JP6094230B2 - 焼結鉱の顕微鏡画像解析方法 - Google Patents

焼結鉱の顕微鏡画像解析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6094230B2
JP6094230B2 JP2013007514A JP2013007514A JP6094230B2 JP 6094230 B2 JP6094230 B2 JP 6094230B2 JP 2013007514 A JP2013007514 A JP 2013007514A JP 2013007514 A JP2013007514 A JP 2013007514A JP 6094230 B2 JP6094230 B2 JP 6094230B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
phase
sintered ore
image
abundance ratio
luminance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013007514A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014137344A (ja
Inventor
透 高山
透 高山
正雄 木村
正雄 木村
裕二 藤岡
裕二 藤岡
潤 岡崎
潤 岡崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2013007514A priority Critical patent/JP6094230B2/ja
Publication of JP2014137344A publication Critical patent/JP2014137344A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6094230B2 publication Critical patent/JP6094230B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Analysing Materials By The Use Of Radiation (AREA)
  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)

Description

本発明は、高炉原料用焼結鉱の光学顕微鏡による組織観察画像の解析方法に関する。
高炉原料用の焼結鉱(以下、焼結鉱あるいは高炉用焼結鉱)は、次のように製造される。鉱石、石灰石、その他副原料、炭材(コークス)、および水をミキサーあるいは混錬機によって造粒する。造粒とは、上記の原料粉末を混合して、ある程度の粒度をもった原料材料に調整することである。こうして造粒した混合物は擬似粒子と呼ばれ、5〜10mmの粒度になる。また、この擬似粒子を焼結機パレットに装入して堆積させたものを焼結原料層と呼ぶ。この焼結原料層がコークスの燃焼によって焼結反応を起こし、焼結鉱となる。擬似粒子を焼結機のパレット上に装入し、上方からバーナーで擬似粒子内のコークスに着火する。焼結機は下方吸引型であるから、コークスの着火後、熱は上層から下層に伝達され、焼結鉱が製造される。
焼結反応は次のように起こる。焼結原料層の層内温度が1200℃近くまで上昇すると、Fe23とCaOの界面で固相拡散が進行し固体のCaO−Fe23が生成する。さらに温度が上昇するとCaO−Fe23が融液の形態をとる。1200〜1300℃にかけて融液量はさらに増加し、周りの原料を取り込みながら融液が拡散する。その後、コークス燃焼の終了と共に温度が下がり、融液は凝固してカルシウムと鉄をメインの元素としたカルシウムフェライトになる。カルシウムフェライトには、鉄鉱石中に存在するSiやAlが少量含まれることもある。この融液発生からカルシウムフェライト生成までの一連の反応は焼結原料層全域で均一に起こる訳ではなく、比較的温度の上がり易いコークス近傍や液相が生成され易い組成領域等で局所的に発生する。また、一般に融液発生を伴う焼結反応が起こるのは、昇温における1100℃から最高温度到達点(約1400℃以上と言われる)を経て降温過程の1100℃までとされ、その時間は数分である。このように、焼結反応は、反応時間が短時間でかつ非平衡反応であるという特徴がある。その結果、生成される焼結鉱中には複数の構成相が存在する。主要な鉱物相は、ヘマタイト、マグネタイト、カルシウムフェライトである。また、融液拡散や下方吸引の通り穴として気孔が存在する。
これらの主要鉱物相および気孔の分布、形状、存在率は焼結鉱の材料特性に影響を与える。高炉用焼結鉱には、強度、被還元性、還元粉化性といった材料特性が求められ、これらの特性が高い焼結鉱ほど品質が高いとされる。しかしながら、主要鉱物相および気孔と材料特性の関係は複雑である。焼結鉱の気孔を例に挙げると、気孔率が大きくなれば焼結鉱の還元雰囲気に接する表面積が増えることから被還元性は向上する。しかし、気孔率が増えることで焼結鉱の密度が下がり、強度の低下を引き起こす。また、焼結鉱における還元後の強度の指数として使われる還元粉化率は、基本的に被還元性に対して背反する指数であるため、気孔率が上がることで減少する傾向にある。強度、被還元性、還元粉化率の3つの焼結鉱の特性は、ある1つの特性を向上させたからといって他の2つの特性が向上するとは限らない。むしろ、一つの特性を向上させると他の2つの特性が低下することが多い。そのため、一概に高品質の焼結鉱といっても、焼結鉱の3つの特性すべてを向上させることは難しい。現在で言う高品質の焼結鉱とは、一般的に、強度、被還元性、還元粉化率を最適化させた特性をもつ焼結鉱であると言える。(非特許文献1)。
焼結鉱の材料特性や主要鉱物相および気孔の形状や分布を解析する技術は多く存在する。ここでは、主要鉱物相および気孔の形状と分布を解析する方法を例として述べる。解析技術の一つとして光学顕微鏡による組織観察技術がある。この技術は、まず、樹脂に埋め込み研磨した焼結鉱試料の研磨面を光学顕微鏡撮影し組織画像を得る。そして、撮影した組織画像の各点の輝度の強弱を分析して、組織画像中に存在する各構成相の決定やその形状などの情報を調べるという技術である。光学顕微鏡によって撮影された焼結鉱断面研磨面の組織画像を図2に示す。図2のような焼結鉱の組織画像中に存在する輝度の強弱から各構成相と気孔を決定して、各構成相と気孔の分布状態や形状などを調べることができる (非特許文献1)。ただし、このような評価方法は観察者の経験によって判断されることがほとんどであり、各構成相を決定するための輝度領域は曖昧であることが多い。
上記した焼結鉱の組織観察技術の具体的な説明を次に示す。埋め込み研磨した焼結鉱試料を光学顕微鏡で撮影すると焼結鉱の組織画像が得られる。構成相の判別は、組織画像の各点の輝度のレベルを測定することによって行う。すなわち、構成相は、ヘマタイト、マグネタイト、カルシウムフェライトの順に輝度が低下していき、組織画像内のヘマタイトの輝度が最も高く白色であり、マグネタイト、カルシウムフェライトの順に淡い灰色から濃い灰色に変わり、気孔が最も輝度が低く黒色となる。また、輝度の高低によって判別した各構成相の面積は、組織画像中の構成相の存在比をリニアに反映しており、組織画像内の各構成相の面積を求めることによって各構成相の存在比を定量することができる(例えば、非特許文献2、非特許文献3)。
光学顕微鏡で撮影して得られた焼結鉱の組織画像中の構成相を決定する方法は2通りある。第一の方法は、観察者の目と感覚で分析する方法である。これは焼結鉱組織画像中の輝度の高低を観察者の判断によって見極めて、構成相の決定を行う方法である。この手法は、組織画像中の構成相の決定を比較的容易に行うことが可能という特徴がある。しかしながら、主観的な分析手法であるため、観察者によって構成相の決定の精度が異なるといった欠点や、構成相の面積比を求めるといった定量的な解析が困難であるという欠点も存在する。
第二の方法は、画像解析などの機械的な方法を用いて、画像中の各ピクセルが示す輝度の高低を数値化し、一定の高さの輝度を有する点を結んで等高線を引き、その等高線に囲まれた範囲を構成相として決定する方法である(非特許文献3)。この方法は機械的な手法であることから、一定の輝度の等高線を用いた場合、観察者の主観が入らない分析が可能であり、また、等高線に囲まれた領域の面積を求めることが容易であるという特徴をもつ。しかし、各構成相の境界を示す輝度の等高線を決定することが困難であるという欠点が存在する。なお、組織画像中の構成相の境界を示す等高線を決定するということは、組織画像のデータから、輝度に対する組織画像に現れる同じ輝度の頻度を目盛った、輝度の度数分布を表すヒストグラムを作成し、輝度の高低に応じて4分割して各構成相を割り当て、各構成相の境界を示す輝度の境界値を決定することに等しい。
画像解析のような機械的な評価方法による構成相の判別が困難である理由は、次の通りである。焼結鉱の組織画像中に分布する各構成相を輝度の高低によって識別する必要があるが、構成相の結晶方位や組成の分布によって組織画像の各点の輝度は連続的に変化しており、構成相の境界を示す輝度を機械的に表す境界値を決定することが難しいため、構成相の判別を困難にしていた。焼結鉱の組織画像中の各ピクセルの輝度を計算する画像解析を行い、横軸に輝度を、縦軸に各輝度のピクセルが画像中に現れる頻度をとって、ヒストグラムを作成すると、焼結鉱の輝度の度数分布は図3のようになる傾向がある。組織画像中の輝度レベルの違いによって各構成相を決定するということは、構成相の境界を示す輝度を表す境界値を決定し、ヒストグラムに境界値を示す縦線を引き、これらの縦線に挟まれた領域を1つの構成相として決定するということである。図3のヒストグラムを例に挙げると、焼結鉱組織画像から求めた輝度のヒストグラムは、その度数分布に顕著なピークが存在しない連続的な分布をもち、各構成相の境界を示す輝度の境界値を明確に決定することが困難であるということが判かる。もし、構成相の結晶方位の向きや組成が統一されているならば、輝度ヒストグラムには顕著な度数分布のピークが構成相の数だけ存在し、構成相を区分する輝度の境界値の決定も容易になるが、不均一性が高く焼結反応の後に急冷して生成される焼結鉱の組織には、そのような構成相は生まれない。その結果、構成相の機械的な判別は困難であり、観察者の主観的な目視観察でしか構成相を判別することができず、構成相の分布状態と焼結鉱の特性の相関を究めるには不十分である。
以上のことから、焼結鉱の組織情報として、気孔を含む構成相の分布や形状および存在比を解析することができる光学顕微鏡による組織画像観察法には、(1)構成相を区分する輝度の境界値を機械的に決定することが困難、(2)組織画像の数が少ない場合は、焼結鉱断面の僅かな領域の分析であるため焼結鉱全体の構成相の分布や形状が必ずしも反映されていているとは限らない、という2つの欠点があった。そのため、画像解析により焼結鉱組織画像中の輝度レベルから構成相を区分する輝度の境界値を精度よく決定することができれば、今まで不可能であった焼結鉱中の構成相の存在比を求め、そこから構成相の分布状態や形状を抽出して、焼結鉱の特性と比較することが可能となり、材料特性の更なる向上にも結び付くものと考えられる。
従来の焼結鉱における組織観察法に、組織画像中の各画素の輝度を求め、輝度を横軸にとってヒストグラム化し、そのヒストグラム中の輝度範囲を求めた後、対象画像に対応する組織画像中の構成相の境界を決定するというものがあった(特許文献1)。しかしながら、構成相を識別するための輝度が必ずしも同一とは限らない焼結鉱の組織画像を対象とした場合、この方法では構成相の境界の決定は困難であった。
次に、焼結鉱の構成相の解析技術について記述する。数ある焼結鉱解析技術の中でも、焼結鉱中に複数存在する構成相の存在比を決定する代表的な技術としてX線回折法による結晶構造解析技術がある。試料にX線を照射し、試料内の結晶構造を反映して回折される図1のような回折光のパターンを解析することで、試料中に存在する構成相を特定し、構成相の存在比を定量することができる。しかしながら、試料として焼結鉱を粉砕した粉末試料を用いるため、焼結鉱中の構成相の分布や気孔率、気孔形状などの情報を解析することはできないという欠点があった。
