JP6100063B2 - 熱可塑性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、成形品の表面における色むらの発生が抑制されて外観性に優れ、更に、光沢性及び耐衝撃性に優れた成形品を与える熱可塑性樹脂組成物に関する。また、本発明は、難燃剤を配合した場合に、優れた難燃性を有する熱可塑性樹脂組成物に関する。
近年における地球温暖化の問題、石油資源等の枯渇が危惧されるなか、植物由来の材料の利用が検討されている。これは、植物由来の材料を使用することにより、石油の使用量を抑えることができるとともに、その使用後に燃焼処理を行った場合、大気中の二酸化炭素(CO)の収支がほとんど変化しないというカーボンニュートラルの概念に基づいているためである。また、生物由来の有機資源であるバイオマスを利用したバイオマスプラスチックは、環境負荷をより低くすることができるため、特に注目されている。その中でも、燃焼時の燃焼熱量が低いこと、大量生産された場合のコスト等の観点からポリ乳酸系樹脂が広く使用されており、その応用が更に拡大されつつある。
ポリ乳酸系樹脂は、既存の石油系樹脂に比べて、機械的強度、耐久性、特に、耐衝撃性や耐湿熱性(耐加水分解性)に劣るという欠点を有することから、ポリ乳酸系樹脂を、各種樹脂製品の成形用材料、包装用材料、保護用材料等の形成に使用する場合には、他の熱可塑性樹脂と併用した組成物が用いられている。しかしながら、他の熱可塑性樹脂の中には、ポリ乳酸系樹脂と非相溶なものが多く、更に、適宜、選択された相溶化剤が配合されている。
相溶化剤を用いた組成物としては、例えば、特許文献1には、ポリ乳酸樹脂と、ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂と、(メタ)アクリル系樹脂とを含有する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、ポリ乳酸樹脂と、ポリカーボネート樹脂と、エポキシ変性熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、上記の組成物のいずれにおいても、成形品外観は十分とは言えなかった。例えば、特許文献1の組成物においては、成形品表面に色むらが発生し、特許文献2の組成物においては、成形品表面の光沢が十分ではない等、不具合があった。尚、成形品の表面における色むらは、着色剤を配合した場合に顕著となることが多く、特に、基部と、基部に形成された、リブ、ボス等の突起部とを有する成形品における、突起部の根元である基部の裏面側において見られる。
また、熱可塑性樹脂組成物を、自動車、電子機器、家電製品、建材等の樹脂部材、日用雑貨等において、発熱体又は発熱部材の近傍に配される樹脂部材、あるいは、太陽光等を受光する樹脂部材として使用する場合には、一般に耐衝撃性及び難燃性が要求される。ポリ乳酸系樹脂は、他の熱可塑性樹脂に比べて、耐衝撃性及び難燃性に劣るので、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性及び難燃性もまた、低下する傾向にある。
特許文献3には、ポリ乳酸樹脂と、ポリカーボネート樹脂と、アクリル樹脂またはスチレン系樹脂を含むグラフト体と、難燃剤とを含有する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、成形品の光沢は十分とは言えず、難燃性及び外観性のバランスが十分ではなかった。
以上に示したように、難燃剤と、ポリ乳酸系樹脂等の脂肪族ポリエステル樹脂とを含有する熱可塑性樹脂組成物は、難燃性、耐衝撃性及び成形外観性のバランスをとることは困難であった。
国際公開2006/97979 特開2006−28299号 特開2007−56247号
本発明は、成形品の表面における色むらの発生が抑制されて外観性に優れ、更に、光沢性及び耐衝撃性に優れた成形品を与える熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、更に難燃剤を含む場合に、優れた難燃性を与える熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、以下のとおりである。
1.(A)脂肪族ポリエステル樹脂と、(B)芳香族ポリカーボネート樹脂と、(C)エポキシ基を含まない、重量平均分子量が15万以上のアクリル系樹脂と、(D)エポキシ基を含む構造単位を有する樹脂と、(E)難燃剤と、(F)ドリップ防止剤と、を含有する熱可塑性樹脂組成物において、上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)及び上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、2250質量%及び5078質量%であり、上記アクリル系樹脂(C)の含有量は、上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)及び上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、1〜10質量部であり、上記樹脂(D)の含有量は、上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)及び上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、質量部であり、上記難燃剤(E)の含有量は、上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)及び上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、5〜35質量部であり、上記ドリップ防止剤(F)の含有量は、上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)及び上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、0.01〜3質量部であり、UL94試験法に準ずる難燃性が1.5mm条件でV−1又はV−0であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
2.上記エポキシ基を含む構造単位の含有割合が、上記樹脂(D)を構成する構造単位の全量に対して、0.5〜25質量%である上記1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
3.上記アクリル系樹脂(C)及び上記樹脂(D)の含有割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、20〜80質量%及び20〜80質量%である上記1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
4.上記難燃剤(E)が縮合型のリン酸エステル化合物である上記1乃至3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
