JP6095935B2 - 精密鋳造用鋳型の製造方法 - Google Patents
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Description
1回の操作では付着するスラリーが少なく、薄いものしかできないので、数回〜10数回繰返して厚さを稼いでいる。また、乾燥を早くするため、あるいは、早く肉厚を確保するため、乾燥割れを防止するため、スタッコ材と呼ばれる粗い粒子をスラリー表面にふりかけ、付着させている。そのため、鋳型の断面構造は緻密層、粗い粒子の層の繰り返しとなっている。
例えばシリカゾルは粒径20nm程度の球状シリカ粒子が分散された液である。このシリカ超微粒子が、乾燥の過程でスラリーに含まれるジルコン、アルミナなどの比較的細かい粒子(数ミクロンから数十ミクロン)及び粗い粒子(スタッコ)(数百ミクロン〜数mm)の表面に付着し、乾燥、熱処理により固く結合することにより、鋳型の形状が保たれると同時に強度を保有し、鋳型として利用できるようになっている。
図1に示すように、精密鋳造用鋳型は、鋳物の製造に用いる精密鋳造用鋳型であって、前記鋳物の内部の空洞部分に対応する形状のコアと、前記鋳物の外周面の形状に対応する外側鋳型と、を有し、前記外側鋳型は、内周面に形成され、粒径20nmのシリカゾルの精密鋳造用鋳型スラリーを用いて乾燥してなるスラリー膜からなるプライム層(第1乾燥膜)101Aと、前記プライム層(第1乾燥膜)101Aの外側に形成され、前記精密鋳造用鋳型スラリーからなるスラリー層102と、該スラリー層にスタッコ材として粒度分布配合を、50〜500μmの微粒の配合を1とし、0.5〜2mmの中粒の配合を2〜16とし、2〜4mmの粗粒の配合を5〜40の範囲としてなるスタッコ粒を付着したスタッコ層103とにより形成し、乾燥してなるバックアップ層(第2乾燥膜)104−1を、複数回形成してなる複層バックアップ層105Aと、からなるものである。
ここで、単一分散されているとは、例えば粒径が約0.5μmのアルミナ微粒子を用いてスラリーを形成する場合、分散処理をした結果においても、0.5μmに単一分散されている状態をいう。
ここで、アルミナ微粒子やジルコニア微粒子の粒径としては、1.0μm以下、より好ましくは0.3〜0.6μmの範囲とするのが良い。
なお、本発明では、フラワーを添加しない場合も許容されうる。
本発明では、スタッコ材として、粒径の異なる粒度同士を配合することで、スタッコ部分の粒子が密充填することとなる。この結果、鋳型の強度を高くすることができる。
表1に示すように、比較例1として、従来の1〜3mmの分布(中心粒径2mm)のスタッコ粒を用いた鋳型の強度は10MPaであった。
これに対し、50〜500μmの微粒と、0.5〜2mmの中粒と2〜4mmの粗粒の配合を、変化させた場合の強度の出現性について、検討した。
試験の結果を表1に示す。
また、試験2として、50〜500μmの微粒の配合を1とし、0.5(500μm)〜2mmの中粒の配合を3とし、2〜4mmの粗粒の配合を2の範囲としてなるスタッコ粒を用いた場合の強度は、15MPaであった。
また、試験3として、50〜500μmの微粒の配合を1とし、0.5(500μm)〜2mmの中粒の配合を2とし、2〜4mmの粗粒の配合を3の範囲としてなるスタッコ粒を用いた場合の強度は、14MPaであった。
これらの結果より、試験1及び2の配合において、強度が良好であった。
また、通常試作している鋳型の強度は10MPa程度であり、粒径の異なる粒度同士を配合することにより、スタッコ部分の粒子が密充填する結果、鋳型の強度が高くなることが判明した。
この鋳型強度の向上の結果、鋳型の薄肉化、層数減が図れ、鋳型製造期間の短縮と製造コスト低減を図ることができる。
また、凝固時温度勾配を高めることができ、鋳物歩留り向上と強度特性向上が見込める。
(第1成膜工程)
先ず、この第1成膜工程では、シリカゾルからなる精密鋳造用鋳型スラリー(以下「スラリー」という)を用いて、ろう型30を浸漬させ、引き上げ、余分なスラリーを落下させる。その後、乾燥させることで、ろう型30表面に、スラリー膜(第1乾燥膜)を得る。