焼結鉱の材料特性である強度、被還元性、還元粉化率は、焼結鉱中に含まれる構成相の存在比と分布状態、並びに、気孔率と気孔形状などの因子によって変化する。これらの因子はそれぞれ独立して材料特性に影響を与える訳ではなく、各因子同士が複雑に影響し合って材料特性に反映する。以上のような背景から、焼結鉱組織画像中の構成相を機械的に決定することができれば、構成相の分布状態を定量的に評価するできる可能性がある。
特開平2−232550号公報
稲角忠弘,「焼結鉱」(日本鉄鋼協会,2000) 釜三夫,「鐵と鋼」 : 日本鐡鋼協會々誌 69(12), S749 (1983) 「画像処理による材料組織解析の現状」 (日本鉄鋼協会、1986) 菊田惺志,「X線回折・散乱技術」(東京大学出版会,1992) 中井泉,泉富士夫,「粉末X線解析の実際」(朝倉書店,2002)
本発明は、高炉用焼結鉱の光学顕微鏡の組織観察画像における定量評価法において課題であった、組織画像から求めた輝度分布のヒストグラムにヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相に対応する輝度分布を区分する輝度の境界値を客観的に決定し、組織観察による相評価技術の精度を向上させることを目的とする。
本発明の焼結鉱の顕微鏡画像解析方法は、焼結鉱の顕微鏡画像においてX線回折に基づき該焼結鉱の構成相の存在領域を確定する画像解析方法であって、前記焼結鉱の粉末試料を作製する工程と、前記粉末試料のX線回折パターンを測定する工程と、前記X線回折パターンを解析して、前記焼結鉱の構成相としての、ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程と、前記焼結鉱を樹脂に埋め込み研磨加工する工程と、前記埋め込み研磨した焼結鉱の研磨面を顕微鏡撮影し画像を作成する工程と、前記画像の輝度分布から、ヘマタイト相の輝度分布の存在領域と、マグネタイト相の存在領域と、カルシウムフェライト相の存在領域との前記画像上の面積比が前記存在比に一致するように輝度の等高線を引いて、ヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相の存在領域を確定する工程と、からなることを特徴とする。
本発明の焼結鉱の顕微鏡画像解析方法は、焼結鉱の顕微鏡画像においてX線回折に基づき該焼結鉱の構成相の存在領域を確定する画像解析方法であって、前記焼結鉱の粉末試料を作製する工程と、前記粉末試料のX線回折パターンを測定する工程と、前記X線回折パターンを解析して、前記焼結鉱の構成相としての、ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程と、前記焼結鉱を樹脂に埋め込み研磨加工する工程と、前記埋め込み研磨した焼結鉱の研磨面を顕微鏡撮影し画像を作成する工程と、前記画像の輝度分布から、Tを輝度、S(T)を輝度がT以下である領域の面積、Tmaxを画像中の最高輝度、Tcを画像中に観察される気孔の最高輝度として、また、前記ヘマタイト相の存在比をRHM、前記マグネタイト相の存在比をRMG、前記カルシウムフェライト相の存在比をRCFとして、式(1)
となるように、T’a及びT’bを求める工程と、前記画像中にT’a,T’b,及びTcの輝度の等高線を引いて、輝度がT’a以上Tmax以下の領域をヘマタイト相、輝度がT’b以上T’a以下の領域をマグネタイト相、輝度がTc以上T’b以下の領域をカルシウムフェライト相の存在領域を確定する工程と、からなることを特徴とする。
本発明の焼結鉱の顕微鏡画像解析方法は、焼結鉱の顕微鏡画像においてX線回折に基づき該焼結鉱の構成相の存在領域を確定する画像解析方法であって、前記焼結鉱の粉末試料を作製する工程と、前記粉末試料のX線回折パターンを測定する工程と、前記X線回折パターンを解析して、前記焼結鉱の構成相としての、ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程と、前記焼結鉱を樹脂に埋め込み研磨加工する工程と、前記埋め込み研磨した焼結鉱の研磨面を顕微鏡撮影し画像を作成する工程と、前記画像の輝度分布から、Tを輝度、該Tの関数s(T)を輝度がTの頻度、Tmaxを画像中の最高輝度、Tcを画像中に観察される気孔の最高輝度として、また、前記ヘマタイト相の存在比をRHM、前記マグネタイト相の存在比をRMG、前記カルシウムフェライト相の存在比をRCFとして、式(2)
となるように、T’a及びT’bを求める工程と、前記画像中にT’a,T’b,及びTcの輝度の等高線を引いて、輝度がT’a以上Tmax以下の領域をヘマタイト相、輝度がT’b以上T’a以下の領域をマグネタイト相、輝度がTc以上T’b以下の領域をカルシウムフェライト相の存在領域を確定する工程と、からなることを特徴とする。
本発明の焼結鉱の顕微鏡画像解析方法は、焼結鉱の顕微鏡画像においてX線回折に基づき該焼結鉱の構成相の存在領域を確定する画像解析方法であって、前記焼結鉱の粉末試料を作製する工程と、前記粉末試料のX線回折パターンを測定する工程と、前記X線回折パターンを解析して、前記焼結鉱の構成相としての、ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程と、前記焼結鉱を樹脂に埋め込み研磨加工する工程と、Nを正の整数とし、前記埋め込み研磨した焼結鉱の研磨面の位置を変えてN箇所を顕微鏡撮影しN枚の画像を作成する工程と、前記N枚の画像について、該画像の輝度分布から、Tを輝度、Si(T)をi枚目の画像について輝度がT以下である領域の面積、Timaxをi枚目の画像について画像中の最高輝度、Tcを画像中に観察される気孔の最高輝度として、また、前記ヘマタイト相の存在比をRHM、前記マグネタイト相の存在比をRMG、前記カルシウムフェライト相の存在比をRCFとして、式(3)
となるように、T’a及びT’bを求める工程と、前記画像中にT’a,T’b,及びTcの輝度の等高線を引いて、輝度がT’a以上Tmax以下の領域をヘマタイト相、輝度がT’b以上T’a以下の領域をマグネタイト相、輝度がTc以上T’b以下の領域をカルシウムフェライト相の存在領域を確定する工程と、からなることを特徴とする。
本発明の焼結鉱の顕微鏡画像解析方法は、焼結鉱の顕微鏡画像においてX線回折に基づき該焼結鉱の構成相の存在領域を確定する画像解析方法であって、前記焼結鉱の粉末試料を作製する工程と、前記粉末試料のX線回折パターンを測定する工程と、前記X線回折パターンを解析して、前記焼結鉱の構成相としての、ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程と、nを正の整数とし、n個の焼結鉱をそれぞれ樹脂に埋め込み研磨加工する工程と、Nを正の整数とし、前記埋め込み研磨したn個の焼結鉱について研磨面の位置を変えてそれぞれN箇所を顕微鏡撮影しN枚の画像を作成する工程と、前記N×n枚の画像について、該画像の輝度分布から、Tを輝度、Si,j(T)をj番目の焼結鉱、i枚目の画像について輝度がT以下である領域の面積、Ti,jmaxをj番目の焼結鉱、i枚目の画像について画像中の最高輝度、Tcを画像中に観察される気孔の最高輝度として、また、前記ヘマタイト相の存在比をRHM、前記マグネタイト相の存在比をRMG、前記カルシウムフェライト相の存在比をRCFとして、式(4)
となるように、T’a及びT’bを求める工程と、前記画像中にT’a,T’b,及びTcの輝度の等高線を引いて、輝度がT’a以上Tmax以下の領域をヘマタイト相、輝度がT’b以上T’a以下の領域をマグネタイト相、輝度がTc以上T’b以下の領域をカルシウムフェライト相の存在領域を確定する工程と、からなることを特徴とする。
本発明の焼結鉱の顕微鏡画像解析法は、焼結鉱の顕微鏡画像においてX線回折に基づき該焼結鉱の構成相の存在領域を確定する画像解析方法であって、前記焼結鉱の粉末試料を作製する工程と、前記粉末試料のX線回折パターンを測定する工程と、前記X線回折パターンを解析して、前記焼結鉱の構成相としての、ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程と、nを正の整数とし、n個の焼結鉱をそれぞれ樹脂に埋め込み研磨加工する工程と、Nを正の整数とし、前記埋め込み研磨したn個の焼結鉱について研磨面の位置を変えてそれぞれN箇所を顕微鏡撮影しN枚の画像を作成する工程と、前記N×n枚の画像について、該画像の輝度分布から、ヘマタイト相とマグネタイト相を分ける輝度の仮の境界値をTa、マグネタイト相とカルシウムフェライト相を分ける輝度の仮の境界値をTb、として、j番目の焼結鉱、i枚目の画像について、Ti,jmaxを画像中の最高輝度、Ti,jcを画像中に観察される気孔の最高輝度として、Ai,jを輝度がTa以上である領域の面積、Bi,jを輝度がTb以上Ta以下である領域の面積、Ci,jを輝度がTi,jc以上Tb以下である領域の面積、Di,jをj番目の焼結鉱、i枚目の画像について輝度がTi,jc以下である領域の面積、また、前記ヘマタイト相の存在比をRHM、前記マグネタイト相の存在比をRMG、前記カルシウムフェライト相の存在比をRCFとして、式(5)
により、
を求める工程と、式(6)
により、As,Bs,Csを求める工程と、式(7)
により、T’a及びT’bを求める工程と、前記画像中にT’a,T’b,及びTcの輝度の等高線を引いて、輝度がT’以上Tmax以下の領域をヘマタイト相、輝度がT’b以上T’a以下の領域をマグネタイト相、輝度がTc以上T’b以下の領域をカルシウムフェライト相の存在領域を確定する工程と、からなることを特徴とする。
本発明の焼結鉱の顕微鏡画像解析方法は、前記X線回折パターンの解析において、前記X線回折パターンのリートベルト解析を行うことを特徴とする。
本発明の焼結鉱の顕微鏡画像解析方法は、前記ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程において、前記X線回折パターンの回折ピークの位置及び強度からヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求めることを特徴とする。
本発明により、光学顕微鏡撮影した組織画像において、構成相の分布状態を精確に評価することができる。これにより、例えば、焼結鉱のマクロ特性(強度、還元性、還元粉化率)と焼結組織における分布・形状を定量的に見積もることが可能になる。
焼結鉱のXRDパターンと各相のメインピークの例を示す図である。 焼結鉱の組織画像の例を示す図である。 焼結鉱の組織画像の輝度分布のヒストグラムの例を示す図である。 本手法で決定した境界値を用いて4値化解析をした組織画像の例である。 本手法で決定した境界値を用いて4値化解析をした組織画像の例である。 焼結鉱の画像評価で分ける領域の例である。 焼結鉱の画像観測領域と本手法により決定した境界値による4値化解析画像の例である。
焼結鉱の組織画像から作成した輝度分布のヒストグラムを、焼結鉱の各構成相に区分する輝度の境界値を決定するには、組織観察によるよりも、観察者の主観が入らない解析手法から得られた構成相の存在比を基に、境界値を決定することが望ましい。そこで、焼結鉱の構成相を決定し定量する手法として、X線回折(XRD)法によって決定した主要鉱物相の存在比を正しい存在比と見なし、ヒストグラムを構成相毎に区切る輝度の境界値の決定に利用した(非特許文献4,非特許文献5)。
X線回折法は、対象材料の結晶構造を解析する技術であり、測定によって得られたX線回折パターン(XRDパターン)から構成相を決定し、決定した構成相の存在比を定量することができる。また、X線回折法は焼結鉱の粉末試料にも適用することができ、焼結鉱全体の存在比を反映させた平均化情報を得ることができる(粉末X線解析と呼ばれる)。
焼結鉱粉末試料のXRDパターンを測定し、組織観察画像で構成相の決定の対象になる主要鉱物相であるヘマタイト、マグネタイト、カルシウムフェライトの各相に帰属するXRDパターンのピーク強度から各構成相の存在比を決定することができる。さらに、リートベルト解析法と呼ばれる粉末結晶構造に有効な解析手法を利用すれば、より高精度に構成相の存在比を決定することが可能である。
一方で、組織画像のピクセルの輝度の分布から構成相の存在比を決定する組織画像解析技術は、撮影した組織画像の範囲でしか解析できないため、焼結鉱全体の平均化された構成相の存在比を得るには不向きである。この点、X線回折法により求めた焼結鉱全体の平均化された構成相の存在比は、組織画像の輝度分布のヒストグラムに、構成相の境界を示す輝度を表す境界値を決定するのに適している。
