JP3499262B2 - 電子部品 - Google Patents

電子部品

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JP3499262B2
JP3499262B2 JP22478793A JP22478793A JP3499262B2 JP 3499262 B2 JP3499262 B2 JP 3499262B2 JP 22478793 A JP22478793 A JP 22478793A JP 22478793 A JP22478793 A JP 22478793A JP 3499262 B2 JP3499262 B2 JP 3499262B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子の 2次元的伝導性
を発現させ得る人工格子膜を用いた電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】量子力学によれば、エネルギバンド構造
の異なる物質を、電子のド・ブロイ波長(λd )のオー
ダー以下で積層したヘテロ超格子構造により、様々な量
子力学的な効果が発現する。図61は、エネルギ障壁の
高さが異なる半導体を、ヘテロ接合したときに現れる量
子効果を模式的に示したものである。障壁の高さが大き
い物質の幅がλd 程度以下になるとトンネル効果が現れ
る。また、障壁の高さが小さい物質の幅がλd 程度以下
になると量子井戸準位が形成される。そして、両者の幅
が共に小さくなるとミニバンドが形成される。このミニ
バンドを利用することにより、共鳴トンネル効果等が得
られるため、これらの研究が盛んに行われている。
【0003】これらのヘテロ超格子構造を実現するため
の材料系としては、半導体同士、特に化合物半導体同士
の組み合わせが多く用いられてきた。その理由は、化合
物半導体における電子のド・ブロイ波長が長く、さらに
散乱長も長いという物性的な特徴に加え、化合物半導体
の混晶を使用することで、結晶系および格子定数が同じ
で、障壁の高さが異なる組み合わせが得られるという結
晶学的な特徴を有するためである。さらに、成膜プロセ
スとして、分子線エピタキシ法(MBE)や有機金属を
使用した化学的気相成長法(MOCVD)、両者を組み
合わせたガスソースMBE法等の技術が十分開発され、
利用されてきたためである。
【0004】一方、半導体同士や、一方の半導体のバン
ドギャップが大きい場合の半導体/絶縁体の組み合わせ
以外の、金属/半導体や金属/絶縁体の組み合わせの場
合でも、基本的には図61に示した半導体同士の組み合
わせと同様の効果が期待される。ただし、伝導電子供給
源として金属を用いた場合は、キャリア数が多く抵抗が
小さいために、大電流で高速に電気を流せるという長所
がある半面、ド・ブロイ波長が短いために、 1ナノメー
トルのオーダーの非常に微細な周期で積層する必要があ
る。この他に、キャリア数が多いために、 2次元電子系
になりにくいという欠点がある。特に最大の問題点は、
金属と半導体や絶縁体とをナノメートルのオーダで交互
に積層するための成膜プロセスにある。金属と半導体や
絶縁体とでは、結晶系や格子定数、表面エネルギ等が異
なり、濡れ性が悪い組み合わせが多い。このため、それ
らを交互に層状成長させることは容易ではなかった。ま
た、熱力学的な不安定さに起因して、膜質を向上させる
ために高温で成膜することは不可能であった。
【0005】このような難点を抱かえつつも、比較的相
性の良い金属と半導体との組み合わせが、主として格子
定数の一致という観点から模索されてきた。例えば、ベ
ルコアのN.Tabatabaieらは、MBE法を用いて、GaAs/A
lAs(2nm)/NiAl(3.3nm)/AlAs(2nm)/GaAs構造を形成し
て、ホットエレクトロンダイオードを作製し、電気的特
性を評価した結果、金属の一種の金属間化合物であるNi
Al膜中に量子効果に基くミニバンドが形成された初めて
の証拠を得ている(Appl.Phys.Lett.53,2528(1988)参
照)。
【0006】また、金属/絶縁体の組み合わせでは、絶
縁体の持つ高い障壁を利用することができ、組み合わせ
の範囲も広がるという利点がある。しかし、成膜技術
は、金属/半導体の組み合わせに比べてさらに困難にな
る。東工大の浅田らは、 CaF2(10nm)/ CoSi2 (1.9nm)/
CaF2 (0.9nm)/CoSi2 (2.5nm)/ CaF2 (0.9nm)/n-Si(11
1)の組み合わせで超格子構造を作製し、金属/絶縁体
超格子で初めて量子効果を観測した(1992年春期応物講
演番号 28a-T-5参照)。しかしながら、CoSi2 とCaF2
の濡れ性が悪いため、 CaF2 が結晶化して成長するのに
必要な基板温度500℃以上では、他方のCoSi2 は凝集し
て平坦に成長しない。そのため、 CaF2上に 500℃でSi
を 2層分積んだ後、常温でCoを 1層分積み重ね、固相成
長によりCoSi2 にするという工程を繰り返して成膜して
いる。このように、上記した金属/絶縁体超格子は、非
常に複雑な製造工程が必要となるという大きな欠点を有
していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、金属
/絶縁体の組み合わせによれば、大電流で高速に電気を
流せる、絶縁体の持つ高い障壁を利用することができ
る、組み合わせの範囲が広がる等の利点が得られるもの
の、金属と半導体や絶縁体とでは結晶系や格子定数、表
面エネルギ等が異なることから、これらをナノメートル
オーダーで交互に層状成長させることは非常に困難であ
った。また、従来実現されたものであっても、非常に複
雑な製造工程が強いられる等という問題があった。
【0008】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、金属/絶縁体の組み合せで、 2次元
電子系の有する物性を利用した量子化素子を実現する上
で不可欠な安定な人工格子構造を、再現性よくかつ容易
に作製することを可能にした電子部品を提供することを
目的としている。また、そのような人工格子膜を用いた
ダイオード、トランジスタ、真空エミッタ素子等の各種
の電子部品を、再現性よくかつ容易に提供することを目
的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段と作用】本発明者らは、上
記した課題を解決するために、まず金属/絶縁体の人工
格子が安定に成長するための条件の原理的な考察を行
い、ヘテロ系人工格子の成膜設計理論の構築を行った。
図1に、通常の微細な周期の人工格子構造を実現する上
で不可欠な、層状ヘテロエピタキシャル成長するための
条件の模式図を示す。
【0010】図1において、縦軸は、一般に判断の基準
となっている、ヘテロ成長面における下地層結晶と堆積
層結晶との整合条件である。ヘテロエピタキシャル成長
させるには、「ヘテロ成長面における格子形状が低次で
一致し、格子間隔も略一致する(ミスフィット歪み量が
小さい)こと[条件1]」が必要となる。
【0011】一方、横軸は、結晶内の結合力と界面の原
子間に働く結合力との比である。もし、堆積膜内の結合
力(εo )が界面の結合力(εso)より大きすぎると
(図1中で右方)、濡れが悪くなり堆積膜は島状に成長
する。一方、逆に界面の結合力(εso)が堆積膜内の結
合力(εo )と下地膜内の結合力(εs )より大きすぎ
ると(図1中で左方)、堆積膜と下地膜とが反応して規
則化化合物や固溶を生じる。従って、金属層の上に絶縁
層、絶縁層の上に金属層を層状成長させるためには、金
属層内の結合力をεM 、絶縁層内の結合力をεI 、界面
の結合力をεMIとすると、 εM 〜εI 〜εMI[条件2] であることが必要となる。
【0012】従って、金属層と絶縁層とを交互に層状ヘ
テロエピタキシャル成長(通常 F-M型成長と呼ばれる)
させるためには、上記した双方の条件を満足する、図1
中に示した領域にあることが必要である。すなわち、層
状ヘテロエピタキシャル成長による人工格子は、[条件
1]と[条件2]に適合する金属/絶縁体の組み合わせ
により作製すればよいことを、本発明者らはまず見出し
た。
【0013】上記した[条件1]の格子面の適合性は、
既存の結晶系および格子定数に関するデータが使用でき
る。また、[条件2]のうち、金属や絶縁体の原子間の
結合力は、これらの固体の凝集エネルギの値から計算で
きる。また、結晶の融点等を利用しても、おおよその値
を推定することができる。問題となるのは、[条件2]
のうちの金属と絶縁体との間の界面の結合力(実験的に
測定する場合は界面エネルギ)の値である。この値は、
層状エピタキシャル成長には決定的な影響を持っている
半面、雰囲気等にも影響されるため、信頼できるデータ
はほとんどないのが現状である。
【0014】そこで本発明者らは、界面に働く結合力の
起源について、量子力学的に考察を加えていった結果、
非常に弱い相互作用(ファン・デル・ワールス力と呼ば
れる)を除くと、固体物質間に働く結合力の大きさは、
それぞれの物質の結合様式の類似性に依存していること
に着眼した。図2に、定性的に異なる 3つの型の固体、
すなわち金属結合的固体、共有結合的固体、イオン結合
的固体の模式的相図を示す(「固体の化合物と物性」、
W.A.Harrison著、小島忠宣他訳、現代工学社、1983年、
p46参照)。すなわち、同種類の固体間や、金属結合/
共有結合、共有結合/イオン結合の固体間は図中で隣接
しており、結合エネルギが生じる余地がある。一方、純
金属や合金とイオン結合的絶縁性化合物とは、結合様式
の類似性がなく、結合力は必然的に小さくなる。従っ
て、このような組み合わせでは、金属/絶縁体の人工格
子は安定に存在し得ないことになる。
【0015】これらのことから、金属/絶縁体の組み合
わせにおいて、図2の縦軸に相当する金属結合度が異な
ることは、人工格子の目的から不可避であるが、横軸の
極性結合度の近い組み合わせを利用することによって、
界面の結合力が大きくなり、人工格子を安定に成膜する
ことが可能になる。具体的には、(1) 純金属ないしは金
属間化合物と、極性度の小さな共有結合性化合物のうち
の絶縁体との組み合わせ、および(2) イオン結合性を持
つ化合物金属(良導性化合物)と、イオン結合性化合物
や極性度の大きな共有結合性化合物のうちの絶縁体との
組み合わせである。
【0016】ここで、上記 (1)の組み合わせにおいて、
共有結合的固体の中で例外的に絶縁体になるものとし
て、ダイヤモンドや立方晶、六方晶のBNが挙げられる
が、これらは大きな結合力と小さな格子定数を持つこと
が知られており、これに匹敵する結合力と格子定数を持
つ金属が存在しないため、やはり人工格子にはなり得な
い。そこで唯一可能性があるのは、上記した (2)のイオ
ン結合性を持つ化合物金属と化合物絶縁体との組み合わ
せ、換言すると導電性のセラミックスと絶縁性のセラミ
ックスとの組み合わせとなる。
【0017】また、上記したイオン結合性は、基本的に
は化合物を形成する元素の電気陰性度の差に比例すると
考えることができる。本発明者らはこのような観点か
ら、イオン結合性の強い化合物を作り得る、ポーリング
による電気陰性度2.0以上の陰性元素と金属との間の化
合物のうちで、電子伝導機構による良導性のものをリス
トアップした。表1に、電気抵抗(比抵抗)が100μΩc
m以下のものを示す。さらに本発明者らは、これらの陰
性元素との間で良導体(良導性化合物)を作る金属を詳
細に検討した結果、以下のことを見出した。まず、酸化
物で良導体になるのは、表1に示すように、7A族のRe
よび8族のRu以降の遷移金属元素(Ru、Rh、Pd、Os、I
r、Pt)である。また、それ以外の窒化物、炭化物、カ
ルコゲン化物、ホウ化物で良導体になるのは、ランタン
系列およびアクチニウム系列の希土類を含む3A族から6A
族までに属する遷移金属のみである。
【0018】
【表1】 また同様に、金属と陰性元素との間の化合物の中で、絶
縁体の目安となるエネルギ・ギャップ(Eg)が 3.0eV
以上のもののうち、化学量論組成からずれて、いわゆる
原子価制御半導体になるものを除いてリストアップし
た。それらを表2に示す。表2に示す化合物の金属元素
について同様に検討した結果、絶縁体を作る金属は、全
て1A族、2A族および1B族から4B族までに属する単純金属
(半金属を含む)であることを見出した。
【0019】
【表2】 上記したイオン結合性を持つ良導性化合物および絶縁性
化合物を構成する元素の組み合わせを、図3の周期律表
にまとめて示す。これらの原子の電子構造を考えると、
良導性化合物を作る金属は、遷移金属と希土類金属に限
られ、d電子やf電子が部分的にしか満たされていない
構造を持つ。一方、絶縁性化合物を作る金属は、全て単
純金属であり、d軌道やf軌道が満たされた電子構造を
持ち、陰性元素と化合することでs電子とp電子が閉殻
構造を作り得る元素と考えることができる。このよう