5.上記ドリップ防止剤(F)がフッ素系樹脂である上記1乃至4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
6.上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)及び上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の含有割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、25〜35質量%及び65〜75質量%であり、UL94試験法に準ずる難燃性が1.5mm条件でV−0である上記1乃至5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
.上記1乃至のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、成形品の表面における色むらの発生が抑制され、光沢に優れた良好な外観性を有し、耐衝撃性に優れた成形品を得ることができる。成形品の表面における色むらは、着色剤を配合した場合に顕著となることが多いので、特に、基部と、基部に形成された、リブ、ボス等の突起部とを有する成形品(一体成形品)のように、複雑な形状を有する成形品において、均一な着色性及び光沢を得ることができる。そして、この熱可塑性樹脂組成物は、車両、船舶、電子機器、家電製品、建材等の部材や、日用雑貨、スポーツ用品、文具等の、耐衝撃性、成形外観性等の要求される成形品の形成に好適である。
また、脂肪族ポリエステル樹脂(A)用の原料として、植物由来樹脂を用いることができるので、得られる成形品は、環境負荷の低い樹脂成形品として好ましく用いられる。
実施例における外観性評価に用いた試験体を示す概略斜視図である。 実施例における外観性評価において、「△」の判定の例を示す概略斜視図である。 実施例における外観性評価において、「×」の判定の例を示す概略斜視図である。
以下、本発明を詳しく説明する。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を、「(共)重合体」は、単独重合体及び共重合体を意味する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)脂肪族ポリエステル樹脂(以下、「成分(A)」ともいう。)と、(B)芳香族ポリカーボネート樹脂(以下、「成分(B)」ともいう。)と、(C)エポキシ基を含まない、重量平均分子量が15万以上のアクリル系樹脂(以下、「成分(C)」ともいう。)、(D)エポキシ基を含む構造単位を有する樹脂(以下、「成分(D)」ともいう。)と、(E)難燃剤(以下、「成分(E)」ともいう。)と、(F)ドリップ防止剤とを含有する。
上記成分(A)は、脂肪族ポリエステル系樹脂であり、従来、公知の樹脂を用いることができる。成分(A)の具体例としては、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸・ヒドロキシ吉草酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート及びポリエチレンサクシネートが好ましく、ポリ乳酸系樹脂及びポリブチレンサクシネートがより好ましい。また、原料が植物由来であるポリ乳酸系樹脂が特に好ましい。
上記ポリ乳酸系樹脂は、主たる構造単位がL−乳酸単位及び/又はD−乳酸単位であるものであれば、特に限定されない。これらの乳酸単位の(合計)含有量は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、更に好ましくは99〜100モル%である。
尚、上記ポリ乳酸系樹脂が、他の構造単位を含む場合、その具体例としては、2つ以上のエステル結合形成可能な官能基を有するジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等に由来する構造単位等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール、ビスフェノールにエチレンオキシドが付加した化合物等の芳香族多価アルコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカルボン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルカプロン酸、2−ヒドロキシ−2−エチルカプロン酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−エチル酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシバレリン酸、5−ヒドロキシバレリン酸、2−ヒドロキシヘプタン酸、2−ヒドロキシ−2−エチルヘプタン酸、2−ヒドロキシオクタン酸、7−ヒドロキシヘプタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルオクタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸等が挙げられる。
また、ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
上記ポリ乳酸系樹脂の分子量及び分子量分布は、組成物が成形加工性を有するのであれば、特に限定されない。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の下限値は、好ましくは10,000であり、より好ましくは50,000、更に好ましくは100,000である。但し、上限値は、通常、400,000である。尚、上記Mwに相当するMFR(温度190℃、荷重10kg)の下限値は、好ましくは3g/10分、より好ましくは5g/10分、更に好ましくは7g/10分であり、上限値は、通常、100g/10分である。
本発明の組成物において、上記成分(A)は、1種単独で含まれていてよいし、2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。
上記成分(B)は、主鎖にカーボネート結合を有するポリカーボネート樹脂であれば、特に限定されず、芳香族ポリカーボネートでもよいし、脂肪族ポリカーボネートでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。本発明においては、耐衝撃性、耐熱性、難燃性等の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。尚、この成分(B)は、末端が、R−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。
