次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下において、同じブロックまたは要素には同じ符号を付して説明の重複を避け、説明を簡略にする。図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、各構成部品の配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
[実施の形態]
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の模式的鳥瞰構造は、図1に示すように表され、図1のI−I線に沿う模式的断面構造は、図2(a)に示すように表され、図1のII−II線に沿う模式的断面構造は、図2(b)に示すように表される。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子は、非対称の順方向および逆方向電流電圧特性を有する能動素子90を備え、負性微分抵抗を示す第1動作点で発振素子として動作し、負性抵抗領域ではない非線形特性を示す第2動作点で検出素子として動作する。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の模式的鳥瞰構造は、図1〜図2に示すように、半導体基板1と、半導体基板1上に配置された第2の電極2,2aと、第2の電極2上に配置された絶縁層3と、第2の電極2に対して絶縁層3を介して配置され、かつ半導体基板1上に第2の電極2に対向して配置された第1の電極4(4a,4b,4c)と、絶縁層3を挟み第1の電極4aと第2の電極2間に形成されたMIMリフレクタ50と、MIMリフレクタ50に隣接して、半導体基板1上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された共振器60と、共振器60に隣接して、半導体基板1上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された導波路70と、導波路70に隣接して、半導体基板1上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置されたホーン開口部80とを備え、能動素子90は、共振器60の略中央部に配置される。
能動素子90としてはRTDが代表的なものであるが、これ以外のダイオードやトランジスタでも構成可能である。その他の能動素子としては、例えば、タンネット(TUNNETT:Tunnel Transit Time)ダイオード、インパット(IMPATT:Impact Ionization Avalanche Transit Time)ダイオード、GaAs系電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、GaN系FET、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)などを適用することもできる。
ホーン開口部80は、開口ホーンアンテナから構成される。ホーン開口部の開口角θは、例えば、10度程度以下に設定することが、電磁波(hν)の放射方向に指向特性を持たせる上で望ましい。ホーン開口部80の長さL3は、例えば、約700μm程度以下である。ホーン開口部80の先端部における開口幅は、例えば、約160μm程度である。
導波路70は、共振器60の開口部に配置されている。導波路70の長さL2は、例えば、約700μm程度以下である。また、導波路70における第1の電極4と第2の電極2間の間隔は、例えば、約24μm程度である。
なお、ホーン開口部80のホーン形状は、電磁波を空気中に取り出すために必要な構造である。ホーン形状によって、インピーダンス整合性良く電磁波を空気中に効率よく取り出すことができる。尚、ホーンの形状は、直線性形状に限らず、非直線性形状、曲線形状、2次曲線形状、放物線形状、階段状形状などであっても良い。
共振器60には、2箇所の凹部5、6が形成されており、この2つの凹部5、6に挟まれて、凸部7が形成されている。そして、第1の電極4の凸部7の略中央部には突起部8が形成され、この突起部8の下側に第2の電極2と挟まれるように、能動素子90が配置される。
共振器60の長さL1は、例えば、約30μm程度以下である。突起部8の長さは、例えば、約6μm程度以下である。また、凹部5、6の幅(第1の電極4と第2の電極2との間隔)は、例えば、約4μm程度である。能動素子90の寸法は、例えば、約1.4μm2程度である。但し、能動素子90のサイズは、この値に限定されず、例えば、約5.3μm2程度以下であってもよい。能動素子90の詳細構造については後述する。共振器60の各部のサイズは、上記寸法に限定されるものではなく、発振する電磁波の周波数に応じて設計上適宜設定されるものである。
また、図1に示すように、導波路70における第1の電極4と第2の電極2間の間隔に比べて、共振器60が形成されている部分の第1の電極4と第2の電極2間の間隔は、狭い。
MIMリフレクタ50は共振器60の開口部と反対側の閉口部に配置されている。金属/絶縁体/金属からなるMIMリフレクタ50の積層構造により、第1の電極4と第2の電極2は高周波的に短絡される。また、MIMリフレクタ50は、直流的には開放(オープン)でありながら、高周波を反射させることが可能となるという効果を有する。
第1の電極4(4a,4b,4c)および第2の電極2,2aは、いずれも例えば、Au/Pd/Tiのメタル積層構造からなり、Ti層は、後述する半絶縁性のInP基板からなる半導体基板1との接触状態を良好にするためのバッファ層である。第1の電極4a,4b,4cおよび第2の電極2,2aの各部の厚さは、例えば、約数100nm程度であり、全体として、図2(a)および図2(b)に示すような平坦化された積層構造が得られている。なお、第1の電極4、第2の電極2は、いずれも真空蒸着法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
さらに詳細には、第1の電極4aおよび第1の電極4cは、例えば、Au/Pd/Tiからなり、第1の電極4bは、例えば、Au/Tiからなる。第2の電極2は、例えば、Au/Pd/Tiからなり、第2の電極2aは、例えば、Au/Tiからなる。
尚、第1の電極4bの表面層を形成するTi層は、ボンディングワイヤ(図示省略)によって取り出し電極を形成する際、接触抵抗を低減するために除去することが望ましい。同様に、第2の電極2aの表面層を形成するTi層は、ボンディングワイヤ(図示省略)によって取り出し電極を形成する際、接触抵抗を低減するために除去することが望ましい。
絶縁層3は、例えば、SiO2膜で形成することができる。その他、Si3N4膜、SiON膜、HfO2膜、Al2O3膜などを適用することもできる。なお、絶縁層3の厚さは、MIMリフレクタ50の幾何学的な平面寸法と、回路特性上の要求されるキャパシタ値を考慮して決めることができ、例えば、数10nm〜数100nm程度である。絶縁層3は、化学的気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
―共鳴トンネルダイオード―
実施の形態に係る無線伝送装置に適用される共鳴トンネルダイオード(RTD)の模式的断面構造は、図3(a)に示すように表され、その変形例の模式的断面構造は、図3(b)に示すように表される。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用される能動素子90としてRTDの構成例は、図3(a)に示すように、半絶縁性のInP基板からなる半導体基板1上に配置され,n型不純物を高濃度にドープされたn+InGaAs層91aと、n+InGaAs層91a上に配置され,n型不純物をドープされたnInGaAs層92aと、nInGaAs層92a上に配置されたアンドープのInGaAs層93bと、InGaAs層93b上に配置されたアンドープのAlAs層94a/アンドープのInGaAs層95/アンドープのAlAs層94bから構成されたRTD部と、アンドープのAlAs層94b上に配置されたアンドープのInGaAs層93bと、アンドープのInGaAs層93b上に配置され,n型不純物をドープされたnInGaAs層92bと、nInGaAs層92b上に配置され,n型不純物を高濃度にドープされたn+InGaAs層91bと、n+InGaAs層91b上に配置された第1の電極4aと、n+GaInAs層91a上に配置された第2の電極2とを備える。