に、上記した良導性化合物と絶縁性化合物との組み合わ
せ、さらにその中でも特にイオン結合度の差が小さい組
み合わせ、また前述した[条件1]や[条件2]に適合
する組み合わせを使用すれば、金属と絶縁体とを交互に
積層した人工格子膜が実現できることになる。
【0020】 すなわち、本発明の電子部品は、Sc、
Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、G
d、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、A
c、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、
Cf、Es、Fm、Md、No、Lr、Ti、Zr、H
f、V、Nb、Ta、Cr、Mo、およびWから選ばれ
た少なくとも1種の元素と、ホウ素、炭素、窒素、リ
ン、イオウ、セレンおよびテルルから選ばれた少なくと
も1種の元素との化合物、またReRu、Rh、P
d、Os、Ir、およびPtから選ばれた少なくとも1
種の元素と、酸素との化合物からなる良導性物質と、
i、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、
Ba、Ra、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、A
l、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、およびPb
から選ばれた少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、リ
ン、イオウ、セレンおよびテルルから選ばれた少なくと
も1種の元素との化合物からなる絶縁性物質とを、量子
サイズ効果が得られる厚さの範囲内で、層状に交互積層
してなる人工格子膜を具備する電子部品であって、前記
人工格子膜は、前記絶縁性物質からなる単一または多重
の障壁層と、前記障壁層に接して設けられ、前記良導性
物質からなる電極層とを有することを特徴としている。
【0021】なお、表1には、電気抵抗が 100μΩcm以
下の化合物のみについて示したが、電子伝導性を利用す
る用途によっては、 100μΩcm以上の化合物、例えば電
気抵抗が1000μΩcm以下程度までの化合物を利用するこ
とができる。さらに表2には、エネルギ・ギャップで 3
eV以上の化合物のみについて示したが、エネルギ・ギャ
ップがおよそ 1eV以上あれば、 2次元性を現出させる電
子伝導に対する障壁として利用することができる。
【0022】本発明の電子部品における人工格子膜と
は、上記した良導性化合物(化合物金属)からなる層と
絶縁性化合物からなる層とを、量子サイズ効果が得られ
るナノメートルオーダーで交互に積層したものである。
上記良導性化合物および絶縁性化合物は、結晶膜または
アモルファス膜として使用する。
【0023】また、人工格子膜における良導性化合物と
絶縁性化合物との組み合わせは、基本的には上述した良
導性化合物の組と絶縁性化合物の組に含まれる化合物で
あれば任意である。ただし、望ましくはまず第1に、イ
オン結合度の差が小さい良導性化合物と絶縁性化合物と
の組み合わせを使用することである。イオン結合度の差
が大きいと、界面における結合エネルギが小さくなり、
良導性化合物層と絶縁性化合物層を層状に交互積層する
ことが困難となる。具体的には、例えばフィリップスの
定義を使用したときのイオン結合度の差が 0.3以下程度
の良導性化合物と絶縁性化合物とを使用することが好ま
しい。
【0024】また、第2に望ましい組み合わせとして
は、良導性化合物と絶縁性化合物との界面の結合力と、
良導性化合物内の結合力と、絶縁性化合物内の結合力と
が近似する良導性化合物と絶縁性化合物とである。すな
わち、界面の結合力が大きくなり過ぎても、良導性化合
物と絶縁性化合物との反応や固溶が生じるため、良好な
人工格子膜を形成することが難しくなる。また、界面の
結合力が小さ過ぎると、上述したように良導性化合物層
と絶縁性化合物層を層状に交互積層することが困難とな
る。この条件は、結晶系で人工格子膜を構成する場合に
特に重要となるが、アモルファス系で人工格子膜を構成
する場合にも、上記条件から極端に外れると、島状の積
層膜となるおそれがある。
【0025】結晶系で人工格子膜を構成する場合には、
さらにヘテロ成長面における格子形状が 1次、 2次、 3
次というような低次で一致すると共に、格子間隔もほぼ
一致する良導性化合物の結晶膜と絶縁性化合物の結晶膜
との組み合わせを用いることが好ましい。格子間隔は、
具体的にはミスフィット歪み量が5%以内であることが好
ましい。結晶系の場合に、上記条件から外れると、ヘテ
ロエピタキシャル成長させることが困難となる。よっ
て、上記条件を満足する良導性結晶と絶縁性結晶とを、
結晶方位を揃えて交互に積層することにより、良好な結
晶系の人工格子膜を得ることができる。ただし、人工格
子膜の使用条件によっては、上記条件から外れることも
許容される。
【0026】また、良導性化合物層と絶縁性化合物層の
間で反応、固溶、拡散が生じないという条件や、成膜の
容易さ等から、良導性化合物と絶縁性化合物とが同じ陰
性元素による化合物、例えば窒化物同士の組み合わせが
有利である。
【0027】良導性化合物/絶縁性化合物の具体的な有
利な組み合わせとしては、窒化物系では、良導性化合物
としてTiNやVNを用い、かつ絶縁性化合物としてAlN、Ga
Nを用いた組み合わせが挙げられる。TiNやVNの岩塩型結
晶の(111)面と、AlNやGaNのウルツ鉱型結晶の(0001)面
は、同じ格子形状で、不整合歪み量も3%以内である。
また、Ti、V、Al、Gaの電気陰性度は、それぞれ1.5、1.
6、1.5、1.6と非常に近い。また、炭化物系での有利な
組み合わせとして、良導性化合物としてTiC、NbC、Hf
C、NbCの(111)面を用い、かつ絶縁性化合物としてSiCの
(111)面を用いた組み合わせが挙げられる。
【0028】なお、電子の 2次元伝導性を使用した本発
明の電子デバイスは、Si基板上に形成することで、他の
シリコンデバイスと組み合わせて使用することができ
る。その際に、Siの格子定数とSi基板上に形成される金
属/絶縁体人工格子の格子定数が異なる場合には、両者
の格子歪みを緩和するための結晶あるいはアモルファス
のバッファ層を挟むことが好ましい。なお、上記基板と
してはSiの他に、例えばMgO、Ge、 CaF2 、GaAs、サフ
ァイア等を用いることができる。
【0029】また、上述したように、本発明の電子部品
における人工格子膜は、良導性化合物層および絶縁性化
合物層を、それぞれアモルファス膜として使用すること
もできる。これによって、結晶系で問題となるような格
子形状や格子間隔の不整合を考慮する必要がなくなる。
そのため、良導性化合物と絶縁性化合物との組み合わせ
の幅を広げることができる。また、高い伝導性を有する
金属と高い障壁を持つ絶縁体とを、結晶化温度よりも低
い温度で、アモルファスとして積層するため、ヘテロエ
ピタキシャル成長させる必要がなく、かつ急冷凝固させ
てアモルファス層を作製するために島状成長せず、よっ
て各層を容易に平坦に作製することができる。このよう
に、アモルファスで金属/絶縁体による人工格子膜を作
製する場合においても、その組み合わせは図3の周期律
表に示した金属/絶縁体の組み合わせとすることが好ま
しい。
【0030】本発明における人工格子膜を結晶系で構成
する場合、上述した各種化合物の中には高融点の物質が
多く含まれているため、通常のMBE法やMOCVD法
では1000℃以下で結晶性よく成膜できない場合がある。
そのような場合には、金属ないし陰性元素の 1種類以上
を励起させた、以下に示すような成膜法を適用すること
が好ましい。
【0031】(A) 反応性イオンビーム法やクラスター
イオンビーム法等のイオンビームを利用した成膜法。
【0032】(B) 原子状ビームやラジカルビームを利
用した成膜法。
【0033】(C) 成膜時に光を照射し、光エネルギに
よって低温エピタキシャル成長させる成膜法。
【0034】上記 (A)〜 (C)の成膜方法について、さら
に詳述する。まず、 (A)の成膜法のうち、反応性イオン
ビーム法は、例えばまず真空チャンバ内の底部に設けら
れた電子ビーム加熱蒸発源にて、電磁場によって偏向さ
れた電子ビームによりるつぼ内の高融点金属を溶融、蒸
発させる。この蒸発させた高融点金属を、電子ビーム加
熱蒸発源の真上に設けられた基板に蒸着させる。また同
時に、プラズマフィラメント型のイオン源のすぐ後に設
けられた引き出し電極によりプラズマからビームを引き
出し、セクターマグネット型の質量分離器によって所望
のビーム種のみを取り出し、基板直前で減速して緩やか
に照射する。これらにより、化合物薄膜を基板上に形成
する。
【0035】イオンの持つ電子系の励起状態は、化合物
の生成反応の活性化エネルギに役立ち、電場により適切
にコントロールされた並進運動の運動エネルギはエピタ
キシャル成長に役立つ。反応の活性化エネルギは、作製
しようとする物質の種類によってまちまちではあるが、
例えばTiと Nの反応においてはおおよそ 1eV以下であ
る。これに対し、例えば N+ の持つイオン化エネルギは
20eV程度、 N2 + の場合には 7〜 8eVである。従って、
基板温度が室温程度であっても、Ti分子と Nイオンは容
易に反応する。具体的な運動エネルギの最適な値は、作
製する物質の種類に依存するが、エピタキシャル成長の
ための活性化エネルギよりも大きく、かつ成長する結晶
を壊さないために結晶の結合エネルギよりも小さな値が
最適である。多くの場合、数eVから数百eV程度である。
【0036】また、反応性クラスタイオンビーム法で
は、例えばまず真空チャンバ内にて蒸着すべき物質の蒸
気を噴射し、蒸気中の多数の原子が緩く結合したクラス
タ(塊状原子団)を生成する。このクラスタに電子のシ
ャワーを浴びせてクラスタの1%程度をイオン化し、クラ
スタイオンとした後、加速して基板に衝突させる。また
同時に、基板付近に反応性ガスを供給して、基板上でク
ラスタ状の蒸着物質と反応性ガスとの反応を行い、化合
物薄膜を基板上に形成する。
【0037】クラスタイオンビーム法では、るつぼの蓋
に直径と長さの比が 1になるような穴が設けてあり、周
囲に巻かれたフィラメントからの熱電子衝撃によりるつ
ぼが加熱される。るつぼ内の圧力が 0.1Torr以上となる
と、内部から放出される蒸着物質がノズルから噴出する
際に断熱膨脹によって温度が下がり、凝集して数10個か
ら数 100個の粒子からなるクラスタが形成される。クラ
スタを構成する粒子の数は、るつぼ内圧力とノズルの形
状に依存するが、上記の条件ではほとんどの種類の物質
が最も大きなクラスタを形成する。さらに、このクラス
タに電子シャワーを照射して1%程度をイオン化すると、
電場によって扱い易いクラスタイオンとなる。すなわ
ち、 100個程度のクラスタ中の1%程度がイオン化してい
るので、数kVの電界によって加速しても 1個の粒子あた
りのエネルギは数10eVとなる。このような非常に低いエ
ネルギの粒子は、欠陥のない良質な膜を作製するのに適
している。
【0038】また、上記した (B)の成膜方法は、窒素、
炭素、酸素等の陰性元素を超音速の原子状ビームあるい
はラジカルビームにすることにより、化合物を作製する
のに必要な反応の活性化エネルギを持たせる方法であ
る。例えば、 TiNを作製するのに必要な活性化エネルギ
はおよそ 0.8eVであるのに対し、窒素ラジカルの持って
いるエネルギは 5eV程度もある。従って、基板が低温で
あっても、容易に基板上で窒素ラジカルとチタンとが反
応することになる。さらに、ノズルビームであるため、
雰囲気ガス圧を高真空に保ったままで化合物を作製する
ことができる。
【0039】原子状ビームあるいはラジカルビームを得
るためには、マイクロ波放電、RF放電、直流放電等の
種々の方法を用いることができる。さらに、大きな速度
で指向性のよい高密度なビームを得るために、ノズルビ
ーム化すると共に、分子の並進、回転、振動分布の温度
を冷却して作製した中性の高速ビームと、原子状あるい
はラジカルビームとを併用することが好ましい。これに
より、他の部所を高真空に保ったまま基板上の所定の部
位に化合物膜を低温で作製することができる。ここで、
背圧が高いと噴出ガスの周りにショックフロントがで
き、冷却された分子がその領域で衝突によって再度加熱
される。これを避けるときには、スキマーをマッハディ
スクの内側におくとよい。さらに、供給する気体よりも
軽い気体を混合すると、その質量比に応じた利得の運動
エネルギを得ることができる。
【0040】さらに、上記 (A)や (B)の成膜方法におい
ては、化合物を構成する成分の少なくとも 1種をイオン
ビームやラジカルビーム等の励起ビーム状態とすると共
に、他方を分子ビームとし(化合物構成成分を全て励起
ビーム状態とする場合を含む)、各成分を交互に照射し