上記芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを溶融によりエステル交換(エステル交換反応)して得られたもの、ホスゲンを用いた界面重縮合法により得られたもの、ピリジンとホスゲンとの反応生成物を用いたピリジン法により得られたもの等を用いることができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、分子内にヒドロキシル基を2つ有する化合物であればよく、ヒドロキノン、レゾルシノール等のジヒドロキシベンゼン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という。)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ヒドロキシ化合物のうち、2つのベンゼン環の間に炭化水素基を有する化合物が好ましい。尚、この化合物において、炭化水素基は、ハロゲン置換された炭化水素基であってもよい。また、ベンゼン環は、そのベンゼン環を構成する炭素原子に結合する水素原子がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。従って、上記化合物としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらのうち、ビスフェノールAが特に好ましい。
芳香族ポリカーボネートをエステル交換反応により得るために用いる炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記成分(B)の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは15,000〜40,000、より好ましくは17,000〜30,000、更に好ましくは18,000〜28,000、特に好ましくは18,000〜24,000である。この粘度平均分子量(Mv)が大きくなるほど、耐衝撃性が高くなる一方、流動性が十分ではなく、成形加工性に劣る傾向にある。尚、全体としての粘度平均分子量(Mv)が、上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量(Mv)を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物において、上記成分(B)は、1種単独で含まれていてよいし、2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。
次に、上記成分(C)は、エポキシ基を含まない、重量平均分子量が15万以上のアクリル系樹脂であり、上記成分(D)は、エポキシ基を有する構造単位を含有する樹脂である。本発明の組成物が、これらの成分(C)及び(D)を含有することにより、成分(A)及び(B)の相溶性を向上させ、色むらが抑制され、光沢を有する成形品を得ることができる。また、成分(D)を含有することにより、耐衝撃性及び難燃性を向上させることができる。
上記成分(C)は、エステル部が炭素原子数1〜4の炭化水素基である(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(c1)」という。)を含むことが好ましい。即ち、上記成分(C)は、この構造単位(c1)の1種又は2種以上からなる(共)重合体であってよいし、構造単位(c1)と、エステル部が炭素原子数5以上の炭化水素基である(メタ)アクリル酸エステル化合物又はその他の重合性不飽和化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(c2)」という。)とからなる共重合体であってもよい。後者の場合、成分(C)に含まれる構造単位(c1)の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
上記構造単位(c1)の形成に用いられる(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル及び(メタ)アクリル酸tert−ブチルが挙げられる。これらのうち、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
上記構造単位(c2)の形成に用いられる(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
また、上記構造単位(c2)の形成に用いられる他の重合性不飽和化合物としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物等が挙げられる。
上記芳香族ビニル化合物は、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されない。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル等が挙げられる。
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。尚、重合体に、マレイミド系化合物に由来する構造単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸の不飽和ジカルボン酸無水物を用いて共重合させた後、イミド化を行う方法がある。
上記ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルにε−カプロラクトンを付加して得られた化合物等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、2−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、3−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、7−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、8−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、4−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、7−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、8−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、p−ビニルベンジルアルコール、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、ビニルアルコール等が挙げられる。
上記不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
上記カルボキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。