変形例では、図3(b)に示すように、n型不純物を高濃度にドープされたn+GaInAs層91b上に更にn型不純物を高濃度にドープされたn+GaInAs層91cを配置し、第1の電極4aとのコンタクトを良好にしている。
図3(a)および図3(b)に示すように、RTD部は、アンドープのInGaAs層95をアンドープのAlAs層94a、94bで挟んで形成されている。このように積層されたRTD部は、スペーサとして用いられるアンドープのInGaAs層93a、93bを介在させてnInGaAs層92a、92b、及びn+InGaAs層91a、91b、若しくは91cを介して、第2の電極2と第1の電極4にオーミックに接続される構造となっている。
尚、図3(a)および図3(b)の構造において、さらに半絶縁性のInP基板からなる半導体基板1上にアンドープのIn0.53Ga0.47As層をn型不純物を高濃度にドープされたn+InGaAs層91aとの間に介在させても良い。
ここで、各層の厚さは、例えば以下の通りである。
n+InGaAs層91a、91b・91cの厚さは、それぞれ例えば、約400nm、15nm・8nm程度である。nGaInAs層92aおよび92bの厚さは、略等しく、例えば、約25nm程度である。アンドープInGaAs層93a・93bの厚さは、例えば、約2nm・20nm程度である。アンドープAlAs層94a・94bの厚さは、等しく、例えば、約1.1nm程度である。アンドープGaInAs層95の厚さは、例えば、約4.5nm程度である。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用される共鳴トンネルダイオード(RTD)の模式的断面構造においては、アンドープのAlAs層94a/アンドープのInGaAs層95/アンドープのAlAs層94bから構成されたRTD部を挟むアンドープInGaAs層93aの厚さを約2nm、アンドープInGaAs層93bの厚さを約20nmと非対称に設定することによって、後述する図8に示すように、順方向―逆方向のI−V特性を非対称にすることができる。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用される共鳴トンネルダイオード(RTD)の模式的断面構造においては、エピタキシャル構造を非対称にすることで、順方向と逆方向のI−V特性が非対称となり、印加電圧を変えることによって、発振素子、検出素子を使い分けることが可能となる。
またダイオードによる検出には、I−V特性の非線形性が大きい方が感度が良いが、RTDは負性抵抗を示すので、非線形性が大きく、高感度な検出が可能である。
ここで、InxGa1-xAsからなる各層のIn組成比xは、例えば以下の通りである。
n+InGaAs層91a・91bにおいてはx=0.53、n+InGaAs層91cにおいてはx=0.7、nGaInAs層92a・92bにおいてはx=0.53、アンドープInGaAs層93bにおいてはx=0.53、アンドープGaInAs層95においてはx=0.8である。
ここで、各層のドーピングレベルは、例えば以下の通りである。
n+InGaAs層91a・91bのドーピングレベルは、約2.00E+19(cm-3)、n+InGaAs層91cのドーピングレベルは、約2.00E+19(cm-3)、nGaInAs層92a・92bのドーピングレベルは、約3.00E+18(cm-3)であり、いずれもドーパントは、例えば、シリコン(Si)を適用可能である。
なお、図3(a)および図3(b)に示す積層構造の側壁部には、SiO2膜、Si3N4膜、SiON膜、HfO2膜、Al2O3膜など、若しくはこれらの多層膜からなる絶縁膜を堆積することもできる。絶縁層は、CVD法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
能動素子90を構成するRTDの寸法は、例えば、約1.4μm2程度以下である。例えば、室温で観測した発振周波数は、約300GHz程度である。また、例えば、発振時における素子の電流密度Jpは、約7mA/μm2程度である。
―回路構成―
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の発振素子としての模式的回路構成は、図4(a)に示すように、能動素子90を構成するRTDと、MIMリフレクタ50を構成するキャパシタCMの並列回路によって表される。第1の電極4にはRTDのカソードが接続され、第2の電極2には、RTDのアノードが接続され、第1の電極4にはマイナスの電圧、第2の電極2にはプラスの電圧が印加される。発振状態においては、ホーン開口部の開口方向であるY軸方向に電磁波(hν)が指向性良く伝播される。
図4(a)に対応する簡易等価回路構成は、図4(b)に示すように、能動素子90を構成するRTDは、キャパシタC01とインダクタL01の並列回路で表わすことができ、MIMリフレクタ50のキャパシタCMがさらに並列に接続されるため、テラヘルツ電磁波(hν)の発振周波数fは、f=1/[2π(L01(C01+CM)1/2)で表される。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の発振素子としてのアンテナ系も含めた模式的等価回路構成は、図5(a)に示すように、ダイオード(RTD)系を表す能動素子90・キャパシタCMの並列回路に対して、アンテナ(ANT)系を表すアンテナインダクタL・アンテナキャパシタCA・アンテナ放射抵抗GANTの並列回路が並列に接続される。
図5(a)の能動素子90を構成するRTDの等価回路構成は、図5(b)に示すように、コンタクト抵抗Rc・コンタクトキャパシタCcからなるコンタクト部分の並列回路と、外部ダイオードキャパシタCD・内部ダイオードキャパシタCd・ダイオード負性抵抗(−Gd)からなるダイオード部分の並列回路と、インダクタLM・抵抗RMからなるメサ部分の直列回路が直列接続された構成を備える。
ここで、実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子のアンテナ系も含めた等価回路全体のアドミッタンスYは、
Y=Yd+Yc・Ya・Ym/(Yc・Ya+Ya・Ym+Yc・Ym)
で表される。ここで、Yd=−Gd+jωCd、Yc=1/Rc+jωCc、Ym=1/(Rm+jωLm)であり、Yaはアンテナ系のアドミッタンス、ωは発振角周波数を表す。各パラメータは、能動素子90を構成するダイオード(RTD)の物性値から求めることができる。また、発振条件Re(Y)≦0,Im(Y)=0を解くことによって、発振周波数、発振出力が得られる。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の検出素子としての模式的回路構成は、図6(a)に示すように、能動素子90を構成するRTDと、MIMリフレクタ50を構成するキャパシタCMの並列回路によって表される。第1の電極4にはRTDのアノードが接続され、第2の電極2には、RTDのカソードが接続され、第1の電極4にはマイナスの電圧、第2の電極2にはプラスの電圧が印加される。検出状態においては、ホーン開口部の開口方向であるY軸方向からの電磁波(hν)が指向性良く検出される。
図6(a)に対応する簡易等価回路構成は、図6(b)に示すように、能動素子90を構成するRTDは、キャパシタC01とインダクタL01の並列回路で表わすことができ、MIMリフレクタ50のキャパシタCMがさらに並列に接続される。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子のアンテナ系も含めた模式的等価回路構成は、図7に示すように、ダイオード(RTD)系を表す能動素子90・キャパシタCMの並列回路に対して、アンテナ(ANT)系を表すアンテナインダクタL・アンテナキャパシタCA・アンテナ放射抵抗GANTの並列回路が並列に接続される。
