直線Rと直線P1と直線P2により形成される。また、直線P1と直線P2とがなす角度(鋭角)を角度αとする。この角度αが、足疾患角度、特に、足の外反母趾角であり、図11において、この角度αを測定する。
また、輪郭Wの交点Aにおける接線Q1と輪郭Wの交点Bにおける接線Q2とを合成画像に描き、接線Q1と接線Q2の交点を交点d’とする。接線Q1と接線Q2は直線である。接線Q1と接線Q2は直線である。接線Q1と接線Q2の一方が第3直線で他方が第4直線となり、交点Aを第1交点とした場合には、接線Q1が第3直線となり、接線Q2が第4直線となり、一方、交点Bを第1交点とした場合には、接線Q1が第4直線となり、接線Q2が第3直線となる。これにより、交点d’と交点Aと交点Bを頂点とする三角形T2が形成され、該三角形T2は、直線Rと接線Q1と接線Q2により形成される。また、接線Q1と接線Q2とがなす角度(鋭角)を角度βとする。この角度βが、製靴型角度、特に、木型の外反母趾角であり、図11において、この角度βを測定する。また、図11において、交点Aと交点B間の長さ(=M)を測定しておく。この長さMは、「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端(つまり、交点B)とかかと側の基端(つまり、交点A)の間の長さ」となる。つまり、交点Bが、足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端となり、交点Aが、足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端となる。
次に、足の内反小趾角と木型の内反小趾角を測定について説明する。足の内反小趾角と木型の内反小趾角の測定は、外反母趾角の場合と同様である。すなわち、図12に示すように、合成画像の内反小趾の領域においては、足の輪郭Uが木型の輪郭Wよりも外側に突出し、足の輪郭Uと木型の輪郭Wとは交点Aと交点Bとで交わっている。交点Aと交点Bにおける一方が第1交点となり、他方が第2交点となる。
図12において、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、「外反母趾又は内反小趾である足疾患(具体的には、内反小趾である足疾患)による突出部の平面視における輪郭」となるとともに、交点Aと交点Bは、木型Wの輪郭よりも突出した足疾患の突出部の輪郭の基端となり、内反小趾による突出部は、内反小趾により突出した部分であり、該突出部の表面は足の表面に沿ってある面積を有していて(つまり、突出部の外周はループ状を呈する)、具体的には、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲を有する足の表面に沿ったある面積を有する領域であり、内反小趾による突出部の平面視における領域は、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲と木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲により囲まれた領域である。また、木型の表面領域において内反小趾による突出部に対応した領域(該突出部の表面領域が位置する領域)が「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域」であり、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲を有する木型の表面に沿ったある面積を有する領域が「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域」となる。つまり、該突出部対応領域の平面視における領域は、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲と交点Aと交点Bとを結ぶ直線により囲まれた領域であり、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、突出部対応領域の平面視における輪郭を示す。
ここで、足の輪郭Uにおいて、木型に対して最も突出した点である突出点f(足疾患による突出部の頂点)を特定し、交点Aと突出点fを結ぶ直線(第1直線)P1と、交点Bと突出点fを結ぶ直線(第2直線)P2を描く。ここで、突出点fの特定の仕方としては、例えば、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲において、交点Aと交点Bとを結ぶ直線Rまでの距離(直線Rに対して垂線を描き、該垂線と輪郭Uの交点から垂線と直線Rの交点までの長さ)が最も長い点を突出点fとする。直線P1と直線P2の交点を交点c’とすると、交点c’は突出点fと一致する。なお、直線P1と直線P2の一方が、「突出部の平面視における輪郭において突出部の頂点を介した両側の輪郭のうち一方の輪郭の傾きに対応した第1直線」に当たり、直線P1と直線P2の他方が、「突出部の平面視における輪郭において突出部の頂点を介した両側の輪郭のうち他方の輪郭の傾きに対応した第2直線」に当たる。
これにより、交点c’と交点Aと交点Bを頂点とする三角形T1が形成され、該三角形T1は、直線Rと直線P1と直線P2により形成される。また、直線P1と直線P2とがなす角度(鋭角)を角度αとする。この角度αが、足疾患角度、特に、足の外反母趾角であり、図12に示す合成画像において、この角度αを測定する。
また、輪郭Wの交点Aにおける接線Q1と輪郭Wの交点Bにおける接線Q2とを合成画像に描き、接線Q1と接線Q2の交点を交点d’とする。接線Q1と接線Q2は直線である。接線Q1と接線Q2の一方が第3直線で他方が第4直線となり、交点Aを第1交点とした場合には、接線Q1が第3直線となり、接線Q2が第4直線となり、一方、交点Bを第1交点とした場合には、接線Q1が第4直線となり、接線Q2が第3直線となる。これにより、交点d’と交点Aと交点Bを頂点とする三角形T2が形成され、該三角形T2は、直線Rと接線Q1と接線Q2により形成される。また、接線Q1と接線Q2とがなす角度(鋭角)を角度βとする。この角度βが、製靴型角度、特に、木型の内反小趾角であり、図12に示す合成画像において、この角度βを測定する。また、図12において、交点Aと交点B間の長さ(=M)を測定しておく。この長さMは、「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端(つまり、交点A)とかかと側の基端(つまり、交点B)の間の長さ」となる。つまり、交点Aが、足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端となり、交点Bが、足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端となる。
なお、合成画像において、外反母趾や内反小趾が発生していない場合には、貼付け部材を貼り付ける必要がないので、上記の角度測定は不要である。つまり、外反母趾の領域において、足の輪郭Uが木型の輪郭Wよりも突出していない場合には、足と木型の外反母趾角の測定は不要であり、内反小趾の領域において、足の輪郭Uが木型の輪郭Wよりも突出していない場合には、足と木型の内反小趾の測定は不要であり、外反母趾と内反小趾について、足が木型よりも突出している側についてのみ角度を測定する。また、外反母趾や内反小趾が発生していない場合には、当然、以下で説明する貼付け部材の厚みの算出(図1のS4)や貼付け部材の作成(図1のS5)や貼付け部材の木型への貼付け(図1のS6)は不要である。
上記の足の外反母趾角と足の内反小趾角は、「外反母趾又は内反小趾である足疾患による突出部の突出度合いを示す足疾患角度」に当たり、上記木型の外反母趾角と木型の内反小趾角は、「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域における突出度合いを示す製靴型角度」に当たる。
以上のようにして、足と木型の外反母趾角と足と木型の内反小趾角を測定したら、貼付け部材の厚みを算出する(図1のS4、算出工程)。
すなわち、三角形T1を直線Rに沿った辺部を底辺とする二等辺三角形とみなして簡略化すると、図13の模式図に示すように、交点c’は、二等辺三角形の頂点である交点cとなり、三角形T1は、交点cと交点Aと交点Bとを頂点とする二等辺三角形となる。また、三角形T2を直線Rに沿った辺部を底辺とする二等辺三角形とみなすと、図13に示すように、交点d’は、二等辺三角形の頂点である交点dとなり、三角形T2は、交点dと交点Aと交点Bとを頂点とする二等辺三角形となる。図13において、交点cと交点dを結ぶ直線の直線Rへの延長線は、直線Rと交点eで交わり、交点cと交点e間の直線は、直線Rに対して直角となる。
図13において、交点cから交点dまでの長さをL1とし、交点dから直線Rまでの長さをL2とし、交点Aと交点B間の長さをMとした場合には、角度αと、長さL1、L2、Mの関係は、交点cと交点Aと交点eを頂点とする三角形が直角三角形となるので、式(1)に示すようになる。
また、角度βと、長さL2、Mの関係は、交点dと交点Aと交点eを頂点とする三角形が直角三角形となるので、式(2)に示すようになる。
また、式(2)を変形すると、式(3)となる。
すると、式(1)と式(3)とから式(4)が導かれる。
図13において、交点dを木型における直線Rに対する突出部の頂点とみなすと、長さL1は、足が木型から突出した部分(図13では、三角形T1から三角形T2を除いた部分がこれに当たる)の突出長さとなり、この長さL1が貼付け部材の厚みとなる。
よって、外反母趾側の貼付け部材の厚みについては、式(4)に図11において測定された角度αと角度βと交点Aと交点B間の長さを入れて計算することにより、長さL1、すなわち、外反母趾側の貼付け部材の厚みを算出することができる。
つまり、足の外反母趾角と木型の外反母趾角を測定し、足の外反母趾角(すなわち、角度α)を形成する2つの直線(直線P1と直線P2)に沿った辺部を有する三角形T1と、木型の外反母趾角(すなわち、角度β)を形成する2つの直線(直線Q1と直線Q2)に沿った辺部を有する三角形T2を、ともに二等辺三角形とみなすことにより、式(4)のような簡易な計算式により貼付け部材の厚みを算出することができる。
同様に、内反小趾側の貼付け部材の厚みについては、式(4)に図12において測定された角度αと角度βと交点Aと交点B間の長さを入れて計算することにより、長さL1、すなわち、内反小趾側の貼付け部材の厚みを算出することができる。
つまり、足の内反小趾角と木型の内反小趾角を測定し、足の内反小趾角(すなわち、角度α)を形成する2つの直線(直線P1と直線P2)に沿った辺部を有する三角形T1と、木型の内反小趾角(すなわち、角度β)を形成する2つの直線(直線Q1と直線Q2)に沿った辺部を有する三角形T2を、ともに二等辺三角形とみなすことにより、式(4)のような簡易な計算式により貼付け部材の厚みを算出することができる。
なお、上記のように、2つの直線に沿った辺部を有する三角形を二等辺三角形とみなして貼付け部材の厚みを算出するが、該三角形において、もともと2つの辺部の長さが極端に異なることがないので、二等辺三角形とみなすことに特に支障はなく、また、実際に算出した厚みに従い貼付け部材を作成して、該貼付け部材を貼り付けた木型により靴を製造したところ、靴の履き心地には問題はなかった。
また、木型における交点d’は、木型の輪郭Wにおける頂点(交点Aと交点B間の曲線における頂点(交点Aと交点B間の曲線において直線Rまでの長さが最も長い点))よりも突出しているが、該突出量は小さく、交点d’から直線Rまでの長さと木型の輪郭Wにおける頂点から直線Rまでの長さとはほぼ等しいと考えることができるので、貼付け部材の厚みの算出に際して特に支障はない。
なお、上記の説明では、接線Q1と接線Q2とがなす角度(鋭角)を角度βとしたが、外反母趾と内反小趾のいずれの場合でも、接線Q1の代わりに、交点Aと交点B間の曲線における突出点gと交点A間の直線とし、接線Q2の代わりに、交点Aと交点B間の曲線における突出点gと交点B間の直線として、2つの直線がなす角度(鋭角)を角度βとしてもよい。この場合、突出点gと交点A間の直線と突出点gと交点B間の直線の一方が第3直線となり、他方が第4直線となる。なお、突出点gは、木型の輪郭Wの交点Aから交点Bの範囲で最も突出した点であり、例えば、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲において、交点Aと交点Bとを結ぶ直線Rまでの距離(直線Rに対して垂線を描き、該垂線と輪郭Wの交点から垂線と直線Rの交点までの長さ)が最も長い点を突出点gとする。このように、接線Q1の代わりに突出点gと交点A間の直線とし、接線Q2の代わりに突出点gと交点B間の直線とした場合でも、突出部対応領域の平面視における輪郭において、突出部対応領域の頂点を介した両側の輪郭のうち一方の輪郭の傾きに対応した第3直線と他方の輪郭の傾きに対応した第4直線とがなす鋭角の角度である製靴型角度を測定しているといえる。
以上のように、貼付け部材の厚みを算出したら、算出した貼付け部材の厚みに応じて、貼付け部材を作成する(図1のS11、貼付け部材作成工程)。
貼付け部材の作成に際しては、例えば、天然皮革、合成皮革、合成ゴムを用い(他の材料を用いてもよい)、貼付け部材の形状としては、図14に示す貼付け部材2000、2100に示すように、平面視においては、図14(a)に示すように、長方形状の角部を略円弧状に面取りした形状とし、正面視においては、左右方向の略中央が最も厚く左右の両端に向けてなだらかに傾斜した形状とし、側面視においても、前後方向の略中央が最も厚く前後の両端に向けてなだらかに傾斜した形状となり、最も厚い箇所(最大厚み箇所)の厚みが上記で算出した長さL1となる。なお、貼付け部材2000が外反母趾用の貼付け部材であり、貼付け部材2100が内反小趾用の貼付け部材である。貼付け部材2000、2100においては、左右方向が前後方向よりも長く形成され、貼付け部材の左右方向を木型の前後方向に沿わせて貼り付ける。