て 1原子層ずつ成長させることが好ましい。このような
条件を実現する成膜方法としては、超低速の陰性元素の
イオンビームと金属分子ビームとを使用した成膜が最適
である。
【0041】例えば、岩塩型結晶であるTiNやVNの(111)
面や、ZnO型結晶であるAlNやGaNの(0001)面は、いずれ
も窒素原子面と金属原子面が交互に並んでいる。金属面
上に低エネルギの窒素イオンビームを照射すれば、金属
面がでている間はほとんど100%の確率で金属と反応し
て窒素面を形成する。しかし、全て窒素面になった後
は、窒素イオンは表面で電荷交換のみを行い、反応せず
に窒素ガスとして離脱する。このため、原子レベルで平
坦に1原子層分成長させることができる。次に、窒素原
子面に金属分子ビームを照射した場合、窒素原子面上に
堆積した金属原子は窒化物を形成する。また、金属原子
面上にさらに堆積した金属原子は、金属原子面上をマイ
グレーションしていき、やはり窒素原子面上で安定な窒
化物になることが期待される。従って、金属分子ビーム
を照射したときには、窒素イオンビームのように、全て
窒素面になった後に自動的に停止する自己停止性はない
が、膜厚モニタ等で1層分のみ供給するようにすれば、
やはり原子レベルで平坦なほぼ1金属原子層を成長させ
ることができる。このような交互照射を、良導性化合物
と絶縁性化合物に対してそれぞれ行いつつ、これらを交
互に積層することによって、良導性化合物と絶縁性化合
物とを数原子層ずつ平坦に交互積層した人工格子膜を、
容易に成膜することが可能になる。
【0042】上記した (C)の光エネルギを利用した成膜
方法は、原料ガスに相応のエネルギを有する光を照射
し、光分解させて堆積させる方法である。これによっ
て、高融点の化合物を低温で成膜することができる。ま
た、このような方法では、光の波長によりガス分子の励
起のされ方が異なり、その結果として生じる分解生成物
にも差が生じるため、励起の選択性が実現できる。ま
た、光と分子の相互作用において、励起状態は電子励起
と振動および回転励起とに分けられる。この振動励起や
回転励起を誘起することによって、原料ガス分子の基板
表面での表面泳動を促進することができる。これによ
り、生じた膜の平坦化が実現される。
【0043】すなわち、原料ガス分子の結合エネルギ以
下のエネルギに相当する波長の光と、結合エネルギに相
当する波長の光とを、順に照射して成膜することによ
り、低温で、より平坦性の高い膜を形成することができ
る。原料ガス分子の結合エネルギ以下のエネルギに相当
する波長の光は、上述したように、原料ガス分子の表面
泳動を促進する効果を有し、かつ分子はこの時点では光
による分解を起こさず、表面に堆積する。この後、結合
エネルギに相当するエネルギの光を照射し、分解を起こ
させることで、平坦な化合物膜を低温で作製することが
できる。そして、次に堆積させるべき原料ガスを導入
し、交互に同じ操作を繰り返すことによって、原子層レ
ベルで平坦な人工格子膜を形成することが可能となる。
【0044】また、原料ガス分子の特定の結合に相当す
るエネルギの光を用いることで、特定の結合手のみを励
起することができるため、分解の選択性が実現できる。
これにより、成膜初期過程での反応および堆積が生ずる
サイトの制御が可能となり、よって成膜素過程の制御が
可能となる。しかも、一度平坦に原料ガス分子を吸着さ
せた後に分解を起こさせるため、分解生成物や励起され
たラジカル等との二次反応を低減させ、成膜素過程の制
御は非常に容易となる。なお、通常、基板加熱により供
給する原料ガスの分解と表面泳動エネルギを、光により
供給することで、基板加熱の必要がなくなるだけでな
く、積層界面における拡散等が低減され、界面の急峻性
がよい膜が得られる。
【0045】本発明の電子部品は、前述したような人工
格子膜におけるトンネル効果、共鳴トンネル効果等の、
いわゆる量子サイズ効果を利用したものであり、前述し
た絶縁性化合物からなる単一または多重の障壁層と、こ
の障壁層に接して設けられた前述した良導性化合物(金
属性化合物)からなる電極層とを具備してなる。すなわ
ち、本発明においては、上述したような最適な金属/絶
縁体の組み合わせを見出だしたことに基き、従来半導体
同士を積層して作製していた 2次元電気伝導性を発現す
る人工格子が、高い導電性を持つ良導性化合物と高い障
壁を持つ絶縁性化合物とを層状に交互積層することによ
り作製される。従って、本発明の電子部品によれば、金
属(良導性化合物)と絶縁体との人工格子により発現す
る 2次元伝導性を利用して、人工的な半導体とすること
ができるため、トンネル効果や共鳴トンネル効果等の量
子サイズ効果を利用した各種の量子化素子に適用するこ
とができる。
【0046】本発明の電子部品の具体例としては、まず
絶縁性化合物からなる単一障壁層または多重障壁層に接
する良導性化合物からなる電極層、および絶縁性化合物
からなる多重障壁層中に存在する良導性化合物からなる
量子井戸(電極)層を、 1つ以上組み合わせて構成し
た、 2端子、 3端子、あるいは多端子からなる(共鳴)
トンネルダイオードや共鳴トンネルトランジスタ等が挙
げられる。なお、導電性または半導電性の基板上に人工
格子膜を成膜した場合には、基板が電極の 1つを兼ねる
こともできる。これらの共鳴トンネル素子は、非線形抵
抗作用、整流作用、検波作用、増幅作用、スイッチング
作用等を有するものである。また、複数の共鳴トンネル
素子を組み合わせた電子部品に、本発明の電子部品を適
用することもできる。
【0047】また、同様な電極層および量子井戸(電
極)層を、 1つ以上組み合わせて構成した 2端子または
多端子からなる真空エミッタ素子、および真空エミッタ
素子を使用した真空電子部品に、本発明の電子部品を適
用することができる。このような真空電子部品として
は、パワー素子、大電流・高周波対応の真空管代替部
品、多数の真空エミッタ素子を使用した画像形成装置等
が例示される。
【0048】上述したような共鳴トンネル素子における
障壁層や量子井戸電極層は、量子サイズ効果が得られる
厚さで形成すればよく、使用した化合物の性質や目的と
する電子部品の特性に応じて設定するものとする。例え
ば、共鳴トンネル現象を可能とするためには、それぞれ
の膜厚が十分に薄く、しかも界面での電子波の散乱が波
の伝播に影響しないような構造である必要がある。よく
知られているように、十分に深い箱型ポテンシャル井戸
を並べたときの電子波は、膜厚方向には 2次元電子ガス
と呼ばれる自由粒子として振る舞い、電子のもつエネル
ギは 2次元自由運動に伴うエネルギと定在波に対する量
子準位のエネルギの和で表される。後者のエネルギに対
応する電子波長λe (=h/ (2m* E)1/2 )が量子井戸幅L
w の 2倍の整数倍に等しいとき(λe =2Lw )、トンネ
ル確率が最大になる(J.Appl.Phys.Vol.34,No.4(Part1),
April,1963,p864 等参照)。このような関係から、例え
ば障壁層や量子井戸電極層の厚さを設定することが好ま
しい。障壁層や量子井戸電極層は、量子サイズ効果が得
られるおおよそ10nm以下程度の厚さで 1原子層以上形成
されればよい。また、単一障壁層または多重障壁層に接
して設けられる電極層の厚さは特に限定されないが、高
集積化の観点から上述したような量子井戸電極層と同程
度の厚さとすることが好ましい。
【0049】なお、人工格子膜の積層面内方向の導電特
性を用いれば、極めて高電流で低抵抗の配線材料とする
こともできる。また、原理的に、光デバイスへの応用も
可能である。さらに、金属薄膜と絶縁体薄膜との理想的
な接合が達成できるので、金属/絶縁体/金属を積層し
たキャパシタ素子等への応用も可能である。
【0050】次に、本発明の電子部品の具体的な構成例
について述べる。まず、本発明を(共鳴)トンネルダイ
オードに適用した構成例について、図4〜図8を参照し
て説明する。なお、以下の図はポテンシャル構造を示し
ている。本発明を適用したトンネルダイオードとして
は、まず図4に示すように、単一の障壁によるトンネル
ダイオードが挙げられる。このトンネルダイオードは、
前述した絶縁性化合物からなる単一の障壁層と、この障
壁層の両側に接して設けられた、前述した良導性化合物
からなる電極層とを有している。
【0051】また、トンネルダイオードを構成する共鳴
トンネル障壁としては、図5に示すように、 2重障壁
(図5−a)、 3重障壁(図5−b)、さらに多重障壁
(図5−c)が挙げられる。共鳴トンネルダイオードと
しては、これらの共鳴障壁を用いたものが例示される。
共鳴トンネル障壁を用いた共鳴トンネルダイオードは、
上述した電極層以外に、障壁層に挟まれた、前述した良
導性化合物からなる共鳴井戸層を有している。 3重障壁
以上では、各障壁層や各障壁層に挟まれた共鳴井戸層の
厚さは均等でもよい。望ましくは、特定の電圧を 2端子
間に加えたときに、特定の共鳴準位(サブバンド)が一
致するように設計する。さらに、図6(a)および
(b)に示すように、 2重障壁を直列に複数個並べたも
の、また図7に示すように、多重共鳴障壁を複数個並べ
たもの等が挙げられる。
【0052】さらに、エミッタ自身を多重障壁とした共
鳴トンネルダイオードとしては、図8に示すように、多
重障壁エミッタと単一障壁とを組み合わせたもの(図8
−a)、多重障壁エミッタと 2重障壁とを組み合わせた
もの(図8−b)、多重障壁エミッタと 3重(多重)障
壁とを組み合わせたもの(図8−c)が挙げられる。な
お、金属/絶縁体接合において、金属のエネルギ構造を
みると、許容帯の下端からフェルミレベルまで電子が詰
まっているため、ダイオード特性として負性抵抗を得る
ためには、基本的には 3重障壁以上が必要である。
【0053】次に、本発明を共鳴トンネルトランジスタ
に適用した構成例について、図9〜図28を参照して説
明する。図9は、単一の障壁を 2個直列に並べたホット
エレクトロントランジスタである。このトランジスタ
は、前述した絶縁性化合物からなる 2個の障壁層と、こ
れらの障壁層に接して設けられた、前述した良導性化合
物からなる各電極層とを有している。
【0054】ベースとコレクタ間に単一障壁を設けて、
ホットエレクトロンにより動作させるホットエレクトロ
ントランジスタとしては、エミッターベース間のエミッ
タ障壁が、図10に示すように、 2重障壁(図10−
a)、 3重障壁(図10−b)、さらに多重障壁(図1
0−c)による共鳴障壁から構成されるものが挙げられ
る。 3重障壁以上では、各障壁層や各障壁層に挟まれた
共鳴井戸層の厚さは均等でもよい。望ましくは、特定の
電圧を 2端子間に加えたときに、特定の共鳴準位が一致
するように設計する。さらに、共鳴トンネルトランジス
タとしては、図11(a)および(b)に示すように、
2重障壁を直列に複数個並べてエミッタ障壁としたも
の、また図12に示すように、多重共鳴障壁を複数個並
べてエミッタ障壁としたもの等が挙げられる。
【0055】また、エミッタ−ベース間およびベースー
コレクタ間を、いずれも共鳴トンネル効果で通過させる
構造とした共鳴トンネルトランジスタとしては、図13
に示すように、ベースを 2重障壁(図13−a)、 3重
障壁(図13−b)、さらに多数障壁(図13−c)に
よる共鳴障壁としたもの、また図14(a)〜(c)に
示すように、 2重エミッタ障壁と 2重ないし多重共鳴障
壁ベースとを組み合わせたもの、図15(a)〜(c)
に示すように、 3重エミッタ障壁と 2重ないし多重共鳴
障壁ベースとを組み合わせたもの、さらに図16に示す
ように、多重エミッタ障壁と多重共鳴障壁ベースとを組
み合わせたものが挙げられる。
【0056】また、エミッターベース間に複数の共鳴障
壁を使用した共鳴トンネルトランジスタとしては、図1
7(a)および(b)に示すように、 2連 2重ないし多
連 2重エミッタ障壁と 2重共鳴障壁ベースとを組み合わ
せたもの、また図18(a)および(b)に示すよう
に、 2連 2重ないし多連 2重エミッタ障壁と 3重共鳴障
壁ベースとを組み合わせたもの、図19(a)および
(b)に示すように、 2連2重ないし多連 2重エミッタ
障壁と多重共鳴障壁ベースとを組み合わせたもの、図2
0に示すように、多連多重エミッタ障壁と 2重共鳴障壁
ベースとを組み合わせたもの、図21に示すように、多
連多重エミッタ障壁と 3重共鳴障壁ベースとを組み合わ
せたもの、さらに図22に示すように、多連多重エミッ
タ障壁と多重共鳴障壁ベースとを組み合わせたものが挙
げられる。
【0057】さらに、エミッタ自身を多重障壁とした共
鳴トンネルトランジスタとしては、図23(a)〜
(c)に示すように、多重障壁エミッタと単一エミッタ
障壁と 2重ないし多重共鳴障壁ベースとを組み合わせた
もの、図24(a)〜(c)に示すように、多重障壁エ
ミッタと 2重エミッタ障壁と 2重ないし多重共鳴障壁ベ
ースとを組み合わせたもの、図25(a)〜(c)に示
すように、多重障壁エミッタと 3重エミッタ障壁と 2重