図7の能動素子90を構成するRTDの等価回路構成は、図5(b)と同様に表される。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用される共鳴トンネルダイオード(RTD)の順方向および逆方向の電流−電圧特性例は、図8に示すように表される。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用される共鳴トンネルダイオード(RTD)の模式的断面構造においては、図3(a)および図3(b)において説明したように、エピタキシャル構造を非対称にすることで、図8に示すように、順方向と逆方向のI−V特性が非対称となる。したがって、印加電圧を変えることによって、発振素子、検出素子を使い分けることが可能となる。すなわち、例えば、図8において、順方向特性上の動作点DEにおいては、非線形特性を示すため、検出素子として動作可能であり、しかも検出時のS/N比を高めることができる。一方、図8において、逆方向特性上の動作点OSにおいては、負性微分抵抗特性を示すため、発振素子として動作可能である。
尚、ここで順方向―逆方向の名称は便宜的なものであり、どちらか一方を順方向と決定すれば、他方は逆方向となる。その理由は、RTDは非対称のエピタキシャル成長層の構成を有するが、2端子構造であって、順方向―逆方向電流電圧特性のいずれにも負性抵抗領域を有することから、どちらか一方のNDR領域に発振素子としての動作点OSを決めると、他方の電流電圧特性上の負性抵抗特性ではない非線形特性領域に検出素子としての動作点DEを決めることができるからである。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の発振素子動作において、発振強度と発振周波数fの関係の一例は、図9に示すように表される。図9の例では、発振周波数fは、約280GHzである。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の検出素子動作において、送信側フォトダイオード(PD)の光電流と受信感度との関係の一例は、図10に示すように表される。受信感度は、ピークツーピークの電圧振幅VP-P(mV)で表されている。図10中には比較のためにテラヘルツ電磁波の検出素子としてショットキーバリアダイオード(SBD)を用いた例も示されている。図10から明らかなように、実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子の検出素子動作においては、SBDに比較して、送信側フォトダイオード(PD)の光電流が低い領域に対応する低電力側において、より高感度な特性が得られている。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の検出素子動作において、送信側PDの光電流とビットエラーレートBERとの関係の一例は、図11に示すように表される。図11から明らかなように、実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子の検出素子動作においては、送信側フォトダイオード(PD)の光電流が低い領域に対応する低電力側において、SBDと同程度のビットエラーレートBER特性が得られている。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の検出素子動作特性の測定系の模式的ブロック構成は、図12に示すように、テラヘルツ発振検出素子38と、テラヘルツ発振検出素子38に接続されたバイアスT回路34と、バイアスT回路34に接続されたDC電源62およびプリアンプ46と、プリアンプ46に接続されたリミッティング増幅器48と、リミッティング増幅器48に接続されたオシロスコープ52およびエラー検出器54を備える。
―テラヘルツ無線伝送装置―
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の電流−電圧特性の一例は、図13に示すように表され、約0.75Vにおいて、ピーク電流Ipの値は、約12mAが得られている。また、0.7V〜1.0Vの範囲において、負性微分抵抗(NDR:Negative Differential resistance)得られている。峰谷比(peak-to-valley ratio)は、約3である。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子において、共振器長L1をパラメータとする発振周波数fとピーク電流Ipの関係の一例は、図14に示すように表される。共振器長L1=80μmでは、約250〜300GHz、L1=60μmでは、約300〜320GHz、L1=40μmでは、約350〜370GHz、L1=20μmでは、約380〜400GHzの発振周波数fが得られている。ピーク電流Ipの値は、約4〜10mAである。共振器長L1が短くなると、発振周波数fは増加する傾向にある。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子において、発振強度と発振周波数fの関係の一例は、図15に示すように表される。室温で、約300GHzの発振周波数fが得られている。この発振周波数fの値は、図3に示される各層の構造、メサ領域の寸法、アンテナ構造などを調整することによって、変更可能である。
テラヘルツ発振検出素子を適用した実施の形態に係る無線伝送装置の動作説明であって、テラヘルツ発振検出素子の電流−電圧特性上におけるバイアス点と、バイアス入力電圧VAC、オフセット電圧Voffsetの関係は、図16に示すように表される。
テラヘルツ発振検出素子を適用した実施の形態に係る無線伝送装置では、単純な振幅偏移変調若しくは振幅シフトキーイング(ASK:Amplitude Shift Keying)と呼ばれる変調方式を用いている。送信データのビット列に対応して搬送波の振幅を変化させることで送信データを送る方式である。
図16に示すように、電流−電圧特性上の動作点Pでは、非発振状態にあり、動作点QではNDR領域であることから、発振状態にある。したがって、電流−電圧特性上の動作点を非発振状態と発振状態間で、ダイナミックに変化させることによって、振幅シフトキーイング(ASK)変調方式を実現することができる。図16では、オフセット電圧Voffsetをオフ(off)レベルとして動作点P(非発振状態)に設定している。また、オフセット電圧Voffsetのバイアスレベルから入力電圧VACをパルス状に変化させて、入力電圧VACの印加されるレベルをオン(on)レベルとして、動作点Q(発振状態)に設定している。
テラヘルツ発振検出素子を適用した実施の形態に係る無線伝送装置において、300GHz発振条件を得る上で最適なバイアス条件を決定するためのオフセット電圧Voffsetと入力電圧VACの関係は、図17に示すように表される。
テラヘルツ発振検出素子を適用した実施の形態に係る無線伝送装置において、入力電圧VACをパラメータとして得られた規格化電力とオフセット電圧Voffsetの関係は、図18に示すように表される。図18から明らかなように、規格化電力の最大値を得るためには、各々の入力電圧VACに対して、最適なオフセット電圧Voffsetが存在する。また、オフセット電圧Voffsetの値が増加して、NDR領域内に入ると、規格化電力の2番目のピークが得られる。すなわち、図17において、VAC=0.36Vにおけるオフセット電圧Voffset=0.94V〜1.12Vの範囲、VAC=0.48Vにおけるオフセット電圧Voffset=1.01V〜1.08Vの範囲、VAC=0.60Vにおけるオフセット電圧Voffset=1.05V〜1.3Vの範囲、およびVAC=0.72Vにおけるオフセット電圧Voffset=1.12V〜1.24Vの範囲は規格化電力の2番目のピークが得られる範囲である。