以上のことから、本発明者らは、焼結鉱を対象にした組織観察による構成相の分布の決定法において、X線回折データから得られた焼結鉱の構成相の存在比を適用し、組織画像から作成した輝度分布のヒストグラム(輝度ヒストグラム)における構成相の区分を自動的に行い、構成相の境界を示す輝度の境界値を決定し、組織画像における構成相の分布を確定する方法を検討した。
一般に用いられている高炉原料用の焼結鉱の試験材は、数十kg〜数トンの擬似粒子を燃焼させて自然冷却した後、2メートルの高さから落下させて砕いたものである。そのため、一度に数mm〜数十mmの粒度をもつ焼結鉱粒である試験材が多量に入手できる。焼結鉱を砕いた焼結鉱粒は粒度毎にサンプリングされて、組織観察や化学分析等がなされる。その結果から明らかになった構成相や気孔率等と焼結鉱の強度や還元性等の特性との相関を評価する。焼結鉱の材料特性は、構成相の種類とその存在量、さらに構成相の分布に依存している。
しかしながら、焼結鉱は均一性の低い材料であるため、一度に得られる焼結鉱粒でも構成相の存在比や相の分布、気孔率等に大きな個体差がある。したがって、各焼結鉱粒の構成相の存在比や気孔率等の平均を取って評価する必要がある。さもなければ、焼結鉱の構成相の存在比や気孔率と強度や還元性などの焼結鉱の特性との相関は導くことができない。組織観察は局所的な評価方法であるため、組織観察で得られる組織画像から焼結鉱の平均化された情報を入手するには画像撮影箇所を増やし、多数の組織画像を総合する必要がある。
以上の通り、焼結鉱の組織画像は焼結鉱粒によって個体差が大きく、また、組織画像における焼結鉱の各構成相を判別するための輝度も結晶方位や組成によって変化するため、組織画像の解析に自動的に行う分析方法を適用することが難しい。中でも焼結鉱組織画像中に分布する構成相を輝度から自動的に区別することは特に難しく、焼結鉱の構成相分布状態の評価の妨げとなっている。
そこで、本発明者らは、焼結鉱のX線回折データから得られた構成相の存在比を使って、焼結鉱の組織画像から作成した輝度分布のヒストグラムを各構成相毎の領域に区分する輝度の境界値を決定することにより、焼結鉱の構成相の分布状態を解析する技術を開発した。
以下、具体的に解析例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、X線回折法を用いて焼結鉱の構成相であるヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相の存在比を決定する手法について説明する。X線回折法は、測定によって得られるXRDパターン中のピークの位置(2θ)と回折強度を解析して焼結鉱の構成相を決定し、さらに、決定した構成相の存在比を求めることができる。
焼結鉱の構成相の存在比をX線構造解析から決定するために、10mm以上の粒度をもつ焼結鉱を粉砕して粉末にし、X線回折装置を用いてXRDパターンを測定する。その後、測定によって得られたXRDパターン中のピークの位置(2θ:回折角)とその高さ(回折強度)から構成相の存在比を決定する。X線回折法で測定する試料は、平均化情報を抽出するため、可能な限り多くのサンプルを粉砕して粉末にし、撹拌することが望ましい。粉末の粒度は100μm程度が望ましい。また、構成相の存在比の定量精度を向上させるために、XRDパターン測定における2θの範囲は可能な限り広く設定し、さらに、回折光のカウントを稼ぐために受光時間を長くするのがよい。2θの範囲は、最低80°以上に、受光時間は、回折光の最大ピークとバックグラウンドの差が1万カウント以上になるように設定するのが望ましい。
測定したXRDパターンの一例を図1に示す。図1は2θ=31°〜38°の領域を拡大したものであるが、その領域内にヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相のメインピークが確認できる。一般的には、測定した回折パターンに存在するピークの位置とその積分強度を、結晶構造データベース(例えばJCPDSカードなど)内に登録されている、ヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相のそれぞれの標準物質のXRDパターンと照らし合わせることで、測定した回折パターンに含まれている構成相を決定し、その存在比を定量する。さらに、先にも述べた通り、リートベルト解析法を利用すれば、更に高精度に定量することができる。リートベルト解析法については後述する。
X線回折により求めた焼結鉱のヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相の存在比を次のように定義する。
ヘマタイト相の存在比:RHM
マグネタイト相の存在比:RMG
カルシウムフェライト相の存在比:RCF
次に、光学顕微鏡で撮影した組織画像を解析して得られた輝度分布のヒストグラムに、X線回折法で測定されたXRDパターンから求めた構成相の存在比を適用する方法を説明する。
焼結鉱を落下し破砕して作製した焼結鉱試験材のうち、10〜30mmの粒度の焼結鉱粒を埋め込み研磨したものを光学顕微鏡による組織観察用の焼結鉱試料として用いる。これは、成品焼結鉱として高炉に投入される粒度条件に合わせたものである。一般に焼結鉱は、焼結反応中にFeとCaの液相が拡散した領域は焼き固められていることから、高強度になり、大きな粒度をもつ。しかしながら、破砕されて10mm以下になるような焼結鉱は焼結反応が進んでおらず、未滓化CaOやコークスが存在することが多いため、本発明を適用することは難しい。
光学顕微鏡で観察するための焼結鉱試料は、可能な限り試料全体の組織画像情報を取り入れるために、埋め込み研磨によって平滑な平面を有する試料とすることが望ましい。埋め込み焼結鉱はエポキシ樹脂で埋め込んだ後、研磨粒子や研磨粒を塗布した紙やすりを用いて焼結鉱の表面を鏡面研磨したものである。焼結鉱は内部に気孔が存在するため、気孔に樹脂を埋め込みながら研磨粒子や研磨粒を塗布した紙やすりで研磨することが望ましい。上記の埋め込み研磨した焼結鉱試料を対象に光学顕微鏡による組織観察を行い、組織画像を撮影する。撮影領域の面積は光学顕微鏡の倍率に依存する。顕微鏡の倍率が低倍率である場合、組織画像中の構成相の輝度の高低を十分な精度で解析することができない。逆に、高倍率である場合、局所的な情報しか得られないことから、焼結鉱の構成相の平均的な輝度分布のヒストグラムを得ることが難しくなる。撮影は、数倍〜数十倍の倍率が望ましい。撮影する面積の合計が焼結鉱試料の研摩面の半分以上であれば、焼結鉱試料全体を反映した構成相の平均的な輝度分布のヒストグラムが得られると判断される。
組織画像を撮影する際には、照明の明るさやカメラの焦点の違いによって組織画像の輝度が変化しないように調整する。光学顕微鏡の機能を利用して組織画像の輝度が画像によって変化しないような対処をすることができる。また、画像撮影ソフトの機能を利用してもよい。
本発明は、得られた組織画像から輝度ヒストグラムを作成し、ヒストグラム中に各構成相および気孔の境界を示す輝度を表す境界値に挟まれた領域の面積が、焼結鉱のXRDパターンから得られた構成相の存在比にそれぞれ合致するように境界値を決定する方法である。その方法を以下に示す。
まず、光学顕微鏡で観察し撮影した画像から構成相情報を抽出する方法について説明する。焼結鉱の構成相はヘマタイト(Fe23)、マグネタイト(Fe34)、カルシウムフェライト(Ca−Fe−O)の各構成相に大きく分類することができる。これに気孔を加えた各相の分布状態(組織状態)を光学顕微鏡で観察することができる。顕微鏡撮影した焼結組織の例を図2に示す。
組織画像中の各点の輝度は試料表面各点における光の反射率に応じて変化しており、輝度の違いを白〜黒で表すことができる。ここでは、輝度が最も高い部分を白色で、逆に輝度が最も低い部分を黒色で、中間を灰色で輝度に応じて濃淡を着けて表示する。一般に、焼結鉱の構成相を輝度が高い順に並べると、ヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相、それに気孔となる。すなわち、ヘマタイト相/マグネタイト相間の境界となる輝度、マグネタイト相/カルシウムフェライト相間の境界となる輝度、そしてカルシウムフェライト相/気孔間の境界となる輝度が存在する。これらの輝度を境界値と呼ぶこととする。
ヒストグラムの作成は次のように行う。まず、組織画像を構成する全てのピクセルの一つひとつの輝度を、最高輝度(最大値:白色)から最低輝度(最小値:黒色)まで数値化する。輝度Tを横軸に、同一の輝度Tをもつピクセルが現れる頻度s(T)を縦軸にとって、ヒストグラムを作成すると、図3のような輝度の度数分布からなるヒストグラムが得られる。輝度の最大値(すなわち組織画像における完全な白色)をTmax、最小値(すなわち完全な黒色)をTmin(=0)とする。また、ヘマタイト相/マグネタイト相間の境界値をTa、マグネタイト相/カルシウムフェライト相間の境界値をTb、カルシウムフェライト相/気孔間の境界値をTcとする。Tc<Tb<Taである。ヒストグラムにおいて、S(T)をs(T)をT=0からTまで積分した関数と定義する。組織画像においては、S(T)は輝度がT以下である領域の面積(ピクセルの数)に相当する。すなわち、ヒストグラムにおいて、s(T)をT=TaからTmaxまで積分したヘマタイト相の積分値はS(Tmax)−S(Ta)に等しく、ヘマタイト相の度数を表し、組織画像においては、ヘマタイト相の領域の面積(ピクセルの数)に相当する。また、ヒストグラムにおいて、s(T)をT=TbからTaまで積分したマグネタイト相の積分値はS(Ta)−S(Tb)に等しく、マグネタイト相の度数を表し、組織画像においては、マグネタイト相の領域の面積(ピクセルの数)に相当する。さらに、ヒストグラムにおいて、s(T)をT=TcからTbまで積分したカルシウムフェライト相の積分値はS(Tb)−S(Tc)に等しく、カルシウムフェライト相の度数を表し、組織画像においては、カルシウムフェライト相の領域の面積(ピクセルの数)に相当する。Ta、Tb、Tcが分かれば、これを撮影した組織画像に適用して、輝度T=Ta、Tb、Tcの等高線が引かれた組織画像を得ることができる。
輝度ヒストグラムは多値化機能を有する画像解析ソフトにより作成することができる(例:AXIO Vision等)。図3のヒストグラムは、画像解析ソフトにより作成したものである。Ta、Tb、TcのうちTcは、図3に示されるように、輝度を明確に特定できるが、Ta、Tbについては、図3からは特定することが難しい。そこで、発明者らは、X線回折データからTa、Tbを決定することを着想した。ヒストグラム中の境界値に挟まれた各構成相の積分値の比をXRDパターンから決定した構成相の存在比に合致させることにより、Ta、Tbを決定することができる。ここで、XRDパターンから決定した構成相の存在比に合致するヒストグラム中の各構成相の境界値をT’a、T’bとする。ヘマタイト相:マグネタイト相:カルシウムフェライト相の存在比は、
であるので、T’a、T’bを用いて表したS(Tmax)−S(T’a)、S(T’a)−S(T’b)、S(T’b)−S(Tc)の比は、
に等しく、式(1)が成立する。
カルシウムフェライト相/気孔間の境界値Tcは、図3の輝度ヒストグラムから決定することができる。図3を参考にすると、輝度Tminから暫く続く高頻度の領域が気孔である。気孔とカルシウムフェライト相の境界は、頻度が著しく小さくなる領域であると見なせるので、頻度が最小(頻度≒0)となる輝度を気孔/カルシウムフェライト相間の境界値Tcとする。
式(1)を満たす境界値T’a、T’bを求める。図3において、横軸は、輝度T、縦軸は、Tに対する頻度s(T)、であるから、T=TcからTmaxまでの積分値
は、3相(カルシウムフェライト相、マグネタイト相、ヘマタイト相)の総計の度数を表し、組織画像においては、3相の領域の面積(ピクセルの数)に相当する。各相についての積分については、式(9)〜式(11)が成立する。
(ヘマタイト相):
(マグネタイト相):
(カルシウムフェライト相):
焼結鉱のX線回折データから得られた、ヘマタイト相:マグネタイト相:カルシウムフェライト相の存在比は
であり、ヘマタイト相領域、マグネタイト相領域、カルシウムフェライト相領域の各積分値は、それぞれ、T=TcからTmaxまでの積分値の
倍となるので、
ヘマタイト相領域の積分値:
マグネタイト相領域の積分値:
カルシウムフェライト相領域の積分値:
式(12)〜式(14)を解いて、T’a、T’bを求めればよい。このように、T’a、T’bはT=TcからTmaxまでの積分

