JP6093269B2 - セグメントコイル及びステータ - Google Patents

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Description

本願発明は、スロット紙を装着した一体コアのスロット部に組み付けられるセグメントコイルに関する。詳しくは、隣接するコイル等との間における部分放電を防止できるセグメントコイルに関する。
近年におけるモータの小型化、高性能化、高出力化等に伴い、モータのステータを構成するコイルとして、スロット内の占積率を効果的に向上させることができる平角線からなるコイル、特に平角線を略U字状に形成する、いわゆるセグメントコイルへの需要が高まっている。このようなセグメントコイルを示す従来技術として、例えば下記特許文献1がある。
特許第3734166号公報
上記特許文献1は、回転電機のセグメント順次接合ステータコイルおよびその製造方法に関する発明で、ステータコアの径方向幅の増大を抑制しつつ必要なターン数のセグメントをモータハウジング内に収容することができ、頭部側コイルエンドの頭部先端部間の相互接触、電気絶縁の劣化を防止することができるメリットがある。
セグメントコイルには、隣接するセグメントコイルとの間や、コアとの間の絶縁を行うための絶縁層が設けられている。この絶縁層は、各部材間において部分放電が生じないように構成する必要がある。部分放電は、電圧差が大きくなる部分において生じやすい。例えば、三相交流電動機のステータにセグメントコイルを採用した場合、異なる相に属するセグメントコイル間における電圧差が最も大きくなる。従って、異なる相に属するセグメントコイルが近接あるいは接触する部分において部分放電が生じやすい。
しかし、上記特許文献1に示すような従来のセグメントコイルにおいては、異なる相に属するセグメントコイル間の電圧差に対応できる絶縁層を、セグメントコイルの全域に設けることにより、部分放電を防止するように構成されていた。
ところが、同じ層に属するセグメントコイルが対接する部位や、コアとセグメントコイルとが対接する部位における電圧差は小さく、大きな電圧差に対応できる厚みの大きな絶縁層を設ける必要はない。従来のセグメントコイルにおいては、異なる相に属するコイル間の電圧差に対応できる絶縁層がコイルの全域に設けられているため、スロット内の占積率が低下して、電動機の大型化や発熱量の増加につながるといった不都合があった。
このような不都合に対して、近年、電圧差に対応して厚みの異なる絶縁層を設けるセグメントコイルが開発されている。このようなセグメントコイルは、ステータのスロット部に挿入されるストレート部と、ステータのスロット部から延出される一対のコイルエンド部とを備え、他のセグメントコイルと対接するコイルエンド部の所定領域に厚みの大きい絶縁層(以下、付加絶縁層とする。)を設けるものが一般的である。また、コイル線の全周に付加絶縁層を設けるものが一般的である。なお、ここで「コイル線」とは、銅等の素線の表面にベースとなる絶縁層が一層被覆された被覆電線のことを意味するものである。
このようなセグメントコイルを一体コアのスロット部に組み付ける場合、付加絶縁層を備えるコイル線を略U字形状に成形した後、他のセグメントコイルと接続するための接続部を備えるコイルエンド部側(略U字形状の開口部側)からスロット部にコイル線を挿入させて組み付ける。
従って、スロット部にスロット紙を装着した一体コアにセグメントコイルを組み付ける場合には、スロット紙の厚み分だけコイル線を挿入するための空間が狭くなることから、接続部側のコイルエンド部の全周に付加絶縁層を形成したセグメントコイルを用いると、スロット部にコイル線を挿入することができないという不都合があった。よって、スロット紙を装着した一体コアに組み付けるセグメントコイルにおいては、接続部を備えるコイルエンド部に付加絶縁層を設けることができず、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止することができないという不都合があった。
そこで、本発明は上記従来における不都合を解決し、接続部を備えるコイルエンド部に付加絶縁層を設ける構成であっても、スロット紙を装着した一体コアのスロット部に組み付けることが可能で、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止できると共に、ステータの占積率を高めることができるセグメントコイル及び該セグメントコイルを備えるステータの提供を課題とする。