これに対して、図17において、VAC=0.12Vにおけるオフセット電圧Voffset=0.69V〜0.99Vの範囲、VAC=0.24Vにおけるオフセット電圧Voffset=0.65V〜1.04Vの範囲、VAC=0.36Vにおけるオフセット電圧Voffset=0.58V〜0.80Vの範囲、VAC=0.48Vにおけるオフセット電圧Voffset=0.52V〜0.75Vの範囲、VAC=0.60Vにおけるオフセット電圧Voffset=0.44V〜0.68Vの範囲、およびVAC=0.72Vにおけるオフセット電圧Voffset=0.40V〜0.64Vの範囲は規格化電力の1番目のピークが得られる範囲である。
テラヘルツ発振検出素子を適用した実施の形態に係る無線伝送装置の模式的ブロック構成は、図19に示すように表される。
テラヘルツ発振検出素子を適用した実施の形態に係る無線伝送装置は、図19に示すように、テラヘルツ発振検出素子38を備えるテラヘルツ送信器100と、テラヘルツ発振検出素子44を備えるテラヘルツ受信器200とを備える。ここで、テラヘルツ発振検出素子38は、負性微分抵抗領域(NDR)に動作点を有する振幅遷移変調によって、テラヘルツ電磁波を発生すると共に、テラヘルツ発振検出素子44は、テラヘルツ発振検出素子38から発生されたテラヘルツ電磁波を検出する。
また、テラヘルツ送信器100は、図19に示すように、搬送波信号を発生するパルスパターン発生器30と、パルスパターン発生器30に接続され、搬送波信号を増幅して入力電圧VACを出力する増幅器32と、所定のオフセット電圧Voffsetを出力する直流バイアス回路36と、増幅器32および直流バイアス回路36に接続され、入力電圧VACが重畳されたオフセット電圧Voffsetを出力するバイアスT回路34とを備える。ここで、テラヘルツ発振検出素子38は、バイアスT回路34に接続され、入力電圧VACが重畳されたオフセット電圧Voffsetを受信する。
一方、図19に示すように、テラヘルツ受信器200は、テラヘルツ送信器100から発生されたテラヘルツ電磁波を受信するテラヘルツ発振検出素子44と、テラヘルツ発振検出素子44に接続されたプリアンプ46と、プリアンプ46に接続されたリミッティング増幅器48とを備える。
また、図19に示すように、テラヘルツ発振検出素子44は、テラヘルツ電磁波を受信するためのホーンアンテナ40を備えていても良い。
また、図19に示すように、テラヘルツ受信器200は、リミッティング増幅器48に接続されたオシロスコープ52およびエラー検出器54を備えていても良い。
また、実施の形態に係る無線伝送装置においては、テラヘルツ発振検出素子は、アンテナ集積型の共鳴トンネルダイオードで構成されていても良い。
また、実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子においては、テラヘルツ発振検出素子38・44は、高速で変調・復調するために、テフロン(登録商標)基板上に配置され、かつSMAコネクタで給電しても良い。
テラヘルツ発振検出素子を適用した実施の形態に係る無線伝送装置によって得られたアイパターン例は、図20に示すように表される。図20の例では、搬送波周波数は300GHzであり、1.5Gbit/sのアイダイヤグラムが得られている。室温動作において、エラービットの無い非圧縮のHDTV(High Definition TeleVision)信号のワイヤレス伝送を確認している。
テラヘルツ発振検出素子を適用した本実施の形態に係る無線伝送装置によれば、RTD単体で発振するので、発振器が、従来技術よりも飛躍的に小さくなり、なおかつ単純な振幅シフトキーイング(ASK変調によるテラヘルツディジタルデータ信号の送受信が可能となる。
テラヘルツ検出素子として適用可能な比較例に係るショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)の電流−電圧特性は、模式的に図21に示すように表される。
一方、実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子(RTD)の電流−電圧特性は、模式的に図22に示すように表される。実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子(RTD)は、負性抵抗を有するため、SBDに比べて非線形性の大きい領域が存在し、検出素子としての動作時、検出感度が高くなる。
SBDにおいては、ショットキーバリアを越えて流れる電子の数は、温度と共に上昇するため、温度が上がると、熱雑音が増大し、検出時のS/N比が低下する。一方、実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子(RTD)においては、トンネル電流に寄与する電子は、フェルミエネルギーレベルよりも低い電子である。このため、トンネル電流の温度依存性は小さい。したがって、実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子(RTD)においては、負性抵抗の前後では、非線形性が大きいので、検出素子としての動作時のS/N比が向上する。
図22に示すように、電流−電圧特性上の動作点QではNDR領域であることから、発振状態にある。したがって、実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子においては、電流−電圧特性上の動作点を非発振状態とする必要がある。
一方、実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子において検出感度を増大するためには、電流−電圧特性上の動作点を非発振状態とするとともに、微分抵抗の変化率を最大化することが望ましい。このような動作点は、実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の電流−電圧特性上の動作点Pおよび動作点Qに相当する。すなわち、電流−電圧特性上の動作点Pおよび動作点Rでは、非発振状態にあり、しかも検出感度が極大値を取る。
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子(RTD)の電流−電圧特性例であって、室温動作において、テラヘルツ波の照射時(A)と、テラヘルツ波の非照射時(B)の特性変化は、図23に示すように表される。図23に示すように、バイアス電圧を例えば、0.5Vと設定することによって、テラヘルツ電磁波を良好な感度で、室温動作で検出可能である。
テラヘルツ発振検出素子(RTD)を発振素子および検出素子として適用する実施の形態に係る無線伝送装置の模式的ブロック構成は、図24に示す示すように、テラヘルツ発振検出素子38を備えるテラヘルツ送信器100と、テラヘルツ発振検出素子44を備えるテラヘルツ受信器200とを備える。ここで、テラヘルツ発振検出素子38およびテラヘルツ発振検出素子44には、実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子(RTD)を適用可能である。ここで、テラヘルツ発振検出素子38は、例えば、負性微分抵抗領域(NDR)に動作点OSを有し、テラヘルツ電磁波を効率よく発生すると共に、テラヘルツ発振検出素子44は、電流−電圧特性上、非発振状態とするとともに、微分抵抗の変化率を最大化する動作点DEを有し、テラヘルツ発振検出素子38から発生されたテラヘルツ電磁波を効率よく検出することができる。
テラヘルツ発振検出素子を発振素子および検出素子として適用する実施の形態に係る無線伝送装置の模式的平面パターン構成は、図25に示すように表される。図25においては、図1に示された実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子(RTD)と同一構成のテラヘルツ発振検出素子(RTD)を、テラヘルツ発振検出素子38およびテラヘルツ発振検出素子44に利用している。このため、同一工程で製造したテラヘルツ発振検出素子を発振素子もしくは検出素子として利用することによって、送信器および検出器の構成が単純化され、かつ飛躍的に小型化され、高感度、低雑音でテラヘルツ電磁波の送受信が実現可能な無線伝送装置を提供することができる。