本発明において、上記成分(C)としては、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を含む(共)重合体が好ましく、メタクリル酸メチルに由来する構造単位のみからなる単独重合体、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、他の構造単位(c1)とからなる共重合体、及び、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、構造単位(c2)とからなる共重合体がより好ましい。
尚、上記成分(C)のガラス転移温度が60℃以上であると、耐熱性に優れた組成物を得ることができる。このガラス転移温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、上限は、通常、150℃である。ここでいうガラス転移温度は、示差走査型熱量計を用いて測定されたガラス転移温度の値であり、ガラス転移温度領域における比熱容量変化が半分の値となる温度である。
上記成分(C)が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位のみからなる単独重合体、即ち、ポリメタクリル酸メチルである場合、シンジオタクチシチーは、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上である。上限は、特に限定されないが、成形加工性の観点から、通常、90%である。また、耐熱性の観点から、ヘテロタクチシチーは、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。ここでいうシンジオタクチシチー及びヘテロタクチシチーは、溶媒として、重水素化クロロホルムを用いたH−NMR測定により、直鎖分岐のメチル基の積分強度比から算出することができる。
上記成分(C)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の下限値は、15万であり、好ましくは30万である。
本発明の組成物において、上記成分(C)は、1種単独で含まれていてよいし、2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。
一方、上記成分(D)は、エポキシ基を含む構造単位(以下、「構造単位(d1)」という。)を有する熱可塑性樹脂であり、従来、公知の樹脂を用いることができる。上記構造単位(d1)は、エポキシ基を含む重合性不飽和化合物に由来することが好ましい。成分(D)は、以下に例示される。
(D1)エチレンに由来する構造単位と、構造単位(d1)とからなる共重合体
(D2)エチレンに由来する構造単位と、構造単位(d1)と、他の重合性不飽和化合物に由来する構造単位とからなる共重合体、
(D3)共重合体(D1)の存在下、芳香族ビニル化合物又は(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する単量体を重合して得られたグラフト樹脂
(D4)共重合体(D2)の存在下、芳香族ビニル化合物又は(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する単量体を重合して得られたグラフト樹脂
(D5)ゴム質重合体の存在下、エポキシ基を含む重合性不飽和化合物を含有する単量体を重合して得られたグラフト樹脂
上記共重合体(D1)又は(D2)の形成に用いられる、エポキシ基を含む重合性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
従って、上記共重合体(D1)としては、エチレン・メタクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
上記共重合体(D2)の形成に用いられる、他の重合性不飽和化合物としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物等が挙げられる。
従って、上記共重合体(D2)としては、エチレン・メタクリル酸グリシジル・ビニルアルコール共重合体、エチレン・グリシジルメタクリレート・メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
上記グラフト樹脂(D3)としては、エチレン・メタクリル酸グリシジル−(グラフト)−スチレン重合体、エチレン・メタクリル酸グリシジル−(グラフト)−スチレン・アクリロニトリル重合体、エチレン・メタクリル酸グリシジル−(グラフト)−メタクリル酸メチル重合体等が挙げられる。
上記グラフト樹脂(D4)としては、エチレン・メタクリル酸グリシジル・ビニルアルコール−(グラフト)−スチレン重合体、エチレン・メタクリル酸グリシジル・ビニルアルコール−(グラフト)−スチレン・アクリロニトリル重合体、エチレン・メタクリル酸グリシジル・メタクリル酸メチル−(グラフト)−スチレン重合体、エチレン・メタクリル酸グリシジル・メタクリル酸メチル−(グラフト)−スチレン・アクリロニトリル重合体等が挙げられる。
上記グラフト樹脂(D5)の形成に用いられる、ゴム質重合体としては、ジエン系ゴム、水添ジエン系ゴム、アクリルゴム、エチレン・α−オレフィン系ゴム等が挙げられる。これらのうち、ジエン系ゴムが好ましい。
上記ジエン系ゴムは、単独重合体であってよいし、共重合体であってもよい。更に、このジエン系ゴムは、架橋重合体であってよいし、非架橋重合体であってもよい。
上記ジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体ゴム;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体ゴム;天然ゴム等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。また、これらの共重合体は水素添加(但し、水素添加率は50%未満。)されたものであってもよい。
また、上記ゴム質重合体の存在下に重合される単量体は、エポキシ基を含む重合性不飽和化合物を含有し、好ましくは、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、不飽和酸無水物及びカルボキシル基含有不飽和化合物から選ばれた重合性不飽和化合物が併用される。
上記グラフト樹脂(D5)としては、ポリブタジエンゴムの存在下、スチレン、アクリロニトリル及びメタクリル酸グリシジルを重合して得られたグラフト樹脂、スチレン・ブタジエン系共重合体ゴムの存在下、スチレン、アクリロニトリル及びメタクリル酸グリシジルを重合して得られたグラフト樹脂等が挙げられる。
上記グラフト樹脂(D3)、(D4)又は(D5)を製造する場合には、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、又は、これらを組み合わせた重合方法が用いられる。これらの重合方法を用いたグラフト重合において、共重合体(D1)若しくは(D2)又はゴム質重合体及び単量体は、反応系において、共重合体(D1)若しくは(D2)又はゴム質重合体全量の存在下に、単量体を一括添加して重合を開始してよいし、分割して又は連続的に添加しながら重合を行ってもよい。また、共重合体(D1)若しくは(D2)又はゴム質重合体の一部存在下、又は、非存在下に、単量体を一括添加して重合を開始してよいし、分割して又は連続的に添加してもよい。この際、共重合体(D1)若しくは(D2)又はゴム質重合体の残部は、反応の途中で、一括して、分割して又は連続的に添加してもよい。