本発明のセグメントコイルは、(1)スロット紙を装着した一体コアのスロット部に収容されるストレート部と、前記スロット部から延出される一対のコイルエンド部とを備えるセグメントコイルであって、前記一対のコイルエンド部のうち、他のセグメントコイルと接続するための接続部を備えるコイルエンド部の所定領域に付加絶縁層を備えると共に、前記付加絶縁層が、前記一体コアの径方向の内方面と外方面の少なくとも一面に形成されているセグメントコイルである。
上記本発明によれば、接続部を備えるコイルエンド部に付加絶縁層を設ける構成であっても、スロット紙を装着した一体コアのスロット部にセグメントコイルを組み付けることができる。よって、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止できると共に、ステータの占積率を高めることができる。
環状コアのスロットに、本発明の実施形態に係るセグメントコイルの一部を組み付けた状態を示す要部の斜視図である。 本発明の実施形態に係るセグメントコイルの一形態を示す正面図である。 本発明の実施形態に係るセグメントコイルの一形態を示す図で、(A)は図2の左側面図、(B)は(A)のコイルエンド部1cに備える付加絶縁層Z2の先端を示す図である。 一のセグメントコイルと、これに隣接して配置されるセグメントコイル間の対接状態を示す要部の正面図である。 図4におけるF−F線に方向における断面図である。 本発明の実施形態に係るセグメントコイルの断面図で、(A)は図2のA−A線方向における断面図、(B)は図2のB−B線方向における断面図、(C)は図2のC−C線方向における断面図である。 本発明の実施形態に係るセグメントコイルの製造工程を簡略化して示す図である。 本発明の実施形態に係るセグメントコイルの製造工程を簡略化して示す図である。 本発明の実施形態に係るセグメントコイルの製造工程を簡略化して示す図である。 従来のセグメントコイルを示す図で、(A)はコイル全体に均一な厚みの絶縁層が形成されているセグメントコイルの断面図、(B)はコイルエンド部60cの所定領域の全周に付加絶縁層Z2が形成されているコイル線60が、スロット紙52を装着したスロット部51に組み付けられる状態を模式化して示す図である。
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。
本発明のセグメントコイルは、(1)スロット紙を装着した一体コアのスロット部に収容されるストレート部と、前記スロット部から延出される一対のコイルエンド部とを備えるセグメントコイルであって、前記一対のコイルエンド部のうち、他のセグメントコイルと接合するための接続部を備えるコイルエンド部の所定領域に付加絶縁層を備えると共に、前記付加絶縁層が、前記一体コアの径方向の内方面と外方面の少なくとも一面に形成されているセグメントコイルである。
接続部を備えるコイルエンド部の所定領域において、一体コアの径方向の内方面と外方面の少なくとも一面に付加絶縁層を設ける構成とすることで、接続部を備えるコイルエンド部に付加絶縁層を設ける構成であっても、スロット紙を装着した一体コアのスロット部にセグメントコイルを組み付けることができる。よって、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止できると共に、ステータの占積率を高めることができる。
(2)前記付加絶縁層は、端部にテーパー部を備えることが好ましい。
このような構成とすることで、複数のセグメントコイルを仮組する際や、仮組した複数のセグメントコイルをスロット部に挿入する際に、付加絶縁層が他のセグメントコイルやスロット紙と接触することで、付加絶縁層が剥離することを効果的に防止することができる。
(3)前記付加絶縁層は、粘着テープを用いた粘着テープ層と樹脂塗料を用いた樹脂塗着層との少なくとも一方で形成されていることが好ましい。
このような構成とすることで、製造効率が良く、形成容易な付加絶縁層とすることができる。
また、本発明のステータは、(4)上記(1)に記載したセグメントコイルを備えるステータである。
このようなステータとすることで、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止できると共に、ステータの占積率を高めることができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。しかし、以下の説明は本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るセグメントコイル1は、平角線で構成されるいわゆる被覆電線で、ステータ2を構成する環状コア3に整列配置されて電動機を構成するものである。このセグメントコイル1は、図6に示すように、導体からなる素線Rと、素線Rを被覆する絶縁被膜たる絶縁層Zとから構成される。なお、環状コア3のスロット部4には後述するようにスロット紙7が装着されているが、説明の便宜上、図1ではスロット紙7を省略して示すこととする。