ないし多重共鳴障壁ベースとを組み合わせたもの、さら
に図26に示すように、多重障壁エミッタと多重エミッ
タ障壁と多重共鳴障壁ベースとを組み合わせたものが挙
げられる。
【0058】多入力共鳴トンネルトランジスタとして
は、図27(a)に示すように、多重量子井戸をそのま
ま多重ベースとしたものが例示される。また、図27
(b)に示すように、 2重エミッタ障壁と多重ベースと
を組み合わせたもの、図27(c)に示すように、多重
エミッタ障壁と多重ベースとを組み合わせたものが例示
される。さらに、図28(a)〜(c)に示すように、
多重障壁エミッタと単一ないし多重エミッタ障壁と多重
ベースとを組み合わせたものが例示される。このような
多入力の共鳴トンネルトランジスタによれば、多数の入
力を並列に処理することが可能となる。
【0059】上述したように、本発明における人工格子
膜を用いることにより、大きな電流伝達率と早い応答速
度を持つ共鳴トンネルダイオードや共鳴トンネルトラン
ジスタ等の共鳴トンネル素子を提供することができる。
【0060】次に、本発明を(共鳴)トンネル真空エミ
ッタ素子に適用した構成例について、図29〜図36を
参照して説明する。図29は、単一の障壁による真空エ
ミッタ素子である。真空エミッタ素子を構成する共鳴ト
ンネル障壁としては、図30に示すように、 2重障壁
(図30−a)、 3重障壁(図30−b)、さらに多重
障壁(図30−c)が挙げられる。 3重障壁以上では、
各障壁層や各障壁層に挟まれた共鳴井戸層の厚さは均等
でもよい。また望ましくは、特定の電圧を 2端子間に加
えたときに、特定の共鳴準位が一致するように設計す
る。さらに、図31(a)および(b)に示すように、
2重障壁を直列に複数個並べたもの、また図32に示す
ように、多重共鳴障壁を複数個並べたものが挙げられ
る。
【0061】エミッタ自身を多重障壁とした真空エミッ
タ素子としては、図33(a)〜(c)に示すように、
多重障壁エミッタと単一、 2重ないし多重エミッタ障壁
とを組み合わせたもの等が例示される。
【0062】また、多入力の共鳴トンネル真空エミッタ
素子としては、図34(a)に示すように、多重量子井
戸からなる多重ベース入力と、基本的な放出特性を決め
る制御電極とを有するものが挙げられる。また、図34
(b)に示すように、エミッタ−ベース間の障壁を 2重
障壁にしたもの、図34(c)に示すように、エミッタ
−ベース間の障壁を多重障壁にしたもの等が例示され
る。エミッタ自身を多重障壁とした多入力真空エミッタ
素子としては、図35(a)に示すように、多重障壁エ
ミッタと多重ベース入力とを組み合わせたもの、図35
(b)に示すように、多重障壁エミッタと 2重エミッタ
−ベース障壁と多重ベース入力とを組み合わせたもの、
図36に示すように、多重障壁エミッタと多重エミッタ
−ベース障壁と多重ベース入力とを組み合わせたもの等
が例示される。
【0063】上述したように、本発明における人工格子
膜を用いることにより、大きな電流放出率と早い応答速
度を持つ共鳴トンネル真空エミッタ素子を提供すること
ができる。また、多重量子井戸からなる多重入力ベース
を用いることによって、多数の入力を並列処理し、その
演算結果に基いて、大きな電流放出率と早い応答速度を
真空エミッタ素子を提供することができる。
【0064】
【実施例】次に、本発明を実施例によってさらに詳細に
説明する。
【0065】実施例1 低速イオンビームと、クヌーセンセルおよび電子ビーム
加熱蒸着源からの分子ビームが、10-8Torr以下の超高真
空下で利用可能な、図37にその概略構成を示す複合ビ
ーム装置を用いて、人工格子膜を作製した。図37に示
す複合ビーム装置において、基板1は基板回転機構2を
有する基板保持・加熱機構3に保持されて、超高真空成
膜室4内に配置されている。超高真空成膜室4内には、
電子ビーム加熱蒸着源5とクヌーセンセル6が配置され
ている。また、基板1に向けて、低速イオンビーム照射
装置7の射出口7aが開口されている。イオンビーム源
8としては、酸素等の活性な原料ガスも使用可能なよう
に、フィラメント近傍のカバーガスと原料ガスを独立に
供給可能なプラズマフィラメント型を使用している。ま
た、イオンビームライン9には、目的とするイオンのみ
を選択するためのセクターマグネット型質量分離器10
が設置されていると共に、基板直前にはイオンエネルギ
を堆積下地に損傷を与えないレベル以下にするための減
速電極11が設けられている。なお、図中12は引き出
し電極であり、13は試料準備室、14はゲートバルブ
である。
【0066】上記した複合ビーム装置において、電子ビ
ーム加熱蒸着源5にはTiを、クヌーセンセル6にはAlを
収容すると共に、イオンビーム源8として窒素を用い
て、図38(a)に構造を示す共鳴トンネルダイオード
を作製した。まず、研磨後に燐酸で軽いエッチングを施
した MgO(111) 基板21上に、 3重バリア構造を持つTi
N/AlN人工格子膜22を形成した。具体的な構造は、 Mg
O21/TiN23a(300nm)/AlN24a(1.5nm)/ TiN23
b(2.4nm)/ AlN24b(1.5nm)/ TiN23c(2.1nm)/ AlN
24c(1.5nm)/ TiN23d(15nm)とした。 TiNおよび A
lNの成膜条件を下記の表3に示す。
【0067】
【表3】 TiN成膜時は、Ti分子ビームを0.02nm/sの速度で10秒照
射し、窒素イオンビームをビーム電流40μA/cm2 で15秒
照射するという過程を、所定の膜厚まで繰り返した。 A
lNの場合もAl分子ビームと窒素イオンビームを用いて、
同様に成膜した。試料はエッチングにより直径10μm の
メサ型ダイオードとした。基板上の TiN電極23a上に
はAl電極25を、また素子側の TiN23d上にもAl電極
26を形成した。なお、図38(b)に、上記共鳴トン
ネルダイオードのポテンシャル構造を示す。
【0068】人工格子膜の成膜途中のTiN面およびAlN面
の高速反射電子線回折(RHEED)により、TiN(111)面およ
びAlN(0001)面に特有の反射スポットがストリークを引
く形でそれぞれ観察され、平滑な単結晶膜が形成されて
いることが確認された。また、作製したダイオードにつ
いて電気的特性を評価した結果、図39に示すように、
電流−電圧特性には77Kにおける電流のピークバレー比
が2.5という顕著な負性抵抗が観測された。これから、
電子の2次元性を示す量子効果が確かに現れたと判断で
きた。
【0069】実施例2 図40に示すように、低速イオンビームとクラスタイオ
ンビームおよび電子ビーム加熱蒸発源からの分子ビーム
が、10-8Torr以下の超高真空下で使用可能な複合ビーム
方式の成膜装置を用いて、人工格子膜を作製した。図4
0に示す複合ビーム方式の成膜装置は、図37と同様な
構成とされているが、クヌーセンセルに代えて、 1〜 2
mmのノズルを有するるつぼを用いたクラスタイオンビー
ム源15が配置されている。また、図中16はクラスタ
イオンビームによる成膜時に用いる窒素供給源である。
【0070】まず、成膜室4内に MgO基板1を設置し、
電子ビーム加熱蒸発源5内にTiを収納すると共に、クラ
スタイオンビーム源15のるつぼ内にAlを収納した。図
示しない真空ポンプを作動し、成膜室4内を10-11 Torr
台の真空度まで排気すると共に、イオンビームライン9
とイオン源8内を10-9Torr台の真空度まで排気した後、
基板1の温度を 200℃に加熱・保持した。
【0071】次に、基板1をシャッタ17で遮った後、
イオン源8内に原料ガスとして窒素を導入し、フィラメ
ントに通電してプラズマを生成する。引き出し電極12
によりプラズマからビームを引き出した後、セクターマ
グネット型の質量分離器11により N2 + ビーム種のみ
を取り出し、基板1直前で減速してシャッタ17に照射
させながらビーム軌道の調整を行った。次いで、フィラ
メントに通電して発生させた電子ビームを電磁場により
偏向させ、電子ビーム加熱蒸発源5内のTiを溶融、蒸発
させた。シャッタ17を開けて、基板1上にTiを 4nm/m
inの速度で蒸着すると共に、窒素イオンビームを基板上
に照射し、単結晶の TiN薄膜を 2.4nmの厚さに成長させ
た。
【0072】次いで、再び基板1をシャッタ17で遮っ
た後、クラスタイオンビーム源15におけるボンバード
用フィラメントに通電して発熱させ、フィラメントから
の放射熱および放射される熱電子により、るつぼ内のAl
を加熱した。このとき、るつぼ内のAlの蒸気圧が 0.1〜
10Torr程度になる温度(1500℃以上)に昇温すると、る
つぼのノズルからAl蒸気が噴出し、Al蒸気はるつぼと成
膜室4との圧力差により断熱膨脹して、クラスタと呼ば
れる多数のAl原子が緩く結合した塊状原子団を形成す
る。上記クラスタは、るつぼ上方に配置されたグリッド
電極により引き出され、イオン化フィラメントから放出
される熱電子と衝突することにより、その一部がイオン
化されてクラスタイオンとなる。このクラスタイオン
は、加速電極とグリッド電極の間の電界により適度に加
速され、イオン化されずに噴出時の運動エネルギを持つ
中性クラスタと共に蒸着する。この際、イオン化フィラ
メントのイオン化電子電流を 100〜 500mA、加速電極と
グリッド電極間の加速電圧を 3〜 5kVに設定することが
望ましい。
【0073】続いて、窒素ボンベ16のガス供給管を開
き、基板1周囲に窒素を供給した後、シャッタ17を開
き、Alを 2nm/minの速度で蒸着した。このとき、基板1
と基板シャッタ17間に所定寸法の開口を有するマスク
18を配置することによって、基板1の単結晶 TiN薄膜
上に上記開口に見合った寸法で、厚さ 1.5nmの単結晶の
AlN薄膜を形成した。
【0074】この後、窒素ボンベ16のガス供給管のバ
ルブを閉じ、再び成膜室4内の真空度を10-11 Torr台に
真空引きした後、再び基板1をシャッタ17で塞いで、
前述した TiN薄膜の形成と同様な条件で TiN薄膜を形成
した。このとき、基板1と基板シャッタ17間に、上記
マスクより開口寸法の小さい別のマスクを配置すること
によって、基板1の単結晶 AlN薄膜上に、上記開口に見
合った寸法の単結晶TiN薄膜を形成した。
【0075】このようにして、実施例1と同様な構造の
人工格子膜を有する共鳴トンネルダイオードを作製し
た。人工格子膜の成膜途中のTiN面の高速反射電子線回
折により、TiN(111)面およびAlN(0001)面に特有の反射
スポットがストリークを引く形でそれぞれ観察され、平
滑な単結晶膜が形成されていることを確認した。また、
作製したダイオードの電気的特性の評価結果からは、電
子の2次元性を示す量子効果が確かに現れたと判断でき
た。
【0076】実施例3 図41に示すクラスタイオンビーム成膜装置を用いて、
人工格子膜を作製した。まず、図41に示す成膜室31
内に MgO基板1を設置すると共に、第1のるつぼ32内
に純度 99.9%のTi粉末33を、また第2のるつぼ34内
に純度 99.9%のAl粉末35を収納した。次いで、図示し
ない真空ポンプを作動させ、成膜室31内の空気を排気
し、チャンバ31内を 1×10-11 Torrの真空度とした
後、 MgO基板1を 200℃に加熱、保持した。
【0077】次に、ボンバード用の第1のフィラメント
36に通電して発熱させ、フィラメント36からの放射
熱および放射される熱電子により、上記第1のるつぼ3
2内のTi粉末33を加熱した。このとき、第1のるつぼ
32を2000℃以上に昇温すると、るつぼ32の上部に設
けられた直径 2mmのノズル32aからTi蒸気が噴出し、
Ti蒸気は上記第1のるつぼ32と成膜室31との圧力差
により断熱膨脹して、クラスタと呼ばれる多数のTi原子
が緩く結合した塊状原子団を形成する。上記クラスタ
は、第1のるつぼ32の上方に配置されたグリッド電極
により引き出され、イオン化フィラメント37から放出
される熱電子と衝突することにより、その一部がイオン
化されてクラスタイオンとなる。このクラスタイオン
は、加熱電極とグリッド電極の間の電界により適度に加
速され、イオン化されずに上記噴出時の運動エネルギを
持つ中性クラスタと共に、基板1表面に衝突して、表面
を移動してTi薄膜が形成される。この際、イオン化フィ
ラメント37のイオン化電子電流を数mA〜 400mA、加速
電極とグリッド電極間の加速電圧を 1〜 6.6kVに設定す
ることが望ましい。
【0078】続いて、窒素ボンベ38のガス供給管を開
き、基板1周囲に窒素を供給して、その周囲の窒素分圧
を 2×10-4Torr〜 1×10-3Torr程度に調整した後、イオ
ン化電子電流を 400mA、加速電極とグリッド電極間の加
速電圧を 5kVに設定することによって、単結晶の TiN薄
膜を形成した。
【0079】次いで、実施例2と同様な方法で、単結晶
の AlN薄膜を成膜した。以上の操作を繰り返して、 MgO
基板上に TiN薄膜と AlN薄膜とが交互に積層した構造の