このスラリー膜が、図1において、ろう型30の表面と接するプライム層101Aとなる。
次いで、このプライム層101Aを有するろう型30を、スラリーに浸漬させた後、引上げ、余分なスラリーを落下させ、スラリー層(2層目)102を形成する。この濡れているスラリー層(2層目)102にスタッコ材として粒度分布配合を、50〜500μmの微粒の配合を1とし、0.5〜2mmの中粒の配合を2〜16とし、2〜4mmの粗粒の配合を5〜40の範囲としてなるスタッコ粒を振掛けて(スタッコイングして)、スタッコ材を付着させたスタッコ層(1層目)103を形成する。このスラリー層102とスタッコ層(1層目)103との積層体を乾燥して、プライム層(第1乾燥膜)101の上に第1バックアップ層(第2乾燥膜)104−1を形成する。
この第1バックアップ層104−1の第2成膜工程と同様の操作を複数回(例えば6〜10回)繰り返し、スラリー層(n+1層)102とスタッコ層(n層)103とが交互に積層された所定厚みの複層バックアップ層105Aを有する外側鋳型となる乾燥成形体106を得る。
その後、この型を1,000℃で熱処理し、精密鋳造用鋳型を得る。
なお、このプライム層101Bのように、スタッコ材を付着させた場合には、複層バックアップ層105Bのスラリー層の積層回数と、スタッコ層103の積層回数とは共に同数(n層)からなる複層バックアップ層105Bを有する外側鋳型となる乾燥成形体106Bを得ることとなる。
なお、フラワーとスタッコ材との関係は、限定されるものではなく、フラワーとしてジルコン粉、アルミナ粉のいずれかを用いると共に、スタッコ材として、ジルコンスタッコ粒、アルミナスタッコ粒のいずれかを用いるようにすれば良い。
ここで、ステップS18で塗布するスラリーは、ろう型30に直接塗布されるスラリーである。このスラリー40は、シリカゾルを用いる。このスラリー40には、フラワーとして350メッシュ程度の耐火性の微粒子、例えばジルコニアを用いることが好ましい。また、分散剤としてポリカルボン酸塩を用いることが好ましい。また、スラリー40には、消泡剤(シリコン系の物質)や、濡れ性改善剤を微量、例えば0.01%添加することが好ましい。濡れ性改善剤を添加することで、スラリー40のろう型30への付着性を向上させることができる。
この第1バックアップ層(第2乾燥膜)104−1の形成工程と同様の操作を複数回(例えばn:6〜10回)繰り返す判断を行う(ステップS23)。所定回数(n)の第nバックアップ層104−nを積層させ(ステップS23:Yes)、複層バックアップ層105Aが形成された厚みが例えば10mmの外側鋳型となる乾燥成形体106Aを得る。
鋳型製造方法は、溶けたWAX62を空間64から排出することで、ステップS131に示すように、外側鋳型となる乾燥成形体106と、コア18との間のWAXが充填されていた領域に空間64が形成された鋳型72が作製される。その後、鋳型製造方法は、ステップS132に示すように、外側鋳型となる乾燥成形体106とコア18との間に空間64が形成された鋳型72を、焼成炉70で加熱する。これにより、鋳型72は、外側鋳型となる乾燥成形体106に含まれる水成分や不要な成分が除去され、さらに、焼成されることで硬化され、外側鋳型61が形成される。鋳物製造方法は、以上のようにして鋳型72を作製する。
なお、前述したように、プライム層として、スタッコ材として微粒、中粒及び粗粒の所定配合のスタッコ粒を添加したスラリー層とスタッコ層とからなるプライム層101Bとしてもよい(図2参照)。
以下、実施例を用いて、本実施形態の鋳型製造方法及び鋳造方法について説明する。なお、以下の実施例では、外側鋳型が形成される前のろう型を幅30mm、厚さ8mm、長さ300mmの部材とし、このろう型にスラリー層からなるプライム層(第1乾燥膜)、スラリーとスタッコ材による複層のバックアップ層を形成して鋳型を作製した。
また、同時に、消泡剤としてシリコン系のものを0.01%、濡れ性改善剤を0.01%添加して、使用スラリーとした。
濡れているスラリーに、アルミナ粒子からなり、粒度分布配合を、50〜500μmの微粒の配合を1とし、0.5〜2mmの中粒の配合を5とし、2〜4mmの粗粒の配合を15の範囲としてなるスタッコ粒を付着させた後乾燥し、第2乾燥膜(第1バックアップ層)を形成した。