一体コアである環状コア3は磁性材料から形成された厚肉環状構造を備えており、内周部に軸方向に貫通すると共に、内周面に開口するスロット部4が所定間隔で形成されている。また、図8(B)、図9に示すように、スロット部4には絶縁のためのスロット紙7(いわゆるスロット絶縁紙)が装着されている。後述するストレート部1bを、スロット紙7を装着したスロット部4に収容することにより、セグメントコイル1が環状コア3に組み付けられる。なお、スロット紙7としては、ノーメックス絶縁紙等、スロット紙として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。また、図9(B)に示す環状コア3に装着したスロット紙7間の幅Gは、後述するベース絶縁層Z1を備えるコイル線6の幅H以上であることが必要である。具体的には、幅Gは幅Hの100%〜120%程度、より好ましくは100%〜105%程度であることが望ましい。120%を超えるとスロット紙7とセグメントコイル1との間の隙間が大きくなり、セグメントコイル1がぐらつくからであり、100%未満であるとセグメントコイル1を環状コア3に組み付けることができないからである。
環状コア3を構成する材料は特に限定されることはない。例えば、磁性粉体を圧粉成形して形成されたコアや、磁性鋼板を積層して形成されるコアを採用することができる。
例えば、三相交流電動機においては、U相、V相及びW相にグループ分けされたそれぞれ複数のセグメントコイル1が、スロット紙7を装着したスロット部4に所定間隔で組み付けられる。
図2に示すように、ステータ2の各スロット部4の半径方向中間部に装着される代表的な形態のセグメントコイル1(1A〜1E)は、スロット紙7を装着したスロット部4に収容される一対のストレート部1bと、スロット部4の軸方向両端部から延出させられると共に、山形形状を備える一対のコイルエンド部1a、1cとを備える略六角形状に形成されている。コイルエンド部1cにおいて同一のスロット部4に装着された隣接するセグメントコイルが接続されると共に、他のスロット部4に装着されたセグメントコイルとの接続が行われる。他のスロット部4に装着されたセグメントコイルとの接続を行うため、ステータ2の半径方向最内側及び最外側に装着されるセグメントコイル20、21においては、接続パターンに応じて複数の形態を備えるコイルエンド部が設けられている。以下の説明は、理解を容易にするため、図2に示す形態のセグメントコイル1について行う。
一方のコイルエンド部1aは、所定のスロット部4に収容された一対の直線部1bを掛け渡し状に接続する山形状に形成されている。一方、他方のコイルエンド部1cには、スロット部4に隣接して収容されたセグメントコイルとの接続を行うための接続部5a、5bが設けられており、接続されたセグメントコイルのコイルエンド部と共働して山形形状が構成される。なお、図1に示すステータ2の半径方向最内側と最外側に装着されるセグメントコイル20、21のコイルエンド部1cは、上述したように、他のスロット部4に装着されたセグメントコイルと接続できる形態に形成される。
また、図2、図3(A)に簡略化して示すように、コイルエンド部1a、1cの山形形状の裾部には、環状コア3の径方向外方へコイル線を傾斜させることで傾斜部Kを設ける構成としてある。なお、本実施形態においては、図1に一部を簡略化して示すように、環状コア3の径方向の外側に配置されるセグメントコイルほど、傾斜部Kの傾斜角度を大きくする構成としてある。
なお、図1に示すステータ2の半径方向最内側と最外側に装着されるセグメントコイル20、21のコイルエンド部1cは、既述したように、他のスロット部に装着されたセグメントコイルと接続できる形態に形成される。
また、本実施形態においては、図2、図3、図6に示すように、セグメントコイル1を形成する絶縁層Zの構成を、ストレート部1bと、コイルエンド部1a、1cとで異なる構成としてある。
より具体的には、ストレート部1bにおいては、図6(A)に示すように、素線Rの表面にベース絶縁層Z1だけを被覆させることで絶縁層Zを形成する構成としてある。これに対してコイルエンド部1a、1cの所定領域においては図2、図3、図6(B)、図6(C)に示すように、素線Rの表面にベース絶縁層Z1を被覆させると共に、ベース絶縁層Z1の表面に更に付加絶縁層Z2を被覆させることで絶縁層Zを形成する構成としてある。なお、ここで「所定領域」とは、「コイルエンド部1a、1cにおいて、異相の隣接セグメントコイルが近接する領域、より具体的には素線Rの状態で異相の隣接する素線R間の距離が数μm〜数百μm程度となる領域」のことを意味するものとする。