なお、貼付け部材の左右方向の長さは、上記で測定した交点Aと交点B間の長さ(=M)とするが、交点Aと交点B間の長さよりも長くしてもよい。つまり、貼付け部材の左右方向の長さは、図13の模式図によれば、少なくとも交点Aと交点B間の長さを有していれば、足が木型から突出した部分(図13では、三角形T1から三角形T2を除いた部分がこれに当たる)が貼付け部材からはみ出ることがなく、貼付け部材の左右方向の長さを、交点Aと交点B間の長さよりも長くしても、特に支障がなく、また、貼付け部材の左右方向の長さを交点Aと交点B間の長さよりも長く形成した方が、製造された靴の形状の見栄えをよくすることができる。つまり、貼付け部材の左右方向の長さを交点Aと交点B間の長さとすると、製造された靴における貼付け部材を貼り付けた箇所が外側から見て目立つ状態で突出してしまい、見栄えが悪いが、貼付け部材の左右方向の長さを交点Aと交点B間の長さよりも長く形成した方が、製造された靴の形状の見栄えをよくすることができる。
なお、貼付け部材の平面形状としては、図14に示す形状には限られず、例えば、楕円形状(左右方向に横長の楕円形状)としてもよい。
なお、天然皮革や合成皮革の場合には、グラインダー等で削って(つまり、削り出しにより)貼付け部材を成形し、合成ゴムについては、溶融させた合成ゴムを型に流し込むことにより成形する。
以上のように貼付け部材を作成したら、木型に貼付け部材を貼り付ける(図1のS12、貼付け工程)。つまり、外反母趾用の貼付け部材を木型における外反母趾の位置に相当する領域(つまり、外反母趾の突出部に対応した領域である突出部対応領域)(具体的には、木型の内側の側面において、母趾の付け根に対応する位置を含む領域)に貼り付け、内反小趾用の貼付け部材を木型における内反小趾の位置に相当する領域(つまり、内反小趾の突出部に対応した領域である突出部対応領域)(具体的には、木型の外側の側面において、小趾の付け根に対応する位置を含む領域)に貼り付ける。
具体的には、外反母趾用の貼付け部材2000と内反小趾用の貼付け部材2100のいずれにもおいても、木型における交点Aと交点B間の中間位置(水平方向において交点Aと交点Bから等距離の位置)(外反母趾においては中間位置E1、内反小趾においては中間位置E2)に相当する位置に貼付け部材の最大厚み箇所が位置するように貼り付ける。つまり、図13の模式図において、交点eの位置で最大厚みとなるように模式化しているので、交点Aと交点Bから等距離の交点eに相当する位置が最大厚み箇所となるようにする。具体的な方法としては、木型と同一縮尺とした合成画像(図10参照)を用意し、該合成画像の上に木型を配置して、木型の側面における平面視において木型の輪郭Wをなす位置において、交点Aと交点Bに対応する位置に筆記具等により印を付け、交点Aに対応する印と交点Bに対応する印の中間位置E1、E2(図10、図16、図17参照)(水平方向において、交点Aに対応する印及び交点Bに対応する印から等距離の位置)に相当する位置に最大厚み箇所が位置するように貼付け部材を貼り付ける。なお、図16、図17では、輪郭Wは一点鎖線により示されている。
なお、中間位置E1、E2に相当する位置に最大厚み箇所が位置するとは、平面視において、最大厚み箇所が、中間位置E1、E2から交点Aと交点Bとを結ぶ直線に対して直角方向にある場合であるが、平面視において、中間位置E1と中間位置E2とを結ぶ直線の延長線上に最大厚み箇所がある場合としてもよい。この場合には、図15において、中間位置E1と中間位置E2とを結ぶ直線の延長線と貼付け部材の輪郭とが接する位置E1’、E2’に最大厚み箇所がある。特に、以下で説明するように、貼付け部材を木型に貼り付けた状態で、貼付け部材の厚みを算出した厚みとなるように調整する場合には、貼付け部材を貼り付けた補正木型1105の状態における周囲長と、貼付け部材を貼り付けていない状態の木型1100の周囲長を比較する際に、中間位置E1と中間位置E2とを結ぶ直線の延長線上に最大厚み箇所があると比較が容易となる。
木型1100に貼付け部材2000、2100を貼り付けた状態は、図15〜図17に示すようになる。
上記の貼付け部材作成工程(S11)と貼付け工程(S12)により、木型(製靴型)1100と貼付け部材2000、2100とからなる補正木型(補正製靴型)1105を作成する補正製靴型作成工程(S5)が構成される。補正製靴型作成工程においては、補正木型1105において、木型の突出部対応領域に貼付け部材2000、2100が貼り付けられていて、貼付け部材2000、2100の厚みが算出工程において算出された厚みとなっている。
なお、図11、図12において、突出点fが交点Aと交点Bの間の中間位置よりも交点A側又は交点B側にずれている場合には、最大厚み箇所を交点Aと交点Bの間の中間位置に対してずれ量に対応する長さ分だけずらして貼り付けてもよい。
以上のようにして、靴の使用者の足の突出部(つまり、外反母趾や内反小趾により変形して突出した突出部分)に対応する位置に貼付け部材を貼り付けて、補正木型1105を作成する。つまり、木型1100と貼付け部材2000及び/又は貼付け部材2100とにより補正木型1105が構成される。つまり、上記ステップS1からステップS5までの工程が、製靴型の製造方法に当たる。
なお、上記の説明においては、補正製靴型作成工程(S5)においては、ステップS11(貼付け部材作成工程)において、算出した貼付け部材の厚みに応じた貼付け部材を作成して、ステップS12(貼付け工程)において、作成した貼付け部材を貼り付けるとしたが、算出した貼付け部材の厚みよりも大きい厚みの貼付け部材を作成して、貼付け部材を木型に貼り付け(S21、貼付け工程)、貼付け部材を木型に貼り付けた状態で、貼付け部材の厚みを算出した厚みとなるように調整するようにしてもよい(S22、厚み調整工程)。
これらの貼付け工程(S21)と厚み調整工程(S22)により、木型(製靴型)1100と貼付け部材2000、2100とからなる補正木型(補正製靴型)1105を作成する補正製靴型作成工程(S5)が構成される。補正製靴型作成工程においては、補正木型1105において、木型の突出部対応領域に貼付け部材2000、2100が貼り付けられていて、貼付け部材2000、2100の厚みが算出工程において算出された厚みとなっている。
厚み調整工程において、貼付け部材を木型1100に貼り付けた状態で貼付け部材の厚みを測定しなければならないが、貼り付けた貼付け部材の厚みを測定するには、貼付け部材を貼り付けた補正木型1105の状態における周囲長と、貼付け部材を貼り付けていない状態の木型1100の周囲長を比較することにより行なう。なお、図15に示すように、補正木型1105の状態における周囲長は、木型1100における中間位置E1に対応する貼付け部材の表面の位置E1’と中間位置E2に対応する貼付け部材の表面の位置E2’とを通るループ状の曲線LP’の長さであり、木型1100の周囲長は、中間位置E1と中間位置E2とを通るループ状の曲線LPの長さである。ループ状の曲線LPとループ状の曲線LP’とは、木型1100における貼付け部材2000、2100が貼り付けられていない領域では重なっており、平面視においては、中間位置E1と中間位置E2を結ぶ線は直線であり、中間位置E1’と中間位置E2’を結ぶ線は直線である。つまり、中間位置E1と中間位置E2を結ぶ直線の延長線上に中間位置E1’、E2’がある。
なお、補正木型1105における中間位置E1’、E2’の決め方としては、補正木型1105の表面において、補正木型1105の平面視における貼付け部材の輪郭(外側の輪郭)に対応する曲線W’(つまり、水平方向の曲線)上の位置において中間位置E1’、E2’を決定する。なお、図16、図17では、曲線W’は二点鎖線により示されている。
具体的には、図10に示す合成画像において、中間位置E1と中間位置E2が決定されるので、合成画像と同じ縮尺で補正木型1105の平面画像を得て、合成画像と該平面画像を重ねることにより、平面画像に中間位置E1、E2を描き、中間位置E1と中間位置E2間の直線の延長線と貼付け部材2000、2100の輪郭(外側の輪郭)の接点を中間位置E1’、E2’とする。そして、実際の補正木型1105の表面において、補正木型1105の平面視における貼付け部材の輪郭(外側の輪郭)に対応する水平方向の曲線において、合成画像において得られた中間位置E1’、E2’に対応する水平方向の位置を実際の補正木型1105における中間位置E1’、E2’とする。
なお、貼付け部材が外反母趾の領域と内反小趾の領域の一方のみに貼り付けられている場合、つまり、外反母趾と内反小趾のいずれか一方のみが発生していて、他方については、足の輪郭Uが木型の輪郭Wよりも突出していない場合には、中間位置E1’と中間位置E2’の一方がないので、図10に示す合成画像において、中間位置E1又はE2から所定の方向に直線を描いて該直線と木型の輪郭Wとの接点を中間位置とみなす。
すなわち、図10に示す合成画像において、かかとの基端UBと第2趾の先端を結ぶ直線である中心線ZT1を描き、この中心線ZT1に対して、中間位置から直線ZT2を描いて、木型の輪郭Wとの接点を他方の中間位置とする。なお、直線ZT2の中心線ZT1に対する角度としては、中心線ZT1のつま先側の方向と直線ZT2の足の内側の方向とがなす角度α4が、男性用の場合には、69.0〜79.0度(好適には、74.0度)となり、女性用の場合には、68.0〜78.0度(好適には、73.0度)となるようにする。
例えば、図10の合成画像において、内反小趾が発生しておらず、内反小趾の領域において、足の輪郭Uが木型の輪郭Wよりも突出していない場合には、中間位置E1から中心線ZT1に対して角度α4が上記の角度となるように直線ZT2を描き、該直線ZT2と木型の輪郭Wとの接点を中間位置E2’’として、中間位置E1と中間位置E2’’を通るループ状の曲線を曲線LP’(つまり、補正木型1105の状態における周囲長)とする。
また、図10の合成画像において、外反母趾が発生しておらず、外反母趾の領域において、足の輪郭Uが木型の輪郭Wよりも突出していない場合には、中間位置E2から中心線ZT1に対して角度α4が上記の角度となるように直線ZT2を描き、該直線ZT2と木型の輪郭Wとの接点を中間位置E1’’として、中間位置E1’’と中間位置E2を通るループ状の曲線を曲線LP’(つまり、補正木型1105の状態における周囲長)とする。
なお、この場合も、補正木型1105における中間位置E1’’、E2’’の決め方としては、補正木型1105の表面において、補正木型1105の平面視における木型1100の輪郭(外側の輪郭)に対応する曲線(つまり、水平方向の曲線)上の位置において中間位置E1’’、E2’’に対応する位置を中間位置E1’’、E2’’とする。
ここで、図13の模式図によると、交点Aと交点c間の長さと交点Bと交点c間の長さをそれぞれ長さL3とした場合に、式(5)が成り立つ。
すると、式(5)を変形することにより、長さL3は、式(6)で表わすことができる。
また、交点Aと交点d間の長さと交点Bと交点d間の長さをそれぞれ長さL4とした場合に、式(7)が成り立つ。
すると、式(7)を変形することにより、長さL4は、式(8)で表わすことができる。
すると、貼付け部材2000と貼付け部材2100が貼り付けられている場合に、1つの貼付け部材について、貼付け部材が貼り付けられている場合には、貼り付けられていない場合と比べると、2(L3−L4)の長さ分だけ長くなる。この2(L3−L4)を長さLDとすると、LDは、式(9)に示される。
よって、貼り付けられた各貼付け部材についての各LDを算出し、算出されたLDの和が、ループ状の曲線LP’の長さとループ状の曲線LPの長さの差となる。つまり、貼付け部材が外反母趾側と内反小趾の両側に貼り付けられている場合には、外反母趾側の貼付け部材についての長さLDと内反小趾側の貼付け部材についての長さLDを算出し、2つのLDの和がループ状の曲線LP’の長さとループ状の曲線LPの長さの差となる。なお、貼付け部材が外反母趾側と内反小趾側の一方のみの場合には、該貼付け部材について長さLDを算出し、算出されたLDが、ループ状の曲線LP’の長さとループ状の曲線LPの長さの差となる。
そして、貼付け部材が2つの場合のLDの和と、貼付け部材が1つの場合のLDをともに長さMDとすると、木型1100の周囲長(つまり、曲線LPの長さ)に長さMDを加算した周囲長を算出し、補正木型1105の状態における周囲長(つまり、曲線LP’の長さ)が、該算出した周囲長(木型1100の周囲長(つまり、曲線LPの長さ)よりも長さMD分だけ長くなる長さ)となるように、貼付け部材の表面を削り加工する(このように削り加工するのが厚み調整工程となる)。つまり、木型1100の周囲長(つまり、曲線LPの長さ)に長さMDを加算した周囲長を算出し(これが算出された周囲長となる)、補正木型1105の状態における周囲長が算出された周囲長となるようにする。削り加工に際しては、貼付け部材の表面を均等に削るようにする(つまり、削る厚みを貼付け部材の表面全体に均等となるようにする)。また、2つの貼付け部材(つまり、左右に2つの貼付け部材)が貼り付けられている場合には、2つの貼付け部材について同じ程度に(つまり、左右均等に)削る。つまり、一方の貼付け部材について表面を削り加工したら、他方の貼付け部材についても表面を削り加工し、一方の貼付け部材の削り量と他方の貼付け部材の削り量を同一(略同一としてもよい)とする。