に内分する点として求められる。例えば、数値積分によりT’bを求めるには、式(14)の右辺を求めておき、左辺の積分のT’bの値をTcの値から出発して順に増やしていき、左辺の値が右辺の値に一致するか超えたところの値を採用すればよい。
次に、焼結鉱の同じ断面研磨面でも画像の撮影箇所によって構成相の存在比のばらつきが存在する場合について述べる。まず、撮影箇所を変更した複数の組織画像を撮影し、画像毎に輝度ヒストグラムを作成する。これら複数のヒストグラムを重ね合わせて輝度毎に頻度を足し合わせたヒストグラムを作成する。こうして得られたヒストグラムに前述した方法を適用し、X線回折データから得られた構成相の存在比に合致するように、境界値を決定する。
焼結鉱の組織は、構成相が不規則に入り乱れた不均一な分布をしている。一方、組織画像を得るための光学顕微鏡で撮影できる領域の面積は数mm2と非常に小さい。そのため、撮影箇所によって作成したヒストグラムの分布に差が出てしまうことから、1枚の組織画像に式(1)を適用して求めたT’a、T’bが他の全ての組織画像から作成したヒストグラムに当てはまる可能性は極めて低いと考えられる。それ故、複数枚の組織画像からそれぞれ輝度ヒストグラムを作成し、これら複数のヒストグラムを重ね合わせて輝度毎に頻度を足し合わせることで全体のヒストグラムを作成して、構成相毎の積分値の比がX線回折によって決定した各構成相の存在比になるようにT’a、T’bを求めることが望ましい。以下には、複数の組織観察画像からT’a、T’bを決定する方法について記述する。
まず、複数の組織画像の撮影について記述する。1つの埋め込み研磨された焼結鉱から光学顕微鏡で測定箇所を移動しながら撮影した組織画像の枚数をNとする。Nを増やすことで焼結鉱断面研磨面全体をよりよく代表する輝度ヒストグラムを得ることができるため、N=3以上にするとよい。Nの上限には特に制限はないが、多過ぎると解析までの時間がかかるというデメリットが生じる。精度を考えても、N=20以上はあまり必要でない。また、焼結鉱断面研磨面の一部の狭い範囲でN枚の画像を撮影するよりも、中心部や端部のように広い範囲の箇所を撮影した方がよい。
測定倍率および撮影面積は、その後の解析の手間を考えると、変化させないことが望ましい。撮影のために試料断面研磨面に照射するライトの光度も、輝度の基準が変わらないよう、変化をさせてはいけない。以上のことに注意して、1つの焼結鉱試料断面研磨面からN枚の画像を撮影する。
次に、撮影したN枚の組織画像からそれぞれ輝度ヒストグラムを作成する。この工程および以後の説明に使用する各文字、記号は上記にて説明したものと同じである。
N枚の組織画像からN個の輝度ヒストグラムを作成した後、N個の輝度ヒストグラムを重ね合わせて輝度毎に足し合わせることにより、N枚の組織画像全体の輝度ヒストグラムを作成する。例えば、図3のような輝度ヒストグラムが得られる。これは、撮影した焼結鉱断面研磨面全体の輝度ヒストグラムに近い分布を示していると考えられる。
ここで、上記にて説明した手法と同様に、XRDパターンから決定した構成相の存在比に合致するヒストグラム中の各構成相の境界値をT’a、T’b、i番目の組織画像についてのS(T)をSi(T)として、次式(3)を満たす境界値T’a、T’bを求める。
カルシウムフェライト相/気孔間の境界値Tcは、図3の輝度ヒストグラムから決定することができる。図3を参考にすると、輝度Tminからしばらく続く高頻度の領域が気孔である。気孔とカルシウムフェライト相の境界は、頻度が著しく小さくなる領域であると見なせるので、頻度が最小となる輝度を気孔/カルシウムフェライト相間の境界値Tcとする。式(3)の各項をN倍したものの比は変わらず、やはり
であるので、N倍したものについて考える。焼結鉱のX線回折データから得られた、ヘマタイト相:マグネタイト相:カルシウムフェライト相の存在比は
であり、ヘマタイト相領域、マグネタイト相領域、カルシウムフェライト相領域の各積算値
は、それぞれ、3相の領域の総計の積算値