本実施形態では、三相交流電動機の各相を構成するコイルのうち、図1に示すステータ2の半径方向最内周側と半径方向最外周側に配置されるセグメントコイル20、21を除く、各セグメントコイル1A〜1Eのコイルエンド部1a、1cにおける山形形状の一方の斜辺部10a、11aに、四つのコイルが当接あるいは近接した状態で配列される。
図4は、一のセグメントコイル1Aと、このセグメントコイル1Aの一方の斜辺部10aに対接させられるセグメントコイル1B、1C、1D、1Eを注出して模式的に表した正面図である。
図4に示すように、一のセグメントコイル1Aにおける左側の斜辺部10aには、隣接する4つのセグメントコイル1B、1C、1D、1Eの各右側の斜辺部10bが所定の間隔で交差するように対接させられる。また、図示していないが、一のセグメントコイル1Aにおける左側の斜辺部11aには、隣接する4つのセグメントコイル1B、1C、1D、1Eの各右側の斜辺部11bが所定の間隔で交差するように対接させられる。
よって、本実施形態においては、一のセグメントコイル1Aにおける左側の斜辺部10a、11aにおいて、他のセグメントコイル1B、1C、1D、1Eが対接させられる部分に付加絶縁層Z2を設ける構成としてある。
更に、本実施形態においては図2、図3、図6(B)、図6(C)に示すように、斜辺部10aに設ける付加絶縁層Z2と、斜辺部11aに設ける付加絶縁層Z2の構成を異なる構成としてある。
より具体的には、接続部5a、5bを備えていないコイルエンド部1aを構成する斜辺部10aにおいては、図6(B)に示すように、平角線で構成されるコイル線の全周に付加絶縁層Z2を設ける構成としてある。これに対して、接続部5a、5bを備えるコイルエンド部1cを構成する斜辺部11aにおいては、図6(C)に示すように、平角線で構成されるコイル線のうち、環状コア3の径方向の内方面と外方面との二面に付加絶縁層Z2を設ける構成としてある。更に、斜辺部11aに設ける付加絶縁層Z2は図3、図6(C)に示すように、コイル線に向かって傾斜するテーパー部Tを端部に設ける構成(エッジ部分を面取りした構成)としてある。
なお、図6(C)に示す斜辺部11aに設ける付加絶縁層Z2の幅Jは、ベース絶縁層Z1を備えるコイル線の幅H以下であることが必要である。より好ましくは、幅Jは幅Hの90%〜100%程度、更に好ましくは97%〜100%程度であることが望ましい。幅Jが幅Hを超えると、斜辺部11aに付加絶縁層Z2を備える複数のセグメントコイルを仮組する際や仮組した複数のセグメントコイルを環状コア3に組み付ける際に、付加絶縁層Z2が他のコイル線やスロット紙7と接触することで、斜辺部11aに設ける付加絶縁層Z2が剥離し易くなるからである。更に、スロット紙7を装着したスロット部4にセグメントコイルを挿入できない可能性があるからである。また、90%未満であると良好な絶縁性を確保できないからである。
また、図6(C)に示すテーパー部Tの傾斜角度Lは、20度〜99度程度、より好ましくは60度〜99度程度であることが望ましい。99度を超えると、複数のセグメントコイルを仮組する際や、仮組した複数のセグメントコイルをスロット部4に挿入する際に、付加絶縁層Z2が他のセグメントコイルやスロット紙7と接触する際の接触面の抵抗を効果的に低減させることができず、付加絶縁層Z2が剥離することを効果的に防止することができないからである。また、20度未満であると、付加絶縁層Z2の被覆量が不足し、良好な絶縁性を確保できないからである。
なお、図6(A)に示す素線Rの幅Mは、2.5mm〜5.0mm程度、より好ましくは3.0mm〜4.0mm程度とすることが望ましい。また図6(A)に示す素線Rの厚みNは、1.0mm〜2.0mm程度、より好ましくは1.5mm〜2.0mm程度とすることが望ましい。なお、素線Rは、銅等、コイルを形成する素線として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
また、ベース絶縁層Z1の材質としては、ポリアミドイミド、ポリイミド等を用いることができる。またベース絶縁層Z1の厚みはコイルターン間の設計電圧に対応した厚みがあればよく、例えば設計電圧が500Vの場合は、15μm〜30μm程度とすることが望ましく、より好適には15μm〜25μm程度とすることが望ましい。15μm未満では部分放電の発生による皮膜劣化や製造時のピンホール発生確率が増加し、30μmを超えるとスロット部4内の占積率の低下による発熱増加や外径増大による組み付け性の低下が生じるからである。またその形成方法は、ダイス引き、電着等を用いることができる。なお、ストレート部1b、コイルエンド部1a、1cのベース絶縁層Z1は、同一工程で一体的に形成することができる。