削り加工は、例えば、グラインダーを用いるが、例えば、グラインダーでの削り時間を2つの貼付け部材で同じとすることにより、削り量を同一とする。
なお、外反母趾側の領域と内反小趾側の領域に貼付け部材を貼り付ける場合には、左右均等に削ることから、算出した貼付け部材の厚みよりも左右で同じ厚み分の長さだけ厚い貼付け部材を作成して、木型1100に貼り付けるのが好ましい。例えば、外反母趾側の貼付け部材の厚みの算出値がL1(G)で、内反小趾側の貼付け部材の厚みの算出値がL1(N)とした場合で、加算する厚みをmとした場合には、外反母趾側の貼付け部材は、L1(G)+mの厚みとし、内反小趾側の貼付け部材は、L1(N)+mの厚みとするのが好ましい。なお、1つの貼付け部材において、図14に示すように、左右方向と前後方向に略中央が最も厚く、両端に向けてなだらかに傾斜して薄くなる形状の場合のように1つの貼付け部材において厚みが異なる場合には、最も厚い箇所の厚みを算出された厚みよりも厚くし、左右の両端及び前後の両端にむけてなだらかに傾斜して形状とする。
なお、外反母趾側の貼付け部材と内反小趾側の貼付け部材をそれぞれ削り加工して、それぞれの貼付け部材の厚みが算出された厚みと異なる場合でも、周囲長が算出された周囲長になっていれば、靴の内側の面における該周囲長に沿った長さは確保できるので、特に支障はないといえる。
また、図13を簡略化して考えて、交点Aから交点dを経て交点Bに至る屈曲した直線を1つの直線とみなし(つまり、交点dと交点eとが一致する)、長さL2を0と考えることにより(つまり、底辺の長さがMで、高さがL1で、2つの斜辺の長さがL3の二等辺三角形に簡略化する)、以下のように計算式を簡略化してもよい。
すなわち、交点Aと交点c間の長さと交点Bと交点c間の長さをそれぞれ長さL3とした場合に、式(10)が成り立つ。
また、交点Aと交点d間の長さと交点Bと交点d間の長さをそれぞれ長さL4とした場合に(ただし、交点dは交点eと一致する)、式(11)が成り立つ。
よって、ループ状の曲線LP’の長さとループ状の曲線LPの長さの差を長さLDとすると、長さLD(=2(L3−L4))は、式(12)に示されるので、貼付け部材が2つの場合のLDの和と、貼付け部材が1つの場合のLDをともに長さMDとすると、木型1100の周囲長(つまり、曲線LPの長さ)に長さMDを加算した周囲長を算出し、補正木型1105の状態における周囲長(つまり、曲線LP’の長さ)が、該算出した周囲長(木型1100の周囲長(つまり、曲線LPの長さ)よりも長さMD分だけ長くなる長さ)となるように、貼付け部材の表面を削り加工する(このように削り加工するのが厚み調整工程となる)。なお、式(9)の場合と同様に、貼付け部材の表面を均等に削るようにする。
このように、式(12)により長さLDを算出することにより、式(9)の場合に比べて容易に木型1100の周囲長に長さMDを加算した周囲長を算出することができる。
また、底辺の長さがMで、高さがL1で、2つの斜辺の長さがL3の二等辺三角形と簡略化する上記の考えをさらに簡略化して、該二等辺三角形における2つの斜辺を所定の長さに細かく分割し、分割された各斜辺が、底辺と平行な方向の成分と底辺と直角の方向の成分からなると考えると、長さL3は、M/2+L1と考えることができ、ループ状の曲線LP’の長さとループ状の曲線LPの長さの差を長さLDとすると、長さLDは、LD=2×L1で表現できるので、貼付け部材が2つの場合のLDの和と、貼付け部材が1つの場合のLDをともに長さMDとすると、木型1100の周囲長(つまり、曲線LPの長さ)に長さMDを加算した周囲長を算出し、補正木型1105の状態における周囲長(つまり、曲線LP’の長さ)が、該算出した周囲長(すなわち、木型1100の周囲長(つまり、曲線LPの長さ)よりも長さMD分だけ長くなる長さ)となるように、貼付け部材の表面を削り加工するようにしてもよい(このように削り加工するのが厚み調整工程となる)。なお、式(9)、式(12)の場合と同様に、貼付け部材の表面を均等に削るようにする。このように、長さL3をM/2+L1と考えることにより、式(9)や式(12)を用いる場合に比べて、より容易に木型1100の周囲長に長さMDを加算した周囲長を算出することができる。
実際の周囲長の測定に際しては、貼付け部材2000、2100を貼り付ける前の木型1100において、木型1100の上面における曲線LPに沿った位置に帯状のテープTPを貼り付けておくことにより(図15参照)、木型1100の周囲長や補正木型1105の周囲長の測定が容易となる。すなわち、テープTPに沿ってメジャーを配置して、テープTPに沿ったループ状の曲線(つまり、曲線LP、LP’に沿った曲線)をメジャーで測定すればよいので、測定が容易となる。
テープTPの貼り方の具体例としては、木型と同一縮尺の合成画像(図10参照)を用意し、該合成画像の上に木型を配置して、木型の側面における平面視において木型の輪郭をなす位置において、交点Aと交点Bの中間位置E1、E2を特定し(例えば、交点Aと交点Bに対応する位置に筆記具等により印を付け、交点Aに対応する印と交点Bに対応する印の中間位置E1、E2とする)、平面視において、中間位置E1、E2を結ぶ直線に沿ってテープTPを貼り付ける(つまり、テープTPが中間位置E1、E2を結ぶ直線上に配置されるようにする)。なお、外反母趾と内反小趾の一方がなく、中間位置E1と中間位置E2の一方しかない場合には、上記と同様に、図10に示す合成画像において、かかとの基端UBと第2趾の先端を結ぶ直線である中心線ZT1を描き、この中心線ZT1に対して、中間位置(つまり、中間位置E1又はE2)から直線ZT2を描いて、木型の輪郭Wとの接点を他方の中間位置として、平面視において、2つの中間位置を結ぶ直線に沿ってテープTPを貼り付ける。なお、直線ZT2の中心線ZT1に対する角度としては、中心線ZT1のつま先側の方向と直線ZT2の足の内側の方向とがなす角度α4が、男性用の場合には、69.0〜79.0度(好適には、74.0度)となり、女性用の場合には、68.0〜78.0度(好適には、73.0度)となるようにする。
なお、曲線LP、LP’に沿った曲線をメジャーで測定する際には、平面視においては、メジャーはテープTPに沿って略直線状に配置されるが、木型1100、補正木型1105の底面側においてもメジャーは直線状に配置される。
なお、上記の各厚み調整工程において、補正木型1105の状態における周囲長の測定や木型1100の周囲長の測定に際しては、図4、図5に示す足サイズ測定具を用いてもよく、その場合には、足囲測定部40(140)(図4、図5参照)を用いて、補正木型1105の状態における周囲長の測定や木型1100の周囲長の測定する。
測定に際しては、図4、図5に示す足型表示部10(110)に補正木型1105や木型1100を配置して、足囲測定部40(140)における一対の開口部にメジャー部230〜250を挿通して測定するが、複数対の開口部のそれぞれについてメジャー部を挿通しても、測定しようとするループ状の曲線LPやループ状の曲線LP’と一致しない場合には、曲線LP(曲線LP’としてもよい)に最も近似する一対の開口部を選択して周囲長を測定する。
なお、上記の説明、特に、図6〜図12、図15〜図17は、右足についてのものであるが、左足の場合でも同様であり、図6〜図12、図15〜図17は、図が左右対称となる以外は同様である。
なお、上記ステップS3においては、図11、図12に示す方法(これを「第1の測定方法」とする)で外反母趾角、内反小趾角を測定するとしたが、図11、図12に示す方法は、ヒール高が低い場合(例えば、女性用の靴と男性用の靴のいずれの場合も、ヒール高が3cm未満の場合)の靴について適用されるが、女性用の靴で、ヒール高がやや高い場合や、ヒール高が高い場合には、以下のようにして、外反母趾角と内反小趾角を測定する。つまり、ヒール高が高くなると、足のかかと側がつま先側に比べて高くなるので、その分、つま先側が靴の内側の面に強く押されて、外反母趾や内反小趾による突出度合いが大きくなるので、貼付け部材の厚みも厚くする必要がある。
すなわち、上記ステップS3における説明と同様に、足の平面画像を得るとともに、木型の平面画像を得る。足の平面画像を得るには、図6に示すように、足1000を上方から(つまり、図6の矢印の方向から)撮影して平面画像を取得する。つまり、カメラの光軸は、足の載置面Gに対して鉛直方向として、足1000を真上から撮った画像を得る。足の平面画像の例としては、図18に示す画像1000Gとする。
同様に、木型の平面画像についても、図19に示すように、木型1100を上方から(つまり、図19の矢印の方向から)撮影して平面画像を取得する。この場合も、カメラの光軸は、木型の載置面Gに対して鉛直方向として、木型1100を真上から撮った画像を得る。なお、図19は、ヒールが高い靴の例を示すものである。
なお、ヒールが高い靴を履いた状態では、足のかかと側がつま先側に対して上方に浮くことから、足の側面視は図6に示す状態とは異なるが、その分、後述するように、図21や図22に示すように、貼付け部材の厚みが厚くなるように、外反母趾角や内反小趾角の測定の仕方を工夫している。
次に、足の平面画像と木型の平面画像を同じ縮尺で重ね合わせた合成画像を得る。例えば、足の平面画像の上に木型の平面画像を重ねるとともに、木型の平面画像を半透明化させることにより、図20に示すような合成画像を得て、木型の輪郭と足の輪郭の両方を視認することができるようにする。なお、木型の平面画像の上に足の平面画像を重ねるとともに、足の平面画像を半透明化させることにより合成画像を得るようにしてもよい。
なお、合成画像を得る際には、外反母趾及び内反小趾の木型の表面からの突出高さを正確に得るために、足の平面画像と木型の平面画像の縮尺を同じとする。
また、足の平面画像と木型の平面画像の相対的な位置関係としては、木型により製造された靴を履いた際の足の位置に相当する位置とし、具体的には、足の画像1000Gの輪郭Uと木型の画像1100Gの輪郭Wがなるべく一致する位置(一致度が高い位置)とし、例えば、以下の条件の少なくとも1つを満たすようにする。つまり、「足の画像1000Gの輪郭Uにおける外側の輪郭UOと、木型の画像1100Gの輪郭Wにおける外側の輪郭WOとが平行(略平行としてもよい)となるようにする)(第4条件)。」、「『母趾(親指)と小趾(小指)が木型の輪郭Wから突出しない(つまり、母趾の輪郭と小趾の輪郭が輪郭Wの内側又は輪郭Wの線上にある)。』又は『母趾の内側の一部と小趾の外側の一部が木型の輪郭Wよりも外側にあるとともに、母趾1001の付け根位置の内側の端部1001Pと小趾1005の付け根位置の外側の端部1001Qとが輪郭Wよりも外側には位置しない(端部1001Pと端部1005Qとが、輪郭Wの内側又は輪郭Wの線上にある)。』(第5条件)」の少なくともいずれかを満たすようにする。
ここで、第5条件は、上記第3条件と同じであり、また、第4条件は、上記第1条件と近似しているが、足の平面画像において、靴を履いた状態において足が斜め後方に向けて上側に傾斜する領域では、撮影により得た足の平面画像と木型の平面画像とは、高さ方向における傾斜が異なるため、足における輪郭UOと木型における輪郭WOとがなるべく平行となるようにする。
なお、ヒールが高くなることにより、その分木型の前後方向の長さは短くなり、合成画像を作成した際には、図20に示すように、足のかかと側が木型のかかと側の端部よりも後方に突出してしまうので、「輪郭Uの踵側の端部と輪郭Wの踵側の端部とを一致させる。」という条件は適用されない。
また、輪郭Uと輪郭Wの一致度としては、上記のように、「測定長さの最小和による方法」を用いてもよいが、足の平面画像において、靴を履いた状態において足が斜め後方に向けて上側に傾斜する領域では、撮影により得た足の平面画像と木型の平面画像とは、高さ方向における傾斜が異なるため、一致度の判定から除外し、具体的には、靴を履いた状態において足が斜め後方に向けて上側に傾斜する領域における前端位置Hよりも後方の領域については、足長方向と直角の方向の直線における輪郭Uと輪郭W間の長さを測定しないようにするのが好ましい。また、そのように一致度の判定から除外する場合には、測定するサンプル数が少なくなるので、上記第5条件を満たすことを前提として、上記の「測定長さの最小和による一致度判定方法」により一致度をを算出するのが好ましい。
以上のようにして、合成画像を作成したら、合成画像における外反母趾の領域から足の外反母趾角と木型の外反母趾角を測定し、また、合成画像における内反小趾の領域から足の内反小趾角と木型の内反小趾角を測定する。なお、以下では、ヒール高がやや高い場合とヒール高が高い場合について外反母趾角と内反小趾角の測定方法について説明する。
まず、ヒール高がやや高い場合(例えば、ヒール高が3cm以上6cm未満の場合)の測定方法(これを「第2の測定方法」とする)について説明する。図21に示すように、合成画像の外反母趾の領域においては、足の輪郭Uが木型の輪郭Wよりも外側に突出し、足の輪郭Uと木型の輪郭Wとは交点Aと交点Bとで交わっている。