倍となるので、
ヘマタイト相領域の積算値:
マグネタイト相領域の積算値:
カルシウムフェライト相領域の積算値:

式(15)〜式(17)を解いて、T’a、T’bを求めればよい。このように、T’a、T’bは、3相の領域の総計の積算値

に内分する点として求められる。例えば、数値計算によりT’bを求めるには、式(17)の右辺を求めておき、左辺の積算のT’bの値をTcの値から出発して微小な刻み幅で順に増やしていき、左辺の値が右辺の値に一致するか超えたところの値を採用すればよい。
次に、サンプルの塊によって構成相の存在比にばらつきが生じる場合について述べる。この場合も、複数のサンプル塊の断面研磨面の組織画像を撮影し、複数の組織画像から作成した輝度ヒストグラムにおける各構成相の存在比の平均値をX線回折法から決定した構成相の存在比に合致させる方法をとる。具体的な方法を以下に記述する。
構成相の存在比のばらつきが異なるn個の埋め込み研磨した焼結鉱を光学顕微鏡撮影において、測定箇所を移動してN箇所撮影して得られた計n×N枚の組織画像から得られる輝度ヒストグラムにおける構成相の境界値を決定する場合について説明する。
ここで、撮影する焼結鉱断面研磨面から得る画像の撮影枚数Nを焼結鉱試料によって変化させてはならない。例えば、2個の焼結鉱の断面研磨面をそれぞれN箇所、M箇所(M<N)の回数で測定し解析をしてしまうと、数が多いN箇所測定した焼結鉱断面研磨面の影響が強く出てしまう可能性が考えられる。そのため、試料による重みを一定にするために1試料に対する撮影枚数Nは統一する必要がある。また、試料数nは3以上とすることが望ましい。nが大きいほど平均的な各構成相の存在比に近づくが、解析時間と精度の関係から、n=20以上はあまり必要とされないことが多い。また、レンズの測定倍率、撮影面積、測定のために焼結鉱断面研磨面に照射するライトの照度は、変化させない方がよい。
上記に注意して、n個の埋め込み研磨焼結鉱の断面研磨面をN箇所撮影したn×N枚の各画像に対し、輝度ヒストグラムを作成する。この工程および以後の説明に使用する各文字、記号は上記にて説明したものと同じである。
n×N枚の組織画像からn×N個の輝度ヒストグラムを作成した後、n×N個の輝度ヒストグラムを重ね合わせて輝度毎に足し合わせることにより、n×N枚の組織画像全体の輝度ヒストグラムを作成する。この輝度ヒストグラムも図3のような分布になり、撮影したn個の焼結鉱断面研磨面の組織画像の輝度ヒストグラムを重ね合わせ足し合わせた輝度ヒストグラムに近い分布を示すと言える。
ここで、上記にて説明した手法と同様に、XRDパターンから決定した構成相の存在比に合致するヒストグラム中の各構成相の境界値をT’a、T’b、j番目の断面研磨面でi番目の組織画像についてのS(T)をSi,j(T)として、次式(4)を満たす境界値T’a、T’bを求める。
カルシウムフェライト相/気孔間の境界値Tcは、図3の輝度ヒストグラムから決定することができる。図3を参考にすると、輝度Tminからしばらく続く高頻度の領域が気孔である。気孔とカルシウムフェライト相の境界は、頻度が著しく小さくなる領域であると見なせるので、頻度が最小となる輝度を気孔/カルシウムフェライト相間の境界値Tcとする。式(4)の各項をn×N倍したものの比は変わらず、やはり
であるので、n×N倍したものについて考える。焼結鉱のX線回折のデータから得られた、ヘマタイト相:マグネタイト相:カルシウムフェライト相の存在比は
であり、ヘマタイト相領域、マグネタイト相領域、カルシウムフェライト相領域の各積算値
は、それぞれ、3相の領域の総計の積算値