また、付加絶縁層Z2の材質としては、ポリアミドイミドやポリイミドを代表とするスーパーエンジニアリングプラスチック材料、或いは液晶ポリマー等のエンジニアリングプラスチックに無機フィラーを混合した材料等を用いることができる。また、その形成方法としては、コイルエンド部1aに設ける付加絶縁層Z2は、粘着テープの貼り付け、樹脂塗料を用いた塗着、射出成形、ダイス引き、電着、粉体塗装、熱収縮チューブ材の挿入、ディップ、押し出し成形等を用いることができる。一方、コイルエンド部1cに設ける付加絶縁層Z2は、粘着テープの貼り付け、樹脂塗料を用いた塗着、射出成形等を用いることができる。なお、製造効率を考慮すれば、コイルエンド部1a、1cに設ける付加絶縁層Z2は、粘着テープを用いた粘着テープ層と樹脂塗料を用いた樹脂塗着層との少なくとも一方で構成することが望ましい。
また、モータ相間の電圧は、インバータサージ等の影響により、入力電圧の約2倍のピーク電圧が印加されることから、付加絶縁層Z2の厚みは、例えば設計電圧が1000Vの場合は、40μm〜200μm程度とすることが望ましく、より好ましくは80μm〜120μm程度とすることが望ましい。40μm未満では部分放電による皮膜劣化が発生し、200μmを超えるとコイルエンド部の線間距離増加による寸法増大を招くからである。
次に、図7〜図9を参照して、本発明の実施形態に係るセグメントコイル1、ステータ2の製造方法を説明する。
まず、図7(A)を参照して、接続部5a、5b(図示しない)となる部分を除いて、素線Rの表面にベース絶縁層Z1を形成したコイル線6を準備する。そして、ベース絶縁層Z1を備えるコイル線6の所定領域に付加絶縁層Z2を形成する。より具体的には、後にコイルエンド部1a、1cとなる部分の所定領域に、絶縁性樹脂で形成される粘着テープを貼り付けることで付加絶縁層Z2を形成する。
そして、図7(A)〜図7(C)を参照して、押圧冶具30を用いてコイル線6を屈曲させることで、コイルエンド部1aを構成する斜辺部10a、10bを形成する。これにより、山形形状のコイルエンド部1aと、一対のストレート部1bとで構成される略U字形状のコイル線6が形成される。そして、図示していないが、冶具を用いてコイル線6の所定位置(山形形状の裾部となる位置)で環状コア3の径方向外方へコイル線6を傾斜させて傾斜部Kを形成する。
そして、図8(A)を参照して、スロット部4に組み付けられる複数本のコイル線6を仮組する。なお、図8(A)は、スロット部4に組み付けられる複数本のコイル線6のうち一部を示すものである。
そして、図8(B)を参照して、スロット紙7を装着したスロット部4に、仮組した複数本のコイル線6を挿入する。
そして、図8(B)、図9(A)を参照して、冶具40に備える凹部41に、コイル線6の接続部5a、5bを嵌合させた状態で、所定方向に冶具40を回転させることで、複数本のコイル線6に山形形状のコイルエンド部1cを形成する。その後、冶具40を取り外す。
そして、所定のスロット部4に配置されるU相、V相、W相を構成する所定数のセグメントコイルが接続部5a、5bで溶接等を用いて接続される。これにより、巻回コイルが形成されると共に、U相、V相、W相を構成する複数の巻回コイルが所定位置で直列接続や並列接続される。なお、既述したコイルエンド部1cを形成する工程以降で、斜辺部11aの付加絶縁層Z2を設けていない環状コア3の周方向または軸方向の面において、隣接する異相のセグメントコイルとの間で部分放電が発生しない線間ギャップを確保する工程を行う。
以上の工程を経ることで、本発明の実施形態に係るセグメントコイル1、ステータ2が形成される。
このような構成からなる本発明の実施形態に係るセグメントコイル1、ステータ2は以下の効果を奏する。
ストレート部1bにおいては、素線Rの表面にベース絶縁層Z1だけを形成することで、スロット部4内における占積率を効果的に向上させることができるセグメントコイル1とすることができる。よって高効率なステータ2とすることができる。
一方、斜辺部10a、11aの所定領域においては、ベース絶縁層Z1を形成すると共に、ベース絶縁層Z1の表面に付加絶縁層Z2を形成することで、隣接するセグメントコイルが近接する領域において対接するセグメントコイル1B、1C、1D、1Eとの間の隙間を効果的に拡大することができる。よって、部分放電が発生することを防止することができ、絶縁層Zに劣化が生じることを防止することができるセグメントコイル1とすることができる。従って、良好な絶縁性を維持することができるセグメントコイル1、ステータ2とすることができる。