人工格子膜を形成した。このようにして得た人工格子膜
も、実施例2と同様な特性を示した。
【0080】実施例4 窒素ラジカルを利用して、人工格子膜を作製した。図4
2に、窒素ラジカルの作製に使用したマイクロ波加熱ビ
ーム源40を示す。このマイクロ波加熱ビーム源40
は、エヴェンソン型のマイクロ波キャビティと、ノズル
開口部を備えた放電管とにより主として構成されたもの
である。
【0081】図42において、41は放電ノズル管、4
2はマイクロ波キャビティ、43はチューニング電極、
44はスキマー、45は水冷管、46はマイクロ波パワ
ーコネクタである。真空槽内で作動するように、マイク
ロ波キャビティ42を水冷にし、同調用の電極は軸変換
ギヤを通して真空槽外部から調整できるようになってい
る。マイクロ波は、耐熱用の同軸ケーブルを用いてマイ
クロ波キャビティ42に導入される。放電管41は、外
径 5mmの石英管である。これは耐熱耐食性の良好なアル
ミナ管を利用してもよい。窒素ガスを供給して管内で励
起または解離を行わせ、ノズルから噴出してビーム化す
ることになる。
【0082】マイクロ波の入力は、おおよそ60〜 80Wに
すると高効率な放電となる。100W以上とすると、石英製
の管の寿命が短くなり、局所的な破壊や軟化による変形
が生じる。窒素ガスは、マスフローコントローラにより
一定量で流入するようにし、その流量は 0〜 50CCMの範
囲で調整できるようになっている。ビーム源真空槽の排
気は、 150l/sのブースターポンプで差動排気できるよ
うになっている。ノズルの穴の径は 0.3mm、スキマー4
4の径は 0.7mmである。ノズルとスキマーの距離は基本
的には 3mmであるが、可変としてある。また、よどみ点
での圧力はおおよそ20Torrである。
【0083】このようにして、アーク放電で励起された
プラズマ気体をノズルから噴出すると、気体中の N2 +
あるいは N2 * から、 N2 + +e= N2 * = N* + N に従って、準安定なラジカルな窒素を得ることができ
る。この反応は一例であって、放電プラズマから吹き出
される物質は、様々な励起原子や分子が含まれている。
しかし、量としては非常にわずかで、吹き出されるうち
の1%未満のものがラジカルとなっている。
【0084】次に、図43に示すように、上記したマイ
クロ波加熱ビーム源40を用いたラジカル窒素ビーム
と、電子ビーム蒸着源(EB源)47からのTiビームと、
クヌーセンセル48からのAl分子線を併用することによ
り、交互に TiN膜と AlN膜を作製した。それぞれの膜厚
の制御は、膜厚モニタとシャッタを使って行い、 TiN
(2.1nm)/AlN(1.5nm)の 5周期分をMgO(111)基板上に作製
しながら、 in-situで高速反射電子線回折した。その結
果、それぞれの反射スポットがストリークを引く平坦な
層が作製されていることが分かった。また、このように
して得た人工格子膜も、実施例2と同様な特性を示し
た。
【0085】実施例5 良導性化合物としてVNを、絶縁性化合物として AlNを選
択し、人工格子膜の作製を行った。また、原料ガスとし
ては V(C5 H 5 2 および Al(CH3 3 を用いた。研磨
した後、 85%の H3 PO4 溶液で30秒エッチングしたMgO
(111)基板上に、上記した 2種類のガスおよびNH3 ガス
を導入し、基板を 200℃に加熱して膜の堆積を行った。
【0086】図44に成膜装置の概略図を示す。図44
において、51はXeBrエキシマレーザ発振装置、52は
赤外線ランプ、53はKr2 F エキシマレーザ発振装置、
53は基板ホルダ、54は基板、55は V(C5 H 5 2
ガスライン、56は Al(CH33 供給ラインである。ま
ず、 V(C5 H5 )2 を30sccmで30秒間基板54に吹き付
けた後、赤外線を 1分間照射した。その後、波長 282nm
のXeBrエキシマレーザ(平均出力5mW)を 2分間照射し
て、 V(C5 H 5 2 の分解を行った。なお、この波長は
V-Cの平均結合解離エネルギ 410±6kJ/mol(光波長では
292nm)に相当するものである。さらにこの後、NH3 ガス
を15sccmで 1分間基板54に吹き付け、赤外線を照射す
ることで窒化を行った。この操作を繰り返すことによ
り、基板上にVNの膜を 200nm堆積させた。この膜を高速
反射電子線回折により観察したところ、 VN(111)のスポ
ットが観察され、さらに大気中に取り出して、原子間力
顕微鏡(AFM)により測定したところ、原子レベルで平坦
な膜であることを確認した。
【0087】さらにその後、Al(CH33を30sccmで30秒
間基板54に吹き付け、赤外線を1分間照射した後、波
長430nmのKr2Fエキシマレーザ(平均出力35W)を1分間
照射し、Al(CH33を分解した。Al-Cの平均結合解離エ
ネルギは、279±5kJ/mol(光波長では429nm)であり、
波長430nmのKr2Fエキシマレーザで十分に分解が起こる
ものと考えられる。事実、上記の操作において、滞留ガ
スを除去した後にガスの分解を行い、4重極質量分析器
により排出ガスの成分を分析したところ、C5H12 +、CH3 +
等の炭化水素が主成分であり、Alを含んだガスはほとん
ど検出されなかった。またこの後、NH3ガスを15sccmで1
分間導入し、赤外線を照射することで窒化を行った。こ
こで高速反射電子線回折により観察したところ、AlN(00
01)のスポットがストリークを引く形で観察され、非常
に平坦な膜が形成されていることが確認された。
【0088】以上のような操作を 3回繰り返すことによ
り、 3重バリア構造のVN/AlN人工格子を有する共鳴トン
ネルダイオードを作製した。構造は、 MgO/VN(300nm)/
AlN(1.5nm)/VN(2.4nm)/AlN(1.5nm)/VN(2.1nm)/AlN(1.5n
m)/VN(15nm)とした。具体的な構造およびポテンシャル
構造は、図38と同様なものである。また図45に、こ
の実施例で作製した人工格子膜の深さ方向のオージェプ
ロファイルを示す。図45から、急峻な界面を持った T
iN/AlN層が 3層形成されていることが分かる。試料はエ
ッチングにより直径10μm のメサ型ダイオードとし、基
板上のVN電極上にAl電極を、また素子側のVN上にもAl電
極を形成した。製作したダイオードについて電気的特性
を評価した結果、電流−電圧特性には 77Kにおける電流
のピークバレー比が 2.8という顕著な負性抵抗が観測さ
れた。これから、電子の 2次元性を示す量子効果が確か
に現れたと判断できた。
【0089】実施例6 アモルファス金属/アモルファス絶縁体の人工格子膜
を、反応性スパッタ法を用いて作製した。まず、研磨
後、燐酸で軽いエッチングを施したMgO(111)基板上に、
ターゲットを 2種類用いて交互にスパッタを行うことに
よって、 3重バリア構造のWC/SiC人工格子膜を有する共
鳴トンネルダイオードを作製した。
【0090】成膜条件は、WCは真空度 1×10-3Torrのア
ルゴン雰囲気、高周波(13.56MHz)出力500W、基板温度 1
50℃、成膜速度10nm/minとした。 SiCは、真空度 1×10
-3Torrのアルゴン雰囲気、高周波(13.56MHz)出力400W、
基板温度 100℃、成膜速度5nm/minとした。具体的な構
成は図38に示した共鳴トンネルダイオードと同様とし
た。
【0091】人工格子膜の成膜途中のWC面および SiC面
の高速反射電子線回折により、アモルファスに特有のぼ
やけたハローパターンがそれぞれ観測され、アモルファ
ス膜が形成されていることを確認した。また、作製した
ダイオードについて電気的特性を評価した結果、電流−
電圧特性に 77Kにおける電流のピークバレー比が 1.2と
いう負性抵抗が観測され、電子の 2次元性を示す量子効
果が確かに現れたと判断できた。
【0092】次に、本発明の電子部品を共鳴トンネルト
ランジスタに適用した実施例について説明する。
【0093】実施例7 図46は、本発明の人工格子膜を用いた一実施例の共鳴
トンネルトランジスタの構造を示している。同図におい
て、61は MgO等からなる絶縁性基板であり、この絶縁
性基板61上には、以下に示すエミッタ62、ベース6
3、コレクタ64が形成されている。エミッタ62は、
例えば厚さ 100nmの金属電極である。ベース63は、良
導性化合物からなる井戸65と、絶縁性化合物からなる
障壁66とを 3周期分積層した人工格子膜67を有して
いる。井戸65としては、例えば厚さ 2.1nmのTiN(111)
層を用い、障壁66としては厚さ 1.5nmの AlN(0001)層
を用いる。エミッタ62の下には、絶縁性化合物からな
る障壁68と、良導性化合物からなる井戸69とを積層
した人工格子膜70を有している。障壁68としては、
例えば厚さ 1.5nmの AlN(0001)層を用い、井戸69とし
ては厚さ 2.4nmのTiN(111)層を用いる。
【0094】ここで、従来の半導体を基調とする量子効
果デバイスにおいては、エミッタ電流の他にベース電流
にも微分負性抵抗が存在する。すなわち、ベースからエ
ミッタへの正孔が共鳴順位を通して注入されるので、ベ
ース電流にも負性抵抗が現れてしまう。そのため、ピー
クバレー比が小さいという問題があった。
【0095】これに対して、上記実施例の共鳴トンネル
トランジスタにおいては、ベース63およびベース63
とエミッタ62の間を良導性化合物/絶縁性化合物(例
えばTiN/AlN)の超格子で構成している。よって、図47
に示すように、キャリアは電子のみであって、負性抵抗
を発現するものは電子に帰属するもののみとなる。その
ため、従来のデバイスのように、正孔に起因するピーク
バレー比(P/V比)の減少がない。なお図47は、上記実
施例による共鳴トンネルトランジスタのエネルギダイア
グラムを示している。
【0096】すなわち、共鳴トンネルトランジスタのエ
ミッタ、ベースおよびコレクタの少なくとも 1つを、本
発明の良導性化合物と絶縁性化合物とによる人工格子膜
で構成することによって、ベース電流には微分負性抵抗
特性が発生せず、ベース・エミッタ間電圧の上昇と共に
急速に減少する。従って、電圧特性図において、バレー
領域に相当するコレクタ電流は非常に小さな値となる。
その結果として、 P/V比は大きく向上し、ノイズマージ
ンは広くなって扱い易いものとなる。これは、金属/絶
縁体を組み合わせたトンネル層をベースとしていること
に基くものである。金属におけるキャリアは電子である
ため、半導体のように正孔がベースからエミッタに流れ
込んで実効的なエミッタ・コレクタ電流の負性特性が低
下することがない。すなわち、半導体をベースとした、
あるいは半導体と絶縁体とを組み合わせてなるトンネル
素子では、ベース・エミッタ間の電圧が上昇すると、電
子の共鳴トンネル現象の他に、正孔の共鳴トンネル現象
が生じる。このため、ベースからエミッタに移行する正
孔の共鳴現象によって、特性を十分に引き出すことがで
きない。本発明における人工格子膜の構成においては、
キャリアは電子だけであるため、このような問題は生じ
ない。さらに、金属/絶縁体の障壁高さ、例えば AlN/T
iNの障壁高さは 1eV以上であり、熱的散乱によるリーク
や高次共鳴によるリークが少ない等の長所がある。
【0097】さらに、金属と絶縁体を組み合わせた超格
子膜を用いることによって、微分コンダクタンスが大き
くなるので、素子の応答速度が格段に向上する。すなわ
ち、応答速度はエミッタとベースあるいはコレクタ間で
の充電時間に支配される。これは、エミッタやコレクタ
の容量をC、微分コンダクタンスをgとすると、C/g
で記述できる。従って、容量の小さいものほど、あるい
は微分コンダクタンスが大きいものほど高速化する。微
分コンダクタンスは、トンネル電流とバイアス電圧の比
である。従って、誘電率の小さい絶縁体を用いることは
得策であるが、金属/絶縁体を組み合わせた場合には、
トンネル電流の密度が大きいため、あえて誘電率の非常
に小さい絶縁体を選ばずとも、半導体を基調とするデバ
イスより十分に高速化することができる。
【0098】上述した人工格子膜を用いた共鳴トンネル
トランジスタにおいて、各層の厚さ等の条件は、以下の
通りとすることが好ましい。例えば、 TiNと AlNとの組
み合わせにおいて、共鳴トンネル現象を可能とするため
には、それぞれの膜厚が十分に薄く、しかも界面での電
子波の散乱が波の伝播に影響しないような構造である必
要がある。よく知られているように、十分に深い箱型ポ
テンシャル井戸を並べたときの電子波は、膜厚方向には
2次元電子ガスと呼ばれる自由粒子として振る舞い、電
子のもつエネルギは 2次元自由運動に伴うエネルギと定
在波に対する量子準位のエネルギの和で表される。後者
のエネルギに対応する電子波長λe (=h/(2m* E)1/2
が量子井戸幅Lw の 2倍の整数倍に等しいとき(λe =2
w )、トンネル確率が最大になる(J.Appl.Phys.Vol.