倍となるので、
ヘマタイト相領域の積算値:
マグネタイト相領域の積算値:
カルシウムフェライト相領域の積分値:
式(18)〜式(20)を解いて、T’a、T’bを求めればよい。このように、T’a、T’bは3相の領域の総計の積算値

に内分する点として求められる。例えば、数値計算によりT’bを求めるには、式(20)の右辺を求めておき、左辺の積算のT’bの値をTcの値から出発して微小な刻み幅で順に増やしていき、左辺の値が右辺の値に一致するか超えたところの値を採用すればよい。
境界値T’a、T’bを求める別の方法として、仮に定めた境界値Ta、Tbから出発しX線回折データから得られた構成相の存在比に、組織画像上の構成相の存在比が合致するように境界値をT’a、T’bとして補正する方法がある。具体的な内容を以下に記述する。
まず、前述した手法と同様に、ヘマタイト相/マグネタイト相間の仮の境界値をTa、マグネタイト相/カルシウムフェライト相間の仮の境界値をTb、カルシウムフェライト相/気孔間の境界値をTcと定義する。
仮に定めた境界値Ta、Tb、および境界値Tcの値を使って、輝度分布のヒストグラムから構成相の決定と定量を行う。
まず、気孔/カルシウムフェライト相間の境界値Tcを決定する。組織画像(図2)から作成した輝度ヒストグラム(図3)から決定する。図3を参考にすると、輝度Tminからしばらく続く高頻度の領域が気孔である。気孔とカルシウムフェライト相の境界には一度頻度が著しく小さくなる領域があり、頻度が最小(頻度≒0)となる輝度を気孔/カルシウムフェライト相間の境界値Tcとする。Tcは輝度ヒストグラムから確定することができ、例えば、図3に示されるTcに等しい。
次に、T’a、T’bを決定するために、次の手法で仮の存在比を決定する。構成相の存在比は、図3に示されるような輝度分布のヒストグラムの境界値Ta、Tbで挟まれる領域の面積を求めることで決定されるが、現時点ではTa、Tbは仮の値であるため、気孔以外の各構成相の存在比は仮の存在比である。ここでは、A+B+C+D=100として、ヘマタイト相の仮の存在比A(%)、マグネタイト相の仮の存在比B(%)、カルシウムフェライト相の仮の存在比C(%)、気孔の存在比D(%)とする。
次に、気孔を除いた3つの構成相のみについて3相の合計を100%として、各構成相の仮の存在比を求める。A0+B0+C0=100として、次式(21)を使ってヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相の仮の存在比A0(%)、B0(%)、C0(%)を求める。
焼結鉱試料全体の特性を反映させた構成相の存在比を算出するために、上記で決めた仮の境界値Ta、Tbを使って、組織観察で撮影した別の箇所の組織画像や、更に同じ試験で別採取して埋め込み研磨した別の焼結鉱試料の組織画像を基に構成相の存在比を決めることもできる。その場合は、撮影した組織画像を同様に解析し作成した輝度ヒストグラムから、仮に定めた境界値で区切った3つの構成相の存在比と気孔率を求める必要がある。ここで、複数の組織画像解析の1枚目の画像解析にて仮に定めた境界値Ta、Tbの値は変えてはいけない。1つの焼結鉱試料の断面を顕微鏡撮影した組織画像の数をN、対象とする焼結鉱試料数をnとすると、3相の存在比A0i,j,B0i,j,C0i,j(i=1,2,・・・,N,j=1,2,・・・,n)と気孔率D0i,jがN×n組求められる。次に、このN×n組の存在比と気孔率の平均を求め、試料全体の仮の存在比
と気孔率
とする。すなわち、仮の焼結鉱試料全体のヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相の存在比と気孔率である。仮の存在比
と気孔率
は次式(22)を計算して求める。
仮に定めた境界値Ta、Tbを輝度ヒストグラムに適用して得られた存在比
とX線回折データから得られたRHM、RMG、RCFとの差をそれぞれ求めAs、Bs、Csとする。すなわち、
存在比のX線回折データからのずれAs、Bs、Csのうち、As、Csを用い、逆に、仮の境界値Ta,TbのX線回折データから得られたT a,T bからのずれT a―Ta,T b―Tbを式(24)により計算する。X線回折データから得られたヘマタイト相:マグネタイト相:カルシウムフェライト相の存在比RHM:RMG:RCFは、式(24)から得られたT a,T bを用いて計算した比
に近似的に等しい。
このように、式(24)からT a,T bを決定することができる。
焼結鉱試料の断面を光学顕微鏡によって撮影した組織画像を、決定したヘマタイト相/マグネタイト相間の境界値T’a、マグネタイト相/カルシウムフェライト相間の境界値T’b、カルシウムフェライト相/気孔間の境界値Tcを用いて、組織画像に輝度T’aの等高線と輝度T’bの等高線と輝度Tcの等高線とを引く。等高線で分けられた領域が各構成相と気孔である。すなわち、輝度がT’aより高い領域がヘマタイト相、輝度がT’bより高くT’aより低い領域がマグネタイト相、輝度がTcより高くT’bより低い領域がカルシウムフェライト相、輝度がTcより低い領域が気孔である。各領域の輝度を別々の色に単色化する4値化画像処理を実施することによって従来に比べて高い精度の構成相の分布状態の解析が可能となる。
上記の手法で決定した境界値を、別の焼結鉱に対して光学顕微鏡で撮影した組織画像から作成した輝度ヒストグラムに適用し、焼結鉱の構成相の存在比を求め、構成相の分布や形状情報を分析することができる。撮影した組織画像に、X線回折データから得られた構成相の存在比を当てはめて、輝度の等高線を引いて4値化し、ヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相を色分けすることは、必ずしも、真の構成相区分を行ったとは限らない。しかし、多数の組織画像について行い、総合して解釈すれば、平均的な傾向を掴むことができる。
一般に用いられている焼結鉱試料を対象に、X線回折パターンからリートベルト解析を用いて決定した構成相の存在比と、本特許の手法を用いて決定した50枚(=N)の組織画像上の構成相の存在比を比較したところ、それぞれの相の定量値の誤差は10%未満であった。例えばヒストグラム法などの従来法での誤差は20%になる場合もある。このことから、本発明によって従来より精度が高い境界値の決定が可能になった。
また、本手法にて決定した境界値を用いて、焼結鉱特性である強度、被還元性、還元粉化率の簡単な推定方法を例に挙げて説明する。上記手法で求めた平均のヘマタイト相の比率、マグネタイト相の比率、カルシウムフェライト相の比率と気孔率を用いて説明をする。マグネタイト相とカルシウムフェライト相の比率が高いと焼結鉱の強度は高い。被還元性はヘマタイト相の比率が高いと高くなる傾向にある。還元粉化率はヘマタイト相の比率が高くなると低下すると言われている。以上のように、各相の比率によって焼結鉱の特性を推定することができる。気孔率を加えると、さらに精密に焼結鉱特性を推定することができる。
X線回折パターンから構成相の存在比を決定する方法には、大きく2種類ある。リートベルト解析法と、ピーク強度から求める方法である。
リートベルト解析法による構成相の存在比の定量について述べる。この方法は、測定したXRDパターンに対して、結晶相データベースから選択した複数の結晶相より再現した計算XRDパターンと実際のXRD測定で得られたXRDパターンとの残差が最小になるように、構成相の構造パラメータを最適化する手法であり、より高い精度で構成相の存在比を決定できる。そのため、粉末結晶構造解析に有効なリートベルト解析を用いることで、標準物質の回折パターンとの比較による定量法よりも高い精度で焼結鉱中の構成相の存在比を求めることができることから、非常に効果的な手法であると考えられる。
リートベルト解析法は、粉末X線回折法データからナノ構造の決定が可能、構造データベースが無くても構造推定が可能、平均化情報で定量が可能、といった特徴がある。特に焼結鉱のような複数の構成相が存在することでピークの重なりが大きい試料の場合は非常に有効な解析手法である。図1のヘマタイトとマグネタイトのピークのようにピークが重なってしまうと強度の正確な積算が難しくなるため、精度の低下に繋がるためである。リートベルト解析を用いることでこれらピークの重なりを精度よく分離させ、それぞれのピークを定量することが可能である。
以上のことから、リートベルト解析によりX線回折法測定結果から構成相の決定と定量を行うことが可能となる。具体的なリートベルト解析の説明を以下に示す。
X線回折パターンにおけるi番目の回折点の回折角2θiにおける理論回折強度
の計算式を式(25)に示す。
ここで、sは尺度因子、SR(θi)は試料表面粗さの補正因子、A(θi)は吸収因子、D(θi)は一定照射補正因子、Kはブラッグ反射強度に寄与する反射の番号、mKはブラッグ反射の多重度、FKは結晶構造因子、PKは選択配向関数、L(θK)はローレンツ偏光因子、θKはブラッグ角、Φ(Δ2θiK)はプロファイル関数(Δ2θiK=2θi−2θK)、yb(2θi)はバックグラウンド関数である。
リートベルト解析による構成相の存在比の決定は以下の手順で行う。まず、測定したX線回折パターンを観察し、標準物質の候補を選択する。
次に、選択した複数の標準物質の候補の相に理論回折強度
の計算式(25)を適用し、仮定した各相の相分率を乗じて足し合わせてパターンを計算し、測定パターンに最も近くなるよう各相の相分率をパラメータとしてシミュレーションする。シミュレーションの結果から各構成相の存在比が決定できる。如何に真に近いモデルで理論回折強度を計算したかでリートベルト解析結果の信頼性が左右される。
次に、通常の定量方法であるピーク位置とその高さあるいは積分強度によって構成相の決定と定量を行う方法について述べる。この方法は、X線回折測定で得られた焼結鉱のXRDパターンの各ピークの位置とその高さを、結晶構造データベース中に登録されている3つの構成相の標準物質のXRDパターンと比較するものである。測定したXRDパターンとデータベース中の標準物質のXRDパターンとの比較には、前述した通り、(1)ピークの位置と、(2)ピークの高さあるいは積分強度を比較して決定をする。ヘマタイト、マグネタイトは広く知られている物質であることから、データベース中から測定したXRDパターンに合う標準物質を決定するのは比較的容易である。ヘマタイトは2θ=33°付近に、マグネタイトは2θ=35°付近にメインピークが存在する。これらFe−O相のピークは強度が強く、シャープである傾向があるため候補相の決定は難しくない。
カルシウムフェライト相は、ヘマタイト相やマグネタイト相に比べるとX線回折パターンのピークがブロードであるという特徴をもつ。また、焼結鉱中のカルシウムフェライト相は、組成や結晶構造の異なる複数のカルシウムフェライト単相が存在し分布している集合相である。そのため、焼結鉱のXRDパターン中のカルシウムフェライト相のピークは、単相のカルシウムフェライト相同士が重なりあったものであると考えられる。これらのカルシウムフェライト単相を判別して定量することは困難であるため、最も存在比が高いカルシウムフェライト単相のXRDパターンをカルシウムフェライト集合相のXRDパターンとする。これには次の理由がある。XRDパターン中のピーク強度から構成相の存在比を決定する場合には構成相の結晶構造と結晶相を構成する原子番号に起因するRIR(Reference Intensity Ratio)が必要である。RIRは結晶相毎によって異なるため、カルシウムフェライト相は単相と見なす必要がある。結晶構造とRIRは結晶構造データベースなどで入手することができる。集合相として焼結鉱内に存在しているカルシウムフェライト各相は、各単相カルシウムフェライトの標準物質のXRDパターンは2θ=34〜35°にメインピークが集まる傾向が強く、実質的に図1の2θ=34〜35°にあるピーク強度がカルシウムフェライト相全体のピークを大きな誤差なく反映していると見なせる。以上のことから、複数存在するカルシウムフェライト相の標準物質の中から、準安定相であるヘミカルシウムフェライト(CaFe47)相をカルシウムフェライト集合相の代表相とした。
準安定相のヘミカルシウムフェライト相を代表相と決定した理由は、原料の配合条件と焼結反応を考慮したからである。焼結鉱はコークスの燃焼によって平均温度が1400℃に達する。その後、数分間かけて冷却されるという温度条件から、準安定相であるヘミカルシウムフェライト相が生成され易い。また、配合条件から求めた擬似粒子中のFeとCaの比率はおおよそFe:Ca=9:1に近く、これを平行状態図から判断するとヘミカルシウムフェライト相の組成が最も近いことが判る。
これにより、高炉用原料焼結鉱の場合は、カルシウムフェライト集合相の代表相をヘミカルシウムフェライト相として見なし、2θ=34〜35°に存在するピーク強度をカルシウムフェライト相として定量を行う。
ヘマタイト、マグネタイト、カルシウムフェライトの3相は図1中に示した各メインピークを中心にデータベースからヘマタイト、マグネタイト、カルシウムフェライト、各相の標準物質を選択し、ピーク高さから焼結鉱中の存在比を求める。