図21において、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、「外反母趾又は内反小趾である足疾患(具体的には、外反母趾である足疾患)による突出部の平面視における輪郭」となるとともに、交点Aと交点Bは、木型Wの輪郭よりも突出した足疾患の突出部の輪郭の基端となり、外反母趾による突出部は、外反母趾により突出した部分であり、該突出部の表面は足の表面に沿ってある面積を有していて(つまり、突出部の外周はループ状を呈する)、具体的には、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲を有する足の表面に沿ったある面積を有する領域であり、外反母趾による突出部の平面視における領域は、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲と木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲により囲まれた領域である。また、木型の表面領域において外反母趾による突出部に対応した領域(該突出部の表面領域が位置する領域)が「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域」であり、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲を有する木型の表面に沿ったある面積を有する領域が「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域」となる。つまり、該突出部対応領域の平面視における領域は、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲と交点Aと交点Bとを結ぶ直線により囲まれた領域であり、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、突出部対応領域の平面視における輪郭を示す。
ここで、足の輪郭Uにおいては、木型に対して最も突出した点である突出点fを介した両側の傾斜辺に、直線状又は略直線状の特定部U1、U2が存在するので、この特定部U1に沿って特定部U1に重なった直線P1を描くとともに、特定部U2に沿って特定部U2に重なった直線P2を描く。なお、この特定部U1は、図42に示す足の骨格の第1中足骨6101の外側の輪郭における第1基節骨6201側の部分に沿った線6101Sが表れたものといえ、特定部U2は、図42に示す第1基節骨6201の外側の輪郭における第1中足骨6101側の部分に沿った線6201Sが表れたものといえる。直線P1を描く際に、特定部U1が直線状でない場合には、特定部U1に最も近似する直線を描き、例えば、特定部U1と一致度が最も高い直線とする。例えば、一致度が最も高い直線を得るには、特定部U1の一方の端部から他方の端部までの複数の点(例えば、所定間隔の点)から直線までの長さ(該直線への垂線の長さ)の和が最も小さい直線とする。直線P2を描く方法は、直線P1と同様であり、特定部U2が直線状でない場合には、特定部U2に最も近似する直線を描き、例えば、特定部U2と一致度が最も高い直線とする。なお、突出点fは、例えば、交点Aと交点Bとを結ぶ直線までの距離が最も長い点とする。直線P1と直線P2の一方が、「突出部の平面視における輪郭において突出部の頂点を介した両側の輪郭のうち一方の輪郭の傾きに対応した第1直線」に当たり、直線P1と直線P2の他方が、「突出部の平面視における輪郭において突出部の頂点を介した両側の輪郭のうち他方の輪郭の傾きに対応した第2直線」に当たる。
直線P1と直線P2は、交点c’で交わり、直線P1と輪郭Wは交点A’で交わり、直線P2と輪郭Wは交点B’で交わり、これにより、交点c’と交点A’と交点B’を頂点とする三角形T1が形成され、該三角形T1は、直線Rと直線P1と直線P2により形成される。また、直線P1と直線P2とがなす角度(鋭角)を角度αとする。この角度αが、足疾患角度、特に、足の外反母趾角であり、図21に示す合成画像において、この角度αを測定する。交点A’と交点B’における一方が第1交点となり、他方が第2交点となる。図21において、交点A’が、足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端(交点A)の近傍(「かかと側の基端(交点A)の近傍位置」、「かかと側の基端位置(交点A)の近傍位置」としてもよい)となり、交点B’が、足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端(交点B)の近傍(「つま先側の基端(交点B)の近傍位置」、「つま先側の基端位置(交点B)の近傍位置」としてもよい)となる。
また、輪郭Wの交点A’における接線Q1と輪郭Wの交点B’における接線Q2とを合成画像に描き、接線Q1と接線Q2の交点を交点d’とする。接線Q1と接線Q2は直線である。接線Q1と接線Q2の一方が第3直線で他方が第4直線となり、交点A’を第1交点とした場合には、接線Q1が第3直線となり、接線Q2が第4直線となり、一方、交点B’を第1交点とした場合には、接線Q1が第4直線となり、接線Q2が第3直線となる。これにより、交点d’と交点A’と交点B’を頂点とする三角形T2が形成され、該三角形T2は、直線Rと接線Q1と接線Q2により形成される。また、接線Q1と接線Q2とがなす角度(鋭角)を角度βとする。この角度βが、製靴型角度、特に、木型の外反母趾角であり、図21に示す合成画像において、この角度βを測定する。また、図21において、交点A’と交点B’間の長さ(=M)を測定しておく。この長さMは、「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端の近傍(つまり、交点B’)とかかと側の基端の近傍(つまり、交点A’)の間の長さ」となる。
測定した角度α、角度β、交点A’と交点B’間の長さに従い、ステップS4において、貼付け部材の厚みを算出する。
なお、足の内反小趾角と木型の内反小趾角を測定は、上記の外反母趾の場合と同様であり、図22に示すように、足の輪郭Uにおいては、木型に対して最も突出した点である突出点fを介した両側の傾斜辺に、直線状又は略直線状の特定部U1、U2が存在するので、この特定部U1に沿って特定部U1に重なった直線P1を描くとともに、特定部U2に沿って特定部U2に重なった直線P2を描く。なお、この特定部U1は、図42に示す足の骨格の第5基節骨6202の外側の輪郭における第5中足骨6102側の部分に沿った線6202Sが表れたものといえ、特定部U2は、図42に示す第5中足骨6102の外側の輪郭における第5基節骨6202側の部分に沿った線6102Sが表れたものといえる。直線P1を描く際に、特定部U1が直線状でない場合には、特定部U1に最も近似する直線を描き、例えば、特定部U1と一致度が最も高い直線とする。例えば、一致度が最も高い直線を得るには、特定部U1の一方の端部から他方の端部までの複数の点(例えば、所定間隔の点)から直線までの長さ(該直線への垂線の長さ)の和が最も小さい直線とする。直線P2を描く方法は、直線P1と同様であり、特定部U2が直線状でない場合には、特定部U2に最も近似する直線を描き、例えば、特定部U2と一致度が最も高い直線とする。なお、突出点fは、例えば、交点Aと交点Bとを結ぶ直線までの距離が最も長い点とする。直線P1と直線P2の一方が、「突出部の平面視における輪郭において突出部の頂点を介した両側の輪郭のうち一方の輪郭の傾きに対応した第1直線」に当たり、直線P1と直線P2の他方が、「突出部の平面視における輪郭において突出部の頂点を介した両側の輪郭のうち他方の輪郭の傾きに対応した第2直線」に当たる。
図22において、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、「外反母趾又は内反小趾である足疾患(具体的には、内反小趾である足疾患)による突出部の平面視における輪郭」となるとともに、交点Aと交点Bは、木型Wの輪郭よりも突出した足疾患の突出部の輪郭の基端となり、内反小趾による突出部は、内反小趾により突出した部分であり、該突出部の表面は足の表面に沿ってある面積を有していて(つまり、突出部の外周はループ状を呈する)、具体的には、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲を有する足の表面に沿ったある面積を有する領域であり、内反小趾による突出部の平面視における領域は、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲と木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲により囲まれた領域である。また、木型の表面領域において内反小趾による突出部に対応した領域(該突出部の表面領域が位置する領域)が「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域」であり、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲を有する木型の表面に沿ったある面積を有する領域が「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域」となる。つまり、該突出部対応領域の平面視における領域は、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲と交点Aと交点Bとを結ぶ直線により囲まれた領域であり、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、突出部対応領域の平面視における輪郭を示す。
直線P1と直線P2は、交点c’で交わり、直線P1と輪郭Wは交点A’で交わり、直線P2と輪郭Wは交点B’で交わり、これにより、交点c’と交点A’と交点B’を頂点とする三角形T1が形成され、該三角形T1は、直線Rと直線P1と直線P2により形成される。また、直線P1と直線P2とがなす角度(鋭角)を角度αとする。この角度αが、足疾患角度、特に、足の内反小趾角であり、図22に示す合成画像において、この角度αを測定する。交点A’と交点B’における一方が第1交点となり、他方が第2交点となる。図22において、交点A’が、足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端(交点A)の近傍(つま先側の近傍(つま先側の基端位置(交点A)の近傍位置)としてもよい)となり、交点B’が、足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端(交点B)の近傍(かかと側の近傍(かかと側の基端位置(交点B)の近傍位置)としてもよい)となる。つまり、外反母趾と内反小趾の場合の両方を考慮すると、足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端の近傍が交点A’と交点B’の一方となり、足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端の近傍が交点A’と交点B’の他方となる。
また、輪郭Wの交点A’における接線Q1と輪郭Wの交点B’における接線Q2とを合成画像に描き、接線Q1と接線Q2の交点を交点d’とする。これにより、交点d’と交点A’と交点B’を頂点とする三角形T2が形成され、該三角形T2は、直線Rと接線Q1と接線Q2により形成される。また、接線Q1と接線Q2とがなす角度(鋭角)を角度βとする。この角度βが、製靴型角度、特に、木型の内反小趾角であり、図22に示す合成画像において、この角度βを測定する。また、図22において、交点A’と交点B’間の長さ(=M)を測定しておく。この長さMは、「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端の近傍(つまり、交点A’)とかかと側の基端の近傍(つまり、交点B’)の間の長さ」となる。
測定した角度α、角度β、交点A’と交点B’間の長さに従い、ステップS4において、貼付け部材の厚みを算出する。
上記のように、ヒール高がやや高い場合の外反母趾角と内反小趾角の測定によれば、交点c’の位置が図11、図12の場合と比べて木型の輪郭から離れた位置となり、図11、図12の場合と比べて、貼付け部材の厚みが厚く算出される。
次に、ヒール高が高い場合(例えば、ヒール高が6cm以上の場合)の測定方法(これを「第3の測定方法」とする)について説明する。図23に示すように、合成画像の外反母趾の領域においては、足の輪郭Uが木型の輪郭Wよりも外側に突出し、足の輪郭Uと木型の輪郭Wとは交点Aと交点Bとで交わっている。
図23において、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、「外反母趾又は内反小趾である足疾患(具体的には、外反母趾である足疾患)による突出部の平面視における輪郭」となるとともに、交点Aと交点Bは、木型Wの輪郭よりも突出した足疾患の突出部の輪郭の基端となり、外反母趾による突出部は、外反母趾により突出した部分であり、該突出部の表面は足の表面に沿ってある面積を有していて(つまり、突出部の外周はループ状を呈する)、具体的には、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲を有する足の表面に沿ったある面積を有する領域であり、外反母趾による突出部の平面視における領域は、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲と木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲により囲まれた領域である。また、木型の表面領域において外反母趾による突出部に対応した領域(該突出部の表面領域が位置する領域)が「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域」であり、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲を有する木型の表面に沿ったある面積を有する領域が「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域」となる。つまり、該突出部対応領域の平面視における領域は、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲と交点Aと交点Bとを結ぶ直線により囲まれた領域であり、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、突出部対応領域の平面視における輪郭を示す。