テラヘルツ発振検出素子を適用した実施の形態に係る無線伝送装置は、第1テラヘルツ発振検出素子38を備えるテラヘルツ送信器100と、第2テラヘルツ発振検出素子44を備えるテラヘルツ受信器200とを備え、第1テラヘルツ発振検出素子38は、負性微分抵抗領域に第1動作点OSを有する振幅遷移変調によって、テラヘルツ電磁波(hν)を発生すると共に、第2テラヘルツ発振検出素子44は、負性抵抗特性ではない非線形性領域に第2動作点DEを有することによって、第1テラヘルツ発振検出素子38から発生されたテラヘルツ電磁波を検出することができる。
―変形例1―
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の変形例1の模式的鳥瞰構造は、図26に示すように表される。
変形例1においては、図26に示すように、半導体基板1は、共振器60,導波路70,およびホーン開口部80を形成する第1の電極2および第2の電極4の配置される領域において薄層化されている。さらに、図26に示すように、第1の電極2と第2の電極4間の導波路70,およびホーン開口部80の半導体基板1aは、完全に除去されていても良い。その他の構成は、図1の構成と同様であるため、各部の説明は省略する。
図26において、薄層化された半導体基板1aの厚さは、例えば、約20μm程度である。また、導波路70の長さは、例えば、約700μm程度以下であり、ホーン開口部80の長さも例えば、約700μm程度以下である。MIMリフレクタ50を含む変形例1に係るテラヘルツ発振検出素子の全体の長さは、例えば、約1600μm程度以下である。
変形例1に係るテラヘルツ発振検出素子の発振素子としての動作時の電磁界シミュレーション結果によれば、薄層化された半導体基板1a上のY軸方向に延伸する電極パターンに沿って、Y軸方向に一定の間隔で電界パターンが発生し、半導体基板1aに垂直方向(−Z軸方向)の電界の漏れはほとんどない。また、XYZ軸方向における3次元の電磁界シミュレーション結果によれば、Y軸方向の指向性が顕著に良好となる。
図26に示す変形例1に係るテラヘルツ発振検出素子の発振素子としての動作時のY軸方向放射強度と発振周波数との関係からは高調波成分が抑制され、指向性が向上する結果も得られている。薄層化された半導体基板1aを形成する技術としては、メムス(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)素子の形成技術を適用することができる。
変形例1に係るテラヘルツ発振検出素子によれば、半導体基板を薄層化することによって、基板の影響を抑制することが可能となり、指向性を向上させ、高効率かつ高出力に、基板に対して横方向に、テラヘルツ電磁波を発振および検出することができ、しかも集積化が容易である。
変形例1に係るテラヘルツ発振検出素子によれば、半導体基板を薄層化することによって、基板の影響を抑制することが可能となり、基板に水平な方向に指向性を向上させ、効率良く、テラヘルツ電磁波を発振および検出することが可能となる。
―変形例2―
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の変形例2の模式的鳥瞰構造は、図27に示すように表される。また、図27に対応した第1の電極4、第2の電極2aおよび半導体層91aのパターン構造の模式的平面図は、図28に示すように表される。また、図28のIII−III線に沿う模式的断面構造は、図29(a)に示すように表され、図28のIV−IV線に沿う模式的断面構造は、図29(b)に示すように表される。
変形例2に係るテラヘルツ発振検出素子は、図27〜図29に示すように、絶縁体基板10と、絶縁体基板10上に配置された第1の電極4(4a,4b,4c)と、第1の電極4a上に配置された絶縁層3と、絶縁体基板10上に配置された層間絶縁膜9と、層間絶縁膜9上に配置され、かつ第1の電極4aに対して絶縁層3を介して第1の電極4に対向して配置された第2の電極2,2aと、第2の電極2上に配置された半導体層91aと、絶縁層3を挟み第1の電極4aと第2の電極2間に形成されたMIMリフレクタ50と、MIMリフレクタ50に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された共振器60と、共振器60の略中央部に配置された能動素子90と、共振器60に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された導波路70と、導波路70に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置されたホーン開口部80とを備える。
ホーン開口部80は、開口ホーンアンテナから構成される。ホーン開口部の開口角θは、例えば、10度程度以下に設定することが、電磁波(hν)の放射および検出方向に指向特性を持たせる上で望ましい。ホーン開口部80の長さL3は、例えば、約700μm程度以下である。ホーン開口部80の先端部における開口幅は、例えば、約160μm程度である。
導波路70は、共振器60の開口部に配置されている。導波路70の長さL2は、例えば、約700μm程度以下である。また、導波路70における第1の電極4と第2の電極2間の間隔は、例えば、約24μm程度である。
なお、ホーン開口部80のホーン形状は、電磁波を空気中に放射および空気中から検出するために必要な構造である。ホーン形状によって、インピーダンス整合性良く電磁波を効率よく空気中に放射および空気中から検出することができる。尚、ホーンの形状は、直線性形状に限らず、非直線性形状、曲線形状、2次曲線形状、放物線形状、階段状形状などであっても良い。
共振器60には、2箇所の凹部5、6が形成されており、この2つの凹部5、6に挟まれて、凸部7が形成されている。そして、半導体層91aの凸部7の略中央部には突起部8が形成され、この突起部8の下側に第1の電極4aと挟まれるように、能動素子90が配置される。
共振器60の長さL1は、例えば、約30μm程度以下である。突起部8の長さは、例えば、約6μm程度以下である。また、凹部5、6の幅(第1の電極4と第2の電極2との間隔)は、例えば、約4μm程度である。能動素子90の寸法は、例えば、約1.4μm2程度である。但し、能動素子90のサイズは、この値に限定されず、例えば、約5.3μm2程度以下であってもよい。共振器60の各部のサイズは、上記寸法に限定されるものではなく、発振する電磁波の周波数に応じて設計上適宜設定されるものである。
また、図27に示すように、導波路70における第1の電極4と第2の電極2間の間隔に比べて、共振器60が形成されている部分の第1の電極4と第2の電極2間の間隔は、狭い。
MIMリフレクタ50は共振器60の開口部と反対側の閉口部に配置されている。金属/絶縁体/金属からなるMIMリフレクタ50の積層構造により、第1の電極4と第2の電極2は高周波的に短絡される。また、MIMリフレクタ50は、直流的には開放(オープン)でありながら、高周波を反射させることが可能となるという効果を有する。
第1の電極4(4a,4b,4c)および第2の電極2,2aは、いずれも例えば、Au/Pd/Tiのメタル積層構造からなり、Ti層は、絶縁体基板10との接触状態を良好にするためのバッファ層である。第1の電極4a,4b,4cおよび第2の電極2,2aの各部の厚さは、例えば、約数100nm程度であり、全体として、図29(a)および図29(b)に示すような平坦化された積層構造が得られている。なお、第1の電極4、第2の電極2は、いずれも真空蒸着法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
さらに詳細には、第1の電極4aおよび第1の電極4cは、例えば、Au/Pd/Tiからなり、第1の電極4bは、例えば、Au/Tiからなる。第2の電極2は、例えば、Au/Pd/Tiからなり、第2の電極2aは、例えば、Au/Tiからなる。
尚、第1の電極4bの表面層を形成するTi層は、ボンディングワイヤ12bによって取り出し電極を形成する際、接触抵抗を低減するために除去することが望ましい。同様に、第2の電極2aの表面層を形成するTi層は、ボンディングワイヤ12aによって取り出し電極を形成する際、接触抵抗を低減するために除去することが望ましい。