[実施例1]
発明を実施するための形態に従って、評価対象の焼結鉱の粉末試料のX線回折から得られたXRDパターンより計算した構成相の存在比を用いて、焼結鉱の組織観察用埋め込み研磨試料を光学顕微鏡にて撮影した組織画像において構成相の存在領域を決定した。
焼結鉱試料は鉄鉱石と石灰石を90:10(質量%)の比率で混合し、粉コークスを外数で6質量%添加して造粒した擬似粒子を、実機焼結機にて焼結させた焼結鉱を使用した。光学顕微鏡用の試料は、上述した焼結鉱試料から粒度が19〜21mm試料を5個選択して、それぞれエポキシ樹脂に埋め込み研磨をおこなったものを使用した。また、X線回折の測定に使う試料は、上述した焼結鉱試料から同じ粒度の焼結鉱を15個採取し、高速スタンプ粉砕装置によって粉末状にしたものを用いた。
まず、X線回折装置による焼結鉱試料のX線回折パターンの測定を行い、RHM、RMG、RCFを求めた。X線回折法による回折パターンの測定は上記にて粉砕した粉末試料を用いてX線回折装置で測定をした。主な測定条件は次の通りである。
回折角の範囲2θ:10°〜120°
ステップ刻み(Δ2θ):0.04°
1ステップの露光時間:20s
光学系:集中法
X線管球:CuKα
ここでは、XRDパターンから構成相の存在比を決定する方法として、(1)XRDデータベースから選択した候補相のピーク高さの比較から構成相の存在比を求める方法と、(2)リートベルト解析によって構成相の存在比を求める方法の両方を行った。ここで、リートベルト解析用ソフトはPDXL(リガク製)を用いた。構成相の候補は上記した(1)、(2)とも共通であり、ヘマタイト(Fe23)、マグネタイト(Fe34)、カルシウムフェライト(CaFe47)である。
(1)ピーク高さの比較と、(2)リートベルト解析によって求めた構成相の存在比をそれぞれ表1に示す。
光学顕微鏡による組織観察の条件は以下の通りである。
顕微鏡倍率:5倍
焼結試料断面に照射する光源電圧:4V
画像解析に使用した埋め込み研磨焼結鉱試料の数:1個
撮影した組織画像:5枚
上記の条件で撮影した焼結鉱の5枚の組織画像から求めた輝度ヒストグラムを足し合わせることで得られた輝度ヒストグラムに、表1の結果を反映させ、構成相の輝度の境界値を求めた。
結果を表2に示す。表2には、表1のピーク高さによって求めた構成相の存在比とリートベルト解析によって求めた構成相の存在比をそれぞれ反映させた境界値が示されている。また、TmaxとTminの値も併せて示されている。
以上の方法から、一つの埋め込み研磨焼結鉱試料から複数枚撮影した組織画像において、X線回折法から決定した構成相の存在比を反映させた構成相の存在比を決定することができた。
特定の焼結鉱の断面図から撮影した組織画像を対象に、上記で決定した表2の境界値を輝度の等高線の“標高”として用いて組織画像を等高線により構成相毎に区分けして表示する多値化画像処理を行った。その結果の例を図4に示す。図4からこの焼結鉱の組織にはマグネタイトが多く含まれていることがわかった。これより、この焼結鉱が作られる過程において、マグネタイトの箇所は強い還元雰囲気であったことが予想される。更に、焼結鉱は強度が高いが、還元性は低いという焼結鉱特性を有していることが分かる。
[実施例2]
発明を実施するための形態に従って、評価対象の焼結鉱の粉末試料X線回折から得られたXRDパターンより計算した構成相の存在比を用いて、焼結鉱の組織観察用の埋め込み研磨試料を光学顕微鏡にて撮影した組織画像において構成相の存在領域を決定した。
焼結鉱試料は鉄鉱石と石灰石を90:10(質量%)の比率で混合し、粉コークスを外数で6質量%添加して造粒した擬似粒子を、実機焼結機にて焼結させた焼結鉱を使用した。光学顕微鏡用の試料は、上述した焼結鉱試料から粒度が19〜21mmの試料を5個選択して、それぞれエポキシ樹脂に埋め込み研磨をおこなったものを使用した。また、X線回折の測定に使う試料は、上述した焼結鉱試料から同じ粒度の焼結鉱を15個採取し、高速スタンプ粉砕装置によって粉末状にしたものを用いた。
まず、X線回折装置による焼結鉱試料のX線回折パターンの測定を行い、RHM、RMG、RCFを求めた。X線回折法による回折パターンの測定は上記にて粉砕した粉末試料を用いてX線回折装置で測定をした。主な測定条件は次の通りである。
回折角の範囲2θ:10°〜120°
ステップ刻み(Δ2θ):0.04°
1ステップの露光時間:20s
光学系:集中法
X線管球:CuKα
ここでは、XRDパターンから構成相の存在比を決定する方法として、(1)XRDデータベースから選択した候補相のピーク高さの比較から構成相の存在比を求める方法と、(2)リートベルト解析によって構成相の存在比を求める方法の両方を行った。ここで、リートベルト解析用ソフトはPDXL(リガク製)を用いた。構成相の候補は上記した(1)、(2)とも共通であり、ヘマタイト(Fe23)、マグネタイト(Fe34)、カルシウムフェライト(CaFe47)である。
(1)ピーク高さの比較と、(2)リートベルト解析によって求めた構成相の存在比をそれぞれ表3に示す。
光学顕微鏡による組織観察の条件は以下の通りである。
顕微鏡倍率:5倍
焼結試料断面に照射する光源電圧:4V
画像解析に使用した埋め込み研磨焼結鉱試料の数:3個
撮影した組織画像:15枚(1つの埋め込み研磨焼結鉱試料につき5枚ずつ)
上記の条件で撮影した焼結鉱の15枚の組織画像から求めた輝度ヒストグラムを足し合わせることで得られた輝度ヒストグラムに、表3の結果を反映させ、構成相の輝度の境界値を求めた。
結果を表4に示す。表4には、表3のピーク高さによって求めた構成相の存在比とリートベルト解析によって求めた構成相の存在比をそれぞれ反映させた境界値が示されている。また、TmaxとTminの値も併せて示されている。
以上の方法から、複数の埋め込み研磨焼結鉱試料から複数枚撮影した組織画像において、X線回折法から決定した構成相の存在比を反映させた構成相の存在比を決定することができた。
特定の焼結鉱の断面図から撮影した組織画像を対象に、上記で決定した表4の境界値を輝度の等高線の“標高”として用いて組織画像を等高線により構成相毎に区分けして表示する4値化画像処理を行った。その結果の例を図5に示す。図5からこの焼結鉱の組織にはヘマタイトが多く含まれていることがわかった。これより、この焼結鉱が作られる過程において、画像中のヘマタイトが存在している領域は融液が浸透しにくい箇所であったことが予想される。更に、この焼結鉱は、高い還元性を有していることが分かる。
[実施例3]
発明を実施するための形態に従って、焼結鉱試料を対象とし、X線回折法による定量法にて決定した焼結鉱試料の構成相の存在比から、組織画像における構成相の境界を決定した。焼結鉱試料は鉄鉱石と石灰石を90:10(質量%)の比率で混合し、粉コークスを外数で6質量%添加して造粒した擬似粒子を、実機焼結機にて焼結させた焼結鉱を使用した。
光学顕微鏡用の試料は、上述した焼結鉱試料から粒度が19〜21mm試料を5個選択して、それぞれエポキシ樹脂に埋め込み研磨をおこなったものを使用した。また、X線回折法の測定に使う試料は、上述した焼結鉱試料から同じ粒度の焼結鉱を15個採取し、自動でハンマーが可動して試料を粉砕する高速スタンプ粉砕装置によって粉砕して粉末状にしたものを用いた。
まず、X線回折法による焼結鉱試料のX線回折パターンの測定を行い、RHM、RMG、RCFを求めた。X線回折法による回折パターンの測定は上記にて粉砕した粉末試料を用いてX線回折法装置で測定をした。主な測定条件は次の通りである。
回折角の範囲2θ:10°〜120°
ステップ刻み(Δ2θ):0.04°
1ステップの露光時間:20s
光学系:集中法
X線管球:CuKα
得られたXRDパターンにリートベルト解析を実施することによって焼結鉱試料の構成相の存在比を定量した。本実施例において、リートベルト解析にはリガク製の解析ソフト「PDXL」を用いて構成相の存在比を決定した。候補の構成相はヘマタイト(Fe23)、マグネタイト(Fe34)、ヘミカルシウムフェライト(CaFe47)の3相である。リートベルト解析によって焼結鉱試料の構成相の存在比を求めた結果を、表5に示す。
次に光学顕微鏡による画像観察を行った。組織観察の測定方法は次のように行った。まず、図6のように焼結鉱試料の研磨面を縦横にそれぞれ4つに区切り、16のエリアに区分した。顕微鏡倍率5倍で、1エリア内の焼結鉱研摩面が存在する場所はランダムに決定し、その中を1枚だけ画像を撮影した。全16エリアに対しそれぞれ1枚ずつ、1つの焼結試料について16枚の組織画像を撮影した。同じ条件で他の4つの焼結鉱試料の研摩面を光学顕微鏡撮影し、合計80枚の組織観察画像を撮影した。
次に、撮影した組織画像から輝度分布のヒストグラムを作成した。撮影した80枚の画像から1枚を選択し、画像解析ソフトを用いて輝度と頻度のヒストグラムを作成した。輝度の範囲は黒色が最低で0、白色が最高で4095という数値が割り振られている。得られた輝度分布のヒストグラムを図3に示す。次に、輝度の違いによって構成相を区分するための仮の境界値Ta,Tb,Tcを次のように設定した。
ここでT’cは819に決定することになる。撮影した各エリアの焼結鉱組織画像から求めたヒストグラムに、式(26)の仮の境界値を適用して、ヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相の各構成相と気孔の仮の存在比A,B,C,Dを求めた。その後、組織画像からヒストグラムを作成し、撮影した1埋め込み焼結試料中の16エリア分の組織画像について、式(26)の値を適用させて各構成相と気孔の仮の存在比を求める作業を行った。その例を表6に示す。なお、測定に用いた5つの埋め込み研磨試料の中から一つ選択して、試料1としている。
表6における各構成相と気孔の存在比を式(6)の計算式に当てはめることで気孔を除いた各構成相の存在比A0,B0,C0を求めた。結果を表7に示す。
表6、表7は実施例内で評価に使われた5個ある試料の内の一つを選んだ試料についてのみの結果である。他の4つの埋め込み研磨した焼結鉱試料についても試料1と同様に式(26)に示す仮の境界値Ta,Tb,Tcを用いて、撮影した画像から各構成相と気孔の存在比A,B,C,Dを表8のように求め、そこからある気孔を除いた各構成相の存在比A0,B0,C0を求めた。
以上の解析を5つの焼結鉱試料について行い、得られた計80組の構成相の存在比を式4に当てはめ、試料全体の構成相の仮の存在比
を求めた。結果を表8に示す。
表5に示したX線回折法によって決定した構成相の存在比と、表8に示した組織画像から求めた構成相の仮の存在比を、式(23)、式(24)に当てはめ、仮の境界値であるTa、Tbを補正した。補正して得られた境界値T’a、T’bが求められる。結果を表9に示す。
光学顕微鏡で撮影した計80枚の組織画像の全てから輝度分布のヒストグラムを作成し、表9の境界値T’a、T’b、Tcを適用して、構成相間の境界線を決定した。
具体的には境界線を決定するために使用した5つの埋め込み焼結鉱試料を対象に、1試料の研摩面につき16エリアに分割し、エリア内をランダムに一か所だけ組織画像を撮影の組織画像について、それぞれの輝度ヒストグラムを作成し、X線回折法による主要鉱物相の存在比から求めた境界値T a、T bを用いて構成相の存在比を求め、その存在比を平均化することで、画像解析における構成相の存在比を求めた。その結果は組織画像による主要構成相の存在比を組織観察(補正後)として求めた。その結果を表10に示す。
表10の通り、X線回折法の構成相の存在比から求めた境界値を用いて、画像解析の輝度分布のヒストグラムから各構成相の存在比を求めた結果、X線回折法で求めた構成相の存在比に近い組織観察画像からの存在比を得ることができた。
以上のことから、X線回折から得られた構成相間の輝度の境界値を用いることにより、組織画像の構成相の分布情報をより高精度に求めることができることがわかった。図7に、焼結鉱の研摩面を光学顕微鏡によって撮影した組織画像と、画像をX線回折から得られた構成相間の境界値を輝度の等高線の“標高”として用いて組織画像を等高線により構成相毎に区分けして表示する4値化解析した図を示す。4値化解析とは境界値の輝度を等高線として引いた境界線で挟まれる領域、あるいは境界線で囲まれる領域を単色化することで構成相の分布状態を分かり易く解析したものである。図7からは、境界線が明瞭に決定されたことで焼結組織中の構成相の分布がはっきりと評価可能になっている。図7の光学顕微鏡による組織画像と4値化画像を見ると大きな気孔周辺にマグネタイト相が集中していることが確認できる。これはマグネタイトが生成されている気孔は他の気孔に比べて還元性の高いガスが流れて焼結反応を起こしていることが分かる。このように焼結鉱の特性評価に有力な情報を得ることができた。
以上のように、X線回折法から求めた焼結鉱の構成相の存在比を適用して、光学顕微鏡による組織画像にて利用する構成相の境界線を決定することで、画像解析による構成相の分布を正確に評価することが可能となったことから、従来では解析が難しかった分布の情報を入手することができるようになった。