ここで、足の輪郭Uにおいては、木型に対して最も突出した点である突出点fを介した両側の傾斜辺に、直線状又は略直線状の特定部U1、U2が存在するので、この特定部U1に沿って特定部U1に重なった直線P1’を描くとともに、特定部U2に沿って特定部U2に重なった直線P2’を描き、さらに、直線P1’と平行な直線で、交点Aを通る直線P1を描くとともに、直線P2’と平行な直線で、交点Bを通る直線P2を描く。直線P1’を描く際に、特定部U1が直線状でない場合には、特定部U1に最も近似する直線を描き、例えば、特定部U1と一致度が最も高い直線とし、また、直線P2’を描く際に、特定部U2が直線状でない場合には、特定部U2に最も近似する直線を描き、例えば、特定部U2と一致度が最も高い直線とする。特定部U1、U2と一致度が最も高い直線を得る方法は、上記のヒール高がやや高い場合における説明と同様である。なお、突出点fは、例えば、交点Aと交点Bとを結ぶ直線までの距離が最も長い点とする。直線P1と直線P2の一方が、「突出部の平面視における輪郭において突出部の頂点を介した両側の輪郭のうち一方の輪郭の傾きに対応した第1直線」に当たり、直線P1と直線P2の他方が、「突出部の平面視における輪郭において突出部の頂点を介した両側の輪郭のうち他方の輪郭の傾きに対応した第2直線」に当たる。
直線P1と直線P2は、交点c’で交わり、これにより、交点c’と交点Aと交点Bを頂点とする三角形T1が形成され、該三角形T1は、直線Rと直線P1と直線P2により形成される。また、直線P1と直線P2とがなす角度(鋭角)を角度αとする。この角度αが、足疾患角度、特に、足の外反母趾角であり、図23に示す合成画像において、この角度αを測定する。交点Aと交点Bにおける一方が第1交点となり、他方が第2交点となる。
また、輪郭Wの交点Aにおける接線Q1と輪郭Wの交点Bにおける接線Q2とを合成画像に描き、接線Q1と接線Q2の交点を交点d’とする。接線Q1と接線Q2は直線である。接線Q1と接線Q2は直線である。接線Q1と接線Q2の一方が第3直線で他方が第4直線となり、交点Aを第1交点とした場合には、接線Q1が第3直線となり、接線Q2が第4直線となり、一方、交点Bを第1交点とした場合には、接線Q1が第4直線となり、接線Q2が第3直線となる。これにより、交点d’と交点Aと交点Bを頂点とする三角形T2が形成され、該三角形T2は、直線Rと接線Q1と接線Q2により形成される。また、接線Q1と接線Q2とがなす角度(鋭角)を角度βとする。この角度βが、製靴型角度、特に、木型の外反母趾角であり、図23に示す合成画像において、この角度βを測定する。また、図23において、交点Aと交点B間の長さ(=M)を測定しておく。この長さMは、「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端(つまり、交点B)とかかと側の基端(つまり、交点A)の間の長さ」となる。つまり、交点Bが、足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端となり、交点Aが、足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端となる。
測定した角度α、角度β、交点Aと交点B間の長さに従い、ステップS4において、貼付け部材の厚みを算出する。
なお、足の内反小趾角と木型の内反小趾角を測定は、上記の外反母趾の場合と同様であり、図24に示すように、足の輪郭Uにおいては、木型に対して最も突出した点である突出点fを介した両側の傾斜辺に、直線状又は略直線状の特定部U1、U2が存在するので、この特定部U1に沿って特定部U1に重なった直線P1’を描くとともに、特定部U2に沿って特定部U2に重なった直線P2’を描き、さらに、直線P1’と平行な直線で、交点Aを通る直線P1を描くとともに、直線P2’と平行な直線で、交点Bを通る直線P2を描く。直線P1’を描く際に、特定部U1が直線状でない場合には、特定部U1に最も近似する直線を描き、例えば、特定部U1と一致度が最も高い直線とし、また、直線P2’を描く際に、特定部U2が直線状でない場合には、特定部U2に最も近似する直線を描き、例えば、特定部U2と一致度が最も高い直線とする。特定部U1、U2と一致度が最も高い直線を得る方法は、上記のヒール高がやや高い場合における説明と同様である。なお、突出点fは、例えば、交点Aと交点Bとを結ぶ直線までの距離が最も長い点とする。直線P1と直線P2の一方が、「突出部の平面視における輪郭において突出部の頂点を介した両側の輪郭のうち一方の輪郭の傾きに対応した第1直線」に当たり、直線P1と直線P2の他方が、「突出部の平面視における輪郭において突出部の頂点を介した両側の輪郭のうち他方の輪郭の傾きに対応した第2直線」に当たる。
図24において、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、「外反母趾又は内反小趾である足疾患(具体的には、内反小趾である足疾患)による突出部の平面視における輪郭」となるとともに、交点Aと交点Bは、木型Wの輪郭よりも突出した足疾患の突出部の輪郭の基端となり、内反小趾による突出部は、内反小趾により突出した部分であり、該突出部の表面は足の表面に沿ってある面積を有していて(つまり、突出部の外周はループ状を呈する)、具体的には、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲を有する足の表面に沿ったある面積を有する領域であり、内反小趾による突出部の平面視における領域は、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲と木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲により囲まれた領域である。また、木型の表面領域において内反小趾による突出部に対応した領域(該突出部の表面領域が位置する領域)が「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域」であり、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲を有する木型の表面に沿ったある面積を有する領域が「足疾患による突出部に対応した領域である突出部対応領域」となる。つまり、該突出部対応領域の平面視における領域は、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲と交点Aと交点Bとを結ぶ直線により囲まれた領域であり、木型の輪郭Wにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、突出部対応領域の平面視における輪郭を示す。
直線P1と直線P2は、交点c’で交わり、これにより、交点c’と交点Aと交点Bを頂点とする三角形T1が形成され、該三角形T1は、直線Rと直線P1と直線P2により形成される。また、直線P1と直線P2とがなす角度(鋭角)を角度αとする。この角度αが、足疾患角度、特に、足の内反小趾角であり、図24に示す合成画像において、この角度αを測定する。交点Aと交点Bにおける一方が第1交点となり、他方が第2交点となる。
また、輪郭Wの交点Aにおける接線Q1と輪郭Wの交点Bにおける接線Q2とを合成画像に描き、接線Q1と接線Q2の交点を交点d’とする。接線Q1と接線Q2は直線である。接線Q1と接線Q2は直線である。接線Q1と接線Q2の一方が第3直線で他方が第4直線となり、交点Aを第1交点とした場合には、接線Q1が第3直線となり、接線Q2が第4直線となり、一方、交点Bを第1交点とした場合には、接線Q1が第4直線となり、接線Q2が第3直線となる。これにより、交点d’と交点Aと交点Bを頂点とする三角形T2が形成され、該三角形T2は、直線Rと接線Q1と接線Q2により形成される。また、接線Q1と接線Q2とがなす角度(鋭角)を角度βとする。この角度βが、製靴型角度、特に、木型の内反小趾角であり、図24に示す合成画像において、この角度βを測定する。また、図24において、交点Aと交点B間の長さ(=M)を測定しておく。この長さMは、「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端(つまり、交点A)とかかと側の基端(つまり、交点B)の間の長さ」となる。つまり、交点Aが、足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端となり、交点Bが、足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端となる。
測定した角度α、角度β、交点Aと交点B間の長さに従い、ステップS4において、貼付け部材の厚みを算出する。
上記のように、ヒール高が高い場合の外反母趾角と内反小趾角の測定によれば、交点c’の位置がヒール高がやや高い場合に比べて木型の輪郭から離れた位置となり、ヒール高がやや高い場合に比べて、貼付け部材の厚みが厚く算出される。
ヒール高がやや高い場合やヒール高が高い場合にも、ステップS4において、貼付け部材の厚みを算出したら、ヒール高が低い場合と同様に、補正製靴型作成工程において補正木型を作成する(S5)。つまり、算出した厚みに応じた貼付け部材を作成し(S11、貼付け部材作成工程)、作成した貼付け部材を貼り付ける(S12、貼付け工程)か、あるいは、算出した厚みよりも大きい厚みの貼付け部材を作成して、貼付け部材を木型に貼り付け(S21、貼付け工程)、貼付け部材を木型に貼り付けた状態で、貼付け部材の厚みを算出した厚みとなるように調整する(S22、厚み調整工程)。
貼付け部材の作成に際しては、例えば、図14に示す形状の貼付け部材とし、貼付け部材の左右方向の長さは、交点Aと交点B間の長さとするが、上記と同様に、交点Aと交点B間の長さよりも長くしてもよい。なお、ヒール高がやや高い場合には、測定した角度α、角度β、交点A’と交点B’間の長さに従い貼付け部材の厚みを算出しているが、図21、図22に示すように、足の輪郭Uは、交点Aから交点Bの範囲で、木型Wの輪郭に対して突出しているので、貼付け部材の左右方向の長さは、少なくとも交点Aと交点B間の長さとする。
また、貼付け部材の貼付けに際しては、上記ステップS12と同様に木型への貼付け部材の貼付けを行なう。つまり、外反母趾用の貼付け部材を木型における外反母趾の位置に相当する領域(木型の内側の側面において、母趾の付け根に対応する位置を含む領域)に貼り付け、内反小趾用の貼付け部材を木型における内反小趾の位置に相当する領域(木型の外側の側面において、小趾の付け根に対応する位置を含む領域)に貼り付け、具体的には、外反母趾用の貼付け部材2000と内反小趾用の貼付け部材2100のいずれにもおいても、木型における交点Aと交点B間の中間位置(水平方向において交点Aと交点Bから等距離の位置)(外反母趾においては中間位置E1、内反小趾においては中間位置E2)に相当する位置に貼付け部材の最大厚み箇所が位置するように貼り付ける。なお、中間位置E1、E2に相当する位置に最大厚み箇所が位置するとは、平面視において、最大厚み箇所が、中間位置E1、E2から交点Aと交点Bとを結ぶ直線に対して直角方向にある場合であるが、平面視において、中間位置E1と中間位置E2とを結ぶ直線の延長線上に最大厚み箇所がある場合としてもよい。
なお、ヒール高がやや高い場合には、測定した角度α、角度β、交点A’と交点B’間の長さに従い貼付け部材の厚みを算出しているので、厳密には、木型における交点A’と交点B’間の中間位置(交点e)に相当する位置に貼付け部材の最大厚み箇所が位置するように貼り付けるようにする。なお、交点A’と交点B’間の中間位置と交点Aと交点Bの中間位置はほぼ同じ位置であるので、ヒール高がやや高い場合にも、木型における交点Aと交点B間の中間位置に相当する位置に貼付け部材の最大厚み箇所が位置するように貼り付けるようにしてもよい。
また、厚み調整工程においては、上記のヒール高が低い場合と同様に、貼付け部材が2つの場合のLDの和と、貼付け部材が1つの場合のLDをともに長さMDとすると、木型1100の周囲長(つまり、曲線LPの長さ)に長さMDを加算した周囲長を算出し、補正木型1105の状態における周囲長(つまり、曲線LP’の長さ)が、該算出した周囲長(木型1100の周囲長(つまり、曲線LPの長さ)よりも長さMD分だけ長くなる長さ)となるように、貼付け部材の表面を削り加工する。なお、LDについては、上記のヒール高が低い場合と同様に、式(9)により算出してもよいし、式(12)により算出してもよいし、LD=2×L1により算出してもよい。なお、ヒール高がやや高い場合には、式(9)や式(12)におけるMは、交点A’と交点B’間の長さとする。
図19、図20に示す木型1100に貼付け部材2000、2100を貼り付けてなる補正木型1105は、図25〜図27に示すようになる。