この得られた乾燥成形体を150℃のオートクレーブに入れて、ワックスを融解し、排出した。
次いで、この型を1000℃で熱処理し、実施例1の鋳型を得た。
実施例1において、スタッコ材として、スピネル粒子からなり、粒度分布配合を、50〜500μmの微粒の配合を1とし、0.5〜2mmの中粒の配合を6とし、2〜4mmの粗粒の配合を18の範囲としてなるスタッコ粒を用いた以外は、実施例1と同様に操作して、実施例2の鋳型を得た。
実施例1において、スラリとしてジルコニアスラリー(YSZ)を用いて、フラワーとして350メッシュのジルコン粉を添加して、精密鋳造用鋳型スラリーとした。
スタッコ材として、ムライト粒子からなり、粒度分布配合を、50〜500μmの微粒の配合を1とし、0.5〜2mmの中粒の配合を4とし、2〜4mmの粗粒の配合を12の範囲としてなるスタッコ粒を用いた以外は、実施例1と同様に操作して、実施例3の鋳型を得た。
比較のため、スタッコ粒として、平均粒径の0.8mmのジルコン粒を使用したスラリーを用い、実施例と同様の操作を行い比較例の鋳型も同時に試作した。
得られた実施例1の鋳型及び比較例の鋳型から、10mm×50mm、厚さ5mmの強度試験片を加工し、試験を実施した。
試験の結果、実施例1のものは、150MPaでの破断であった。
試験の結果、実施例2のものは、170MPaでの破断であった。
試験の結果、実施例3のものは、150MPaでの破断であった。
これに対し、従来のものは、100MPaでの破断であった。
ここで、強度試験は、JIS R 1601による「セラミックスの曲げ強さ(1981)」に準拠しておこなった。
このように、スタッコ材の粒度分布を制御することにより、高い強度の鋳型の製造が可能となる。この鋳型強度の向上により、鋳型を薄肉化でき、この結果、凝固時温度勾配を高めることができ、鋳物歩留まり向上並びに強度特性向上を図ることができる。
12a 凸部
14、26 矢印
16 セラミックスラリー
18 コア(中子)
20、70 焼成炉
24、64 空間
28 WAX(ろう)
30 ろう型
32 湯口
40 スラリー
60、92 オートクレーブ
61 外側鋳型
61a 破片
62 溶融WAX
72 鋳型
80 溶湯
90、100 鋳物
94 溶解コア
101A、101B プライム層
102 スラリー層
103 スタッコ層
104−1 第1バックアップ層
104−n 第nバックアップ層
105A、105B 複層バックアップ層
Claims (2)
- 鋳物の製造に用いる精密鋳造用鋳型の製造方法であって、
精密鋳造用ろう型を、精密鋳造用鋳型スラリーに浸漬し、引き上げた後乾燥して、ろう型の表面にスラリー膜からなるプライム層を形成する第1成膜工程と、
前記プライム層を形成したろう型を、前記精密鋳造用鋳型スラリーに浸漬し、引き上げた後、スラリー表面にスタッコ材として質量比に関する粒度分布配合を、0.5〜2mmの中粒の配合を1〜16とし、前記中粒よりも粒径が0.5mm未満で50μmまでの微粒の配合を1とし、前記中粒よりも粒径が2mmを超え4mmまでの粗粒の配合を1〜40の範囲としてなるスタッコ粒を振掛け、その後乾燥してバックアップ層を形成する第2成膜工程と、
前記第2成膜工程のバックアップ層を形成する工程を複数回繰り返し、複層バックアップ層を形成した成形体を得る成形体形成工程と、
得られた成形体からろう型のワックスを融解・除去する脱ワックス工程と、
脱ワックス後の成形体を焼成処理し、鋳型を得る鋳型焼成工程と、を有することを特徴とする精密鋳造用鋳型の製造方法。 - 請求項1において、
前記第1成膜工程の際、前記精密鋳造用鋳型スラリーからなるスラリー層に、スタッコ材として質量比に関する粒度分布配合を、0.5〜2mmの中粒の配合を1〜16とし、前記中粒よりも粒径が0.5mm未満で50μmまでの微粒の配合を1とし、前記中粒よりも粒径が2mmを超え4mmまでの粗粒の配合を1〜40の範囲としてなるスタッコ粒を付着してスタッコ層を形成し、その後乾燥することを特徴とする精密鋳造用鋳型の製造方法。
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