また、ベース絶縁層Z1と付加絶縁層Z2とで絶縁層Zを形成する構成とすることで、絶縁層Zの厚みにバリエーションを持たせることができる。より具体的には、占積率を向上させたいストレート部1bでは絶縁層Zの厚みを薄くすることができると共に、コイルエンド部1a、1cにおいて部分放電に伴う絶縁劣化を防止したい領域においては絶縁層Zの厚みを厚くすることができる。このような構成とすることで、厚みを大きくする必要があるコイルエンド部1a、1cの所定領域の厚みに合わせて素線Rの表面に絶縁層Zを一体的に形成する場合に比べて、製造コストを効果的に抑えることができる。
また、斜辺部10aに設ける付加絶縁層Z2は平角線の全周に設ける構成とし、斜辺部11aに設ける付加絶縁層Z2は平角線のうち、環状コア3の径方向の内方面と外方面との二面に設ける構成とすることで、接続部5a、5bを備えるコイルエンド部1cに付加絶縁層Z2を設ける構成であっても、図8、図9に示すように、スロット紙7を装着したスロット部4に付加絶縁層Z2を備えるコイル線6を組み付けることができる。よって、斜辺部10a、11aにおいて隣接するセグメントコイルと対接する可能性がある面に確実に付加絶縁層Z2を設けることができ、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止できると共に、ステータ2の占積率を高めることができる。加えて、斜辺部11aにおいては、平角線で構成されるコイルの全周に付加絶縁層Z2を設けない構成とすることができ、製造コストを効果的に抑えることができる。従って、斜辺部10a、11aの絶縁被膜の劣化防止と省コスト化とを同時に実現することができる。
更に、斜辺部11aの付加絶縁層Z2を設けていない環状コア3の周方向または軸方向の面において、隣接する異相のセグメントコイルとの間で部分放電が発生しない線間ギャップを確保する工程を備えることで、斜辺部11aにおいては、平角線で構成されるコイルの全周に付加絶縁層Z2を設けない構成であっても、隣接するコイルとの間での部分放電を効果的に防止することができる。
また、斜辺部11aに設ける付加絶縁層Z2の端部にテーパー部Tを設ける構成とすることで、斜辺部11aに設ける付加絶縁層Z2が他のセグメントコイルやスロット紙7と接触する場合の接触面の抵抗を低減させることができる。よって、平角線のうち、環状コア3の径方向の内方面と外方面との二面にだけ付加絶縁層Z2を形成する構成であっても、複数のコイル線6を仮組する際や仮組した複数のコイル線6をスロット部4に挿入する際に、付加絶縁層Z2が他のコイル線6やスロット紙7と接触することで剥離することを効果的に防止することができる。更に、テーパー部Tの傾斜角度Lを20度〜99度程度とすることで、付加絶縁層Z2の効果的な剥離防止と良好な絶縁性の確保とを同時に実現することができる。
また、コイルエンド部1a、1cの山形形状の裾部に傾斜部Kを設けると共に、環状コア3の径方向の外側に配置されるセグメントコイルほど、傾斜部Kの傾斜角度を大きくする構成とすることで、コイルエンド部に付加絶縁層Z2を設ける構成であっても、スロット部4の内部においては、同一スロット部4内に配置される隣接するセグメントコイルにおけるストレート部間を一段と効果的に近接させることができる。よって、付加絶縁層Z2の厚みにかかわらず、同一スロット部4内における隣接するストレート部間を近接させることができ、スロット部4内における高占積率を効果的に実現することができる。
また、コイルエンド部1a、1cに設ける付加絶縁層Z2を、粘着テープを用いた粘着テープ層と樹脂塗料を用いた樹脂塗着層との少なくとも一方で構成すれば、製造効率が良く、形成容易な付加絶縁層Z2とすることができる。
つまり、図10(A)に示すように、環状コアに整列配置されて電動機を構成する従来のセグメントコイル8は、既述した本発明の実施形態に係るセグメントコイル1と同様に、ストレート部と一対のコイルエンド部とを備えると共に、ストレート部とコイルエンド部との両方において素線Rの表面全体に均一な厚みの絶縁層Zを設けるものが一般的であった。つまり、絶縁層の厚みに厚薄がないセグメントコイルとするものが一般的であった。
より具体的には、部分放電に伴う絶縁層Zの劣化を防止するために、絶縁層Zの厚みを大きくする必要があるコイルエンド部の厚みに合わせて素線Rの表面に厚みが均一な絶縁層Zを一体的に形成する構成であった。よって、絶縁層Zの厚みを大きくする必要がないストレート部においても絶縁層Zの厚みが大きくなることで、スロット部内における占積率を向上させることができないと共に、製造コストを抑えることができないという不都合があった。