乳化重合により製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記重合開始剤の使用量は、上記単量体全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%である。上記重合開始剤は、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記連鎖移動剤の使用量は、上記単量体全量に対し、通常、0.05〜2.0質量%である。上記連鎖移動剤は、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
乳化剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;高級脂肪族カルボン酸塩、脂肪族リン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、アルキルエーテル型化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記乳化剤の使用量は、上記単量体全量に対し、通常、0.3〜5.0質量%である。
乳化重合は、単量体、重合開始剤等の種類に応じ、公知の条件で行うことができる。この乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、グラフト樹脂を含む樹脂組成物を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この際に用いる凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が挙げられる。
本発明の組成物において、上記成分(D)は、1種単独で含まれていてよいし、2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。
上記成分(D)は、構造単位(d1)を含む樹脂であるが、この構造単位(d1)の含有量は、耐衝撃性及び成形外観性の観点から、成分(D)を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは0.3%質量以上、より好ましくは0.5〜25質量%、更に好ましくは1〜15質量%である。構造単位(d1)の含有量が少なすぎると、耐衝撃性及び成形外観性が十分でない場合がある。
本発明において、上記成分(A)及び(B)の含有割合は、耐衝撃性及び環境負荷の観点から、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、22〜50質量%及び50〜78質量%、更に好ましくは25〜35質量%及び65〜75質量%である。
本発明において、上記成分(C)の含有量は、耐衝撃性、成形外観性及び耐熱性のバランスに優れることから、成分(A)及び成分(B)の合計量を100質量部とした場合に、1〜10質量部であり、好ましくは2〜7質量部、更に好ましくは3〜6質量部である。成分(C)の含有量が10質量部を超えると、耐衝撃性及び耐熱性が十分でない。一方、成分(C)の含有量が1質量部未満では、成形品表面の光沢が劣る。
本発明において、上記成分(D)の含有量は、耐衝撃性及び成形外観性のバランスに優れることから、成分(A)及び(B)の合計量を100質量部とした場合に2〜7質量部、更に好ましくは3〜6質量部である。成分(D)の含有量が多すぎると、光沢が十分でない。一方、成分(D)の含有量が少なすぎると、耐衝撃性が十分でなく、着色成形品の表面に色むらを引き起こす。
上記成分(C)及び(D)の含有割合は、耐衝撃性及び成形外観性のバランスに優れることから、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは20〜80質量%及び20〜80質量%、より好ましくは25〜75質量%及び25〜75質量%、更に好ましくは30〜70質量%及び30〜70質量%である。
本発明の組成物は、他の重合体(他の樹脂)を含有してもよい。
他の重合体としては、ジエン系ゴム、水添ジエン系ゴム、アクリルゴム及びエチレン・α−オレフィン系ゴムから選ばれた少なくとも1種のゴム質重合体(エポキシ基を有さないゴム質重合体)の存在下、エポキシ基を有さない重合性不飽和化合物を重合して得られたグラフト樹脂;ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位及びシアン化ビニル化合物に由来する構造単位の両方を含む共重合体等の、エポキシ基を有さない重合性不飽和化合物を重合して得られた(共)重合体(尚、ドリップ防止剤として配合可能な、後述するフッ素系樹脂を除く);ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂等が挙げられる。
本発明の組成物が、他の重合体(他の樹脂)を含有する場合、その含有量の上限値は、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計を100質量部とした場合に、好ましくは30質量部、より好ましくは20質量部である。
本発明の組成物は、添加剤を含有していてもよく、公知の充填剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、可塑剤、着色剤を含有していてもよい。本発明の組成物を用いて、自動車、電子機器、家電製品、建材等の樹脂部材、日用雑貨等における、発熱体又は発熱部材の近傍に配される樹脂部材、あるいは、太陽光等を受光する樹脂部材を製造した場合には、難燃性が要求されることが多いので、難燃剤(成分(E))を含有する。
上記成分(E)としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤、反応系難燃剤等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機系難燃剤としては、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、グアニジン塩、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。本発明においては、リン系難燃剤を用いることが好ましく、従来、公知の含リン化合物を、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。この難燃剤の性状は、特に限定されないが、通常、常温で液状又は固体である。
含リン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルや、これらの変性化合物、下記一般式(1)で表される縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等が挙げられる。