絶縁層3は、例えば、SiO2膜で形成することができる。その他、Si3N4膜、SiON膜、HfO2膜、Al2O3膜などを適用することもできる。なお、絶縁層3の厚さは、MIMリフレクタ50の幾何学的な平面寸法と、回路特性上の要求されるキャパシタ値を考慮して決めることができ、例えば、数10nm〜数100nm程度である。絶縁層3は、CVD法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
同様に、層間絶縁膜9は、例えば、SiO2膜で形成することができる。その他、Si3N4膜、SiON膜、HfO2膜、Al2O3膜などを適用することもできる。層間絶縁膜9の厚さは、図29(a)に示すように、第2の電極2aと層間絶縁膜9の全体の厚さが、第1の電極4の厚さと略同程度となるように設定されている。層間絶縁膜9は、CVD法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
また、絶縁体基板10は、半導体層91aよりも低誘電率材料の基板からなることが、電波を効率良く取り出す上で望ましい。低誘電率材料の絶縁体基板10としては、例えば、ポリイミド樹脂基板、テフロン(登録商標)基板などを適用することができる。絶縁体基板10の厚さは、例えば、200μm程度である。
変形例2に係るテラヘルツ発振検出素子において、上方は空気であるため、比誘電率εair=1である。絶縁体基板10として、ポリイミド樹脂基板を使用すると、ポリイミド樹脂の比誘電率εpoly=3.5であるため、発振素子として動作時、全体の発振出力に対する絶縁体基板10の下方への発振出力の割合は、εpoly 3/2/(εair 3/2+εpoly 3/2)=0.87で表される。すなわち、全体の発振出力の内、約87%は、絶縁体基板10側に放射され、ホーン開口部80から横方向に放射される発振出力は、相対的に増大する。また、検出素子として動作時も、同様に、ホーン開口部80から横方向に効率よくテラヘルツ電磁波を検出可能である。
さらに、絶縁体基板10として、テフロン(登録商標)樹脂基板を使用すると、テフロン(登録商標)の比誘電率εtef=2.1であるため、発振素子として動作時、全体の発振出力に対する絶縁体基板10の下方への発振出力の割合は、εtef 3/2/(εair 3/2+εtef 3/2)=0.75で表される。すなわち、発振素子として動作時、全体の発振出力の内、約75%は、絶縁体基板10側に放射され、ホーン開口部80から横方向に放射される発振出力は、相対的に増大する。また、検出素子として動作時も、同様に、ホーン開口部80から横方向に効率よくテラヘルツ電磁波を検出可能である。
MIMリフレクタ50は、図29(a)に示すように、第1の電極4aと第2の電極2間に絶縁層3を介在させた構造から形成されている。また、図29(b)から明らかなように、RTDからなる能動素子90は、絶縁体基板10上に第1の電極4aを介して、配置されている。第1の電極4aは、RTDのn+GaInAs層91bに接触して配置されている。第2の電極2は、RTDのn+GaInAs層91aに接触して配置されている。さらに、第1の電極4(4b,4c)は、絶縁体基板10上に延在して配置されている。
このように、第1の電極4が、絶縁体基板10上に延在して配置されていることから、第1の電極4と第2の電極2は、互いに短絡されることがなく、RTDのn+GaInAs層91aとn+GaInAs層91b間に所定の直流バイアス電圧を印加することができる。
なお、第1の電極4には、ボンディングワイヤ12bが接続され、第2の電極2aには、ボンディングワイヤ12aが接続されて、第1の電極4と第2の電極2a間には、直流電源15が接続されている。また、第1の電極4と第2の電極2a間には、寄生発振を防止するための抵抗(図示省略)が接続されている。
変形例2に係るテラヘルツ発振検出素子の構造において、第1の電極4上に直接、また第2の電極2上に層間絶縁膜9を介して絶縁体基板10を貼付け、半導体基板1をエッチングで除去した後の上下反転した構造は、図29(a)および図29(b)に示すように表される。図29(a)および図29(b)に示すように、変形例2に係るテラヘルツ発振検出素子においては、第2の電極2上には半導体層91aが配置されが、第2の電極2aも露出するため、第2の電極2aに対して、ワイヤボンディングなどの電極取り出し工程を容易に行うことができる。
変形例2に係るテラヘルツ発振検出素子の製造方法においては、図2(a)および図2(b)に示すように、半導体基板1上に半導体層91aを形成後、パターニングによって、半導体層91aの幅を狭く形成し、半導体層91a上に形成される第2の電極2のパターン幅を狭く形成する。残りの部分には、第2の電極2に接続し、所定の幅を有し、相対的に厚い第2の電極2aを形成する。結果として、図2(a)および図2(b)に示すように、第2の電極2aが、半導体基板1に接触する構造を得る。
次に、図29(a)および図29(b)に示すように、第1の電極4上に直接、また第2の電極2上に層間絶縁膜9を介して絶縁体基板10を貼付け、半導体基板1をエッチングで除去した後の上下反転した構造を得る。
次に、図27に示すように、第1の電極4にボンディングワイヤ12bを接続し、第2の電極2aに、ボンディングワイヤ12aを接続することで電極取り出しを実施する。
半導体基板1は、例えば、半絶縁性のInP基板によって形成され、厚さは、例えば、約600μm程度である。InP基板のエッチング液としては、例えば、塩酸系のエッチング液を適用することができる。
変形例2に係るテラヘルツ発振検出素子において、厚さdを有する絶縁体基板10をサンプル表面に貼付け、半導体基板をエッチングにより除去する工程後の模式的鳥瞰構造は、図30に示すように表され、図30の裏面から見た模式的鳥瞰構造は、図31に示すように表される。図30から明らかなように、第1の電極4は、直接絶縁体基板10に貼り付けられている。また、第2の電極2,2aは、図30では図示を省略しているが、図29(a)および図29(b)に示すように、層間絶縁膜9を介して絶縁体基板10に貼り付けられている。図31の詳細構造は、図27に対応している。
変形例2に係るテラヘルツ発振検出素子として、共鳴トンネルダイオード(RTD)の模式的断面構造は、図3(a)と同様に表される。また、その変形例の模式的断面構造は、図3(b)と同様に表される。
図3(a)は、半導体基板1上に配置された構造例であるが、その後の工程によって、第1の電極4aに絶縁体基板10を貼り付けた後、半導体基板1は、エッチングによって除去される。したがって、図3(a)は、絶縁体基板10を貼り付け工程前における能動素子90近傍の模式的断面構造に相当している。
前述と同様に、能動素子90としてはRTDが代表的なものであるが、これ以外のダイオードやトランジスタでも構成可能なものである。その他の能動素子としては、例えば、TUNNETTダイオード、IMPATTダイオード、GaAsFET、GaN系FET、HEMT、HBTなどを適用することもできる。
変形例2に係るテラヘルツ発振検出素子の発振素子としての動作時のXYZ軸方向における3次元の電磁界シミュレーション結果の一例は、図32に示すように表される。Y軸方向が、電波の出力方向であり、極めて良好な指向性が得られていることがわかる。図32の例は、図30および図31に示す変形例2に係るテラヘルツ発振検出素子において、絶縁体基板10を、厚さd=200nmのポリイミド基板によって形成し、発振周波数f=0.5THzとした結果である。
変形例2に係るテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、高効率かつ高出力に、基板に対して横方向に指向性高くテラヘルツ電磁波を発振および検出することができ、しかも集積化が容易となる。
―変形例3・変形例4―
変形例3に係るテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造は、図33(a)に示すように表され、変形例4に係るテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造は、図33(b)に示すように表される。