なお、ヒール高が低い場合(3cm未満の場合)は第1の測定方法とし、ヒール高がやや高い場合(3cm以上6cm未満の場合)は第2の測定方法とし、ヒール高が高い場合(6cm以上の場合)は第3の測定方法とするとしたが、靴のつま先側の形(トゥデザイン)やヒールの太さや外反母趾の重篤度により、第1の測定方法と第2の測定方法と第3の測定方法とを柔軟に使い分けるのが好ましい。例えば、つま先側の形が平面視で四角形状になると、足がつま先側に移動しやすいので、その分、ヒール高が高いとみなして(例えば、ヒール高が3cm未満の場合でも第2の測定方法を用いるようにする。)、貼付け部材の厚みが厚くなるようにする。また、ヒールの太さが細い場合には、履いた状態の靴が不安定となって足がつま先側に移動しやすいので、その分、ヒール高が高いとみなして(例えば、ヒール高が5cmの場合でも第3の測定方法を用いるようにする。)、貼付け部材の厚みが厚くなるようにする。また、外反母趾の重篤度が大きい場合には、母趾や小趾が曲がりやすくなるので、その分、ヒール高が高いとみなして、貼付け部材の厚みが厚くなるようにする。
なお、図21〜図24において、木型に対して最も突出した点である突出点が交点Aと交点Bの間の中間位置(又は交点A’と交点B’の中間位置)よりも交点A側又は交点B側にずれている場合には、最大厚み箇所を該中間位置に対してずれ量に対応する長さ分だけずらして貼り付けてもよい。
また、式(4)におけるMの値は、上記第1の測定方法と、第3の測定方法においては、交点Aと交点B間の長さとし、上記第2の測定方法においては、交点A’と交点B’間の長さとしているが、実際に靴を履いた状態では、外反母趾や内反小趾の箇所が特につま先側から押されて(ヒールの高さが高いとつま先側から押される力が強くなる)、突出点fの高さが高くなり(つまり、例えば、突出点fから交点Aと交点Bとを結ぶ直線までの距離が長くなる)、その場合には、外反母趾や内反小趾の箇所が靴の内面に接触して押されることがないようにするには、貼付け部材の厚みをより厚く算出するのが賢明であるので、式(4)におけるMの値を以下のように長くして計算することが考えられる。
すなわち、図28に示すように、足の輪郭U上の突出点fからかかと側の位置で、母趾1001の付け根位置の内側の端部(平面視における母趾1001の両側の付け根位置(つまり、端部1001Pと端部1001Q)における外反母趾に近い側の付け根位置)1001Pと突出点f間の距離と同一の距離の位置を特定し、その位置を位置C(第2位置)とする。つまり、端部1001Pを位置D(第1位置)とすると、突出点fと位置D間の距離と突出点fと位置C間の距離は、同一となっている。そして、この位置Cと位置D間の長さ(位置Cと位置D間の直線R’の長さ)を式(4)におけるMとして、式(4)を計算する。つまり、外反母趾の突出部(足疾患による突出部)の範囲を上記第1の測定方法〜第3の測定方法よりも広めにとらえて、「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端とかかと側の基端の間の長さ」を位置Cと位置D間の長さとするのである。つまり、位置Cが「足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端」となり、位置Dが「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端」となる。
なお、図28において、足の輪郭Uにおける位置Cから位置Dまでの範囲が、「外反母趾又は内反小趾である足疾患(具体的には、外反母趾である足疾患)による突出部の平面視における輪郭」となり、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、「足疾患の突出部において製靴型の輪郭よりも突出した部分の輪郭」となり、交点Aと交点Bが、該「製靴型の輪郭よりも突出した部分の輪郭の基端」となる。
以上のように、Mの値を交点Aと交点B間の長さ(又は交点A’と交点B’間の長さ)よりも長くすることにより、算出される長さL1が長くなり、貼付け部材の厚みをより厚くすることができる。なお、交点Bは、母趾1001の付け根位置の内側の端部1001Pよりもかかと側に位置するので、交点Aと交点B間の長さ及び交点A’と交点B’間の長さが、位置Cと位置D間の長さよりも長くなることはなく、位置Cと位置D間の長さをMとした場合に、交点Aと交点B間の長さ(又は交点A’と交点B’間の長さ)をMとした場合よりも、算出されるL1の長さが短くなることはない。
また、内反小趾についても同様に、足の輪郭U上の突出点fからかかと側の位置で、小趾の付け根位置の外側の端部(平面視における小趾の両側の付け根位置(つまり、端部1005Pと端部1005Q)における内反小趾に近い側の付け根位置)1005Qと突出点f間の距離と同一の距離の位置を特定し、その位置を位置D(第4位置)とする(図12参照)。つまり、内反小趾の付け根位置の外側の端部1005Qを位置C(第3位置)とすると(図12参照)、突出点fと位置D間の距離と突出点fと位置C間の距離は、同一となっている。そして、この位置Cと位置D間の長さ(位置Cと位置D間の直線の長さ)を式(4)におけるMとして、式(4)を計算する。つまり、内反小趾の突出部(足疾患による突出部)の範囲を上記第1の測定方法〜第3の測定方法よりも広めにとらえて、「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端とかかと側の基端の間の長さ」を位置Cと位置D間の長さとするのである。つまり、位置Dが「足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端」となり、位置Cが「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端」となる。
なお、図12の場合には、足の輪郭Uにおける位置Cから位置Dまでの範囲が、「外反母趾又は内反小趾である足疾患(具体的には、内反小趾である足疾患)による突出部の平面視における輪郭」となり、足の輪郭Uにおける交点Aから交点Bまでの範囲が、「足疾患の突出部において製靴型の輪郭よりも突出した部分の輪郭」となり、交点Aと交点Bが、該「製靴型の輪郭よりも突出した部分の輪郭の基端」となる。
以上のように、Mの値を交点Aと交点B間の長さ(又は交点A’と交点B’間の長さ)よりも長くすることにより、算出される長さL1が長くなり、貼付け部材の厚みをより厚くすることができる。なお、図12における交点Aは、小趾の付け根位置の外側の端部よりもかかと側に位置するので、交点Aと交点B間の長さ及び交点A’と交点B’間の長さが、位置Cと位置D間の長さよりも長くなることはなく、位置Cと位置D間の長さをMとした場合に、交点Aと交点B間の長さ(又は交点A’と交点B’間の長さ)をMとした場合よりも、算出されるL1の長さが短くなることはない。
なお、位置Cと位置D間の長さ(位置Cと位置D間の直線R’の長さ)をMとする場合には、式(9)や式(12)におけるMも位置Cと位置D間の長さとする。また、図28において、交点Aを足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端とし、交点Bを足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端ととらえた場合には、位置Cを「足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端の近傍(「かかと側の基端の近傍位置」、「かかと側の基端位置の近傍位置」としてもよい)とし、位置Dを「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端の近傍(「つま先側の基端の近傍位置」、「つま先側の基端位置の近傍位置」としてもよい)としてもよい。同様に、図12において、交点Aを足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端とし、交点Bを足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端ととらえた場合には、位置Cを「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端の近傍(「つま先側の基端の近傍位置」、「つま先側の基端位置の近傍位置」としてもよい)とし、位置Dを「足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端の近傍(「かかと側の基端の近傍位置」、「かかと側の基端位置の近傍位置」としてもよい)としてもよい。
また、位置Cと位置D間の長さについてのデータを複数のサンプルから取得しておき、取得した複数のデータから所定の固定値(例えば、複数のデータの平均値)を得ておき、その値をMの値として使用してもよい。その値(つまり、Mの値)としては、例えば、外反母趾については、50〜65mmにおける固定値、内反小趾については、30〜45mmにおける固定値とすることが考えられる。50〜65mmにおける固定値としては、50〜65mmの範囲における任意の値でよいが、例えば、50mm、55mm、60mm、65mmにおけるいずれかが考えられる。また、30〜45mmにおける固定値としては、30〜45mmにおける任意の値でよいが、例えば、30mm、35mm、40mm、45mmにおけるいずれかが考えられる。このように固定値を用いることにより、貼付け部材の厚みを算出する際に、いちいちMの値を測定する必要がないので、貼付け部材の厚みの算出が容易となる。なお、外反母趾についての上記50〜65mmの数値や内反小趾についての30〜45mmの数値は、多くのサンプルを取得することにより得られた数値であり、これらの数値を適用して貼付け部材の厚みを算出することにより、適切な厚みとすることができ、外反母趾や内反小趾の痛みを緩和するとともに、靴の内側の面の足の外反母趾の部位や内反小趾の部位への締付け具合が必要以上に緩くなることがない。
なお、上記の説明、特に、図18〜図28は、右足についてのものであるが、左足の場合でも同様であり、図18〜図28は、図が左右対称となる以外は同様である。
以上のようにして、貼付け部材を木型に貼り付けたら、貼付け部材を貼り付けた木型(補正木型)を用いて靴を製造する(図1のS6)。補正木型1005を用いた靴の製法は、従来と同様である。
例えば、セメント式製法により製造された靴の例は、図29、図30に示すように構成され、図29に示す靴3005は、アッパー(甲部、甲革としてもよい)3010と、底部3020と、ヒール3040とを有している。
ここで、アッパー3010は、底部3020から上方に形成された部分であり、ユーザーの足の周囲(つま先やかかとを含む周囲)やユーザーの足の甲の上側をカバーするものであり、表革3012と裏革3014とを有している。裏革3014は、表革3012の内側に設けられ、表革3012の内側に部分的に接着することにより表革3012の内側の面に設けられている。アッパー3010におけるつま先側の表革3012と裏革3014の間には先芯が設けられ、アッパー3010におけるかかと側の表革3012と裏革3014の間には月形芯が設けられている。
また、底部3020は、表底(本底としてもよい)3022と、表底3022の上側に設けられた中物3024と、中物3024の上側に設けられた中底3026と、中底3026の上側に設けられた中敷き3028とを有している。表底3022と中物3024と中底3026とで底部本体が構成され、底部本体は、少なくとも表底3022と中底3026により構成される。なお、図30、図32においては、中物3024が設けられているが、底部3020において、中物3024が設けられていない構成としてもよい。中敷き3028は、厚みが均等(略均等としてもよい)のシート状を呈している。
底部3020における互いに隣接する部材は接着により固定されている。つまり、表底3022は中物3024と接着され、中物3024は中底3026と接着され、中敷き3028は中底3026と接着されている。また、アッパー3010の下端領域は、中底3026及び表底3022と接着されている。つまり、裏革3014の下端領域の表革3012とは反対側の面が中底3026に接着され、表革3012の下端領域の裏革3014とは反対側の面が表底2022と接着されている。中底3026の外形は、補正木型1105の底面の輪郭と略同一に形成され、中敷き3028の外形は、中底3026の外形と略同一に形成されている。
また、図30〜図33に示すように、底部3020のかかと側の端部領域には、傾斜調整部材4100が設けられ、具体的には、傾斜調整部材4100は、中底3026と中敷き3028の間の位置に設けられていて、傾斜調整部材4100は、中底3026と中敷き3028に接着剤により接着されている。
ここで、傾斜調整部材4100について説明すると、傾斜調整部材4100は、略板状の部材であり、板状部4110と、板状部4110から上面から上方に突出した突状部4120とを有していて、全体に皮革(天然皮革又は合成皮革)、EVA、合成ゴム、ウレタン、エラストマのいずれかにより一体に形成されている(他の材料を用いてもよい)。なお、皮革の場合には、グラインダー等で削って(つまり、削り出しにより)傾斜調整部材を成形し、EVA、合成ゴム、ウレタン、エラストマについては、削り出しによる方法や溶融した材料を型に流し込む方法により傾斜調整部材を成形できる。
ここで、板状部4110は、板状を呈し、平面視において、略長方形状の角部を略円弧状に面取りした形状を有し、具体的には、直線状の前辺部4100aと、前辺部4100aの左側面側の端部から連設された略円弧状の角辺部4100bと、前辺部4100aの右側面側の端部から連設された略円弧状の角辺部4100cと、角辺部4100bの前辺部4100aとは反対側の端部から連設された直線状の側辺部4100dと、角辺部4100cの前辺部4100aとは反対側の端部から連設された直線状の側辺部4100eと、側辺部4100dの後端及び側辺部4100eの後端から連設された円弧状(略円弧状としてもよい)の後辺部4100fとを有している。