Figure 0006100063

(式中、Xは、芳香環を含む芳香族基であり、R、R、R及びRは、それぞれ、独立したアリール基であって、含まれる炭素原子に結合する水素原子の1つ以上が、他の原子又は官能基に置換された基であってもよい。nは1以上の整数、j、k、l及びmは、それぞれ、独立して0又は1である。)
上記一般式(1)におけるXは、下記に例示される。
Figure 0006100063
上記含リン化合物としては、難燃性に優れ、環境負荷の低い樹脂成形品が得られることから、縮合型のリン酸エステル化合物が特に好ましい。
上記ハロゲン系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等が挙げられる。
また、無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等が挙げられる。
本発明の組成物において、上記成分(E)の含有量は、耐衝撃性、成形加工性及び成形外観性を低下させることなく、良好な難燃性が得られることから、成分(A)及び(B)の合計量を100質量部とした場合に、5〜35質量部であり、より好ましくは10〜30質量部、更に好ましくは15〜28質量部である。上記成分(E)の含有量が多すぎると、耐衝撃性が劣る傾向にある。
本発明の組成物、燃焼時の樹脂垂れ(ドリップ)又は延焼を抑制するために、例えば、フッ素系樹脂、シリコーンゴム等からなるドリップ防止剤を含有する
上記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン・プロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド・エチレン共重合体等が挙げられる。上記フッ素系樹脂の分子量は、好ましくは10万〜1000万、より好ましくは10万〜100万である。
上記ドリップ防止剤の含有量は、上記成分(A)及び(B)の合計量を100質量部とした場合に、0.01〜3質量部、より好ましくは0.05〜1質量部、更に好ましくは0.1〜0.5質量部である。
上記充填剤としては、重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、フュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、カオリン、硅藻土、ゼオライト、酸化チタン、生石灰、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスバルーン、シラスバルーン、サランバルーン、フェノールバルーン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記可塑剤としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、多価アルコールのエステル、エポキシ系可塑剤、高分子型可塑剤、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、含硫黄化合物、含リン化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記滑剤としては、ワックス、シリコーン、脂質等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の組成物が、上記成分(E)以外の添加剤を含有する場合、その含有量の上限値は、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計を100質量部とした場合に、好ましくは10質量部、より好ましくは7質量部である。
尚、本発明において、組成物全体(他の重合体、添加剤等のすべてを含む)に対して、上記成分(A)が25質量%以上含まれる場合には、日本バイオプラスチック協会により、「バイオマスプラ」の識別表示が許可される。そして、本発明の効果を十分に達成するために、成分(A)の含有割合の下限値は、組成物全体を100質量%とした場合に、好ましくは25質量%、より好ましくは27質量%、更に好ましくは29質量%である。
本発明の組成物は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び()を含む各原料成分を混練することにより、製造することができる。混練に際しては、従来、公知の混練装置、例えば、二軸押出機、単軸押出機、加熱可能な二軸又は単軸のスクリューフィーダー、フィーダールーダー、バンバリーミキサー、ロールミル等を用いることができる。好ましい製造方法は、二軸押出機を用いる方法である。尚、原料を混練するに際して、混練装置に一括してから混練してよいし、多段添加しながら混練してもよい。
上記原料の混練温度は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)の種類及びその使用量によって、適宜、選択されるが、通常、200℃〜240℃の範囲の温度である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、成形品の表面における色むらの発生が抑制されて外観性に優れ、更に、光沢性及び耐衝撃性に優れた成形品を得ることができる。そして、難燃剤が配合された場合に、これらの性能を低下させることなく、優れた難燃性を得ることができる。
後述する条件で測定されるシャルピー衝撃強度は、好ましくは3〜30J/m、より好ましくは4〜30J/mである。
後述する条件で測定される落錐衝撃強度は、好ましくは30〜80J、より好ましくは40〜75J、特に好ましくは50〜70Jである。
また、後述する条件で測定される難燃性(UL94規格)は、1.5mm条件でV−1又はV−0クラスである。
本発明の組成物は、無着色成形品のみならず、従来、外観性の不良現象が顕著となる着色成形品等の形成に好適である。そして、基部と、基部に形成された、リブ、ボス等の突起部とを有する成形品(一体成形品、図1参照)のように、複雑な形状を有する成形品においても、図2又は図3に示されるような、色むら部3の発生が抑制され、外観性(均一な着色性及び光沢)に優れる。
また、成分(A)として、植物由来の材料を用いることができるので、環境負荷の低い樹脂成形品を得ることができる。このような成形品は、上記優れた性質が要求される、車両、船舶、電子機器、家電製品、建材等の部材や、日用雑貨、スポーツ用品、文具等として好適であり、高度な難燃性が要求される電子機器、家電製品等の部材として、特に好適である。
本発明の成形品は、上記本発明の熱可塑性樹脂組成物、又は、その構成成分を形成することとなる原料成分を、射出成形装置、シート押出成形装置、異形押出成形装置、中空成形装置、圧縮成形装置、真空成形装置、発泡成形装置、ブロー成形装置、射出圧縮成形装置、ガスアシスト成形装置、ウォーターアシスト成形装置等、公知の成形装置で加工することにより製造することができる。
上記成形装置を用いて、成形品を製造する場合、成形温度及び金型温度は、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の種類、又は、使用する他の原料成分の種類等によって、適宜、選択される。