34,No.4(Part1),April,1963,p864等参照)。以上の関係
から、 TiNおよび AlNの厚さは 5.0nm以下であることが
望ましく、 2.0nm以下であると、室温における熱エネル
ギや散乱に伴う準位の不確定性等に比べて、十分大きな
定在波のエネルギが設定できることになる。
【0099】さらに、 n番目の AlNの膜厚を Ln 、 n+1
番目の AlN膜厚を Ln+1 、それぞれの障壁の上端の電位
を En 、 En+1 とし、トンネル電子のエネルギを E0
したとき、 Ln (En -E0 1/2 = Ln+1 (En+1 -E0 1/2 を満たすように、それぞれの膜厚を最適化することによ
って、最もトンネル確率が大きくなる。従って、負性抵
抗特性が最も大きく現れることになる。
【0100】また、この実施例の共鳴トンネルトランジ
スタにおける人工格子は、それぞれミニバンドを複数個
持つため、この素子は以下に示すような新しい機能を持
たせることができる。
【0101】すなわち、この実施例の共鳴トンネルトラ
ンジスタを、図48に示すような回路構成とする。図4
8において、予めエミッタとコレクタのミニバンドのエ
ネルギを一致させておき、ベース電圧を増加させると、
エミッタ、コレクタのミニバンドとベースのミニバント
のエネルギが一致したときに素子はオン状態となり、V
out は最小値となる。さらにベース電圧を増加させる
と、オフ状態となり、Vout は増加するが、再びベース
の第2のミニバンドがエミッタ、コレクタのエネルギと
一致するところで再びオン状態となり、Vout は最小値
をとることになる。このようにして、図49に示すよう
に、ベース入力電圧の 1周期に対して出力は 4周期とな
る。すなわち、この素子は分周機能を持った素子とな
り、従来の素子に比べて素子数が格段に少ないコンパク
トな機能素子として応用できる。
【0102】また、図50はこの実施例の素子の応用例
を示しており、Vin(A)とVin(B)を同じ直流の入
力電圧とし、どちらか一方のみがオンのとき、素子がオ
ンするような設計とした場合を示している。この素子の
入力A、Bに対して出力は下記の表4に示すようにな
り、エクスクルーシブORの機能を持つ。 1つの素子でこ
のような機能を持たせたものは、従来の素子では存在せ
ず、非常に高速で、しかも集積度の高いデジタル素子と
して役立つ。
【0103】
【表4】 実施例8 低速イオンビームと分子ビームとを適用した、図37に
概略構成を示した複合ビーム装置を用いて、研磨後に燐
酸で軽くエッチングした MgO(111) 基板上に、エミッタ
TiN(40nm)、第1障壁層AlN(1.5nm)、ベースTiN(2.4n
m)、第2障壁層AlN(1.5nm)、コレクタTiN(30nm)を順に
形成した。 TiNおよび AlNの成膜条件は、前述した実施
例1と同様(表3に示す)とした。試料はエッチングに
より直径10μm のメサ型トランジスタとし、基板上の T
iN電極上にAlの電極を、また素子側の TiN上にもAlの電
極を形成した。
【0104】成膜途中のTiN面およびAlN面の高速反射電
子線回折(RHEED)により、TiN(111)面およびAlN(0001)面
に特有の反射スポットがストリークを引く形でそれぞれ
観察され、平滑な単結晶膜が形成されていることが確認
された。また、作製したトランジスタについて電気的特
性(エミッタ接地特性)を評価した結果、図51に示す
ように、大きな電流伝達率を示した。
【0105】実施例9 低速イオンビームと、クヌーセンセルおよび電子ビーム
加熱蒸着源からの分子ビームが10-8Torr以下の超高真空
下で利用可能な、図37と同様な複合ビーム成膜装置を
用いて、多入力の共鳴トンネルトランジスタを作製し
た。
【0106】図52に示すように、希フッ酸で軽いエッ
チングを施し、さらに脱気した超々純水中で洗浄して水
素終端処理した Si(111)基板71上に、まず厚さ30nmの
AlNエピタキシャルバッファ層72を形成した。その上
に、通常のリフトオフプロセスにより、 2重のエミッタ
障壁73および 3重ベース入力74を有する多入力共鳴
トンネルトランジスタを作製した。具体的には、 TiNコ
レクタ75(40nm)、AlN障壁層76a(1.5nm) 、第3 Ti
Nベース層74a(2.4nm) 、 AlN障壁層76b(1.5nm)
、第2 TiNベース層74b(2.4nm) 、 AlN障壁層76
c(1.5nm) 、第1 TiNベース層74c(2.4nm) 、 AlN障
壁層76d(1.5nm) 、 TiN層73a(3.1nm) 、 AlN障壁
層76e(1.5nm) 、 TiNエミッタ73b(30nm)の順に、
複合ビーム成膜装置により成膜した。また、 TiNコレク
タ75、各 TiNベース層74a、74b、74c、およ
び TiNエミッタ73b上に、Al電極77a、77b、7
7c、77d、77eを蒸着によりそれぞれ形成した。
【0107】このようにして作製した多入力共鳴トンネ
ルトランジスタについて、電気的特性を評価した。エミ
ッタ−コレクタ電圧VECは5V一定で、第1ベース〜第3
ベースのエミッタ−ベース電圧VEBを、0V(論理値0)あ
るいは3V(論理値1)に設定し、エミッタ−コレクタ電流
EC(1mA以下を論理値0 、 5mA以上を論理値1)を測定し
た。その結果を表5に示す。
【0108】
【表5】 表5に示したように、全ての入力電圧VEBが 1のときの
みに出力が 1になるAND特性が得られた。
【0109】次に、本発明による人工格子膜を用いた量
子干渉トランジスタの実施例について説明する。
【0110】実施例10 図53は、本発明による人工格子膜を、電子のエネルギ
を特定の値に制御する手段として有する量子干渉トラン
ジスタの一構成例を示す図である。同図において、81
はソース電極となるAl層であり、このソース電極81の
下部には、 AlN層82(1.5nm)/ TiN層83(2.1nm)/ AlN
層84(1.5nm)/ TiN層85(2.1nm) の人工格子86が設
けられている。この人工格子86は、電子のエネルギを
特定の値に制御する手段として機能する。人工格子86
の下部には、分離層87を有するチャンネル層88とし
て、 Si(111)の蒸着層が形成されている。また、この分
離層87で分割される電子の 2つの経路(第2の電子経
路)に、異なる電位を与える手段として、チャンネル層
88の両側にそれぞれゲート電極89、90が設けられ
ている。チャンネル層88の下方には、 2つの第2の電
子経路を通過した電子を重畳させて、干渉させるための
第3の電子経路として、 n+ -Si 層91が設けられてい
る。なお、図中92は n型 Si(111)基板であり、93は
AlN層である。 上記構成の量子干渉トランジスタにお
いては、ソース電極81からでた電子を上から下に向け
て流すと、特定のエネルギを持つ電子のみが人工格子8
6を透過し、 2つのゲート電極89、90間のSiチャン
ネル層88を通過するときに位相が変調される。 2つの
ゲート電極89、90には、それぞれ異なる負のバイア
ス電圧を印加し、ゲート下のチャンネル層78の両側に
空乏層領域を広げ、チャンネルの実効幅を減少させる。
狭い実行チャンネルを通過した電子波は、基板92側の
n+ -Si 層91で干渉効果を引き起こす。
【0111】すなわち、上記実施例の量子干渉トランジ
スタは、同一の位相を持つ電子を透過させるための第1
の電子経路と、該電子を分割して通過させるための複数
の第2の電子経路と、該複数の第2の電子経路のそれぞ
れに異なる電位を与える手段と、該第2の電子経路を通
過した電子を重畳させ、干渉させるための第3の電子経
路とを有する量子干渉トランジスタに、電子のエネルギ
を特定の値に限定する手段として、少なくとも 2つの電
位障壁により囲まれた、共鳴トンネル現象を起こす量子
井戸を設けたものである。そして、上記量子井戸とし
て、良導性化合物/絶縁性化合物からなる人工格子膜を
用いている。
【0112】電子の干渉効果を有効に引き出すために、
上記実施例では電子のエネルギを特定の値に限定する手
段を内部に形成している。電子のエネルギを制御する方
法としては、例えば共鳴トンネル現象が利用できる。図
54に共鳴トンネル現象を説明するための図を示す。図
54(a)に示すように、 2つの電位障壁で挟まれた領
域を形成する。量子井戸の幅が十分に狭いと、量子井戸
内に形成される電子束縛状態の固有エネルギが離散的と
なり、その状態数も少なくなる。この量子井戸の固有エ
ネルギはおおよそ次式で与えられる。
【0113】E=h2 π2 2 /(2md2 ) ここに、nは 1以上の整数、dは量子井戸の幅である。
この量子井戸に外から電子を入射すると、ほとんどのエ
ネルギで電子は反射されるが、固有エネルギEと同一の
エネルギの電子は共鳴現象により反射されず、図54
(b)に示すように、透過率が 1近くまで大きくなる。
このような金属/絶縁体の組み合わせによる共鳴現象を
利用し、量子井戸の幅dを適切に設計することによっ
て、所望のエネルギを有する電子のみを透過させること
ができる。このため、特定のエネルギの電子のみを選ぶ
ことができる。
【0114】これに対して、電子のエネルギに分布があ
ると、干渉効果は平均化される。従来の量子干渉デバイ
スでは、ソースから注入された電子は熱平衡状態にある
ため、ほぼ一様なエネルギの電子からなる。このため、
電子の波動性による干渉効果は、平均化により著しく弱
められ、ゲート電位でドレイン電流を制御することはほ
とんど不可能となる。
【0115】そして、この実施例の量子干渉トランジス
タにおいては、上述したように、特定のエネルギの電子
のみを選ぶことができるため、上記した平均化による弊
害を取り除くことができる。よって、ゲート電位による
位相変調、さらには位相変調による干渉効果を最大限に
引き出すことができる。また、ソース、ドレイン、ゲー
トの配置を工夫することにより、各経路の電位差を多く
とることができる。これにより、わずかな入力電位差で
出力電流を大きく変化させることができ、トランジスタ
の増幅率を著しく向上させ、高速なデバイスを作ること
ができる。
【0116】上記量子干渉トランジスタの構造は、エミ
ッタ電流の方向が基板の素子形成面に垂直になる構造を
基本としている。しかし、これは必ずしも垂直である必
要はなく、電子供給層に共鳴トンネル層を設定できれば
基本的には達成されるものである。垂直の場合には、エ
ミッタ・コレクタ間距離を十分小さく設計することが容
易であり、たとえば数10nmとすることも可能である。エ
ミッタ・コレクタ間距離を小さくし、チャンネルを短く
することによって、電子が受ける非弾性散乱の確率が低
減でき、分岐した 2つの通路のうちの第1の通路を通る
電子の電子波と第2の通路を通る電子の電子波とをシャ
ープに干渉させることができる。
【0117】さらに、エミッタおよび共鳴トンネルバリ
アの構造を分離層に向かって突起状にすることによっ
て、エミッタコレクタ間に印加される電界は、この突起
部に集中できる。同様に、コレクタにかかる電界も突起
の先端に集中し、エミッタからの放出電子波は、コレク
タの突起先端部に集中することになる。このような電子
系は、光学系でいえば点光源に相当し、電子波の干渉パ
ターンが鋭くなる。
【0118】実施例11 図55に、量子干渉トランジスタの他の構成例を示す。
図55において、94はSi半導体基板、95はエミッタ
層、96は共鳴トンネルバリアである。共鳴トンネルバ
リア96は、第1のバリア層97a、量子井戸層98お
よび第2のバリア層97bからなる。バリア層97は A
lN、量子井戸層98は TiNから構成されている。それぞ
れの膜厚は、 TiNが 2.4nmで、 AlNは 1.5nmである。ま
た、共鳴トンネルバリア96上には、チャンネル分離帯
99を有するチャンネル層100、コレクタ層101が
順に形成されている。チャンネル層100の両側面に
は、それぞれゲート電極102、103が形成されてい
る。なお、図中104はエミッタ電極、105はコレク
タ電極である。このように、半導体基板94上に、エミ
ッタ95、共鳴トンネルバリア96、チャンネル10
0、コレクタ101が順に積層されており、チャンネル
100中で分岐した 2つの通路の側面には、それぞれゲ
ート電極102、103が形成されている。
【0119】上記したような構造の量子干渉トランジス
タは、例えば以下のようにして作製される。まず、半導
体基板94として、厚さ 300μm 程度の Si(111)基板を
使用する。その上にエミッタ層95となる n+ Siを、約
50nmの厚さでエピタキシャル成長させる。次いで、マス
キングとサイドエッチングの条件を選択して、 (100)を
側面とする三角状の突起を形成し、さらにその頂点付近
は平坦な (111)面となるように加工する。その上に共鳴
トンネルバリア96を形成する。この共鳴トンネルバリ
ア96は、前述したイオンビーム成膜法、クラスターイ
オンビーム法等の各種の成膜法でエピタキシャル成長さ
せて形成する。