ここで、側辺部4100dと側辺部4100eは、後側にいくに従い、側辺部4100dと側辺部4100e間の長さが長くなるように前後方向の中心線4100Jに対して傾斜して形成されている。
また、板状部4110における後側の領域には、円形の開口部4112が設けられている。この開口部4112は、傾斜調整部材4100の表側から裏側に貫通して形成されている。開口部4112の円弧形状と後辺部4100fの円弧形状は、同心円状(略同心円状としてもよい)に形成されている。
また、突状部4120は、板状部4110の前端部から後端部までの途中位置に設けられ、突状部4120の前端4120aは、前辺部4100aとは間隔を介して設けられ、突状部4120の後端4120bは、開口部4112の前端位置となるように形成されている。また、突状部4120は、左右方向には、側辺部4100dから側辺部4100eまで形成されている。この突状部4120は、左右方向に帯状に形成されているが、前後方向の中央位置(略中央位置としてもよい)が最も厚く形成され(つまり、前後方向の中央位置(略中央位置としてもよい)に頂点が設けられている)、該頂点から前側に向けて下方となるように傾斜するとともに、該頂点から後側に向けて下方となるように傾斜している。つまり、突状部4120は、前側には、前側に向けて下方となるように傾斜する傾斜面4120−1を有するとともに、後側には、後側に向けて下方となるように傾斜する傾斜面4120−2を有している。つまり、突状部4120の上面は、上方に突出した略くの字形状(略への字形状、略山型形状としてもよい)を呈している。すなわち、突状部4120は、開口部4112のつま先側に開口部4112に隣接して設けられ、突状部4120には、突状部4120のかかと側の端部から傾斜面4120−2が設けられ、該傾斜面4120−2は、つま先側に向けて上方に傾斜している。
なお、傾斜調整部材4100は、全体に、該中心線4100Jを介して左右対称に形成されている。この傾斜調整部材4100においては、開口部4112と傾斜面4120−2がかかとが前側に移動するのを防止する機能を有している。
ここで、図29〜図33に示される靴3005の製造方法は、図34に示すとおりである。すなわち、まず、アッパー2010を構成する各パーツを縫製して製甲する(図344のS31)。
次に、アッパー2010の吊り込みを行なう(図34のS32、吊り込み工程)。すなわち、アッパー3010のかかと部に月形芯を入れ、つま先部に先芯を入れて加熱・冷却してアッパーを保型し、一方、図35に示すように、中底3026を補正木型の底面に釘等により仮止めし、補正木型にアッパー3010を被せて、アッパー3010のかかと部を補正木型に釘3100で固定した状態で、アッパー3010の吊り込みを行なう。この吊り込みに際して、アッパー3010は、中底3026側に引っ張られるので、引っ張られることにより延ばして形成されている。
次に、底部、特に、表底3022の接着を行なう(図34のS33、第1取付け工程)。すなわち、裏革3014を中底3026に接着するとともに、中物3024を中底3026に接着し、表底3022を表革3012及び中物3024に接着する。なお、中物3024を中底3026に接着する際には、中底3026を補正木型に仮止めしている釘を外す。
次に、補正木型を靴(つまり、製造途中の靴)から抜き、傾斜調整部材4100を中底3026に接着する(図34のS34、傾斜調整部材接着工程)。なお、傾斜調整部材4100の取付け位置は、靴を履いた際に、足のかかとの底部1002D(かかとの下端(踵骨隆起外側突起の下端の下方位置)1002Cを含む領域)が開口部4112の位置となるようにする。つまり、かかと1002の底部1002Dの少なくとも一部が開口部4112の上側に位置するさせることにより、開口部4112の前側の端部や突状部4120によりかかと1002が前側に移動するのを防止することができ、ヒールの高い靴であっても、足が前側に移動すること(いわゆる、足の前滑り)を防止することができる。
つまり、中敷き3028における開口部4112の上側の領域3028−1が開口部4112内に入り込むことにより、該領域3028−1が凹状に窪んだ状態となり、また、中敷き3028における突状部4120の上側の領域3028−2が突状部4120の上面に該上面に沿って設けられることにより、該領域3028−2は、上方に突出した略くの字形状に湾曲し、これにより、突状部4120の傾斜面4120−2の上側の領域3028−2aは、中底3026の上面に対して、つま先側にいくほど上側となる(中底3026の上面からの距離が長くなる)ように傾斜し、結果として、中敷き3028の領域(第1領域)3028−1と領域(第2領域)3028−2aの水平方向に対する傾斜角度α1は、中底3026における領域3028−1、3028−2aの下側の領域の水平方向に対する傾斜角度β1よりも小さくなり(つまり、第1領域と第2領域の傾斜が緩やかになる)、これらの領域(領域3028−1、3028−2a)にはかかと1002が配置されるため(例えば、かかとの底部1002Dが領域3028−1に接し、足のかかとの前側の領域1002E(かかとにおける部分でかかとの底部1002Dよりもつま先側の領域)が領域3028−2a(及び領域3028−1)に接する)、かかと1002が前側に移動するのを防止することができ、これにより、足のつま先側が靴の内側の面に強く押されるのを防止でき、外反母趾や内反小趾の症状が悪化するのを防止して、外反母趾の部位や内反小趾の部位の痛みを緩和することができる。さらに、傾斜調整部材4100における突状部4120が形成された領域の厚み4120Lを大きくすることにより、傾斜角度α1を小さくできるので、ヒール高が高い場合には、厚み4120Lを大きくすることにより、その分傾斜角度α1を小さくして、かかと1002が前側に移動するのを防止することができる。
次に、中敷き3028を中底3026及び傾斜調整部材4100に接着し、アッパー2010の表革2012にクリームを塗る等して仕上げを行なう(図34のS35、中敷き接着工程)。以上のようにして、靴2005が製造される。
上記ステップS34と上記ステップS35において中敷き3028を接着する工程とで、第2取付け工程が構成される。
なお、上記の説明では、セメント式製法により製造された靴を挙げたが、他の製法により製造された靴であってもよい。例えば、マッケイ式製法や、グッドイヤー・ウエルト式製法や、カリフォルニア式製法や、ステッチダウン式製法や、バルカナイズ式製法や、インジェクション式製法等が挙げられる。これらの製法も、吊り込みの工程を有している。
すなわち、マッケイ式製法は、アッパーに靴型を入れて吊り込みを行い、その後、吊り込んだアッパーに中底と表底を貼り合わせ、その後、靴型を抜いて、アッパーと中底と表底を縫い合わせる方法である。
また、グッドイヤー・ウエルト式製法は、中底を靴型に仮止めしてアッパーを吊り込み、その後、中底に設けられたリブにアッパーとウエルトをすくい縫いで縫い付け、その後、表底を被せた後に、ウエルトと表底を出縫機でロックステッチする方法である。
また、カリフォルニア式製法は、アッパーの周辺領域と中底とプラットフォーム巻き革とを縫い合わせた状態で靴型を挿入し、中底の靴型とは反対側にクッションを介して設けられたプラットフォームにプラットフォーム巻き革を巻き付けて吊り込みを行い、その後、プラットフォーム巻き革に接着剤を塗布して表底を圧着する方法である。
また、ステッチダウン式製法は、アッパーの周辺領域を外側に吊り込み、アッパーの周辺領域と表底の周辺部とを出縫機でロックステッチ縫いするものである。
また、バルカナイズ式製法とは、アッパーの周辺領域を中底に吊り込んだ後に、加硫圧着機に装着し、未加硫のゴムを加圧圧着機に入れて加熱加圧成形しながら底部を加硫圧着する方法である。
また、インジェクション式製法とは、アッパーの周辺領域を中底に吊り込んだ後に、射出成形機の金型に装着して、合成樹脂を射出して底部を形成するものである。
なお、傾斜調整部材の他の例を説明する。図36に示す傾斜調整部材4200は、全体に板状を呈し、略円弧状を呈する辺部4200aと、辺部4200aと相対して設けられた略円弧状の辺部4200bと、辺部4200aの一方の端部(左側の端部)と辺部4200bの一方の端部(左側の端部)間に設けられ、略円弧状を呈する辺部4200cと、辺部4200aの他方の端部(右側の端部)と辺部4200bの他方の端部(右側の端部)間に設けられ、略円弧状を呈する辺部4200dとにより囲まれた形状を呈している。辺部4200aの辺部4200aに沿った長さは、辺部4200bの辺部4200bに沿った長さよりも長く形成され、辺部4200aと辺部4200bとはほぼ同心円状に形成され、辺部4200aの径(略円弧状における半径)は辺部4200bの径(略円弧状における半径)よりも大きく形成されている。
つまり、傾斜調整部材4200は、左右両側が円弧状に形成され、つま先側とかかと側とが互いに平行な直線状の辺部を有する帯状形状の左右両側をかかと側に湾曲させた形状を呈しているといえ、傾斜調整部材4200のかかと側の辺部4200bは、平面視において、つま先側に窪んだ形状を呈している。
傾斜調整部材4200の取付け位置は、靴を履いた際に、足のかかとの底部1002D(かかとの下端(踵骨隆起外側突起の下端の下方位置)1002Cを含む領域)が辺部4200bのややかかと側となるようにし、足のかかとの前側領域1002E(かかとにおける部分でかかとの底部よりもつま先側の部分)が辺部4200bの位置となるようにする。
これにより、中敷き3028における傾斜調整部材4200の上側の領域が傾斜調整部材4200の上面に該上面に沿って設けられることにより、中敷き3028における傾斜調整部材4200の上側の領域におけるかかと側の領域(第2領域)(傾斜調整部材4200におけるかかと側領域の上側の領域)と、第2領域とかかと側に隣接した領域(第1領域)は、中底3026の上面に対して、つま先側にいくほど上側となるように傾斜するので、第1領域及び第2領域の傾斜角度は緩やかになり、これらの領域(第1領域、第2領域)にはかかと1002が配置されるため(例えば、かかとの底部1002Dが第1領域に接し、足のかかとの前側の領域1002E(かかとにおける部分でかかとの底部1002Dよりもつま先側の領域)が第2領域(及び第1領域に接する)、足のかかとが前側に移動するのを防止することができる。これにより、足のつま先側が靴の内側の面に強く押されるのを防止でき、外反母趾や内反小趾の症状が悪化するのを防止して、外反母趾の部位や内反小趾の部位の痛みを緩和することができる。なお、図36に示す構成において、第2領域が、中敷きにおいて、靴を履いた状態でかかとにおける部分でかかとの底部よりもつま先側の部分の下側の領域に当たり、第1領域が、靴を履いた状態でかかとにおける底部の下側の領域となる。
また、図37に示す傾斜調整部材4300は、全体に板状を呈するとともに環状を呈している。すなわち、傾斜調整部材4300は、略楕円形状の辺部4300aと、辺部4300aの内側に設けられた略楕円状の辺部4300bとを有し、内側には、平面視で略楕円形状の開口部4302が設けられている。辺部4300aは、中敷き3028の形状に合わせて、かかと側に向けて細長となるように形成されている。
傾斜調整部材4300の取付け位置は、靴を履いた際に、足のかかとの底部1002D(かかとの下端(踵骨隆起外側突起の下端の下方位置)1002Cを含む領域)が開口部4310の位置となり、かかとの前側領域1002E(かかとにおける部分でかかとの底部よりもつま先側の部分)が領域4302(後述)の位置(特に、領域4302のかかと側の領域)となるようにする。つまり、かかとの下端が開口部4310の中央に位置するさせる。
これにより、中敷き3028における開口部4310の上側の領域が開口部4310内に入り込むことにより、該領域が凹状に窪んだ状態となり、また、中敷き3028における傾斜調整部材4300のつま先側の領域4302(開口部4310よりもつま先側の領域(開口部4310に対してつま先側に隣接した領域))の上側の領域が該領域4302の上面に該上面に沿って設けられることにより、中敷き3028の開口部4310内の領域におけるつま先側の領域(第1領域)と中敷き3028の領域4302の上側の領域(特に、かかと側の領域)(第2領域)は、中底3026の上面に対して、つま先側にいくほど上側となるように傾斜するので、第1領域及び第2領域の傾斜角度は緩やかになり、これらの領域(第1領域、第2領域)にはかかと1002が配置されるため(例えば、かかとの底部1002Dが第1領域に接し、足のかかとの前側の領域1002E(かかとにおける部分でかかとの底部1002Dよりもつま先側の領域)が第2領域(及び第1領域に接する)、足のかかとが前側に移動するのを防止することができる。これにより、足のつま先側が靴の内側の面に強く押されるのを防止でき、外反母趾や内反小趾の症状が悪化するのを防止して、外反母趾の部位や内反小趾の部位の痛みを緩和することができる。なお、図37に示す構成において、第2領域が、中敷きにおいて、靴を履いた状態でかかとにおける部分でかかとの底部よりもつま先側の部分の下側の領域に当たり、第1領域が、靴を履いた状態でかかとにおける底部の下側の領域となる。
また、図38に示す傾斜調整部材4400は、全体に板状を呈するとともに四角形状を呈している。すなわち、傾斜調整部材4400は、直線状の辺部4400aと、辺部4400aと平行な(略平行としてもよい)辺部4400bと、辺部4400a及び辺部4400bと略直角な略円弧状の辺部4400cと、辺部4400a及び辺部4400bに対して傾斜した略直線状の辺部4400dとを有し、辺部4400aがつま先側で、辺部4400bがかかと側で、辺部4400cが足の内側で、辺部4400dが足の外側となる。