Claims (8)

  1. 焼結鉱の顕微鏡画像においてX線回折に基づき該焼結鉱の構成相の存在領域を確定する画像解析方法であって、
    前記焼結鉱の粉末試料を作製する工程と、
    前記粉末試料のX線回折パターンを測定する工程と、
    前記X線回折パターンを解析して、前記焼結鉱の構成相としての、ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程と、
    前記焼結鉱を樹脂に埋め込み研磨加工する工程と、
    前記埋め込み研磨した焼結鉱の研磨面を顕微鏡撮影し画像を作成する工程と、
    前記画像の輝度分布から、ヘマタイト相の輝度分布の存在領域と、マグネタイト相の存在領域と、カルシウムフェライト相の存在領域との前記画像上の面積比が前記存在比に一致するように輝度の等高線を引いて、ヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相の存在領域を確定する工程と、
    からなることを特徴とする焼結鉱の顕微鏡画像解析方法。
  2. 焼結鉱の顕微鏡画像においてX線回折に基づき該焼結鉱の構成相の存在領域を確定する画像解析方法であって、
    前記焼結鉱の粉末試料を作製する工程と、
    前記粉末試料のX線回折パターンを測定する工程と、
    前記X線回折パターンを解析して、前記焼結鉱の構成相としての、ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程と、
    前記焼結鉱を樹脂に埋め込み研磨加工する工程と、
    前記埋め込み研磨した焼結鉱の研磨面を顕微鏡撮影し画像を作成する工程と、
    前記画像の輝度分布から、Tを輝度、S(T)を輝度がT以下である領域の面積、Tmaxを画像中の最高輝度、Tcを画像中に観察される気孔の最高輝度として、また、前記ヘマタイト相の存在比をRHM、前記マグネタイト相の存在比をRMG、前記カルシウムフェライト相の存在比をRCFとして、式(1)
    {S(Tmax)−S(T’a)}:{S(T’a)−S(T’b)}:{S(T’b)−S(Tc)}=RHM:RMG:RCF・・・(1)
    となるように、T’a及びT’bを求める工程と、
    前記画像中にT’a,T’b,及びTcの輝度の等高線を引いて、輝度がT’a以上Tmax以下の領域をヘマタイト相、輝度がT’b以上T’a以下の領域をマグネタイト相、輝度がTc以上T’b以下の領域をカルシウムフェライト相の存在領域を確定する工程と、
    からなることを特徴とする焼結鉱の顕微鏡画像解析方法。
  3. 焼結鉱の顕微鏡画像においてX線回折に基づき該焼結鉱の構成相の存在領域を確定する画像解析方法であって、
    前記焼結鉱の粉末試料を作製する工程と、
    前記粉末試料のX線回折パターンを測定する工程と、
    前記X線回折パターンを解析して、前記焼結鉱の構成相としての、ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程と、
    前記焼結鉱を樹脂に埋め込み研磨加工する工程と、
    前記埋め込み研磨した焼結鉱の研磨面を顕微鏡撮影し画像を作成する工程と、
    前記画像の輝度分布から、Tを輝度、該Tの関数s(T)を輝度がTの頻度、Tmaxを画像中の最高輝度、Tcを画像中に観察される気孔の最高輝度として、また、前記ヘマタイト相の存在比をRHM、前記マグネタイト相の存在比をRMG、前記カルシウムフェライト相の存在比をRCFとして、式(2)
    となるように、T’a及びT’bを求める工程と、
    前記画像中にT’a,T’b,及びTcの輝度の等高線を引いて、輝度がT’a以上Tmax以下の領域をヘマタイト相、輝度がT’b以上T’a以下の領域をマグネタイト相、輝度がTc以上T’b以下の領域をカルシウムフェライト相の存在領域を確定する工程と、
    からなることを特徴とする焼結鉱の顕微鏡画像解析方法。
  4. 焼結鉱の顕微鏡画像においてX線回折に基づき該焼結鉱の構成相の存在領域を確定する画像解析方法であって、
    前記焼結鉱の粉末試料を作製する工程と、
    前記粉末試料のX線回折パターンを測定する工程と、
    前記X線回折パターンを解析して、前記焼結鉱の構成相としての、ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程と、
    前記焼結鉱を樹脂に埋め込み研磨加工する工程と、
    Nを正の整数とし、前記埋め込み研磨した焼結鉱の研磨面の位置を変えてN箇所を顕微鏡撮影しN枚の画像を作成する工程と、
    前記N枚の画像について、該画像の輝度分布から、Tを輝度、Si(T)をi枚目の画像について輝度がT以下である領域の面積、Timaxをi枚目の画像について画像中の最高輝度、Tcを画像中に観察される気孔の最高輝度として、また、前記ヘマタイト相の存在比をRHM、前記マグネタイト相の存在比をRMG、前記カルシウムフェライト相の存在比をRCFとして、式(3)
    となるように、T’a及びT’bを求める工程と、
    前記画像中にT’a,T’b,及びTcの輝度の等高線を引いて、輝度がT’a以上Tmax以下の領域をヘマタイト相、輝度がT’b以上T’a以下の領域をマグネタイト相、輝度がTc以上T’b以下の領域をカルシウムフェライト相の存在領域を確定する工程と、
    からなることを特徴とする焼結鉱の顕微鏡画像解析方法。
  5. 焼結鉱の顕微鏡画像においてX線回折に基づき該焼結鉱の構成相の存在領域を確定する画像解析方法であって、
    前記焼結鉱の粉末試料を作製する工程と、
    前記粉末試料のX線回折パターンを測定する工程と、
    前記X線回折パターンを解析して、前記焼結鉱の構成相としての、ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程と、
    nを正の整数とし、n個の焼結鉱をそれぞれ樹脂に埋め込み研磨加工する工程と、
    Nを正の整数とし、前記埋め込み研磨したn個の焼結鉱について研磨面の位置を変えてそれぞれN箇所を顕微鏡撮影しN枚の画像を作成する工程と、
    前記N×n枚の画像について、該画像の輝度分布から、Tを輝度、Si,j(T)をj番目の焼結鉱、i枚目の画像について輝度がT以下である領域の面積、Ti,jmaxをj番目の焼結鉱、i枚目の画像について画像中の最高輝度、Tcを画像中に観察される気孔の最高輝度として、また、前記ヘマタイト相の存在比をRHM、前記マグネタイト相の存在比をRMG、前記カルシウムフェライト相の存在比をRCFとして、式(4)
    となるように、T’a及びT’bを求める工程と、
    前記画像中にT’a,T’b,及びTcの輝度の等高線を引いて、輝度がT’a以上Tmax以下の領域をヘマタイト相、輝度がT’b以上T’a以下の領域をマグネタイト相、輝度がTc以上T’b以下の領域をカルシウムフェライト相の存在領域を確定する工程と、
    からなることを特徴とする焼結鉱の顕微鏡画像解析方法。
  6. 焼結鉱の顕微鏡画像においてX線回折に基づき該焼結鉱の構成相の存在領域を確定する画像解析方法であって、
    前記焼結鉱の粉末試料を作製する工程と、
    前記粉末試料のX線回折パターンを測定する工程と、
    前記X線回折パターンを解析して、前記焼結鉱の構成相としての、ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程と、
    nを正の整数とし、n個の焼結鉱をそれぞれ樹脂に埋め込み研磨加工する工程と、
    Nを正の整数とし、前記埋め込み研磨したn個の焼結鉱について研磨面の位置を変えてそれぞれN箇所を顕微鏡撮影しN枚の画像を作成する工程と、
    前記N×n枚の画像について、該画像の輝度分布から、ヘマタイト相とマグネタイト相を分ける輝度の仮の境界値をTa、マグネタイト相とカルシウムフェライト相を分ける輝度の仮の境界値をTb、として、j番目の焼結鉱、i枚目の画像について、Ti,jmaxを画像中の最高輝度、Ti,jcを画像中に観察される気孔の最高輝度として、Ai,jを輝度がTa以上である領域の面積、Bi,jを輝度がTb以上Ta以下である領域の面積、Ci,jを輝度がTi,jc以上Tb以下である領域の面積、Di,jをj番目の焼結鉱、i枚目の画像について輝度がTi,jc以下である領域の面積、また、前記ヘマタイト相の存在比をRHM、前記マグネタイト相の存在比をRMG、前記カルシウムフェライト相の存在比をRCFとして、式(5)
    により、
    を求める工程と、式(6)
    により、
    s,Bs,Csを求める工程と、式(7)
    により、T’a及びT’bを求める工程と、
    前記画像中にT’a,T’b,及びTcの輝度の等高線を引いて、輝度がT’以上Tmax以下の領域をヘマタイト相、輝度がT’b以上T’a以下の領域をマグネタイト相、輝度がTc以上T’b以下の領域をカルシウムフェライト相の存在領域を確定する工程と、
    からなることを特徴とする焼結鉱の顕微鏡画像解析方法。
  7. 前記X線回折パターンの解析において、前記X線回折パターンのリートベルト解析を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の焼結鉱の顕微鏡画像解析方法。
  8. 前記ヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求める工程において、前記X線回折パターンの回折ピークの位置及び強度からヘマタイト相の存在比、マグネタイト相の存在比、カルシウムフェライト相の存在比を求めることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の焼結鉱の顕微鏡画像解析方法。
JP2013007514A 2013-01-18 2013-01-18 焼結鉱の顕微鏡画像解析方法 Active JP6094230B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013007514A JP6094230B2 (ja) 2013-01-18 2013-01-18 焼結鉱の顕微鏡画像解析方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013007514A JP6094230B2 (ja) 2013-01-18 2013-01-18 焼結鉱の顕微鏡画像解析方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014137344A JP2014137344A (ja) 2014-07-28
JP6094230B2 true JP6094230B2 (ja) 2017-03-15

Family

ID=51414915

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013007514A Active JP6094230B2 (ja) 2013-01-18 2013-01-18 焼結鉱の顕微鏡画像解析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6094230B2 (ja)

Families Citing this family (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6344565B2 (ja) * 2014-09-02 2018-06-20 住友金属鉱山株式会社 樹脂包埋試料およびその作製方法
KR101622291B1 (ko) * 2014-10-29 2016-05-19 주식회사 포스코 소결광 성분의 정량화 방법
KR101632506B1 (ko) * 2014-12-08 2016-06-22 주식회사 포스코 소결광 조직 정량화 방법
CN105758769B (zh) * 2014-12-18 2018-07-27 北京有色金属研究总院 一种联合定量测定矿石中金属氧化物和氢氧化物的方法
JP6500752B2 (ja) * 2015-11-09 2019-04-17 住友金属鉱山株式会社 全自動鉱物分析装置と微小部x線回折装置とを用いた、鉱石中に存在する鉱物粒子の同定方法
CN105466930A (zh) * 2015-12-04 2016-04-06 武汉钢铁(集团)公司 基于烧结矿显微图像确定铁酸钙含量的方法
JP6763251B2 (ja) * 2016-09-16 2020-09-30 日本製鉄株式会社 構成比率推定装置、構成比率推定プログラム、及びその方法
CN108445026A (zh) * 2018-03-15 2018-08-24 曹姝旻 一种鉴定鸡血石的方法
KR102175844B1 (ko) * 2018-11-30 2020-11-06 주식회사 포스코 소결광 제조용 철광석의 품질 평가방법
JP7277762B2 (ja) * 2019-09-03 2023-05-19 日本製鉄株式会社 組織構成特定方法、組織構成特定装置及びプログラム
JP7417095B2 (ja) * 2020-04-08 2024-01-18 日本製鉄株式会社 焼結鉱の組織構成学習装置、組織構成学習方法及び組織構成学習プログラム
JP7222379B2 (ja) * 2020-05-14 2023-02-15 Jfeスチール株式会社 焼結鉱の組織評価方法および焼結鉱の製造方法
CN114994040A (zh) * 2022-05-28 2022-09-02 江苏沙钢集团有限公司 一种烧结矿矿相的定量分析计算方法
JP2023180580A (ja) * 2022-06-09 2023-12-21 Jfeスチール株式会社 材料組織の相の抽出方法、材料組織の相の抽出装置及び顕微鏡装置

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS59157568A (ja) * 1983-02-26 1984-09-06 Nippon Kokan Kk <Nkk> 焼結鉱性状の測定方法
JPH06228664A (ja) * 1991-08-14 1994-08-16 Nippon Steel Corp 粉状粒子焼結体の焼結度評価法及びその製造のための焼結操業管理方法
JPH10265858A (ja) * 1997-03-26 1998-10-06 Nkk Corp 高品質焼結鉱の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014137344A (ja) 2014-07-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6094230B2 (ja) 焼結鉱の顕微鏡画像解析方法
JP6107388B2 (ja) 結合物質の顕微鏡画像解析方法、顕微鏡画像解析装置、及びコンピュータプログラム
Chancey et al. Comprehensive phase characterization of crystalline and amorphous phases of a Class F fly ash
CN105067649A (zh) 一种利用扫描电镜及能谱仪对材料组织定量分析的方法
JP2018081092A (ja) 鉱物粒子の表面分析方法
JP2020024188A (ja) 粉体形状の分析方法、粉体の流動性評価方法、および粉体が分散された樹脂の流動性評価方法
JP7163878B2 (ja) 焼結鉱の鉱物種判別方法及び焼結鉱の組織分析方法
O'Brien et al. Coal characterisation by automated coal petrography☆
Hoggan et al. Grain size and phase purity characterization of U3Si2 fuel pellets
JPWO2018159689A1 (ja) セラミックスの内部構造観察方法、セラミックスの製造方法、解析システムおよびセラミックスの製造システム
Majidi et al. Quantitative analysis for in situ sintering of 3% yttria-stablized zirconia in the transmission electron microscope
JP7381890B2 (ja) 焼結鉱の観察評価方法及び焼結鉱の被還元性評価方法
JP7063033B2 (ja) 粉体形状の分析方法、および、粉体の流動性評価方法
EP2894505B1 (en) The method for determining the morphology of cokes and chars
CN109191479A (zh) 一种烧结矿中复合铁酸钙矿相含量的自动测量方法
Walkosz et al. Crystal-induced effects at crystal/amorphous interfaces: The case of Si 3 N 4/SiO 2
Mahmoud et al. Implementation of AIMS in measuring aggregate resistance to polishing, abrasion, and breakage
Kumar et al. Establishing a novel methodology to correlate the macroscopic and microscopic degree of sintering in magnetite pellets during induration
Aughenbaugh Fly ash-based geopolymers: identifying reactive glassy phases in potential raw materials
Krebs et al. Quantitative analysis of banded structures in dual-phase steels
CN110197476B (zh) 一种基于特征融合的复杂烧结矿三维显微矿相的分析方法
JP7222379B2 (ja) 焼結鉱の組織評価方法および焼結鉱の製造方法
Otsuki Non-destructive liberation analysis of printed circuit board
KR101622291B1 (ko) 소결광 성분의 정량화 방법
Li et al. Segmentation of backscattered electron images of cement-based materials using lightweight U-Net with attention mechanism (LWAU-Net)

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150903

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160623

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160705

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160905

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170117

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170130

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6094230

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350