【0120】次に、チャンネル層100として、 n-Si
(111)を約 200nmの厚さで成長させる。次いで、中央部
の幅 100nm、深さ 100nmの範囲に酸素を注入して分離帯
99を形成する。次いで、 n-Si(111)を 500nmの厚さで
エピタキシャル成長させた後、中央部をエッチングして
(100)面を側面とする三角状の溝を作製する。この三角
状の溝を埋め込んで、 n+ -Si(111)のコレクタ層101
を形成する。
【0121】その後、幅 1μm 程度の寸法に全体をメサ
エッチングする。チャンネル100の分岐した通路の側
面に、厚さ約 100nmのAlゲート電極102、103をそ
れぞれ設けると共に、半導体基板94の下には厚さ約 2
00nmのInエミッタ電極104、コレクタ層101上には
コレクタ電極105を形成する。
【0122】上記実施例の量子干渉トランジスタでは、
エミッタ95および共鳴トンネルバリア96が三角状の
突起を中央部に持ち、その突起がチャンネル100に突
き出ているため、突起の先端部に電界が集中し、共鳴ト
ンネル状態をその先端部のみに生起することができる。
同様に、コレクタ101も三角状の突起を中央部に持
ち、その突起がチャンネルに突き出ているため、エミッ
タ95側から放出された電子波がコレクタ側の突起の先
端部に集中する。さらに、側面のゲート電極102、1
03それぞれに負のバイアス電圧を印加することによっ
て、チャンネル100の実効幅が制限され、この集中効
果はさらに高められる。
【0123】本来、量子干渉トランジスタは、電子波の
干渉パターンによって動作するものであるから、電子の
放出場所と捕獲場所が小さければ、それだけ干渉パター
ンは鋭くなり、量子干渉トランジスタの性能は向上す
る。よって、突起の先端部の曲率半径は小さいほどよ
い。
【0124】上述したような量子干渉トランジスタによ
れば、外部電位による電子の位相変調効率を向上するこ
とができ、スイッチング振幅を減少させた量子干渉素子
を提供することができる。
【0125】次に、本発明による人工格子膜を用いた共
鳴トンネル真空エミッタ素子の実施例について説明す
る。
【0126】実施例12 低速イオンビームと分子ビームとを適用した、図37に
概略構成を示した複合ビーム装置を用いて、研磨後に燐
酸で軽くエッチングした MgO(111) 基板上に、エミッタ
TiN(40nm)、障壁層AlN(1.5nm)、ゲートTiN(2.4nm)の順
に、積層形成した。 TiNおよび AlNの成膜条件は、前述
した実施例1と同様(表3に示す)とした。試料はエッ
チングにより直径10μm のメサ型とし、基板上の TiN電
極上にAlの電極を、また素子側の TiN上にもAlの電極を
形成した。
【0127】成膜途中のTiN面およびAlN面の高速反射電
子線回折(RHEED)により、TiN(111)面およびAlN(0001)面
に特有の反射スポットがストリークを引く形でそれぞれ
観察され、平滑な単結晶膜が形成されていることが確認
された。また、作製した真空エミッタ素子について電気
的特性を評価した結果、図56に示すように、大きな電
流放出率を示した。
【0128】実施例13 低速イオンビームと、クヌーセンセルおよび電子ビーム
加熱蒸着源からの分子ビームが10-8Torr以下の超高真空
下で利用可能な、図37と同様な複合ビーム成膜装置を
用いて、多入力の共鳴トンネル真空エミッタ素子を作製
した。
【0129】図57に示すように、希フッ酸で軽いエッ
チングを施し、さらに脱気した超々純水中で洗浄して水
素終端処理した Si(111)基板111上に、まず厚さ30nm
の AlNエピタキシャルバッファ層112を形成した。そ
の上に、通常のリフトオフプロセスにより、 3重の多重
ベース入力電極113および制御電極114を有する多
入力共鳴トンネル真空エミッタを作製した。
【0130】具体的には、 TiNエミッタ115(40nm)、
AlN障壁層116a(1.5nm) 、第1TiNベース層113
a(2.1nm) 、 AlN障壁層116b(1.5nm) 、第2 TiNベ
ース層113b(2.1nm) 、 AlN障壁層116c(1.5nm)
、第3 TiNベース層113c(2.1nm) 、 AlN障壁層1
16d(3.0nm) 、 TiN制御電極114(2.7nm) の順に、
複合ビーム成膜装置により成膜した。また、 TiNエミッ
タ115、各 TiNベース層113a、113b、113
c、 TiN制御電極114上に、Al電極117a、117
b、117c、117d、117eを蒸着によりそれぞ
れ形成した。図中、118は真空領域を介して制御電極
114に対向して配置されたコレクタである。
【0131】このようにして作製した多入力共鳴トンネ
ル真空エミッタについて、電気的特性を評価した。エミ
ッタ−制御電極間の電圧は9V一定で、第1ベース〜第3
ベースのエミッタ−ベース電圧VEBを、0V(論理値0)あ
るいは3V(論理値1)に設定し、エミッタ−コレクタ間の
電流IEC(5mA以下を論理値0 、15mA以上を論理値1)を測
定した。その結果を表6に示す。
【0132】
【表6】 表6に示したように、全ての入力電圧VEBが 1のときの
みにエミッション電気流IECが 1になるAND特性が得
られた。
【0133】次に、本発明の電子部品を量子効果メモリ
素子に適用した実施例について説明する。
【0134】実施例14 図58は、本発明による人工格子膜を有するスタティッ
クメモリの一構成例を示す図である。同図において、1
21は TiNからなるビット配線である。このビット配線
121上には、AlN(122a)/TiN(123a)からなる
トンネルダイオード124が形成されている。その上に
は、AlN(122b、122c、122d) /TiN(123
a、123b、123c、123d)からなる 2個の 3
重障壁共鳴トンネルダイオード125、126が形成さ
れている。これら 3重障壁共鳴トンネルダイオード12
5、126上には、 TiNからなるワード線127、12
8がそれぞれ形成されている。そして、 2個の 3重障壁
共鳴トンネルダイオード125、126と 1個のトンネ
ルダイオード124とで、メモリセル129が構成され
ている。
【0135】このスタティックメモリの回路図を図59
(a)に、動作原理を図59(b)に示す。共鳴トンネ
ルダイオード125、126は、電流−電圧特性がN字
型となる負性抵抗特性を示し、ある電流範囲に対して端
子電圧が高い場合と低い場合を生じる。 2つの共鳴トン
ネルダイオード125、126を直列に接続し、加える
電流を選ぶと、 2つの共鳴トンネルダイオード125、
126のうちのどちらかが高電圧ならば他方は低電圧と
なる。この 2つの状態(双安定状態)の一方を論理値0
、他方を論理値1 として情報の記憶ができる。
【0136】このメモリセル129に対しする情報の読
み出し・書き込みは、第3のトンネルダイオード124
を用いる。蓄積された電荷により、 3つのトンネルダイ
オードの接続点の電位は、高レベル・低レベルのいずれ
かになる。ワード線127、128とビット線121に
選択電位を与え、特定のセルにのみ書き込み・読み出し
用のダイオード124を通して十分な電流が流れるよう
にすることで、この電流によりセルに 0あるいは 1が書
き込まれる。このセルは、情報の蓄積と書き込み・読み
出しのSRAMの機能を有しており、DRAMのように
リフレッシュ不要で、読み出しも非破壊で行える。
【0137】ここで、通常の化合物半導体を使用した量
子効果メモリ素子については、 2個の 2重障壁共鳴トン
ネル接合と 1個のトンネル接合からなるメモリセルを使
用したものが提案されている(Yokoyama et al, Solid
State Technology/日本版,1992年10月号,p18)。しか
しながら、このメモリセルを化合物半導体で作製するに
は、ビット線上にエピタキシャル成長によりトンネル接
合を作り込む都合上、ビット線も化合物半導体で作る必
要がある。従って、ビット線の抵抗が数 100μΩcm以上
になるため、高速動作が困難となる。また、高集積化す
るほど配線抵抗が問題となる。これに対して、上述した
本発明の人工格子膜により作製したメモリセルは、ビッ
ト線に低抵抗の金属配線(例えば TiNの抵抗は約20μΩ
cm)の使用が可能であるため、上記した問題を一挙に解
決するものである。
【0138】次に、上記量子効果メモリ素子の具体的な
製造例とその評価結果について述べる。低速イオンビー
ムと、クヌーセンセルおよび電子ビーム加熱蒸着源から
の分子ビームが10-8Torr以下の超高真空下で利用可能
な、図37と同様な複合ビーム成膜装置を用いて、量子
効果メモリ素子を作製した。
【0139】図60に示すように、希フッ酸で軽いエッ
チングを施し、さらに脱気した超々純水中で洗浄して水
素終端処理した Si(111)基板131上に、まず厚さ30nm
のAlNエピタキシャルバッファ層132を形成した。そ
の上に、通常のリフトオフプロセスにより、 TiNビット
線133(40nm)、 AlNトンネル障壁層134a(3.0nm)
、 TiN層135(50nm)、 AlN障壁層134b(1.5nm)
、 TiN量子井戸層136(2.4nm) 、 AlN障壁層134
c(1.5nm) 、 TiN量子井戸層137(2.1nm) 、AlN障壁
層134d(1.5nm) 、 TiNワード線138(30nm)の順
に、複合ビーム成膜装置により成膜した。また、ビット
線133とワード線138上に、Al電極139a、13
9bを蒸着によりそれぞれ形成した。
【0140】このようにして作製した量子効果メモリ素
子について、電気的特性を評価した。第1および第2の
ワード線間を常に一定電圧5.6Vに保持し、論理値1 への
書き込みは第1のワード線とビット線間および第2のワ
ード線とビット線間の電圧を共に +8V変化させた。同様
に、論理値0 への書き込みは第1のワード線とビット線
間および第2のワード線とビット線間の電圧を共に -8V
変化させた。一方、読み出しは、第1のワード線とビッ
ト線間および第2のワード線とビット線間の電圧を共に
+4.5V変化させ、ビット線に流れる電流が 5mA以下の場
合を論理値1 、5mA以上の場合を論理値0 と判断した。
その結果、論理値1 に書き込んだときには読み出し値は
常に1 で、論理値0 に書き込んだときには読み出し値は
常に0 であることが確認された。
【0141】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
良導性化合物と絶縁性化合物とを層状に交互積層した人
工格子膜を利用して、共鳴トンネル効果等の量子サイズ
効果を利用したダイオード、トランジスタ、真空エミッ
タ素子等の各種素子や、それらを用いた電子部品を広い
材料系で実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 層状ヘテロエピタキシャル成長するための条
件を説明する模式図である。
【図2】 定性的に異なる 3つの型の固体の模式的相図
である。
【図3】 本発明の人工格子膜に用いる良導性化合物お
よび絶縁性化合物の構成元素の組み合わせをそれぞれ周
期律表で示した図である。
【図4】 本発明を適用した単一障壁のトンネルダイオ
ードの構成例をポテンシャル構造で示す図である。
【図5】 本発明を適用した多重障壁の共鳴トンネルダ
イオードの構成例をポテンシャル構造で示す図である。
【図6】 本発明を適用した多重障壁の共鳴トンネルダ
イオードの他の構成例をポテンシャル構造で示す図であ
る。
【図7】 本発明を適用した多重障壁の共鳴トンネルダ
イオードのさらに他の構成例をポテンシャル構造で示す
図である。
【図8】 本発明を適用した多重障壁エミッタの共鳴ト
ンネルダイオードの構成例をポテンシャル構造で示す図
である。
【図9】 本発明を適用した単一エミッタ障壁の共鳴ト
ンネルトランジスタの構成例をポテンシャル構造で示す
図である。
【図10】 本発明を適用した多重エミッタ障壁の共鳴
トンネルトランジスタの構成例をポテンシャル構造で示
す図である。
【図11】 本発明を適用した多重エミッタ障壁の共鳴
トンネルトランジスタの他の構成例をポテンシャル構造
で示す図である。
【図12】 本発明を適用した多重エミッタ障壁の共鳴
トンネルトランジスタのさらに他の構成例をポテンシャ
ル構造で示す図である。
【図13】 本発明を適用した単一エミッタ障壁および
多重障壁ベースの共鳴トンネルトランジスタの構成例を
ポテンシャル構造で示す図である。
【図14】 本発明を適用した多重エミッタ障壁および
多重障壁ベースの共鳴トンネルトランジスタの構成例を
ポテンシャル構造で示す図である。
【図15】 本発明を適用した多重エミッタ障壁および
多重障壁ベースの共鳴トンネルトランジスタの他の構成
例をポテンシャル構造で示す図である。
【図16】 本発明を適用した多重エミッタ障壁および
多重障壁ベースの共鳴トンネルトランジスタのさらに他
の構成例をポテンシャル構造で示す図である。