本発明の組成物を射出成形に供する場合、成形品の形状にもよるが、成形時のシリンダー温度は、通常、200℃〜260℃である。また、金型温度は、通常、20℃〜90℃である。
尚、成形品が大型である場合には、一般に、シリンダー温度は、上記温度より高めに設定される。
本発明の成形品は、目的、用途等に応じて、任意の位置に、貫通孔、溝、凹部、凸部等を備えてもよい。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
1.製造原料
熱可塑性樹脂組成物の製造に用いた原料は、以下の通りである。
1−1.原料(P)
Nature Works社製のポリ乳酸「Ingeo Biopolymer 2003D」(商品名)を用いた。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、それぞれ、194,000及び99,000である。ASTM D1238に準ずるMFRは、温度210℃及び荷重2.16kgにおいて、6g/10分であり、温度220℃及び荷重10kgにおいて、53g/10分である。
1−2.原料(Q)
住化スタイロン ポリカーボネート社製のポリカーボネート樹脂「カリバー 200−10」(商品名)を用いた。粘度平均分子量(Mv)は22,000である。
1−3.原料(R)
(1)アクリル系樹脂(R−1)
三菱レイヨン社製メタクリル酸メチル・アクリル酸アルキル共重合物「メタブレンP―531」(商品名)を用いた。重量平均分子量(Mw)は4,100,000である。
(2)アクリル系樹脂(R−2)
三菱レイヨン社製メタクリル酸メチル・アクリル酸アルキル共重合物「メタブレンP―501」(商品名)を用いた。重量平均分子量(Mw)は800,000である。
(3)アクリル系樹脂(R−3)
三菱レイヨン社製メタクリル酸メチル・アクリル酸メチル共重合物「アクリペットVH001」(商品名)を、比較例用の原料として用いた。重量平均分子量(Mw)は96,000である。
1−4.原料(S)
(1)グラフト樹脂(S−1)
日油社製ポリ(エチレン・メタクリル酸グリシジル)−(グラフト)−ポリ(スチレン・アクリロニトリル)共重合体「モディパーA−4400」(商品名)を用いた。エポキシ基を含む構造単位の含有割合は10.5%である。
(2)グラフト樹脂(S−2)
下記の合成例1により得られたグラフト樹脂を用いた。尚、組成物を製造する際には、このグラフト樹脂(S−2)を、後述する合成例2により得られたα−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体とともに、ラテックスの状態で混合し、塩化カルシウムにより凝固して得られた樹脂組成物(1)を用いた。グラフト樹脂(S−2)及びα−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体の質量比は、3:7である。
合成例1
攪拌機付き重合器に、重量平均粒子径0.3μm、ゲル分率90%のポリブタジエンラテックス60部(固形分換算)、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部及び水280部を仕込み、系内を脱酸素した後、窒素ガス気流中で撹拌しながら、60℃に加熱した。次いで、アクリロニトリル10部、スチレン25部、グリシジルメタクリレート5部及びキュメンハイドロパーオキサイド0.3部からなる単量体混合物を、5時間かけて連続的に滴下し、60℃で重合を進めた。滴下終了後、温度を65℃とした。そして、更に1時間、撹拌を続けた後、重合を終了させ、グラフト樹脂(S−2)を含むラテックスを得た。重合転化率は98%、グラフト率は45%であった。グラフト樹脂(S−2)中のエポキシ基を含む構造単位の含有割合は1.5%である。
1−5.原料(他の重合体成分)
下記の合成例2により得られたα−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体を用いた。
合成例2
別途撹拌機付き重合容器に、水250部及びアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2部を仕込み、系内を脱酸素した後、窒素ガス気流中で撹拌しながら、70℃に加熱した。次いで、過硫酸カリウム0.2部を添加した後、α−メチルスチレン65部、アクリロニトリル30部、スチレン5部及びtert−ドデシルメルカプタン0.3部からなる単量体混合物を、連続的に7時間かけて滴下し、70℃で重合を進めた。滴下終了後、温度を75℃とした。そして、更に1時間、撹拌を続けた後、重合を終了させ、α−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体を含むラテックスを得た。重合転化率は98%であった。
1−6.難燃剤(T)
大八化学工業社製1,3−フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート「PX−200」(商品名)を用いた。
1−7.ドリップ防止剤(U)
ダイキン工業社製ポリテトラフルオロエチレン樹脂「ポリフロン FA−500C」(商品名)を用いた。
2.熱可塑性樹脂組成物の製造及び評価
実施例1〜及び比較例1〜
上記の各原料成分を、表1に記載の割合で用い、熱可塑性樹脂組成物を得た。
組成物の評価に際しては、下記要領で調製した、添加剤(酸化防止剤)を含む物性評価用の熱可塑性樹脂組成物を利用した。評価結果を表1に併記した。
<物性評価用熱可塑性樹脂組成物の調製方法>
表1に記載の各原料成分を、ヘンシェルミキサーにより混合した後、この合計量100部に対して、酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名「アデカスタブ2112」、ADEKA社製)0.2部と、ペンタエリスチルテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(商品名「アデカスタブAO−60」、ADEKA社製)0.2部と、カーボンブラック(商品名「ケッチェンブラック EC300J」、ケッチェンブラック社製)2部を添加し、25℃で混合した。次いで、この混合物を、シリンダー設定温度を220℃としたプラスチック工学研究所社製2軸押出機「BT40」(型式名)に供給して溶融混練し、ペレット(物性評価用熱可塑性樹脂組成物)を得た。
(1)シャルピー衝撃強さ(耐衝撃性)
ISO 179に準じて、ノッチ付き、温度23℃の条件で測定した。単位は「kJ/m」である。試験片は、上記ペレットを十分に乾燥した後、シリンダーの設定温度を220℃、金型温度を50℃とした日本製鋼所社製射出成形機「J110AD−180H」(型式名)を用いて作製した。
(2)落錐衝撃強さ(耐衝撃性)
ISO 6603−2に準じて、温度23℃、速度2.4m/sの条件で測定した。単位は「J」である。試験片は、上記ペレットを十分に乾燥した後、シリンダーの設定温度を220℃、金型温度を50℃とした日精樹脂工業社製電動射出成形機「エルジェクト NEX30」(商品名)を用いて作製した、80mm×55mm×2.4mmの平板である。