変形例3に係るテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造は、MIMリフレクタ50を構成する第2の電極2にスタブ構造を備える例であり、変形例4に係るテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造は、MIMリフレクタ50を構成する第1の電極4にスタブ構造を備える例である。図29(a)から明らかなように、第2の電極2上には、半導体層91aが配置されているため、図33(a)および図33(b)では、半導体層91aが表示されているが、半導体層91aの下には、第2の電極2のパターンが同一のパターン形状で配置されている。
すなわち、図33(a)に示すように、MIMリフレクタ50を構成する部分において、第2の電極2は、複数のスタブ13Aを備える。
また、図33(b)に示すように、MIMリフレクタ50を構成する部分において、第1の電極4は、複数のスタブ13Bを備える。
複数のスタブ13Aまたは13Bは、共振器60に面して等間隔に配置されていてもよく、或いは、その間隔が変化するように配置されていてもよい。
上記の変形例3・変形例4を組み合わせて、第2の電極2と第1の電極4の両方に複数のスタブを備えていてもよい。
電磁波の伝送線路の一部に電磁波の波長の4分の1の長さのスタブを設けて、その中に電磁波を引き込み、それを反射させて伝送線路に戻すことにより共振回路が形成されることが分かっている。これは、伝送線路に入射した電磁波のうち、スタブの長さの4倍の波長を持つ電磁波のみが、スタブの位置で等価的に短絡され、これによって当該電磁波が反射されるため、その電磁波の伝送線路からの漏れが少なくなるという現象である。この方法によれば、入力される電磁波の波長に対してスタブの長さが4分の1波長と決まっているために、電磁波の波長がスタブの長さの4倍になる電磁波に対しては強く共振して反射させることができるが、帯域幅の広い電磁波についてはその反射効果は少ない。
変形例3のスタブ13Aの長さは、帯域を持った入射電磁波の中心部分の電磁波の4分の1波長としないで、4分の1からずれた長さにする。例えば、反射させたい周波数幅があったときその周波数幅の中央値の周波数を持つ電磁波を一部反射させるための2波長〜3波長以上の長さのスタブ13Aを多く設けることにより、反射させたい周波数幅の電磁波を幅広い範囲で反射させることが可能である。
当然のことながら、電磁波の反射率は4分の1波長のときと比べると小さくなるのであるが、それでもスタブがない場合と比較するとかなりの反射が起こる。そして、共振条件がゆるい分だけ、ある帯域を持った周波数(ある波長の幅を持った電磁波)に対して、満遍なく反射する効果がある。また、多段スタブの間隔は、反射させたい電磁波の周波数幅の中央値の周波数を持つ電磁波に対して、波長の半分程度の長さとすることにより各スタブからの反射の間に強め合う干渉(ブラッグ反射)が起こり、反射波が重ねあわされて、反射率がほぼ100%の大きな値になる。スタブの長さ、数、間隔によって、反射する周波数幅、中心周波数は総合的に決定される。
所定の帯域幅を有する電磁波の中心波長をλ0として、スタブの間隔をλ0/2とすると、反射率が100%に近い電磁波の波長範囲Δλを得ることができる。このとき、スタブの長さは、2〜3λ0以上に設計するのがよい。また、スタブの幅がスタブの間隔の半分のとき、スタブ数5〜10個程度の少ない数で100%に近い大きな反射率となる。スタブ幅がそれ以外のときは大きな反射率を得るためにはスタブ数を増やす必要があり、また、周波数幅も狭くなる。しかしながら、これらの長さは限定されるものではなく反射する帯域幅との関係で設計的に規定されるものである。
なお、変形例3では、スタブ13AおよびMIMリフレクタにより、閉口部側に伝送する漏れ電磁波が反射され、開口側に戻される。そして、反射された電磁波が出力として放射されるために、能動素子90から発振される電磁波は高出力となる。
変形例4においてもスタブ13Bの動作は、スタブ13Aと同様であるため、重複する説明は省略する。
なお、第2の電極2と第1の電極4の両方に多段のスタブを設けることにより、片方だけの場合に比べ約半分のスタブ数で同等の大きな反射率を得ることができる。また、周波数幅や中心周波数を決める際の設計の自由度を上げることができるので、設計上極めて有効である。なお、第2の電極2と第1の電極4の双方に付けるスタブの長さ、数、間隔は必ずしも等しい必要はなく、設計上自由に変更することができる。
変形例3および変形例4に係るテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、高効率かつ高出力に、基板に対して横方向に指向性高くテラヘルツ電磁波を発振および検出することができ、しかも集積化が容易となる。
変形例3および変形例4に係るテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、MIMレフレクタを構成する電極にスタブ構造を組み合わせることによって、基板に水平な方向にさらに効率良く、指向性高くテラヘルツ電磁波を発振および検出することが可能となる。
―変形例5―
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の変形例5に係るテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造の模式的平面構成は、図34に示すように表される。
変形例5に係るテラヘルツ発振検出素子においても、第1の電極4(4a,4b,4c)、第2の電極2,2a、MIMリフレクタ50、共振器60、能動素子90の構成は、変形例2と同様であるため、以下において、重複説明は省略する。
変形例5に係るテラヘルツ発振検出素子は、図34に示すように、絶縁体基板10と、絶縁体基板10上に配置された第1の電極4(4a,4b,4c)と、第1の電極4a(図29)上に配置された絶縁層3(図29)と、絶縁体基板10上に配置された層間絶縁膜9(図29)と、層間絶縁膜9上に配置され、かつ第1の電極4aに対して絶縁層3を介して第1の電極4に対向して配置された第2の電極2,2aと、第2の電極2上に配置された半導体層91aと、絶縁体基板10上に第1の電極4に隣接し、かつ第2の電極2aとは反対側に第1の電極4に対向して配置された第1スロットライン電極41と、絶縁体基板10上に第2の電極2aに隣接し、かつ第1の電極4とは反対側に第2の電極2aに対向して配置された第2スロットライン電極21と、絶縁層3を挟み第1の電極4aと第2の電極2間に形成されたMIMリフレクタ50と、MIMリフレクタ50に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された共振器60と、共振器60の略中央部に配置された能動素子90と、共振器60に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された第1導波路70と、第1導波路70に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された第1ホーン開口部80と、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第1スロットライン電極41間に配置された第2導波路71と、第2導波路71に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第1スロットライン電極41間に配置された第2ホーン開口部81と、絶縁体基板10上に対向する第2の電極2aと第2スロットライン電極21間に配置された第3導波路72と、第3導波路72に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第2の電極2aと第2スロットライン電極21間に配置された第3ホーン開口部82とを備える。
変形例2と同様に、能動素子90としてはRTDが代表的なものであるが、これ以外のダイオードやトランジスタでも構成可能なものである。その他の能動素子としては、例えば、TUNNETTダイオード、IMPATTダイオード、GaAsFET、GaN系FET、HEMT、HBTなどを適用することもできる。
ホーン開口部80〜82は、開口ホーンアンテナを構成する。