【図17】 本発明を適用した多連多重エミッタ障壁お
よび多重障壁ベースの共鳴トンネルトランジスタの構成
例をポテンシャル構造で示す図である。
【図18】 本発明を適用した多連多重エミッタ障壁お
よび多重障壁ベースの共鳴トンネルトランジスタの他の
構成例をポテンシャル構造で示す図である。
【図19】 本発明を適用した多連多重エミッタ障壁お
よび多重障壁ベースの共鳴トンネルトランジスタのさら
に他の構成例をポテンシャル構造で示す図である。
【図20】 本発明を適用した多連多重エミッタ障壁お
よび多重障壁ベースの共鳴トンネルトランジスタのさら
に他の構成例をポテンシャル構造で示す図である。
【図21】 本発明を適用した多連多重エミッタ障壁お
よび多重障壁ベースの共鳴トンネルトランジスタのさら
に他の構成例をポテンシャル構造で示す図である。
【図22】 本発明を適用した多連多重エミッタ障壁お
よび多重障壁ベースの共鳴トンネルトランジスタのさら
に他の構成例をポテンシャル構造で示す図である。
【図23】 本発明を適用した多重障壁エミッタおよび
多重障壁ベースの共鳴トンネルトランジスタの構成例を
ポテンシャル構造で示す図である。
【図24】 本発明を適用した多重障壁エミッタ、多連
エミッタ障壁および多重障壁ベースの共鳴トンネルトラ
ンジスタの構成例をポテンシャル構造で示す図である。
【図25】 本発明を適用した多重障壁エミッタ、多連
エミッタ障壁および多重障壁ベースの共鳴トンネルトラ
ンジスタの他の構成例をポテンシャル構造で示す図であ
る。
【図26】 本発明を適用した多重障壁エミッタ、多連
エミッタ障壁および多重障壁ベースの共鳴トンネルトラ
ンジスタのさらに他の構成例をポテンシャル構造で示す
図である。
【図27】 本発明を適用した多重ベース入力の共鳴ト
ンネルトランジスタの構成例をポテンシャル構造で示す
図である。
【図28】 本発明を適用した多重ベース入力の共鳴ト
ンネルトランジスタの他の構成例をポテンシャル構造で
示す図である。
【図29】 本発明を適用した単一障壁の真空エミッタ
素子の構成例をポテンシャル構造で示す図である。
【図30】 本発明を適用した多重障壁の真空エミッタ
素子の構成例をポテンシャル構造で示す図である。
【図31】 本発明を適用した多連多重障壁の真空エミ
ッタ素子の構成例をポテンシャル構造で示す図である。
【図32】 本発明を適用した多連多重障壁の真空エミ
ッタ素子の他の構成例をポテンシャル構造で示す図であ
る。
【図33】 本発明を適用した多連障壁エミッタの真空
エミッタ素子の構成例をポテンシャル構造で示す図であ
る。
【図34】 本発明を適用した多重ベース入力の真空エ
ミッタ素子の構成例をポテンシャル構造で示す図であ
る。
【図35】 本発明を適用した多重ベース入力の真空エ
ミッタ素子の他の構成例をポテンシャル構造で示す図で
ある。
【図36】 本発明を適用した多重ベース入力の真空エ
ミッタ素子のさらに他の構成例をポテンシャル構造で示
す図である。
【図37】 本発明の実施例で用いた複合ビーム装置の
構成を模式的に示す図である。
【図38】 本発明の一実施例で作製した共鳴トンネル
ダイオードを示す図であって、(a)はその構造図、
(b)はポテンシャル構造図である。
【図39】 本発明の一実施例で作製した共鳴トンネル
ダイオードの電流−電圧特性を示す図である。
【図40】 本発明の他の実施例で用いた複合ビーム方
式の成膜装置の構成を模式的に示す図である。
【図41】 本発明のさらに他の実施例で用いたクラス
タイオンビーム成膜装置の構成を模式的に示す図であ
る。
【図42】 本発明の実施例でラジカル窒素ビームの作
製に用いたマイクロ波加熱ビーム源の構成を模式的に示
す図である。
【図43】 図42に示すマイクロ波加熱ビーム源を用
いた成膜装置の構成を模式的に示す図である。
【図44】 本発明の実施例で用いた光励起によるMO
CVD成膜装置の構成を模式的に示す図である。
【図45】 図44に示すMOCVD成膜装置で作製し
た人工格子膜の深さ方向のオージェプロファイルを示す
図である。
【図46】 本発明の一実施例による共鳴トンネルトラ
ンジスタの構成を模式的に示す断面図である。
【図47】 図46に示す共鳴トンネルトランジスタの
エネルギダイアグラムを示す図である。
【図48】 図46に示す共鳴トンネルトランジスタを
用いた回路構成図である。
【図49】 図48に示す回路構成を有する素子の動作
特性を示す図である。
【図50】 図46に示す共鳴トンネルトランジスタを
用いた他の回路構成図である。
【図51】 本発明の他の実施例による共鳴トンネルト
ランジスタの電流−電圧特性を示す図である。
【図52】 本発明の一実施例による多入力共鳴トンネ
ルトランジスタの構成を模式的に示す断面図である。
【図53】 本発明の一実施例による量子干渉トランジ
スタの構成を模式的に示す断面図である。
【図54】 共鳴トンネル現象を説明するための図であ
る。
【図55】 本発明の他の実施例による量子干渉トラン
ジスタの構成を模式的に示す断面図である。
【図56】 本発明の一実施例による真空エミッタ素子
の電流−電圧特性を示す図である。
【図57】 本発明の一実施例による多入力真空エミッ
タ素子の構成を模式的に示す断面図である。
【図58】 本発明を適用した量子効果メモリの構成例
を示す斜視図である。
【図59】 図58に示す量子効果メモリの回路構成と
動作原理を示す図である。
【図60】 本発明の一実施例による量子効果メモリの
構成を模式的に示す断面図である。
【図61】 エネルギ障壁の高さが異なる物質をヘテロ
接合したときに現れる量子効果を模式的に示す図であ
る。
【符号の説明】 21……MgO(111)基板 22…… 3重バリア構造を持つ TiN/AlN人工格子 23…… TiN層 24…… AlN層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 合瀬 路博 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝 研究開発センター内 (72)発明者 堤 純誠 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝 研究開発センター内 (56)参考文献 特開 昭63−32974(JP,A) Kenji IIJIMA, Tak ahito TERASHIMA, K azunuki YAMAMOTO, Yoshichika BANDO," FORMATION AND STRU CTURES OF NiO−ZnO ARTIFICIAL SUPERLA TTICES”,Journal of Crystal Growth,1989 年 2月,Vol.95, No.1− 4,pp.505−508 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 29/06 H01L 29/66 - 29/68 H01L 49/00

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、P
    m、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、T
    m、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、
    Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No、L
    r、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、
    およびWから選ばれた少なくとも1種の元素と、ホウ
    素、炭素、窒素、リン、イオウ、セレンおよびテルルか
    ら選ばれた少なくとも1種の元素との化合物、あるい
    ReRu、Rh、Pd、Os、Ir、およびPtから
    選ばれた少なくとも1種の元素と、酸素との化合物から
    なる良導性物質と、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、S
    r、Ba、Ra、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、H
    g、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、およ
    びPb から選ばれた少なくとも1種の元素と、炭素、窒
    素、リン、イオウ、セレンおよびテルルから選ばれた少
    なくとも1種の元素との化合物からなる絶縁性物質と
    を、量子サイズ効果が得られる厚さの範囲内で、層状に
    交互積層してなる人工格子膜を具備する電子部品であっ
    て、 前記人工格子膜は、前記絶縁性物質からなる単一または
    多重の障壁層と、前記障壁層に接して設けられ、前記良
    導性物質からなる電極層とを有することを特徴とする電
    子部品。
  2. 【請求項2】 前記良導性物質のイオン結合度と前記絶
    縁性物質のイオン結合度の差は0.3以下であることを特
    徴とする、請求項1記載の電子部品。
  3. 【請求項3】 Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、P
    m、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、T
    m、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、
    Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No、L
    r、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、
    およびWから選ばれた少なくとも1種の元素と、ホウ
    素、炭素、窒素、リン、イオウ、セレンおよびテルルか
    ら選ばれた少なくとも1種の元素との化合物、あるい
    ReRu、Rh、Pd、Os、Ir、およびPtから
    選ばれた少なくとも1種の元素と、酸素との化合物から
    なる良導性結晶と、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、S
    r、Ba、Ra、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、H
    g、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、およ
    びPb から選ばれた少なくとも1種の元素と、炭素、窒
    素、リン、イオウ、セレンおよびテルルから選ばれた少
    なくとも1種の元素との化合物からなる絶縁性結晶と
    を、量子サイズ効果が得られる厚さの範囲内で、結晶方
    位を揃えて層状に交互積層してなる人工格子膜を具備す
    る電子部品であって、 前記人工格子膜は、前記絶縁性結晶からなる単一または
    多重の障壁層と、前記障壁層に接して設けられ、前記良
    導性結晶からなる電極層とを有することを特徴とする電
    子部品。
  4. 【請求項4】 前記良導性結晶のイオン結合度と前記絶
    縁性結晶のイオン結合度の差は0.3以下であることを特
    徴とする、請求項3記載の電子部品。
  5. 【請求項5】 前記良導性物質は1000μΩcm以下の電気
    抵抗を有することを特徴とする、請求項1または請求項
    3記載の電子部品。
  6. 【請求項6】 前記絶縁性物質は1eV以上のエネルギ・
    ギャップを有することを特徴とする、請求項1または請
    求項3記載の電子部品。
  7. 【請求項7】 前記良導性物質と前記絶縁性物質は同一
    の陰性元素を含むことを特徴とする、請求項1または請
    求項3記載の電子部品。
  8. 【請求項8】 前記人工格子膜は、前記絶縁性物質から
    なる多重障壁層と、前記多重障壁層間に介在された前記
    良導性物質からなる量子井戸層とを有することを特徴と
    する、請求項1または請求項3記載の電子部品。
  9. 【請求項9】 TiおよびVから選ばれた少なくとも1
    種の元素と窒素との化合物からなり、かつ電気抵抗が10
    00μΩcm以下の良導性結晶層と、 AlおよびGaから選ばれた少なくとも1種の元素と窒
    素との化合物からなる絶縁性結晶層とを、量子サイズ効
    果が得られる厚さの範囲内で、結晶方位を揃えて交互に
    積層してなる人工格子膜を具備する電子部品であって、 前記人工格子膜は、前記絶縁性結晶層からなる単一また
    は多重の障壁層と、前記障壁層に接して設けられ、前記
    良導性結晶層からなる電極層とを有することを特徴とす
    る電子部品。
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