このような不都合に対して、近年、電圧差に対応して厚みの異なる絶縁層を設けるセグメントコイルが開発されている。このようなセグメントコイルは、既述した本発明の実施形態に係るセグメントコイル1と同様に、ストレート部と一対のコイルエンド部とを備えると共に、他のセグメントコイルと対接するコイルエンド部の所定領域に厚みの大きい付加絶縁層を設けるものが一般的である。また、コイル線の全周に付加絶縁層を設けるものが一般的である。
また、このようなセグメントコイルを一体コアのスロット部に組み付ける場合、既述した本発明の実施形態に係るセグメントコイル1(コイル線6)と同様に、付加絶縁層を備えるコイル線を略U字形状に成形した後、接続部を備えるコイルエンド部側(略U字形状の開口部側)からスロット部にコイル線を挿入させて組み付ける。
従って、図10(B)に示すように、スロット部51にスロット紙52を装着した環状コア50にコイル線60を組み付ける場合には、スロット紙52の厚み分だけコイル線60を挿入するための空間が狭くなる。より具体的には、コイル線60を挿入するための幅が、スロット部51の幅Pよりも小さいスロット紙52間の幅Qとなる。しかし、既述したように、近年開発されている図10(B)に示すようなセグメントコイル9においては、コイル線60の全周に付加絶縁層Z2を設けてある。よって、接続部61、62を備えるコイルエンド部60c側からスロット部51にコイル線60を挿入する際、付加絶縁層Z2部分の幅Sがスロット紙52間の幅Qよりも大きくなることで、スロット部51にコイル線60を挿入することができないという不都合があった。
よって、スロット紙を装着した一体コアに組み付けるセグメントコイルにおいては、接続部を備えるコイルエンド部に厚みの大きい付加絶縁層を設けることができず、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止することができないという不都合があった。
従って、本発明の実施形態に係るセグメントコイル1の構成とすることで、接続部5a、5bを備えるコイルエンド部1cに付加絶縁層Z2を設ける構成であっても、スロット紙7を装着した環状コア3(一体コア)のスロット部4にセグメントコイルを組み付けることが可能で、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止できると共に、ステータ2の占積率を高めることができる。
なお、本実施形態においては、斜辺部10a、11aに付加絶縁層Z2を設ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、付加絶縁層Z2を設ける斜辺部は適宜変更可能である。
また、図1に示す環状コア3の半径方向最外側及び半径方向最内側に配置されるセグメントコイル20、21は、環状コア3の半径方向の一方の側にのみ隣接するセグメントコイルが配置されると共に、他のスロット部4に装着された同相のセグメントコイルと連結されるため、設計によって隣接するセグメントコイルに対接させられる部分が異なる。このため、ステータ2におけるセグメントコイルの構成等に応じて、他のセグメントコイルと対接する部分に付加絶縁層Z2を設ければよい。
また、本実施形態においては、コイルエンド部1a、1cにおいて対接するすべてのセグメントコイル間に付加絶縁層Z2を設けたが、電圧差が大きい異なる相に属するセグメントコイルが対接する部分にのみ付加絶縁層Z2を設ける構成としてもよい。このような構成とすることで、付加絶縁層Z2を設ける領域を削減することができ、一段と省コスト化が可能なセグメントコイル1とすることができる。
また、本実施形態においては、斜辺部10aに設ける付加絶縁層Z2を、平角線で構成されるコイル線の全周に設ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。例えば、他のセグメントコイル1B〜1Eが対接させられる面にのみに設ける構成とすることができる。このような構成とすることで、付加絶縁層Z2を設ける領域をさらに削減することが可能となる。
また、本実施形態においては、接続部5a、5bを備えるコイルエンド部1cにおいて、平角線で構成されるコイル線のうち、環状コア3の径方向の内方面と外方面との二面に付加絶縁層Z2を設ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。例えば、接続部5a、5bを備えるコイルエンド部1cにおいて、平角線で構成されるコイル線のうち、環状コア3の径方向の内方面にだけ付加絶縁層Z2を設ける構成としてもよいし、環状コア3の径方向の外方面にだけ付加絶縁層Z2を設ける構成としてもよい。つまり、接続部5a、5bを備えるコイルエンド部1cには、平角線で構成されるコイル線のうち、環状コア3の径方向の内方面と外方面との少なくとも一方に付加絶縁層Z2を設ける構成であれば、付加絶縁層Z2を設ける範囲は隣接するセグメントコイルとの対接関係によって適宜変更可能である。