(3)成形外観性(光沢)
上記ペレットを十分に乾燥した後、シリンダーの設定温度を220℃、金型温度を50℃とした日精樹脂工業社製電動射出成形機「エルジェクト NEX30」(商品名)に供給して、80mm×55mm×2.4mmの平板(55mmの一方の辺の中央に4mm×1mmのサイドゲートを備える)を得た。この平板成形品の表面を目視にて観察し、下記基準にて、外観性を判定した。
○:成形品表面に曇りがなく、2m上方の蛍光灯を映した際に、その輪郭がはっきり見える。
×:成形品表面に曇りがあり、2m上方の蛍光灯を映した際に、その輪郭がぼやけて見える。
(4)成形外観性(色むら)
上記ペレットを十分に乾燥した後、シリンダーの設定温度を240℃、金型温度を70℃としたファナック社製電動射出成形機「ROBOSHOT iα150」(商品名)に供給して、リブを備えた成形体を得た(図1参照)。この成形体のリブの裏側表面を目視にて観察し、下記基準にて外観性を判定した。
○:リブ裏側での色むらが発生していない。
△:リブ裏側の一部で色むらが発生している(図2参照)。
×:リブ裏側全体で色むらが発生している(図3参照)。
(5)難燃性
UL94試験法に準じて、厚さ1.5mmの試験片を使用して評価した。
試験片は、上記ペレットを十分に乾燥した後、シリンダーの設定温度を220℃、金型温度を50℃とした東芝機械社製射出成形機「EC40」(型式名)を用いて作製した。
Figure 0006100063
比較例1は、本発明に係る成分(A)及び(B)の割合が本発明の範囲外であるため、耐衝撃性及び成形外観性(光沢及び色むら)に劣る。比較例2は、本発明に係る成分(C)及び(D)を含有しないため、耐衝撃性及び成形外観性(光沢及び色むら)に劣る。比較例3は、本発明に係る成分(C)を含まないため、成形外観性(光沢及び色むら)に劣る。比較例4は、重量平均分子量の小さいアクリル樹脂を含有した例であり、成形外観性(光沢及び色むら)に劣る。比較例5は、本発明に係る成分(D)を含まないため、耐衝撃性及び成形外観性(色むら)に劣る。
一方、実施例1〜は、本発明の組成物の例であり、耐衝撃性及び成形外観性に優れていた。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、着色時の成形品表面における色むら形成が抑制され、かつ光沢に優れた良好な外観性を有し、耐衝撃性に優れ、かつ難燃性に優れた成形品を得ることができる。そして、この熱可塑性樹脂組成物は、車両、船舶、電子機器、家電製品、建材等の部材や、日用雑貨、スポーツ用品、文具等の、耐衝撃性、耐熱性、成形外観性、難燃性等の要求される成形品の形成に好適である。
また、成分(A)用の原料として、植物由来樹脂を用いることができるので、得られる成形品は、環境負荷の低い樹脂成形品として好ましく用いられる。そして、成分(A)の含有量を25質量%以上とした樹脂組成物は、日本バイオプラスチック協会により、「バイオマスプラ」の識別表示が許可されるので、これにより、地球温暖化を防止し、化石燃料資源を節約し、自然環境の保全に資するとの認識を広め、その普及促進を図ることができる。
1:外観性評価用試験体
3:色むら部

Claims (7)

  1. (A)脂肪族ポリエステル樹脂と、
    (B)芳香族ポリカーボネート樹脂と、
    (C)エポキシ基を含まない、重量平均分子量が15万以上のアクリル系樹脂と、
    (D)エポキシ基を含む構造単位を有する樹脂と、
    (E)難燃剤と、
    (F)ドリップ防止剤と、
    を含有する熱可塑性樹脂組成物において、
    上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)及び上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、2250質量%及び5078質量%であり、
    上記アクリル系樹脂(C)の含有量は、上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)及び上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、1〜10質量部であり、
    上記樹脂(D)の含有量は、上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)及び上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、質量部であり、
    上記難燃剤(E)の含有量は、上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)及び上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、5〜35質量部であり、
    上記ドリップ防止剤(F)の含有量は、上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)及び上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、0.01〜3質量部であり、
    UL94試験法に準ずる難燃性が1.5mm条件でV−1又はV−0であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 上記エポキシ基を含む構造単位の含有割合が、上記樹脂(D)を構成する構造単位の全量に対して、0.5〜25質量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 上記アクリル系樹脂(C)及び上記樹脂(D)の含有割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、20〜80質量%及び20〜80質量%である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 上記難燃剤(E)が縮合型のリン酸エステル化合物である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 上記ドリップ防止剤(F)がフッ素系樹脂である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)及び上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の含有割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、25〜35質量%及び65〜75質量%であり、
    UL94試験法に準ずる難燃性が1.5mm条件でV−0である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
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