変形例5に係るテラヘルツ発振検出素子においては、図34に示すように、出力端におけるスロットライン電極21および41の幅W4は、例えば、160μm程度である。また、図34に示すように、出力端におけるホーン開口部80の幅D20およびホーン開口部81および82の幅D10、および、スロットライン電極21および41の幅W4は、適宜変更可能である。
導波路70は、共振器60の開口部に配置される。
MIMリフレクタ50は共振器60の開口部と反対側の閉口部に配置される。
MIMリフレクタ50を構成する部分において、第2の電極2は、図33(a)に示された変形例3と同様の複数のスタブを備えていても良い。同様に、MIMリフレクタ50を構成する部分において、第2の電極2は、図33(b)に示された変形例4と同様の複数のスタブを備えていても良い。
また、上記において、複数のスタブは、共振器60に面して等間隔に配置されていても良く、また、間隔が変化するように配置されていても良い。
また、絶縁体基板10は、半導体層91aよりも低誘電率材料の基板からなることが、横方向に電波を効率良く、指向性高く取り出す上で望ましい。低誘電率材料の絶縁体基板10としては、第1の実施の形態と同様に、例えば、ポリイミド樹脂基板、テフロン(登録商標)基板などを適用することができる。
絶縁体基板10として、ポリイミド樹脂基板を使用すると、全体の発振出力の内、約87%は、絶縁体基板10側に放射され、ホーン開口部80から横方向に放射される発振出力は、相対的に増大する点は、変形例2と同様である。
また、絶縁体基板10として、テフロン(登録商標)樹脂基板を使用すると、変形例2と同様に、全体の発振出力の内、約75%は、絶縁体基板10側に放射され、ホーン開口部80から横方向に放射される発振出力は、相対的に増大する点も、変形例2と同様である。
変形例5に係るテラヘルツ発振検出素子においては、能動素子90に接続された第1の電極4および第2の電極2からなるテーパスロットアンテナの両サイドに、同じ形状をしたテーパ形状の1対のスロットライン電極41、21を配置することで、変形例2に比べ、指向性がさらに向上する。
変形例5に係るテラヘルツ発振検出素子によれば、第1の電極4および第2の電極2からなるテーパスロットアンテナの両サイドに、テーパ形状の1対のスロットライン電極41、21を並列化配置することで、絶縁体基板10上にテーパスロットアンテナを集積化しても、絶縁体基板10の影響を抑制し、充分な指向性を得ることができる。
中央部の第1の電極4および第2の電極2からなるテーパスロットアンテナから広がった電界が、両サイドに設けた1対のスロットライン電極41、21に引き込まれて、スロットライン電極41、21の端面で反射され、中央部の第1の電極4および第2の電極2に戻ってくる。このとき、中央部の第1の電極4および第2の電極2およびスロットライン電極41、21内には、定在波が形成され、反射してきた電界によって、外部に電磁波が放射される。中央部の第1の電極4および第2の電極2および1対のスロットライン電極41、21からの放射電磁界が、干渉し合うことによって、指向性が向上する。
変形例5に係るテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、かつスロットライン電極を並列化配置して定在波を有効に発生させることによって、さらに高効率かつ高出力に、基板に対して横方向に指向性高くテラヘルツ電磁波を発振および検出することができ、しかも集積化が容易である。
―変形例6―
実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子の変形例6に係るテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造の模式的平面構成は、図35に示すように表される。
変形例6に係るテラヘルツ発振検出素子においても、第1の電極4、第2の電極2、MIMリフレクタ50、共振器60、能動素子90、第1のスロットライン電極41、第2のスロットライン電極21の構成は、第2の実施の形態と同様であるため、以下において、重複説明は省略する。
変形例6に係るテラヘルツ発振検出素子は、図35に示すように、図34に示した変形例5の電極パターン構成に対して、さらに、1対のスロットライン電極22,42を並列化配置している。すなわち、絶縁体基板10上に第1スロットライン電極41に隣接し、かつ第1の電極4とは反対側に第1スロットライン電極41に対向して配置された第3スロットライン電極42と、絶縁体基板10上に第2スロットライン電極21に隣接し、かつ第2の電極2aとは反対側に第2スロットライン電極21に対向して配置された第4スロットライン電極22と、絶縁体基板10上に対向する第1スロットライン電極41と第3スロットライン電極42間に配置された第4導波路74と、第4導波路74に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1スロットライン電極41と第3スロットライン電極42間に配置された第4ホーン開口部84と、絶縁体基板10上に対向する第2スロットライン電極21と第4スロットライン電極22間に配置された第5導波路73と、第5導波路73に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第2スロットライン電極21と第4スロットライン電極22間に配置された第5ホーン開口部83とを備える。
また、絶縁体基板10は、半導体層91aよりも低誘電率材料の基板からなることが、横方向に電波を効率良く、指向性高く取り出す上で望ましい。低誘電率材料の絶縁体基板10としては、第1の実施の形態と同様に、例えば、ポリイミド樹脂基板、テフロン(登録商標)基板などを適用することができる。
図35の構成において、スロットライン電極21,41の外側に1対のスロットライン電極22,42をさらに並列化配置することによって、指向性がさらに向上する。
変形例6に係るテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、かつ2対のスロットライン電極を並列化配置して定在波を有効に発生させることによって、さらに高効率かつ高出力に、基板に対して横方向に指向性高くテラヘルツ電磁波を発振および検出することができ、しかも集積化が容易である。
本実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子によれば、単一素子のRTDを使用して、バイアス条件を変えることによって、発振素子としても検出素子としても動作することができる。
本実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子によれば、RTDの負性抵抗により発振素子として機能し、非線形性を利用して、検出素子として機能する。
本実施の形態に係る無線伝送装置に適用されるテラヘルツ発振検出素子によれば、共鳴トンネルダイオードという電子デバイス単体で発振素子としても検出素子としても動作するので、発振器および検出器が、飛躍的に小さくなり、なおかつ単純な振幅遷移変調によるテラヘルツディジタルデータ信号の送受信が可能となる。
本実施の形態によれば、上記のテラヘルツ発振検出素子を適用し、単純な振幅遷移変調によるテラヘルツ信号の送受信が可能な無線伝送装置を提供することができる。
もちろん、ひとつの素子で送信と受信を同時に行うことはできないが、送受信を交互に行うHalf−Duplex方式の通信システムにおいては、このような機能の素子を用いれば送受信器の構成が簡素化できる。
本実施の形態によれば、共鳴トンネルダイオードと呼ばれるデバイスを用い、ひとつだけで送信素子と受信素子を兼ねた機能を実現し、送受信器の小型化を可能とする無線伝送装置を提供することができる。
本実施の形態によれば、共鳴トンネルダイオードを用いて、単一の素子でテラヘルツ発振素子としても、テラヘルツ検出素子としても機能するテラヘルツ発振検出素子を用い、単純な振幅遷移変調によるテラヘルツ信号の送受信が可能な無線伝送装置を提供することができる。
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態に係る無線伝送装置について記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。