また、本実施形態においては、接続部5a、5bを備えるコイルエンド部1cに備える付加絶縁層Z2の構成として、端部にテーパー部Tを設ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、端部にテーパー部Tを設けない構成としてもよい。但し、コイルエンド部1cに設ける付加絶縁層Z2の剥離防止効果を考慮すれば、付加絶縁層Z2の端部にテーパー部Tを設けることが望ましい。
また、本実施形態においては、コイルエンド部1a、1cにそれぞれ備える付加絶縁層Z2を同じ形成方法で形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。つまり、コイルエンド部1a、1cにそれぞれ設ける付加絶縁層Z2は、同じ形成方法で形成してもよいし、異なる形成方法で形成してもよい。
本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されることはない。今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものでないと考えられるべきである。本願発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
セグメントコイルに設けられる絶縁層の厚みを最適化して、コイルの占積率を高め、電動機の効率を向上させることができる。
1 セグメントコイル
1a コイルエンド部
1b ストレート部
1c コイルエンド部
2 ステータ
3 環状コア
4 スロット部
5a 接続部
5b 接続部
6 コイル線
7 スロット紙
8 セグメントコイル
9 セグメントコイル
10a 斜辺部
10b 斜辺部
11a 斜辺部
11b 斜辺部
20 セグメントコイル
21 セグメントコイル
30 押圧冶具
40 冶具
41 凹部
50 環状コア
51 スロット部
52 スロット紙
60 コイル線
60c コイルエンド部
61 接続部
62 接続部
1A セグメントコイル
1B セグメントコイル
1C セグメントコイル
1D セグメントコイル
1E セグメントコイル
G 幅
H 幅
J 幅
K 傾斜部
L 傾斜角度
M 幅
N 厚み
P 幅
Q 幅
R 素線
S 幅
T テーパー部
Z 絶縁層
Z1 ベース絶縁層
Z2 付加絶縁層

Claims (6)

  1. スロット紙を装着した一体コアのスロット部に収容されるストレート部と、前記スロット部から延出される一対のコイルエンド部とを備えるセグメントコイルであって、前記一対のコイルエンド部のうち、他のセグメントコイルと接続するための接続部を備えるコイルエンド部の所定領域に付加絶縁層を備えると共に、前記付加絶縁層が、前記一体コアの径方向の内方面と外方面の双方に形成されているセグメントコイル。
  2. スロット紙を装着した一体コアのスロット部に収容されるストレート部と、前記スロット部から延出される一対のコイルエンド部とを備えるセグメントコイルであって、前記一対のコイルエンド部のうち、他のセグメントコイルと接続するための接続部を備えるコイルエンド部の所定領域に付加絶縁層を備えると共に、前記付加絶縁層が、前記一体コアの径方向の内方面にのみ形成されているセグメントコイル
  3. スロット紙を装着した一体コアのスロット部に収容されるストレート部と、前記スロット部から延出される一対のコイルエンド部とを備えるセグメントコイルであって、前記一対のコイルエンド部のうち、他のセグメントコイルと接続するための接続部を備えるコイルエンド部の所定領域に付加絶縁層を備えると共に、前記付加絶縁層が、前記一体コアの径方向の外方面にのみ形成されているセグメントコイル。
  4. 前記付加絶縁層は、端部にテーパー部を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセグメントコイル。
  5. 前記付加絶縁層は、粘着テープを用いた粘着テープ層と樹脂塗料を用いた樹脂塗着層との少なくとも一方で形成されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のセグメントコイル。
  6. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセグメントコイルを備えるステータ。
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