辺部4400cは、靴の内側の面における内側(図38では左側)の形状に沿って形成され、外側(図38では、右側)に小さく膨出した略円弧状を呈している。また、辺部4400dは、靴の内側の面における外側(図38では右側)の形状に沿って形成され、かかと側にいくほど内側となるように傾斜し、これにより、傾斜調整部材4400の左右方向の長さは、かかと側にいくほど小さくなるように形成されている。
傾斜調整部材4400の取付け位置は、靴を履いた際に、足のかかとの底部1002D(かかとの下端(踵骨隆起外側突起の下端の下方位置)1002Cを含む領域)が辺部4400bのややかかと側となるようにし、足のかかとの前側領域1002E(かかとにおける部分でかかとの底部よりもつま先側の部分)が辺部4400bの位置となるようにする。
これにより、中敷き3028における傾斜調整部材4400の上側の領域が傾斜調整部材4400の上面に該上面に沿って設けられることにより、中敷き3028における傾斜調整部材4400の上側の領域におけるかかと側の領域(第2領域)(傾斜調整部材4400におけるかかと側領域の上側の領域)と、第2領域とかかと側に隣接した領域(第1領域)は、中底3026の上面に対して、つま先側にいくほど上側となるように傾斜するので、傾斜調整部材4400におけるかかと側領域の傾斜角度は緩やかになり、これらの領域(第1領域、第2領域)にはかかと1002が配置されるため(例えば、かかとの底部1002Dが第1領域に接し、足のかかとの前側の領域1002E(かかとにおける部分でかかとの底部1002Dよりもつま先側の領域)が第2領域(及び第1領域に接する)、足のかかとが前側に移動しにくくすることができる。これにより、足のつま先側が靴の内側の面に強く押されるのを防止することができ、外反母趾や内反小趾の症状が悪化するのを防止して、外反母趾の部位や内反小趾の部位の痛みを緩和することができる。なお、図38に示す構成において、第2領域が、中敷きにおいて、靴を履いた状態でかかとにおける部分でかかとの底部よりもつま先側の部分の下側の領域に当たり、第1領域が、靴を履いた状態でかかとにおける底部の下側の領域となる。
なお、上記の説明では、傾斜調整部材を設けることにより、足のかかとを前側に移動しにくくするとしたが、図39、図40に示す構成の中敷き5001を中底3026の上に取り付けてもよい。この中敷き5001を中底3026の上面に取り付ける工程が第2取付け工程となる。
すなわち、中敷き5001は、後側構成部5100と、後側構成部5100のつま先側(前側)の端部から連設された前側構成部5200とを有している。
ここで、後側構成部5100は、平板状部5102と、平板状部5102の前側から連設された厚み変化部5104とを有している。
平板状部5102は、平板状(略平板状としてもよい)を呈し、外側の輪郭は、靴のアッパーの中底3026に沿った内周に沿った形状を呈し、その後端部分は、略円弧状を呈している。
また、厚み変化部5104は、前後方向に厚みが変化し、厚み変化部5104の後端(かかと側の端部)から前側に行くに従い厚みが徐々に厚くなり、厚み変化部5104の最大厚み位置5104Mからは前側に向けて厚みが徐々に小さくなる。この厚み変化部5104は、中敷き5001における厚み変化部5104以外の領域の厚みに比べて、厚み変化部5104の前端と後端以外は、厚く形成されている。
厚み変化部5104は、最大厚み位置5104Mに沿った境界を介して厚み変化部後側部5104−1と厚み変化部前側部5104−2とに区画され、厚み変化部5104の後端から最大厚み位置5104Mまでの領域である厚み変化部後側部5104−1においては、厚み変化部後側部5104−1の上面である傾斜面5106−1は、厚み変化部後側部5104−1の底面に対して、つま先側にいくほど上側となる(つまり、厚み変化部後側部5104−1の底面からの距離が長くなる)ように傾斜し、一方、最大厚み位置5104Mよりもつま先側である厚み変化部前側部5104−2においては、厚み変化部前側部5104−2の上面である傾斜面5106−2は、厚み変化部前側部5104−2の底面に対して、つま先側にいくほど下側となる(つまり、厚み変化部前側部5104−2の底面からの距離が短くなる)ように傾斜している。この厚み変化部5104においては、前後方向には厚みが変化するが、左右方向には同一の厚みとなっている。靴を履いた状態では、足のかかとの前側の領域1002Eは、傾斜面5106−1上にある。
これにより、厚み変化部後側部5104−1における傾斜面5106−1の水平方向に対する傾斜角度α11は、中底3026の開口部5110のつま先側の端部位置の水平方向に対する傾斜角度β11よりも小さくなる。
また、後側構成部5100には、略円形の開口部5110が形成され、開口部5110のほとんどの領域は、平板状部5102に形成され、また、開口部5110のつま先側の端部領域は、厚み変化部5104に形成されている。なお、開口部5110の全ての領域が平板状部5102に形成されていてもよい。
この開口部5110の形成位置は、靴を履いた際に、足のかかとの底部1002D(かかとの下端(踵骨隆起外側突起の下端の下方位置)1002Cを含む領域)が開口部5110の位置となるようにする。つまり、かかと1002の底部1002Dの少なくとも一部が開口部5110の上側に位置するさせることにより、開口部5110の前側の端部や厚み変化部後側部5104−1によりかかと1002が前側に移動するのを防止することができ、これにより、ヒールの高い靴であっても、足が前側に移動すること(いわゆる、足の前滑り)を防止することができる。
また、前側構成部5200は、厚み変化部5104のつま先側の端部から連設された前側構成部後側部5202と、前側構成部後側部5202のつま先側の端部から連設された前側構成部前側部5204とを有している。
前側構成部後側部5202は、板状(略板状としてもよい)を呈し、つま先側にいくに従い上側となるように湾曲している。つまり、前側構成部後側部5202は、ヒールが高い靴における中底3026の上面の形状に合わせて、つま先側にいくに従い上側に湾曲して形成され、つま先側にいくほど水平方向に対する傾斜角度が小さくなるように形成されている。
また、前側構成部前側部5204は、板状(略板状としてもよい)を呈している。なお、前側構成部後側部5202から前側構成部前側部5204にかけて、内側の辺部に沿って上側に膨出した膨出部5300が形成され、この膨出部5300により、土踏まずを支持することができるようになっている。膨出部5300のほとんどの領域は、前側構成部後側部5202に形成され、また、膨出部5300のつま先側の端部領域は、前側構成部前側部5204に形成されている。なお、膨出部5300の全ての領域が、前側構成部後側部5202に形成されていてもよい。
中敷き5001の平面視における外側の輪郭(つまり、外形)は、中底3026の外形と略同一に形成されている。なお、中底3026の外形は、補正木型1105の底面の輪郭と略同一に形成されている。
なお、中敷き5001の中底3026への取付けに際しては、中底3026の上面に対して中敷き5001の下面を接着剤で固定する。つまり、中敷き5001の中底3026に接する領域に接着剤を塗布して、中底3026に固定する。
以上のように、開口部5110の前側の端部や厚み変化部後側部5104−1によりかかと1002が前側に移動するのを防止することができ、外反母趾や内反小趾の症状が悪化するのを防止して、外反母趾の部位や内反小趾の部位の痛みを緩和することができる。
なお、中敷き5001においては厚み変化部5104の厚みを調整することにより、厚み変化部後側部5104−1における傾斜面5106−1の水平方向に対する傾斜角度と中底3026の開口部5110のつま先側の端部位置の水平方向に対する傾斜角度との差を調整することができ、図41に示すように、図40に示す例が図41(b)に示されており、図41(a)のように、図41(b)の厚み変化部5104の厚み5104L(最大厚み位置5104Mの厚み)に比べて厚み変化部5104の厚み5104L(最大厚み位置5104Mの厚み)を大きくすると、厚み変化部後側部5104−1における傾斜面5106−1の水平方向に対する傾斜角度α21と中底3026の開口部5110のつま先側の端部位置の水平方向に対する傾斜角度β21の差を大きくできて、よりヒールの高さが高い靴に対応することができ、一方、図41(c)のように、図41(b)に比べて厚み変化部5104の厚み5104L(最大厚み位置5104Mの厚み)を小さくすると、厚み変化部後側部5104−1における傾斜面5106−1の水平方向に対する傾斜角度α31と中底3026の開口部5110のつま先側の端部位置の水平方向に対する傾斜角度β31の差を小さくできて、ヒールの高さが低い場合に対応することができる。
なお、上記の説明では、中底3026の上面に中敷き5001を取り付ける構成であるが、さらに、中敷き5001の上面に中敷き3028のようにシート状の中敷きを取り付けてもよい。このシート状の中敷きを取り付ける構成が第3取付け工程となる。シート状の中敷きとしては、均等(略均等としてもよい)な厚みを有する中敷き(つまり、平板状の中敷き)とする。また、該シート状の中敷きは、開口部5110を含む中敷き5001全体の領域を覆うものであり、該シート状の中敷きの取付けに際しては、中敷き5001の上面に対してシート状の中敷きの下面を接着剤で固定する。この場合でも、シート状の中敷きが中敷き5001の上面にあるものの、開口部5110の前側の端部や厚み変化部後側部5104−1によりかかとが前側に移動するのを防止することができ、外反母趾や内反小趾の症状が悪化するのを防止して、外反母趾の部位や内反小趾の部位の痛みを緩和することができる。
また、上記の説明では、中底3026の上面に中敷き5001を取り付け、さらに、中敷き5001の上面にシート状の中敷きを取り付けるとしたが、中敷き5001とシート状の中敷きの順序を逆にして、中底3026の上面にシート状の中敷きを取り付け(第2取付け工程)、さらにシート状の中敷きの上面に中敷き5001を取り付ける(第3取付け工程)構成としてもよい。中底3026の上面へのシート状の中敷きの取付けに際しては、中底3026の上面に対してシート状の中敷きの下面を接着剤で固定し、シート状の中敷きへの中敷き5001の取付けに際しては、シート状の中敷きの上面に対して中敷き5001を接着剤で固定する。この場合でも、開口部5110の前側の端部や厚み変化部後側部5104−1によりかかとが前側に移動するのを防止することができ、外反母趾や内反小趾の症状が悪化するのを防止して、外反母趾の部位や内反小趾の部位の痛みを緩和することができる。
なお、中敷き5001の素材としては、皮革(天然皮革又は合成皮革)、合成ゴム、ウレタン、EVA、エラストマ、布地等が考えられ、皮革の場合には、グラインダー等による削り出しにより全体に一体に形成する方法や、シート状の皮革で構成して、厚み変化部5104の部分についてはシート状の皮革を重ねて形成する方法が考えられ、合成ゴム、ウレタン、EVA、エラストマについては、削り出しによる方法や溶融した材料を型に流し込むことにより全体に一体に形成する方法が考えられる。また、布地については、皮革、合成ゴム、ウレタン、EVA、エラストマ等により芯材を形成し(中敷き5001よりも厚みの薄い芯材を形成する)、該芯材にシート状の布地を貼った構成とすることが考えられる。
なお、上記の説明、特に、図29、図31、図32、図35〜図40、図42は、右足についてのものであるが、左足の場合でも同様であり、図29、図31、図32、図35〜図40、図42は、図が左右対称となる以外は同様である。
以上のように、上記の貼付け部材を貼り付けた木型を用いて靴を製造することにより、足の外反母趾の部位や内反小趾の部位が靴の内側の面に押されるのを防止するとともに、傾斜調整部材により足のつま先側が靴の内側の面に強く押されるのを防止することにより、外反母趾の部位や内反小趾の部位の痛みを防止することができる。特に、上記のように、外反母趾用の貼付け部材については、足の外反母趾角と木型の外反母趾角を測定し、測定された2つの外反母趾角に従い貼付け部材の厚みを算出し、内反小趾用の貼付け部材については、足の内反小趾角と木型の内反小趾角を測定し、測定された2つの内反小趾角に従い貼付け部材の厚みを算出するので、外反母趾用の貼付け部材の厚みと内反小趾用の貼付け部材の厚みをそれぞれ算出することができ、患者が外反母趾と内反小趾の両方の疾患を有する場合でも、それぞれの貼付け部材の厚みを算出することができる。また、貼付け部材の厚みが適切に算出されるので、外反母趾の部位や内反小趾の部位の痛みを防止するとともに、靴の内側の面の足の外反母趾の部位や内反小趾の部位への締付け具合が必要以上に緩くなることがない。
また、足と木型の外反母趾や足と木型の内反小趾の測定の方法として、上記のように、第1の測定方法と第2の測定方法と第3の測定方法が設けられているので、ヒールの高さに応じて適した測定方法を用いることにより、貼付け部材の厚みを適切に算出することができ、特に、女性用の靴は、ヒールの高さがさまざまであるので、女性用の靴に適しているといえる。
なお、上記の説明において、「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端」を「足疾患による突出部の平面視におけるつま先側の基端位置」としてもよく、また、「足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端」を「足疾患による突出部の平面視におけるかかと側の基端位置」としてもよい。